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計測標準 計量管理 MEASUREMENT STANDARDS and METROLOGY MANAGEMENT 一般社団法人 日本計量振興協会 Japan Association For Metrology Promotion http://www.nikkeishin.or.jp C O N T E N T S ISSN 1880-1420 平成30年2月20日 2018 Vol.67 No.4 標準物質ってなあに? 〜メリットを考えよう〜 そうだったのか!標準物質 〜標準物質はこう使おう〜 お役に立ちますNMIJ 〜最近 の取り組み〜 技能試験の活用と社内システムの構築 -残留農薬分析を例に- 検量線作成用標準物質の使い方・選び方 〜JCSS標準物質を例に〜 産地判別にも役に立つ同位体比 〜鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント〜 モルが変わるって? -アボガドロ国際プロジェクト- もうごまかさない!化学分析の信頼性 〜不確かさ評価のポイント〜 計量管理教材の開発と利用 分散分析の利用とF検定 プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価 産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質 第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告 時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系 -光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS 認定取得- マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス IAJapanコーナー NMIJ 標準物質セミナー 2017 −化学分析の信頼性確保のための基礎知識− 特集

計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

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Page 1: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

雑誌 03317-02 〔定価3240円(本体3000円+税)〕

計測標準と計量管理

特集 

NMIJ標準物質セミナー2017

化学分析の信頼性確保のための基礎知識

minus

第67巻 

第4号 

二〇一八年    

4

計測標準と計量管理MEASUREMENT STANDARDS

andMETROLOGY MANAGEMENT

一般社団法人 日本計量振興協会 Japan Association For Metrology Promotionhttpwwwnikkeishinor jp

C O N T E N T S

ISSN 1880-1420平成30年2月20日

2018Vol67No4

計測標準と計量管理 4 号    平成30年2月18日 印刷  平成30年2月20日 発行

標準物質ってなあに 〜メリットを考えよう〜 そうだったのか標準物質 〜標準物質はこう使おう〜 お役に立ちますNMIJ 〜最近 の取り組み〜 技能試験の活用と社内システムの構築 -残留農薬分析を例に- 検量線作成用標準物質の使い方選び方 〜JCSS標準物質を例に〜 産地判別にも役に立つ同位体比 〜鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント〜 モルが変わるって -アボガドロ国際プロジェクト- もうごまかさない化学分析の信頼性 〜不確かさ評価のポイント〜 計量管理教材の開発と利用 分散分析の利用とF検定 プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価 産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質 第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告 時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系

-光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS 認定取得- マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス IAJapanコーナー

NMIJ 標準物質セミナー2017minus化学分析の信頼性確保のための基礎知識minus特集

計測標準と計量管理

2018Vol 67No 4

MEASUREMENT STANDARDSand

METROLOGY MANAGEMENT

❶標準物質ってなあに ~メリットを考えよう~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 齋藤 剛hellip 2

❷そうだったのか標準物質 ~標準物質はこう使おう~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 黒岩 貴芳hellip 6

❸お役に立ちますNMIJ ~最近の取り組み~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 清水 由隆hellip 12

❹技能試験の活用と社内システムの構築 残留農薬分析を例に株式会社 アイスティサイエンス 島 三記絵hellip 17

❺検量線作成用標準物質の使い方選び方 ~JCSS標準物質を例に~一般財団法人 化学物質評価研究機構 上野 博子hellip 20

❻産地判別にも役に立つ同位体比 ~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 野々瀬菜穂子hellip 27

❼モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト国立研究開発法人 産業技術総合研究所 成川知弘倉本直樹藤井賢一hellip 35

❻もうごまかさない化学分析の信頼性 ~不確かさ評価のポイント~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 城野 克広hellip 42

NMIJ標準物質セミナー2017 化学分析の信頼性確保のための基礎知識特集

計量管理事例計量管理教材の開発と利用 計量士 日髙 鉄也hellip 49

不確かさ評価ノート 第3回分散分析の利用とF 検定国立研究開発法人 産業技術総合研究所 榎原 研正hellip 56

測定の不確かさ事例プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価 株式会社 DJK 阿部 正行赤地 利之hellip 60

標準物質紹介産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 清水 由隆hellip 68 海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告国立研究開発法人 産業技術総合研究所 松本 毅hellip 71

認定事業者紹介時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系

光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得 株式会社 ミツトヨ 沼山 博志hellip 81 産総研コーナー

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス国立研究開発法人 産業技術総合研究所 飯田健次郎hellip 86

IAJapanコーナーIAJapanコーナー 独立行政法人 製品評価技術基盤機構hellip 89

編集後記 事 務 局hellip 94

1 は じ め に

土壌中に含まれる重金属などの汚染物質野菜などの食品中の残留農薬工業製品中の機能性発現のための添加剤などある試料の中に含まれる特定の成分を定性したり定量したりする分析において特定の成分を分離して検出するクロマトグラフ法が汎用的に利用されることが多いクロマトグラフ法は多成分の一斉解析などに強みを発揮する強力な分析法である一方であるクロマトグラムのある保持時間に信号を与える未知試料についてはその標準試料と保持時間を比較することで同定を行い定量の基準となる試料で検量線を作成した上で未知試料を定量するこのようにある試料を分析する際にその試料の比較の基準となる標準を立ることは一般的な事である分析結果の信頼性高めるためには精度や品質の管理としての測定機器の日常点検測定機器の校正が行われていることに加え実施する分析方法の妥当性確認が実施されていることも重要である

標準物質は分析を行う際の基準として利用できる物質であり校正計量計測トレーサビリティの確立方法の妥当性確認他の物質への値の付与品質管理など分析の様々な局面に利用されるここではISOREMCO(国際標準化機構標準物質委員会)より発行されているガイド等を参照しつつ定量分析の基準として利用できる標準物質の定義及びそこに示される要件について解説しその上で標準物質を利用するメリットなどについて考える

2 標準物質とは

分析の基準となる物質は使用者である分析者が市販の一般試薬に対し自主的に定量的な特性値を評価し

て使用する場合もあるが多くの場合何らかの形で特性値が評価された試薬を購入してそこに示された特性値を使用することが多いこれらには生産者が独自の方法で品質を確保しているものISOやJISなどの規格に準拠した方法で品質を確保しているものまた第三者認証を得ることでその品質を保証しているものなど生産のされ方や信頼性を確保する方法で様々な種類のものが流通しているこれらは標準品標準試料標準物質認証標準物質など様々な呼称で販売されており多くの試薬会社より入手が可能であるここではまず分析の基準となる物質へ求められる要求事項について整理する

分析の基準となる物質は使用するたびにその特性に変化がないことが必要となるすなわち試料の使用される特性は安定であることが求められる分銅を例に見るとその特性である質量が長期間にわたり変化を起こしにくい金属で作られており常に同じ質量が保たれる工夫が施されている化学分析においてはその基準に化学物質が利用されることが大半であり使用のたびに消費されるが基準となる物質の特性が使用のたびごとに変化しては困る安定性は基準とする物質に要求される重要な要因である基準となる試料は試薬瓶などのユニットのどこからサンプリングしても同じ特性を持つことも重要となる均質性は偏在などが起きやすい試料ほど注意が必要となるこれらを鑑みて分析の際の基準として利用することができる標準物質を生産する際の要求事項が規定されたJIS Q0034 1)には標準物質は以下の通り定義されている標準物質(reference materialRM)一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するよう作

計測標準と計量管理2

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

標 準 物 質 っ て な あ に ~メリットを考えよう~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

総括研究主幹 齋 藤 剛

1 は じ め に

様々な製品や環境食品に対する安全安心の要求が高まる中分析計測の信頼性確保の必要性がより一層高まっている信頼性を確保するためには分析結果の真度と精度を含めた精確さの管理が必要でありそのうえで第三者にその値を認めてもらうことが重要であるそのためには試験する技術の妥当性を証明する行為とその分析自体の信頼性を確保する必要がある分析自体の信頼性を確保するためには標準物質を活用する方法が最も有効な手段の一つであるしかしながら標準物質と言われるものの存在やその有用性は知っていても自身の分析値の信頼性を確保するためにどういうものを選び使用すればよいのかまたどのように使えば効果的であるのかなどについては意外と知られていない部分も多い分析値の信頼性を高めるために標準物質をより有効に活用するにはどうしたらよいか本稿では標準物質の選び方使い方認証標準物質に付随する文書である認証書の記載内容について説明する

2 標準物質の選び方

そもそも標準物質と言われるものにどのようなものがありどのような違いがあるのかを知っておかなければならない前稿で紹介されているのでここでは省くが化学の分野では一般に標準物質という呼称以外にも標品標準品標準試料といった呼称で販売されている本稿ではJIS Q 0034 1)において標準物質として定義されるものについて説明する

標準物質は)分析計測機器の校正(キャリブレーション)及び物質材料への値付け)分析計測

方法の評価)分析試験機関あるいは分析者測定者の技能の確認などの目的で使用される)は機器が正確な指示値を示すよう調整する操作及び検量線を作成することによって物理量単位の指示値を濃度や物性値に変換することが含まれるまた例えば容量分析における規定液の標定の場合純度が確定された容量分析用標準物質を基準にして被検液の濃度を決定する場合なども含まれるトレ-サビリティ体系の上位の標準物質による下位の標準物質の値付けもこれに該当する)は使用する分析計測方法が信頼性のある方法か否かを評価する場合で方法の妥当性確認(バリデ-ション)を意味する)は組織あるいは個人が信頼性のあるデ-タを出す技術的能力を有するか確認する場合で試験室内のブラインドテストや試験所間の技能試験に使用することもできる標準物質の分類は様々であるが一般に化学分析に用いる標準物質においては大きく純物質系標準物質と組成標準物質に分けられる通常)及び)の目的には組成標準物質が使用される一方)には校正用の純物質系標準物質が主に用いられるが組成標準物質もしばしば利用される

信頼性の高い測定結果を得るために標準物質を選ぶ際には以下のことを明確にしておく必要がある

(1) 標準物質の用途が使用する目的に適しているか(2) 測定対象とする成分について濃度レベルや不

確かさは適当か(3) 測定方法に適した形状や量であるか(4) 溶媒や不純物などマトリックス成分は問題な

いか(測定への影響)(5) 使用期間に対する安定性(有効期限等)測定に

対する均質性(最小使用量)に問題はないか標準物質はその用途が付随する文章等に記載されて

計測標準と計量管理6

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

標準物質認証管理室 室長 黒 岩 貴 芳

NMIJ標準物質セミナー2017

そ う だ っ た の か 標 準 物 質~標準物質はこう使おう~

1 は じ め に(https wwwnmijjp)

NMIJ標準物質セミナーはJASISコンファレンスの中でNMIJが年ごとにテーマを定めて主催するセミナーであるNMIJ標準物質セミナーでは基本的には年ごとのテーマに沿った講演が行われるが主催のNMIJの活動を知ってもらいたいということもあり例年NMIJの活動を紹介しているJASISは分析化学に関連が深い展示会ということでNMIJの活動のうち特に化学系計量業務に関する活動を紹介している標準物質セミナーという名前のとおりNMIJが頒布する標準物質についてはもちろんのことそのほかの具体的なテーマとして化学系校正サービスデータベース計測クラブ及び産総研コンソーシアムを紹介した

紹介したテーマは上記のとおりであるがNMIJ標準物質セミナーでは限られた時間内で詳細は紹介できないこととNMIJのウェブサイトであれば最新のより詳細な情報が掲載されていることからより詳しい情報が必要な方はNMIJのウェブサイトを閲覧していただけるよう上記のテーマに関連してどのような情報がウェブサイトに掲載されているかを中心に概要を紹介した

本稿でもNMIJの化学系計量業務の活動紹介の概要のみを示した各章のタイトル等の横に示したURLはその章の内容を閲覧できる代表的なURLなので興味を持たれた場合にはぜひ当該のウェブサイトを閲覧いただきたい

2 標準物質(https wwwnmijjpserviceC)

NMIJが供給している認証標準物質(一部は標準物質)について紹介を行った主な紹介と概要は以下の

とおりであるなお各項目については更新時にURLが変更になることがあるため標準物質のページから当該の内容を閲覧していただきたい

NMIJ認証標準物質の特徴と利用NMIJ認証標準物質の特徴主な用途標準物

質の利用や用語が紹介されているその中で示されたNMIJ認証標準物質の特徴は以下のとおりであるbull計量計測トレーサビリティが確立された標準物

質bullISO Guide 34に基づいたマネジメントシステム

による生産bullISO Guide 35に基づいた認証値の決定bull最も正確な測定法(一次標準測定法など)によ

る分析bull国際単位系(SI)にトレーサブルbullGuide to the Expression of Uncertainty in

Measurement(GUM)に基づいた不確かさの評価また示されたNMIJ認証標準物質の主な用途

は以下のとおりであるbull測定機器の校正bull分析法分析値の妥当性確認bull分析精度管理

NMIJ標準物質の一覧購入方法などbull2017年度頒布開始標準物質一覧

2017年度に頒布を開始した標準物質の一覧を示した今年度供給を開始した標準物質は物質でありロット更新した標準物質も種類紹介したなお2017年度に頒布を開始した標準物質については本誌産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質でも紹

計測標準と計量管理12

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

お 役 に 立 ち ま す NMIJ~最 近 の 取 り 組 み~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

1 は じ め に

技能試験は様々な分野において分析方法の妥当性や分析能力の客観的評価のために活用されているまた分析方法のみならず試料の受入から結果報告まで含む工程についても評価の対象とすることができるためそれが結果の信頼性へとつながっている

弊社はメーカーではあるが自動前処理装置の販売や分析法の提案なども行っているためそれらの客観的評価を得る目的で技能試験に参加している

ここでは技能試験の参加により明らかになった問題点とその対策について紹介する

2 参加状況と結果

弊社では2012年から毎年残留農薬分野の技能試験に参加している産業技術総合研究所計量標準総合センターが主催する技能試験では意図的に農薬を残留させた原料を用いて調製した試料を使用しているため抽出工程を含む分析方法の評価が可能である

試験は弊社の提案するSTQ法(Solid phase extrac-tion Technique with QuEChERS method 図)で行っておりその際使用する自社製品の自動固相抽出装置を含むSTQ法の客観的評価を目的としている

これまでの試験結果は表の通りである2012年から 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2の良好な結果が続いていたが2015年に参加したかんきつ試料の試験では 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2となったそこでその原因について調査を開始した

17Vol 67 No 4 2018

特集

株式会社 アイスティサイエンス

島 三 記 絵

表技能試験参加状況と結果

参加時期 主 催 試 料 結 果

2012年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2013年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2014年 産業技術総合研究所 玄 麦 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2015年産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

食 品 関 連 団 体 かんきつ類 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2

2016年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2017年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

図STQ法

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

技能試験の活用と社内システムの構築残 留 農 薬 分 析 を 例 に

1 は じ め に

近年の技術の発達化学分析に求められる測定対象物質の種類の増大対象濃度の低濃度化や正確さへの要求から最近の化学分析では従来の容量分析法や重量分析法に代わり機器分析法が多く用いられているさらに分析機器の進歩により測定の自動化が進み測定者の技能によらず誰でもほぼ同じ結果を求めることができるようになっているしかし単に試料を機器に導入しただけでは機器から得られる出力値が電流値や電圧値であるため試料中の測定対象物の濃度を知ることはできない環境基準や水質基準製品の品質管理等においては濃度で管理されることが多く我々が結果として求めているものは濃度であるといえるそこで機器分析において濃度等の結果を得るためには測定対象物の濃度と機器の出力値の関係を明らかにする必要があるこの関係は分析ごと測定対象物ごとに求める必要がありその関係を表したものは検量線と呼ばれているこの検量線を得るために必要となるのが標準物質であるこの標準物質の質が検量線の精確さ更には測定結果の精確さに大きく影響を与えることとなる

今回は化学分析における結果の信頼性確保に必要不可欠な標準物質について計量法トレーサビリティ制度に基づき供給される標準物質の供給体系等を中心に紹介する

2 標準物質とは

標準物質と呼ばれるものは数多くあり使用目的に応じて選択する必要があるまずは物性工業量測定用標準物質と化学分析計測用標準物質に分けることができる物性工業量測定用標準物質としては密

度標準硬さ試験片粘度標準などがある化学分析に用いられる標準物質は大きく二つに分けられ純物質系標準物質と組成標準物質がある純物質系標準物質は純物質又は純物質そのものでなくとも水や酸有機溶媒のように簡単で人工的なマトリックスの中に純物質が溶けているものでありpH標準液や金属標準液などがある一方組成標準物質は純物質系標準物質以外を示し一般にマトリックス中の成分の濃度あるいは組成が特性値であるもので鉄鋼や非鉄金属合金などの金属標準物質海水や土壌などの環境標準物質樹脂などの高分子標準物質血清などの臨床標準物質がある1)

標準物質の主な使用目的として分析計測機器の校正(Calibration)物質材料への値付け分析計測機器または分析計測の評価(Validation)試験機関又は測定者(分析者)の技能確認があり用途に応じて各標準物質は使い分けられている特に機器の校正に用いられる純物質系標準物質は組成標準物質の特性値の決定にも用いられるため化学分析の根幹となる必要不可欠なものである

標準物質(RMReference Material)の正確な定義としてはJIS Q 0035 2)の中で次のように定めているここでは一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するように作製された物質

と定義されているまた標準物質の中でも認証標準物質(CRM

Certified Reference Material)は一つ以上の規定特性について計量学的に妥当な手順によって値付けされ規定特性の値及びその不確かさ並びに計量計測トレーサビリティを記載し

計測標準と計量管理20

特集

一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所

化学標準部技術第二課長 上 野 博 子

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

検量線作成用標準物質の使い方選び方~JCSS標準物質を例に~

1 は じ め に

同位体とは陽子の数すなわち原子番号が同じで中性子の数が異なる元素あるいは元素の関係のことであるその原子核の安定性の違いによって同位体は

放射性同位体と安定同位体に分けられるある種の元素では様々な試料中に含まれる元素の同位体の比を比較すると試料ごとに微妙に異なっていることがあるその微量な同位体比の差を正確に計測することによって新たな知見が得られることから同位体比情報は様々な研究分野 古くは地質学における年代測定近年では地球環境学医学生理学食品産地判別や法医学などで活用されるようになったしかし正確な同位体比情報を得るためには同位体比の測定の基準(10486371048637ものさし)となる標準物質が必要不可欠である同位体標準物質例えば鉛の同位体標準物質は米国国立標準技術研究所(NIST)などから頒布されているが 1)その同位体比の認証値の信頼性特に国際単位系(SI)へのトレーサビリティについては大きな議論を呼んでいるその上同位体比に関する標準物質が不足しているために様々な機関によって測定されたデータの整合性を議論することが困難な状況にあるそのような中国際度量衡委員会に設置された物質量諮問委員会では次世代標準としての同位体標準の重要性に関する議論が始まり同位体比測定に関する国際比較がいくつか実施されるようになった 2)今回産業技術総合研究所計量標準総合センター

(AISTNMIJ)では同位体比の変動幅が大きい元素のひとつである鉛について同位体標準液の認証標準物質(CRM)NMIJ CRM 3681-aを独創的な手法で開発した 3)本稿ではその鉛同位体標準液の用途と使い方のポイントについて紹介する

2 鉛同位体比から分かること

鉛にはつの安定同位体 204Pb206Pb207Pb208Pbが存在するこのうち206Pb207Pb208Pbはそれぞれ放射性同位体である 238U235U232Thが長い年月をかけて 壊変 壊変を繰り返しながら最終的に生成したものである(図)従ってこの地球上に親核種であるウランとトリウムが存在する限り娘核種であるこれらつの鉛同位体の存在量は変化し続ける一方204Pbはウランおよびトリウムの壊変の影響を受けないとされるそのため鉛同位体比の変動の指標には204Pbを分母としたつの同位体比 206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbが用いられることが多い鉛同位体比の活用例として代表的なものをつ紹介する<ウラン 鉛年代測定法>4)地球上の熱せられたマグマの中では親核種のウランと娘核種の鉛は共存しているがマグマが次第に冷えて鉛がウランから分離され濃縮して鉛鉱床ができるとそこで鉛の増加は停止するこの鉱床近辺のウランと鉛鉱床中の鉛の同位体比を測定することによってその鉱床ができた年代を知ることができるこのような年代測定法はウラン鉛年代測定法と呼ばれ地質学の分野でよく利用されている<産地判定法>先に説明したように現在の鉛は地球生成時から存在した鉛に加えてウランおよびトリウムの放射性同位体の壊変で生成した鉛の合計量となるしかし 204Pbだけは地球生成時と変わらないことから世界各地の鉛鉱山におけるつの同位体比206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbを比較すると同位体比に大きな違いが観測される例えば日本国内で発掘される銅鏡や銅鐸の青銅器など考古学資料に含まれる鉛同位体比はその原料の産地がある鉛鉱山の

27Vol 67 No 4 2018

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

無機標準研究グループ 主任研究員 野 々 瀬 菜 穂 子

NMIJ標準物質セミナー2017

産 地 判 別 に も 役 に 立 つ 同 位 体 比~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 2: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

計測標準と計量管理

2018Vol 67No 4

MEASUREMENT STANDARDSand

METROLOGY MANAGEMENT

❶標準物質ってなあに ~メリットを考えよう~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 齋藤 剛hellip 2

❷そうだったのか標準物質 ~標準物質はこう使おう~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 黒岩 貴芳hellip 6

❸お役に立ちますNMIJ ~最近の取り組み~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 清水 由隆hellip 12

❹技能試験の活用と社内システムの構築 残留農薬分析を例に株式会社 アイスティサイエンス 島 三記絵hellip 17

❺検量線作成用標準物質の使い方選び方 ~JCSS標準物質を例に~一般財団法人 化学物質評価研究機構 上野 博子hellip 20

❻産地判別にも役に立つ同位体比 ~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 野々瀬菜穂子hellip 27

❼モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト国立研究開発法人 産業技術総合研究所 成川知弘倉本直樹藤井賢一hellip 35

❻もうごまかさない化学分析の信頼性 ~不確かさ評価のポイント~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 城野 克広hellip 42

NMIJ標準物質セミナー2017 化学分析の信頼性確保のための基礎知識特集

計量管理事例計量管理教材の開発と利用 計量士 日髙 鉄也hellip 49

不確かさ評価ノート 第3回分散分析の利用とF 検定国立研究開発法人 産業技術総合研究所 榎原 研正hellip 56

測定の不確かさ事例プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価 株式会社 DJK 阿部 正行赤地 利之hellip 60

標準物質紹介産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 清水 由隆hellip 68 海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告国立研究開発法人 産業技術総合研究所 松本 毅hellip 71

認定事業者紹介時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系

光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得 株式会社 ミツトヨ 沼山 博志hellip 81 産総研コーナー

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス国立研究開発法人 産業技術総合研究所 飯田健次郎hellip 86

IAJapanコーナーIAJapanコーナー 独立行政法人 製品評価技術基盤機構hellip 89

編集後記 事 務 局hellip 94

1 は じ め に

土壌中に含まれる重金属などの汚染物質野菜などの食品中の残留農薬工業製品中の機能性発現のための添加剤などある試料の中に含まれる特定の成分を定性したり定量したりする分析において特定の成分を分離して検出するクロマトグラフ法が汎用的に利用されることが多いクロマトグラフ法は多成分の一斉解析などに強みを発揮する強力な分析法である一方であるクロマトグラムのある保持時間に信号を与える未知試料についてはその標準試料と保持時間を比較することで同定を行い定量の基準となる試料で検量線を作成した上で未知試料を定量するこのようにある試料を分析する際にその試料の比較の基準となる標準を立ることは一般的な事である分析結果の信頼性高めるためには精度や品質の管理としての測定機器の日常点検測定機器の校正が行われていることに加え実施する分析方法の妥当性確認が実施されていることも重要である

標準物質は分析を行う際の基準として利用できる物質であり校正計量計測トレーサビリティの確立方法の妥当性確認他の物質への値の付与品質管理など分析の様々な局面に利用されるここではISOREMCO(国際標準化機構標準物質委員会)より発行されているガイド等を参照しつつ定量分析の基準として利用できる標準物質の定義及びそこに示される要件について解説しその上で標準物質を利用するメリットなどについて考える

2 標準物質とは

分析の基準となる物質は使用者である分析者が市販の一般試薬に対し自主的に定量的な特性値を評価し

て使用する場合もあるが多くの場合何らかの形で特性値が評価された試薬を購入してそこに示された特性値を使用することが多いこれらには生産者が独自の方法で品質を確保しているものISOやJISなどの規格に準拠した方法で品質を確保しているものまた第三者認証を得ることでその品質を保証しているものなど生産のされ方や信頼性を確保する方法で様々な種類のものが流通しているこれらは標準品標準試料標準物質認証標準物質など様々な呼称で販売されており多くの試薬会社より入手が可能であるここではまず分析の基準となる物質へ求められる要求事項について整理する

分析の基準となる物質は使用するたびにその特性に変化がないことが必要となるすなわち試料の使用される特性は安定であることが求められる分銅を例に見るとその特性である質量が長期間にわたり変化を起こしにくい金属で作られており常に同じ質量が保たれる工夫が施されている化学分析においてはその基準に化学物質が利用されることが大半であり使用のたびに消費されるが基準となる物質の特性が使用のたびごとに変化しては困る安定性は基準とする物質に要求される重要な要因である基準となる試料は試薬瓶などのユニットのどこからサンプリングしても同じ特性を持つことも重要となる均質性は偏在などが起きやすい試料ほど注意が必要となるこれらを鑑みて分析の際の基準として利用することができる標準物質を生産する際の要求事項が規定されたJIS Q0034 1)には標準物質は以下の通り定義されている標準物質(reference materialRM)一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するよう作

計測標準と計量管理2

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

標 準 物 質 っ て な あ に ~メリットを考えよう~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

総括研究主幹 齋 藤 剛

1 は じ め に

様々な製品や環境食品に対する安全安心の要求が高まる中分析計測の信頼性確保の必要性がより一層高まっている信頼性を確保するためには分析結果の真度と精度を含めた精確さの管理が必要でありそのうえで第三者にその値を認めてもらうことが重要であるそのためには試験する技術の妥当性を証明する行為とその分析自体の信頼性を確保する必要がある分析自体の信頼性を確保するためには標準物質を活用する方法が最も有効な手段の一つであるしかしながら標準物質と言われるものの存在やその有用性は知っていても自身の分析値の信頼性を確保するためにどういうものを選び使用すればよいのかまたどのように使えば効果的であるのかなどについては意外と知られていない部分も多い分析値の信頼性を高めるために標準物質をより有効に活用するにはどうしたらよいか本稿では標準物質の選び方使い方認証標準物質に付随する文書である認証書の記載内容について説明する

2 標準物質の選び方

そもそも標準物質と言われるものにどのようなものがありどのような違いがあるのかを知っておかなければならない前稿で紹介されているのでここでは省くが化学の分野では一般に標準物質という呼称以外にも標品標準品標準試料といった呼称で販売されている本稿ではJIS Q 0034 1)において標準物質として定義されるものについて説明する

標準物質は)分析計測機器の校正(キャリブレーション)及び物質材料への値付け)分析計測

方法の評価)分析試験機関あるいは分析者測定者の技能の確認などの目的で使用される)は機器が正確な指示値を示すよう調整する操作及び検量線を作成することによって物理量単位の指示値を濃度や物性値に変換することが含まれるまた例えば容量分析における規定液の標定の場合純度が確定された容量分析用標準物質を基準にして被検液の濃度を決定する場合なども含まれるトレ-サビリティ体系の上位の標準物質による下位の標準物質の値付けもこれに該当する)は使用する分析計測方法が信頼性のある方法か否かを評価する場合で方法の妥当性確認(バリデ-ション)を意味する)は組織あるいは個人が信頼性のあるデ-タを出す技術的能力を有するか確認する場合で試験室内のブラインドテストや試験所間の技能試験に使用することもできる標準物質の分類は様々であるが一般に化学分析に用いる標準物質においては大きく純物質系標準物質と組成標準物質に分けられる通常)及び)の目的には組成標準物質が使用される一方)には校正用の純物質系標準物質が主に用いられるが組成標準物質もしばしば利用される

信頼性の高い測定結果を得るために標準物質を選ぶ際には以下のことを明確にしておく必要がある

(1) 標準物質の用途が使用する目的に適しているか(2) 測定対象とする成分について濃度レベルや不

確かさは適当か(3) 測定方法に適した形状や量であるか(4) 溶媒や不純物などマトリックス成分は問題な

いか(測定への影響)(5) 使用期間に対する安定性(有効期限等)測定に

対する均質性(最小使用量)に問題はないか標準物質はその用途が付随する文章等に記載されて

計測標準と計量管理6

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

標準物質認証管理室 室長 黒 岩 貴 芳

NMIJ標準物質セミナー2017

そ う だ っ た の か 標 準 物 質~標準物質はこう使おう~

1 は じ め に(https wwwnmijjp)

NMIJ標準物質セミナーはJASISコンファレンスの中でNMIJが年ごとにテーマを定めて主催するセミナーであるNMIJ標準物質セミナーでは基本的には年ごとのテーマに沿った講演が行われるが主催のNMIJの活動を知ってもらいたいということもあり例年NMIJの活動を紹介しているJASISは分析化学に関連が深い展示会ということでNMIJの活動のうち特に化学系計量業務に関する活動を紹介している標準物質セミナーという名前のとおりNMIJが頒布する標準物質についてはもちろんのことそのほかの具体的なテーマとして化学系校正サービスデータベース計測クラブ及び産総研コンソーシアムを紹介した

紹介したテーマは上記のとおりであるがNMIJ標準物質セミナーでは限られた時間内で詳細は紹介できないこととNMIJのウェブサイトであれば最新のより詳細な情報が掲載されていることからより詳しい情報が必要な方はNMIJのウェブサイトを閲覧していただけるよう上記のテーマに関連してどのような情報がウェブサイトに掲載されているかを中心に概要を紹介した

本稿でもNMIJの化学系計量業務の活動紹介の概要のみを示した各章のタイトル等の横に示したURLはその章の内容を閲覧できる代表的なURLなので興味を持たれた場合にはぜひ当該のウェブサイトを閲覧いただきたい

2 標準物質(https wwwnmijjpserviceC)

NMIJが供給している認証標準物質(一部は標準物質)について紹介を行った主な紹介と概要は以下の

とおりであるなお各項目については更新時にURLが変更になることがあるため標準物質のページから当該の内容を閲覧していただきたい

NMIJ認証標準物質の特徴と利用NMIJ認証標準物質の特徴主な用途標準物

質の利用や用語が紹介されているその中で示されたNMIJ認証標準物質の特徴は以下のとおりであるbull計量計測トレーサビリティが確立された標準物

質bullISO Guide 34に基づいたマネジメントシステム

による生産bullISO Guide 35に基づいた認証値の決定bull最も正確な測定法(一次標準測定法など)によ

る分析bull国際単位系(SI)にトレーサブルbullGuide to the Expression of Uncertainty in

Measurement(GUM)に基づいた不確かさの評価また示されたNMIJ認証標準物質の主な用途

は以下のとおりであるbull測定機器の校正bull分析法分析値の妥当性確認bull分析精度管理

NMIJ標準物質の一覧購入方法などbull2017年度頒布開始標準物質一覧

2017年度に頒布を開始した標準物質の一覧を示した今年度供給を開始した標準物質は物質でありロット更新した標準物質も種類紹介したなお2017年度に頒布を開始した標準物質については本誌産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質でも紹

計測標準と計量管理12

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

お 役 に 立 ち ま す NMIJ~最 近 の 取 り 組 み~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

1 は じ め に

技能試験は様々な分野において分析方法の妥当性や分析能力の客観的評価のために活用されているまた分析方法のみならず試料の受入から結果報告まで含む工程についても評価の対象とすることができるためそれが結果の信頼性へとつながっている

弊社はメーカーではあるが自動前処理装置の販売や分析法の提案なども行っているためそれらの客観的評価を得る目的で技能試験に参加している

ここでは技能試験の参加により明らかになった問題点とその対策について紹介する

2 参加状況と結果

弊社では2012年から毎年残留農薬分野の技能試験に参加している産業技術総合研究所計量標準総合センターが主催する技能試験では意図的に農薬を残留させた原料を用いて調製した試料を使用しているため抽出工程を含む分析方法の評価が可能である

試験は弊社の提案するSTQ法(Solid phase extrac-tion Technique with QuEChERS method 図)で行っておりその際使用する自社製品の自動固相抽出装置を含むSTQ法の客観的評価を目的としている

これまでの試験結果は表の通りである2012年から 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2の良好な結果が続いていたが2015年に参加したかんきつ試料の試験では 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2となったそこでその原因について調査を開始した

17Vol 67 No 4 2018

特集

株式会社 アイスティサイエンス

島 三 記 絵

表技能試験参加状況と結果

参加時期 主 催 試 料 結 果

2012年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2013年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2014年 産業技術総合研究所 玄 麦 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2015年産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

食 品 関 連 団 体 かんきつ類 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2

2016年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2017年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

図STQ法

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

技能試験の活用と社内システムの構築残 留 農 薬 分 析 を 例 に

1 は じ め に

近年の技術の発達化学分析に求められる測定対象物質の種類の増大対象濃度の低濃度化や正確さへの要求から最近の化学分析では従来の容量分析法や重量分析法に代わり機器分析法が多く用いられているさらに分析機器の進歩により測定の自動化が進み測定者の技能によらず誰でもほぼ同じ結果を求めることができるようになっているしかし単に試料を機器に導入しただけでは機器から得られる出力値が電流値や電圧値であるため試料中の測定対象物の濃度を知ることはできない環境基準や水質基準製品の品質管理等においては濃度で管理されることが多く我々が結果として求めているものは濃度であるといえるそこで機器分析において濃度等の結果を得るためには測定対象物の濃度と機器の出力値の関係を明らかにする必要があるこの関係は分析ごと測定対象物ごとに求める必要がありその関係を表したものは検量線と呼ばれているこの検量線を得るために必要となるのが標準物質であるこの標準物質の質が検量線の精確さ更には測定結果の精確さに大きく影響を与えることとなる

今回は化学分析における結果の信頼性確保に必要不可欠な標準物質について計量法トレーサビリティ制度に基づき供給される標準物質の供給体系等を中心に紹介する

2 標準物質とは

標準物質と呼ばれるものは数多くあり使用目的に応じて選択する必要があるまずは物性工業量測定用標準物質と化学分析計測用標準物質に分けることができる物性工業量測定用標準物質としては密

度標準硬さ試験片粘度標準などがある化学分析に用いられる標準物質は大きく二つに分けられ純物質系標準物質と組成標準物質がある純物質系標準物質は純物質又は純物質そのものでなくとも水や酸有機溶媒のように簡単で人工的なマトリックスの中に純物質が溶けているものでありpH標準液や金属標準液などがある一方組成標準物質は純物質系標準物質以外を示し一般にマトリックス中の成分の濃度あるいは組成が特性値であるもので鉄鋼や非鉄金属合金などの金属標準物質海水や土壌などの環境標準物質樹脂などの高分子標準物質血清などの臨床標準物質がある1)

標準物質の主な使用目的として分析計測機器の校正(Calibration)物質材料への値付け分析計測機器または分析計測の評価(Validation)試験機関又は測定者(分析者)の技能確認があり用途に応じて各標準物質は使い分けられている特に機器の校正に用いられる純物質系標準物質は組成標準物質の特性値の決定にも用いられるため化学分析の根幹となる必要不可欠なものである

標準物質(RMReference Material)の正確な定義としてはJIS Q 0035 2)の中で次のように定めているここでは一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するように作製された物質

と定義されているまた標準物質の中でも認証標準物質(CRM

Certified Reference Material)は一つ以上の規定特性について計量学的に妥当な手順によって値付けされ規定特性の値及びその不確かさ並びに計量計測トレーサビリティを記載し

計測標準と計量管理20

特集

一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所

化学標準部技術第二課長 上 野 博 子

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

検量線作成用標準物質の使い方選び方~JCSS標準物質を例に~

1 は じ め に

同位体とは陽子の数すなわち原子番号が同じで中性子の数が異なる元素あるいは元素の関係のことであるその原子核の安定性の違いによって同位体は

放射性同位体と安定同位体に分けられるある種の元素では様々な試料中に含まれる元素の同位体の比を比較すると試料ごとに微妙に異なっていることがあるその微量な同位体比の差を正確に計測することによって新たな知見が得られることから同位体比情報は様々な研究分野 古くは地質学における年代測定近年では地球環境学医学生理学食品産地判別や法医学などで活用されるようになったしかし正確な同位体比情報を得るためには同位体比の測定の基準(10486371048637ものさし)となる標準物質が必要不可欠である同位体標準物質例えば鉛の同位体標準物質は米国国立標準技術研究所(NIST)などから頒布されているが 1)その同位体比の認証値の信頼性特に国際単位系(SI)へのトレーサビリティについては大きな議論を呼んでいるその上同位体比に関する標準物質が不足しているために様々な機関によって測定されたデータの整合性を議論することが困難な状況にあるそのような中国際度量衡委員会に設置された物質量諮問委員会では次世代標準としての同位体標準の重要性に関する議論が始まり同位体比測定に関する国際比較がいくつか実施されるようになった 2)今回産業技術総合研究所計量標準総合センター

(AISTNMIJ)では同位体比の変動幅が大きい元素のひとつである鉛について同位体標準液の認証標準物質(CRM)NMIJ CRM 3681-aを独創的な手法で開発した 3)本稿ではその鉛同位体標準液の用途と使い方のポイントについて紹介する

2 鉛同位体比から分かること

鉛にはつの安定同位体 204Pb206Pb207Pb208Pbが存在するこのうち206Pb207Pb208Pbはそれぞれ放射性同位体である 238U235U232Thが長い年月をかけて 壊変 壊変を繰り返しながら最終的に生成したものである(図)従ってこの地球上に親核種であるウランとトリウムが存在する限り娘核種であるこれらつの鉛同位体の存在量は変化し続ける一方204Pbはウランおよびトリウムの壊変の影響を受けないとされるそのため鉛同位体比の変動の指標には204Pbを分母としたつの同位体比 206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbが用いられることが多い鉛同位体比の活用例として代表的なものをつ紹介する<ウラン 鉛年代測定法>4)地球上の熱せられたマグマの中では親核種のウランと娘核種の鉛は共存しているがマグマが次第に冷えて鉛がウランから分離され濃縮して鉛鉱床ができるとそこで鉛の増加は停止するこの鉱床近辺のウランと鉛鉱床中の鉛の同位体比を測定することによってその鉱床ができた年代を知ることができるこのような年代測定法はウラン鉛年代測定法と呼ばれ地質学の分野でよく利用されている<産地判定法>先に説明したように現在の鉛は地球生成時から存在した鉛に加えてウランおよびトリウムの放射性同位体の壊変で生成した鉛の合計量となるしかし 204Pbだけは地球生成時と変わらないことから世界各地の鉛鉱山におけるつの同位体比206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbを比較すると同位体比に大きな違いが観測される例えば日本国内で発掘される銅鏡や銅鐸の青銅器など考古学資料に含まれる鉛同位体比はその原料の産地がある鉛鉱山の

27Vol 67 No 4 2018

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

無機標準研究グループ 主任研究員 野 々 瀬 菜 穂 子

NMIJ標準物質セミナー2017

産 地 判 別 に も 役 に 立 つ 同 位 体 比~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 3: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

土壌中に含まれる重金属などの汚染物質野菜などの食品中の残留農薬工業製品中の機能性発現のための添加剤などある試料の中に含まれる特定の成分を定性したり定量したりする分析において特定の成分を分離して検出するクロマトグラフ法が汎用的に利用されることが多いクロマトグラフ法は多成分の一斉解析などに強みを発揮する強力な分析法である一方であるクロマトグラムのある保持時間に信号を与える未知試料についてはその標準試料と保持時間を比較することで同定を行い定量の基準となる試料で検量線を作成した上で未知試料を定量するこのようにある試料を分析する際にその試料の比較の基準となる標準を立ることは一般的な事である分析結果の信頼性高めるためには精度や品質の管理としての測定機器の日常点検測定機器の校正が行われていることに加え実施する分析方法の妥当性確認が実施されていることも重要である

標準物質は分析を行う際の基準として利用できる物質であり校正計量計測トレーサビリティの確立方法の妥当性確認他の物質への値の付与品質管理など分析の様々な局面に利用されるここではISOREMCO(国際標準化機構標準物質委員会)より発行されているガイド等を参照しつつ定量分析の基準として利用できる標準物質の定義及びそこに示される要件について解説しその上で標準物質を利用するメリットなどについて考える

2 標準物質とは

分析の基準となる物質は使用者である分析者が市販の一般試薬に対し自主的に定量的な特性値を評価し

て使用する場合もあるが多くの場合何らかの形で特性値が評価された試薬を購入してそこに示された特性値を使用することが多いこれらには生産者が独自の方法で品質を確保しているものISOやJISなどの規格に準拠した方法で品質を確保しているものまた第三者認証を得ることでその品質を保証しているものなど生産のされ方や信頼性を確保する方法で様々な種類のものが流通しているこれらは標準品標準試料標準物質認証標準物質など様々な呼称で販売されており多くの試薬会社より入手が可能であるここではまず分析の基準となる物質へ求められる要求事項について整理する

分析の基準となる物質は使用するたびにその特性に変化がないことが必要となるすなわち試料の使用される特性は安定であることが求められる分銅を例に見るとその特性である質量が長期間にわたり変化を起こしにくい金属で作られており常に同じ質量が保たれる工夫が施されている化学分析においてはその基準に化学物質が利用されることが大半であり使用のたびに消費されるが基準となる物質の特性が使用のたびごとに変化しては困る安定性は基準とする物質に要求される重要な要因である基準となる試料は試薬瓶などのユニットのどこからサンプリングしても同じ特性を持つことも重要となる均質性は偏在などが起きやすい試料ほど注意が必要となるこれらを鑑みて分析の際の基準として利用することができる標準物質を生産する際の要求事項が規定されたJIS Q0034 1)には標準物質は以下の通り定義されている標準物質(reference materialRM)一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するよう作

計測標準と計量管理2

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

標 準 物 質 っ て な あ に ~メリットを考えよう~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

総括研究主幹 齋 藤 剛

1 は じ め に

様々な製品や環境食品に対する安全安心の要求が高まる中分析計測の信頼性確保の必要性がより一層高まっている信頼性を確保するためには分析結果の真度と精度を含めた精確さの管理が必要でありそのうえで第三者にその値を認めてもらうことが重要であるそのためには試験する技術の妥当性を証明する行為とその分析自体の信頼性を確保する必要がある分析自体の信頼性を確保するためには標準物質を活用する方法が最も有効な手段の一つであるしかしながら標準物質と言われるものの存在やその有用性は知っていても自身の分析値の信頼性を確保するためにどういうものを選び使用すればよいのかまたどのように使えば効果的であるのかなどについては意外と知られていない部分も多い分析値の信頼性を高めるために標準物質をより有効に活用するにはどうしたらよいか本稿では標準物質の選び方使い方認証標準物質に付随する文書である認証書の記載内容について説明する

2 標準物質の選び方

そもそも標準物質と言われるものにどのようなものがありどのような違いがあるのかを知っておかなければならない前稿で紹介されているのでここでは省くが化学の分野では一般に標準物質という呼称以外にも標品標準品標準試料といった呼称で販売されている本稿ではJIS Q 0034 1)において標準物質として定義されるものについて説明する

標準物質は)分析計測機器の校正(キャリブレーション)及び物質材料への値付け)分析計測

方法の評価)分析試験機関あるいは分析者測定者の技能の確認などの目的で使用される)は機器が正確な指示値を示すよう調整する操作及び検量線を作成することによって物理量単位の指示値を濃度や物性値に変換することが含まれるまた例えば容量分析における規定液の標定の場合純度が確定された容量分析用標準物質を基準にして被検液の濃度を決定する場合なども含まれるトレ-サビリティ体系の上位の標準物質による下位の標準物質の値付けもこれに該当する)は使用する分析計測方法が信頼性のある方法か否かを評価する場合で方法の妥当性確認(バリデ-ション)を意味する)は組織あるいは個人が信頼性のあるデ-タを出す技術的能力を有するか確認する場合で試験室内のブラインドテストや試験所間の技能試験に使用することもできる標準物質の分類は様々であるが一般に化学分析に用いる標準物質においては大きく純物質系標準物質と組成標準物質に分けられる通常)及び)の目的には組成標準物質が使用される一方)には校正用の純物質系標準物質が主に用いられるが組成標準物質もしばしば利用される

信頼性の高い測定結果を得るために標準物質を選ぶ際には以下のことを明確にしておく必要がある

(1) 標準物質の用途が使用する目的に適しているか(2) 測定対象とする成分について濃度レベルや不

確かさは適当か(3) 測定方法に適した形状や量であるか(4) 溶媒や不純物などマトリックス成分は問題な

いか(測定への影響)(5) 使用期間に対する安定性(有効期限等)測定に

対する均質性(最小使用量)に問題はないか標準物質はその用途が付随する文章等に記載されて

計測標準と計量管理6

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

標準物質認証管理室 室長 黒 岩 貴 芳

NMIJ標準物質セミナー2017

そ う だ っ た の か 標 準 物 質~標準物質はこう使おう~

1 は じ め に(https wwwnmijjp)

NMIJ標準物質セミナーはJASISコンファレンスの中でNMIJが年ごとにテーマを定めて主催するセミナーであるNMIJ標準物質セミナーでは基本的には年ごとのテーマに沿った講演が行われるが主催のNMIJの活動を知ってもらいたいということもあり例年NMIJの活動を紹介しているJASISは分析化学に関連が深い展示会ということでNMIJの活動のうち特に化学系計量業務に関する活動を紹介している標準物質セミナーという名前のとおりNMIJが頒布する標準物質についてはもちろんのことそのほかの具体的なテーマとして化学系校正サービスデータベース計測クラブ及び産総研コンソーシアムを紹介した

紹介したテーマは上記のとおりであるがNMIJ標準物質セミナーでは限られた時間内で詳細は紹介できないこととNMIJのウェブサイトであれば最新のより詳細な情報が掲載されていることからより詳しい情報が必要な方はNMIJのウェブサイトを閲覧していただけるよう上記のテーマに関連してどのような情報がウェブサイトに掲載されているかを中心に概要を紹介した

本稿でもNMIJの化学系計量業務の活動紹介の概要のみを示した各章のタイトル等の横に示したURLはその章の内容を閲覧できる代表的なURLなので興味を持たれた場合にはぜひ当該のウェブサイトを閲覧いただきたい

2 標準物質(https wwwnmijjpserviceC)

NMIJが供給している認証標準物質(一部は標準物質)について紹介を行った主な紹介と概要は以下の

とおりであるなお各項目については更新時にURLが変更になることがあるため標準物質のページから当該の内容を閲覧していただきたい

NMIJ認証標準物質の特徴と利用NMIJ認証標準物質の特徴主な用途標準物

質の利用や用語が紹介されているその中で示されたNMIJ認証標準物質の特徴は以下のとおりであるbull計量計測トレーサビリティが確立された標準物

質bullISO Guide 34に基づいたマネジメントシステム

による生産bullISO Guide 35に基づいた認証値の決定bull最も正確な測定法(一次標準測定法など)によ

る分析bull国際単位系(SI)にトレーサブルbullGuide to the Expression of Uncertainty in

Measurement(GUM)に基づいた不確かさの評価また示されたNMIJ認証標準物質の主な用途

は以下のとおりであるbull測定機器の校正bull分析法分析値の妥当性確認bull分析精度管理

NMIJ標準物質の一覧購入方法などbull2017年度頒布開始標準物質一覧

2017年度に頒布を開始した標準物質の一覧を示した今年度供給を開始した標準物質は物質でありロット更新した標準物質も種類紹介したなお2017年度に頒布を開始した標準物質については本誌産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質でも紹

計測標準と計量管理12

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

お 役 に 立 ち ま す NMIJ~最 近 の 取 り 組 み~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

1 は じ め に

技能試験は様々な分野において分析方法の妥当性や分析能力の客観的評価のために活用されているまた分析方法のみならず試料の受入から結果報告まで含む工程についても評価の対象とすることができるためそれが結果の信頼性へとつながっている

弊社はメーカーではあるが自動前処理装置の販売や分析法の提案なども行っているためそれらの客観的評価を得る目的で技能試験に参加している

ここでは技能試験の参加により明らかになった問題点とその対策について紹介する

2 参加状況と結果

弊社では2012年から毎年残留農薬分野の技能試験に参加している産業技術総合研究所計量標準総合センターが主催する技能試験では意図的に農薬を残留させた原料を用いて調製した試料を使用しているため抽出工程を含む分析方法の評価が可能である

試験は弊社の提案するSTQ法(Solid phase extrac-tion Technique with QuEChERS method 図)で行っておりその際使用する自社製品の自動固相抽出装置を含むSTQ法の客観的評価を目的としている

これまでの試験結果は表の通りである2012年から 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2の良好な結果が続いていたが2015年に参加したかんきつ試料の試験では 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2となったそこでその原因について調査を開始した

17Vol 67 No 4 2018

特集

株式会社 アイスティサイエンス

島 三 記 絵

表技能試験参加状況と結果

参加時期 主 催 試 料 結 果

2012年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2013年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2014年 産業技術総合研究所 玄 麦 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2015年産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

食 品 関 連 団 体 かんきつ類 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2

2016年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2017年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

図STQ法

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

技能試験の活用と社内システムの構築残 留 農 薬 分 析 を 例 に

1 は じ め に

近年の技術の発達化学分析に求められる測定対象物質の種類の増大対象濃度の低濃度化や正確さへの要求から最近の化学分析では従来の容量分析法や重量分析法に代わり機器分析法が多く用いられているさらに分析機器の進歩により測定の自動化が進み測定者の技能によらず誰でもほぼ同じ結果を求めることができるようになっているしかし単に試料を機器に導入しただけでは機器から得られる出力値が電流値や電圧値であるため試料中の測定対象物の濃度を知ることはできない環境基準や水質基準製品の品質管理等においては濃度で管理されることが多く我々が結果として求めているものは濃度であるといえるそこで機器分析において濃度等の結果を得るためには測定対象物の濃度と機器の出力値の関係を明らかにする必要があるこの関係は分析ごと測定対象物ごとに求める必要がありその関係を表したものは検量線と呼ばれているこの検量線を得るために必要となるのが標準物質であるこの標準物質の質が検量線の精確さ更には測定結果の精確さに大きく影響を与えることとなる

今回は化学分析における結果の信頼性確保に必要不可欠な標準物質について計量法トレーサビリティ制度に基づき供給される標準物質の供給体系等を中心に紹介する

2 標準物質とは

標準物質と呼ばれるものは数多くあり使用目的に応じて選択する必要があるまずは物性工業量測定用標準物質と化学分析計測用標準物質に分けることができる物性工業量測定用標準物質としては密

度標準硬さ試験片粘度標準などがある化学分析に用いられる標準物質は大きく二つに分けられ純物質系標準物質と組成標準物質がある純物質系標準物質は純物質又は純物質そのものでなくとも水や酸有機溶媒のように簡単で人工的なマトリックスの中に純物質が溶けているものでありpH標準液や金属標準液などがある一方組成標準物質は純物質系標準物質以外を示し一般にマトリックス中の成分の濃度あるいは組成が特性値であるもので鉄鋼や非鉄金属合金などの金属標準物質海水や土壌などの環境標準物質樹脂などの高分子標準物質血清などの臨床標準物質がある1)

標準物質の主な使用目的として分析計測機器の校正(Calibration)物質材料への値付け分析計測機器または分析計測の評価(Validation)試験機関又は測定者(分析者)の技能確認があり用途に応じて各標準物質は使い分けられている特に機器の校正に用いられる純物質系標準物質は組成標準物質の特性値の決定にも用いられるため化学分析の根幹となる必要不可欠なものである

標準物質(RMReference Material)の正確な定義としてはJIS Q 0035 2)の中で次のように定めているここでは一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するように作製された物質

と定義されているまた標準物質の中でも認証標準物質(CRM

Certified Reference Material)は一つ以上の規定特性について計量学的に妥当な手順によって値付けされ規定特性の値及びその不確かさ並びに計量計測トレーサビリティを記載し

計測標準と計量管理20

特集

一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所

化学標準部技術第二課長 上 野 博 子

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

検量線作成用標準物質の使い方選び方~JCSS標準物質を例に~

1 は じ め に

同位体とは陽子の数すなわち原子番号が同じで中性子の数が異なる元素あるいは元素の関係のことであるその原子核の安定性の違いによって同位体は

放射性同位体と安定同位体に分けられるある種の元素では様々な試料中に含まれる元素の同位体の比を比較すると試料ごとに微妙に異なっていることがあるその微量な同位体比の差を正確に計測することによって新たな知見が得られることから同位体比情報は様々な研究分野 古くは地質学における年代測定近年では地球環境学医学生理学食品産地判別や法医学などで活用されるようになったしかし正確な同位体比情報を得るためには同位体比の測定の基準(10486371048637ものさし)となる標準物質が必要不可欠である同位体標準物質例えば鉛の同位体標準物質は米国国立標準技術研究所(NIST)などから頒布されているが 1)その同位体比の認証値の信頼性特に国際単位系(SI)へのトレーサビリティについては大きな議論を呼んでいるその上同位体比に関する標準物質が不足しているために様々な機関によって測定されたデータの整合性を議論することが困難な状況にあるそのような中国際度量衡委員会に設置された物質量諮問委員会では次世代標準としての同位体標準の重要性に関する議論が始まり同位体比測定に関する国際比較がいくつか実施されるようになった 2)今回産業技術総合研究所計量標準総合センター

(AISTNMIJ)では同位体比の変動幅が大きい元素のひとつである鉛について同位体標準液の認証標準物質(CRM)NMIJ CRM 3681-aを独創的な手法で開発した 3)本稿ではその鉛同位体標準液の用途と使い方のポイントについて紹介する

2 鉛同位体比から分かること

鉛にはつの安定同位体 204Pb206Pb207Pb208Pbが存在するこのうち206Pb207Pb208Pbはそれぞれ放射性同位体である 238U235U232Thが長い年月をかけて 壊変 壊変を繰り返しながら最終的に生成したものである(図)従ってこの地球上に親核種であるウランとトリウムが存在する限り娘核種であるこれらつの鉛同位体の存在量は変化し続ける一方204Pbはウランおよびトリウムの壊変の影響を受けないとされるそのため鉛同位体比の変動の指標には204Pbを分母としたつの同位体比 206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbが用いられることが多い鉛同位体比の活用例として代表的なものをつ紹介する<ウラン 鉛年代測定法>4)地球上の熱せられたマグマの中では親核種のウランと娘核種の鉛は共存しているがマグマが次第に冷えて鉛がウランから分離され濃縮して鉛鉱床ができるとそこで鉛の増加は停止するこの鉱床近辺のウランと鉛鉱床中の鉛の同位体比を測定することによってその鉱床ができた年代を知ることができるこのような年代測定法はウラン鉛年代測定法と呼ばれ地質学の分野でよく利用されている<産地判定法>先に説明したように現在の鉛は地球生成時から存在した鉛に加えてウランおよびトリウムの放射性同位体の壊変で生成した鉛の合計量となるしかし 204Pbだけは地球生成時と変わらないことから世界各地の鉛鉱山におけるつの同位体比206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbを比較すると同位体比に大きな違いが観測される例えば日本国内で発掘される銅鏡や銅鐸の青銅器など考古学資料に含まれる鉛同位体比はその原料の産地がある鉛鉱山の

27Vol 67 No 4 2018

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

無機標準研究グループ 主任研究員 野 々 瀬 菜 穂 子

NMIJ標準物質セミナー2017

産 地 判 別 に も 役 に 立 つ 同 位 体 比~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 4: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

様々な製品や環境食品に対する安全安心の要求が高まる中分析計測の信頼性確保の必要性がより一層高まっている信頼性を確保するためには分析結果の真度と精度を含めた精確さの管理が必要でありそのうえで第三者にその値を認めてもらうことが重要であるそのためには試験する技術の妥当性を証明する行為とその分析自体の信頼性を確保する必要がある分析自体の信頼性を確保するためには標準物質を活用する方法が最も有効な手段の一つであるしかしながら標準物質と言われるものの存在やその有用性は知っていても自身の分析値の信頼性を確保するためにどういうものを選び使用すればよいのかまたどのように使えば効果的であるのかなどについては意外と知られていない部分も多い分析値の信頼性を高めるために標準物質をより有効に活用するにはどうしたらよいか本稿では標準物質の選び方使い方認証標準物質に付随する文書である認証書の記載内容について説明する

2 標準物質の選び方

そもそも標準物質と言われるものにどのようなものがありどのような違いがあるのかを知っておかなければならない前稿で紹介されているのでここでは省くが化学の分野では一般に標準物質という呼称以外にも標品標準品標準試料といった呼称で販売されている本稿ではJIS Q 0034 1)において標準物質として定義されるものについて説明する

標準物質は)分析計測機器の校正(キャリブレーション)及び物質材料への値付け)分析計測

方法の評価)分析試験機関あるいは分析者測定者の技能の確認などの目的で使用される)は機器が正確な指示値を示すよう調整する操作及び検量線を作成することによって物理量単位の指示値を濃度や物性値に変換することが含まれるまた例えば容量分析における規定液の標定の場合純度が確定された容量分析用標準物質を基準にして被検液の濃度を決定する場合なども含まれるトレ-サビリティ体系の上位の標準物質による下位の標準物質の値付けもこれに該当する)は使用する分析計測方法が信頼性のある方法か否かを評価する場合で方法の妥当性確認(バリデ-ション)を意味する)は組織あるいは個人が信頼性のあるデ-タを出す技術的能力を有するか確認する場合で試験室内のブラインドテストや試験所間の技能試験に使用することもできる標準物質の分類は様々であるが一般に化学分析に用いる標準物質においては大きく純物質系標準物質と組成標準物質に分けられる通常)及び)の目的には組成標準物質が使用される一方)には校正用の純物質系標準物質が主に用いられるが組成標準物質もしばしば利用される

信頼性の高い測定結果を得るために標準物質を選ぶ際には以下のことを明確にしておく必要がある

(1) 標準物質の用途が使用する目的に適しているか(2) 測定対象とする成分について濃度レベルや不

確かさは適当か(3) 測定方法に適した形状や量であるか(4) 溶媒や不純物などマトリックス成分は問題な

いか(測定への影響)(5) 使用期間に対する安定性(有効期限等)測定に

対する均質性(最小使用量)に問題はないか標準物質はその用途が付随する文章等に記載されて

計測標準と計量管理6

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

標準物質認証管理室 室長 黒 岩 貴 芳

NMIJ標準物質セミナー2017

そ う だ っ た の か 標 準 物 質~標準物質はこう使おう~

1 は じ め に(https wwwnmijjp)

NMIJ標準物質セミナーはJASISコンファレンスの中でNMIJが年ごとにテーマを定めて主催するセミナーであるNMIJ標準物質セミナーでは基本的には年ごとのテーマに沿った講演が行われるが主催のNMIJの活動を知ってもらいたいということもあり例年NMIJの活動を紹介しているJASISは分析化学に関連が深い展示会ということでNMIJの活動のうち特に化学系計量業務に関する活動を紹介している標準物質セミナーという名前のとおりNMIJが頒布する標準物質についてはもちろんのことそのほかの具体的なテーマとして化学系校正サービスデータベース計測クラブ及び産総研コンソーシアムを紹介した

紹介したテーマは上記のとおりであるがNMIJ標準物質セミナーでは限られた時間内で詳細は紹介できないこととNMIJのウェブサイトであれば最新のより詳細な情報が掲載されていることからより詳しい情報が必要な方はNMIJのウェブサイトを閲覧していただけるよう上記のテーマに関連してどのような情報がウェブサイトに掲載されているかを中心に概要を紹介した

本稿でもNMIJの化学系計量業務の活動紹介の概要のみを示した各章のタイトル等の横に示したURLはその章の内容を閲覧できる代表的なURLなので興味を持たれた場合にはぜひ当該のウェブサイトを閲覧いただきたい

2 標準物質(https wwwnmijjpserviceC)

NMIJが供給している認証標準物質(一部は標準物質)について紹介を行った主な紹介と概要は以下の

とおりであるなお各項目については更新時にURLが変更になることがあるため標準物質のページから当該の内容を閲覧していただきたい

NMIJ認証標準物質の特徴と利用NMIJ認証標準物質の特徴主な用途標準物

質の利用や用語が紹介されているその中で示されたNMIJ認証標準物質の特徴は以下のとおりであるbull計量計測トレーサビリティが確立された標準物

質bullISO Guide 34に基づいたマネジメントシステム

による生産bullISO Guide 35に基づいた認証値の決定bull最も正確な測定法(一次標準測定法など)によ

る分析bull国際単位系(SI)にトレーサブルbullGuide to the Expression of Uncertainty in

Measurement(GUM)に基づいた不確かさの評価また示されたNMIJ認証標準物質の主な用途

は以下のとおりであるbull測定機器の校正bull分析法分析値の妥当性確認bull分析精度管理

NMIJ標準物質の一覧購入方法などbull2017年度頒布開始標準物質一覧

2017年度に頒布を開始した標準物質の一覧を示した今年度供給を開始した標準物質は物質でありロット更新した標準物質も種類紹介したなお2017年度に頒布を開始した標準物質については本誌産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質でも紹

計測標準と計量管理12

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

お 役 に 立 ち ま す NMIJ~最 近 の 取 り 組 み~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

1 は じ め に

技能試験は様々な分野において分析方法の妥当性や分析能力の客観的評価のために活用されているまた分析方法のみならず試料の受入から結果報告まで含む工程についても評価の対象とすることができるためそれが結果の信頼性へとつながっている

弊社はメーカーではあるが自動前処理装置の販売や分析法の提案なども行っているためそれらの客観的評価を得る目的で技能試験に参加している

ここでは技能試験の参加により明らかになった問題点とその対策について紹介する

2 参加状況と結果

弊社では2012年から毎年残留農薬分野の技能試験に参加している産業技術総合研究所計量標準総合センターが主催する技能試験では意図的に農薬を残留させた原料を用いて調製した試料を使用しているため抽出工程を含む分析方法の評価が可能である

試験は弊社の提案するSTQ法(Solid phase extrac-tion Technique with QuEChERS method 図)で行っておりその際使用する自社製品の自動固相抽出装置を含むSTQ法の客観的評価を目的としている

これまでの試験結果は表の通りである2012年から 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2の良好な結果が続いていたが2015年に参加したかんきつ試料の試験では 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2となったそこでその原因について調査を開始した

17Vol 67 No 4 2018

特集

株式会社 アイスティサイエンス

島 三 記 絵

表技能試験参加状況と結果

参加時期 主 催 試 料 結 果

2012年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2013年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2014年 産業技術総合研究所 玄 麦 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2015年産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

食 品 関 連 団 体 かんきつ類 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2

2016年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2017年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

図STQ法

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

技能試験の活用と社内システムの構築残 留 農 薬 分 析 を 例 に

1 は じ め に

近年の技術の発達化学分析に求められる測定対象物質の種類の増大対象濃度の低濃度化や正確さへの要求から最近の化学分析では従来の容量分析法や重量分析法に代わり機器分析法が多く用いられているさらに分析機器の進歩により測定の自動化が進み測定者の技能によらず誰でもほぼ同じ結果を求めることができるようになっているしかし単に試料を機器に導入しただけでは機器から得られる出力値が電流値や電圧値であるため試料中の測定対象物の濃度を知ることはできない環境基準や水質基準製品の品質管理等においては濃度で管理されることが多く我々が結果として求めているものは濃度であるといえるそこで機器分析において濃度等の結果を得るためには測定対象物の濃度と機器の出力値の関係を明らかにする必要があるこの関係は分析ごと測定対象物ごとに求める必要がありその関係を表したものは検量線と呼ばれているこの検量線を得るために必要となるのが標準物質であるこの標準物質の質が検量線の精確さ更には測定結果の精確さに大きく影響を与えることとなる

今回は化学分析における結果の信頼性確保に必要不可欠な標準物質について計量法トレーサビリティ制度に基づき供給される標準物質の供給体系等を中心に紹介する

2 標準物質とは

標準物質と呼ばれるものは数多くあり使用目的に応じて選択する必要があるまずは物性工業量測定用標準物質と化学分析計測用標準物質に分けることができる物性工業量測定用標準物質としては密

度標準硬さ試験片粘度標準などがある化学分析に用いられる標準物質は大きく二つに分けられ純物質系標準物質と組成標準物質がある純物質系標準物質は純物質又は純物質そのものでなくとも水や酸有機溶媒のように簡単で人工的なマトリックスの中に純物質が溶けているものでありpH標準液や金属標準液などがある一方組成標準物質は純物質系標準物質以外を示し一般にマトリックス中の成分の濃度あるいは組成が特性値であるもので鉄鋼や非鉄金属合金などの金属標準物質海水や土壌などの環境標準物質樹脂などの高分子標準物質血清などの臨床標準物質がある1)

標準物質の主な使用目的として分析計測機器の校正(Calibration)物質材料への値付け分析計測機器または分析計測の評価(Validation)試験機関又は測定者(分析者)の技能確認があり用途に応じて各標準物質は使い分けられている特に機器の校正に用いられる純物質系標準物質は組成標準物質の特性値の決定にも用いられるため化学分析の根幹となる必要不可欠なものである

標準物質(RMReference Material)の正確な定義としてはJIS Q 0035 2)の中で次のように定めているここでは一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するように作製された物質

と定義されているまた標準物質の中でも認証標準物質(CRM

Certified Reference Material)は一つ以上の規定特性について計量学的に妥当な手順によって値付けされ規定特性の値及びその不確かさ並びに計量計測トレーサビリティを記載し

計測標準と計量管理20

特集

一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所

化学標準部技術第二課長 上 野 博 子

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

検量線作成用標準物質の使い方選び方~JCSS標準物質を例に~

1 は じ め に

同位体とは陽子の数すなわち原子番号が同じで中性子の数が異なる元素あるいは元素の関係のことであるその原子核の安定性の違いによって同位体は

放射性同位体と安定同位体に分けられるある種の元素では様々な試料中に含まれる元素の同位体の比を比較すると試料ごとに微妙に異なっていることがあるその微量な同位体比の差を正確に計測することによって新たな知見が得られることから同位体比情報は様々な研究分野 古くは地質学における年代測定近年では地球環境学医学生理学食品産地判別や法医学などで活用されるようになったしかし正確な同位体比情報を得るためには同位体比の測定の基準(10486371048637ものさし)となる標準物質が必要不可欠である同位体標準物質例えば鉛の同位体標準物質は米国国立標準技術研究所(NIST)などから頒布されているが 1)その同位体比の認証値の信頼性特に国際単位系(SI)へのトレーサビリティについては大きな議論を呼んでいるその上同位体比に関する標準物質が不足しているために様々な機関によって測定されたデータの整合性を議論することが困難な状況にあるそのような中国際度量衡委員会に設置された物質量諮問委員会では次世代標準としての同位体標準の重要性に関する議論が始まり同位体比測定に関する国際比較がいくつか実施されるようになった 2)今回産業技術総合研究所計量標準総合センター

(AISTNMIJ)では同位体比の変動幅が大きい元素のひとつである鉛について同位体標準液の認証標準物質(CRM)NMIJ CRM 3681-aを独創的な手法で開発した 3)本稿ではその鉛同位体標準液の用途と使い方のポイントについて紹介する

2 鉛同位体比から分かること

鉛にはつの安定同位体 204Pb206Pb207Pb208Pbが存在するこのうち206Pb207Pb208Pbはそれぞれ放射性同位体である 238U235U232Thが長い年月をかけて 壊変 壊変を繰り返しながら最終的に生成したものである(図)従ってこの地球上に親核種であるウランとトリウムが存在する限り娘核種であるこれらつの鉛同位体の存在量は変化し続ける一方204Pbはウランおよびトリウムの壊変の影響を受けないとされるそのため鉛同位体比の変動の指標には204Pbを分母としたつの同位体比 206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbが用いられることが多い鉛同位体比の活用例として代表的なものをつ紹介する<ウラン 鉛年代測定法>4)地球上の熱せられたマグマの中では親核種のウランと娘核種の鉛は共存しているがマグマが次第に冷えて鉛がウランから分離され濃縮して鉛鉱床ができるとそこで鉛の増加は停止するこの鉱床近辺のウランと鉛鉱床中の鉛の同位体比を測定することによってその鉱床ができた年代を知ることができるこのような年代測定法はウラン鉛年代測定法と呼ばれ地質学の分野でよく利用されている<産地判定法>先に説明したように現在の鉛は地球生成時から存在した鉛に加えてウランおよびトリウムの放射性同位体の壊変で生成した鉛の合計量となるしかし 204Pbだけは地球生成時と変わらないことから世界各地の鉛鉱山におけるつの同位体比206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbを比較すると同位体比に大きな違いが観測される例えば日本国内で発掘される銅鏡や銅鐸の青銅器など考古学資料に含まれる鉛同位体比はその原料の産地がある鉛鉱山の

27Vol 67 No 4 2018

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

無機標準研究グループ 主任研究員 野 々 瀬 菜 穂 子

NMIJ標準物質セミナー2017

産 地 判 別 に も 役 に 立 つ 同 位 体 比~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 5: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に(https wwwnmijjp)

NMIJ標準物質セミナーはJASISコンファレンスの中でNMIJが年ごとにテーマを定めて主催するセミナーであるNMIJ標準物質セミナーでは基本的には年ごとのテーマに沿った講演が行われるが主催のNMIJの活動を知ってもらいたいということもあり例年NMIJの活動を紹介しているJASISは分析化学に関連が深い展示会ということでNMIJの活動のうち特に化学系計量業務に関する活動を紹介している標準物質セミナーという名前のとおりNMIJが頒布する標準物質についてはもちろんのことそのほかの具体的なテーマとして化学系校正サービスデータベース計測クラブ及び産総研コンソーシアムを紹介した

紹介したテーマは上記のとおりであるがNMIJ標準物質セミナーでは限られた時間内で詳細は紹介できないこととNMIJのウェブサイトであれば最新のより詳細な情報が掲載されていることからより詳しい情報が必要な方はNMIJのウェブサイトを閲覧していただけるよう上記のテーマに関連してどのような情報がウェブサイトに掲載されているかを中心に概要を紹介した

本稿でもNMIJの化学系計量業務の活動紹介の概要のみを示した各章のタイトル等の横に示したURLはその章の内容を閲覧できる代表的なURLなので興味を持たれた場合にはぜひ当該のウェブサイトを閲覧いただきたい

2 標準物質(https wwwnmijjpserviceC)

NMIJが供給している認証標準物質(一部は標準物質)について紹介を行った主な紹介と概要は以下の

とおりであるなお各項目については更新時にURLが変更になることがあるため標準物質のページから当該の内容を閲覧していただきたい

NMIJ認証標準物質の特徴と利用NMIJ認証標準物質の特徴主な用途標準物

質の利用や用語が紹介されているその中で示されたNMIJ認証標準物質の特徴は以下のとおりであるbull計量計測トレーサビリティが確立された標準物

質bullISO Guide 34に基づいたマネジメントシステム

による生産bullISO Guide 35に基づいた認証値の決定bull最も正確な測定法(一次標準測定法など)によ

る分析bull国際単位系(SI)にトレーサブルbullGuide to the Expression of Uncertainty in

Measurement(GUM)に基づいた不確かさの評価また示されたNMIJ認証標準物質の主な用途

は以下のとおりであるbull測定機器の校正bull分析法分析値の妥当性確認bull分析精度管理

NMIJ標準物質の一覧購入方法などbull2017年度頒布開始標準物質一覧

2017年度に頒布を開始した標準物質の一覧を示した今年度供給を開始した標準物質は物質でありロット更新した標準物質も種類紹介したなお2017年度に頒布を開始した標準物質については本誌産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質でも紹

計測標準と計量管理12

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

お 役 に 立 ち ま す NMIJ~最 近 の 取 り 組 み~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

1 は じ め に

技能試験は様々な分野において分析方法の妥当性や分析能力の客観的評価のために活用されているまた分析方法のみならず試料の受入から結果報告まで含む工程についても評価の対象とすることができるためそれが結果の信頼性へとつながっている

弊社はメーカーではあるが自動前処理装置の販売や分析法の提案なども行っているためそれらの客観的評価を得る目的で技能試験に参加している

ここでは技能試験の参加により明らかになった問題点とその対策について紹介する

2 参加状況と結果

弊社では2012年から毎年残留農薬分野の技能試験に参加している産業技術総合研究所計量標準総合センターが主催する技能試験では意図的に農薬を残留させた原料を用いて調製した試料を使用しているため抽出工程を含む分析方法の評価が可能である

試験は弊社の提案するSTQ法(Solid phase extrac-tion Technique with QuEChERS method 図)で行っておりその際使用する自社製品の自動固相抽出装置を含むSTQ法の客観的評価を目的としている

これまでの試験結果は表の通りである2012年から 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2の良好な結果が続いていたが2015年に参加したかんきつ試料の試験では 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2となったそこでその原因について調査を開始した

17Vol 67 No 4 2018

特集

株式会社 アイスティサイエンス

島 三 記 絵

表技能試験参加状況と結果

参加時期 主 催 試 料 結 果

2012年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2013年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2014年 産業技術総合研究所 玄 麦 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2015年産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

食 品 関 連 団 体 かんきつ類 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2

2016年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2017年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

図STQ法

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

技能試験の活用と社内システムの構築残 留 農 薬 分 析 を 例 に

1 は じ め に

近年の技術の発達化学分析に求められる測定対象物質の種類の増大対象濃度の低濃度化や正確さへの要求から最近の化学分析では従来の容量分析法や重量分析法に代わり機器分析法が多く用いられているさらに分析機器の進歩により測定の自動化が進み測定者の技能によらず誰でもほぼ同じ結果を求めることができるようになっているしかし単に試料を機器に導入しただけでは機器から得られる出力値が電流値や電圧値であるため試料中の測定対象物の濃度を知ることはできない環境基準や水質基準製品の品質管理等においては濃度で管理されることが多く我々が結果として求めているものは濃度であるといえるそこで機器分析において濃度等の結果を得るためには測定対象物の濃度と機器の出力値の関係を明らかにする必要があるこの関係は分析ごと測定対象物ごとに求める必要がありその関係を表したものは検量線と呼ばれているこの検量線を得るために必要となるのが標準物質であるこの標準物質の質が検量線の精確さ更には測定結果の精確さに大きく影響を与えることとなる

今回は化学分析における結果の信頼性確保に必要不可欠な標準物質について計量法トレーサビリティ制度に基づき供給される標準物質の供給体系等を中心に紹介する

2 標準物質とは

標準物質と呼ばれるものは数多くあり使用目的に応じて選択する必要があるまずは物性工業量測定用標準物質と化学分析計測用標準物質に分けることができる物性工業量測定用標準物質としては密

度標準硬さ試験片粘度標準などがある化学分析に用いられる標準物質は大きく二つに分けられ純物質系標準物質と組成標準物質がある純物質系標準物質は純物質又は純物質そのものでなくとも水や酸有機溶媒のように簡単で人工的なマトリックスの中に純物質が溶けているものでありpH標準液や金属標準液などがある一方組成標準物質は純物質系標準物質以外を示し一般にマトリックス中の成分の濃度あるいは組成が特性値であるもので鉄鋼や非鉄金属合金などの金属標準物質海水や土壌などの環境標準物質樹脂などの高分子標準物質血清などの臨床標準物質がある1)

標準物質の主な使用目的として分析計測機器の校正(Calibration)物質材料への値付け分析計測機器または分析計測の評価(Validation)試験機関又は測定者(分析者)の技能確認があり用途に応じて各標準物質は使い分けられている特に機器の校正に用いられる純物質系標準物質は組成標準物質の特性値の決定にも用いられるため化学分析の根幹となる必要不可欠なものである

標準物質(RMReference Material)の正確な定義としてはJIS Q 0035 2)の中で次のように定めているここでは一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するように作製された物質

と定義されているまた標準物質の中でも認証標準物質(CRM

Certified Reference Material)は一つ以上の規定特性について計量学的に妥当な手順によって値付けされ規定特性の値及びその不確かさ並びに計量計測トレーサビリティを記載し

計測標準と計量管理20

特集

一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所

化学標準部技術第二課長 上 野 博 子

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

検量線作成用標準物質の使い方選び方~JCSS標準物質を例に~

1 は じ め に

同位体とは陽子の数すなわち原子番号が同じで中性子の数が異なる元素あるいは元素の関係のことであるその原子核の安定性の違いによって同位体は

放射性同位体と安定同位体に分けられるある種の元素では様々な試料中に含まれる元素の同位体の比を比較すると試料ごとに微妙に異なっていることがあるその微量な同位体比の差を正確に計測することによって新たな知見が得られることから同位体比情報は様々な研究分野 古くは地質学における年代測定近年では地球環境学医学生理学食品産地判別や法医学などで活用されるようになったしかし正確な同位体比情報を得るためには同位体比の測定の基準(10486371048637ものさし)となる標準物質が必要不可欠である同位体標準物質例えば鉛の同位体標準物質は米国国立標準技術研究所(NIST)などから頒布されているが 1)その同位体比の認証値の信頼性特に国際単位系(SI)へのトレーサビリティについては大きな議論を呼んでいるその上同位体比に関する標準物質が不足しているために様々な機関によって測定されたデータの整合性を議論することが困難な状況にあるそのような中国際度量衡委員会に設置された物質量諮問委員会では次世代標準としての同位体標準の重要性に関する議論が始まり同位体比測定に関する国際比較がいくつか実施されるようになった 2)今回産業技術総合研究所計量標準総合センター

(AISTNMIJ)では同位体比の変動幅が大きい元素のひとつである鉛について同位体標準液の認証標準物質(CRM)NMIJ CRM 3681-aを独創的な手法で開発した 3)本稿ではその鉛同位体標準液の用途と使い方のポイントについて紹介する

2 鉛同位体比から分かること

鉛にはつの安定同位体 204Pb206Pb207Pb208Pbが存在するこのうち206Pb207Pb208Pbはそれぞれ放射性同位体である 238U235U232Thが長い年月をかけて 壊変 壊変を繰り返しながら最終的に生成したものである(図)従ってこの地球上に親核種であるウランとトリウムが存在する限り娘核種であるこれらつの鉛同位体の存在量は変化し続ける一方204Pbはウランおよびトリウムの壊変の影響を受けないとされるそのため鉛同位体比の変動の指標には204Pbを分母としたつの同位体比 206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbが用いられることが多い鉛同位体比の活用例として代表的なものをつ紹介する<ウラン 鉛年代測定法>4)地球上の熱せられたマグマの中では親核種のウランと娘核種の鉛は共存しているがマグマが次第に冷えて鉛がウランから分離され濃縮して鉛鉱床ができるとそこで鉛の増加は停止するこの鉱床近辺のウランと鉛鉱床中の鉛の同位体比を測定することによってその鉱床ができた年代を知ることができるこのような年代測定法はウラン鉛年代測定法と呼ばれ地質学の分野でよく利用されている<産地判定法>先に説明したように現在の鉛は地球生成時から存在した鉛に加えてウランおよびトリウムの放射性同位体の壊変で生成した鉛の合計量となるしかし 204Pbだけは地球生成時と変わらないことから世界各地の鉛鉱山におけるつの同位体比206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbを比較すると同位体比に大きな違いが観測される例えば日本国内で発掘される銅鏡や銅鐸の青銅器など考古学資料に含まれる鉛同位体比はその原料の産地がある鉛鉱山の

27Vol 67 No 4 2018

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

無機標準研究グループ 主任研究員 野 々 瀬 菜 穂 子

NMIJ標準物質セミナー2017

産 地 判 別 に も 役 に 立 つ 同 位 体 比~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 6: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

技能試験は様々な分野において分析方法の妥当性や分析能力の客観的評価のために活用されているまた分析方法のみならず試料の受入から結果報告まで含む工程についても評価の対象とすることができるためそれが結果の信頼性へとつながっている

弊社はメーカーではあるが自動前処理装置の販売や分析法の提案なども行っているためそれらの客観的評価を得る目的で技能試験に参加している

ここでは技能試験の参加により明らかになった問題点とその対策について紹介する

2 参加状況と結果

弊社では2012年から毎年残留農薬分野の技能試験に参加している産業技術総合研究所計量標準総合センターが主催する技能試験では意図的に農薬を残留させた原料を用いて調製した試料を使用しているため抽出工程を含む分析方法の評価が可能である

試験は弊社の提案するSTQ法(Solid phase extrac-tion Technique with QuEChERS method 図)で行っておりその際使用する自社製品の自動固相抽出装置を含むSTQ法の客観的評価を目的としている

これまでの試験結果は表の通りである2012年から 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2の良好な結果が続いていたが2015年に参加したかんきつ試料の試験では 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2となったそこでその原因について調査を開始した

17Vol 67 No 4 2018

特集

株式会社 アイスティサイエンス

島 三 記 絵

表技能試験参加状況と結果

参加時期 主 催 試 料 結 果

2012年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2013年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2014年 産業技術総合研究所 玄 麦 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2015年産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

食 品 関 連 団 体 かんきつ類 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10486381048638 2

2016年 産業技術総合研究所 大 豆 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

2017年 産業技術総合研究所 玄 米 11074671107467 10486661048666 11074671107467 10573821057382 2

図STQ法

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

技能試験の活用と社内システムの構築残 留 農 薬 分 析 を 例 に

1 は じ め に

近年の技術の発達化学分析に求められる測定対象物質の種類の増大対象濃度の低濃度化や正確さへの要求から最近の化学分析では従来の容量分析法や重量分析法に代わり機器分析法が多く用いられているさらに分析機器の進歩により測定の自動化が進み測定者の技能によらず誰でもほぼ同じ結果を求めることができるようになっているしかし単に試料を機器に導入しただけでは機器から得られる出力値が電流値や電圧値であるため試料中の測定対象物の濃度を知ることはできない環境基準や水質基準製品の品質管理等においては濃度で管理されることが多く我々が結果として求めているものは濃度であるといえるそこで機器分析において濃度等の結果を得るためには測定対象物の濃度と機器の出力値の関係を明らかにする必要があるこの関係は分析ごと測定対象物ごとに求める必要がありその関係を表したものは検量線と呼ばれているこの検量線を得るために必要となるのが標準物質であるこの標準物質の質が検量線の精確さ更には測定結果の精確さに大きく影響を与えることとなる

今回は化学分析における結果の信頼性確保に必要不可欠な標準物質について計量法トレーサビリティ制度に基づき供給される標準物質の供給体系等を中心に紹介する

2 標準物質とは

標準物質と呼ばれるものは数多くあり使用目的に応じて選択する必要があるまずは物性工業量測定用標準物質と化学分析計測用標準物質に分けることができる物性工業量測定用標準物質としては密

度標準硬さ試験片粘度標準などがある化学分析に用いられる標準物質は大きく二つに分けられ純物質系標準物質と組成標準物質がある純物質系標準物質は純物質又は純物質そのものでなくとも水や酸有機溶媒のように簡単で人工的なマトリックスの中に純物質が溶けているものでありpH標準液や金属標準液などがある一方組成標準物質は純物質系標準物質以外を示し一般にマトリックス中の成分の濃度あるいは組成が特性値であるもので鉄鋼や非鉄金属合金などの金属標準物質海水や土壌などの環境標準物質樹脂などの高分子標準物質血清などの臨床標準物質がある1)

標準物質の主な使用目的として分析計測機器の校正(Calibration)物質材料への値付け分析計測機器または分析計測の評価(Validation)試験機関又は測定者(分析者)の技能確認があり用途に応じて各標準物質は使い分けられている特に機器の校正に用いられる純物質系標準物質は組成標準物質の特性値の決定にも用いられるため化学分析の根幹となる必要不可欠なものである

標準物質(RMReference Material)の正確な定義としてはJIS Q 0035 2)の中で次のように定めているここでは一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するように作製された物質

と定義されているまた標準物質の中でも認証標準物質(CRM

Certified Reference Material)は一つ以上の規定特性について計量学的に妥当な手順によって値付けされ規定特性の値及びその不確かさ並びに計量計測トレーサビリティを記載し

計測標準と計量管理20

特集

一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所

化学標準部技術第二課長 上 野 博 子

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

検量線作成用標準物質の使い方選び方~JCSS標準物質を例に~

1 は じ め に

同位体とは陽子の数すなわち原子番号が同じで中性子の数が異なる元素あるいは元素の関係のことであるその原子核の安定性の違いによって同位体は

放射性同位体と安定同位体に分けられるある種の元素では様々な試料中に含まれる元素の同位体の比を比較すると試料ごとに微妙に異なっていることがあるその微量な同位体比の差を正確に計測することによって新たな知見が得られることから同位体比情報は様々な研究分野 古くは地質学における年代測定近年では地球環境学医学生理学食品産地判別や法医学などで活用されるようになったしかし正確な同位体比情報を得るためには同位体比の測定の基準(10486371048637ものさし)となる標準物質が必要不可欠である同位体標準物質例えば鉛の同位体標準物質は米国国立標準技術研究所(NIST)などから頒布されているが 1)その同位体比の認証値の信頼性特に国際単位系(SI)へのトレーサビリティについては大きな議論を呼んでいるその上同位体比に関する標準物質が不足しているために様々な機関によって測定されたデータの整合性を議論することが困難な状況にあるそのような中国際度量衡委員会に設置された物質量諮問委員会では次世代標準としての同位体標準の重要性に関する議論が始まり同位体比測定に関する国際比較がいくつか実施されるようになった 2)今回産業技術総合研究所計量標準総合センター

(AISTNMIJ)では同位体比の変動幅が大きい元素のひとつである鉛について同位体標準液の認証標準物質(CRM)NMIJ CRM 3681-aを独創的な手法で開発した 3)本稿ではその鉛同位体標準液の用途と使い方のポイントについて紹介する

2 鉛同位体比から分かること

鉛にはつの安定同位体 204Pb206Pb207Pb208Pbが存在するこのうち206Pb207Pb208Pbはそれぞれ放射性同位体である 238U235U232Thが長い年月をかけて 壊変 壊変を繰り返しながら最終的に生成したものである(図)従ってこの地球上に親核種であるウランとトリウムが存在する限り娘核種であるこれらつの鉛同位体の存在量は変化し続ける一方204Pbはウランおよびトリウムの壊変の影響を受けないとされるそのため鉛同位体比の変動の指標には204Pbを分母としたつの同位体比 206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbが用いられることが多い鉛同位体比の活用例として代表的なものをつ紹介する<ウラン 鉛年代測定法>4)地球上の熱せられたマグマの中では親核種のウランと娘核種の鉛は共存しているがマグマが次第に冷えて鉛がウランから分離され濃縮して鉛鉱床ができるとそこで鉛の増加は停止するこの鉱床近辺のウランと鉛鉱床中の鉛の同位体比を測定することによってその鉱床ができた年代を知ることができるこのような年代測定法はウラン鉛年代測定法と呼ばれ地質学の分野でよく利用されている<産地判定法>先に説明したように現在の鉛は地球生成時から存在した鉛に加えてウランおよびトリウムの放射性同位体の壊変で生成した鉛の合計量となるしかし 204Pbだけは地球生成時と変わらないことから世界各地の鉛鉱山におけるつの同位体比206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbを比較すると同位体比に大きな違いが観測される例えば日本国内で発掘される銅鏡や銅鐸の青銅器など考古学資料に含まれる鉛同位体比はその原料の産地がある鉛鉱山の

27Vol 67 No 4 2018

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

無機標準研究グループ 主任研究員 野 々 瀬 菜 穂 子

NMIJ標準物質セミナー2017

産 地 判 別 に も 役 に 立 つ 同 位 体 比~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 7: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

近年の技術の発達化学分析に求められる測定対象物質の種類の増大対象濃度の低濃度化や正確さへの要求から最近の化学分析では従来の容量分析法や重量分析法に代わり機器分析法が多く用いられているさらに分析機器の進歩により測定の自動化が進み測定者の技能によらず誰でもほぼ同じ結果を求めることができるようになっているしかし単に試料を機器に導入しただけでは機器から得られる出力値が電流値や電圧値であるため試料中の測定対象物の濃度を知ることはできない環境基準や水質基準製品の品質管理等においては濃度で管理されることが多く我々が結果として求めているものは濃度であるといえるそこで機器分析において濃度等の結果を得るためには測定対象物の濃度と機器の出力値の関係を明らかにする必要があるこの関係は分析ごと測定対象物ごとに求める必要がありその関係を表したものは検量線と呼ばれているこの検量線を得るために必要となるのが標準物質であるこの標準物質の質が検量線の精確さ更には測定結果の精確さに大きく影響を与えることとなる

今回は化学分析における結果の信頼性確保に必要不可欠な標準物質について計量法トレーサビリティ制度に基づき供給される標準物質の供給体系等を中心に紹介する

2 標準物質とは

標準物質と呼ばれるものは数多くあり使用目的に応じて選択する必要があるまずは物性工業量測定用標準物質と化学分析計測用標準物質に分けることができる物性工業量測定用標準物質としては密

度標準硬さ試験片粘度標準などがある化学分析に用いられる標準物質は大きく二つに分けられ純物質系標準物質と組成標準物質がある純物質系標準物質は純物質又は純物質そのものでなくとも水や酸有機溶媒のように簡単で人工的なマトリックスの中に純物質が溶けているものでありpH標準液や金属標準液などがある一方組成標準物質は純物質系標準物質以外を示し一般にマトリックス中の成分の濃度あるいは組成が特性値であるもので鉄鋼や非鉄金属合金などの金属標準物質海水や土壌などの環境標準物質樹脂などの高分子標準物質血清などの臨床標準物質がある1)

標準物質の主な使用目的として分析計測機器の校正(Calibration)物質材料への値付け分析計測機器または分析計測の評価(Validation)試験機関又は測定者(分析者)の技能確認があり用途に応じて各標準物質は使い分けられている特に機器の校正に用いられる純物質系標準物質は組成標準物質の特性値の決定にも用いられるため化学分析の根幹となる必要不可欠なものである

標準物質(RMReference Material)の正確な定義としてはJIS Q 0035 2)の中で次のように定めているここでは一つ以上の規定特性について十分均質かつ安定であり測定プロセスでの使用目的に適するように作製された物質

と定義されているまた標準物質の中でも認証標準物質(CRM

Certified Reference Material)は一つ以上の規定特性について計量学的に妥当な手順によって値付けされ規定特性の値及びその不確かさ並びに計量計測トレーサビリティを記載し

計測標準と計量管理20

特集

一般財団法人 化学物質評価研究機構 東京事業所

化学標準部技術第二課長 上 野 博 子

NMIJ標準物質セミナー2017【依頼講演】

検量線作成用標準物質の使い方選び方~JCSS標準物質を例に~

1 は じ め に

同位体とは陽子の数すなわち原子番号が同じで中性子の数が異なる元素あるいは元素の関係のことであるその原子核の安定性の違いによって同位体は

放射性同位体と安定同位体に分けられるある種の元素では様々な試料中に含まれる元素の同位体の比を比較すると試料ごとに微妙に異なっていることがあるその微量な同位体比の差を正確に計測することによって新たな知見が得られることから同位体比情報は様々な研究分野 古くは地質学における年代測定近年では地球環境学医学生理学食品産地判別や法医学などで活用されるようになったしかし正確な同位体比情報を得るためには同位体比の測定の基準(10486371048637ものさし)となる標準物質が必要不可欠である同位体標準物質例えば鉛の同位体標準物質は米国国立標準技術研究所(NIST)などから頒布されているが 1)その同位体比の認証値の信頼性特に国際単位系(SI)へのトレーサビリティについては大きな議論を呼んでいるその上同位体比に関する標準物質が不足しているために様々な機関によって測定されたデータの整合性を議論することが困難な状況にあるそのような中国際度量衡委員会に設置された物質量諮問委員会では次世代標準としての同位体標準の重要性に関する議論が始まり同位体比測定に関する国際比較がいくつか実施されるようになった 2)今回産業技術総合研究所計量標準総合センター

(AISTNMIJ)では同位体比の変動幅が大きい元素のひとつである鉛について同位体標準液の認証標準物質(CRM)NMIJ CRM 3681-aを独創的な手法で開発した 3)本稿ではその鉛同位体標準液の用途と使い方のポイントについて紹介する

2 鉛同位体比から分かること

鉛にはつの安定同位体 204Pb206Pb207Pb208Pbが存在するこのうち206Pb207Pb208Pbはそれぞれ放射性同位体である 238U235U232Thが長い年月をかけて 壊変 壊変を繰り返しながら最終的に生成したものである(図)従ってこの地球上に親核種であるウランとトリウムが存在する限り娘核種であるこれらつの鉛同位体の存在量は変化し続ける一方204Pbはウランおよびトリウムの壊変の影響を受けないとされるそのため鉛同位体比の変動の指標には204Pbを分母としたつの同位体比 206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbが用いられることが多い鉛同位体比の活用例として代表的なものをつ紹介する<ウラン 鉛年代測定法>4)地球上の熱せられたマグマの中では親核種のウランと娘核種の鉛は共存しているがマグマが次第に冷えて鉛がウランから分離され濃縮して鉛鉱床ができるとそこで鉛の増加は停止するこの鉱床近辺のウランと鉛鉱床中の鉛の同位体比を測定することによってその鉱床ができた年代を知ることができるこのような年代測定法はウラン鉛年代測定法と呼ばれ地質学の分野でよく利用されている<産地判定法>先に説明したように現在の鉛は地球生成時から存在した鉛に加えてウランおよびトリウムの放射性同位体の壊変で生成した鉛の合計量となるしかし 204Pbだけは地球生成時と変わらないことから世界各地の鉛鉱山におけるつの同位体比206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbを比較すると同位体比に大きな違いが観測される例えば日本国内で発掘される銅鏡や銅鐸の青銅器など考古学資料に含まれる鉛同位体比はその原料の産地がある鉛鉱山の

27Vol 67 No 4 2018

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

無機標準研究グループ 主任研究員 野 々 瀬 菜 穂 子

NMIJ標準物質セミナー2017

産 地 判 別 に も 役 に 立 つ 同 位 体 比~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 8: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

同位体とは陽子の数すなわち原子番号が同じで中性子の数が異なる元素あるいは元素の関係のことであるその原子核の安定性の違いによって同位体は

放射性同位体と安定同位体に分けられるある種の元素では様々な試料中に含まれる元素の同位体の比を比較すると試料ごとに微妙に異なっていることがあるその微量な同位体比の差を正確に計測することによって新たな知見が得られることから同位体比情報は様々な研究分野 古くは地質学における年代測定近年では地球環境学医学生理学食品産地判別や法医学などで活用されるようになったしかし正確な同位体比情報を得るためには同位体比の測定の基準(10486371048637ものさし)となる標準物質が必要不可欠である同位体標準物質例えば鉛の同位体標準物質は米国国立標準技術研究所(NIST)などから頒布されているが 1)その同位体比の認証値の信頼性特に国際単位系(SI)へのトレーサビリティについては大きな議論を呼んでいるその上同位体比に関する標準物質が不足しているために様々な機関によって測定されたデータの整合性を議論することが困難な状況にあるそのような中国際度量衡委員会に設置された物質量諮問委員会では次世代標準としての同位体標準の重要性に関する議論が始まり同位体比測定に関する国際比較がいくつか実施されるようになった 2)今回産業技術総合研究所計量標準総合センター

(AISTNMIJ)では同位体比の変動幅が大きい元素のひとつである鉛について同位体標準液の認証標準物質(CRM)NMIJ CRM 3681-aを独創的な手法で開発した 3)本稿ではその鉛同位体標準液の用途と使い方のポイントについて紹介する

2 鉛同位体比から分かること

鉛にはつの安定同位体 204Pb206Pb207Pb208Pbが存在するこのうち206Pb207Pb208Pbはそれぞれ放射性同位体である 238U235U232Thが長い年月をかけて 壊変 壊変を繰り返しながら最終的に生成したものである(図)従ってこの地球上に親核種であるウランとトリウムが存在する限り娘核種であるこれらつの鉛同位体の存在量は変化し続ける一方204Pbはウランおよびトリウムの壊変の影響を受けないとされるそのため鉛同位体比の変動の指標には204Pbを分母としたつの同位体比 206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbが用いられることが多い鉛同位体比の活用例として代表的なものをつ紹介する<ウラン 鉛年代測定法>4)地球上の熱せられたマグマの中では親核種のウランと娘核種の鉛は共存しているがマグマが次第に冷えて鉛がウランから分離され濃縮して鉛鉱床ができるとそこで鉛の増加は停止するこの鉱床近辺のウランと鉛鉱床中の鉛の同位体比を測定することによってその鉱床ができた年代を知ることができるこのような年代測定法はウラン鉛年代測定法と呼ばれ地質学の分野でよく利用されている<産地判定法>先に説明したように現在の鉛は地球生成時から存在した鉛に加えてウランおよびトリウムの放射性同位体の壊変で生成した鉛の合計量となるしかし 204Pbだけは地球生成時と変わらないことから世界各地の鉛鉱山におけるつの同位体比206Pb204Pb207Pb204Pb208Pb204Pbを比較すると同位体比に大きな違いが観測される例えば日本国内で発掘される銅鏡や銅鐸の青銅器など考古学資料に含まれる鉛同位体比はその原料の産地がある鉛鉱山の

27Vol 67 No 4 2018

特集

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

無機標準研究グループ 主任研究員 野 々 瀬 菜 穂 子

NMIJ標準物質セミナー2017

産 地 判 別 に も 役 に 立 つ 同 位 体 比~鉛同位体標準液の用途と使い方のポイント~

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 9: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

国際社会における世界共通の単位系として国際単位系ʠSI(仏語Le Systegraveme International dʼuniteacutes英語The International System of Units)ʡが用いられていますSIはメートル(長さ)キログラム(質量)秒(時間)アンペア(電流)ケルビン(温度)カンデラ(光度)モル(物質量)のつの基本単位からなりますこの他様々な分野で多くの単位が使用されておりますがそれらは基本単位を組み合わせることで表すことができます(図)すなわちこれら基本単位を精確に定義することは組み合わせによって表される他の単位の精確性も増すことになりますそして単位の定義およびその実現方法は科学技術の進

歩とともにより高い普遍性と再現性による定義へと変化しています

例えば長さの単位であるメートルは地球の北極点から赤道までの子午線弧長の1000万分のをメートル(m)とし1960年以前はʠ国際メートル原器ʡにより定義されていました(図写真は日本国メートル原器のレプリカ)この国際メートル原器は白金-イリジウム製の棒状をしておりその両端には1mを示す目盛り線がついていますしかし目盛り線の幅は8micromもありますそして1mに対する8micromの幅は科学技術が進むにつれて時代の要求に合わない幅になっていきましたまたメートル原器を用いるにはいくつかの問題もありました金属は温度の変化で伸縮するため温度管理を厳密にしなければなり

35Vol 67 No 4 2018

モルが変わるって アボガドロ国際プロジェクト

NMIJ標準物質セミナー2017特集

図写真copy2017 産業技術総合研究所

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター

成 川 知 弘倉 本 直 樹藤 井 賢 一

図 SI単位と組み立て単位の関係概要注)各基本量の下の数字は実現精度

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 10: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 緒 言

普段の不確かさ評価の講習では単純な数式のみで整理できる例をもって不確かさ評価の基本的な概念をお話することが多い実際の不確かさ評価の事例に目を向けても単純な数式だけで話が済むようによく工夫して不確かさ評価をしていることが多い例えば

検量線の決定の誤差は経

最大でと予想されるといった情報からそれを基に不確かさを算出すると言った具合である決して経験に基づいた不確かさ評価を非難するものではないそのような不確かさ評価で与えられる数値はかなり妥当な場合が多い

その一方で数理工学を専門とする研究者の目線からすると手持ちのデータから統計学に基づいた手法で不確かさを見積もることが可能なケースでわざわざ経験に頼った評価をする必要はないのではないかと感じているもちろん経験によって不確かさがおおよそ分かる状況でわざわざ面倒な数式を用いる必要はないという真逆の立場もありうるどちらの立場を取るかはその分析の目的とするところにも依存すると思うしかし経験的な観点から良いと考えて採用していた手順に数式を通して合理的な裏付けができ自信を持って不確かさを表明できるということもあるだろう経験的な方法で不確かさを見積もる場合でも一度数式とにらみあってみることは決して時間の無駄ではないのではないか

このような思いの下でこの講演ではなるべく経験によって面倒な数式をスキップするというごまかしをせずにどのように不確かさ評価ができるかという情報を提供しようとしたものである特に経験的な判断の中で起こりやすい間違いはどのようなものがあるかということに着目した本稿もそのような視点で

自身の不確かさ評価や計量管理を見直してみたいと考えている化学分析者に役立つものになっていることを願っている本稿の構成は以下の通りである章では本題に入る前にそもそも不確かさとは何かということについて簡単に解説する章と章ではそれぞれ化学分析で典型的な不確かさの合成ルール(章)そこから少しずれた場合にどのようなことが起こりうるか(章)について説明するまた章では検量線を使う場合に計量管理に使われることが多い決定係数と不確かさの関係について説明する

2 不確かさの意味

標準物質を購入した際に添付される標準物質認証書には必ず不確かさの情報が含まれている多くのケースでは拡張不確かさと呼ばれる値が記載されている拡張不確かさとは多くの場合それより大きなずれが発生する確率が5以下であるような大きなずれのことを意味している拡張不確かさに加えてもう一つ標準不確かさと呼ばれる大きさの不確かさもあるこれはごく普通に起こる程度のずれを意味している

(図)さらに言えば標準不確かさは統計学における標準偏差の推定値に該当し統計学に基づいて決定される

さて標準物質を購入し付された値の相対的な拡張不確かさが例えば01であったときその標準物質を使用して行った測定値の不確かさはどのような大きさになるだろうかここで強調したいのは測定値の不確かさは通常標準の値の不確かさよりも大きいということであるすなわちここでの01は不確かさがこれよりは小さくはならないという下限値を与えるものであり実際の分析の精確さとしてそこまでのものは期待できないということであるこれは

計測標準と計量管理42

特集 NMIJ標準物質セミナー2017

もうごまかさない化学分析の信頼性~不確かさ評価のポイント~

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

計量標準基盤研究グループ 城 野 克 広

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 11: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

計量ワークショップを2010年11月より開催して現在84回になっておりその中で計量管理に関わる企業の関係者の参加により品質管理計量管理に関する基本から管理手法に関するワークショップを開催し参加者の理解を進めるため既存のテキスト文献ではなく実物の教材を開発し実践的な研修を進めている

その中から開発した教材とその利用及び近年これらの教材の開発に使用している3Dプリンター(以下3DPとする)の活用の経過について報告するなお教材は原理を説明するものであり精密にできていないので実務に利用する場合は各分野の専門資料の確認が必要である

2 ノギスの測定力練習器(実用新案登録)

21 非常に多いノギスの測定力の質問新入社員教育でノギスは測定部位とスケールが同軸

上になくアッベの原理に反しており測定力により測定結果が変化することから最適な測定力について指導会で非常に多くの質問が出ることから測定力の見える化に取り組むことにした

22 ノギスの測定力練習器の製作ノギスの測定力を測るため図のクリップを改造

した物図のキッチンスケールを改造した物図の3DP製作したものを用意したいずれの練習器も製作に手間がかかったが仕上がり状態は3DPで製作した物の出来栄えがよかったので実用新案を登録した余談であるが実用新案の明細書を作成する手順がISO 9001の1021項の手順と共通性があり改善

提案に役に立つ手順である

23 ノギスの測定力練習器の利用例計量ワークショップでゴム製品の測定に測定力練習

器を使った効果は表及び表に示すようであるこ

49Vol 67 No 4 2018

計量管理事例

計量士 日 髙 鉄 也

計 量 管 理 教 材 の 開 発 と 利 用

図クリップ利用

図3DP製作品

図キッチンスケール改造

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 12: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 複数のばらつき原因がある場合のタイプA評価

今回の不確かさ評価ノートでは不確かさ評価において分散分析を利用する際に 検定は行う必要がないことあるいはむしろ行わない方が妥当であることについて解説を加えたい

不確かさのタイプA評価では測定の短時間での繰り返しに伴うばらつきを評価することが多いしかし評価したいばらつきの原因が測定の繰り返し以外にも存在する場合がある例えば測定者の違いや測定日の違いが代表的なものであるこのようにばらつきの原因が複数ある場合それぞれの原因によるばらつきを分離して評価するための分散分析が利用される

ここでは単純な例として次のような状況を考えてみるある工業材料を生産している工場において出荷前の材料の強度を毎日測定している測定は同じ材料に対して 人の測定者のそれぞれが 回繰り返し得られた測定データ ( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )の平均値

1048637104863710486251048625

105729710572971108541110854111085291108529

105729710572971108541110854111085291108529

(1)

をその日に生産した材料の強度特性値として工程管理に利用している一般に現実の生産現場での日常測定では測定者が一人であったり( 10486371048637 1)繰り返し数が回である( 10486371048637 1)場合も多いであろうがここではこれらの場合も含めて と表しておく

繰り返しばらつきの母分散を 1108530110853011085941108594測定者の違いによ

るばらつきの母分散を 1108530110853011085911108591 としよう添え字の 10486901048690は繰り

返し(repetition)10486871048687は測定者(operator)を表しているいずれの分散も母数でありそれらの厳密な値を我々は知ることはできない我々にわかるのはそれらの推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494である 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めるのが分散分析の仕

事であるがそれについては次節で述べるとし今は1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494がすでに得られているものとしようこのとき測定結果 の標準不確かさ ( )のタイプA評価は次のようになる

11085301108530( )104863710486371108530110853011085941108594

1107494110749410486191048619

1108530110853011085911108591

11074941107494(2)

右辺の二つの項のそれぞれの分母は が繰り返しについては 回分のまた測定者については 人分の平均になっていることを反映している

2 分散分析による母分散の推定

上で後回しにした 1108530110853011085941108594

11074941107494 1108530110853011085911108591

11074941107494の評価を行おう上述の測定者数 と繰り返し数 が十分に大きければ日常測定のデータ を対象に分散分析を行って 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 を

十分な信頼性をもって推定することができるしかし一般に日常測定での や は小さいことが多いのでこれらの推定を十分な信頼性をもって行うことは難しいまた 10486371048637 1のときには 11085301108530

11085911108591 の推定値を求めることすらできないしたがってばらつき原因が複数ある場合には日常測定とは別に不確かさ評価のための実験を行い 11085301108530

11085941108594 と 1108530110853011085911108591 の推定値 11085301108530

1108594110859411074941107494 11085301108530

1108591110859111074941107494を求めることが一

般的であるこのような実験として 人の測定者のそれぞれが回の繰り返し測定を行うこととしよう と は

大きいほど信頼性の高い不確かさ評価ができるどれほど大きければよいかは測定の状況にもよるので明確な数値を挙げることは難しいが少なくとも

10573811057381 3 10573811057381 3可能であれば 10573811057381 10 10573811057381 3ととることが望ましいこのような実験で得られたデータを

( 10486371048637 1~ 10486371048637 1~ )と書くことにしよう分散分析の計算の背後にある理屈はここでは説明し

計測標準と計量管理56

不確かさ評価ノート 第3回

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量研修センター

榎 原 研 正

分散分析の利用とF検定

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 13: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

プラスチック材料は軽量で安価であることやその機能性から自動車部品用途に欠かせないが可燃性の材料なので酸素と熱の供給で容易に燃えてしまう自動車用内装材には乗員保護の観点から安全性が求められており試験方法として古くに米国連邦自動車安全基準 FMVSS Nootilde302 1)が制定されこれが ISO 2)JIS 3)ASTM 4)に派生し各自動車メーカーの社内規格等に採用されてきた

本報告はISOIEC 17025試験所認定における信頼性と精度管理上の要求から不確かさを評価するにあたり国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センターが運営する不確かさクラブに2014年に組織された第次不確かさ事例研究会での成果として2017年月に発表したものから抜粋し加筆したものである

2 不確かさ評価の対象とする測定について

21 測定対象量測定対象量はプラスチックの燃焼速度対象材料は

プラスチック成形品である評価には社内標準に用いている試験片PP樹脂(35010487911048791 1001048791104879110486921048692 0otilde5)mm押出成形加工品を使用した(図)

22 測定方法試験規格はFMVSS Nootilde302oacute JIS D 12011998(ISO

37951989)自動車及び農林用のトラクタ機械装置-内装材料の燃焼性試験方法を用いるドラフトチャンバー内の規定寸法の燃焼箱中でU字枠を介して試験ジグに水平に固定した長方形試験片の一端に接炎し規定区間の距離(mm)を燃焼した時間(min)から燃焼速度(mmmin)を求める(図)燃焼速度が102mmmin以下であれば合格である測定の手順を以下に示す

①試験片の状態調節恒温恒湿槽中で(2310487531048753 2)(5010487531048753 5)RH10487911048791 24 h~168 hの条件で状態調節する

②標線の描写単一の管理された金属製直尺(金尺)を用い油性マジックで標線AB(標線間距離254mm)を試験片に描く

③寸法測定試験片の長さと幅を金尺で厚さを単一の管理されたシックネスケージで測定する

計測標準と計量管理60

測定の不確かさ事例

プラスチック材料の水平燃焼試験の不確かさ評価株式会社 DJK

横浜ラボラトリーズ 品質規格室 室長 阿 部 正 行千葉テクニカルセンター 材料試験部 環境試験課 赤 地 利 之

図燃焼試験中の様子図燃焼試験片

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 14: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

国立研究開発法人産業技術総合研究所 計量標準総合センター(NMIJNational Metrology Institute ofJapan)では国家計量標準機関の行う化学計量分野における計量標準供給の一環として認証標準物質

(CRMCertified Reference Material)を頒布しているNMIJで開発されたCRM(NMIJ CRM)はISO Guide342009及びISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づき国際的に認められる認証標準物質であるこのマネジメントシステムは独立行政法人製品評価技術基盤機構 認定センター (IAJapanInternational Accreditation Japan)の製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)による認定を受けて運用されている現在頒布されている NMIJ CRM はEPMA用材料標準物質材料標準物質高純度無機標準物質有機標準物質高分子材料標準物質環境組成標準物質グリーン調達対応標準物質高圧ガス熱物性標準物質に分類され最新の情報はNMIJのウェブサイト(httpswwwnmijjpserviceC)で確認することができる

一般に頒布されているNMIJ CRMのほかに計量法トレーサビリティ制度(JCSS)における特定標準物質製造に用いられるNMIJ CRMを指定校正機関に頒布しているこれらのNMIJ CRMは基準物質と呼ばれ特定標準物質のトレーサビリティソースとして基準物質を使用することでJCSSにより供給されている標準物質の国際単位系(SI)までの計量計測トレーサビリティを確保することができるJCSSで供給されている標準物質は指定校正機関である一般財団法人化学物質評価研究機構のウェブサイト(httpwwwcerijorjpservice08_reference_materialJCSS_02html)で

確認することができる一方で産業界などからの多種多様なニーズに迅速に

対応するためISOIEC 170252005に適合するマネジメントシステムに基づく校正サービスも実施している現在行っている校正サービスの項目は高純度有機標準物質の純度薄膜多層膜構造の膜厚及び標準ガスの濃度である校正対象の詳細な情報は NMIJ のウェブサイト(httpswwwnmij jpserviceCcalib)で確認することができるまた現在校正サービスを受け付けていない対象についても産総研の産学官連携制度における受託研究や技術コンサルティング等を活用して検討できる場合がある対象品目の拡大を希望する場合はNMIJ の問い合わせ窓口

(httpswwwnmijjpinquiry)または計量標準調査室(nmij-info-mlaistgojp)まで問い合わせていただきたい

2 NMIJの新規認証標準物質の紹介

表に2017年度からNMIJ CRMとして頒布が開始された新規標準物質を示す本稿ではこの中から有機標準物質(純物質)であるトリクロロ酢酸について詳細情報を紹介する表にトリクロロ酢酸の詳細情報を図にその外観を示す

計測標準と計量管理68

標準物質紹介

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 計量標準普及センター

計量標準調査室 総括主幹 清 水 由 隆

産業技術総合研究所計量標準総合センターの認証標準物質

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 15: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 第52回CIML委員会の報告

国際法定計量会議(OIML総会)は国際法定計量機関(OIML)の最高決定機関であり原則として4年に一回開催されている国際法定計量委員会(CIML委員会)はOIMLの理事機関として総会を支援するため毎年開催されるCIML 委員会は加盟国を代表するCIML委員により構成されその審議結果はOIML総会で最終承認される2017年月の時点ではOIML代表に相当するCIML委員長は英国のピーターメイソン(Peter Mason)氏第一及び第二副委員長はそれぞれドイツ PTB のローマンシュワルツ(RomanSchwartz)氏と産業技術総合研究所(産総研)の三木幸信氏そして事務局であるBIMLの局長は米国出身のステファンパトレ(Stephen Patoray)氏が担当していた(略称の説明は章参照)

第 52 回委員会はカリブ海に面するコロンビアの港町であるカルタヘナ(Cartagena)の会議場(Las

Ameacutericas International Convention and ExhibitionCenter)において2017年10月~12日に開催されたその集合写真を写真に示すBIMLの資料によるとこの委員会への参加者は正加盟国42カ国から86名準加盟国カ国から13名及びBIMLやその他の参加者も含めて合計115名であったそのうち我が国からは経済産業省から名産総研から名そして(一社)日本計量機器工業連合会から名の合計名が参加した

11 OIML-CSセミナー10 月日の午前には新しい証明書制度(OIML-

CS)を紹介するセミナーが開催されたその内容はOIML証明書制度の概要証明書制度の恩恵と利害関係者及び製造事業者の視点証明書制度に関する加盟国の状況OIML-CSの概要と参加手続き新制度に備えたprMCの活動OIML-CSホームページの紹介など多岐にわたったただ新制度の基本案については

71Vol 67 No 4 2018

海外計量事情

第52回CIML委員会及び第24回APLMF総会の報告

写真第52回CIML委員会の集合写真(BIML提供)

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センター計量標準普及センター 国際計量室

総括主幹 松 本 毅

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

産総研コーナー

国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

89Vol 67 No 4 2018

IAJapanコーナー

独立行政法人 製品評価技術基盤機構認定センター

httpwwwnitegojpiajapan

本コーナーはJCSSJNLAMLAPASNITEを中心にIAJapanの各認定プログラムの認定実績等についてお知らせしております

Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

Page 16: 計測標準と計量管理 計測標準と計量管理4号 平成30 …雑誌 03317-02 〔定価3,240円(本体3,000円+税)〕 計測標準と計量管理 特集 NMIJ標準物質セミナー2017

1 は じ め に

株式会社ミツトヨはマイクロメータを初めとする長さ測定機器及び硬さ試験機振動試験機といった精密測定機器の製造から販売メンテナンスまでを行う総合メーカである

精密測定機器は製造現場を初めとして様々な場面で製品や部品の幾何的な仕様を評価する為に利用されるものでありそれらの品質を保証する為には精密測定機器の品質が保証されていることが重要である言い換えると確かな基準に基づいて仕様を評価することが製品の測定結果の信頼性に繋がると言える

ミツトヨはこれらの精密測定機器の品質保証の為国家標準にトレーサブルな標準器を用いて校正業務を行っている

これを確実なものにしお客様からの信頼を得るため計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS)の認定を取得することを推進し力を入れている

2 計量標準室の設立及びJCSS登録の概要

社内のトレーサビリティ体制をより確実なものとする為ミツトヨは2015年月に計量標準室を設置し同部門内に校正業務を担当すると共に社内の上位基準器の管理を行う為の計量標準キャリブレーション課を設置した

また同課は2017年月28日付で波長(周波数)校正業務を光周波数コム装置によって行う校正事業者として初めてJCSS認定を取得した登録の概要は以下の通りである

登 録 番 号0067事 業 者 名株式会社ミツトヨ 計量標準室

計量標準キャリブレーション課

住 所茨城県つくば市上横場430-登録に係る区分長さ校正手法の区分の呼称

波長計量器計量器等の種類633nm領域の波長

532nm領域の波長法律に基づく初回登録(認定)年月日

平成29年月28日国際MRA対応初回認定年月日

平成29年月28日

81Vol 67 No 4 2018

時間を基準とした長さのトレーサビリティ体系光周波数コム装置を用いた校正業務のJCSS認定取得

認定事業者紹介

株式会社 ミツトヨ計量標準室 計量標準キャリブレーション課

課長 沼 山 博 志

図認定証

空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

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国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

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Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

0268 2017年12月21日 株式会社 新興度量衡製作所 校正部 長さ

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空気清浄度モニタリングに用いられる気中パーティクルカウンタの計数効率の校正をマイクロメートル粒径域で実施することはこれまで困難でしたしかし産総研が開発したインクジェットエアロゾル発生器を用いることでそうした校正が可能となりましたこの技術により製薬環境などでの気中浮遊菌モニタリングなどサブマイクロからマイクロメートル粒径域の気中パーティクルを対象とした清浄度管理に貢献します

1 空気清浄度モニタリング

気中に浮遊する微粒子が製品に付着することは産業活動の様々な場面で望ましくなくこれらの状況での微粒子はパーティクル(異物)と呼ばれますパーティクルが付着すると生産効率が低下する可能性のある製品の例として電子デバイス医薬品液晶光学部品精密加工品食品人工衛星などがあります電子デバイス製造では01microm以上その他では03microm以上のパーティクルを測定し清浄度管理を行うのが一般的です

光散乱式気中パーティクルカウンタ(気中OPC)は吸引したエアロゾル中のパーティクルがレーザー光を通過した際に発する散乱光パルスの数より濃度を測定し各パルスの高さより粒径を測定します気中OPCはパーティクル計数値の正確さを追求した計測器です

気中OPCの世界市場は数百億円規模でありアジア太平洋領域での医薬品電子デバイス産業の成長が市場ポテンシャルと報告されています今注目されて

いる気中OPCの測定対象は医薬品製造環境に浮遊する細菌やカビなどの微生物(以下気中浮遊菌)です気中OPCが測定したパーティクル数がリアルタイムでの気中浮遊菌の指標として活用されています

微生物の粒径は単体で浮遊していれば数マイクロメートルですこれより日本薬局方では気中OPCで測定した05microm以上および50microm以上の粒子数濃度の上限を各医薬品の製造で求められる清浄度のグレードによって規定しておりこの測定には粒子計数効率(以下計数効率)が校正された気中OPCを使用することとしています

2 気中OPCの校正

気中OPCの計数効率の校正には気中OPCの規格ISO 21501-4(JIS B 9921)に記された手法が世界的に採用されていますこの手法では図1(a)で示すように試験粒子を混合チャンバー内に一様に分散させ参照標準器と校正対象の気中OPCとでチャンバー内の粒子数濃度を同時に測定しこれらの粒子数濃度を比較することで計数効率を評価します

しかし現行法を微生物(および微生物が付着したパーティクル)が属するマイクロメートルオーダーの粒径域に適用することは困難ですその理由はマイクロメートル粒子群は気中での慣性運動および重力によりチャンバー内や配管の壁に沈着しやすくそのためチャンバー内にこれらの大きさの試験粒子を一様に分散することが困難だからです

この課題を解決するため産総研では図1(b)で示

計測標準と計量管理86

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国立研究開発法人 産業技術総合研究所計量標準総合センター 物質計測標準研究部門

粒子計測研究グループ 主任研究員 飯 田 健 次 郎

共同研究者水上 敬(リオン株式会社)下野彰夫(株式会社 汀線科学研究所)伊藤文成(JAXA)桜井 博(産総研)国立研究開発法人 産業技術総合研究所 計量標準総合センターウェブサイト(httpswwwnmijjp)NMIJ研究トピックス No 6 (20180109)から転載 copy産業技術総合研究所

マイクロメートル粒径域に対応した気中パーティクルカウンタの校正サービス

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Ⅰ 計量法校正事業者登録制度(JCSS)

2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

(登録)

登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

登録番号 追加登録年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0039 2017年10月26日 日本電気計器検定所 電気(直流低周波)

0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

0255 2017年10月26日 エンドレスハウザージャパン株式会社 校正センター 流量流速

0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

振動加速度

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2017年10月から2017年12月末に認定範囲の拡大も含め登録又は登録更新が承認された事業所は次のとおりです

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登録番号 登 録 年 月 日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0027 2017年10月26日 川惣電機工業株式会社 品質管理部 温度

0332 2017年12月21日 第一物産株式会社 JCSS校正室 質量

(登録更新)

登録番号 登録更新年月日 登 録 さ れ た 事 業 所 名 登 録 区 分

0092 2017年11月日 シンワ測定株式会社 品証部 長さ

0129 2017年月日 富山衡器株式会社 北陸校正センター 質量

0159 2017年11月14日 純正化学株式会社 埼玉工場 濃度

(区分追加)

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0096 2017年10月26日 株式会社 共和電業 品質管理本部 標準器室 振動加速度

0106 2017年10月26日 株式会社 富士試験機製作所 品質保証部 硬さ

0195 2017年10月26日 オリックスレンテック株式会社 計測標準センター 電気(直流低周波)

0204 2017年10月26日 株式会社 タンスイタンスイキャリブレーションセンター

硬さ

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0192 2017年12月21日 株式会社 日産クリエイティブサービス環境エンジニアリング事業本部 計測技術部計測技術グループ

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