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頚性めまいの重要性 - agriknowledge.affrc.go.jp · 〔日農医誌 65巻1号 15~24頁 2016. 5〕 原著: 頚性めまいの重要性 高橋祥* “めまい”の原因疾患を検討するため,

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0 10 20 30 40 so 60 70 80 90代;

図 1.男性における各年代のめまい患者数

にしたl~3)。

具体的には,難聴などの鯛牛症状を伴わず,

脳疾患や全身性疾患の影響を除外できた症例の

中で,頚部以外にめまいの原因となる障害が認

められない症例を頚性めまいの診断の検討対象

とした。その中で,下記に該当する症例を頚性

めまいと定義し診断した。

ア)頚部MRIで異常所見あり+頚の姿勢へ

の負荷

イ)頚部MRI未施行 +頭部MRI異常なし

+頚の姿勢への負荷

なお,頚椎 ・頚髄疾患の診断においては,頚

部脊柱管狭窄症(脊柱管前後径が多椎体レベル

で'12mm未満の場合と定義),変形性頚椎症,

頚椎椎間板ヘルニア,後縦靭帯骨化症,脊髄空

洞症などの存在を頚部MRIで確認した。

また,頭部MRIでめまいの原因疾患が存在

せず,また蛸牛症状もなく,さらには高血圧,

糖尿病や貧血などの全身症状が無いか,または

それらは良くコントロールされているのにもか

かわらずめまいを発症する症例も多数存在し

た。このうち,頚・肩筋群の過緊張などの頚由

来の症状を伴い,かつ,めまいに先行する頚の

姿勢への負荷のエピソードが明らかに存在した

場合の症例がイ)に相当している。

以下,当院でのめまい症例について,原因疾

患,頚性めまいの画像診断,誘因,治療方法と

予後について retrospectiveに検討した。

人200

180

160

140

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-----冨-霞

0 10 20 30 40 so 60 70 80 90イt

図2.女性における各年代のめまい患者数

結 果

1 .めまいの原因疾患

最多であったのは頚性めまいであり,延べ

1,000例中899例を占め(90%),次に薬剤性27

例(プレガパリン 8例,降圧剤 9例など),脳

梗塞13例,起立性低血圧10例,脳震量5例,過

労5例,良性発作性頭位めまい 3例,血管迷走

神経反射3例,貧血 3例,心因性2例,脳出

血・小脳萎縮・高血圧緊急症・風邪が各 1例,

その他3例,原因不明は23例( 2 %)であった。

2. 頚性めまいの症状と画像所見

頚性めまいと診断し得た症例では,浮動性め

まいは744例(83%),回転性めまいは155例

(17%)だ、った。またその随伴症状としては,

肩こり706例(79%に 頭重感 ・頭痛(緊張型頭

痛) 416例(46%に手 ・上肢のしびれ198例

(22%に肩甲骨部痛104例(12%に耳鳴46例

( 5 %)だ、った。なお,この耳鳴は,頚 ・肩筋

群の過緊張が耳小骨筋にも及んだものと考えら

れ,踊牛症状とは判断しなかった(実際に筋弛

緩剤による治療で,その後全例で消失してい

る)。頚性めまいの症例においては,浮動性め

まいであれ回転性めまいであれ,頚の前屈・後

屈などで眼振が誘発されることは稀ではない。

しかし頚性めまいの診断時に一定の傾向は示

さず,診断の確定に有用とは考えられなかっ

た。また,肩こりを自覚していない193例中で

も,緊張型頭痛と考えられる頭痛 ・頭重感を訴

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える症例が84例あった。このことから頚性めま

いを生じる症例の790例(88%)で,頚・肩筋

群あるいは側頭筋の過緊張を有していたと考え

られた。

頚性めまいと診断した899例のうち,頚部

MRI施行例は600例(67%)であり,その内訳

は頚部脊柱管狭窄症が544例(91%),変形性頚

椎症40例,頚椎椎間板ヘルニア11例,後縦鞍帯

骨化症3例,頚椎側湾症 I例,脊髄空洞症 l例

であった。なお,脊柱管狭窄症が根底にあり頚

性めまいと診断した症例での脊柱管の前後径

は,最小4.0mmから最大ll.6mmで、平均9.0mm

であった。頚部MRI未施行例の299例では,

全例頭部MRIを施行し 頭蓋内にめまいの原

因疾患が存在しないことを確認している。

図3A. 10歳から29歳の男性患者におけるめま

いの誘因(19例)

その他

17

3.頚性めまいの誘因

問診から推測された誘因は,男・女,及び年

代により異なっていた。全ての頚性めまいの症

例中,頚の姿勢への負荷のエピソードの特定が

可能であった712症例(79%)で,めまいの誘

因について検討した。また同様に, 2013年6月

から2014年5月までの 1年間に当院を受診した

男性186症例,女性489症例で,季節による頚性

めまいの発症率を検討した。

10代から50代までの男性では,普段の仕事が

影響する場合が多く,具体的には事務職や長時

間のパソコン操作などが誘因であることが多

かった(図 3A,B)。高齢男性の場合の誘因は,

庭木や果樹の勇定作業などを含む農作業が最も

多かったが, 側臥位のま ま無理な姿勢でテレビ

を長時間視聴していることが多いのも特徴的で

図3B. 30歳から59歳の男性患者におけるめま

いの誘因(68例)

草取り庭仕事農作業

図3C. 60歳以上の男性患者におけるめまいの

誘因(115例)

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頚椎症性変化を認めた(図 6)。薬物治療(チ

ザ、ニジン,ジフェニドール,ロキソプロフェン

ナトリウム)に加え,仕事でなるべく頚の姿勢

に負担を加えないように,そして適宜休憩を取

るように助言した。 1週間後の再来時には,め

まいと頭痛はほぼ消失しその後も薬物治療を

継続しているが l年以上めまいの再燃は認めて

いない。

症例 2: 83歳,女性。

主訴:繰り返す回転性めまい。

現病歴: 2年前から回転性めまいを繰り返し

ていたが,複数の医療機関での治療は奏功せず

“原因不明”と言われていた。

診断と経過:普段草取りをしていることが多

く,めまい以外の自覚症状として瞬間的な後頭

部痛“ツーン”(大後頭神経痛)を繰り返し

軽度の肩こり,右手のしびれ,右肩甲骨部痛が

あった。頚MRIにて脊柱管狭窄症,変形性頚

椎症を認めた(図 7)。薬物治療(エペリゾン,

ベタヒスチンメシル酸塩,セレコキシブ)と,

長時間の草取りを控えるように生活指導を行な

い, 1週間でめまいは軽快しその後の経過も良

好。

症例 3: 89歳,女性。

主訴:繰り返す回転性めまいと浮動性めまい。

現病歴: 4, 5年前から回転性めまいや浮動

性めまいを繰り返しており,さまざまな医療機

関を受診してきたが改善しなかった。

図6. 症例 l:頚部MRI(0.3T)矢状断

{象, T2強調画像

診断と経過:普段,畑仕事をしており,顔を

上に向けたりするとめまいが誘発されることが

多く,頭重感,肩こりも訴えた。頚MRIにて

脊柱管狭窄症,変形性頚椎症を認めた(図 8)。

薬物治療(アフロクアロン,ジフェニドール,

苓桂J1t甘湯)を開始し長時間の畑仕事を控え,

時々休憩するように生活指導を行ない, 1週間

後にはめまいは軽快した。

症例 4: 78歳,女性。

主訴:繰り返す回転性めまいと浮動性めまい。

現病歴: 50代から,回転性めまいと浮動性め

まいを繰り返しているが,これまでさまざまな

医療機関を受診したものの,原因不明でめまい

の出現は改善されなかった。

診断と経過:普段から草取りなどの庭仕事を

図7. 症例 2:頚部MRI(0.3T)矢状断

像, T2強調画像

図8. 症例 3:頚部MRI(0.3T)矢状断

像, T2強調画像

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図9. 症例4:頚部MRI(0.3T)矢状断

像, T2強調画像

長時間続けており,頭重感と肩こりを伴ってい

た。頚MRIにて脊柱管狭窄症,変形性頚椎症

を認め(図 9),薬物治療(アフロクアロン,

スルピリド)に加え,長時間の庭仕事を控える

ように生活指導を行ない 1週間後にはめまい

は消失した。その後,初診から 2年経過してい

るが,めまいは全く出現していない。

考 察

日常診療においてごく当たり前に遭遇する

“めまい”であるが,その正確な診断は現代医

学においてもまだ容易ではないし議論百出の

場合も多い。

当地区においては,突発する激しい回転性め

まいの症例や踊牛症状を合併しているめまいの

症例は,近隣の市中病院の救急外来や耳鼻科開

業医を初診している場合が多いと推察される。

従って,当院を受診しためまい患者の場合,典

型的な耳鼻科的疾患等は既に除外されている可

能性が高い。当院を受診するめまい患者の場

合,他医にて原因が不明,難治性,あるいは何

度も繰り返すために最終的に頭蓋内疾患等を心

配して受診してくる者の割合が多いと推察して

いる。当院を受診するめまい患者の母集団は,

耳鼻科,神経内科,一般内科を受診するそれと

は異なっている可能性が高い。しかしそのよ

うな状況下ではあるが,当院を受診した少なか

らぬめまい患者に対する今回の検討では,典型

21

的な耳鼻科的疾患以外のめまいの原因に関して

は,その多くが頚性めまいであり,誘発する原

因は年代あるいは性別により異なることが確認

された。

以下,頚性めまいの原因,発症機序,治療に

ついての考察を加える。

1 .良性発作性頭位めまいとの鑑別の重要性

良性発作性頭位めまい(Benignparoxysmal

positioning vertigo,以下 BPPVと略す)は,

近年,本邦において,めまいの原因として最も

頻度が高いと言われている疾患であり,末梢性

めまいの約40%を占めるという報告もある九

BPPVは,卵形嚢内の平衡斑から偶然剥がれ落

ちた耳石が,ある一定方向に頭位を傾けた時に

半規管内を刺激して,回転性めまいを生じる良

性疾患である。実際の臨床現場では,頭部や頚

部を動かした時,回転性めまいが一切出現しな

いにもかかわらず,眼振あるいは浮動性めまい

が出現しただけでも,広義の診断基準で BPPV

と診断される場合も多いのではないだろうか。

また,ある特定の頭位を取った時にめまいある

いは眼振が出現しただけでも,良性発作性頭位

めまいの診断が下されていることが多いように

思われるが,頚性めまいでも同様の事は稀では

ない。当院では耳鼻科的検査による詳細な評価

は行なっていないが,今回の1,000例の検討に

おいて,厳密な診断基準の下で BPPVと診断

し得た症例はわずか0.3%に過ぎなかった。治

療方法が全く異なるため,頚性めまいと BPPV

との鑑別は臨床上非常に重要と考える。

2. 頚性めまいに対する認知度

頚性めまいは, 1926年, Barreがcervical

arthritisによって誘発されためまいとして発

表したものが最初で,今日 Barre-Lieou症候

群とも呼ばれている5)。 その後, 1955年に

Ryan & Copeが頚椎異常,特に spondylosis

に起因するめまいを報告しその中で“cervi-

cal vertigo,,なる名称を使い,それ以後この名

称が使われるようになったとされるm。欧米で

の頚性めまいに関しての論文は非常に多く,現

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在はより臨床に即した、ervicogenicdizzi-

ness (vertigo, imbalance)”の名称が用いら

れ,欧米では重要視されているが1品~円本邦

での認知度の低さは意外な程であるえ14)。頚椎・

頚髄疾患が根底にある場合,頚の姿勢への負荷

により,かなりの頻度でめまいが誘発されるこ

とを認識することは重要である。頚性めまいで

あれば,頚部MRIで根底にある頚椎,頚髄疾

患の存在を証明できるしめまいが出現する前

に頚に負担をかけるような仕事や動作を行なっ

たかどうかを問診だけで容易に情報を得ること

ができる。今回の検討では,頚部MRIを施行

した症例の90%で脊柱管狭窄症を合併していた

ことが明らかになった。また,めまいの誘因に

ついても,年代,性別で異なるものの,全例で

頚の姿勢に負担がかかる動作を行なっていたこ

とが確認できた。

3.頚椎・頚髄疾患からめまいを生じる機序

今回の検討ではめまいの性質として,浮動性

めまいが8割を占めていたが,回転性めまいと

浮動性めまいの違いだけから,めまいの病巣あ

るいは障害部位を推定することは実際には困難

である。

頚性めまいに関与する経路として,まず前庭

系の神経路が挙げられる。下行性神経路として

末梢前庭系があり,中枢前庭系としては脳幹と

小脳が関与している。頚髄には,前庭脊髄路が

存在し外側前庭脊髄路は耳石器入力(直線加

速度,重力)を伝え,頚髄,胸髄,腰髄の全て

に投射しまた内側前庭脊髄路は,半規管入力

(角加速度)を伝え,頚髄に投射している。ま

た,下半身や体幹からの感覚情報を小脳虫部に

送る上行性神経路である脊髄小脳路も頚部で障

害された場合,めまいの原因となる。

さらに,頚椎・頚髄疾患により肩こりが持続

していると,頚部交感神経が緊張し,自律神経

失調症としてめまいを生じ得る。むち打ち事故

の後や頚椎症などにより,頭痛,めまい,耳鳴,

頚・肩筋群の凝り,眼球後部痛,全身倦怠,動

停などを呈する Barre-Lieou症候群5,16)もこの

範轄に入る疾患であり,比較的よく道遇する。

症例数は少ないかも知れないが,頚椎症に見

られる骨東京による椎骨動脈の圧迫による小脳,

脳幹への循環不全がめまいを引き起こす可能性

があると言われている。頚椎や横突孔の変形な

どに伴って椎骨動脈や椎骨神経の物理学的圧迫

があれば,頚部の運動時に椎骨動脈の屈曲や狭

窄が起こり,いわゆる椎骨脳底動脈循環不

全によるめまいを発症してくる(Powers症候

群町。今回の研究では MRAによる椎骨脳底

動脈系の評価は行なっていないが,このような

原因を除外するには必要な検査であると思われ

る。

4.脊柱管狭窄症と頚性めまい

頚部脊柱管狭窄症の診断基準は存在している

ものの,脊柱管の前後径が10~12mm程度の軽

症例の場合,実際の臨床例では手術適応になる

ような重大な症状は出現しないことが多い。し

かし長時間にわたり頚の不自然な姿勢を取り

続ける場合,軽度の脊柱管狭窄症であってもめ

まいを誘発するのには十分な狭さであることを

認識することは重要であると考えている。

5.頚性めまいの治療と予後

頚・肩筋群の過緊張が存在したまま,頚の姿

勢への過度の負荷を継続すると,めまいを含め

た頚部由来の症状が遷延したり悪化しやすい。

今回の検討では,頚性めまい症例の 9割が適切

な治療により 1週間以内に症状が軽快した。短

期間で頚性めまいを改善させるためには,頚-

肩筋群や側頭筋の過緊張が存在していれば,そ

れを是正することが治療上最も重要であ

る3,11,17)。我々の症例では,アフロクアロンやト

ルペリゾンなどの弱い筋弛緩効果のものでも十

分な効果を示す症例がある一方,チザニジンの

ような強力な効果を持つ薬剤でも極量の 6錠/

日が必要な症例や,数種類の筋弛緩薬の併用が

必要な場合も多い。これらの筋弛緩剤の効果が

不十分の場合には,精神安定剤や埼薬甘草湯な

どの漢方薬の併用も行なった。筋弛緩薬および

その他の薬剤の選択やその投与量の決定には症

例毎に検討する必要があり,各薬剤の特徴を把

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握して使用法に精通することが肝心であるO

また,めまいの早期改善,再発防止のために

は,正確な診断に基づく患者への必要かつ十分

な説明がなされ,自身の頚の状態を患者本人に

納得させる必要がある。その上で,無理な頚の

姿勢を長時間継続させないようにすることな

ど,頚に過度の負担がかからないようにするた

めの生活指導が重要である。本研究でのめまい

症例において,治療により高い寛解率を示した

ことは,適切な薬物治療だけではなく徹底した

生活指導も寄与していると思われた。

結 論

頚椎・頚髄疾患を根底にして,頚に過度の負

担がかかる現代の生活パターンの繰り返しでめ

まいが誘発される。頚・肩筋群,側頭筋の過緊

張があれば,それを治療することで, 1週間以

内にめまいを改善することが可能である。ま

た,患者に自身の頚椎・頚髄の状態を納得させ

て,頚の姿勢に長時間に渡って過度の負担をか

けている日常生活上の習慣を改めるように助言

することも極めて重要である。この頚性めまい

こそが,重要な現代病であり,かつ治療可能な

疾患であることを強調したい。

謝辞

本研究に闘し貴重なご助言を頂いた新潟大学脳研

究所脳神経外科,福多真史先生に深謝申し上げます。

著者の COi開示

本論文発表内容に関連して特に申告なし。

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Importance of Cervicogenic Dizziness

Sho TAKAHASHI*

To determine the exact cause of dizziness and/or vertigo, 1000 outpatients were retrospec-

tively studied. The most common diagnosis in all of the analyzed cases was cervicogenic dizzi-

ness (89%). Among these cases, 600 (67%) underwent magnetic resonance imaging of the cervi同

cal spine, and 542 of these (90%) showed presence of a narrow spinal canal. It was important to

measure the anteroposterior diameter of the spinal canal in each case and to have an accurate

diagnosis based on diagnostic criteria. Dizziness and/or vertigo develop because of long-term,

inappropriate neck posture in the presence of some kind of cervical disease. Triggers of dizzi-

ness and/or vertigo were different in men and women and in each generation. In elderly wom開

en, the characteristic trigger was long-term farming, gardening, weeding. About 79% of the

cases were accompanied by stiff neck and shoulder; therefore, selection of appropriate muscle

relaxants at appropriate doses as well as proper advice to patients regarding neck posture and

lifestyle are very important in the treatment of cervicogenic dizziness. The results of this study

emphasize the importance of cervicogenic dizziness as a cause of dizziness and/or vertigo that

are difficult to cure.

*Dept. of Neurosurgery, Tαhαhαshi Neurosurgery αndDermαtology Clinic, Niigαtα,Jαpαn