20
1 齲蝕の病理学 これからの講義で使う写真と図表の殆んどの原板は東京歯科大学口腔超微構造のものであるが、 出典が明記されているものは版権が設定されているので、使用にあたっては注意すること 1. 総論 2. エナメル質齲蝕 3. 象牙質齲蝕 4. セメント質齲蝕 5. 齲蝕予防 総論 勉強のポイント 1) 齲蝕の病因論が説明できる 2) 齲蝕の原因が説明できる 3) 齲蝕の好発部位と稀発部位が説明できる 4) 齲蝕の分類とそのそれぞれが説明できる 5) 齲蝕の進展様式が説明できる 6) 急性齲蝕と慢性齲蝕の特徴が説明できる 齲蝕の病理学 齲蝕症 dental caries 感染症 ー口腔内常在菌による 多因子性疾患 歯垢 dental plaque (細菌叢) バイオフィルム biofilm 歯質の脱灰・分解 齲蝕の定義 無機質の脱灰 有機質の溶解 自然治癒が期待できない →歯科医療の独立 エナメル質の初期齲蝕は再石灰化現象により回復可能な病変 初期齲蝕では自然治癒が可能(C 0 ) 予防が可能←齲蝕抵抗性という概念 再石灰化反応を積極的に促進させることで、齲蝕予防や進行抑制 齲蝕は、進展したものでも通常は生命を脅かすことが少ない 特徴的症状(歯痛)は生活の質QOLを低下させる 歯という臓器がになう健康維持の基盤を障害 重篤な続発症を惹起する場合もある 口腔細菌の作用 による歯の崩壊 感染症 バイオフィルム biofilm 多糖類を代謝・分解することにより、有機酸を産生し、その有機酸により歯質結晶が溶解 齲蝕の病因論の歴史的変遷 化学細菌説(酸脱灰説) (Miller 1890) 寄生説 (Baumgartner 1911) タンパク溶解説 (Göttlieb 1947) 酸脱灰 ・ タンパク溶解説 (Pincus 1944) タンパク溶解キレート説 (Martins 1954) 齲蝕の病因論の歴史的変遷 化学細菌説(酸脱灰説) (Miller 1890) 歯質の脱灰と有機性基質の溶解の2段階にわけて考えた 歯質の脱灰:食物残渣中の炭水化物が発酵して生じる乳酸 有機性基質の溶解:口腔細菌の蛋白消化作用

齲蝕の病理学 - 新潟大学歯学部...1 齲蝕の病理学 これからの講義で使う写真と図表の殆んどの原板は東京歯科大学口腔超微構造のものであるが、

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  • 1

    齲蝕の病理学

    これからの講義で使う写真と図表の殆んどの原板は東京歯科大学口腔超微構造のものであるが、出典が明記されているものは版権が設定されているので、使用にあたっては注意すること

    1. 総論2. エナメル質齲蝕3. 象牙質齲蝕4. セメント質齲蝕5. 齲蝕予防

    総論

    勉強のポイント

    1) 齲蝕の病因論が説明できる

    2) 齲蝕の原因が説明できる

    3) 齲蝕の好発部位と稀発部位が説明できる

    4) 齲蝕の分類とそのそれぞれが説明できる

    5) 齲蝕の進展様式が説明できる

    6) 急性齲蝕と慢性齲蝕の特徴が説明できる

    齲蝕の病理学

    齲蝕症 dental caries

    • 感染症 ー口腔内常在菌による

    • 多因子性疾患

    • 歯垢 dental plaque (細菌叢)

    バイオフィルム biofilm

    • 歯質の脱灰・分解

    齲蝕の定義

    無機質の脱灰

    有機質の溶解

    自然治癒が期待できない→歯科医療の独立エナメル質の初期齲蝕は再石灰化現象により回復可能な病変

    初期齲蝕では自然治癒が可能(C0)

    予防が可能←齲蝕抵抗性という概念再石灰化反応を積極的に促進させることで、齲蝕予防や進行抑制

    齲蝕は、進展したものでも通常は生命を脅かすことが少ない特徴的症状(歯痛)は生活の質QOLを低下させる歯という臓器がになう健康維持の基盤を障害重篤な続発症を惹起する場合もある

    口腔細菌の作用による歯の崩壊 感染症

    バイオフィルム biofilm

    多糖類を代謝・分解することにより、有機酸を産生し、その有機酸により歯質結晶が溶解

    齲蝕の病因論の歴史的変遷

    1 化学細菌説(酸脱灰説) (Miller 1890)

    2 寄生説 (Baumgartner 1911)

    3 タンパク溶解説 (Göttlieb 1947)

    4 酸脱灰 ・ タンパク溶解説 (Pincus 1944)

    5 タンパク溶解キレート説 (Martins 1954)

    齲蝕の病因論の歴史的変遷

    1 化学細菌説(酸脱灰説) (Miller 1890)

    歯質の脱灰と有機性基質の溶解の2段階にわけて考えた

    歯質の脱灰:食物残渣中の炭水化物が発酵して生じる乳酸有機性基質の溶解:口腔細菌の蛋白消化作用

  • 2

    歯牙硬組織の崩壊

    1、 無機質の脱灰

    →齲蝕の進展

    2、 有機質の溶解

    歯科学報 85:771, 1985

    エナメル質

    脱灰のみで崩壊する.

    象牙質

    脱灰と有機質の溶解が起こらないと崩壊しない.

    (セメント質も同様)

    Fig. I 実物大(元の本の大きさ?)Figs. IV~VI, IX~XI 拡大図Fig. XII 熏煙器(Schaffer:1957)

    Atlas of Oral Pathology, TDC出版部、1955

    齲蝕の歴史は極めて古く、ネアンデルタール人とほぼ同時代と考えられているローデシア人の頭蓋骨に残っていた16本の歯の内10本が齲蝕に罹患していた

    本邦でも縄文人や弥生人の頭蓋骨に残っていた歯に齲蝕の存在を確認

    一般的に「齲蝕」は「虫歯」といわれている

    齲蝕の疫学

    18世紀頃の齲蝕治療の絵

    患者:ヴェネチアの貴婦人場所:薬屋右:僧侶が祈祷している左下:熏煙器を準備する助手 (Pietro Longhi, 1702-85)Atlas of Oral Pathology, TDC出版部、1955

    近世になると齲蝕の発生率の増加

    糖類の甘味料としての消費増大→「齲蝕は文化のバロメーター」

    日本1950年代に砂糖の消費量の上昇にともない齲蝕罹患率も増加

    1980年代以降は乳歯あるいは若年者の永久歯の齲蝕発生率の減少

    齲蝕の疫学

    齲蝕の疫学

    乳歯・若年者の永久歯の齲蝕発生率の減少

    理由

    フッ化物の応用

    口腔衛生に対する関心

    食習慣の変化

    人工甘味料の利用

    新口腔病理学 医歯薬出版 2008

    齲蝕の疫学

  • 3

    齲蝕の疫学

    40歳以上の日本人の齲蝕罹患指数は依然として高い

    570万人が歯とその

    支持組織の疾患で治療を受けている

    齲蝕の疫学 570万人が330万人へ推移

    齲蝕の原因と成り立ち 齲蝕は齲蝕原性菌の感染症

    新口腔病理学 医歯薬出版 2018

    Keys’s triad: カイスの三つの輪

    齲蝕の原性(原因)菌

    Streptococcus mutans 郡

    S. mutans (e・c)S. sobrinus (e・c)

    S. criceti

    Lactobacillus casei (e・d・c)L. acidophilus (d・c)

    Actinomyces viscosus (c)A. naeslundii (c)

    e : enamel cariesd : dentin cariesc : cementum caries

    S. ferusS. macacaeS. downei

    S. ratti

    乳酸桿菌郡:Lactobacillus species

    バイオフィルム 表面:好気的微生物、内部:嫌気的微生物

    グラム陽性桿菌

    齲蝕の原性(原因)菌

    Streptococcus mutans 郡

    S. mutans (e・c)S. sobrinus (e・c)

    S. criceti

    Lactobacillus casei (e・d・c)L. acidophilus (d・c)

    Actinomyces viscosus (c)A. naeslundii (c)

    e : enamel cariesd : dentin cariesc : cementum caries

    S. ferusS. macacaeS. downei

    S. ratti

    乳酸桿菌郡:Lactobacillus species

    グラム陽性桿菌

    S. salivarius

    成人齲蝕:グラム陽性レンサ球菌を主体とした口腔常在菌

    齲蝕の各部位から分離される菌種

    齲蝕部位 分離される細菌

    小窩裂溝 〇 S.mutans group(S. mutans, S. sobrinus)

    △ Lactobacillus sp

    ? Actinomyces sp

    平滑面 〇 S.mutans group

    × S.salivarius

    象牙質 〇 L.acidophilus 〇 L.casei

    〇 A.naeslundii

    △ A.viscosus

    △ S.mutans group

    〇 other filamentous rods

    根 面 〇 Actinomyces viscosus

    〇 A.naeslundii

    △ S.mutans group

    〇 other filamentous rods

    〇:破壊の主たる病因菌△:破壊の従たる病因菌

  • 4

    齲蝕の各部位から分離される菌種

    齲蝕部位 分離される細菌

    小窩裂溝 〇 S.mutans group(S. mutans, S. sobrinus)

    △ Lactobacillus sp

    ? Actinomyces sp

    平滑面 〇 S.mutans group

    × S.salivarius

    象牙質 〇 L.acidophilus〇 L.casei

    〇 A.naeslundii

    △ A.viscosus

    △ S.mutans group

    〇 other filamentous rods

    根 面 〇 Actinomyces viscosus

    〇 A.naeslundii

    △ S.mutans group

    〇 other filamentous rods

    〇:破壊の主たる病因菌△:破壊の従たる病因菌

    口腔細菌の巣窟 バイオフィルム

    細菌をはじめとする微生物は、凝集しバイオフィルムという生態系を作り上げ、それぞれ共棲関係を保ちながら生息していますが、口腔内では、デンタルプラークとして知られています。

    約700種にのぼる微生物が存在しており、口腔バイオフィルムすなわちデンタルプラークには、う蝕病原細菌も歯周病原細菌も共棲しています。

    まず最初に、歯の表面に唾液中のタンパク質が付着しペリクルが形成されます。そして、ペリクルを構成する特定のタンパク質をレセプターとしてそのレセプターに対するアドヘジン(付着因子)をもつS.sunguinis(旧称S.sunguis)、S.oraris、S. mitis、S.gordoniiといったレンサ球菌群が付着し、コロニーを形成。そこにS. mutansやActinomyces属などが共凝集してバイオフィルム(プラーク)は少しずつ成熟していきます。この初期定着群は無害なことが多いので、この時点でクリーニングをしていれば歯周病原細菌などの後期付着菌群が定着することなく、健康は保たれると考えられます。その後、初期定着菌群の表層のタンパク質をレセプターとして付着する細菌が定着・増殖していき、初期定着菌群の代謝産生物を栄養源として代謝を続け、他の菌の栄養となって増殖します。Mutans streptococciなどが合成する粘着性の多糖体(グリコカリックス)により、さらに細菌の付着を容易にします。唾液から微量な栄養素を捕捉し濃縮して唾液や抗菌物質からも守られ、細菌の生息しやすい環境に分布も変化していき、通常は共存できないような多種多様な細菌の共存が可能になります。これが、う蝕や歯周病などさまざまな口腔感染症を生み出す、病原性の高い成熟したバイオフィルムになるのです。この状態にまで成熟してしまうと、もう通常のブラッシングでは除去できません。PTC などプロフェッショナルクリーニングが必要になります。

    バイオフィルムの成熟過程①

    最初に、歯の表面に唾液中のタンパク質が付着しペリクルが形成

    ペリクルを構成する特定のタンパク質をレセプターとしてそのレセプターに対するアドヘジン(付着因子)をもつ S.sunguinis(旧称S.sunguis)、S.oraris、S. mitis、S.gordoniiといったレンサ球菌群が付着し、コロニーを形成。

    そこにS. mutansやActinomyces属などが共凝集してバイオフィルム(プラーク)は少しずつ成熟していきます。

    この初期定着群は無害なことが多いので、この時点でクリーニングをしていれば歯周病原細菌などの後期付着菌群が定着することなく、健康は保たれると考えられます。

    バイオフィルムの成熟過程②

    初期定着菌群の表層のタンパク質をレセプターとして付着する細菌が定着・増殖していき、初期定着菌群の代謝産生物を栄養源として代謝を続け、他の菌の栄養となって増殖

    Mutans streptococciなどが合成する粘着性の多糖体(グリコカリックス)により、さらに細菌の付着を容易にします。唾液や抗菌物質からも守られ、細菌の生息しやすい環境に分布も変化

    う蝕や歯周病などさまざまな口腔感染症を生み出す、病原性の高い成熟したバイオフィルム

    この状態にまで成熟してしまうと、もう通常のブラッシングでは除去できず、PTC などプロフェッショナルクリーニングが必要。

    齲蝕の発生に要求されるプラーク(バイオフィルム)の性質

    1. 分解されにくい.

    2. 水に不溶性である.3. 粘着度が高い.4. 細菌相互の付着・凝集性を高める.5. 歯面への細菌の付着を容易にする.

    6. 酸生産能がある.

    齲蝕病原菌の特性

    1.蔗糖から難水溶性・粘着性の多糖類(不溶性グルカン)を作る.

    不溶性グルカン : 細菌の集合、歯面への付着・停滞作られた酸の拡散防止

    2.蔗糖や不溶性グルカンから有機酸をつくる.

    表面(好気的) Neisseria など:酪酸内部(嫌気的) Actinomyces:乳酸・酢酸・コハク酸

    S. mutans:蟻酸Lactobacillus:乳酸・酢酸・コハク酸

  • 5

    不溶性グルカン

    獲得被膜

    蔗糖

    加水分解

    単糖

    分解 ・発酵

    エナメル質の表面

    バイオフィルム形成

    GTF

    乳酸 ・ 酢酸 ・ 蟻酸など

    脱灰

    澱粉グルカン合成酵素

    GTF:glycosyl transferase

    (細菌の集合と歯面への付着)

    齲蝕の成立: 酸脱灰説の概念 Miller ME., 1890

    歯質

    プラーク

    宿 主 要因個人的要因 :歯種・形態(齲蝕罹患形態:高すぎる咬頭・小窩裂溝)・配列歯質(微量元素を含む)抗齲蝕性微量元素 : F(予防で説明する),Mo,Sr,Cu,Zn など齲蝕誘発性微量元素 : Se,Cd,Mg など溶解性 : 炭酸(↑) 、クエン酸(↑)、 CO3/PO4(↑)、Mg/Ca(↑)

    歯肉の形態(歯周ポケット、歯牙最大豊隆部との関係など)全身状態(糖尿病・胃腸疾患・熱性疾患などによる乳酸発酵活発化)ホルモン : パロチン : 抗齲蝕性 エストロゲン : 齲蝕誘発性

    甲状腺ホルモン:機能亢進(抗齲蝕性)、機能低下(齲蝕誘発性)

    一般的素因 : 民族・人種年齢(歯牙萌出後の年数:歯牙萌出後の成熟)性

    環境因子 : 唾液 (自浄能、分泌量、緩衝能、抗菌能など)(アパタイトの結晶性の向上)(ペリクル:唾液タンパク由来)

    食 事 要因

    ・ 炭水化物・ タンパク質・ 脂質・ ビタミン・ 無機質・ その他サプリメント

    (齲蝕予防食品)

    齲蝕の好発部位・好発歯・稀発歯

    前 歯 : 隣接面、舌面窩付近、唇面歯頸部臼 歯 : 小窩、裂溝、隣接面、頬面歯頸部その他 : 露出根面、歯列不正部、矯正装置装着部

    乳 歯 : 上下顎乳臼歯、上顎乳切歯永久歯 : 第1大臼歯>第二大臼歯>上顎切歯

    >小臼歯>第3大臼歯

    乳 歯 : 下顎乳切歯、上下顎乳犬歯永久歯 : 上下犬歯、下顎切歯

    好発部位

    好 発 歯

    稀 発 歯

    プラーク(歯垢)の停滞しやすい唾液による自浄作用やブラッシングによる清掃が及びにくい解剖学的特徴、歯肉退縮による歯根露出

    永久歯列での歯種別での齲蝕発生率

    円錐の向きに注意

    齲蝕の広がり方:齲蝕円錐

    小窩裂溝齲蝕

    隣接面齲蝕

    エナメル質小柱の方向

    象牙質象牙細管の走行

  • 6

    図説口腔病理学, 医歯薬出版, 1978

    裂溝齲蝕

    Atlas of Oral Pathology, 1978

    平滑面齲蝕

    齲蝕の分類

    1.罹患組織による分類

    2.経過による分類

    3.発生部位による分類

    4.範囲による分類

    5.変化の広がり方による分類

    6.原発齲蝕と再発齲蝕

    罹患組織による分類

    a エナメル質齲蝕 enamel caries

    b 象牙質齲蝕 dentin caries

    c セメント質齲蝕 cementum caries

    エナメル質齲蝕

    東京歯科大学口腔超微構造学講座

    象牙質齲蝕

    図説口腔病理学 第3版、医歯薬出版、1978

  • 7

    第二(刺激・補綴・修復・不整・第三)象牙質齲蝕

    東京歯科大学口腔超微構造学講座

    セメント質齲蝕

    東京歯科大学口腔超微構造学講座

    経過による分類

    a 急性齲蝕 acute caries

    b 慢性齲蝕 chronic caries

    c 停止性齲蝕 arrested caries

    経過による分類

    a 急性齲蝕 acute caries

    b 慢性齲蝕 chronic caries

    c 停止性齲蝕 arrested caries

    速度論+組織性状

    乳幼児から若年者進行速度が速い→表面病巣が小さくても深部へ到達軟化象牙質の形成から歯髄炎へ

    軟化象牙質が少なく、歯では修復象牙質が形成

    臨床的には淡黄色で柔らかく湿潤であれば急性褐色で硬く乾燥していれば慢性

    大きな開放窩洞を生じると歯垢清掃性がよく、齲蝕の進行が停滞

    急性齲蝕と慢性齲蝕の比較急性齲蝕 慢性齲蝕

    好発年齢 若年者 高齢者

    好発部位 咬合面 平滑面

    着色性 弱い 強い

    進行様式

    急速 緩慢

    範囲 深達性 表在性

    穿通性傾向 強い 弱い

    湿潤 乾性

    多い 少ない

    象牙線維・細管感染

    念珠性・平等性象牙細管

    感染様式

    軟化歯質

    性状

    二次的石灰化

    着色 広い 狭い

    破壊様式 膨化~顆粒状離断線維感染→象牙芽細胞方向

    溶解原巣・裂隙

    第二象牙質

    歯髄炎続発

    顕著不明瞭

    漏斗状

    象牙線維のみ

    深部にも存在 表層に少数

    少ない 多い

    末期比較的早期

    拡張様式

    象牙線維

    比較項目

    速度

    停止性齲蝕

    東京歯科大学口腔超微構造学講座

  • 8

    発生部位による分類

    a 小窩裂溝齲蝕 pit & fissure caries

    b 平滑面齲蝕 smooth surface caries

    隣接面齲蝕歯頸部齲蝕根面齲蝕

    小窩裂齲蝕蝕

    口腔病理カラーアトラス医歯薬出版、2001

    平滑面齲蝕

    東京歯科大学口腔超微構造学講座

    裂溝齲蝕

    a. 広い裂溝

    b. 狭い裂溝

    狭い裂溝では底部よりも開口部付近で齲蝕が発生しやすい

    細菌が小窩裂溝の底部まで侵入しにくい

    溶出したイオンが裂溝外に拡散しにくい

    物質移動が妨げられない

    裂溝形態

    裂溝の深さV 型 U 型 I 型 IK 型 その他 計

    浅い裂溝55

    (61.11%)9 4 1 5 74

    中程度の深さの裂溝 20 21(56.75%)

    19 19 4 83

    深い裂溝 15 7 29(55.76%)

    50(71.42%)

    10(52.63%)

    111

    計 90( 10 0%)

    37( 1 0 0%)

    52( 1 0 0%)

    70( 1 00%)

    19( 1 0 0%)

    268

    裂溝の深さと形態の関係

    病巣発生部位浅 中程度 深 計

    開口部のみ

    中間部のみ

    底部のみ

    4(18.18%)

    2(9.09%)

    16(72.72%)

    7(46.44%)

    5(33.33%)

    3(20.00%)

    28(66.66%)

    9(21.42%)

    5(11.90%)

    39(49.36%)

    16(20.25%)

    24(30.37%)

    計 22( 100%)

    15( 100%)

    42( 100%)

    79( 100%)

    裂溝の深さと齲蝕初発部位の関係

    裂溝の型と齲蝕の初発部位

    I IK U V

    裂溝の深さ

    図説口腔病理学第3版、医歯薬出版、1978

    裂溝齲蝕 裂溝の入り口や側壁に齲蝕があることが多い

    急性齲蝕 強い 弱い

    慢性齲蝕 弱い 強い

    食物停滞 容易 困難

    軟化機転 速い 遅い

    拡大様式 深い 浅い

    肉眼所見 なし粗造

    強い滑沢

    歯質崩壊 著しい 少ない

    発生部位による齲蝕性状の比較

    裂溝齲蝕 平滑面齲蝕比較項目

    深度方向 内部 外方

    着色質感

  • 9

    a’

    ba

    c

    d d

    標準保存修復学、第3版、医学書院、1996

    a’

    ba

    c

    d d

    標準保存修復学、第3版、医学書院、1996

    小窩裂溝齲蝕

    隣接面齲蝕

    根面齲蝕

    歯頸部齲蝕

    齲蝕進展範囲による分類

    C1 : エナメル質齲蝕で、象牙質表面が、わずかに罹患したもの.

    C2 : エナメル質および象牙質の齲蝕で、歯髄との間に健康な象牙質が一層介在(残留)するもの.

    C3 : 象牙質齲蝕で、歯髄にまで罹患(感染)したもの.

    C4 : 象牙質齲蝕が著しく、歯冠崩壊をきたしたもの(いわゆる残根).

    C : 齲歯

    C0 : 要観察歯(questionable caries for observation)

    歯髄炎を併発

    C0 C1 C2 C3 C4C3

    https://ja.wikipedia.org/wiki/う蝕

    齲蝕拡大パタンによる分類

    1. 掘削性齲蝕(下掘れ齲蝕・穿下性齲蝕)

    2. 継発性齲蝕

    3. 穿通性齲蝕

    4. 環状齲蝕(小児齲蝕)

    5. 汎発性齲蝕(小児齲蝕)

    6. 哺乳ビン齲蝕(小児齲蝕)

    掘削性齲蝕(→)と

    継発性齲蝕(→)

    図説口腔病理学第3版、医歯薬出版、1978

    a

    b

    c

    a:エナメル葉b:エナメル叢c:咬合面溝

    掘削性齲蝕

    (下掘れ齲蝕)(穿下性齲蝕)

    ・エナメル象牙境で

    側方に拡大する

    ・急性齲蝕、慢性齲蝕

    とは関係ない(組織構造と密接に関係)

    図説口腔病理学第3版、医歯薬出版、1978

  • 10

    継発性齲蝕(secondary caries:内部から外部へ拡大)

    東京歯科大学口腔超微構造学講座

    穿通性齲蝕

    ・極めて狭い領域で、急速に深部へ拡大する

    ・側方拡大の傾向は弱い

    東京歯科大学口腔超微構造学講座

    環状齲蝕(輪状齲蝕)

    東京歯科大学小児歯科学講座

    汎発性齲蝕(暴発性齲蝕・ランパント齲蝕)

    東京歯科大学小児歯科学講座

    哺乳ビン齲蝕

    東京歯科大学小児歯科学講座

    原発齲蝕(primary caries)

    再発齲蝕(recurrent caries)

  • 11

    象牙質

    エナメル質

    象牙質

    プラーク

    充填物

    プラーク

    再発齲蝕標準保存修学第3版、医学書院、1996

    齲蝕の診断

    視 診

    触 診

    X 線

    着 色 度 齲蝕発生例 齲蝕非発生例

    着色なきもの 56 31 (55.4%) 25 (44.6%)淡黄色ないし薄茶色 69 43 (62.3%) 26 (37.7%)茶褐色 83 61 (73.5%) 22 (26.5%)黒褐色ないし黒色 82 58 (70.7%) 24 (29.3%)

    計 290 193 (66.6%) 97 (33.4%)

    窩溝の着色と齲蝕発生との関係

    色沢の状態

    白濁変化 71 54 (76.1%) 17 (23.9%)

    チョ ーク様変化 18 16 (88.9%) 2 (11.1%)

    白変粗造感 141 88 (62.4%) 53 (37.6%)

    計 230 158 (68.7%) 72 (31.3%)

    エナメル質の色沢変化と齲蝕発生との関係

    図説口腔病理学第3版、医歯薬出版、1978

    齲蝕発生例 齲蝕非発生例

    例数

    例数

    東京歯科大学口腔超微構造学講座

    E2

    E1

    D D

    D

    標準保存修復学, 第3版、医学書院、, 1996

    円錐の向きに注意

    齲蝕の広がり方:齲蝕円錐小窩裂溝齲蝕

    隣接面齲蝕エナメル質小柱の方向

    象牙質象牙細管の走行

    歯表面からの

    有機酸の濃度勾配

    →円錐形

    齲蝕の病理:齲蝕円錐隣接面エナメル質にみられる齲蝕円錐

  • 12

    齲蝕の続発症

    ・歯髄炎

    ・根尖性歯周炎

    ・骨髄炎

    ・病巣感染

    ・敗血症

    歯根嚢胞

    歯槽膿瘍

    縦隔炎

    歯根嚢胞 Radicular cyst

    歯髄炎の根尖部への波及治療薬剤の化学刺激

    血行感染↓

    根尖性歯周炎↓

    急性・慢性歯槽膿瘍 → 瘻孔↓

    歯根肉芽腫↓

    歯根嚢胞

    マラッセ上皮遺残増殖代謝産物(水)の貯留肉芽組織による骨吸収

    歯性感染の全身波及

    骨髄炎 → 敗血症・菌血症

    歯性病巣感染

    連鎖球菌感染 慢性歯性炎症の持続

    循環器障害(心内膜炎)

    腎疾患(糸球体腎炎)

    リウマチ性疾患(リウマチ性関節炎)

    皮膚疾患(掌蹠膿疱症)

    口腔内細菌の全身への影響

    全身疾患と歯周疾患との関わり

    う蝕病原細菌は歯の表面でしか増殖することはできませんが、歯周病原細菌は血液中に侵入して増殖できるため、血流に乗って全身に疾患を引き起こす危険性をもっています。

    心筋梗塞で亡くなった方の冠状動脈から歯周病原細菌が検出

    四肢の閉塞性動脈疾患の特定疾患バージャー(ビュルガー)病患者の閉塞動脈からも口腔内と同じ歯周病原細菌が検出

    さらに歯周病原細菌は、細胞壁の内毒素(LPS)によって、生きていなくても血中にあると全身に炎症を起こすこともある

    気道に入り呼吸器系の感染症、肺炎などを引き起こす

    細菌感染による炎症反応で生じたプロスタグランジンなどが子宮を収縮させ、早産や低体重児出産の要因にもなる

    Iwai T, et al.:Oral bacteria in the occluded arteries of patients with Buerger disease; J Vasc Surg.42, 107-15,2005

    ※鴨井久一, 花田信弘, 佐藤勉, 野村義明編:Priventive Periodontology; 医歯薬出版, 東京,2007

    Periodontal medicine 歯周医学

  • 勉強のポイント

    1) エナメル質齲蝕の開始

    2) エナメル質崩壊の原動力

    3) エナメル質の構造変化

    4) エナメル質の齲蝕円錐のできかた

    5) 表面下脱灰の機序

    6) エナメル質の脱灰と再石灰化の機序と意味

    エナメル質齲蝕enamel caries

    齲蝕の病理学

    エナメル質齲蝕の理解を助ける組織構造

    表面付着物:エナメル小皮、獲得皮膜

    表面構造:周波条、小柱遊離端、裸出小柱鞘

    無小柱エナメル質

    内部構造:小柱(走行)、小柱間質、小柱横線

    結晶配列、小柱鞘、レッチウス条

    エナメル紡錘、エナメル葉

    エナメル叢、エナメル象牙境

    エナメル質齲蝕の理解を助ける組織構造

    http://www.deaf-s.tsukuba.ac.jp/sigika/anatomy/04sishusosiki/01enameru.html

    Atlas of Oral Pathology, TDC出版部, 1955

    エナメル質

    象牙質

    エナメル小柱(横断)

    小柱頭部(小柱)

    エナメル小柱(縦断)

    横紋(横線)

    結晶(配向に注意)

    エナメル質の結晶

    歯の発生・組織・病変、医歯薬出版、1995

    結晶(c軸)

    小柱尾部(小柱間質)

    1. エナメル小皮の変化

    2. エナメル質の変化A. エナメル質表面の変化

    B. エナメル質深部へ変化進行

    C. 齲蝕の進展と停滞

    D. 齲蝕円錐の構造

    E. 脱灰と再石灰化

    F. 表面下脱灰

    G. その他(1)耐酸性の獲得(2)組織化学的染色陽性

    齲蝕におけるエナメル質の変化

    アロキサンーシッフシ染色:タンパク質

  • プラークの沈着

    肥厚・膨化

    剥離 分解

    消失

    エナメル質裸出

    図説口腔病理学 第3版、医歯薬出版、1978

    エナメル小皮の変化

    エナメル質表面の変化

    変化は裸出した小柱鞘部から開始する

    口腔病理カラーアトラス 第2版、医歯薬出版、2001

    齲蝕によるエナメル質破壊

    エナメル小柱鞘

    エナメル小柱(体部)

    無小柱エナメル質

    小柱鞘を進むタイプ

    小柱

    小柱鞘

    小柱間質(小柱尻部)

    エナメル質齲蝕:その構造に依存した進行

    無小柱エナメル質→ エナメル小柱鞘→ エナメル小柱

    小柱鞘にそって齲蝕が開始、体部へ進展

    • 有機質が豊富

    • 無機塩と有機成分の結合が弱い

    • 齲蝕の進行に好都合な狭い空間

    (萌出して間もない時期)

    • 水分(液状物)の通路

    • 歯萌出後に成熟して、石灰化亢進

    小柱鞘

    小柱鞘から小柱体部へ進展する → 小柱横線(横紋)小柱鞘が脱灰されると、レチウス条、エナメル小柱横線部が明瞭化

    小柱体部で進行する齲蝕

    エナメル質齲蝕:その構造に依存した進行

  • 変化が小柱体部を進行する理由

    [小柱鞘から小柱体部への移行:小柱横線(横紋)]

    1. 小柱鞘の間隙が小柱体部の結晶間隙より狭い.

    2. 小柱鞘部の石灰化亢進(歯牙萠出後の成熟 post

    eruptive maturation)が進んでいる.

    3. 小柱鞘部に認められる顕微鏡的スペースに唾液成分

    等有機質が浸透し、結晶と強固に結合.

    齲蝕円錐研磨標本の透過光像

    透過光 落下光

    透明域と不透明域が逆転する

    1. 崩壊層

    2. 横線層

    3. 不透明層

    4. 透明層

    エナメル質齲蝕の層構造

    崩壊層

    横線層

    不透明層 透明層

    エナメル質齲蝕には層構造がある

    1. 崩壊層

    2. 横線層

    3. 不透明層

    4. 透明層

    研磨標本による観察 脱灰すると消失する

    崩壊層

    エナメル質本来の構造を失った無構造な層

    外来性色素による着色がみられる

    エナメル質齲蝕病巣の主体をなす部分(ある程度の脱灰により、均質無構造にみえた)

    エナメル小柱の微細構造が明瞭化することによる

    レッチウス条・エナメル小柱横線(横紋)部が明瞭にみとめ

    られる

    横線層の成因

  • 不透明層の成因

    1. 脱灰によって生じた空隙に小気泡が侵入.(封入剤 ×)

    2.脱灰によって遊離した無機塩が開大した結晶間隙に沈着.(沈着結晶:粗大・異種の場合)

    透過光で暗く見える層

    透明層の成因

    1. 脱灰によって遊離した無機塩が開大した結晶間隙

    に沈着.(沈着結晶:大きさ・種とも正常と同一の場合)

    2. 病巣の更に深部(光顕では無変化)から溶出

    した無機塩が微細な結晶間隙に沈着.

    3. 脱灰によって生じた空隙に封入剤が侵透.

    透過光で明るく見える層

    エナメル質の脱灰は結晶の溶解から

    脱灰:結晶が溶解すること

    エナメル質結晶

    中心穿孔

    刃状転位

    らせん転位

    エナメル質結晶内に格子欠陥が生じる

    歯科学報 89:1441, 1989刃状転位 らせん転位

    Ca P O H

    c-axis

    a-

    axis

    Screw axis

    Ca

    Sの欠落

    Adv Knowl Xylitol Effect, Korea Caries Prevent Ass, 2002

    S:screw axis Ca

    CO:columnar Ca

    P:PO4

    原子空孔

    小角粒界

    原子の回転

    S OHS

    S

    OH

    エナメル質結晶の中心穿孔は拡大していく

    中心線条像

    A B

    C D

  • 中心穿孔

    •結晶内部の構造異常(欠陥)部から

    (中心線条は脱灰に対しむしろ抵抗)

    •中心穿孔は齲蝕による

    → エナメル質結晶溶解の特徴

    •異常エナメル質結晶が極めて多い.

    ・ 破壊(溶解)された結晶部分の修復

    ・ 新生結晶の出現

    ・ 溶け残っている結晶の成長

    脱灰されたエナメル質は石灰化する

    再石灰化 欠陥結晶の修復過程形態変化は歯萌出後の結晶成熟過程と類似

    Adv Knowl Xylitol

    Effect, Korea Caries

    Prevent Ass, 2002

    歯科学報89:1441,

    1989

    口腔病理カラーアトラス, 医歯薬出版, 2001

    A B C

    60

    °

    8.12Å

    8.17Å60

    °

    日本歯科医師会雑誌46:1167,1994

    9.43

    フルオロアパタイトfluorapatite

    再石灰化過程で出現する新生結晶

    ハイドロキシアパタイト hydroxyapatite

    歯科学報 89:1441, 1989J Election Microsc 52:605, 2003

    溶け残っている結晶の成長

    Tooth Enamel Ⅳ, Elsevier, 1984

    ウィトロカイトwhitlockite

    再石灰化で生じる齲蝕結晶:ウィトロカイト

    最表層高石灰化層に認められる結晶

    hydroxyapatitefluoridated‐hydroxyapatitefluorapatite など

    新口腔病理学 医歯薬出版 2008

    エナメル質表層での再石灰化反応

    エナメル結晶の溶解と第二リン酸カルシウムの沈殿

    歯質から溶出したフッ素イオンが沈殿反応に寄与し、フッ素化アパタイトへ

    歯質のフッ素含有量の増加耐酸性の向上

    炭素含有アパタイトからフッ素化アパタイトへの転化

  • エナメル質齲蝕病巣の脱灰巣(X線像)に残存するハイドロキシアパタイト結晶(c軸)のサイズ

    結 晶 厚 径

    平 均 範 囲 S,D. S.D.範 囲

    健常(対照) 275.9 140.0~459.9 64.7 477.6 275.1~ 780.0 120.0

    自然齲蝕 328.4 238.9~599.9 65.4 653.4 372.2~1,055.5 123.8

    人工齲蝕 426.9 325.9~585.2 61.8 667.7 465.5~824.6 106.4

    単位:Å

    S.D.:標準偏差

    平 均

    結 晶 幅 径

    歯科学報 89:1441, 1989

    結晶厚径

    結晶幅径

    新口腔組織学図説, わかば出版, 1995

    小柱鞘部

    再石灰化と類似した発育にともなう生理的現象→齲蝕の再石灰化は硬組織の自然治癒

    歯の萌出後にエナメル質結晶は成熟する

    新生結晶の出現

    既存結晶の成長

    小柱体部

    萌出直後~数年を経過した結晶

    口腔病理カラーアトラス, 医歯薬出版, 2001

    表面下脱灰:再石灰化の進んでいない領域の残存平滑面齲蝕の特徴と言われているが、裂溝部でもこの現象が発現している.

    朝食 昼食 夕食就寝

    齲蝕(a>b)

    再石灰化(石灰化亢進)

    (歯牙萠出後の成熟)(a<b)

    再 石 灰 化

    脱 灰

    再石灰化の程度が脱灰の程度を常に上回っていれば齲蝕には罹患しない。

    齲蝕に罹患したとしても、それが初期のものであるなら、再石灰化の程度を増強してやれば自然治癒が期待できる

    健康な歯(a=b)脱灰の程度=再石灰化の程度

    再石灰化(b)

    脱灰(a)

    plaque pH

    a

    b

    日歯会誌 56:517, 2003

    5.5

    6.5

    健全歯:脱灰と再石灰化のバランスが取れた状態

    a a a

    b b b

    健全歯:脱灰と再石灰化のバランスが取れた状態

    再石灰化の程度が脱灰の程度を常に上回っていれば齲蝕には罹患しない。

  • 齲蝕病変:脱灰と再石灰化を繰り返す動的なもの

    標準保存修復学第3版、医学書院、1996

    Saliva, food

    再石灰化脱灰

    エナメル質齲蝕 脱灰と同時に再石灰化も

    再石灰化脱灰

    エナメル質初期齲蝕 白斑病変

    肉眼所見

    透明感の消失白濁した病変一部が褐色に着色

    白斑病変で表面維持→有機酸の歯質内への浸透細菌自体の侵入はまだ

    表層下脱灰

    新口腔病理学 医歯薬出版 2008

    齲蝕の病理:齲蝕円錐隣接面エナメル質にみられる齲蝕円錐

    エナメル質初期齲蝕 白斑病変

    透明感の消失白濁した病変一部が褐色に着色

    軟化崩壊(実質欠損)

    白斑病変で表面維持→有機酸の歯質内への浸透細菌自体の侵入はまだ

    表層破壊にともない細菌侵入

    肉眼所見

    新口腔病理学 医歯薬出版 2008

    表層下脱灰の成立⇔齲窩形成

    新口腔病理学 医歯薬出版 2008

  • エナメル質齲蝕病巣に認められるその他の現象

    1.耐酸性の獲得

    2.齲蝕病巣は組織化学染色に陽性

    ・脱灰により無機塩が遊離.

    ・上記に伴い、元来存在していた有機質、

    特に多糖体や脂質が露出(?)

    ・唾液成分や細菌などに由来する.外

    来物質としてのタンパク質、中性ならび

    に酸多糖体、脂質等の混入.

    唾液より残存結晶が

    取り囲まれる

    脱灰されにくい環境

    アロキサンーシッフシ染色:タンパク質

    本来の組織が反応したものか,外来性の物質が反応したものかの検討が必要

    判定は深腸に!

    cariology_L20181019-1cariology_L20181019-2