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解説論文 ユビキタス社会のためのアンテナ・伝搬技術論文特集
超高速無線実現のためのミリ波アンテナ技術
庄木 裕樹†a) 堤 由佳子† 関根 秀一†
Millimeter Antenna Technologies to Realize Ultra High Speed Wireless
Communication Systems
Hiroki SHOKI†a), Yukako TSUTSUMI†, and Shuichi SEKINE†
あらまし 今後の無線システムは,総務省の提唱する u-Japan (ubiquitous-Japan) 構想のように,“あまねく存在する(=ユビキタス)” ネットワーク,コンピュータ群を利用して,位置やそのときの状況(コンテクスト)にあった情報の提供,交換,共有を可能にする社会を実現することを目標として更に進歩すると考えられる.この進歩を牽引する技術として,無線ネットワークの高性能・高機能化技術が重要であり,その中でアンテナ・伝搬技術の進歩が貢献できる点が多い.本論文では,第 4 世代移動通信の一つのターゲットである 1Gbit/s 以上の伝送速度を実現する超高速無線について着目し,それを実現するためのミリ波帯の利用が有力であることを示す.更に,特に重要なミリ波アンテナの技術課題について議論し,その研究開発事例について紹介する.
キーワード ユビキタスネットワーク,超高速無線,ミリ波,CMOS,アンテナ
1. ま え が き
現在,我が国の携帯電話の加入者数は総人口の 70%に
あたる 9000万を超え,また,無線 LANなどの無線ア
クセスサービスも業務用以外に一般家庭へも浸透しつ
つあり,無線通信サービスが広く普及している.この
近年の無線通信サービスの発展は,1990年を過ぎて公
衆無線がディジタル化の時代に入りインターネットが
普及したことや,そのコンテンツの高度化に伴いデー
タ通信への強い要求があったことが関係しているとい
える.例えば,1999年にサービスが開始された iモー
ドの伝送速度は 9.6 kbit/sであったが,2006年にサー
ビスが開始された HSDPA (High Speed Downlink
Packet Access)では最大 14.4 Mbit/sの伝送速度が提
供されており,ここ 7 年間で伝送速度が 1000 倍以上
高速化されたことになる.このような高速化の流れは,
携帯電話に限らず,無線 LANや固定無線アクセスの
世界でも同様である.この伝送速度高速化の流れは今
後も続き,第 4世代無線通信 (IMT-Advanced)では,
固定及び歩行環境で 1Gbit/s,車など高速移動環境で
†(株)東芝 研究開発センター,川崎市Corporate Research and Development Center, Toshiba Cor-
poration, Kawasaki-shi, 212–8582 Japan
a) E-mail: [email protected]
100Mbit/s以上の伝送速度 [1]を実現することを目標
としている.
このような状況を背景として,今後の無線システム
は,総務省の提唱する u-Japan (ubiquitous-Japan)
構想 [2] のように,“あまねく存在する(=ユビキタ
ス)”ネットワーク,コンピュータ群を利用して,位置
やそのときの状況(コンテクスト)にあった情報の提
供,交換,共有を可能にする社会を実現することを目
標として更に進歩すると考えられる.この進歩を牽引
する技術として,
( 1) 無線ネットワークの高性能・高機能化技術
( 2) ストレスなくシームレスに利用できるように
するためのソフトウェアアプリケーション技術
( 3) 安心かつ安全に利用するためのセキュリティ・
認証技術
( 4) 様々な使用環境に適応させるためのデバイス
技術・端末技術
などを挙げることができる.この中で,特に,( 1)無
線ネットワークの高性能・高機能化技術が,マルチメ
ディア無線によるユビキタス社会を実現するための
キー技術といえる.本論文で着目するミリ波帯での無
線 IC やアンテナ技術は,この無線ネットワークの高
性能・高機能化に大きく関連する.
本論文では,このような無線システムの高速伝送化
810 電子情報通信学会論文誌 B Vol. J90–B No. 9 pp. 810–820 c©(社)電子情報通信学会 2007
解説論文/超高速無線実現のためのミリ波アンテナ技術
の流れの中で,1Gbit/sを超える「超高速無線」に焦
点を当て,ユーザの視点に立った利用価値を考え,そ
の無線システム動向についてまとめる.超高速無線
を実現するための方法として,広帯域化,高 S/N 化,
MIMO (Multiple Input Multiple Output)技術によ
る並列伝送化について議論を行い,その結果として,広
帯域化に有効なミリ波を用いた無線システムの可能性
について注目する.特に,超高速無線が一般のユーザに
安価に提供できることが必要であることから,CMOS
(Complementary Metal Oxide Semiconductor)によ
る低コスト無線 ICは無線システムの今後の無線シス
テムの発展の上で不可欠であると考えられ,そのミリ
波 CMOS-ICと一体化できるアンテナ技術について議
論を行う.ここで,無線 IC上に形成されるアンテナ
(オンチップアンテナ)の特性と課題,特性改善のた
めの無線 ICと一体化構成されるアンテナ(オフチッ
プアンテナ)の可能性について述べる.
以下,2.ではユビキタス社会に向けた超高速無線シ
ステムの動向について紹介し,3. では 1Gbit/s 超を
達成するための技術課題について議論する.また,4.
では超高速無線に向けたミリ波研究の重要性を示唆し,
その中でアンテナの課題と対策について 5.で述べる.
図 1 無線システムの標準化動向Fig. 1 Trend of wireless communication systems.
2. ユビキタス社会に向けた無線システムの高速化の流れ
本論文では,伝送速度が 1 Gbit/s を超える無線シ
ステムを超高速無線と定義する.本章では,その超高
速無線に向けた無線システムの動向について整理する
とともに,超高速無線によりユーザがどのような利益
を受けるのかについて考える.
2. 1 超高速に向けた無線システムの動向
図 1 には,IMT-Advanced に向けた無線システム
の標準化動向を示す.
図 1では,横軸に伝送速度,縦軸にカバレッジエリ
アをとっており,その指標の中での現状及び今後の無
線システムの動向を表している.この図より,無線シ
ステムの進展は,明らかに,伝送速度の高速化の流れ
であることが分かる.
具体的には,携帯電話を扱うセルラ無線に関しては,
第 3 世代移動通信を規格化した 3GPP (3rd Gener-
ation Partnership Project) [3],HSDPAで代表され
る 3.5 世代 (3.5 G),更に,第 4 世代無線通信を意識
した 3GPP LTE (3GPP Long Term Evolution) と
いった流れで伝送速度が高速化され,IMT-Advanced
811
電子情報通信学会論文誌 2007/9 Vol. J90–B No. 9
図 2 無線 LAN/PAN での高速化により何ができるかFig. 2 Possible future scenarios realized by superhigh-data-rate wireless systems.
の時代には,広域エリアで 100 Mbit/s 以上を実現
しようとしている.また,固定無線アクセスである
MAN (Metropolitan Area Network)についても,米
国電気電子学会 (IEEE)の中の IEEE802.16ワーキン
ググループ [4],や IEEE802.20 ワーキンググループ
(MBWA:Mobile Broadband Wireless Access) [5]で
高速化の規格の議論がなされている.このエリアで
は,802.16に準拠したブロードバンドワイヤレスネッ
トワークの普及,促進するために結成された非営利団
体のWiMAX Forum [6]の活動も注目される.一方,
IEEE802.11 [7]で議論されている無線 LANにおいて
は,2007年に規格が固まる見込みである 802.11nにお
いて 100 Mbit/s以上の伝送速度が達成される.更に,
1Gbit/sを超える無線LAN規格についても検討が開始
された.パーソナルエリアでは,IEEE802.15.3a [8]や
WiMediaTM(注1)Alliance [9]で議論されているUWB
(Ultra Wide Band)が注目され,10 m程度の伝送範
囲で最大 480 Mbit/s を実現しようとしている.パー
ソナルエリアでの更なる高速化を目指して,ミリ波
帯(60GHz 帯)を用いた無線 PAN システムの規格
が IEEE802.15.3c [8] で議論されている.以上から,
2007 年には無線 LAN/PANにおいて 100 Mbit/s 以
上,2010 年過ぎには 1Gbit/sを超える無線システム
規格が実現されると予想される.
2. 2 超高速無線の作る世界
ユーザの視点に立った超高速無線の利用形態の例を
図 2に示す [10].前述の標準化動向から,無線の伝送
速度は 2007 年ごろに 100 Mbit/s の壁を超え,2010
年過ぎには 1 Gbit/sの壁を超える.このときにユーザ
が享受するメリットは下記のとおりである.
( 1) 100 Mbit/sを超えた 2007 年の無線の世界• 現在の無線 LAN (IEEE802.11a/g)の無線区
間の最大伝送速度は 54 Mbit/sとなっている
が,実際には,電波伝搬状況に応じて確実に
伝送できる変調方式や符号化率を選択する.
この結果,実効的な伝送速度は 30Mbit/s以
下になることが多く,画像圧縮されたハイビ
ジョン映像を 1ストリームだけ伝送できる程
度である.一方,現在標準化が進展している
802.11n では 100 Mbit/s 以上の伝送速度と
なり,オプションとして最大数百 Mbit/s の
(注1):WiMedia は,WiMedia Alliance の商標.
812
解説論文/超高速無線実現のためのミリ波アンテナ技術
通信モードまで実現できる.このように,無
線区間の最大伝送レートが高まると,ハイビ
ジョン映像の複数ストリーム無線伝送が可能
である.著作権保護が必須となるが,ブロー
ドバンド放送をサーバに記録しながら視聴
するなど,より高度なサービスを提供できる
AV ネットワークを,配線の手間なしにユー
ザに提供できる [11].• 最大伝送レートを上げられる能力を無線伝送
の距離の伸張に活用することも,適用の方法
によっては可能となる.つまり,必要以上に
伝送速度を上げなければ,その分,伝送距離
を伸ばすことができる.これにより,家庭内
やオフィス内において,無線 LAN/PAN内
蔵のパソコンをどこでも自由に持ち歩き,快
適な無線接続を実現する.• 100 Mbit/s の伝送速度が実現できれば,有
線系での 100BASE-Tと同等の速度でファイ
ル転送などが行える.例えば,DVD1枚の情
報 (4.7GByte) が 6 分強で無線伝送できる.
ハードディスクレコーダーやストレージ系デ
バイスへの無線伝送が短時間で行える.• オフィスでは,無線 LANが適用可能なアプ
リケーションや収容可能人数が増える.これ
により,イーサネットケーブル敷設・維持の
手間を削減し,ネットワークの TCO (Total
Cost of Ownership)を削減できる.
( 2) 1Gbit/sを超えた 2010年過ぎの無線の世界• ハイビジョンの非圧縮信号は 1.2∼ 1.5Gbit/s
相当であり,テレビやパソコンディスプレイ
へのリアルタイム無線伝送が現実になってく
る.非圧縮信号を伝送することによりレイテ
ンシ(情報伝送までの遅延時間)の問題も解
消でき,臨場感あふれるテレビ会議やパソコ
ンのディスプレイと本体間の無線による接続,
ゲーム機器などへのリアルタイム映像伝送な
どが可能になる.• また,最近では,家電や AV機器向けのディ
ジタル映像・音声入出力インタフェース規格
であるHDMI (High-Definition Multimedia
Interface)の無線化も考えられる.2006年 6
月に出された HDMI 1.3 [12] では 1 対 1 で
最大 3.4 Gbit/sの伝送速度となっていること
から,近い将来には家庭内で数 Gbit/s の無
線伝送への要求も高まると考えられる.• ファイル転送の用途として,例えば,DVD
相当の情報伝送が 40 秒弱でできる.データ
やソフトなどの高速無線転送が実現できる.
3. Gbit/s 超を達成するための無線伝送技術
2. では,1 Gbit/s を超える超高速無線システムの
実現に向けて,無線システムが確実に進展していって
いることと,超高速無線に対するユーザの要求・期待
が間違いなくあることを示した.さて,それでは,ど
のような方法で,1 Gbit/s以上が実現できるであろう
か.本章では,この点について考えたい.
図 1に示したように,無線システムの進歩と伝送速
度の高速化は密接に関係している.その無線システム
の進歩を牽引した技術として,電波伝搬やアンテナ,
RF回路,A–D変換器,無線物理層信号処理,プロト
コル無線ネットワークなどが挙げられる.近年では,
これらの技術を統合化して更なる伝送速度高速化を
行うため,MIMO [13] や UWBなどが注目されてい
る.MIMO は情報の並列伝送による高速化を行うも
のであり,3GPP-LTEや 802.11n に導入されている,
UWBは信号帯域を広帯域化することにより伝送速度
を上げる方法といえ,無線 PANシステムに利用され
ようとしている.ミリ波など高周波数帯を利用するこ
とも,広帯域伝送による伝送速度向上策の一つである.
そこで,次に,並列伝送や広帯域伝送を念頭におい
て,伝送速度を向上させる具体的な方法について考え
たい.
図 3には,理想的なレイリーフェージング環境下に
おいて,MIMOによる並列伝送により,1秒,1Hz当
りに伝送できる最大の情報量をシミュレーションで求
めたものである.空間多重により,各ストリームに与
えられる最大の情報量を更に並列伝送した場合のグラ
フであり,伝送路応答に基づく相関行列の固有値を利
用して解析的に求めても同じ結果が得られる [15].こ
こで,送受のアンテナは同一として,一つのアンテナ
素子で受信される S/N を変化させた場合のグラフを
示している.図 3から,単位時間,単位周波数帯域当
りに伝送できる情報量を増やそうとする場合,アンテ
ナ数を増やして並列伝送数を増やすか,アンテナで受
信される信号品質 S/N を上げるしかない.トータル
の伝送量はこれに周波数帯域幅を乗算したものになる
から,1Gbit/s以上を実現させる手段として, 1©超広
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電子情報通信学会論文誌 2007/9 Vol. J90–B No. 9
図 3 並列伝送による伝送速度の高速化Fig. 3 Enhancement of communication data rate by
using parallel transmission.
帯域化, 2©超並列化, 3©超 S/N 化の三つの方法があ
るといえる.
図 3を用いて,前述の三つの方法について,1Gbit/s
を実現するためにどの程度の広帯域化,並列化,S/N
向上が必要になるかを,簡単な試算を行い,その考察
を行ってみたい.が,実際には,変調方式の選択や符
号化率,RFデバイスの偏差・誤差等により実効のス
ループットは,図 3の結果の 1/2∼ 1/3程度になるの
で,これを考慮する必要がある.例えば,図 3で,ア
ンテナがただ一つで,S/N = 20dB のときに伝送で
きる情報量は 5.9 bit/s/Hzであるから,ここでもし無
線 LAMの IEEE802.11a で利用している 20 MHz帯
域が使えれば,理想的に最大で 118 Mbit/s 達成でき
ることになる.が,802.11a における最大伝送速度は
実際には 54 Mbit/s である(S/N を 20 dB で達成で
きると仮定する)ことから,図 3の結果に概数として
1/2を乗算した値が実際に達成できる伝送速度と考え
ることにする.
( 1) 超広帯域化
並列伝送を行わない(アンテナ数が 1)場合,
5.9 bit/s/Hz × 400 MHz × 1/2 = 1.18 Gbit/s とな
ることから,現在の無線 LANのように OFDMなど
を用いた効率的な伝送を行ったとしても最低 400 MHz
以上の周波数帯域幅が必要であることが分かる.ミリ
波帯の利用は,1チャネル当り最大 2.5 GHzの周波数
帯が利用できるので,一つの候補となる.現在,我が
国では,免許不要で 59∼ 66GHzの非常に広い帯域が
使え,更に,他に利用している無線システムがないた
めに,マイクロ波帯 UWBや無線 LANで問題となる
他システムとの干渉の問題がない利点もある.一方,
それよりも低いマイクロ波帯などでは,これほどの占
有帯域を確保するのは難しい.UWBでは,信号強度
を干渉レベル以下にする必要性から十分な S/N が確
保できず,伝搬距離が制限される問題がある.一方,
動的に空いている周波数帯を見つけて通信を行うコグ
ニティブ無線 [14]は一つの解決策であるが,電波法の
整備等が必要である.
( 2) 超並列化
MIMO 技術により単純に並列伝送数だけ乗算され
た伝送速度が実現できるとした場合の試算例は,以下
のとおりである.
40 MHz帯域で 8多重 (S/N = 20 dB):
44.0 bit/s/Hz × 40 MHz × 1/2 = 0.88 Gbit/s
60 MHz帯域で 6多重 (S/N = 20 dB):
33.1 bit/s/Hz × 60 MHz × 1/2 = 0.99 Gbit/s
80 MHz帯域で 4多重 (S/N = 20 dB):
22.1 bit/s/Hz × 80 MHz × 1/2 = 0.88 Gbit/s
現在,無線 LANでは,1チャネル当り 40MHz帯域を
使えるように電波法が整備されているが,この 40 MHz
帯域が利用できたとしても,1Gbit/sクラスの伝送を
行おうとすると,8パス以上の並列伝送を行う必要が
ある.ただし,この場合,超高速無線を利用する環境
において,8パス以上の独立な電波伝搬路が存在する
ようなマルチパス環境になっているかどうかという問
題がある.更に,アンテナが送受とも最低 8素子以上
必要になるが,無線基地局(アクセスポイント)及び
端末にそれだけ多くのアンテナをどのように実装する
のかという問題もある.
( 3) 超高 S/N 化
S/N が大きくできれば,多値変調などを利用できる
ので,伝送速度を上げることができる.そのためには,
送信電力を上げたり,送受信アンテナを大きくする手
段が考えられる.ところが,例えば,送受アンテナの
利得を 10 dB上げることにより S/N を 20 dB上げた
としても,図 3からも分かるように,伝送できる情報
量は 2.5倍程度にしかならない.これは送信電力につ
いても同様で 20 dB = 100倍の送信電力を向上させて
も,情報量の増加はたかだか 2.5倍程度ということに
なる.アンテナの利得については,アンテナ利得はそ
の開口面積に比例するから,アンテナの利得を 10 dB
上げるということはアンテナの大きさを 10 倍にする
必要があるということになる.また,アンテナを大き
814
解説論文/超高速無線実現のためのミリ波アンテナ技術
くできたとしても,高利得化によりビーム幅が極端に
狭くなり,ビームの位置合せが困難になる問題も発生
する.以上から,アンテナ利得を向上させたり,送信
電力を上げることにより S/N を向上させることだけ
で超高速無線を実現するのは,一般家庭などでの利用
を想定した場合には現実的ではないといえる.
以上の考察から,上記の方法を単独で用いた場合,
唯一,( 1)超広帯域化のみが,ミリ波を利用すること
により,1Gbit/s以上を達成できる現実的な方法とい
える.一方,( 2)超並列化,( 3)超高 S/N 化に関し
ては単独で 1Gbit/s を実現するのは難しい.しかし,
( 2)超並列化と( 3)超高 S/N 化の方法を完全に否
定するわけでなく,それらの組合せにより,( 1)超広
帯域化ほどではないが,伝送速度を向上させること
は可能である.例えば,( 2)と( 3)を組み合わせた
ビームフォーミング MIMO [15] (SVD-MIMO)によ
り伝送速度を向上させることができる.更に,ミリ波
帯による広帯域化と超並列化,超高 S/N 化を組み合
わせることにより,更なる高速化も期待できる.しか
し,ミリ波帯のように高い周波数帯を利用することで
小さなアンテナで高利得化ができたり,アンテナが小
さくできることで実装しやすくなる利点がある反面,
波長換算での距離が大きくなるために伝搬減衰が大き
くなったり,MIMOに有効なマルチパス環境が直進性
の高いミリ波帯では得られにくいなどの問題もある.
このような課題についての研究は今後盛んになると思
われる.
4. 超高速無線に向けたミリ波の研究の重要性
前章までの議論から,1Gbit/sの実現のために,ミ
リ波帯を用いた広帯域伝送が最有力であることが明ら
かになった.更に,ミリ波と超並列化,超高 S/N 化
を組み合わせることによる更なる高速化も期待できる.
そこで,本章以降では,ミリ波を用いる場合の課題と
その研究の重要性について言及する.
ミリ波無線の研究は,無線 LANなどの応用で既に
多くなされている [16]が,これまではミリ波帯での無
線性能を実現するため高価な GaAs系のデバイスを使
用しなければならなかった.しかし,3.2で述べたよう
に,一般家庭などの民生用としての需要が今後大きく
なると考えられるため,その需要に対応するためには
ミリ波無線システムを低コストに実現する必要がある.
このような状況の中,CMOSによりRFアナログ無線
IC を開発する技術が進展し,ミリ波帯でも低コスト
な LSIを実現できる可能性が出てきた [17], [18].表 1
には,CMOSプロセスの技術動向を示す [19].プロセ
スの性能が向上するに伴い,遮断周波数 Ftが上昇し,
60GHz 帯で LNA などの高周波回路が動作できるよ
うになった.例えば,1/2 ピッチ幅 90 nmの CMOS
プロセスにおいて 60 GHz帯の増幅器等が動作してい
る [17], [18].CMOSはもともとディジタル処理 ICに
用いられており,近い将来には,RFアナログ回路か
らディジタル信号処理回路まで一体化したワンチップ
無線 LSIが実現できるといえる.これにアンテナ部分
もコンパクトに実装できれば,非常に小形かつ低コス
トなワンチップ無線機ができ,これにより超高速無線
サービスが広く一般に普及すると考えられる.
このよう低コストなミリ波無線システムの実現のた
めの技術課題として,CMOS によるミリ波回路技術
の開発のほか,変復調やプロトコルを含めた無線シス
テム方式とその標準化などが挙げられる.また,アン
テナ・伝搬技術については,以下のような課題がある.
( 1) ミリ波帯での電波伝搬モデリング:一般家庭
で利用するシステムを想定すると,一般家屋の部屋の
中や机の上でのミリ波帯の電波の振舞いや家具や家電
製品等の影響などを知ることが重要になる.そのよう
な利用シーンを想定して,無線システムの検討に反映
できる電波伝搬モデルを構築することが必要になるが,
電波の直進性が高いミリ波の性質をそのまま利用する
のか,そうではなくてマルチパスを考慮したシステム
設計をするかなどもポイントになる.
( 2) Si チップ上に形成したアンテナの設計・解
析・実装技術:チップ上に他の回路と一緒にアンテナ
素子も形成するオンチップアンテナの性能とその限界,
チップ近傍にコンパクトに実装するオフチップアンテ
ナの方式やその性能について検討する必要があり,ま
表 1 CMOS プロセスによる RF アナログデバイスの技術動向
Table 1 Trend of RF analogue devise performance
by using CMOS process.
815
電子情報通信学会論文誌 2007/9 Vol. J90–B No. 9
たそれらのアンテナの設計・解析技術が重要になる.
( 3) アクティブ化アンテナの方式検討とその測定・
評価技術:ミリ波は線路損失が大きいため,それを解
決するための方法として増幅器とアンテナを一体化さ
せたアクティブアンテナが有効と考えられる.その方
式を検討するとともに,増幅器と一体化したアンテナ
においてアンテナ単体性能(若しくは増幅器を含めた
総合性能)をどのように測定するかという点も課題で
ある.
このほかに,電波伝搬距離を伸長させるためにア
レー化による高利得化の構成やそのときのビーム制御
方法なども技術課題になる.課題は山積しており,今
後のアンテナ伝搬技術者への期待は大きい.
5. ミリ波アンテナの課題
4. で議論したように,ミリ波で超高速無線を実現
するための課題は多い.が,この中で最も重要なこと
は,民生利用が可能なように低価格で無線システムが
実現できるかどうかという点にある.そのためには,
CMOSなどの Si系プロセスによりミリ波無線機をワ
ンチップ化し,アンテナをチップ上若しくは近傍に小
形・低コストに実装する技術課題が重要である.本章
では,特にこのようなアンテナに注目し,Siチップ上
若しくは近傍に実装したアンテナの研究例を紹介する
とともに,その技術課題と対策について論じる.
5. 1 オンチップアンテナの性能と課題
Si基板で形成された IC上に他の回路と一緒にアン
テナ素子を形成するオンチップアンテナは,IC と一
体化形成されているため,小形で低コストという利
点がある.このようなオンチップアンテナの研究は,
Florida 大 [20], [21] などで多く行われている [22]~
[24].ICチップ上の配置の容易さなどの点から線状素
子であるダイポールアンテナがよく使われている.例
えば,Montusclat ら [23] は,図 4に示すような低雑
音増幅器 (LNA),フィルタを一体化したダイポール
タイプのオンチップアンテナを試作している.ここで,
独自に開発した非常に高抵抗率(ρが 1 kΩ · cm以上)の基板を用いることにより,40GHzで−2 dBiのアン
テナ利得を実現している.また,Ponsら [24]は,図 5
に示すように,電圧制御発振器 (VCO)を一体化した
折り曲げダイポールタイプのオンチップアンテナを試
作している.アンテナ利得は 20GHzで −5 dBi であ
り,Si基板の抵抗率 ρ = 15 Ω · cmである.Oら [21]
は,同じダイポールタイプでも,ジグザグやメアンダ
図 4 LNA,フィルタを一体化したオンチップアンテナの例 [23]
Fig. 4 Example of integrated on-chip antenna with
LNA and filter [23].
図 5 VCO を一体化したオンチップアンテナの例 [24]
Fig. 5 Example of integrated on-chip antenna with
VCO [24].
などの形状について試作を行っている.
以上の研究事例から,オンチップアンテナは小形,
低コスト,製造の容易さなどの利点ある一方で,利得
が 0 dBiよりかなり低いという欠点を有することが分
かる.低利得である理由は,基板の損失のためであり,
それには基板の抵抗率 ρが大きく関係している.以下
に,抵抗率をはじめとするアンテナ設計のパラメータ
と利得の関係について検討を行う.
図 6 には,一般的なオンチップアンテナの構成を
示す.Si 基板 (εr = 11.7) の上に,比誘電率 εr が
3.2∼ 4.1の誘電体膜層が形成され,その層の間に回路
やアンテナが形成されている.ここでは,アンテナ素
子としてダイポールアンテナを選び,他の回路との配
置上の干渉を避け,利得も向上させるために,アンテ
ナ素子は基板の端部に配置される.このようなチップ
アンテナの設計に関係するパラメータとしては,アン
テナ素子を構成する線路長,線路幅のほか,Si基板の
816
解説論文/超高速無線実現のためのミリ波アンテナ技術
厚さ h,抵抗率 ρ,基板の端からのアンテナ素子の配
置位置が挙げられる.ミリ波帯で動作するチップアン
テナを形成する場合には,アンテナ利得を大きくする
ことが最大の設計指針となり,表 2に示すように,前
述のパラメータの中で基板の抵抗率 ρが最も重要なパ
ラメータとなる.文献 [23]に示すような特異な例もあ
るが,汎用で低コストなプロセスを用いた場合には,
抵抗率 ρは一般に数 Ω · cm∼ 20 Ω · cmとなるように選ばれる.抵抗率 ρが大きい基板は低損失となるため,
抵抗率 ρが大きくなれば,LNAなどの高周波回路の
性能が改善される傾向がある [25].一方で,抵抗率 ρ
を上げると寄生トランジスタの影響により電源–GND
間に大電流が流れてしまうラッチアップ現象が発生す
る問題がある.抵抗率 ρはこのような点を考慮して決
められている.
Si 基板の抵抗率 ρ によるチップアンテナの利得の
変化を把握するため,図 6 に示したモデルにより解
析を行った.なお,ここで,ダイポールアンテナ素子
が差動型の増幅器に接続されることを想定し,アンテ
ナ給電点は 100 Ω で整合をとるような条件で特性を
評価している.また,解析には FDTD法(AET社の
MW-Studioを利用)を用いている.図 7には,抵抗
率 ρ による反射特性の変化を示す.抵抗率の増加に
図 6 オンチップアンテナの解析モデルFig. 6 Analysis model of on-chip antenna.
表 2 シリコン基板上に形成された半波長ダイポールアンテナと各パラメータの関係
Table 2 Relation between antenna gain and sub-
strate parameters.
伴い,複素誘電率の絶対値が大きく見え,波長が短く
アンテナが大きく見えるようになるため,共振周波数
が低くなっていくような傾向になる.図 8には,抵抗
率 ρによるアンテナ利得の変化を示す.ここで,利得
は,指向性利得と不整合損を含む放射効率を合わせた
値を示している.この解析結果より,抵抗率 ρが低く
なると,損失が大きくなるため放射効率が劣化し,ア
ンテナ利得も低くなる傾向ある.これは,抵抗率 ρに
よりアンテナ指向性が変化し,指向性利得も変化する
が,それ以上に損失の影響が大きいことによる.図 8
の結果より,例えば,抵抗率 ρ = 1 Ω · cmの場合には−9dBi,抵抗率 ρ = 10 Ω · cmの場合には −4 dBiの
アンテナ利得になる.
以上の議論から,オンチップアンテナの利得は,現
実的には,0 dBi よりも数 dB低い値になる.無線シ
図 7 Si 基板の抵抗率による反射特性の変化Fig. 7 Reflection performance due to resistivity of Si
substrate.
図 8 Si 基板の抵抗率による利得の変化Fig. 8 Antenna gain performance due to resistivity
of Si substrate.
817
電子情報通信学会論文誌 2007/9 Vol. J90–B No. 9
ステム側の要求仕様にもよるが,アンテナ利得が低い
ということは電波の伝達距離が短くなってしまうこと
になる.
5. 2 オフチップアンテナによる利得の改善
比較的近距離で利用される無線 PANシステムにお
いても,最低で 0 dBi以上のアンテナ利得が必要であ
る.しかし,前述のように,オフチップアンテナ単体
では十分な利得が確保できず,何らかの工夫が必要に
なる.そこで,アンテナ利得を改善する手段として,
無線 IC の近傍に,IC と一体化してアンテナを実装
するオフチップアンテナの検討がなされている [26]~
[29].その中で,Grzybら [28]は,図 9に示すように
折り返しダイポールアンテナの背後に空洞 (Cavity)を
設けることにより,60GHz帯で 9GHzもの周波数帯
域で動作させるとともに,7∼ 8 dBiのアンテナ利得を
達成している.また,Kimら [27]は,MEMS (Micro
Electro Mechanical Systems)技術により CPW給電
される立体的パッチアンテナを図 10のように形成し,
図 9 ダイポールアンテナの背後に空洞を設けたオフチップアンテナの例 [28]
Fig. 9 Example of cavity-backed off-chip antenna
[28].
図 10 MEMS技術により形成された立体型パッチアンテナの例 [27]
Fig. 10 Example of 3D patch type off-chip antenna
produced by MEMS technology [27].
60GHz 帯で 8.7 GHz の周波数帯域を実現している.
このほかにも,セラミックパッケージにパッチアンテ
ナを形成する方法 [26]などが提案されている.これら
の方式に共通していることは,IC 近傍にある基板や
パッケージなどをうまく活用し,アンテナを立体的に
大きくし,アンテナ放射に寄与する導体部分を IC基
板から離すことで基板による損失を低くする点である.
実際の無線機として実装方法とも関連するため,これ
らの方法に一長一短があると考えられるが,以上のよ
うな工夫により,アンテナ利得の改善は図られる.
他の利得改善方法として,ボンディングワイヤを活
用した方法について提案する.オフチップアンテナに
よる利得改善例を示すために,図 11のようなアンテナ
モデルの解析を行った.図 6に示したチップ(ただし,
大きさを 2000×2000 μmとした)を比誘電率 εr = 4.0
の基板の上に乗せて(ただし抵抗率 ρ = 1 Ω · cm),
チップ表面よりワイヤ(Auを仮定し,直径 20 μm)を
図のように引き出し,下部の基板まで伸ばしている.
このアンテナは折り返しダイポールアンテナの一種で
あり,アンテナ構造は対称的であるとする.通常は IC
との配線に用いるボンディングワイヤを活用すること
により,このようなアンテナは比較的簡単に作成でき
る.このアンテナの動作利得(放射効率,整合損を含
む)は,解析の結果,−4.5 dBiとなり,オンチップア
ンテナと比較して 5 dB程度の利得改善が図られたこ
とになる.更にこの方式を発展させ,ボンディングワ
イヤを利用してループアンテナを構成する方法 [29]な
どを用いることにより,更に数 dBの利得改善が期待
される.
以上の議論のまとめとして,オンチップアンテナ単
体では,ミリ波を利用する無線 PAN や無線 LANシ
ステムの要求に見合う十分な利得が得られないが,無
線 IC の実装時に工夫を行うオフチップアンテナによ
図 11 オフチップアンテナの解析モデルFig. 11 Analysis model of off-chip antenna.
818
解説論文/超高速無線実現のためのミリ波アンテナ技術
り利得改善が期待できることが分かった.超高速無線
システムを利用するシーンとして,パソコンや家庭内
の映像機器と,ストレージ機器やインタフェース機器
などの周辺機器に用いられると考えられ,各々の機器
に応じた実装方法によるオフチップアンテナを開発す
ることが今後重要である.
6. む す び
本論文では,1Gbit/sを超える「超高速無線」に向
けた無線システムの動向とそれを実現する技術課題に
ついて紹介し,その中で特にアンテナ・伝搬技術に焦
点を当てて議論を行った.この中で,CMOS による
無線 IC 技術の進展とも関連し,超高速無線を実現す
る手段としてミリ波帯を活用することの重要性と可能
性を示した.一般ユーザにも超高速無線を安価に提供
するためには,高価になってしまう導波管系のデバイ
スや GaAs系の ICなどを用いずに,アンテナも一体
化したワンチップ無線機を早期に開発することが必要
である.解決すべき技術課題の一つであるアンテナに
関しては,まずは,無線 IC上にアンテナを構成する
オンチップアンテナの特性について検討し,特に基板
抵抗率の影響が大きく,アンテナ利得の点での課題が
あることを示した.次に,その課題を解決する方法と
して,無線 IC近傍に構成されるオフチップアンテナ
の検討を行い,その有効性を解析結果により明らかに
した.真にユーザに受け入れられる超高速無線システ
ムを実現するためにはまだまだ解決すべき課題は多い
が,必ずや達成できるものと思われる.アンテナ・伝
搬技術者のみならず,無線通信分野にかかわる研究者・
技術者全体の今後の活発な研究活動とその成果に期待
する.
文 献
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June 2006.
(平成 19 年 1 月 17 日受付,5 月 14 日再受付)
庄木 裕樹 (正員)
昭 57 北大・工・電子卒.昭 59 同大大学院修士課程了.同年(株)東芝入社.以来,衛星搭載アンテナ,マイクロストリップアンテナ,スマートアンテナの研究開発に従事.平 3 工博(北大).現在,同社研究開発センターモバイル通信ラボラトリー研究
主幹.平 3本学会学術奨励賞受賞.平 14同論文賞受賞.IEEE
会員.
堤 由佳子 (正員)
平 15 九大・工・電気情報卒.平 17 同大大学院修士課程了.同年(株)東芝入社.同社研究開発センターモバイル通信ラボラトリー勤務.主として,ミリ波無線 PAN
用アンテナに関する研究に従事.
関根 秀一 (正員)
昭 61 東北大・工・電気卒.昭 63 同大大学院修士課程了.同年(株)東芝入社.以来,移動通信用アンテナの研究開発に従事.現在,同社モバイルコミュニケーション社モバイルコミュニケーションデベロップメントセンター主査.平 14 本会論文賞受賞.
平 17 工博(東北大).
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