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骨髓体外組織培養法によるアドレナリン,コ ーチゾン, ACTHの ...ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/1/19537/... · 2020. 8. 7. · 図1 下垂体剔出後の血液像の変動

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    骨 髓 体 外 組 織 培 養 法 に よるア ドレナ リン,コ ーチ ゾン,

    ACTHの 白血 球 系特 に好酸 球 に及ぼ す影 響 に関 す る研 究

    -特 に好酸球減少の機転 を中心 と して-

    第 二 編

    ア ドレナ リン,コ ー チ ゾン, ACTHに よる好酸球減 少の機 転 と

    下 垂体 との関 係(主 として骨髄 体外組 織 培養 法 に よる)

    (本論文要旨は第3回 日本内分泌学会西 日本地方会,第65回

    岡山医学会総会,第18回 日本血液学会総会に於て発表 した.)岡山大学医学部平木内科(主 任:平 木 潔敎 授)

    副 手  山 本 伸 郎

    〔昭 和31年3月28日 受 稿 〕

    目 次

    第一章  緒 言

    第二章  実験材料及び実験方法

    第一節  実験材料

    第二節  実験方法

    第一項  下垂体剔出術

    第二項  好酸球数算定法並に血液像検

    第三項  骨髄 体外 組織培養法

    第三章  実験成績

    第一節  下垂体剔出犬に対するア ドレナ

    リン,コ ーチ ゾン, ACTH及 び

    Adrexの 影響

    第一項  下垂体剔出後の血液像の変化

    第二項  下垂体剔出犬に ア ドレナ リン

    を投与せ る場合

    第三項  下垂体剔出犬に コーチ ゾンを

    投与せ る場合

    第 四項  下垂体剔出犬にACTHを 投

    与せ る場合

    第五項  下垂体 剔出犬にコーチ ゾンと

    Adrexを 同時に投与せ る場合

    第二節  下垂体 剔出犬骨髄 組織培養に対

    す るコー チゾン, Adrexの 影響

    -特 にコー チゾンの好酸球に対

    す る作 用機転に就 て-

    第一項  無添加下垂体 剔出犬骨髄 培養

    所見

    第二項  下垂体 剔出犬骨髄 組織培養に

    コーチ ゾン(0.005~0.01mg)

    を添加 した場合,及 び コー チ

    ゾンとAdrexを 同 時に 添 加

    した場合

    第四章  総括並に考按

    第五章  結 論

    第一章  緒 言

    血球が ホルモン調節を受けている53)事は,

    下垂体又は副腎 皮質疾患に際 して血液像 の変

    化116)45)を 来す事に よつて も分 り,又 正常な

    人間に於 て男女両性 の相異に よつて血球数に

    差がある事 も内分泌腺 の関与を物語つている.

    従つて常時分泌 されているホルモンがその均

    衡 を破 つて多量に分泌 され る場合,又 は反対

    に極度に減少す る場合には,生 体反応の変動

    に伴つて血液 の面で も変化を見得 る事は当然

    考 えられる.前 編 に於 て述べた如 く,生 体 防

    禦機序102)の 一環 としての好酸球減少 を見 る

    のもその例えに洩れ るものではない.而 して

    その際血液に関聯 のあ る内分泌腺は多々ある

    中,最 も上位に位 し且つ支配的役割 を果 して

  • 770  山 本 伸 郎

    い るのは,白 血球系は勿 論赤血球系に対 して

    も下 垂体53)であ るとされている.就 中好酸球

    の消長に対 してはその意義が大 きい.即 ち好

    酸球の 特異 な消長に関 しては古 くよ り注 目せ

    られ,そ の機転を追求せ られ て来た事は既に

    前編 に述べたが,更 に下垂体副腎皮質 との関

    係に就 て も近年その業績は次第に詳細に亙 つ

    て来ている.扨 て下 垂体前葉か ら分泌 され る

    ACTHに よつ て,副 腎 皮質 ホルモンのレベル

    を一様に保つべ く調節 され てい る事は周知 の

    事である.然 し一旦生体 が危険反応刺戟に曝

    露 され る と, stress後 僅 か数 秒以 内にACTH

    の分泌 が 起 り, ACTHの 血 中レベル83)は 上

    昇 して副腎皮質 ホル モン を分泌 す るに至 り,

    その結果好酸球及び淋 巴球は減 少し逆に好 中

    球は増多す る事39)64)22)にな る.従 つてACTH

    を投与 して も同様の血球 の変動 を見得 るので

    あつ て,副 腎 皮質機能検査 法 としてのThorn

    のtest116)は 此 の理論を応用 した ものであ る

    事は云 う迄 もない.次 に コーチゾン(以 下 コ.)

    投与に よつて も同様 の結果を得 る事 も広 く認

    め られ94)24)116)59)て はい るが,前 記ACTH-

    好酸球減少が100%コ.-好 酸球減少に基 くも

    のかど うかは判然 とは云 えない.扨 て一方ア

    ドレナ リン(以 下ア.)に よつて も同様の血球

    の変動が来得 る事はBartelli (1910)3)の 実験

    以来知 られている.之 に就 てLong (1945)64)

    等は ア.は 下 垂体を介 して好酸球減少を起す

    と考えてお り,之 に対 してSpeirs (1948)109),

    Pickford (1951)93),田 坂(1953)115),沖 中

    (1953)84),石 橋(1955)47)等 は ア.は 直接副

    腎皮質 に働 く可能性を示唆 してい る.此 の様

    にア.,コ., ACTHの3者 に よつて略 々同一

    の血球変動を見得 る事は事実であるが,夫 々

    のtestと 内分泌調節の最高位 中枢た る下 垂

    体 との相互関係に就ては今 一歩明瞭を欠 き,

    隔靴掻痒 の感な しとしない.そ こで私は下垂

    体 との関係 を最 も端的に究明せんがため下垂

    体 剔出犬(垂 剔犬)に 就 き各testを 行 い,更 に

    コ.-testに 就 ては骨髄組織培養法 を応用 して

    下 垂体 との関係 を深 く追求 した結果,卿 か興

    味あ る知見 を挙げ る事が出来 たので茲に報告

    す る次第である.

    第二章 実験材料及び実験方法

    第一節 実験材料

    体 重10kg前 後 の健 康 雄 性 犬 で,糞 便 中虫

    卵 陰性,血 液 像が 正 常範 囲 に あ る ものを撰 択

    使 用 した.下 垂体 剔 出術 施行 後1ケ 月以上 を

    経 過せ る犬 に就 て諸検 査 を行 う と共 に,同 様

    術 後1ケ 月以上 の もの を撲 殺 し,そ の大 腿骨

    々髄(右)を 培 養材 料 として使 用 した .コ.は

    米 国 メル ク 社 製(11-Dehydro 17-Hydroxy-

    corticosterone)を, ACTHは 米国 アー マー社

    製,ア.は 三 共 製薬 の ものを使 用 した.尚 豚

    副 腎 皮質 製 剤Adresは 三 共 製 薬 の も の を 使

    用 した.

    第二節  実験方法

    第一項 下垂体剔出術

    東大沖中内科の方法58)及び石川氏法58)を参

    考にして側頭1側 法を施行 した.麻 酔は塩酸

    モル ヒネ(3%溶 液)をper kg 0.3cc使 用し,

    ラボナール(0.3mg)で 追加麻酔を行 い,標

    準点に達 して後15秒 間 中止 し,更 にそれ迄の

    量 の1.5倍 量を追加 し残 りは筋注 した.固 定

    は特殊 な固定 台を作製 し,そ の上に躯幹を正

    常位のま ゝ乗せ,四 肢をぶ らさげて緊縛 し,

    口腔を開 き鉄棒 を噛 ませ て緊縛す.

    頭部 の角度は右側に軽 く廻転 した位置に固

    定 する.消 毒は手指には逆性石鹸液を,術 野

    にはマーキ ュロアルコールを使用 した.術 式

    に就 き沖中内科の方法 と異る点は,① 皮膚は

    正中切開し,側 頭筋 の上縁附着部を可及的に

    剥離 し, A. & V. temporalisを 残 して切離す

    る.②  硬脳膜は十字切開を行い,③  特殊 ス

    パーテルに より脳底を挙上 し下垂体を剔出す

    る.術 後処置は直ちに高張糖液(40%),強

    心剤(各 種)等 一定 の間隔で投与す る.

    第二項  好酸球数算定法及び血液像検査

    好酸球はHinkleman氏 液を用い40) Fuchs

    Rosenthal計 算盤で 直接実数を算定 し,血 液

    塗沫標本 も併せ検討 した.又 好酸球減少度の

    判定は減少せざ るもの(-),多 少減少す るも

    の弱(+),可 成 り減少す るもの(40~50%)

  • 骨髄体外組織培養 法に よるア ドレナ リン,コ ーチゾン, ACTHの 白血 …… 云 々  771

    (+),著 明に減少す るもの(〓)と した.

    第三項  骨髄体外組織培養法

    前編に詳述せ る如 く被覆法(Carrel & Fi

    sher)に よつた.培 養材料は垂剔 犬 骨髄 を用

    い,支 持体には正常犬 ヘパ リン加血漿並に垂

    別犬ヘパ リン加血漿 を使 用 し,発 育促進物質

    には垂別犬脾エ キスを作製 して添加 した.観

    察はすべ て37℃ 保温箱内で行い,組 織増生

    及び細胞遊走速度はア ツベの描画器 を以 て測

    定し,プ ラニ メーター及 び曲線計に より計算

    した.好 酸球 の密度は好 中球50に 対す る個数

    を以て計算 した.尚 各添 加液濃度は前編を参

    照し,コ.は0.005~0.01mgを, Adrexは

    0.05I. U.を 夫々添加 した.

    第三章  実 験 成 績

    第一節  下垂体別出犬に対す るア ドレ

    ナ リン,コ ーチゾン, ACTH

    及びAdrexの 影響

    第一項  下 垂体剔 出後の血液像の変化

    (図1)

    図1に 示す如 く血色素は術後9日 頃最低に

    達し,後 再度上昇す るが術前値 よ り低 く,そ

    の後は多少の起伏 を伴いつ ゝ減少の傾向を辿

    る.

    図1  下垂体剔 出後の血液像の変動

    赤血球数は大体血色素 と同様の経過を辿 る

    が,最 高最低の起伏が多少遅れ る.又 血色 素

    に比 し減少率は低 い.即 ち低色素性貧血 を呈

    する.好 酸球数 と白血球数は,術 後第1日 に

    白血球数は最高 に達 し,同 時に好酸球数 は極

    度に低下す る.後 白血球数は一旦低下 してか

    ら再び上昇 した後は次第に減少す るが,好 酸

    球数 は第3日 に最高に達 し,後 一旦減少 して

    10日 を過 ぎると再び増加 し, 16日 頃に山を形

    成,更 に約2週 間毎に山を形成 し,そ れ等は

    一旦軽 く低下 しなが らも術前 より高 い所を辿

    つて絶対数は次第に増加す る.以 上 の如 く血

    液像 が一定 の傾向を示 した ものを撰 んで下垂

    体 別出後1ケ 月を経て ア.,コ., ACTH及 び

    Adrexを 投与 してその影響を観察 した.

    第二項  下垂体別出犬にア ドレナ リンを

    投与せ る場合(表1,図2)

    第1表  下垂体別出犬に アドレナリン投与

    (a)

    (b)  下垂体剔 出犬にア ドレナ リン投与

    (c)  正常犬にア ドレナ リン投与

    ア.はper kg 0.1ccを 投与す るに表1(a)

    図2に 示す如 く対照犬では明かに好酸球減少

    (減 少率-45%)を 来す も,垂剔 犬では弱(+)

    (減 少率-8.4%)で,対 照犬に比べ て減少度

  • 772  山 本 伸 郎

    は低い.又 垂剔 犬では注射後2, 3時 間値が

    低下す る傾向にある(2時 間値減少率-23.4

    %). 次に白血球数は対照犬に比べ垂剔 犬の

    方が変動が少い.白 血球百分率に於 て も大体

    以上 と同様 の結果を得た(表1(b) (c)).

    図2  下垂体剔 出犬にア ドレナ リン投与

    好酸球減少率

    --垂剔犬……正常犬

    白 血 球 数 変 動

    -- 垂剔 犬……正常犬

    第三項  下垂体剔 出犬に コーチ ゾンを

    投与せ る場合(表2,図3)

    コ.をPer kg 1.25mg投 与するに表2(a)

    図3に 示す如 く対照犬では明かに好酸球減少

    (減少率-46.6%)を 認め るのに反 し,垂 剔

    犬では殆 ど有意の減少を見ず(減 少率+1%),

    更に対照犬 の倍量即 ちper kg 2.5mgを 投与

    す るも同様 の結果であつた(減 少率+1.1%).

    又白血球百分率に就て も同様 の傾向 を認 めた

    (表2(b) (c)).白 血球数は対照犬及び垂剔犬

    共に増多 の傾向にあるが,上 下 の変動は垂剔

    犬 の方が少い.

    第2表  下垂体剔出犬に コー チゾン投与

    (a)

    (b)  下垂体剔出犬にコーチゾン投与

    (c)  正常 犬 に コー チ ゾ ン投 与

    図3  下垂体剔出犬にコーチゾン投与

    好酸球減少率--垂剔犬

    ……正常犬

  • 骨髄 体 外 組 織 培 養 法 に よ るア ドレ ナ リン,コ ー チ ゾ ン, ACTHの 白血 …… 云 々  773

    好 酸球減 少率

    白 血 球 数 変 動

    -- 垂剔犬……正常犬

    第 四項  下垂体 剔出犬にACTHを 投与

    せ る場合(表3,.図4)

    ACTHをPer kg 0.51. U.投 与す るに,対 照

    同様垂剔犬で も著明な好酸球減少を示すが,

    此の際対照犬の好酸球減少率(-42.9%)に

    比べ垂剔犬の方が高い好酸球減少率(-51.2

    %)を 示す例が多い.白 血球百分率 に於 ても

    之を確認 した.又 白血球数 の変動は垂剔犬の

    方が少い(表3(b) (c)).

    第3表  下垂体剔出犬にACTH投 与

    (a)

    (b)  下垂体剔出犬にACTH投 与

    (c)  正常犬にACTH投 与

    図4  下垂体剔出犬にACTH投 与

    好酸球減少率

    好 酸 球 減 少 率

    --垂剔犬……正常犬

  • 774  山 本 伸 郎

    白血 球 数 変 動--垂剔犬……正常犬

    第五項  下 垂体剔出犬に コーチゾンと

    Adrexを 同時に投与 した場合

    (表4,図5)

    コ. per kg 1.25mgとAdrex 20単 位 を同

    時 に投 与 す るに,表4 (a)図5に 示 す如 く明

    か に好 酸 球 の減 少 を見 る(減 少 率-55.5%) .

    而 して 同量 の コ.の み では 有 意 の好 酸球 減 少

    は 見 て いな い(前 述).更 にAdrex 20単 位 の

    み の投 与 では 有 意 の好 酸 球 減少 は 見 られ な か

    つ た(減 少率-14.5%) .白 血 球 百分 率 で も

    上 記 と同様 の結 果 を得 てお り(表4(b) (c)),

    Adrexの み では 好 酸 球減 少 は 見 て い ない.

    第4表  下 垂体 剔 出犬 に

    (a)  コー チ ゾ ン+Adrex投 与

    (b)  下 垂体 剔 出犬 に

    コー チ ゾン+Adrex投 与

    (c)  下 垂体 剔 出 犬 にAdrex投 与

    図5  下垂体剔出犬に

    コーチゾン+Adrex投 与

    好 酸 球 減 少 率

    白血 球 数 変 動

    第二 節  下垂体剔出犬骨髄組織培養に

    対するコーチゾン, Adrexの

    影響-特 に コーチゾンの好酸

    球に対する作用機転に就 て-

    第一項 無添加下垂体剔出犬骨髄培養所

    培養材料は垂剔犬骨髄を,支 持体は副腎皮

    質ホルモンを可及的に含 まない垂剔犬血漿 と,

    正常に含む正常犬血漿 との二つに分け,発 育

    促進物質には垂剔犬脾エキスを用いて培養せ

  • 骨髄 体外 組織 培 養法 に よ るア ドレナ リン,コ ー チ ゾン, ACTHの 白血 … … 云 々  775

    る所,写 真(1)に 見 られ る様に,両 者共増生

    帯に遊 出す る遊走細胞の約半数乃至1/3に 好

    酸球を認め よ く運動 していた.尚 好酸球に就

    ては特に幼若 と思われ る細胞は見 られず殆 ど

    成熟形であつた.

    写 真1

    第二項  下 垂体剔出犬 骨髄 組織培養にコーチ ゾン(0 .005~0.01mg)を

    添加 した場合 及び コーチゾンと

    Adrexを 同時に添加 した場合

    培養には垂剔犬血漿 を用いたもの と正常犬

    血漿を用いたもの とに分け,特 に好酸球に対

    する影響を中心に比較検討 した.尚 発育促進

    物質 として垂剔犬脾エキスを使用 した為,早

    く変性死亡が現れ12時 間値迄を採用 した.

    以下各4例 の平均値 に就て述べ る.

    (1)  比較成長価及び細胞密度(表5(a)

    図6)

    コ.添 加の場台の正常犬血漿使用では12時

    問値2.2を 示すが,垂 剔犬血漿使用では4.3

    で増生が促進 されてい る.之 は遊走細胞 の大

    半を 占める好酸球の遊走機能が増 大した結果

    に よるものである.又 細胞密度 指数は垂剔犬

    血漿使用 の方が稍 々高い傾向にある.次 に コ

    とAdrexを 同時に添加せ る場合では12時 間

    値が 正常犬血漿使用で1.2,垂 剔犬血漿使用

    では1.3と 両者に差を認めない.

    (2)  好酸球遊走速度(表5(b)図6)

    第5表

    (a)  正常犬 血漿使 用比較成長価平均 下垂体剔出犬血漿使用比較成長価平均

    最 も特徴ある所見を示す  即 ちコ.添 加の

    場合,垂 剔犬血漿使 用では3時 間値21.5μ/m

    を示すのに対 し,正 常犬血漿使用では3.4μ/m

    と両 者の間に著明な差 を認め,又 好酸球運動

    形態 も正常犬血漿使用 の方は丸 くなつ てい る

    のが多 く細胞機能障碍が明 らかであるが,垂

  • 776  山 本 伸 郎

    (b) 正常犬血漿使用好酸球遊走速度平均

    (c)  正常 犬血漿使用好酸球数平均

    (対 ・好中球50)

    (d)  正常犬血漿使用好中球遊走速度平均

    下垂体剔出犬血漿使用好酸球遊走速度平均

    下垂体 剔出犬血漿使用好酸球数平均

    (対 ・好中球50)

    下垂体剔出犬血漿使用好中球遊走速度平均

    図6  下垂体剔出犬骨髄組織培養にコーチゾン添加

    ○ 正 常 犬 血 漿 使 用  ● 下 垂 体 剔 出 犬 血 漿 使 用

    -- コ.添 加  … … コ.+ア ドレ ツク ス添 加

    比 較 成 長 価

    好 酸 球 遊 走 速 度

    好酸球数(対 ・好中球50)

    好 中球 遊 走 速 度

  • 骨髄 体外 組 織 培 養 法 に よ る ア ドレ ナ リン,コ ー チ ゾ ン, ACTHの 白血 …… 云 々  777

    剔犬血漿使用 の方は無添加 の場合 と同様活溌

    に偽足運動を行つ てい る.又 逐時的に追求す

    るに,正 常犬血漿使用 の方は早 く変性死亡す

    る.弦 で垂剔犬血漿使用の方 にコ.とAdrex

    を同時に添加す る と,正 常 犬血漿使 用にコ.

    を添加 した場合 より強 く好 酸球機能の障碍が

    見られ る.そ して此 の際は正常犬血漿使用 の

    方にコ.とAdrexを 同時に添加せ るもの と有

    意の差がな くなる.即 ち コ,とAdrexを 同時

    に添加 した 正 常 犬 血 漿 使 用 で は3時 間 値

    1.2μ/mに 対 し,垂 剔犬血漿使用は1.0μ/m

    である.

    (3)  好酸球数(表5 (c)図6)

    コ.添 加 の場 合正常犬血漿使用では垂剔犬

    血漿使用のものに比べ てその約20~30%少 い.

    即ち12時 間で正常犬血漿使用10.5に 対 して

    垂剔犬血漿使用 は16.0で あ る.次 にコ.と

    Adresを 同時に添加 した場 合は両者共著明に

    低下が見 られ る.即 ちコ.の みを添加 した場

    合に比べてコ.とAdrexを 同時に添加した場

    合は,正 常犬血漿使用では前者 の約30%少 く,

    垂剔犬血漿使用 の場合 も前者 の約50%少 い.

    之は好酸球が著明に機能 を障碍 され る結果,

    増生帯に遊走 して来ない為 と考え られ る.

    (4)  好中球遊走速度(表5 (d)図6)

    コ.添 加 の場合は正常犬血漿,垂 剔犬血漿

    使用共に3時 間 値が最 も高 く夫 々6.0μ/m,

    6.3μ/mを 示すが,そ の後逐時的に追求す る

    も図に示す如 く両者に大差はない.又 コ.と

    Adrexを 同時に添加 した場合では コ.単 独の

    時 より稍々遊走速度の低下を来 しているが,

    両者に於け る差は認 められない.

    第 四章  総 括 並 に 考 按

    生 体 に ス トレ スが加 わ つ た場 合 の適 応 症 候

    群 の一環 で あ る好 酸球 減 少 に就 ては, 1939年

    Dalton15)が 之 を 認 め て以 来, Vogt (1944)122),

    Long (1945)64)等 に よ り末 梢血 好 酸 球減 少が

    ア.に よつ て も起 り得 る事 が 明か とな り,更

    に夫 に就 てLongは 下 垂 体 前 葉(ACTH)直

    接刺 戟説 を 提 唱 した.次 で1948年Thorn116)

    はACTH投 与に よ る特 異的 な 好 酸球 減 少 作

    用 を確 認 し,之 が副 腎 皮質 ホ ル モ ンに よつ て

    起 る事 を示唆 し てACTH-testを 公表 す るに

    至 り,更 にRecant95), Thorn (1950)等 は ア.

    投 与 に よ る好 酸 球減 少作 用 は,専 ら下 垂 体 副

    腎 皮質 系 の健 全 性 に懸 る事 を指 摘 して,副 腎

    皮質 機能 検 査 法 として の ア.-testを 提 唱 した.

    然 しそ の作 用機 転 に 関 し ては種 々 の異 論が あ

    る事 は先 に も述 べ た 通 りで あ る.又 コ.の 好

    酸 球 減少 作 用 は 勿 論 認 め ら れ てお り94)116)21),

    又 コ.はACTHに よつ て分 泌 され る事64)122)

    も周知 の事実 で あ る.然 し乍 ら コ.の 好酸 球

    減少機転に関してはACTH-好 酸球減少機転

    と全 く同一であるとは云い得 ない ものがあ り,

    薙に も又復雑な問題が包蔵 されている様であ

    る.斯 くの如 くア.,コ., ACTHの3者 に よ

    つて略 々同一 の好酸球減少を見得 る事は事実

    ではあるが,夫 々のtestの 作用機転或はその

    性格 に就 ては必ず しも同一の もの とは思われ

    ず,特 に下垂体 との相関々係に就 ては不明瞭

    な点 も多い.以 下之等 の点に就 て3つ のtest

    に関す る文献的考察 を行 い,次 で私の垂剔動

    物 の実験デー タに言及する.

    先ず ア.,コ., ACTHに よる好酸球減 少 は

    その強 さに於て差があ る事 が 認 め られ て い

    る.即 ち竹 田(1955)114)はACTH,コ.,ア.,

    DOCA, DOCA+Vit. Cの 夫々を同一患者に施

    行比較 した所,流 血中好酸球に対す る作用は

    ACTH,ア., DOCA+Vit. C,コ., DOCAの

    順に強 いので,副 腎皮質機能検査 法 としては

    ACTHを 用いた方法が最 も有効確 実であ ると

    云つ てい る.

    次に之等ア.,コ., ACTH 3者 の作用 機転

    に就ても前述 の如 く全 く同一 の反応 とは云い

    難 く,換 言すれば之等3者 は夫 々独 自の作用

    機序 を有す るもの と考 えられ るのであつ て,

    その事に就 ては前編に述べ た通 りである.而

    して夫 々の作用機序 の詳細に関 しては,最 高

    位 中枢たる下垂体 との相関々係を明かにす る

    事が先決であ る事は論 を俟 たないが,現 在迄

    の所 異論あ りて明確 を欠 く所が多い.即 ち此

    の点に関 して先ず ア.-bestに 就 て, Long (1945

    ~1950)64)は 下垂体 前葉剔出後,之 を1側 前

  • 778  山 本 伸 郎

    眼 房 に 自己 移 植 した 白鼠 に少 量 の ア.を 皮下

    注 射 す る と,副 腎 ア ス コ ル ビ ン酸 減 少 の他 に

    末 梢 血 好酸 球減 少 を 見 るが,移 植 眼 摘 出後 は

    之 を 認 めず,又 下 垂体 移 植 側 眼球 に極 め て微

    量 の ア.を 直接 結膜 下 注射 す る と,尚 よ く副

    腎 皮質 ア ス コ ル ビ ン酸 減 少,好 酸 球 減少 を認

    め る のに 反 し,非 移植 側 に同様 注 射 を行 つ た

    ので は 之等 の反 応 を認 め難 い事 か ら,ア.は

    下 垂 体(ACTH)を介 して 副腎 皮質 に作 用 す

    る事 を提 唱 した.又 同氏 は 正常 白鼠 はACTH,

    副 腎 皮質 ホ ル モ ン,ア.に よ りす べ て 皮質 ア

    ス コル ビ ン酸,コ レス テ ロー ル の著減 を見 る

    が,垂 剔 後は ア.だ け が 此 の反 応 を 消失 す る

    と云 い,ア.のACTH分 泌作 用 を推 定 して

    い る.此 のLongの 説 に 賛 同 す る も の に

    Cheng (1949)14), McDermott (1950)70), For

    tier (1949)25), Recant (1950)95)等 が あ り,

    McDermottは 同 じ く垂 剔動 物 に対 す る下 垂体

    自家移 植 に よ り好 酸 球 減少 を含 む ス トレス 反

    応 に 正常 と差 を認 め な い事 を発 表 してい る.

    然 し乍 ら石 橋(1955)47)は 垂 剔 犬に於 け る少

    量 の ア(0.3~0.5mg)投 与が 副 腎 静 脈 血 中

    Chemocorticoidの 増 加 を来 す事 を確 め てお り,

    又 一 方Speirs (1951)109)は 垂 剔動 物 に ア.で

    約50%の 好 酸球 減 少 を認 め,Ruppel (1951)100)

    も之 と同 様 の事実 を,又Gordon (1951)29)は

    副 腎 摘 出 動 物 に 同様 の結 果 を 得 て,共 にLong

    の説 に 懐 疑 的立 場 を とつ てい る.更 に又 垂 剔

    動 物 に 対 す るACTH-testと ア.-testと の相

    異 に 就 て は 赤 須(1954)1)の 実験 が あ る.即

    ち 氏 は下 垂 体 健 全 な 白鼠 にはACTHと ア.は

    略 々同一 の好 酸 球減 少 を示 すに 拘 らず,垂 剔

    白鼠 の場 合 には ア.-testは 不 定 の成 績 を示 し,

    ACTH-testは 一定 の好 酸球 減 少 を 示 して.両

    者 に差 異 のあ る事 を認 め て い る.

    次 にACTH,コ.両testと 下 垂 体 との 関係

    に 就 ては 更 に曖 昧 と してい る.即 ち一 般 に ス

    トレス時 に は 循 環 血 中Corticoidが 豊富 に あ

    つ た とし て も,更 に 下 垂体 副 腎 皮質 系 の作 働

    が 見 られ る もので あ り,此 の 際ACTHの 下

    垂 体か ら の減 少 と血 中増 量83)と は確 定 的 な事

    実 であ る.即 ちACTHに よつ て 分泌 され る

    副腎皮質 ステ ロイド中の糖質Corticoidに よ

    つて好酸球減少は招来 されるのではあるが,

    一般には此 の際の主役 を演ず るものはコ.の

    作用 と考 えられ 勝ちである.従 つてACTHの

    好酸球減少機転即 ちコ.の 好酸球減少機転 と

    なされ て, ACTHに よる好酸球減少症 とコ.

    による好酸球減少症 とは明かに区別 されてい

    ない.然 し乍 らACTHに より分泌 され好酸

    球減少を齎すべ く作働す る副腎皮質 ホルモン

    は果 してコ.単 独であるであろ うか.そ の点

    に関しては現在未だ定説は見られない様であ

    る.そ こでACTH-testと コ.-testと 下垂体

    との関係 には根本的な相異があ るのではない

    か と云 う疑念 も生 じて来 る.此 の点に就 ても

    今迄全 く明かに されていない様であ る.

    以上述べた様に結局 ア.,コ., ACTHに よ

    る夫々の好酸球減少機転 と下垂体 との相互関

    係は今一歩明確 さを欠いでい る状態 にあ る事

    にな る.

    茲に於て私は是等の点を明確にせん として

    血液像の安定せる雄性犬を使用 し,下 垂体を

    剔出してその血液像が特有 の変化 を示すに至

    りた る後,実 験に供 して3つ のtestを 試みた

    のであ る.垂 剔時の血液像はHoussey42)の

    認めてい る如 くACTH分 泌 の廃絶に よつて

    副腎皮質が萎縮 し,低 色素性貧血,軽度 白血

    球減少,著 明な好酸球増多等が挙げ られてい

    る.私 の例 も前述の如 く術後1ケ 月以上を経

    て上述の変化を確認 した.

    第6表  下垂体剔出犬好酸球に対する

    ア.コ. ACTHの 影響

    次に垂剔犬に於け る3つ のtestの 結果を一

    括す ると第6表 の如 くで,ア,は 正常犬 より垂

    剔犬の方が好酸球減少反応は弱 く,コ.は 垂剔

    犬では殆 ど有意の好酸球減少を示さず, ACTH

    では垂剔犬が正常犬 より著明に好酸球減少を

    示 したのである.即 ち之に よりア.が 下垂体を

  • 骨髓体外組 織 培養法 に よ るア ドレナ リン,コー チ ゾ ン, ACTHの 白血 ……云 々  779

    介 しな くて も尚好酸球減少 を起 し得 る事は認

    められ るが,更 に重要な事は下垂体健全 な犬

    に比べ反応度の弱 い事は,矢 張 り或程度下垂

    体を介 して作用す る面 のある事 も考 えしめる.

    之 に就 てはKark (1952)52), Bergenstal (1953)7)

    等は 副 腎 全 摘 患 者 に ア.で 好 酸 球 減 少 を

    見,又Speirs (1949)109), Ruppel (1951)100),

    Gordon (1951)29)等 も垂剔又は副腎摘 出動物

    にア.に よる有意 の好酸球減少を認め,以 て

    ア.は 下垂体 を介す る事 な く直接に好酸球に

    作用する と述べ てい るが,之 に対 して前述 の

    赤須は垂剔動物好酸球に対す るア.の 作 用は,

    正常動物好酸球に対す るよ り弱 く且つ不定で

    あると述べ,私 の成績 と同様下垂体を介す る

    面 も一部にあ る事を示唆 してい る.尚 正常犬

    の方が垂剔犬 に比ベア.に 強 く反応す るのは,

    下垂体健全な る場合 ア.がACTHを 介 して作

    用す る面 もあ るとの証拠 とな り得 る.更 に教

    室須賀の実験及び私 の前編の実験 よ り,ア.

    が直接骨髄内好酸球 に作用す る事を確認せ る

    以上, Longの 説 く如 くア.→ACTH→ 副腎皮

    質ホルモン→好酸球減少の機序 のみを以ては

    之等 の実験結果を充分説明す る事は出来ない

    と結論せざるを得ない.

    次に前述の如 く垂剔犬 に於てはACTH,コ.

    の投与の結果か らACTHと コ.と で好酸球減

    少反応が異 る事が明かになつた.即 ちACTH

    では寧ろ好酸球減 少度は増強 す る位だが,コ.

    では全然好酸球減少が起 らない.即 ち此 の事

    はACTH-好 酸球減少即ち コ.-好 酸球減少で

    あるとの考えに反す るものであ るので,茲 で

    如何 なる機序に よつ て相異が表われたかを考

    えて見 る必要がある.先 ず 垂 剔 犬 に 於 け る

    ACTH投 与の場合に就 て見 るに,垂 剔に よつ

    て下垂体 のACTHは 消失 し,た めに副 腎皮

    質は萎縮 す るに至 り,従 つて皮質ステ ロイド

    量は非常に少 くなつてい ると考えねばな らな

    い.然 し副 腎皮質は感受性を失つ てはおらな

    い42)の で,そ こえACTHを 投与すれば好酸

    球減少を来すが之は正常犬に於け るよ りも著

    明であつ て,之 は恐 ら く副腎 皮質更 には好酸

    球 自体の糖 質corticoidに 対 する 反応閾 値が

    低 下 して い るた めで あ ろ う と解 され る.赤

    須1)は姙 娠 垂 剔 白鼠は 非姙 娠 垂 剔 白 鼠 よ り

    ACTHに よる好 酸 球 減少 度 低 下せ るを 認め,

    之 は人 胎 盤 絨毛 膜 中 にACTHを 含 む84)た め

    に糖 質corticoidが 充 満 す る 結 果 と な り,

    ATCHに 対 して軽 度 に しか 反応 しな い もの と

    解 釈 してい る.垂 剔 の場 合 は之 と逆 の状 態 で

    あ るた め 反対 に 反応 性 が高 まつ て い る もの と

    考 え られ る.

    次 に 垂剔 犬 に コ.を 投 与 した場 合,何 故好

    酸 球 が減 少 しな いか に就 ては 以下 の 事が 考 え

    られ る.即 ち 正常 の場 合 にACTHを 投 与 す

    れ ば,副 腎 皮質 を刺 戟 して コ.の 分 泌 を促 す

    と 共 に,其 の 他 の 糖 質corticoidに 属 す る

    compoundは すべ て分 泌 され るわ け で あ る.

    そ して之等 の 中 コ. (compound E)及 びcom

    pound F77)116)91)に 好酸 球 減 少作 用 が認 め ら

    れ て い る.然 し乍 ら之等 のcompoundが 如何

    な る割 合 で分 泌 され て い るのか は未 だ明確 で

    は な い.又ACTH-好 酸 球 減少 が コ.の みで

    起 るのか, compound F77)の みで 来 る の か,

    或 は コ.とcompound Fと で 惹起 され るのか,

    更 に 又 コ.と その他 のcompoundす べ てが 協

    同 して起 る もので あ るのか 未 だ不 明瞭 な点 が

    多 い.そ して何 れ に して もACTHが 副 腎 皮

    質 を介 して作 用 す る以 上, ACTH投 与 に よ り

    正 常 犬 も垂剔犬 も略々 同様 の 結 果 が 得 ら れ

    る116)100)95)の は 当然で あ るが,コ.で は 之 に

    反 して前 記 の差が 生 じて来 た わ けで あ る.そ

    こで正 常 犬 と垂 剔犬 で 相 異す る点 を考 え て見

    るに,正 常 犬 で は下 垂 体(ACTH)に よ り血

    中に常 時 適 量 の副 腎 皮質糖 質corticoidが 分

    泌 され て い るのに 反 し,垂 剔 犬 で は 下 垂 体

    (ACTH)の 廃 絶 に よ り糖 質corticoidの 分 泌

    は 極 め て微 量 に なつ てい るわ け で あ る.従 つ

    て此 の両 者 に コ.を 投 与 した 場合,投 与 され

    た コ.の 作 用 が 主 力で あ る事 に 相 異は な いが,

    正 常犬 では 投 与 され た コ.の 他 に常 時分 泌 さ

    れ ている糖 質corticoidが 協 力 して好 酸 球減

    少 を起 さしめ,一 方垂 剔犬 では 投 与 コ.に 対

    す る協力糖 質corticoidを 欠 ぐ為好酸球 減少

    を 起 さなか つ た もの と考 え て よか ろ う.

  • 780  山 本 伸 郎

    即 ち以上 の点か らコ.が 有効に作 用す るに

    は他 のcompoundの 協 力が是非必要 で ある

    と考え られ, ACTH-好 酸球減少及び コ.好 酸

    球減少には コ.と 他 のcompoundと の協 力を

    必要 とす る事 が 推 察 され る.尚 因み に 現

    在compound E以 外の糖 質corticoid,例 え

    ばcompound Fに 就 てはNelson (1952)77),

    Thorn (1953)116), Pearson (1950)91)等 は皮質

    ホルモンの大部分を 占めるものであろ うとの

    見解を もつ て い る.以 上 の点 か ら考 え て

    compound Eの みを以ての好酸球減少機 転即

    ちACTH→ コ.→ 好酸球減少 と考 えるのは 稍

    々早計 である と云わ ざるを得ない.

    そ こで之を確かめん として垂剔犬に綜合皮

    質 ホルモン製剤であるAdrexを コ.と 同時に

    投与せ る所,果 して著 明な好酸球減少を見 る

    事が出来た のであ る.

    そ こで更 に之を確認す る意味で垂剔犬 の骨

    髄培養を応 用 してコ.の 作用を検討 した.先

    ず 垂剔犬骨髄 培養では正常犬骨髄 と異 り,全

    遊 走細胞の1/2~1/3に 好酸球があ り,明 らか

    に骨髄 内好酸球の増加が認め られ た.そ こで

    支持体 を副腎 皮質 ホルモンを可及的に含 まな

    い状態即ち垂剔犬血漿 を用 うる場合 と,正 常

    に含む場合即ち正常犬血漿 を用 うる場合 とに

    分 け,此 の両者に同量のコ.を 添加 し,発 育

    促進物質 としては副腎皮質 ホルモンを可及的

    に含 まないもの として垂 剔犬脾エキスを撰ん

    で使 用した.尚 此の際垂剔犬血漿ではACTH

    の廃 絶に よ り血 中のchemocorticoidは 少 く

    なつてお り42),そ れは全般 に皮質 ホルモンが

    少 いのか,又 は或種compoundが 少 くなつて

    い るのかは不明であるが,何 れに しても好酸

    球 減少 機構に関与す るcompoundが 不足又は

    欠如 してい るのは明かである.此 の様 にすれ

    ばコ.単 独 の場合 とコ.+他 のcompoundの

    場 合の好酸球に対す る作 用が比較出来 るわけ

    であ る.そ の結果は,正 常犬血漿使用の場合

    は前編 に詳述せ る如 く,好 酸球の明かな機能

    低下及び分裂障碍を認め るのに反 し,垂 剔犬

    血漿 使用では豪 も好酸球の機能減退は認め ら

    れ ないばか りでな く,分 裂に対 しても影響は

    見 られ なかつた.

    此の事は将 に上述 のコ.は 他 のcompound

    と協力 して好酸球に障碍的に作用 し得 ると云

    う考 えを完全に裏付け るものであ る.

    次 にコ.とAdrexを 同時に添加せ るに,正

    常犬血漿使用の方はコ.の みの時 と有意の変

    化を認めないのに,垂 剔犬血漿使用の場合は

    明かに好酸球が障碍 され る事を見たのであつ

    て,之 は先の生体 内で見た結果 と全 く一致す

    る.

    以上の全実験を要約す るに,先 ずア.-好 酸

    球減少の場合はア.自 体が下垂体を介 さず直

    接好酸球に作用す る一方,下 垂体を介 して作

    用す る一面 も見逃 すわけにはいかない.従 つ

    て ア.の 作用 とACTHの 作用を同意義 に解釈

    した り, ACTHの 代用にア.を 用い るのは誤

    りである事が明確 となつたのであ る.又 コ.-

    好酸球減少の場合は コ.単 独(compound E)

    では好酸球機能を障 碍せず,他 のcompound

    との協同作用に よつて始めて好酸球に障碍的

    に作用する事が立証 され た わ け で あ る.又

    ACTHは 副腎皮質を介 して 作用す る事116)95)

    は疑 うべ くもないが,此 の際 コ.及 び他の皮

    質ステロイドと共に好酸球に障碍的に作用す

    ると思われ る.従 つて通常生体内ではコ.-好

    酸球減少 とACTH-好 酸球減少 とは 結果 とし

    て同一 の機序が行われているが,コ.投 与によ

    る好酸球減少には下垂体(前 葉)機 能の健全

    な る事が前提条件 とな る事が明かになつた.

    尚以上の事から副腎皮質機能の健全な限 り

    ではコ.-testは 下垂体(前 葉)機 能健否 の示

    標 とな り得 る事が推察 され るのであつて,私

    は本稿 の最後に下 垂体(前 葉)機 能検査法 と

    してのコ.-testを 提唱 し度い と思 う.但 し此

    の場合Thorn's test (ACTH-test)が 極端 に

    悪 く副腎 皮質機能の著明な障碍が考えられ る

    時 はコ.以 外 のcompoundの 分泌 も低下 して

    いると思われ るので,そ の場合のコ.-testが

    直 ぐ下垂体前葉機能検査にな り得 るか否かに

    は問題があ り,他 の副腎機能検査法を も参考

    に して慎重なる判断を必要 とするものと考え

    る.

  • 骨髄 体 外 組 織 培養法 に よるア デ レ ナ リン,コ ー チ ゾ ン, ACTHの 白血 ……云 々  781

    第五章  結 論

    (1)  ア.-好 酸球減少機転 としてはア.自 体

    が直接好酸球 に作 用す る他に,下 垂体を介 し

    て作用す る面 も一部にあ る.

    (2)  ACTH投 与に よる好酸球減少は糖質

    Corticoidと しての作用であ り,コ.投 与に よ

    る好酸球減少 と結果的 に同一の作用機序を有

    するが,前 者が下垂体(前 葉)機 能 と無関係

    なるに対 して,後 者は下垂体(前 葉)機 能の

    健全を前提条件 とす る点は異る.

    (3)  コ.-好 酸 球 減 少 の 機転 は コ. (Com

    pound E)の みで行われ るものでな く,他 の

    Compoundと の相助協同作用 の結果好酸球に

    障碍的に作用す る.

    (4)  コ.投 与に よる好 酸球減少 に は 副腎

    皮質機能並に下垂体(前 葉)機 能 の健全 なる

    事が前提条件 とな る.

    (5)  コ.-testは 副腎皮質機能の健 全 な る

    限 り下垂体(前 葉)機 能検査法 として用い得

    る.

    擱筆するに当り終始御懇篤なる御指導及び御校閲

    を賜りたる恩師平木敎授並に大藤助敎授に深甚なる

    謝意を表す.

    Department of Internal Medicine, Okayama University Medical School

    (Director: Prof. Dr. K. Hiraki)

    Studies on the Effect of Adrenalin, Cortisone and ACTH on the White

    Blood Cell especially on the Eosinophilic Leukocyte by

    the Tissue Culture of the Bone Marrow

    mainly on the mechanism of eosinopenia

    Part (II)

    Influences on the same drugs (adrenalin, cortisone and ACTH) on

    the peripheral and bone marrow eosinophilic leucocyte of hypo-

    physectomized dogs (mainly by bone marrow culture)

    By

    Shinro YAMAMOTO

    I have studied adrenalin, cortisone and ACTH eosinopenia in hypophysectomized dogs

    by means of chamber counting. In addition, the bone marrow of hypophysectomized dogs was

    cultivated in using the plasma of normal and hypophysectomized dogs separately, cortisone

    was added to each preparate. The results obtained are as follows:

    (1) Adrenalin eosinopeia is due to its direct influence upon the eosinophil partly through the pituitary body.

    (2) ACTH acts as glucocorticoid in ACTH cosinopenia. This brings about the similar result to cortisone eosinopenia. But ACTH eosinopenia has no correlation with the function of

    the pituitary anterior lobe, while cortisone eosinopenia requires the normal function of the

    anterior lobe.

    (3) Cortisone (compound E) alone can not cause cortisone eosinopenia but it gives hypofunctional influence and developmental disturbance upon the eosinophil in synergism of other compounds.

    (4) The normal functions of both the adrenal cortex and pituitary anterior lobe is necessary for eosinopenia by cortisone administration.

    (5) Cortisone test can be used as a test of pituitary anterior lobe function only in the case with normal adrenocortical function.