Upload
others
View
2
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
平成 14 年度 中城湾港泡瀬地区環境監視・検討委
第1回 海藻草類移植・保全 WG
海草藻場移植とクビレミドロ保全
平成 14 年7月 24 日
内閣府沖縄総合事務局開発建設部
沖 縄 県 土 木 建 築 部
(財)港湾空間高度化環境研究センター
資料-2
員会
目 次 1. 海草藻場移植 ............................................................................................................ 1
1.1 海草藻場広域移植実験の経緯 .......................................................................... 1
1.2 全域生育状況調査結果 ..................................................................................... 2
1.3 6月までの広域移植実験追跡調査結果........................................................... 15
1.4 台風による藻場の影響について ..................................................................... 38
1.5 まとめ -広域海藻移植の今後に向けて- ................................................ 74
2. クビレミドロ保全 ................................................................................................... 78
2.1 取り組み状況について ................................................................................... 78
2.2 クビレミドロの生育分布域 ............................................................................ 81
2.3 生育地の環境 ................................................................................................ 84
2.4 クビレミドロの移植実験 ............................................................................... 90
2.5 培養実験 ....................................................................................................... 94
1.海草藻場移植
1.1 海草藻場広域移植実験の経緯
広域移植実験は、平成 13 年 7 月の環境監視・検討委員会で設定した約 3ha の海草採取元
から、西防波堤の西側海域及び北側海域に移植するもので、平成 13 年 10 月に実施した保
護対策試験を受けて、平成 13 年 11 月から平成 14 年 2 月まで毎月実施した。
移植後の状況については「全域生育状況調査」及び「追跡調査」によって確認している。
表 1.1-1 広域移植実験の実施時期
時期 平成13年度 平成14年度
項目 7月
追跡調査(10月移植株) ○
(11月移植株) ○
(12月移植株) ○
(1月移植株) ○
(2月移植株) ○
○
○ ○
○ ○
○ ○
○ ○
○ ○
○○ ○
○
○
○
○
○
○
○
○
3月
○
4月 5月 6月
2/2212/25
○○
○
○ ○
○ ○
○ ○ ○
2月
○
10月 11月 12月 1月
委員会
(保護対策試験)
広域移植実験
全域生育状況調査
WG 11/28 7/242/6
-4m
-2m
+1m
0m
+0.5m
+1.5m
+1m+0.5m
0m
-2m
-2m
-4m
0m
+0.5m
+1m
+1.5m
-2m
-4m
+1m
+0.5m -4m
-4m0m
0 500m
防波堤(西)
泡瀬通信施設
奥武岬
比屋根湿地
域
図 1.1-1 海草移植広域移植実験対象海
- 1 -
1.2 全域生育状況調査結果
(1)生育状況のフロー
移植海草の生育状況について、移植ブロック群ごとにランク付けを行った。ランク付け
は、観察者の違いによる差をできるだけ排除し、環境要因との関連付けを可能にするため、
葉の状態と地下茎の状態を半定量的に階級区分し、A~Dの4ランクで潜水時に判定した。
ランクの判定における標準的なフローを図 1.2-1 に示す。
地下茎の露出部の割合 移植ブロック群の生育状況地下茎の生残率
A 状況は良好大部分が生残している
B 状況はやや良好枯死部もみられるが生残部は多い
C 状況はやや不良生残部が少ない
D 状況は不良大部分が枯死している
25%未満 75%以上
葉に占める緑色部の割合
50%以上
0%または20%未満
植生の量がきわめて少ない
ブロックの崩壊がほとんどなく形状がはっきりしている
25~50% 75%以上
50~75%
ブロックの崩壊が比較的多く形状が崩れている
20~50%
50~75%
50~75%
25~50%
50~75%
25~50%
75%以上 25%未満
ブロックの崩壊が比較的多く形状が崩れている
ブロックの崩壊が比較的少なく形状が保たれている
50%以上
0%または20%未満
その他
図 1.2-1 移植海草ブロック群の生育状況評価フロー
(2)生育状況
最新(平成 14 年 6 月)の生育状況分布を図 1.2-2 に示す。移植対象海域最東部の A-1
群および B-1 群と移植予定地Ⅱの半分以上の移植ブロック群は良好と判定され、一方、西
側の移植予定地Ⅰでは大半が「やや不良」ないし「不良」と判定されている。
移植ブロック群ごとに生育状況の変化を整理し、表 1.2-1 に示す。また、移植ブロック
群の生育状況の割合を表 1.2-2 に示し、水深との関係を表 1.2-3 に示した。生育状況が不
良となっているブロック群は実験開始当初(平成 13 年 11 月)に移植されたものや浅いと
ころに移植されたものに多い傾向にある。
写真 1.2-1~4 には、生育状況の評価ランク別の代表的な状況を示した。
- 2 -
- 3 -
図 1.2-2 生育状況の分布(調査期間:平成 14 年 6 月 25~27 日)
表 1.2-1(1) 移植の履歴と生育状況(St.1~35)
個数(個) 移植ブロック群の生育状況
当日移植 翌日移植 合計1月15~17日
2月27日~3月1日
3月23~25日
5月13~14日
6月25~28日
1 -0.13 11/7 12 12 C D D D D2 -0.08 11/17.18.19 150 150 D D D D D3 -0.04 11/8.9.10.11.16.20、 12/20.24 197 130 327 C D D D D4 -0.02 12/21 40 40 C D D D D5 -0.53 12/23 44 44 A D D D D6 -0.19 11/14 、12/26 36 50 86 C D D D D7 +0.09 11/12 40 40 D D D D D8 -0.10 11/15.16.19.20 183 183 B B B B C9 +0.11 12/20 53 53 D D D D D10 +0.01 11/17.18 106 106 A A A A A11 -0.16 12/24 20 20 D D D D D12 -0.33 12/26 51 51 D D D D D13 -0.20 12/21.23.24 80 53 133 B D D D D14 -0.06 11/19.20、 12/21.24 52 131 183 B C C D D15 -0.17 11/7.14.20 、12/21 53 28 81 A C C D D16 +0.08 12/21 51 51 B B B C C17 -0.12 12/24.26 53 53 106 B B B A A18 -0.09 11/11 38 38 B B C C C19 -0.15 11/18 53 53 A B B B B20 -0.10 11/15.16.17、 12/20 181 181 B B B B D21 -0.07 11/12 54 54 B B B B B22 -0.13 11/12 20 20 A B B B B23 -0.28 11/9.10 81 81 B B B B C24 -0.35 11/12 33 33 B B B B B25 -0.23 11/8 21 21 A A A A A26 -0.03 11/11 53 53 B C C B B27 -0.06 11/9.10 63 63 D D D D D28 +0.14 11/18 45 45 C C C B C29 +0.11 11/16.17.20 、12/20.23.24.26 90 235 325 D D D D D30 +0.20 11/9 30 30 B B B B B31 +0.30 11/19 54 54 C C C D D32 +0.09 11/8 9 9 B B C C D33 +0.18 11/10.11 95 95 C C C C C34 +0.08 11/12 53 53 B D D D D35 -0.02 11/8 12 12 B B B B B
合計(個) 1239 1647 2886 - - - - -
注)1.移植ブロック群の生育状況については、ブロックの崩壊状況等を加味し、「A:良」「B:やや良」「C:やや不良」「D:不良」の4段階で判定を行い、 それぞれ「 」「 」「 」「 」の色彩で示した。 2.「 」は、移植後1ヵ月後における移植ブロックの崩壊が大きかった地点を示す。 3.「 」は、水深-0.1m以浅の地点を示す。
備考St. 移植日水深
- 4 -
表 1.2-1(2) 移植の履歴と生育状況(St.36~69)
個数(個) 移植ブロック群の生育状況
当日移植 翌日移植 合計1月29~30日
2月27日~3月1日
3月23~25日
5月13~14日
6月25~28日
36 -0.01 1/9 35 35 C C C D D37 -0.48 1/8 25 25 D D D D D38 -0.68 1/8 15 15 B B D D D39 -0.28 1/11 、1/22 65 65 B B B B B40 -0.68 1/9.11 33 33 B B B B B41 -0.88 1/8 13 13 B C C C C42 -0.38 1/19 53 53 B C C C C43 -0.28 1/20 53 53 B C C C C44 -0.38 1/10 、1/23 97 97 C C C C B45 -0.88 1/10 9 9 B B C C C46 -0.32 1/9.18 、1/24 50 53 103 B B B C B47 -0.68 1/14.15 106 106 C C C C C48 -0.38 1/8.9 、2/7 35 35 C C C C C49 -0.18 1/11 、2/7 65 65 A B B B B50 -0.08 1/14 、2/7 15 18 33 B B B B B51 -0.18 1/14 11 11 B C C C C52 -0.48 1/8 25 25 B B B B B53 -0.08 1/10 24 24 B B C C C54 -0.58 1/10 15 15 A A B B B55 -0.08 1/10 5 5 B B B B B56 -0.22 1/14 9 9 A B B B B57 -0.38 1/14.18.19.20 178 178 B B B C C58 -0.88 1/9.10 106 106 B B B B A59 -1.04 1/11.14.15.18.20 245 245 B B B A A60 -0.98 1/19 43 43 B B B B B61 -1.11 1/15 40 40 C C C C C62 -0.97 1/10 12 12 A B B B C63 -1.18 1/10 23 23 B B B B C64 -0.93 1/10 15 15 A B B A A65 -0.24 1/9 50 50 A B B B B66 -0.58 1/8 41 41 A B B B C67 -0.49 1/11 50 50 B D D D D68 -0.54 1/15.18 、1/25 34 90 124 A A A A A69 -0.41 1/14.19 90 90 A A A A A
合計(個) 866 980 1846 - - - - -
水深 備考St. 移植日
表 1.2-1(3) 移植の履歴と生育状況(St.70~B-1)
個数(個) 移植ブロック群の生育状況
当日移植 翌日移植 合計 -2月27日~3月1日
3月23~25日
5月13~14日
6月25~28日
70 -0.94 1/24.25、2/7 126 126 - C C C C71 -0.99 1/22.23 86 86 - C C C B72 -0.33 1/25、2/7.8 133 133 - A A A A73 -0.47 1/2.23.24 110 110 - A A A A74 -1.19 1/25 13 13 - B C C C75 -0.79 1/22.23.24、2/4.6.7.8 245 21 266 - B B B B76 -0.89 1/20 50 50 - A B B B77 -0.26 1/24 20 20 - B B B B78 -0.60 1/8 32 32 - B B B A
A-1 -1.04 2/8.9.10.11 355 355 - A A A AB-1 -1.12 2/8.9.10.11 367 367 - A A A A
合計(個) 1487 71 1558 - - - - -
注)1.移植ブロック群の生育状況については、ブロックの崩壊状況等を加味し、「A:良」「B:やや良」「C:やや不良」「D:不良」の4段階で判定を行い、 それぞれ「 」「 」「 」「 」の色彩で示した。 2.「 」は、移植後1ヵ月後における移植ブロックの崩壊が大きかった地点を示す。 3.「 」は、水深-0.1m以浅の地点を示す。
水深 備考St. 移植日
- 5 -
表 1.2-2 移植ブロック群の生育状況の割合
生 育 状 況
移植時期 項 目 A B C D
箇 所 数 3 7 6 19
比率(%) 9 20 17 54
ブロック数 233 255 493 1905
比率(%) 8 9 17 66
箇 所 数 10 16 15 4
比率(%) 22 36 33 9
ブロック数 1577 965 737 125
比率(%) 46 28 22 4
箇 所 数 13 23 21 23
比率(%) 16 29 26 29
ブロック数 1810 1220 1230 2030
比率(%) 29 19 20 32
注)ブロック数とは移植用バケットの数である。
St.1~35
St.36~B-1
計
表 1.2-3 移植ブロック群の生育状況(C+D)のうち水深の浅い箇所の割合
生育状況C及びD 干出する箇所 比 率(%)
移植時期 箇所数 ブロック数 箇所数 ブロック数 箇所数 ブロック数
St.1~35 25 2398 22 2222 88 93
St.36~B-1 19 862 3 70 16 8
計 44 3260 25 2292 57 70
注)移植ブロック(塊)は、高さが20cm程度であり、水深20cm以下の箇所は大潮の干
干出するものとした。
- 6 -
7 9
9
)
写真1.2-1 生育状況「A」の代表的な状況(平成14年6月25~28日
St.1
- 7 -
St.5
St.A-1
St.6St.24 St.49
St.52 St.78
写真1.2-2 生育状況「B」の代表的な状況(平成14年6月25~28日)
- 8 -
)
写真1.2-3 生育状況「C」の代表的な状況(平成14年6月25~28日
St.33
- 9 -
St.51
St.71
St.57St.2 St.4
St.13 St.37
写真1.2-4 生育状況「D」の代表的な状況(平成14年6月25~28日)
- 10 -
(3)生育状況の要因について
移植後の生育を良好に保つための要因について検討するため、ランク D に判定された
移植ブロック群と、ランク A、B に判定された移植ブロック群の主に水深との関係につい
て検討した。
6 月調査時点でランクD(状況は不良)に評価された 80 地点中 23 地点について、不
良となった原因の分析を表 1.2-3、図 1.2-3 に示し、ランク A、B に判定された移植ブロ
ックの水深を図 1.2-4、表 1.2-5 に示した。
1. 追跡調査開始当初の 1 月において、生育状況が「D」と判定された地点は
69 地点中 8 地点あり、このうち 5 地点で移植ブロックの崩壊の大きいこ
とが確認された。この原因として、試験移植施工時に問題があったものと
考えられる。なお、残りの 3 地点のうち St.12 に関しては、水深が
C.D.L.-0.33m と比較的深いものの生育状況が悪かった。この原因は、1
月より葉の緑色部がほとんど確認されなかったことから、移植時に一晩以
上干出した影響を受け葉が枯死した可能性が高いものと考えられる。
2. 調査期間中、生育状況「D」と判定された移植ブロック群は、1月の調査
において 69 地点中 8 地点、2 月の調査において 80 地点中 16 地点、3 月
の調査において 80地点中 17地点、5月の調査において 80地点中 21地点、
6 月の調査において 80 地点中 23 地点であった。この 23 地点を要因別に
みると(図 1.2-3)、移植時のブロックの崩壊が大きく関与していると考え
られる地点が 7 地点(30%)、水深が C.D.L.-0.10m以浅と干出の影響を大
きく受けていると考えられる地点が 10 地点(44%)、移植時の干出や波浪
の影響などを受けていると思われるものの主な要因が特定できない地点
が 6 地点(26%)であった。
3. 平成 14 年 6 月の調査において、生育状況が「A」ならびに「B」と判定
された地点は 36 地点であった。「A」ならびに「B」と比較的良好な生育
状況の移植ブロックは、平成 14 年 1 月以降、干出しない場所として
C.D.L.-0.2m以深に移植したものがほとんどだった。
(まとめ)
干出による影響は、移植する場所を深所に移行することで改善されるものと考えられ
る。表 1.2-5 に示したように、最終的に水深 C.D.L.-0.10mを境に生育状況は浅所で悪
く、深所で比較的良好な傾向を示した。したがって、移植水深を考慮した施工方法の改
- 11 -
善により、今回生育状況が「D」となった地点の 70%以上は改善が可能と考えられる。
- 12 -
表 1.2-3 平成 14 年 6 月において生育状況「D」と判定された地点とその主な要因
項目平成14年
調査点1月 2月 3月 5月 6月
St.1 C D D D D -0.13 ○ 移植後1ヵ月におけるブロックの崩壊が大きかった。St.2 D D D D D -0.08 ○ 移植後1ヵ月におけるブロックの崩壊が大きかった。St.3 C D D D D -0.04 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.4 C D D D D -0.02 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.5 A D D D D -0.53 主な要因は不明。St.6 C D D D D -0.19 主な要因は不明。St.7 D D D D D +0.09 ○ 移植後1ヵ月におけるブロックの崩壊が大きかった。St.9 D D D D D +0.11 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.11 D D D D D -0.16 ○ 移植後1ヵ月におけるブロックの崩壊が大きかった。St.12 D D D D D -0.33 移植当初より葉の緑色部がなく、生育状況がよくなかった。St.13 B D D D D -0.20 主な要因は不明。St.14 B C C D D -0.06 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.15 A C C D D -0.17 主な要因は不明。St.20 B B B B D -0.10 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.27 D D D D D -0.06 ○ 移植後1ヵ月におけるブロックの崩壊が大きかった。St.29 D D D D D +0.11 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.31 C C C D D +0.30 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St. 32 B B C C D +0.09 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.34 B D D D D +0.08 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.36 C C C D D -0.01 水深が-0.10mより浅く、干出が大きい。St.37 D D D D D -0.48 ○ 移植後1ヵ月におけるブロックの崩壊が大きかった。St.38 B B D D D -0.68 主な要因は不明。St.67 B D D D D -0.49 ○ 移植後1ヵ月におけるブロックの崩壊が大きかった。
13地点 7地点
注)1. :水深-0.10mより浅い地点を示す。
生育状況「D」の主な要因
- - - - -17地点
水深(m)
移植後1ヵ月における移植ブロックの崩壊が大きかった地点
合計 23地点
図1.2-3 平成14年6月に生育状況「D」と判定された地点の生育状況が悪い主な要因
10地点
7地点
6地点 凡 例
水深が浅かった地点。
移植後1ヵ月のブロックの崩 壊が大きかった地点。
他の要因によると考えられる地点。
注)図には平成14年6月調査時において生育状 況「D」と判定された地点のみを示す。
:
:
:
- 13 -
図1.2-4 生育状況「A」ならびに「B」と判定された水深
表1.2-5 生育状況「A」ならびに「B」と判定された水深水深 +0.1以浅 +0.1~0.0 0.0~-0.1 -0.1~-0.2 -0.2以深
生育状況A 0 106 0 106 1598B 30 0 157 138 895
合計 30 106 157 244 2493注)表中の数字は、移植ブロック数を示す。
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
+0.1以浅 +0.1~0.0 0.0~-0.1 -0.1~-0.2 -0.2以深
水深(m)
移植
ブロ
ック
数
: B
: A
生育状況
- 14 -
1.3 6月までの広域移植実験追跡調査結果
追跡調査は図 1.3-1 に示す位置に設けたモニタリングポストでコードラート調査(10m
×10m)を行った。各地点の水深は表 1.3-1 のとおりである。
図 1.3-1 モニタリングポスト(コードラート調査)位置
表 1.3-1 モニタリングポストの水深
調査点 水深(C.D.L.基準, m)
a -0.24~+0.31
b -0.17~+0.23
c -0.14~+0.31
d -0.27~+0.08
e -0.28~+0.02
f -0.24~+0.16
g -0.24~+0.26
h -0.32~+0.03
i -0.40~+0.05
j -0.65~-0.50
k -0.85~-0.75
l -0.95~-0.85
干出することがある
干出しない
- 15 -
(1) モニタリング調査結果
10m×10m のコードラート内における海草類分布状況を図 1.3-2 に示した。面積が変
わらないか増加する傾向がみられる調査点は、St. a, b, d, i, j, l であった。これらの調査
点では調査区内で面積が減少する部分、増加する部分が混在し、その結果としてコード
ラート全体として面積の増加がみられた。一方、面積が減少する傾向がみられた調査点
は、St, c, e, f, g, h, k であり、コードラート内全体で、面積が減少する傾向がみられた。
(2) 面積変化
10m×10m のコードラート内における海草類の面積変化を図 1.3-3 に示した。移植藻
場で面積が増加する傾向がみられた調査点は St. a, b, d, i, j, l であり、これらの中には、
移植後数か月間面積の増加がみられなかったものの、その後 3 月頃から増加する傾向が
みられた調査点が含まれた。一方、既存藻場の存在する St. a~i, l では、調査点 a を除
く全ての調査点で面積が増加する傾向がみられた。
(3) 生育被度
10m×10m のコードラート内における海草類の生育被度の変化を図 1.3-4 に示した。
St. j, k, l では被度の増減がみられなかったが、それ以外の調査点では、被度は低下する
傾向がみられた。
(4) 葉長の変化
主要構成種(ベニアマモ、リュウキュウアマモ、ボウバアマモ、リュウキュウガモ)
の葉長変化を図 1.3-5 に示した。
ベニアマモとボウバアマモは 2 月以降、比較的良好に生長したが、リュウキュウアマ
モは変化がみられなかった。また、リュウキュウスガモは地点によって異なり、St. b, d,
f, g, i, j, k では良好に生長したが、St. a, c, e, h では良好でなかった。
- 16 -
- 17 - - 17 -
- 18 -
- 19 -
- 20 -
- 21 -
- 22 -
- 23 -
- 24 -
- 25 -
- 26 -
- 27 -
- 28 -
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既存海草類 50%以上試験移植海草類 10-50% 既存海草類 10-50%試験移植海草類 10%未満 既存海草類 10%未満
図1.3-3(1) 移植後の面積変化(St.a~b)
St.a(移植海草類)
0
20
40
60
80
1ヵ月後(H13.12) H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.a(既存海草類)
0
20
40
60
80
1ヵ月後(H13.12) H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.b(移植海草類)
0
20
40
60
80
1ヵ月後(H13.12) H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.b(既存海草類)
0
20
40
60
80
1ヵ月後(H13.12) H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
- 29 -
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既存海草類 50%以上試験移植海草類 10-50% 既存海草類 10-50%試験移植海草類 10%未満 既存海草類 10%未満
図1.3-3(2) 移植後の面積変化(St.c~d)
St.c(移植海草類)
0
20
40
60
80
1ヵ月後(H13.12) H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.c(既存海草類)
0
20
40
60
80
1ヵ月後(H13.12) H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.d(移植海草類)
0
20
40
60
80
1ヵ月後(H13.12) H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
d
St.d(既存海草類)
0
20
40
60
80
1ヵ月後(H13.12) H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
- 30 -
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既存海草類 50%以上試験移植海草類 10-50% 既存海草類 10-50%試験移植海草類 10%未満 既存海草類 10%未満
図1.3-3(3) 移植後の面積変化(St.e~f)
St.e(移植海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 1ヶ月後(H14.1) H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.e(既存海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 1ヶ月後(H14.1) H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.f(移植海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 1ヶ月後(H14.1) H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.f(既存海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 1ヶ月後(H14.1) H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
- 31 -
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既存海草類 50%以上試験移植海草類 10-50% 既存海草類 10-50%試験移植海草類 10%未満 既存海草類 10%未満
図1.3-3(4) 移植後の面積変化(St.g~h)
St.g(移植海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 1ヶ月後(H14.1) H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.g(既存海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 1ヶ月後(H14.1) H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.h(移植海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 1ヶ月後(H14.2) H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.h(既存海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 1ヶ月後(H14.2) H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
- 32 -
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既存海草類 50%以上試験移植海草類 10-50% 既存海草類 10-50%試験移植海草類 10%未満 既存海草類 10%未満
図1.3-3(5) 移植後の面積変化(St.i~j)
St.i(移植海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 1ヶ月後(H14.2) H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.i(既存海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 1ヶ月後(H14.2) H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.j(移植海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 1ヶ月後(H14.2) H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
j
St.j(既存海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 1ヶ月後(H14.2) H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
既存海草類はみられなかった。
- 33 -
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既存海草類 50%以上試験移植海草類 10-50% 既存海草類 10-50%試験移植海草類 10%未満 既存海草類 10%未満
図1.3-3(6) 移植後の面積変化(St.k~l)
St.k(移植海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 1ヶ月後(H14.2) H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.k(既存海草類)
0
20
40
60
80
1
(m2)
既存海草類はみられなかった。
St.l(移植海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 1ヶ月後(H14.3) H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.l(既存海草類)
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 1ヶ月後(H14.3) H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
- 34 -
図1.3-4(1) 10m×10mコードラートにおける藻場の生育被度の変化
St.a
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.b
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.c
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
(%)
(年月)
St.d
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.e
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.f
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
(%)
(年月)
(%)
(年月)
(%)
(年月)
(%)
(年月)
(%)
(年月)
- 35 -
図1.3-4(2) 10m×10mコードラートにおける藻場の生育被度の変化
St.g
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.h
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.j
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.k
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.i
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
St.l
0
20
40
60
80
100
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
既存藻場
移植藻場
(%)
(年月)
(%)
(年月)
(%)
(年月)
(%)
(年月)
(%)
(年月)
(%)
(年月)
- 36 -
- 37 -
図1.3-5 主要構成種の平均葉長(上位30株平均)の変化
ベニアマモ
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
St.b St.c
St.f St.g
ボウバアマモ
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
St.a St.b St.c St.dSt.e St.f St.g St.hSt.j St.k St.l
リュウキュウアマモ
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
St.a St.d St.h
St.j St.k St.l
リュウキュウスガモ
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
H13.12 H14.1 2 3 4 5 6
St.a St.b St.c St.dSt.e St.f St.g St.hSt.i St.j St.k
(cm)
(年月)
(cm)
(年月)
(cm)
(年月)
(cm)
(年月)
1.4 台風による藻場の影響について
本年 7 月上旬には、広域移植実験に着手して以来初めて、勢力の強い台風が相次いで沖
縄本島付近を通過したことから、その影響について検討した。
(1) 気象状況
1)台風 5 号と台風 7 号の比較
7 月に沖縄本島付近を通過した 2 つの台風(台風 5 号及び台風 7 号)について、表
1.4-1 に比較した。
台風の勢力は、台風 5 号の方が強いものの、台風 7 号はその中心が沖縄本島を直撃
したため影響は比較的大きかった。
表 1.4-1 台風 5 号及び台風 7 号の比較
台風 5 号 台風 7 号
台風最接近日 平成 14 年 7 月 4 日午前 平成 14 年 7 月 14 日夜半から 翌 15 日
中心気圧 945hpa 960hpa
中心位置 26°40′N,124°35′E 26°10′N,127°35′E
進行方向 北北西 北
速度 20km/h 20km/h
暴風域 南東側 330km
北西側 240km
※那覇市が暴風圏内にあったのは、7 月 3 日 23:00~7 月 4 日 11:00までの約 12 時間
南東側 150km
北西側 110km
※那覇市が暴風圏内にあったのは、7月 14日 16:00~7月 15日 4:00までの約 12 時間
強風域 南東側 750km
北西側 700km
※那覇市が強風圏内にあったのは、7 月 2 日 21:00~7 月 5 日 3:00までの約 54 時間
南東側 600km
北西側 300km
※那覇市が強風圏内にあったのは、7 月 14 日 3:00~7 月 5 日 12:00までの約 33 時間
最大風速 45m/s 35m/s
最大瞬間風速 40.8m/s(那覇市,7 月 4 日 3:29) 40.1m/s(那覇市,7 月 14 日 22:22)
(注)台風 5 号については、平成 14 年 7 月 4 日午前 9 時、台風 7 号については平成 14 年 7 月 14 日午後9 時の勢力を比較した。
-- 38
■台風 5 号 台風 5 号は 6 月 29 日 15 時にフィリピンの東で発生した。台風 5 号は、翌月の 7 月 3
~4 日に沖縄本当に接近し、沖縄本島を風速 25m/s 以上の暴風圏内に巻き込みながら、
北北西に進んだ(図 1.4-1:台風経路図参照)。沖縄付近通過中は、中心気圧 945hPa、
最大風速 45m/s の強い勢力を保ち、7 月 4 日午前 3 時に那覇市内で最大瞬間風速 40.8m/s
を記録した。
図 1.4-1 台風 5 号の進路
-- 39
■台風 7 号 台風 7 号は 7 月 8 日 9 時にトラック海近海で発生した。台風 7 号は、7 月 14 日夜半か
ら 15 日に沖縄本当に接近し、沖縄本島を風速 25m/s 以上の暴風圏内に巻き込みながら、
北上した(図 1.4-2:台風経路図参照)。沖縄付近通過中は、中心気圧 960hPa、最大風速
35m/s の強い勢力を保ち、7 月 14 日午後 22 時に那覇市内で最大瞬間風速 40.1m/s を記録
した。
図 1.4-2 台風 7 号の進路
-- 40
2) 台風 5 号・7 号通過時の中城湾の風向および波浪
中城湾周辺で観測された台風 5 号接近時の気象、海象データによると、波高に関して
は、7m 前後の高い海洋性の波高が 14 時間程度継続して観測された。また、風速につい
ては、目立ったピークはみられないものの、7 月 3 日 16 時頃から7月4日 13 時頃まで
の約一昼夜、風速 15m/s 以上の強風が断続的に記録された。
台風 7 号接近時の気象、海象データによると、波高に関しては、9m 程度の高い海洋
性の波高が台風の中心の通過前に観測された。また、風速については、台風の中心の通
過前後にピークを迎え、風速 22.5m/s の強風が観測された。
勢力の強い台風 5 号通過時は、長時間にわたって風速及び波高に影響がみられたが、
勢力は比較的弱いものの沖縄本島を直撃した台風 7 号通過時は、風速及び波高のピーク
が台風 5 号通過時よりも上回っていた。
-- 41
台風 5 号通過時 台風 7 号通過時
風向・風速の時系列変化(中城湾港)
0
5
10
15
20
25
30
7/3 7/4 7/5
風速
(m
) 風向
風速
風向
波高・周期と潮位の時系列変化(津堅島)
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
9.0
10.0
7/3 7/4 7/5
波高
、潮
位(m
)
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
周期
(秒
)
波高
潮位
周期
N
NE
E
SE
S
SW
W
NW
N
07/04 02:00 波浪計算対象時刻
07/04 02:00 波浪計算対象時刻
風向・風速の時系列変化(中城湾港)
0
5
10
15
20
25
30
7/14 7/15 7/16
風速
(m
) 風向
風速
風向
N
NE
E
SE
S
SW
W
NW
N
波高・周期と潮位の時系列変化(津堅島)
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
8.0
9.0
10.0
7/14 7/15 7/16
波高
、潮
位(m
)0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
周期
(秒
)
波高
潮位
周期
図 1.4-3 中城湾周辺における風向・風速・波浪の経時変化(左図:台風 5 号通過時、右図:台風 7 号通過時)
-- 42
(2) 藻場の状況
前節 1.3 に示した追跡調査のモニタリングポスト(図 1.4-4)の状況を同様に観察した。
■ 台風 5 号通過後の現地調査
○台風 5 号の沖縄本島への接近日:平成 14 年 7 月 3~4 日
○ 現地調査日:平成 14 年 7 月 10~12 日
■ 台風 7 号通過後の現地調査
○台風 7 号の沖縄本島への接近日:平成 14 年 7 月 14~15 日
○現地調査日:平成 14 年 7 月 20~22 日
図 1.4-4 調査地点
-- 43
① 台風通過後のコードラート内の状況
1)台風 5 号通過後のコードラート観察結果
■既存藻場の状況
○ 既存藻場は、ほぼ全てのコードラートの周辺において、砂の堆積・流失、地下茎の
露出や海草類の流失等が確認された。
○ 全体的な傾向として、St.cならびに St.d の比較的沖合い側の地点ほど、既存海草類
の流失や地下茎の露出状況が多い傾向にあった。ただし、海藻の流出や地下茎の露
出等と流向との関係は認められなかった。
■移植藻場の状況
○ 各地点とも、砂の堆積と流失によって生育被度が減少する傾向にあった。
○ コードラート内に生存する海草類は、全体的に地下茎が露出傾向にある状態のもの
よりは、砂が堆積し海草類の葉が埋没する傾向にあるものが多くみられた。このこ
とは、砂の堆積によって、ブロックが安定し、生育状況が良化する可能性を示して
いる。
○ 台風前の底質状況と比較し、台風の影響で露出したと考えられる礫や転石等が海底
上に目立った。
○ 底質の流失や海藻の流出と流向との関係は認められなかった。
2)台風 7 号通過後のコードラート観察結果
■既存藻場の状況
○ 台風5号通過後の状況と同様、砂の堆積、流失、地下茎の露出、海草類の流出等が
確認されたが、5号通過後から著しい変化ではなかった。
■移植藻場の状況
○ 台風5号通過後の状況と同様、砂の堆積、流失、地下茎の露出、海草類の流出等が
確認されたが、5号通過後から著しい変化ではなかった。
3)調査結果のまとめ
○ 台風の影響は、既存海草類ならびに試験移植海草類ともに確認され、主に底質ごと
海草類が流失した場合と、海草類の上に漂砂による堆積が生じ、海草類が埋没する
ことで生育被度が低下した場合の 2 ケースが確認された。
○ このような台風の影響による流失箇所や堆積箇所は、台風の波浪が長時間継続して
いたため、全体的には流失や堆積を交互に繰り返し変化したものと考えられる。
○ 台風による影響は、既存海草類と比較して、試験移植海草類において多い傾向にあ
った。既存海草類は、試験移植海草類と比較して、底質上に平坦に連続して広がっ
-- 44
ており、地下茎の露出も少なかったことから、一因として波浪の影響を軽減できた
と考えられる。
○ 試験移植海草類は、浅所と比較して、St.j、St.k、St.l の深所において流失した海
草類が少なく、波浪による影響は小さかったものと考えられる。
○ 試験移植海草類の葉長は、6月と7月の間で全体的に減少傾向にあり、礫等が波浪
により撹乱され、その影響で切断されたものと考えられる。
-- 45
St.h周辺:砂が堆積した状況 St.l周辺:砂が堆積した状況
St.a周辺:一部が流失し地下茎の露出した状況 St.c周辺:地下茎が露出した状況
St.e周辺:既存海草類が流失した状況 St.f周辺:砂が堆積した状況
写真 1.4-1 台風 5 号通過後の既存海草類の状況
-- 46
St.f:移植海草が流失した状況 St.g:移植海草が流失した状況
St.a:地下茎が露出した状況 St.b:地下茎が露出した状況
St.d:砂が堆積した状況 St.f:砂が堆積した状況
写真 1.4-2(1) 台風 5 号通過後の移植した海草類の状況
-- 47
St.h:移植した海草類が流失した状況 St. h:砂が堆積した状況
St.j:移植した海草が流失した状況 St.k:地下茎が露出した状況
St.l:砂が堆積した状況
写真 1.4-2(2) 台風 5 号通過後の移植した海草類の状況
-- 48
St.e:移植海草が流失した状況 St.f:砂が堆積した状況
St.a:移植海草が流失した状況 St.b:砂が堆積した状況
St.c:移植海草が流失した状況 St.d:地下茎が露出した状況
写真1.4-3(1) 台風7号通過後の移植藻場の状況
St.e:移植海草が流失した状況 St.f:砂が堆積した状況
St.a:移植海草が流失した状況 St.b:砂が堆積した状況
St.c:移植海草が流失した状況 St.d:地下茎が露出した状況
写真1.4-3(1) 台風7号通過後の移植藻場の状況
-- 49
St.g:移植した海草類が一部流失した状況 St. h:移植した海草が流失した状況
St.i:砂が堆積した状況 St.j:砂が堆積した状況
写真1.4-3(2) 台風7号通過後の移植藻場の状況
St.k:地下茎が露出した状況 St.l:砂が堆積した状況
St.g:移植した海草類が一部流失した状況 St. h:移植した海草が流失した状況
St.i:砂が堆積した状況 St.j:砂が堆積した状況
写真1.4-3(2) 台風7号通過後の移植藻場の状況
St.k:地下茎が露出した状況 St.l:砂が堆積した状況
-- 50
② 台風通過後のコードラート観察結果
台風通過前と通過後のコードラート観察結果を図 1.4-5~10 に示し、移植後からの面積
変化を図 1.4-11 に示す。
台風 5 号通過後は、St. a, c, d, e, g, h, i で移植藻場の面積の減耗が大きかった。既存藻
場と比較すると St. c, e では移植藻場の減耗が大きい傾向にあった。
台風 7 号通過後は各地点とも既存藻場と移植藻場で減耗が見られる傾向にあったが、深
所で生育の良好な St. j,k,l では減耗の程度が小さかった。
また、コードラート近傍における砂面変動を図 1.4-12 に示す。St. a, b, d, k を除き各地
点とも 20cm を超える侵食がみられ、台風5号通過後と7号通過後の変化は小さかった。
全般的に南北方向の浸食が大きい傾向にあった。
-- 51
■海草類分布状況の変化
移植後7ヶ月(平成14年6月19~24日) 移植後7ヶ月(平成14年6月19~24日)
台風5号通過後(平成14年7月10~12日) 台風5号通過後(平成14年7月10~12日)
台風7号通過後(平成14年7月20~22日) 台風7号通過後(平成14年7月20~22日)
St.a St.b
(凡例)
試験移植海草類 50%以上
試験移植海草類 10-50%
試験移植海草類 10%未満
既存海草類 50%以上
既存海草類 10-50%
既存海草類 10%未満
2m×2mのコードラート
図1.4-5 10m×10mのコードラート内における海草類分布状況(St. a・b)
-- 52
■海草類分布状況の変化
移植後7ヶ月(平成14年6月19~24日) 移植後7ヶ月(平成14年6月19~24日)
台風5号通過後(平成14年7月10~12日) 台風5号通過後(平成14年7月10~12日)
台風7号通過後(平成14年7月20~22日) 台風7号通過後(平成14年7月20~22日)
St.c St.d
(凡例)
試験移植海草類 50%以上
試験移植海草類 10-50%
試験移植海草類 10%未満
既存海草類 50%以上
既存海草類 10-50%
既存海草類 10%未満
2m×2mのコードラート
図1.4-6 10m×10mのコードラート内における海草類分布状況(St. c・d)
-- 53
■海草類分布状況の変化
移植後6ヶ月(平成14年6月19~24日) 移植後6ヶ月(平成14年6月19~24日)
台風5号通過後(平成14年7月10~12日) 台風5号通過後(平成14年7月10~12日)
台風7号通過後(平成14年7月20~22日) 台風7号通過後(平成14年7月20~22日)
St.e St.f
(凡例)
試験移植海草類 50%以上
試験移植海草類 10-50%
試験移植海草類 10%未満
既存海草類 50%以上
既存海草類 10-50%
既存海草類 10%未満
2m×2mのコードラート
図1.4-7 10m×10mのコードラート内における海草類分布状況(St. e・f)
-- 54
■海草類分布状況の変化
移植後5ヶ月(平成14年6月19~24日) 移植後6ヶ月(平成14年6月19~24日)
台風5号通過後(平成14年7月10~12日) 台風5号通過後(平成14年7月10~12日)
台風7号通過後(平成14年7月20~22日) 台風7号通過後(平成14年7月20~22日)
St.g St.h
(凡例)
試験移植海草類 50%以上
試験移植海草類 10-50%
試験移植海草類 10%未満
既存海草類 50%以上
既存海草類 10-50%
既存海草類 10%未満
2m×2mのコードラート
図1.4-8 10m×10mのコードラート内における海草類分布状況(St. g・h)
-- 55
■海草類分布状況の変化
移植後5ヶ月(平成14年6月19~24日) 移植後5ヶ月(平成14年6月19~24日)
台風5号通過後(平成14年7月10~12日) 台風5号通過後(平成14年7月10~12日)
台風7号通過後(平成14年7月20~22日)
St.i
図1.4-9 10m×10mのコードラート内における海草類分布状況(St. i・j)
台風7号通過後(平成14年7月20~22日)
St.j
(凡例)
試験移植海草類 50%以上
試験移植海草類 10-50%
試験移植海草類 10%未満
既存海草類 50%以上
既存海草類 10-50%
既存海草類 10%未満
2m×2mのコードラート
-- 56
■海草類分布状況の変化
移植後4ヶ月(平成14年6月19~24日) 移植後5ヶ月(平成14年6月19~24日)
台風5号通過後(平成14年7月10~12日) 台風5号通過後(平成14年7月10~12日)
台風7号通過後(平成14年7月20~22日) 台風7号通過後(平成14年7月20~22日)
St.k St.l
(凡例)
試験移植海草類 50%以上
試験移植海草類 10-50%
試験移植海草類 10%未満
既存海草類 50%以上
既存海草類 10-50%
既存海草類 10%未満
2m×2mのコードラート
図1.4-10 10m×10mのコードラート内における海草類分布状況(St. k・l)
-- 57
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既試験移植海草類 10-50% 既試験移植海草類 10%未満 既
St.a
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6 旬) 旬)
(m2)
St.b
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.c
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.d
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
号
号
図 1.4-11(1) 移植後の面積変化(St.a~
-- 58
H14.7(上
台風 5通過後
存海草類存海草類存海草類
旬)
旬
旬)
号
号
号
d)
H14.7(下
台風 7通過後
旬)
号
H14.7(上
台風 5通過後
H14.7(下
台風 7通過後
) 旬)
号
H14.7(上
台風 5通過後
H14.7(下
台風 7通過後
旬)
H14.7(上
台風 5通過後
H14.7(下台風 7 号
通過後
50%以上10-50%10%未満
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既存試験移植海草類 10-50% 既存試験移植海草類 10%未満 既存
St.e
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6 旬) 旬)
(m2)
St.f
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.g
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
St.h
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6
(m2)
号
号
図 1.4-11(2) 移植後の面積変化(St.
-- 59
H14.7(上
台風 5通過後
海草類 5海草類 1海草類 1
旬)
旬)
H14.7(上旬)台風 5 号
通過後
号
e~h)
H14.7(下
台風 7通過後
旬)号
H14.7(上
台風 5通過後
H14.7(下台風 7通過後
旬)
号
H14.7(上
台風 5 号
通過後
H14.7(下
台風 7通過後
0%以上0-50%0%未満
H14.7(下旬)台風 7 号
通過後
図 1.4-11(3) 移植後の面積変化(St.i~l)
(凡例) 試験移植海草類 50%以上 既存海草類 50%以上試験移植海草類 10-50% 既存海草類 10-50%試験移植海草類 10%未満 既存海草類 10%未満
St.i
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6 H14.7(上旬) H14.7(下旬)
(m2)
St.j
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6 H14.7(上旬) H14.7(下旬)
(m2)
St.k
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6 H14.7(上旬) H14.7(下旬)
(m2)
St.l
0
20
40
60
80
H13.12 H14.1 H14.2 H14.3 H14.4 H14.5 H14.6 H14.7(上旬) H14.7(下旬)
(m2)
台風 7 号
通過後 台風 5 号
通過後
台風 7 号
通過後 台風 5 号
通過後
台風 7 号
通過後 台風 5 号
通過後
台風 7 号
通過後 台風 5 号
通過後
-- 60
St.
a
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
b
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
c
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
d
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
e
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
f
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
年月
年月
年月
年月
年月
年月
cm
cm
cm
cm
cm
cm
台風
5号
通過
後台
風7号
通過
後
台風
5号
通過
後台
風7号
通過
後
台風
5号通
過後
台風
7号通
過後
台風
5号
通過
後
台風
7号
通過
後
台風
5号
通過
後台
風7号
通過
後
台風
5号
通過
後台
風7号
通過
後
図1.4.-12(1)
砂面
変動
(St.a~
f)
-- 61
St.
g
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
h
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
j
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
k
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
i
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
St.
l
-60
-50
-40
-30
-20
-100
10
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
上旬
7月
下旬
北 東 南 西
年月
年月
年月
年月
年月
年月
cm
cm
cm
cm
cm
cm
台風
5号通
過後
台風
7号通
過後
台風
5号通
過後
台風
7号通
過後
台風
5号
通過
後
台風
7号
通過
後
台風
5号
通過
後
台風
7号
通過
後
台風
5号
通過
後台
風7号
通過
後
台風
5号
通過
後台
風7号
通過
後
図1.4-12(2)
砂面
変動
(St.g~
l)
-- 62
(3)海草類が台風 5 号、7 号により受けた影響の要因の検討
較して移植藻場で大きくな
きく、台風 7 号通過時にはさらな
減耗率を比較すると、移植海草については、水深が深い(干出
c, e, h)
前節(2)から、台風による藻場への影響は、既存藻場と比
ることが観察された。その状況を定量的に確認し、さらに詳しく検討を行うため、調査
点 a~l について、6 月の海草類の生育面積と台風 5 号、7 号通過後の生育面積を比較し、
台風による藻場の減耗状況を整理した(表 1.4-2)。
全体的にみると、藻場の減耗は台風 5 号通過時に大
る減耗はほとんどみられない。また、調査点により減耗率に大きな違いがみられたもの
の、移植藻場と既存藻場を比較すると、全般的には移植藻場において海草類の残存率が
低い。このことから、既存藻場に比べ移植藻場の減耗が大きいことが確認できる。ただ
し、場所によっては既存の海草類でも台風 5 号の通過後、被度が 50%以上減少すること
があった(St. a, c)。
調査点の水深と藻場の
しない)調査点(St. j, k, l)における減耗率がいずれも 50%以下であり、水深が浅い(干
出することがある)調査点(St. a~i)よりも減耗率が小さい傾向にある。したがって、
現在の移植範囲では水深の深いほうが台風の影響を受けにくいと考えられる。
一方、移植海草類の減耗率が既存海草類の減耗率に比べて大きい調査点(St.
では、移植後の生育が良好でない傾向にあった。このことは、台風による影響は生育状
況が悪いほど強いと推察される。
-- 63
表 1.4-2 台風 5 号、7 号通過による藻場の減耗状況
移植藻場(%)
既存藻場(%)
移植藻場(%)
既存藻場(%)
a -0.24~+0.31 1.6 51 57 1.1 73 74 1.0b -0.17~+0.23 0.2 29 19 0.9 45 28 0.8c -0.14~+0.31 -6.7 80 55 0.4 98 54 0.0d -0.27~+0.08 0.1 59 35 0.6 72 48 0.5e -0.28~+0.02 -4.1 81 29 0.3 91 39 0.1f -0.24~+0.16 -1.1 34 13 0.8 46 22 0.7g -0.24~+0.26 -1.8 60 48 0.8 82 56 0.4h -0.32~+0.03 -1.9 90 12 0.1 95 24 0.1I -0.40~+0.05 0.8 59 40 0.7 70 45 0.5j -0.65~-0.50 0.9 36 - - 41 - -k -0.85~-0.75 -0.6 29 - - 41 - -l -0.95~-0.85 3.3 27 -13 0.6 38 7 0.7
平均 - -0.8 53 29 0.6 66 40 0.5
注)1.
2. 減耗率は、5号通過後、7号通過後とも、(6月の生育面積)に対する(6月からの減少面積)の割合で示した3.
(移植藻場の残存率)/(既存藻場の残存率)比
台風5号通過時 台風7号通過時
移植藻場の増加量は、移植後1か月から概ね1か月ごとに行われた調査をもとに、移植後1か月後から6月までの各月の生育面積を一次回帰分析した傾きにより求めた。
減耗率注2 減耗率
調査点
水深(C.D.L.基準、m)
移植藻場の増加量
(㎡/月)注1
(移植藻場の残存率)/(既存藻場の残存率)比
調査点jとkでは、既存藻場が分布しなかったため、減耗率および残存率比は算出していない。
-- 64
(4)台風 5 号時の波浪によるせん断力分布の検討
海藻草類移植実験の一環として、沖縄県地方を襲った台風 5 号通過後の移植地の状況を
気象条件等から推定された底面せん断力と比較することによって、台風が移植された海藻
草類に与える影響を検討する。
① 計算手法
底面せん断力は掃流力とも呼ばれ、掃流砂や浮遊砂の巻き上げを支配する力である。
ここでは波浪による海底面での水粒子の速度から計算した。
-- 65
検討手順と計算条件は以下のとおりである。
定 定
台風5号による海上風の推
図 1.4-13 台風 5
中城湾、湾内発生波の波浪推算(SMB 法)
浅海変形(エネルギー平
(参考)台
台風
-- 66
台風5号に外洋性波浪の推
中城湾内の外洋性波浪の推算 (エネルギー平衡方程式法)
合成波浪計算 衡方程式法)
底面せん断力計算号時の検討手順
風 16 号時(平成 13 年)
底面せん断力の計算
浅海変形計算
中城湾周辺の推算波浪
16 号による海上風の推定
表 1.4-3 計算条件の比較
項目 台風 5 号時(今回) 台風 16 号時(平成 13 年)
津堅島 観測値
波高(Ho)=6.42m 周期(To)=10.8sec 波向:SSE
7月 4 日の実測値
外洋性波浪(湾外)
波高(Ho)=7.87m 周期(To)=10.8sec 波向:SSE
波向は AWJP(気象庁)より推定
外洋性波浪(湾内)
波高(Ho)=1.19m 周期(To)=10.8sec 波向:SE
浅海変形計算結果による
湾内発生波 波高(Ho)=1.30m 周期(To)=4.0sec 波向:ESE
風速 25m/s 注1)として推算
波浪条件
合成波浪 波高(Ho)=2.24m 周期(To)=5.3sec 波向:SE
波高(Ho)=2.38m 周期(To)=4.8sec 波向:SSE
地盤高 (水深)
海底地形図 計画平面図
海底地形図 計画平面図
波高分布 エネルギー平衡方程式 リーフ上の波の変形(高山式)
エネルギー平衡方程式 リーフ上の波の変形(高山
式) 潮位 中城港湾の実測値 2.1m
(2002 年7月 4 日2時前後) 中城港湾の実測値 1.3m
(2001 年 9 月 8 日 4 時前後) リーフ端 地盤高 D.L –1.00m(水深 3.1m) D.L –1.00m(水深 2.3m)
相当粗度 底質の中央粒径 全域一様:1.0mm
底質の中央粒径 全域一様:1.0mm
注1)図 1.4-3 に示す最大風速は約 16m/s だが、沖縄本島が風速 25m/s 以上の暴風圏内にはいってい
たこと、那覇市内で最大瞬間風速 40.8m/s が観測されたことから、25m/s として推算した。なお、台
風 16 号時(平成 13 年)の湾内発生波は風速 30m/s として推算した。
-- 67
)
浅海変形計算による 外洋性波浪算定位置
SMB 法による 湾内発生波 推算位置
外洋性波浪算定用
計算領域(大領域
外洋性波浪算定用 計算領域(中領域)
図 1.4-1
合成波浪算定用 計算領域(小領域)
4 底面せん断力計算領
-- 68
合成波浪 入射境界
域
② 底面せん断力の分布
底面せん断力の計算結果をみると、沖から岸に向かって水深が急激に浅くなる付近で
40dyn/cm2 以上と高く、岸側の浅瀬で低い結果となった。特に、砂州から西防波堤にか
けて広がる浅瀬では広い範囲が 20dyn/cm2 以下となっており、沖側から入射してくる波
浪が浅瀬で減衰することを示している。
モニタリングポスト周辺における台風 5 号通過時の底面せん断力は、概ね 20dyn/cm2
以下となっているものの、最も東側のモニタリングポスト付近では 20dyn/cm2、波高は
50~70cm と予測された。
モニタリングポスト付近の値を、平成 13 年の台風 16 号時の予測と比較すると、波高
は台風 5 号の時の方が高い値を示しているが、底面せん断力については、ほとんど同様
の値となった。
-- 69
St. l
St. k
St. j
St. i
St. h
St. g
St. f
St. e
St. d
St. c
St. b
St. a
モニ
タリ
ング
ポス
ト
凡例
40dy
n/cm
2
20dy
n/cm
2
図1.4-15(1)
台風
5号
の「
うね
り+
風波
」の
最大
時に
おけ
る底
面せ
ん断
力(
平成
14年
7月
4日
02:00)
-- 70
図1.4-15(2)
台風
5号
の「
うね
り+
風波
」の
最大
時に
おけ
る波
高(
平成
14年
7月
4日
02:00)
モニ
タリ
ング
ポス
ト
凡例
St. l
St. k
St. j
St. i
St. h
St. g
St. f
St. e
St. d
St. c
St. b
St. a
-- 71
SSE
SSE
4.8
4.8
20dy
n/cm
2 20
dyn/
cm2
40dy
n/cm
2 40
dyn/
cm2
凡例
凡
例
図1.4-16(1)
平成
13年
台風
16号
の「
うね
り+
風波
」の
最大
時に
おけ
る底
面せ
ん断
力(
平成
13年
9月
8日
04:00)
St. l
St. k
St. j
St. i
St. h
St. g
St. f
St. e
St. d
St. c
St. b
St. a
-- 72
St. l
St. k
St. j
St. i
St. h
St. g
St. f
St. e
St. d
St. c
St. b
St. a
4.8
SSE
図1.4-16(2)
平成
13年
台風
16号
の「
うね
り+
風波
」の
最大
時に
おけ
る波
高(
平成
13年
9月
8日
04:00)
-- 73
1.5 まとめ -広域海藻移植の今後に向けて-
(1)広域的な藻場の分布変動の把握
昭和 52 年以降の航空写真で確認される藻場分布は、昭和 52 年から平成 3 年の間では
3倍近い増加がみられ、その後も 10~20ヘクタールの変動がみられる(図 1.5-1参照)。
現在の藻場移植の面積は数ヘクタールであることから、移植後に活着した海草類の生育
はモニタリング調査を継続することで把握しつつ、広域的に藻場をとらえ自然変動も含
めた分布変動を適宜把握することが望ましいと考えられる。
(広域的な藻場分布調査の例)
●広域移植実験の範囲を対象として、半年に1回の頻度で海草藻場の分布調査を行って
いく。分布調査は移植の対象種を含む大型海草類の高被度・低被度分布、水深と底質
の概査による海草生育可能範囲と非生育範囲の区分について行い、平成 13 年度に実
施した広域移植実験前の海草移植先詳細環境調査ならびに新規移植先状況調査、藻場
分布調査と比較をして藻場造成の効果を評価する。
●隔年規模を想定して泡瀬地区全体の藻場分布状況を調査するとともに、空中写真の撮
影を行って藻場分布状況の自然変動を含めた消長を把握していくことを検討する。
(2)定量的な追跡調査の重点化
通常、海藻を移植した場合、成長が停滞したり、様々な要因による初期減耗が生じや
すいと考えられる。参考として、芝植え工法により移植した海草株数の変化を図 1.5-2
に示すが、ボウバアマモ、リュウキュウアマモの移植株は、移植後概ね3~6か月間、
移植時と同程度か、やや減少する傾向がみられ、それ以降増加した。このように、移植
株は、移植後数ヶ月間成長が停滞する時期(ラグ・フェイズ)が存在するため、半年か
ら1年程度の監視が必要である。このような変化を追跡するためには、モニタリングポ
ストにおける定量的な評価が有効であることが示されたことから、モニタリングポスト
の調査に重点をおき、生育状況調査は(1)の分布調査に発展的解消することで終了する。
モニタリングポストの調査としては、深い所に重点を置いて以下の考え方で進めること
とする。
(モニタリングポストの調査の考え方)
今後浅場への移植を予定しないことから、深場の3地点だけをモニタリングポストと
して継続するとともに、新たに深場で2地点程度モニタリングポストを追加して精度を
高めていく。
(参考:生育状況調査終了する背景について)
広域移植実験の移植ブロック群を対象として、移植後1ヶ月から順次継続的に行って
きた移植海草の生育状況調査では、大潮期に干出することがある浅所での移植や移植施
工状態が良好でなく移植ブロックの崩壊が大きい場合に生育状況の低下が大きいこと
-- 74
が明らかとなった。この結果を受けて、移植水深を考慮した慎重な施工方法を行ってい
くことにより、今回生育状況が「D」となった地点の 70%以上は改善が可能と考えら
れ、今後予定される海草移植において大きく精度を高める方向性が示された。
平成 14 年 7 月現在、移植実験としては5~8ヶ月が経過した。概査によればこの7
月の台風通過によって、6月までに生育状況が「D」であった地点では枯死した海草の
葉や地下茎のほとんどが流失し、「C」でも状況変化が大きいため、元々の移植ブロッ
ク群の確認が困難となり、初期の調査状況と同様な判定が不可能となってきている。ま
た、生育状況が良好で十分に活着し、地下茎の伸長によって周囲に生育を拡大している
場所やランクが低かった場所でも一部生残していた部分では、隣接した既存の海草藻場
との融合もみられており、移植ブロックの確認が不明瞭となってきている。そのため、
移植海草ブロック群の生育状況調査に関しては、7月中に台風通過後の植生の残存状況
を全地点で確認することとしているが、移植ブロック群であるか既存藻場であるかの判
定は不明確となる可能性が高い。その後は移植実験初期の経過から移植施工の技術的な
問題に関わる是正措置が明確になったことで継続調査を完了する考えである。
(3) 海草移植における台風の影響
毎年、台風による影響は沖縄地方にあっては回避できないものである。今後予定さ
れる海草移植では、生育のよい深所を中心に行うので、波浪の影響を低減することがで
きると考えられる。また、生育状況が良好な藻場では台風等の減耗の影響が小さいと考
えられることから、必要に応じて施工上の工夫も検討していくことが望ましいと考えら
れる。
-- 75
面積:77ha
平成5年
図 1.5-1 航空写真から確認される藻場分布
-- 76
面積:228ha
平成11年
a
面積:212h昭和52年
平成3年
面積:214ha
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (年月)
株数
St.Ⅱ リュウキュウアマモ
St.Ⅲ リュウキュウアマモ
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (年月)
株数
St.Ⅱ ボウバアマモ
St.Ⅲ ボウバアマモ
平成10年度 平成11年度 平成12年度
平成10年度 平成11年度 平成12年度
図 1.5-2 芝植え工法により移植した海草株数の変化
-- 77
2.クビレミドロ保全
2.1 取り組み状況について
クビレミドロ保全の全体計画フローは図2.1-1に示すとおりであり、現在まで、
現況調査、監視調査、移植実験、培養実験に着手している。平成13年度の最終委員
会報告以降の取り組み状況を以下に示す。
(1) 現況調査
泡瀬地区のクビレミドロの生育分布域について、平成13年5月、6月、平成14
年1月、3月に調査した結果を整理し、次節2.2節に示した。
(2) 監視調査
事業全体の監視調査とともに、クビレミドロの生育地周辺における保全対策とし
て、工事影響の監視調査を実施している。その結果を整理し、2.3節に示した。
(3) 移植実験
移植地における追跡調査結果を2.4節に示した。
(4) 培養試験
昨年度から実施している藻体培養試験と卵の培養試験は継続中で、卵については
発芽がみられた。
また、細胞培養について鹿児島大学水産学部の協力をあおいで進めている。計画
と経過については2.5節に示した。
- - - 78 -
- - - 79 -
2.2 クビレミドロの生育分布域
平成11年12月~平成14年3月までのクビレミドロの分布面積の変化を図2.2-1に示
し、平成13年度におけるクビレミドロ分布状況(分布範囲及び面積)を、図2.2-2に示
す。
図2.2-1より、クビレミドロの分布面積は季節的に変化し、3月に分布面積が最大と
なることがわかる。また、最大となる3月の分布面積は、年によって変動している。
図2.2-2からわかるクビレミドロの分布域は、例年とほぼ同様の区域であった。平成
13年度の生育面積は3月に16,750㎡となり、昨年度に比べ広かった。
0
4,000
8,000
12,000
16,000
20,000
12月 1月 2月 3月 12月 1月 2月 3月 5月 6月 1月 3月
平成11年
平成12年 平成13年 平成14年
生育
面積
(㎡
)
図2.2-1 クビレミドロの分布面積の経年変化
- - - 81 -
図2.2-2(1) 泡瀬地区における絶滅危惧種(クビレミドロ)の分布状況(平成13年5月21日)
図2.2-2(2) 泡瀬地区における絶滅危惧種(クビレミドロ)の分布状況(平成13年6月19日)
- - - 82 -
図2.2-2(3) 泡瀬地区における絶滅危惧種(クビレミドロ)の分布状況(平成14年1月28日)
図2.2-2(4) 泡瀬地区における絶滅危惧種(クビレミドロ)の分布状況(平成14年3月16日)
- - - 83 -
2.3 生育地の環境
クビレミドロの監視調査時の流入水路の水質を表2.3-1に示し、濁度経時変化を図
2.3-1に示す。
生息地の水質は流入水路に比べて全ての項目で1オーダー低い傾向にあり、流入水路
の影響は極めて小さいと考えられる。
図2.3-1において、平成14年1月25日の濁度が高くなっているのは、当日が荒天時(風
力6、波高4)であり、水深の浅いSt. 1(クビレミドロ生育地)、St. 2(基本監視点)で
濁り成分が巻き上げられたためであったことが現地調査時に確認されている。なお、1
月17日にSt. 1で一時的に濁度が高くなっているが、測定は下げ潮時に行われており、沖
側の工事地点からの濁りの影響ではないことが確認されている。
表2.3-1 監視調査時の流入水路及び生育地の水質調査結果
泡瀬地区水路 生育地A B C D
COD(mg/L) 24~27 14~20 14~20 0.6~1.5
SS
(mg/L) 8~38 5.5~6.3 1~18 0.5~0.5濁度
(度) 46.1~50.2 10.3~12.7 11.2~35.6 0.8~1.0全窒素
T-N (mg/L) 1.28~3.57 1.81~2.39 2.05~3.3 0.13~0.13全リン
T-P (mg/L) 0.62~1.83 0.5~0.82 0.6~1.93 0.02~0.02亜硝酸態窒素
NO2-N (mg/L) 0.01~0.09 0.4~0.56 0.03~0.24 0.01~0.01
硝酸態窒素NO3-N (mg/L) 0.07~0.23 1.02~1.22 0.05~0.81 0.02~0.02
アンモニウム態窒素NH4-N (mg/L) 0.77~1.11 0.04~0.62 0.76~1.76 0.02~0.02
燐酸態リンPO4-P (mg/L) 0.13~1.07 0.24~0.67 0.45~1.55 0.01~0.01
陰イオン活性剤MBAS (mg/L) 3.27~8.29 0.24~1.0 0.24~0.53 0.02~0.02
注) 1. 数値の幅は、同一地点で行った調査結果の最小値~最大値を示す。2. 調査年月日:平成14年3月8日、平成14年3月11日、平成14年3月16日
比屋根湿地水路項目
地点
- - - 84 -
注)表層から底上0.2mまでの各層の観測値の平均を示す。
平成13年10月11日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
満潮時干潮時上げ潮時
平成13年10月20日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
干潮時満潮時下げ潮時
平成13年10月24日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
上げ潮時満潮時干潮時
平成13年11月2日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
干潮時満潮時下げ潮時
0
1
2
3
4
5
St.1(クビレミドロ生息域)
St.2(基本監視点)
St.3(基本監視点)
St.4(基本監視点)
St.5(補助監視点)
St.6(補助監視点)
St.7(補助監視点)
濁度
図2.3-1(1) 監視調査時の濁度経時変化
- - - 85 -
注)表層から底上0.2mまでの各層の観測値の平均を示す。
平成13年11月9日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時干潮時上げ潮時
平成13年11月16日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
干潮時満潮時 下げ潮時
平成13年11月20日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時 干潮時下げ潮時
平成13年11月26日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
上げ潮時満潮時干潮時
0
1
2
3
4
5
St.1(クビレミドロ生息域)
St.2(基本監視点)
St.3(基本監視点)
St.4(基本監視点)
St.5(補助監視点)
St.6(補助監視点)
St.7(補助監視点)
図2.3-1(2) 監視調査時の濁度経時変化
- - - 86 -
注)表層から底上0.2mまでの各層の観測値の平均を示す。
平成13年12月5日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
干潮時満潮時下げ潮時
平成13年12月19日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時 干潮時下げ潮時
平成13年12月26日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時干潮時 上げ潮時
平成13年12月11日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
干潮時 満潮時上げ潮時
0
1
2
3
4
5
St.1(クビレミドロ生息域)
St.2(基本監視点)
St.3(基本監視点)
St.4(基本監視点)
St.5(補助監視点)
St.6(補助監視点)
St.7(補助監視点)
図2.3-1(3) 監視調査時の濁度経時変化
- - - 87 -
注)表層から底上0.2mまでの各層の観測値の平均を示す。
平成14年1月10日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時干潮時上げ潮時
平成14年1月17日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時 干潮時下げ潮時
平成14年1月25日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時干潮時上げ潮時
8.3 8.3 平成14年1月31日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時 干潮時下げ潮時
0
1
2
3
4
5
St.1(クビレミドロ生息域)
St.2(基本監視点)
St.3(基本監視点)
St.4(基本監視点)
St.5(補助監視点)
St.6(補助監視点)
St.7(補助監視点)
図2.3-1(4) 監視調査時の濁度経時変化
- - - 88 -
注)表層から底上0.2mまでの各層の観測値の平均を示す。
平成14年2月8日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時干潮時上げ潮時
平成14年2月15日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時 干潮時下げ潮時
平成14年2月18日
0
1
2
3
4
5
6
7
1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 6回目 7回目
濁度
満潮時 干潮時下げ潮時
0
1
2
3
4
5
St.1(クビレミドロ生息域)
St.2(基本監視点)
St.3(基本監視点)
St.4(基本監視点)
St.5(補助監視点)
St.6(補助監視点)
St.7(補助監視点)
図2.3-1(5) 監視調査時の濁度経時変化
- - - 89 -
2.4 クビレミドロの移植実験
平成14年1月29日から31日に屋慶名地区と勝連地区において移植地追跡調査を
実施した。
(1) 移植群生形成調査
調査は平成 14 年 2 月 26 日~3 月 2 日に行った。調査位置を図 2.4-1 に示
す。また、移植直後および移植後 2 週間における調査結果を表 2.4.1 に示す。
移植直後のクビレミドロの平均長径は 11.5~14.6mm(全平均 13.1mm)の
範囲にあり、総群体数は 3,115 であった。平成 14 年 3 月の平均長径は 13.5
~18.5mm(平均 15.9mm)の範囲にあり、総数は 4,670 であった。
各調査点において群体数は増加し、また、平均長径も伸張している。これ
は移植時に目視で観察できなかった小さな藻体が生長したためと考えられた。
(2) 平成 13 年度砂床移植調査
調査位置を図 2.4-2 に示す。また、調査結果を表 2.4.2 に示す。平成 14 年
1 月 29 日~31 日の調査において屋慶名地区の 3 調査点と勝連半島南岸の 1
調査点の全ての調査点で、クビレミドロの藻体が確認された。屋慶名地区の
「Y-1」で 6 群体、平均長径は 10.2mm、「Y-2」で 3 群体、平均長径は 11.3mm、
「Y-3」で 13 群体、平均長径 12.2mm であった。また、勝連地区の「K-1」
において 23 群体、平均長径は 11.1mm であった。
平成 14 年 3 月 17~20 日の調査において屋慶名地区の「Y-1」で 37 群体、
平均長径 21.9mm であった。「Y-2」で 7 群体、平均長は 13.7mm であった。
「Y-3」で 27 群体、平均長径 12.7mm であった。勝連地区の「K-1」で 100
群体、平均長径 21.9mm であった。
3 月調査を 1 月調査時と比べると、どの地点でも群体数及び平均長径も増
加している。
- - - 90 -
- -
- 91 -
図2.4-1 群生形成調査位置
図2.4-2 砂床移植調査位置
- - - 92 -
表2.4-1 群生形成調査
移植直後 移植後2週間平成14年2月26日~3月2日 平成14年3月16日~20日
調査点 平均 最大 最小 群体数 平均 最大 最小 群体数(mm) (mm) (mm) 50×50cmコードラート (mm) (mm) (mm) 50×50cmコードラート
St.1 12.5 30 4 185 13.5 33 3 399St.2 14.6 55 5 474 17.6 63 3 1002St.3 13.7 48 3 813 16.1 54 2 1140St.4 14.6 48 3 634 18.5 57 3 1024St.5 11.8 58 3 618 15.3 68 2 627ST.6 11.5 28 3 391 14.1 35 4 478
表2.4-2 平成13年度砂床移植調査結果
調査時期 移植後4ヵ月 移植後6ヵ月調査点 (H14.1) (H14.3)
長径の平均値(mm) 11.1 21.9長径の最大値(mm) 19 43長径の最小値(mm) 5 3群体数(50×50cmコードラート) 23 100長径の平均値(mm) 10.2 11.5長径の最大値(mm) 14 23長径の最小値(mm) 7 9群体数(50×50cmコードラート) 6 37長径の平均値(mm) 11.3 13.7長径の最大値(mm) 12 19長径の最小値(mm) 11 10群体数(50×50cmコードラート) 3 7長径の平均値(mm) 12.2 12.7長径の最大値(mm) 19 27長径の最小値(mm) 7 3群体数(50×50cmコードラート) 13 27
勝連地区
K-1
屋慶名地区
Y-1
Y-2
Y-3
- - - 93 -
2.5 培養実験
(1) 今年度の実験計画
クビレミドロの培養実験は、卵の夏眠中で、水槽内に卵が残っていることを確認
している状況である。今年度の実験計画を表2.5-1に示す。
表2.5-1 平成14年度のクビレミドロ培養試験計画(予定)
(2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・平成14年度
実験項目 主な使用器材 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
1) 卵からの出芽・生育条件の解明
①出芽実験 大型水槽,恒温庫
②出芽後育成実験 恒温庫
2) 藻体の生育条件の解明
①藻体育成実験 大型水槽,恒温庫
②藻体成熟実験 恒温庫
3) 移植条件の検討
移植環境の把握 底質分析
4) 飼育、環境水のチェック
天然分布域,大型水槽,ろ過槽 水質分析(各月1回)
- - - 94 -
(2)糸状体培養実験 1) 背景
ア)クビレミドロの生長・生理特性を把握するため糸状体組織の培養技術確立の必要
性
イ)培養技術の確立により、実験室内で継代培養することで種の保存も可能
2) 実験の概要
海藻類の培養株を策出する方法
○ 天然に生育する藻体組織の一部を摘出して組織培養する方法
○ 成熟した卵や胞子を放出誘導させ、得られた卵や胞子を単離して培養する方法
幼体が出現して生長する 12 月から 2 月にかけては前者の培養株を策出する。
成熟体の得られる 3 月以降には 後者 〃
- - - 95 -
3) 糸状体培養実験
① 材料及び方法
a. クビレミドロの生態
これまでの報告と現況調査から、本種は 12 月頃から幼体が見られるようになり、
1 月から 2 月にかけて生長し、3 月頃に生殖器官が形成された後に 6 月頃までに消
失することが明らかになっている
b. 未成熟体糸状組織の採取、実験方法
採取
・ 平成 14 年 1 月 28 日と 2 月 27 日に沖縄市泡瀬干潟(25°18.69’ N
127°50.36’E)で生育調査をおこない、クビレミドロを 500ml サンプルビン
に入れて生かした状態で実験室に持ち帰った。
・ 2 月 27 日には与那城村屋慶名(26°19.88’N 127°55.26’E)にお
いて、28 日には恩納村太田(26°26.40’N 127°51.72’E)において生育調
査をおこない、採集した一部サンプルを同様に研究室に持ち帰った。
・ なお、各調査日には、生育地の海水を採水し、研究室に持ち帰ったの
ちに栄養塩(DIN, NO3-N, No2-N, NH4-N, PO4-P)を測定した。
実験
・ サンプルは、実体顕微鏡を用いて成熟の有無を確認し、粘着性糸状付
着器についている砂や貝類を除去して群体ごとの粗培養に供した。
・ 粗培養では、クビレミドロの培地として栄養強化海水(PES, Provasoli
1967)が適しているか検討するため、滅菌濾過海水と PES の 2 つの培地条件で
培養をおこなった(尚、水温は 1 月採集時の水温に近い 16℃、光量は 75μE m-2
s-2 の明暗周期 12L12D の条件とした)。
・ 糸状体組織の培養は、ピンセットで糸状組織を分離し、滅菌海水を入
れたシャーレで数回にわたって洗浄し、単藻化を試みた。
・ また、一部試料を滅菌海水を入れた 30ml ねじ口ビンに入れ、超音波洗
浄機に 10 秒間入れることで、藻体表面の付着物の除去をおこない、同様に単
藻化を試みた。洗浄した糸状組織は、24 穴マルチプレートで PES を培地とし
て粗培養と同様の水温・光条件で培養を行った。
c. クビレミドロ成熟体の採取、実験方法
採取
・ クビレミドロ成熟体は、3 月 28 日と 4 月 26 日に泡瀬干潟で採集し、
- - - 96 -
生かした状態で研究室に持ち帰った。
実験
・ サンプルは群体ごとに粗培養に供し、水温 16˚C、20µmE m-2 s-2 の低
照度条件で保存した。卵の放出は、成熟部位を実体顕微鏡を用いて摘出し、20˚C
で蛍光灯直下の強光処理を 4 時間おこない、放出を誘導した。
・ 単藻培養化のための卵の洗浄については、ア)卵を滅菌海水に入れて
撹拌する方法と、イ)超音波洗浄機で数秒間処理する 2 つの方法を用いた。
・ ア)の方法は、滅菌濾過海水を入れた 30ml ネジ口瓶にパスツールピペ
ットを用いて卵を入れ、30 秒間撹拌した後にシャーレに移し、表面の付着物
が取り除かれた卵をパスツールピペットで摘出する処理を 3 回繰り返した。
・ イ)の方法は、滅菌濾過海水を入れた 30ml ネジ口瓶にパスツールピペ
ットを用いて卵を入れ、ネジ口瓶ごと超音波洗浄機の洗浄槽に 10 秒間入れて
処理し、更に前者の方法を併用した。
・ それぞれの方法で単離を試みた卵は、PES 培地を入れた 50ml ネジ口
瓶とシャーレ(径 90mm)に入れ(計ネジ口瓶 50 本、シャーレ 20 枚)、光量
75µmE m-2 s-2、水温 18˚C、20˚C、24˚C、28˚C、32˚C の各条件で培養を行っ
た。尚、培地の交換は 20 日ごとに行った。
② 結果および考察
a. 泡瀬地区における生育地の現況
泡瀬干潟における生育地の現況を図 2.5-1、図 2.5-2 に示す。クビレミドロは、平
成 13 年とほぼ同じ場所にパッチ状に群落を形成していた。生育地の水質環境は、
塩分 33psu、溶存無機窒素(DIN)5.214μM、リン酸態リン 0.105μM を示した(表
2.5-2)。これらの値は、黒潮水系の一般的な沿岸域の値といえるが、溶存無機窒素
の中ではアンモニア態窒素が 3.571μM と硝酸態窒素の 1.429μM より高い値を示
したことから、干潟に流入する生活排水等の影響が強く示唆された(日本海洋学会
沿岸海洋研究部会 1985)。
b. クビレミドロ未成熟体糸状組織の培養
培養結果
採集されたクビレミドロは、1 月採集のサンプルで体長約 1.5cm、2 月採集採集
のサンプルで約 2.5cm に達し、両サンプルとも未成熟だった(図 2.5-3)。群体単位
での粗培養では、滅菌濾過海水、PES の両培地とも生育し、特に PES の培地では、
培養開始時に約 1.5cm だった藻体が培養開始 20 日目では 2.5cm に生長した。また
- - - 97 -
20 日目には、PES で 51 群体中 8 群体が雄性生殖器官を形成し、滅菌濾過海水で
14 群体中 1 群体が雄性生殖器官を形成し、成熟した(図 2.5-4~5、表 2.5-3)。ま
た培養 40 日目には、PES で雌性生殖器官を形成し、全ての群体が成熟した。しか
し、この段階で混入している珪藻類や糸状性緑藻類、藍藻類の増殖によりクビレミ
ドロの生育状態が悪くなり、培養を継続できなくなった。
糸状体組織の単藻培養実験は、培養 20 日目に全ての株が糸状性紅藻類や緑藻類
の混入し培養を継続できなくなった。また、超音波洗浄機による処理は、珪藻類の
除去には効果を示したが、クビレミドロ細胞への傷害が大きく、ほとんどの株が死
滅した。単藻培養が失敗した要因としては、クビレミドロの藻体の形態的特徴があ
げられる。特に、糸状で強い粘性を示す付着器は、砂や小動物、その他の藻類に強
く付着し、その洗浄が困難を極めた。
今後の方針
今後、糸状体組織の培養では、付着器を切断し、組織培養で再生させる等の手法
の改善を図りたいと考える。尚、クビレミドロの培養には、藻類の培養に広く用い
られている PES を培地として利用することが可能であることが明らかになったこ
とから、以後の実験には PES を用いて培養を行うこととした。
c. クビレミドロ成熟体からの卵の放出と培養
培養結果
3 月と 4 月採集のサンプルは、ほぼ全ての群体が成熟していた。卵は強光処理に
よって放出され、直径 300-400µm の球状で、透明に近い灰色を呈した(図 2.5-6)。
しかし超音波洗浄処理した卵は、全て 3-7 日後に褐色に変化した(図 2.5-7)。超
音波洗浄処理した卵は、表面の付着物や混入物が全て取り除かれ、その後培養でも
藍藻や糸状緑藻等の混入生物が増殖することはなかったが、褐色化した卵からの発
生は見られなかった。
また滅菌海水で洗浄した卵は、卵表面が強い粘着性を示すことから付着物を完全
に取り除くことが難しく、藍藻や糸状緑藻等が増殖し、培養が継続出来ない株が多
数見られた。特に 28˚C や 32˚C の高水温条件では殆どの株に混入生物の増殖が確
認された(図 2.5-8)。
超音波処理の時間は、紅藻類の胞子の洗浄で用いている時間に準じたが、この条
件では卵に対する傷害が著しいと考えられることから、4 月の採集のサンプルでは
処理時間を 5 秒間にして同様に培養をおこなったが、ほとんどの卵が褐色に変化し
た。このことから、4 月採集の低照度で保存中の粗培養群体からの卵の単離には、
超音波処理をおこなうことを中止し、滅菌海水で撹拌洗浄する前に、滅菌した筆等
を用いて卵の表面を洗浄する方法を併用し、卵を培養中である。これらの卵では色
- - - 98 -
は変化していないものの、現在のところ発生は見られていない。
今後の方針
今後は、保存中の粗培養群体から可能な限り卵を採取し、混入生物の増殖を抑え
つつ培養を継続し、卵の発芽を誘導する方法を検討する。
図 2.5-1 沖縄県泡瀬干潟のクビレミドロ生育地
図 2.5-2 生育するクビレミドロ
表 2.5-2 泡瀬干潟クビレミドロ生育地の水質環境(2002 年 1 月)
Salinity NO3-N NO2-N NH4-N DIN PO4-P調査日 W.T. (psu) (μM) (μM) (μM) (μM) (μM) D.L.
Jan/28 15.6 33 1.429 0.214 3.571 5.214 0.105 10:45
- - - 99 -
図 2.5-3 クビレミドロ採集藻体(1 月採集、体長 1.5cm)
図 2.5-4 培養 20 日目のクビレミドロ成熟藻体(体長 2.5cm)
- - - 100 -
図 2.5-5 クビレミドロ培養体上に形成された雄性生殖器官(矢印)
表 2.5-3 クビレミドロ培養開始 20 日目の各培地における成熟率
成熟群体数未成熟培養群体数 成熟率(%)
PES 8 43 15.6
滅菌濾過海水 1 13 7.14
図 2.5-6 放出されたクビレミドロ卵
- - - 101 -
図 2.5-7 褐色に変色したクビレミドロ卵
図 2.5-8 藍藻類ならびに糸状緑藻類に覆われたクビレミドロ卵(培養 35 日)
引用文献
Provasoli, L. 1968. Media and prospects for the cultivation of marine algae. In:
Watanabe, A. and Hattori, A. (eds.). Cultures and collections of algae: 63-75,
Jap. Soc. Plant Physiol., Tokyo.
日本海洋学会沿岸海洋研究部会(編)1985. 日本全国沿岸海洋誌. 東海大学出版会. 東京.
- - - 102 -