Upload
others
View
1
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
No.69
Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis イタルダ・インフォメーション�発行者:大堀太千男�
発行所:(財)交通事故総合分析センター�発行月:2007年8月�
〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6�麹町東急ビル5階�
2007
財団法人 交通事故総合分析センター� INFORMATION
財団�法人�交通事故総合分析センター�
Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis
道路環境からみた出会い頭事故�特集�
No.69 [道路環境からみた出会い頭事故]2
道路環境からみた出会い頭事故2007 No.69
特集
平成18年中の交通事故による死者数は6千人台前半と平
成12年以降6年連続で減少していますが、死傷者数は平成
11年から8年連続で100万人を超えており、国民の約
100人に1人が交通事故により死傷しているという深刻な
状況です。
出会い頭事故とは、異なった方向から進入してきた車両
(自転車等も含む)が交差する時に衝突した事故のことです。
この事故による死傷事故件数は追突事故に次いで多く、死
亡・重傷事故に限定した事故件数は、最も多くなっています。
出会い頭事故が発生する要因は、イタルダ・インフォメー
ションNo.561)に記載されているとおり、認知ミス(例:交差
車両を見なかった)や判断・予測ミス(例:優先道路だから相
手が止まるはずだ)に代表される人的要因が大部分を占めま
す。一方で、人的要因以外にも、「見通しが悪いので相手の発
見が遅れた」など道路環境要因が事故を誘発しているものも
含まれています。
今回のイタルダ・インフォメーションでは、出会い頭事故に
ついて、道路環境の観点から分析いたしました。その分析結
果と事故例から、出会い頭事故を防ぐための対策について
考察します。
1 全ての交通事故に対する出会い頭事故の発生状況
2 出会い頭事故の特徴
3 出会い頭事故の事故発生パターン
4 事故例
5 まとめ
Contents主な内容
ITARDA INFORMATION
[道路環境からみた出会い頭事故] No.69 3
交通事故統計データによると平成18年の出会い頭事故による死傷事故件数は233,177件で、全死傷事故件数の約26%を占め、平成16年以降減少傾向ですが、追突事故に次いで多い事故です。(図1、図2参照)また、出会い頭事故による死亡・重傷事故件
数は17,797件で、全死亡・重傷事故件数の約26%をしめ、平成12年以降減少傾向ですが、最も多く発生しています。(図3、図4参照)以上のことから出会い頭事故は、死亡・重傷事故が最も多く発生している危険な事故であることがわかります。
全ての交通事故に対する出会い頭事故の発生状況1Section
事故件数(件)�
0
50,000
100,000
150,000
200,000
250,000
300,000
350,000
車両単独�
その他車両相互�右左折時�
追突�
正面衝突�
人対車両�
H18H17H16H15H14H13H12H11H10H9
233,177件�
出会い頭�
図1 事故類型別死傷事故件数の推移
車両単独�48,437件�5.5%
右左折時�120,793件�13.6%
233,177件�26.3%
追突�283,471件�32.0%
正面衝突�24,381件�2.7%
列車�85件�0.0%
人対車両�77,412件�8.7%
合計�886,864件�
その他車両相互�99,108件�11.2%
車両相互�
出会い頭�
図2 事故類型別死傷事故件数(平成18年)
No.69 [道路環境からみた出会い頭事故]4
事故件数(件)�
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
車両単独�
その他車両相互�
右左折時�
追突�
正面衝突�
人対車両�
H18H17H16H15H14H13H12H11H10H9
17,797件�出会い頭�
図3 事故類型別死亡・重傷事故件数の推移
列車�59件�0.1%
人対車両�13,039件�19.4%
正面衝突�4,325件�6.4%追突�4,561件�6.8%���
右左折時�9,336件�13.9%
その他車両相互�6,028件�9.0%
車両単独�12,086件�18.0%
合計�67,231件�
車両相互�
出会い頭�
17,797件�26.5%
図4 事故類型別死亡・重傷事故件数(平成18年)
ITARDA INFORMATION
[道路環境からみた出会い頭事故] No.69 5
出会い頭事故の特徴2Section
(1)どのような場所で発生しているのでしょうか?
事故発生場所について道路形状別でみると、出会い頭事故の約7割(165,469件)は信号機の設置されていない交差点(交差点付近を含む)で発生しています。(図5参照)
次に、出会い頭事故のうち、信号機が設置されていない交差点で発生した事故の165,469件について詳細に検討します。沿道状況別でみると、信号機の設置されていない交差点で発生した出会い頭事故のうち、約3/4は市街地の交差点で発生しています。(図6参照)市街地で発生した事故について交差点規模別でみると、約9割(122,845件中107,323件)が中規模以下(小×小、小×中、中×中注1))の交差点で発生しています。また、第1当事者注2)の道路環境要因注3)別でみると、図7に示すとおり、人的ミスに加えて道路環境も事故の発生要因となっている場合(以下「道路環境要因あり」とする)は、約1割を占めています。その内訳をみると、約7割(12,765件中9,091件)が「建物等による見通し不良」に該当しています。これまでの内容をまとめると、出会い頭事故が多く発生している場所は、「市街地の中規模以下の信号機が設置されていない交差点」であることがわかります。また、そのような場所では道路環境からみると「建物等による見通し不良」が原因となる場合が多いことがわかります。
交差点(信号機あり)�42,376件�18%
交差点(信号機なし)�165,469件�71%
単路�23,157件�10%
その他�2,175件�1%
出会い頭事故�233,177件�
交差点�
※交差点には、交差点付近も含む� 信号機なしには、信号機が不作動の場合も含む�
図5 出会い頭事故の道路形状別死傷事故件数(平成18年)
注1)交差点規模のa×bは交差道路の幅員の組合せです。小:5.5m未
満、中:5.5m以上13.0m未満、大:13.0m以上の幅員を示して
います。
注2)第1当事者とは、当該交通事故に関係した者のうち、最も過失が
重い者をいい、過失の程度が同程度の場合は、被害が最も軽い者
をいいます。
注3)道路環境要因とは、道路不良箇所や施設不備、見通し不良など道
路環境が事故発生の要因と考えられる場合です。
No.69 [道路環境からみた出会い頭事故]6
(2)どのような人が関係しているのでしょうか?
図5に示すとおり、出会い頭事故が多く発生している「信号機が設置されていない交差点」について、当事者の組合せや年齢層別、法令違反別に特徴を整理します。当事者の組合せでみると、図8に示すとおり、自動車×自動車注4)が約40.0%(66,158件)、自転車×自動車が36.8%(60,898件)となってい
ます。一方で第1当事者の年齢層別でみると、図9
に示すとおり、自動車運転中の場合は年齢層のばらつきは比較的少ないですが、自転車運転中の場合は、15歳以下は、他の当事者に比べて、約3割(3,214件)と非常に高い割合を示しています。また、第1当事者の法令違反でみると、図10に示すとおり、自転車運転中の場合は「指
市街地�122,845件�74.2%
非市街地�42,624件�25.8%
0
20
40
60
80
100%
交差点(信号機なし)�での出会い頭事故�
165,469件�中規模以下�107,323件�87.4%
「市街地」の�場合の内訳�
小×小�25,518件�20.8%
小×中�34,484件�28.1%
中×中�47,321件�38.5%
小×大�6,812件�5.5%
中×大�6,485件�5.3%
大×大�638件�0.5%
交差点付近�1,587件�1.3%
図6 信号機が設置されていない交差点で発生した出会い頭事故の沿道状況別交差点規模別事故件数(平成18年)
0
50,000
100,000
150,000
200,000
不明�道路環境�要因なし�
道路環境�要因あり�
048 184 123 105 250 16148 113415 682 475
1,070
9,091
2,000
4,000
6,000
8,000
10,000件�件�
2,597件�1.6%
12,765件�7.7%
150,107件�90.7%
合計�165,469件�
線形不良(急勾配を含む)�
交差点形状不良�
交通安全施設不備�
標識等の不備�
路面状態が操作等に影響�
渋滞車両等による通行障害�
駐・停車車両が視界に影響�
進行車両が視界に影響�
渋滞車両が視界に影響�
建物等による見通し不良�
樹木等による見通し不良�
その他視界障害�
その他�
視界障害�
「道路環境要因あり」の�場合の内訳�
図7 信号機が設置されていない交差点で発生した出会い頭事故の第1当事者の道路環境要因別死傷事故件数(平成18年)
ITARDA INFORMATION
[道路環境からみた出会い頭事故] No.69 7
自転車×自転車� 自転車×二輪車� 自転車×自動車� 二輪車×二輪車�
二輪車×自動車� 自動車×自動車� その他�
0 20 40 60 80 100 %
16.9% 40.0%(66,158件)�
0.9%
出会い頭事故�(165,469件)�
2.8% 1.7%
36.8%(60,898件)�
0.9%
図8 信号機が設置されていない交差点で発生した出会い頭事故の当事者の組合せ別死傷事故件数(平成18年)
15歳以下� 16~19歳� 20~29歳� 30~39歳�
40~49歳� 50~59歳� 60~65歳� 65歳以上�
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 %
自動車運転中�(142,357件)�
自転車運転中�(10,029件)�
32.0%(3,214件)� 17.8% 10.4%
0.0% 2.5%
19.0% 20.5% 16.0% 7.9% 14.6%19.5%
16.5%7.3% 6.9%5.2% 3.8%
図9 信号機が設置されていない交差点で発生した出会い頭事故の第1当事者の年齢層別死傷事故件数(平成18年)
定場所一時不停止等」が約5割(4,937件)自動車運転中の場合は「安全不確認」が約4割(62,178件)と高い割合を示しています。以上のことから、信号機が設置されていない交差点で発生した出会い頭事故は、自動車×自動車とほぼ同じ割合で自転車×自動車の事故が
発生していることがわかります。また、「指定場所一時不停止等」や「安全不確認」などの法令違反が多くみられます。
注4)c×dは当事者の組合せです。例えば「自動車×自動車」は自動
車同士の事故のことです。
No.69 [道路環境からみた出会い頭事故]8
出会い頭事故は、交通事故統計データの分析により、「市街地の中規模以下の信号機が設置されていない交差点」で多く発生していることがわかりました。(P4参照)この分析結果をもとに、平成5~16年に当センターが収集した事故例調査データのうち、同条件の交差点で発生した出会い頭事故を抽出(3,301件中89件)し、事故要因の分析を行いました。交通事故統計データの分析結果と事故例調査データから、A当事者(事故のきっかけとなるエラーを犯した当事者)の人的要因と道路環境要因に着目して事故発生パターンを分類しました。主な事故発生パターンとして、以下の3パターンが考えられます。パターン①
人的ミスに加えて、道路環境(見通しが悪い、施設不備等)も影響したために発生
〈具体例〉「民地や公園等の植栽やフェンス、塀などにより見通しが悪い」「路面標示や道路標識が不足している」「カーブミラーが破損している」
パターン②
道路環境が影響しなかった場合で、交差車両を完全に見落とした(認知ミス)ために発生〈具体例〉「他の車両が気になった」
「同乗者と雑談をしていた」「カーブミラーを見たが気がつかなかった」
パターン③
道路環境が影響しなかった場合で、交差車両を認知していたが行動予測や動静を見誤った(判断・予測ミス)ために発生〈具体例〉「非優先道路の当事者が優先権を錯覚」
「相手側が停止するだろうと思い込み」
出会い頭事故の事故発生パターン3Section
優先通行妨害等� 交差点安全進行義務違反� 徐行違反� 指定場所一時不停止等� 前方不注意�
動静不注視� 安全不確認� その他安全運転義務違反� その他違反・不明�
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
自動車運転中�(142,357件)�
自転車運転中�(10,029件)�
%
0.4%
49.2%(4,937件)
7.3% 43.7%(62,178件)�15.6%
1.4%1.4%
23.0%
1.4%
9.5% 29.4%
1.0%3.5%3.6% 0.6%
2.7%3.5%
2.7%
図10 信号機が設置されていない交差点で発生した出会い頭事故の第1当事者の法令違反別死傷事故件数(平成18年)
ITARDA INFORMATION
[道路環境からみた出会い頭事故] No.69 9
パターン①~③の事故例を以下に示します。整理するにあたって、人的要因と道路環境要因の関係を明確にするため、バリエーションツ
リー手法2)を用いて、当事者の挙動や認知・判断を時系列に整理しました。
事故例4Section
徐行・一旦停止せずに�そのままの速度で�交差点内に進入�
危険を予測しつつ�そのまま進入しようと判断�
アクセルを緩めて�通過しようと判断�
徐行・一旦停止せずに�交差点に進入�
交差点を認知�
約20km/hで走行�
A車とB車が衝突�
路面標示等なし�
見通しの悪い交差点�
左右の安全確認なし�
車両がこないと判断�
交差点を認知�
約25km/hで走行�
(3)20km/hを「徐行」と考え、この程度の速度で進行すれば危険回避できると判断した。�
(2)通り慣れた交差点でありいつも走行車両が無いため大丈夫との先入観があった。�
(1)A車、B車側とも、ブロック塀等によって交差道路の見通しは悪い。�
説 明�B車 二輪車�道路・交通環境�A車 自動車�
1車線の市道�
1車線の市道�
(4)路面標示等がなく道路幅員もほぼ同じであるため、優先・非優先の判断がつかないことも要因と考えられる。�
(2)�
(3)�
(4)�
(1)�
時間の流れ�
図12 事故発生経過の整理
写真1:A車から見た事故発生箇所 写真2:B車から見た事故発生箇所
(1)パターン①:人的ミスに加えて、道路標識等の不足も影響したために事故が発生した例
民 家�
ブロック塀�
4.5m
4.5m
路上駐車車両�
ブロック塀�
ブロック塀�
U字側溝�
蓋付きU字側溝�
U字側溝�
ブロック塀�
民 家� 民 家�
民 家�
※各隅切り長:約3.0m
消火栓標識�
人・バイク�転倒位置�
電柱�
グレーチング�
生垣�
危険認知�
B1�危険認知�
A1A2 A車�
B車�
A3
停止位置�B2
図11 事故発生状況図(現場の状況)
○住宅地内の十字交差点(小×中)。
○路面標示等が無く道路幅員も同じであるため、主
道路の区分は付かない。
○交通量は、いずれも少ない。
○直立するコンクリートブロック塀+生垣(鉄柵)
に囲まれており、見通しが悪い。
○交差点近傍に民家の入口がある。
B車進行方向�
B車進行方向�
A車進行方向�
A車進行方向�
消火栓�標識�
蓋付きU字側溝�
No.69 [道路環境からみた出会い頭事故]10
(2)パターン②:カーブミラーを見たが気がつかなかった例
一時停止せず、そのまま�交差点に直進進入�
交差車両なしと判断。進行�速度10km/h程度にて、そのまま�進入しても危険はないと判断�
速度超過で�交差点に直進進入�
左方:目視確認�右方:カーブミラーで確認�
�
交差点及び自車に�一時停止義務を認知�
A車の右フロントと�B車の左フロントが衝突�
カーブミラー�
見通しの悪い交差点�
カーブミラーによる�安全確認なし�
交差点を認知�
優先道路を走行�
(2)カーブミラーで確認したが、B車を見落とした。�
(1)A車からの右方、B車からの左方はブロック塀で目視できず、カーブミラーに頼らざるを得ない。安全不確認を助長する要因の1つと考えられる。�
説 明�B車 二輪車�道路・交通環境�A車 自動車�
1車線の市道�
1車線の市道�非優先道路を走行�
(3)小×小の交差点において、運転席の右側が視認できない場合、ドライバーが安全確認を怠る可能性が高いと考えられる。�(2)(3)�
(1)�
時間の流れ�
優先道路なので、�安全確認・徐行の�必要なしと判断�
�
図14 事故発生経過の整理
写真3:A車から見た事故発生箇所 写真4:B車から見た事故発生箇所
カーブミラー�
A車�
B車�
民家�ブロック�
水路�
4.8m
5.1m
止 ま れ�
止まれ�
A1
A2
B1
B2
図13 事故発生状況図(現場の状況)
○住宅地内の小×小交差点でどちらも道路幅員は狭
い。
○道路標識、路面標示、カーブミラー設置。
○A車の右側は、ブロック塀のため目視による確認は
困難。
○反対側には水路あり。
B車進行方向�
カーブミラー�
A車進行方向�
A車進行方向�
ブロック塀に�より目視は困難� ブロック塀に�
より目視は困難�
カーブミラー�
B車進行方向�
ITARDA INFORMATION
[道路環境からみた出会い頭事故] No.69 11
(3)パターン③:相手側が停止するだろうと思い込み事故が発生した例
急制動なし�
カーブミラーにより自転車を�認知。自転車が停止すると判断�
交差点に左折進入�
カーブミラーで�交差道路の安全確認�
減速して走行�
交差点を認知�
A車とB車が衝突�
カーブミラー�
くいちがい交差点�
注意の必要なしと判断�
交差点を認知�
直進�
(2)カーブミラーにより自転車からも自動車を認知し、停止するものと判断していた。�
(1)いつもの通学路で車の通行も殆どないことから安全確認を怠った。(中学生)�
説 明�B車 自転車�道路・交通環境�A車 自動車�
1車線の市道�
1車線の市道�約30km/hで走行�
(3)自転車の予想外の行動に対応できなかった。停止できる速度まで徐行する必要があったと思われる。�
(2)�
(1)�
(3)�
時間の流れ�
図16 事故発生経過の整理
写真5:A車から見た事故発生箇所 写真6:B車から見た事故発生箇所
2.8m
水田�カーブミラー�
危険認知�
車庫�
民家�
下り坂�
フェンス・生垣�
4.0m
A車�
B車�
停止地点�A3
A2A1
B1 転倒停止地点�
図15 事故発生状況図(現場の状況)
○住宅と水田地帯が混在した小×小交差点でどちら
も道路幅員は狭い。車両の通行も殆どない。
○B車側は交差点まで長い下り坂になっている。
○B車は通学路として利用している。
○カーブミラーが設置されているが路面標示や標識
は存在しない。
B車進行方向�
カーブミラー�(低めに設置)�
カーブミラー�(低めに設置)�
A車進行方向�
A車進行方向� B車進行方向�
財団法人 交通事故総合分析センター�ホームページ http://www.itarda.or.jp/
Eメール [email protected]
事務局�〒102-0083 東京都千代田区麹町6-6 麹町東急ビル5階�
TEL03-3515-2525 FAX03-3515-2519
つくば交通事故調査事務所�〒305-0831 茨城県つくば市西大橋字大窪647
TEL029-855-9021 FAX029-855-9131
Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis
ITARDA INFORMATIONイタルダ・インフォメーション�
今回は、出会い頭事故を対象に、道路環境の観点から事故の要因の分析を行い、その実態を明らかにしました。交通事故統計データを用いて分析をした結果、出会い頭事故が多く発生している場所は、「市街地の中規模以下の信号機が設置されていない交差点」であることがわかりました。また、そのような場所では道路環境からみると「建物等による見通し不良」が原因となる場合が多いことがわかりました。一方で、事故例調査データを用いて、事故発生パターンを分類すると、主に以下の3パターンが考えられます。パターン①:人的ミスに加えて、道路環境(見
通しが悪い、施設不備等)も影響したために発生
パターン②:道路環境が影響しなかった場合で、交差車両を完全に見落とした(認知ミス)ために発生
パターン③:道路環境が影響しなかった場合で、交差車両を認知していたが行動予測や動静を見誤った(判断・予測ミス)ために発生
分析の結果、道路環境要因が原因となる場合は、民地や公園等の植栽やフェンス、塀などに
より見通しが悪い場合や路面標示、標識等が設置されていないため優先・非優先の判断がつかない場合等があげられます。主な道路環境要因に対する対策例3)として、
「カーブミラーの設置」、「交差点の隅切りの確保」、「非優先道路への路面標示や規制標識による適切な通行規制」などが考えられます。以上、出会い頭事故の道路環境要因とその対策案をまとめましたが、実際に対策を実施する際は、その箇所の事故の発生状況や道路環境に応じて対策を検討することが必要です。また、道路環境要因に対する対策だけでなく、自転車や自動車の運転者に対する教育・啓発活動も行うことが、出会い頭事故の防止に繋がるものと考えられます。本内容は、当センターが過去に取り組んだ研究結果4)を元にまとめたものです。分析の詳細については、そちらをご覧下さい。
まとめ5Section
1)イタルダ・インフォメーションNo.56「出会い頭事故における人的
要因の分析」、財団法人交通事故総合分析センター、2005.5
2)石田敏郎「バリエーションツリー分析による事故の人的要因の検討」
自動車技術会論文集、vol.30、No.2、P125-130、1999.4
3)交通事故対策・評価マニュアルおよび交通事故対策事例集、財団法
人交通事故総合分析センター、2005.5
4)平成17年度交通事故例調査・分析報告書、財団法人交通事故総合
分析センター、P125-174、2006.3
【お詫びと訂正】�
イタルダ・インフォメーションNo.68、6ページの
図10について、右記の間違いがありました。ここ
にお詫びを申し上げ、訂正をさせていただきます。�
誤�:�
人/千人�
正�
:�