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進歩の優先順位 市民の声に耳を傾ける 市民の考える社会変革の優先課題、そして国・地域ごとの違いとは? 協賛 I. 市民が考える社会の理想像とは? 50カ国を対象とする今回の調査で、市民が社会の最優先課題として挙げた分野は医療だ。 その他の分野については、社会的保護(2位)教育へのアクセス(3位)治安(4位) 運輸インフラ(5位)環境(6位)研究開発(7位)という順位になった 市民の 最優先課題は 医療分野 多くの文明や国は、長い歴史を通じて社会の理想像を模索してきた。現代に生きる市民は、自国の現状をどのように 考えているのか?プラトンからアダム・スミス、トマス・ホッブズ、マハトマ・ガンジーまで、思想家たちは社会の あるべき姿について様々なビジョンを提示している。そして市民が理想とするビジョン、あるいはその実現に果たす べき政府・企業・家族・市民社会の役割は、文化・歴史・経済・地理といった要因によって大きく異なる。 市民が考える優先順位: 政府予算の配分優先度ランキング II. 市民の考える優先配分分野と政府支出の現状(地域別) 各国政府は、市民が考える予算の優先配分分野をどの程度理解しているの だろうか?下図では、市民の期待や各地域特有のニーズに最も沿う形で経済運営を 行う国を示している 教育・医療・環境・公共の秩序と安全・交通機関・研究 開発・社会的保護という7分野に対する政府の予算配分と 市民の優先度の差が最も小さな国(地域別)は次のように なった。世界全体の優先度ランキングについては前セク ションの図表を参照。 市民の優先課題を予算配分に最も反映する国は? 国別の調査結果についてはこちらのウェブサイトを参照 アジア太平洋 1位 オーストラリア ヨーロッパ 1位 ハンガリー・イタリア・スペイン アフリカ・中東 1位 モロッコ 南北アメリカ 1位 ペルー 市民の声に耳を傾けることで、投票ベースの民主主義から討論ベースの民主主義、 つまり問題・解決法の特定に市民がより大きな役割を担う制度への移行が可能となるPublic Governance Reviews deputy head OECD Open Government Unit head Alessandro Bellantoni III. 市民が現在直面する課題 今回の調査では、自国の将来的方向性について 多くの市民が不満を抱いていることが明らかとなっている 自国社会の現状に最も肯定的だったのは アジア各国の市民 世界と比較した自国の現状は? 南北 アメリカ ヨーロッパ アフリカ 中東 アジア 太平洋 同意しない 同意する ヨーロッパ アジア 太平洋 南北 アメリカ アフリカ 中東 世界の平均 よりも良い 世界の平均 よりも悪い IV. テクノロジーと社会 回答者の60%は テクノロジーが 社会に恩恵を もたらすと 考えている 家電・アプリ・スマートフォンから、量子コンピ ュータ・AI・ブロックチェーンといった最先端分野 まで、テクノロジーは社会的目標の実現に重要な 役割を果たしている(例:遠隔医療・教育工学)。 2010年の時点で約190億人だったネット ユーザーの数は2016年までに約330億人へ 増加。Uber・Airbnb・Upworkなどのプラット フォームが柔軟性に富んだ新たな収入源を提供 するなど、テクノロジーは市民の物質的ウェルビー イングの向上に大きく貢献している。 テクノロジーが社会に変革を もたらし、生活を向上させたと 考える回答者は世界全体で大きな 割合を占めた。しかし地域によって 回答傾向の違いも見られる。例えば ヨーロッパでは、テクノロジーが 個人・社会全体にもたらす恩恵を評 価する回答者が比較的少なかった。 (同意する回答者の割合が最も低 く、テクノロジー関連の4つの記述 に同意しない割合も最も多い。) テクノロジーは社会を 良い方向に変えた ヨーロッパ アジア 太平洋 アフリカ 中東 南北 アメリカ 同意する 同意しない V. 将来的な展望 世界各国の市民は、世代ごとに物質的ウェルビーイングの着実な向上を実現してきた。しかし 今日の若者世代にさらなる向上が保証されていないことは、様々なデータからも明らかだ。 活力と弾性に富んだ社会を実現するためには、生活へ影響を与える意思決定へ市民の声を反映 することが重要になる 将来の見通しに 最も楽観的なのは ミレニアル世代 今後10年で自国の社会は どのような変化を遂げると 思いますか? 良い方向へ変わる 悪い方向へ変わる サイレント世代(1945年以前の生まれベビーブーム世代(1946〜64年生まれ) X世代(1965〜80年生まれ) 変わらない ミレニアル世代(1981〜2000年生まれ) 信頼・幸福感・友情・人間関係といった日常的な価値観が、これまで重視されてきた 標準的な経済政策や肉体的な医療行為の重要性を損なうわけではない。むしろ両者は密接な 関わりを持っており、円滑に機能する社会では相互補完的な効果をもたらすことが多いWorld Happiness Report editor University of British Columbia professor emeritus of economics John Helliwell ? 17.1% 56.1% 19.4% 44.3% 18.2% 55% 11.4% 14.6% 29.9% 21.1% 15.8% 68.3% 50 40 30 20 10 0 10 20 30 40 50 60 70 50.3% 63.3% 60.6% 68.2% 次セクションの図表では、各国政府の予算配分と 各地域の市民が考える優先配分分野を比較する 1位 医療の質・アクセス向上 2位 社会的保護 低所得世帯・高齢者・障害者・疾病患者・若者世代の支援 3位 教育の質・アクセス向上 4位 公共の秩序・安全確保 5位 交通機関の質 6位 環境保護 7位 研究開発 テクノロジー・IoTなどの製品・手法に関するイノベーション支援 公共の秩序 ・安全確保 テクノロジー 分野の研究開発 交通機関の質 医療 教育 環境 社会的保護

進歩の優先順位 - Nitto Denko...進歩の優先順位 市民の声に耳を傾ける 市民の考える社会変革の優先課題、そして国・地域ごとの違いとは?協賛

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Page 1: 進歩の優先順位 - Nitto Denko...進歩の優先順位 市民の声に耳を傾ける 市民の考える社会変革の優先課題、そして国・地域ごとの違いとは?協賛

進歩の優先順位市民の声に耳を傾ける市民の考える社会変革の優先課題、そして国・地域ごとの違いとは?

協賛

I. 市民が考える社会の理想像とは?

50カ国を対象とする今回の調査で、市民が社会の最優先課題として挙げた分野は医療だ。その他の分野については、社会的保護(2位)・教育へのアクセス(3位)・治安(4位)・運輸インフラ(5位)・環境(6位)・研究開発(7位)という順位になった

市民の最優先課題は医療分野

多くの文明や国は、長い歴史を通じて社会の理想像を模索してきた。現代に生きる市民は、自国の現状をどのように考えているのか?プラトンからアダム・スミス、トマス・ホッブズ、マハトマ・ガンジーまで、思想家たちは社会のあるべき姿について様々なビジョンを提示している。そして市民が理想とするビジョン、あるいはその実現に果たすべき政府・企業・家族・市民社会の役割は、文化・歴史・経済・地理といった要因によって大きく異なる。

市民が考える優先順位:政府予算の配分優先度ランキング

II. 市民の考える優先配分分野と政府支出の現状(地域別)

各国政府は、市民が考える予算の優先配分分野をどの程度理解しているのだろうか?下図では、市民の期待や各地域特有のニーズに最も沿う形で経済運営を行う国を示している

教育・医療・環境・公共の秩序と安全・交通機関・研究開発・社会的保護という7分野に対する政府の予算配分と市民の優先度の差が最も小さな国(地域別)は次のようになった。世界全体の優先度ランキングについては前セクションの図表を参照。

市民の優先課題を予算配分に最も反映する国は?

国別の調査結果についてはこちらのウェブサイトを参照

アジア太平洋

1位 オーストラリア

ヨーロッパ

1位 ハンガリー・イタリア・スペインアフリカ・中東

1位 モロッコ

南北アメリカ

1位 ペルー

“市民の声に耳を傾けることで、投票ベースの民主主義から討論ベースの民主主義、つまり問題・解決法の特定に市民がより大きな役割を担う制度への移行が可能となる”Public Governance Reviews deputy headOECD Open Government Unit headAlessandro Bellantoni

III. 市民が現在直面する課題

今回の調査では、自国の将来的方向性について多くの市民が不満を抱いていることが明らかとなっている

自国社会の現状に最も肯定的だったのはアジア各国の市民

世界と比較した自国の現状は?

南北アメリカ

ヨーロッパ アフリカ中東

アジア太平洋

同意

しな

同意

する

ヨーロッパ アジア太平洋

南北アメリカ

アフリカ中東

世界の平均よりも良い

世界の平均よりも悪い

IV. テクノロジーと社会

回答者の60%はテクノロジーが社会に恩恵をもたらすと考えている

家電・アプリ・スマートフォンから、量子コンピュータ・AI・ブロックチェーンといった最先端分野まで、テクノロジーは社会的目標の実現に重要な役割を果たしている(例:遠隔医療・教育工学)。2 0 1 0 年 の 時 点 で 約 1 9 0 億 人 だ っ た ネ ッ ト

ユーザーの数は2016年までに約330億人へ増加。Uber・Airbnb・Upworkなどのプラットフォームが柔軟性に富んだ新たな収入源を提供するなど、テクノロジーは市民の物質的ウェルビーイングの向上に大きく貢献している。

テ ク ノ ロ ジ ー が 社 会 に 変 革 をもたらし、生活を向上させたと考える回答者は世界全体で大きな割合を占めた。しかし地域によって回答傾向の違いも見られる。例えばヨーロッパでは、テクノロジーが個人・社会全体にもたらす恩恵を評価する回答者が比較的少なかった。(同意する回答者の割合が最も低く、テクノロジー関連の4つの記述に同意しない割合も最も多い。)

テクノロジーは社会を良い方向に変えた

ヨーロッパ

アジア太平洋

アフリカ中東南北

アメリカ

同意する

同意しない

V. 将来的な展望

世界各国の市民は、世代ごとに物質的ウェルビーイングの着実な向上を実現してきた。しかし今日の若者世代にさらなる向上が保証されていないことは、様々なデータからも明らかだ。活力と弾性に富んだ社会を実現するためには、生活へ影響を与える意思決定へ市民の声を反映することが重要になる

将来の見通しに最も楽観的なのはミレニアル世代今後10年で自国の社会はどのような変化を遂げると思いますか?

良い方向へ変わる

悪い方向へ変わる

サイレント世代(

1945

年以前の生まれ)

ベビーブーム世代(

1946

〜64年生まれ)

X世代(

1965

〜80年生まれ)

変わらない

ミレニアル世代(

1981

〜2000

年生まれ)

“信頼・幸福感・友情・人間関係といった日常的な価値観が、これまで重視されてきた標準的な経済政策や肉体的な医療行為の重要性を損なうわけではない。むしろ両者は密接な関わりを持っており、円滑に機能する社会では相互補完的な効果をもたらすことが多い”World Happiness Report editorUniversity of British Columbia professor emeritus of economicsJohn Helliwell

?

17.1%

56.1%

19.4%

44.3%

18.2%

55%

11.4%

14.6% 29.9% 21.1% 15.8%

68.3%

50

40

30

20

10

0

10

20

30

40

50

60

70

50.3% 63.3% 60.6% 68.2%

次セクションの図表では、各国政府の予算配分と各地域の市民が考える優先配分分野を比較する

1位医療の質・アクセス向上

2位 社会的保護 低所得世帯・高齢者・障害者・疾病患者・若者世代の支援

3位 教育の質・アクセス向上

4位 公共の秩序・安全確保

5位 交通機関の質

6位 環境保護

7位 研究開発 テクノロジー・IoTなどの製品・手法に関するイノベーション支援

公共の秩序・安全確保

テクノロジー分野の研究開発

交通機関の質 医療

教育 環境 社会的保護