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技術者間における知識移転の促進要因 · 図ることにする.その際,暗黙知の移転を促進す る要因についても明らかにする. 本論文の実証分析の結果,同一部門内の知識移

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Page 1: 技術者間における知識移転の促進要因 · 図ることにする.その際,暗黙知の移転を促進す る要因についても明らかにする. 本論文の実証分析の結果,同一部門内の知識移

自 由 論 題

技術者間における知識移転の促進要因──情報獲得者の観点から──

中内 基博(東洋大学 経営学部 准教授)

本稿は,新製品開発プロジェクトにおける技術者間の知識移転を促進する要因について探究した.同一部門内の知識移転と部門間の知識移転では,移転の促進・阻害要因が異なる可能性があるが,先行研究ではこうした組織の境界が知識移転に与える影響についてほとんど注目してこなかった.実証分析の結果,部門内と部門間では知識移転の促進・阻害要因が異なることが示された.

キーワード

知識移転,技術者,ネットワーク,R&D組織

Ⅰ.はじめに

本稿の目的は,新製品開発プロジェクトにおいて,技術者間の知識移転を促進する要因を実証分析によって見出すことにある.技術者が新製品開発プロジェクトを遂行する上で必要な情報を適宜得られるかどうかは,プロジェクトの成否にかかわる重要な問題であり,どのようなファクターが有効な知識移転を促進または阻害するのかを知ることは,依然としてマネジメント上の大きな関心事であろう.これまで,組織内のインフォーマルなコミュニ

ケーション・ネットワークに関心を寄せてきた研究者の多くは,組織内における知識の創造と共有のあり方が,イノベーションや組織の有効性,効率性の鍵になると考えてきた(cf. Argote, 1999;Kogut & Zander, 1992;Grant, 1996;Gargiulo,Ertug, & Galunic, 2009;Szulanski, 1996;Wernerfelt, 1984).価値創造のプロセスは,ナレ

ッジ・ワーカーが解決策を生み出して複雑な問題に取り組むために,情報を獲得し,処理し,また提供すること(Gargiulo et al., 2009)によって始まる.知識の共有を通して価値を創造することで,個人のパフォーマンスが高まり,結果的に組織の有効性や効率性の向上に繋っていくという考え方である.そこでは,インフォーマルな個人間のネットワークが,知識移転プロセスにおいて重要な役割を果たすと考えられている(Reagans &McEvily, 2003).個人間において知識を有効に移転する能力は,ベストプラクティスの移転(Szulanski, 1996)や新製品開発(Hansen, 1999),学習率(Argote, Beckman, & Epple, 1990;Darr,Argote, & Epple, 1995)や組織の生存率(Baum& Ingram, 1998)を含め,多くの組織プロセスや成果にとって重要である.このように知識を移転する能力は,組織にとって競争優位の差別化的源泉であると考えられているのである(Arrow,1974;Kogut & Zander, 1992).しかし,個人間の知識移転に着目した一連の先

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【査読付き論文】

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行研究は,組織内部での個人間の知識移転を促進・阻害する要因について探求するなかで,暗黙のうちに 2つの前提を置いてしまっている.ひとつは,同一のグループや部門に所属する者同士の知識移転パターンと,所属グループや部門が異なる者同士の知識移転パターンには違いがないと暗に仮定している点である.これは,質問票の設計段階で,所属するグループの相違や部門の特性を考慮せずに,単に情報を獲得または供与した相手について回答者に尋ねているため生じる問題である.もうひとつは,同一部門内で移転される情報と部門間で移転される情報の内容や種類の相違を考慮していない点である.実際の業務プロセスを考えれば通常,同一部門メンバー間と異なる部門メンバー間それぞれにおいて,移転される情報の内容や種類は異なっていると考えられる.そうであるとすれば,知識移転を促進・阻害する要因もまた部門内,部門間それぞれに異なっている可能性がある.そこで本論文では,同一部門内のコミュニケーションと部門間のコミュニケーションとを区別することによって,分析モデルの精緻化を図ることにする.その際,暗黙知の移転を促進する要因についても明らかにする.本論文の実証分析の結果,同一部門内の知識移

転と部門間の知識移転では,知識移転の促進・阻害要因が異なることが明らかになった.また,暗黙知の移転を促進する要因もそれぞれに異なっていることが見出された.次節では,先行研究をレビューし,仮説を導出

する.続く第Ⅲ節ではサンプルと変数および分析モデルを,第Ⅳ節では分析結果を呈示する.最後に分析結果を踏まえて経営上のインプリケーションと本論文の射程,および今後の展望について論じたい.

Ⅱ.知識移転の促進・阻害要因

1.部門内および部門間の知識移転ネットワーク構造の観点から boundary span-ner やゲートキーパーなど組織の境界面に立つ人材の重要性についての研究が行われてきた(cf.

Allen, 1977).また,プロジェクト間の知識移転や事業部間の知識移転(cf. Tortoriello, Reagans,& McEvily, 2012)についても,インフォーマルなコミュニケーションや,人事異動(青島,2005)など様々なアプローチによる研究蓄積がある.他方で,グループ内での知識移転とグループ間での知識移転について質問票設計段階から明確に区別して検証した研究はごく少数に留まっている1)(cf. Reagans & Zuckerman, 2001;Reagans,et al., 2004).但し,これらの研究も分析の段になると,チーム内コミュニケーションとチーム間コミュニケーションの性質を厳密に区別しているわけではない.したがって,他のチームへのアクセスの重要性は認めるものの,本論文の関心事である部門内と部門間のそれぞれにおいて知識移転を促進・阻害する要因に違いがあるのかについては不明なままである.また,先行研究では,プロジェクトチーム間の知識移転を論じるにあたって,職能部門間ではなく,主に事業部間の知識移転を取り扱ってきた(cf. Hansen, 1999).本論文が論じる部門内の知識移転とは,情報提供者と情報獲得者の双方が同一職能部門に所属するケースであり,部門間の知識移転とは,両者が職能の異なる部門に所属している状態を意味している.したがって,情報獲得者から見ると,自分と同じ部門に所属する人から情報を得るのか,異なる職能部門の人から得るのかという情報獲得ルートの違いとなる.本論文が部門間の知識移転に着目する理由は,近年,製品ライフサイクルの短縮化に対応するために新製品の上市までのスピードがますます重要視される中,開発スピードを上げるひとつの方策として職能部門間の連携を強めてコンカレントな開発体制を敷くことが求められているからである.よって,新製品開発の有効性を測るうえで重要な指標でもあるプロジェクトの完遂までの時間(Wheelwright & Clark, 1993)を短縮するためには,部門内だけでなく職能部門間においても有用な知識の移転を促進させることが重要となってくるのである.ここで問題となるのは,こうした情報獲得ルー

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トの違いによって,知識移転を促進・阻害するファクターに違いが出るのかという点である2).Lorence & Lorsch(1967)によると,同一組織においても,よりダイナミックな環境に適応していく中で部門間の分化が進み,目標・時間・対人に関する志向性の差が大きくなり,組織構造の公式性も部門間で異なるようになるとされる.こうした部門間の分化は,仕事のあり方に強く影響を与えるため,インフォーマルなコミュニケーション・ネットワークも各部門によって異なったものになると考えられる.分化が進んだ異なる部門間のコミュニケーションは,所属部門の志向性や業務内容が異なるため,セマンティック・ノイズが発生する可能性もある.したがって,部門内と部門間のコミュニケーションでは前提となる関係性に相違があるため,知識移転の要件も各々異なると推察されるのである.また,プロジェクトを遂行するにあたり,部門

内部および部門間のコミュニケーションでは,やり取りされる情報の種類やタイプが異なる可能性がある.たとえば Hansen(1999)は,製品イノベーションにおけるグループ間の知識移転を妨げる要素として,グループ間の秘密主義や競争といった雰囲気に加え,知識の複雑性を挙げている.特に,移転する当事者間で努力することに積極的であった場合でも,固有なタスク上の困難性や複雑性のために,移転がスムーズに行われない可能性を指摘している.こうした移転問題は,分化が進んだ職能間では特に発生しやすいであろう.以上から,情報提供者が同一の職能部門内にい

るのか,他部門にいるのかを識別することは,組織の分化を前提とすれば,志向性と公式性の違いを考慮することになるため,分析モデルの精緻化につながる可能性がある.次項より,知識移転の要件を論じる際にも,これらの区分を用いて先行研究を再考していきたい.

2.仮説の導出個人間の知識移転プロセスに関する先行研究

は,主に 3 つの観点から整理することができる(Levin & Cross, 2004).ひとつは「社会ネットワ

ークの構造」(Burt, 1997;Ghoshal et al., 1994;Granovetter, 1973;Krackhardt, 1992)に着目する研究であり,それらはダイアド間(2 者間)の紐帯の強さやネットワークの構造がもたらす様々な効果について検証を試みている.もうひとつは,情報提供者と獲得者の間の信頼関係や親密度など「個人間の関係性」(Mayer et al., 1995;Zaheer et al., 1998;Zand, 1972)の観点から知識移転を考察する研究である.最後は,「移転される知識の種類」(Nonaka, 1994;Polanyi, 1966,Zander & Kogut, 1995)に関する研究であり,知識を暗黙知と形式知といったタイプ別に区分することで,知識創造のプロセスや知識移転を促進・阻害する要因を探る研究である.これら 3つの観点は独立排他的なものではなく,むしろ密接に関連していると考えられている.そのため,最近の欧米の研究では,これらの複数の観点を組み合わせることで分析枠組みの精緻化が試みられている(e.g. Borgatti & Cross, 2003;Hansen, 1999;Levin & Cross, 2004;Szulanski, 1996;Tsai &Ghoshal, 1998).よって,本論文では,これらの3つの観点から知識移転を促進または阻害する要因についての仮説を導出することにする.

⑴ 「社会ネットワークの構造」社会ネットワーク論の研究者が注目してきたのは,2 者間(情報獲得者と情報提供者)の紐帯の強さ(Granovetter, 1973)や,ネットワークレベルでの構造的空隙(Burt, 1992)およびネットワーク密度(Coleman, 1988)などである.最初に,紐帯の強さとは,2 者間の関係の近接性(親密度)やインタラクションの頻度を特徴づけるものである(Granovetter, 1973;Hansen,1999;Marsden & Campbell, 1984).複数の先行研究から,紐帯の強さの程度によって,もたらされる効果が異なることが示されている.たとえば,強い紐帯は有用な知識を獲得するための重要なパイプであり(Ghoshal et al., 1994;Hansen,1999;Szulanski, 1996;Uzzi, 1996, 1997),複雑な情報(Hansen, 1999)やリッチな情報や暗黙知(tacit knowledge)(Uzzi, 1996, 1997)の移転を

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促進する効果があるとされる.他方で,弱い紐帯は新しい異質な情報へアクセスするための探索(Granovetter, 1973)に効果を発揮し,また単純な知識や形式知の移転を促進する可能性がある(Hansen, 1999).ここで情報提供者が職能の異なる他部門にいる

場合を考えると,前提となる専門知識や規範,価値観,用語が異なっているため,同一部門内での移転に比べて知識移転は容易ではないと推察される.したがって,移転を円滑に行うためには,ある程度時間をかけて互いのアイデンティティや文化に関する理解を深めること(若林,2001,2002)が肝要である.それには長期にわたって緊密に接触が保たれていることが必要であり(若林,2001,2002),リッチな情報を得るためにも,より強い紐帯が有効であろう.他方で,情報提供者が同一部門にいる場合,前提となる専門知識や価値観は類似しており,すでに情報の共有度は相対的に高い状態にあると考えられるため,他のメンバーの過去の経験や必要な情報をタイムリーに得ることがスピーディーな開発には重要となる.この場合,少数の人との強い紐帯よりも,情報探索に有利な多数の人との弱い紐帯が有効であろう.以上から次の仮説を導く.仮説 1-1:部門間において,強い紐帯は,有用な知識の移転を促進する

仮説 1-2:部門内において,弱い紐帯は,有用な知識の移転を促進する

上記の紐帯の議論はダイアド間に限定した議論であったが,ここではさらにトライアド(三者)関係,なかでもネットワーク密度に着目した知識移転を考えたい.密度の高いネットワークとは,情報提供者同士の結びつきが強い状態を意味するが,そうしたネットワークに属する情報提供者はネットワーク内での評判を気にするため,情報移転に協力的になる可能性が高い(Coleman,1990;Granovetter, 1992).密なネットワーク内では,もし情報提供者が協力的でない行動や規範(norm)に反する行動を採った場合には,その評判がすぐにネットワーク内に広まってしまうた

め,提供者は情報移転に積極的にならざるを得ないからである.その結果,密度の高いネットワーク内では,規範や価値観の共有が促進されると考えられる(Coleman, 1988;若林,2001,2002).本来,二者間で知識を共有することは,同じ組織に同じ知識をもった人が 2 人存在することになり,いわゆる組織内部の冗長性を高めることになるため,結果的に両者の競争意識を高めることにつながるが,協力的な規範があればこうした二者間のコンフリクトを低減し,知識移転を促進することが可能となるのである(Ingram & Roberts,2000;Reagans & McEvily, 2003).こうした協力的な規範は,同一組織内の異なるユニット間の知識移転を阻害するような競争意識を低めるため(Reagans & McEvily, 2003),ネットワーク密度は異なる職能部門間の知識移転を促進する可能性がある.他方,同一部門内部では,ネットワーク密度の効果は限定的,もしくは有用な知識の移転を阻害する可能性がある.ネットワーク密度は知識移転を円滑にする一方で,ネットワークが閉じている分だけ,類似した情報や知識が移転されることになり,ネットワークメンバー間の知識は類似し収斂化していくため,新しい情報へのアクセスという観点で劣る可能性がある(Fleming,Mingo, et al., 2007;McFadyen, Semadeni, &Cannella, 2009;Gargiulo, Ertug, & Galunic,2009).この傾向は同一部門内での閉じたネットワークにおいて顕著である.同一部門内のメンバーは知識や情報源が類似している可能性が高く,そうしたメンバー間での閉じたネットワークでは,情報の共有度が高くなるにつれて,新しい有用な情報が外部から入ってこなくなる可能性がある.その結果,外部との接触を拒むといったNIH(not invented here)シンドロームに陥る可能性もあろう.仮説 2-1:部門間において,密度の高いネットワークは,有用な知識の移転を促進する仮説 2-2:部門内において,密度の高いネットワークは,有用な知識の移転を阻害する

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⑵「個人間の関係性」二者間の知識移転で論じた紐帯の強さの概念で

は捉えられない個人間の関係性として,多くの先行研究が個人間の信頼について議論してきた(例:Colquitt & Rodell, 2011;Levin & Cross,2004 ; McAllister, 1995 ; Szulanski, 1996).Mayer et al.(1995)は信頼(trust)について,相手が自分にとって重要な行動を採るという期待を前提として,その相手に対して無防備になることを厭わない気持ち(willingness to be vulner-able)と定義している.二者間にこうした信頼関係が存在するとき,相手が機会主義的行動に出ることを恐れる必要がないため,人々は積極的に有用な知識を与えるであろうし(Andrews &Delahay, 2000;Tsai & Ghoshal, 1998;Zand,1972),また他者からの知識や情報に耳を傾け,それを吸収することに積極的になると考えられる(Carley, 1991;Levin, 1999;Mayer et al. 1995;Srinivas, 2000).ところで,相手を信頼するには,相手が信頼に足る高い能力を持っている,もしくは自分を騙すことがない人だという,相手に対する信頼性(trustworthiness)がなければならない(Levin & Cross, 2004;Mayer et al.,1995).特に,情報提供者の能力(competence)についての高い信頼性は,獲得者が受け取った情報の信頼性を検証する手間が省けるので,知識移転のコストを引き下げることが可能となるとされる(Currall & Judge, 1995;Zaheer et al., 1998).よって,情報獲得者側から見た提供者の能力に関する信頼性の高さは,有用な知識移転を促進する可能性がある.ここで職能部門間及び部門内コミュニケーショ

ンを通した信頼の醸成を考えたい.Tsai &Ghoshal(1998)によると,一緒に過ごした時間が長く近しい関係を維持している場合や,共通の価値観やビジョンを共有している場合に,信頼性が高まるという.同一部門内では,専門知識や規範,価値観などが類似しているため,相手の能力について評価する潜在的な機会が多く存在することから,信頼の醸成に繋がると考えられる.他方で,職能の異なる部門間では組織の分化が進んで

いるほど吸収能力が低下するため,提供者の能力を測定することは困難であり,信頼の醸成には繋がらないと考えられる.仮説 3-1:部門間において,情報提供者の能力の信頼性は,知識移転に影響を与えない仮説 3-2:部門内において,情報提供者の能力の信頼性は,知識移転を促進する

⑶ 「移転される知識の種類」情報の送り手がたとえ積極的に情報を提供してくれたとしても,移転される知識が受け手にとって利用可能な形(von Hippel, 1994)になっていない場合には知識移転がスムーズに行われない可能性がある.例えば知識がコード化や成文化されていない場合や暗黙知(Nonaka, 1994;Polanyi,1966)の状態にある場合がこれに該当する.知識が形式知化されていないとき,説明や学習に時間がかかるため,生産能力の移転(Zander &Kogut, 1995)や新しい製品開発プロジェクトでの知識移転(Hansen, 1999)のスピードが遅くなることが実証研究によって見出されている.よって,部門間および部門内のいずれにおいても暗黙知はスムーズな移転を阻害すると考えられる.仮説 4:部門間および部門内において,移転される知識が,コード化・形式知化されていない場合,知識移転は阻害される

⑷ 「集団的教育指導」ここで,先行研究に新たな視点を追加して知識移転を再考したい.上記の 3つの観点に基づく先行研究は,主に「個人」が有する知識の移転を念頭に置いている.しかし,実際には知識移転は個人が保有する個人的知識だけでなく,個人知識を調整・共有・流布・再結合する方法に関連するような組織メンバー間に埋め込まれた知識や集合知(collective knowledge)も移転することが肝要である(Argote & Ingram, 2000;Brown & Duguid,2001;Grant, 1996;Kogut & Zander, 1992;Spender & Grant, 1996;Weick & Roberts,1993).業務上,必要となる知識の多くが,所属する組織の文脈特有のものであることが多いため

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(Lave & Wenger, 1991),集合知を習得することは業務を遂行する上で極めて重要である3).集合知の効率的な移転プロセスとして,Zhao & Anand(2009)は情報源のコミュニティによる集団的な教育指導(collective teaching)の重要性を説いている.知識移転の先行研究では,そのほとんどが受け手の学習プロセスについて着目してきたが,彼女たちは情報源となる組織による教育活動に焦点を当てて論を展開している点で斬新である.ここで,集団的教育指導(collective teaching)

とは,情報源となる組織のメンバーが,組織の知識やルーチンやモノの見方(mindset)を学習する個人に対して,集団的に授けるプロセスのことである(Zhao & Anand, 2009).集団教育では,情報源となるコミュニティがメンバー間の相互作用を見せる「場」を提供するので,情報の受け手は,それをじかに観察することが可能であり,それによって成文化することが難しい組織メンバー間に埋め込まれた知識やルーチンを理解することもできるようになるのである4).このようにして,コミュニティの中でメンバー間の相互作用を学習する機会が与えられた人は,集合知(例:職能間のルーチン)の文化的・制度的なコンテクストを理解することで(Zhao & Anand, 2009),メンバーの知識を再結合するように調整し,新しい知識を創造することが可能になるのである(野中・竹内 1996).したがって集団教育を経験した人は,情報提供者が所属する組織の背景やコンテクストを理解することに繋がるため,部門間および部門内の双方において,集団的教育指導は有用な知識の移転を促進すると予測される.仮説 5:部門間および部門内において,集団的教育指導は,知識移転を促進する

⑸ 「コード化・形式化されていない知識の移転を促進する要因」

最後に,コード化・形式化されていない,暗黙的な知識の移転を促進する要因について考えたい.知識移転の効率性を考えた場合,移転される知識がコード化・形式化されていれば移転は容易になり(Reagans & McEvily, 2003),移転のスピ

ードも上がる(Hansen, 1999).しかし,移転のしやすさと有用な情報に必ずしも相関があるとは言えない.誰でも利用できる情報や移転しやすい情報は,重要な情報源や競争優位の源泉とはなりにくいためである.重要な情報であっても,それがそもそも集合知のように形式知化することが難しい場合もあれば,伝達内容を形式化する情報提供者の能力が低いために移転を阻害している可能性もある.したがって,情報獲得者側から見て,十分にコード化・形式化されていない知識の移転を促進する要因を探ることは,集合知や暗黙知の移転をモデレートする要因を探求することにも繋るため,有用な知識の移転を考える上では重要であろう.こうしたモデレータ・ファクターとして,①情報獲得者の理解を補う紐帯の強さ,②情報提供者の積極的な協力姿勢を引き出すネットワーク密度,③情報提供者側の価値観やモノの見方など集合知についての理解を深める集団教育,④いつでも情報提供者へアクセスして質問できる環境について考えたい.第一に,紐帯の強さは,十分にコード化・形式化されていない知識の移転を助け,集合知や暗黙知の移転を促進する可能性がある.強い紐帯は有用な知識を獲得するための重要なパイプであり(Ghoshal et al., 1994;Szulanski, 1996),複雑な情報(Hansen, 1999)やリッチな情報,暗黙知(Uzzi, 1996;1997)の移転を促進する効果があるためである.第二に,密度の高いネットワークでは,情報提供者がネットワーク内での評判を気にすることから情報移転に協力的になる可能性が高い(Coleman, 1990;Granovetter, 1992).よって,暗黙知の移転には手間や時間がかかり面倒だが,移転に協力的になると考えられる.第三に,集団的教育指導は,情報提供者のバックグラウンドについての理解を深めるため,移転されやすい形になっていなくとも情報の受け手は理解を補うことが可能になるであろう.第四に,情報提供者へのアクセスの容易さについては,人が限定合理な存在であることを考慮すれば,十分にコード化・形式知化されていない知

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識は,一度の機会で吸収することが難しいと予想される.その際,必要な時に何度も情報提供者に尋ねる機会が与えられるならば,理解が深まるであろう.これに関して Borgatti & Cross(2003)は,時間が制約される今日では知識探索を行う上でタイムリーに情報源にアクセスできるかどうかが重要であると論じている.よって,いつでも尋ねることができる環境が確保されていれば,形式化されていない知識の移転を促進するものと考えられる.仮説 6:強い紐帯,ネットワーク密度,集団的教育指導,およびアクセスの容易さは,コード化・形式知化されていない知識(暗黙知)の移転を促進する

Ⅲ.サンプルおよび変数

分析対象は東証 1部に上場している大手電気機器メーカー A社の製品開発に携わるエンジニア188 名である.彼らは全員ソフトウェア開発部門に所属している.同部門は主にMFP(multifunc-tion peripheral)関連のソフトウェア開発を担っている.当該部門では,求められる製品機能の実現のためには,単にこれまでのリソースを使ってソフトウェア・プログラムを書き上げるだけでなく,継続的なハードウェア部門との擦り合わせや,顧客ニーズの把握のための企画・営業担当との打ち合わせが必要となる.プロジェクトごとのコンカレント・エンジニアリングを行っている当該企業では,ひとたび問題が生じると必要に応じて企画,営業,生産,ハード,ソフトの関係者が即座に集まり,解決策を練る体制をとっている.求められる機能の具現化のためにソフトウェア・プログラムを書き上げる際に必要となる助言やアドバイス,過去のリソースなどは部門内部で探すことになるが,ハードとの擦り合わせによる機能の実現や,顧客ニーズを実際の製品機能に落とし込む際に必要な問題解決プロセスは,各部門のそれぞれの志向性が強く反映される中でのコミュニケーションとなる.したがって,本稿の関心事である部門内および部門間における知識移転の要件

を検証する分析対象としての要件を満たしているといえる.製品開発プロジェクトを効率的に遂行するにあたって,技術者が有用であったと認識している知識は,どのようなインフォーマルなネットワークを通して移転されるのかについて検証する.直近の 1年半以内に行った重要なプロジェクトについて尋ねる記名式の質問票を 188 名に対して配布し,著者に直接郵送する形式にて回収した.回収率は 73%(137/188 名)であった.なお,当該質問票調査の前に業務内容に関する同規模の質問票を配布し,その後でヒアリング調査を 20 名に対して行っている.それらを受けて質問票を設計した.質問票は 2部構成で,最初の部では,回答者本人に関する質問(氏名や職位,在職期間,教育水準,技術知識の水準(Obstfeld, 2005)や,組織内部の事情にどれだけ精通しているかを表す社会知識の程度(Obstfeld, 2005)について尋ねている.別の部では,『当該プロジェクト期間にあなたが困難な業務上の課題や技術的問題に直面していて,支援が必要なときに相談したり,情報及びアドバイスを求めたりした相手を最大 7名挙げて』もらった(『 』は質問票の文言).平均は約 4.5 名であった.これらのインフォーマルなコミュニケーション・ネットワークを用いて各変数を作成した.その際,情報提供者の所属部門をもとにして部門内および部門間のコミュニケーションを識別した.その結果,最終的には部門内の観測数は 508,部門間の知識移転は 101 となった(欠損値は除外:観測数 2).分析には重回帰分析を用いる.分析に際してcommon method bias をチェックするためにHarman’s single-factor test(Podsakoff & Organ,1986)を行い問題がないことを確認した5).従属変数は,Levin & Cross(2004)が開発した情報獲得者の業務成果の向上に役立った知識の獲得(receipt of useful knowledge)を用いた.この指標は Hansen(1999),Hansen & Haas(2001),Keller(1994)および Szulanski(1996)が用いた 8つのアイテムを結合したものであり,時間や予算に関連した効率性に関する 4つのアイテムとプロジェクトの有効性に関する 4アイテムで構成

技術者間における知識移転の促進要因 67

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される.但し,効率性と有効性ではその構成要素が異なる可能性があるため,本稿ではこのうち効率性に関する 4アイテムを結合した指標を従属変数として用いている.情報提供者から受け取った情報やアドバイスが,論文末の注 6 の項目6)についてどの程度効果があったか 7 point Likert Scaleで尋ねた.独立変数は先行研究で用いられている各質問項

目を利用して,ネットワーク密度(Reagans &McEvily, 2003),強い紐帯(Reagans & McEvily,2003),コード化・形式化されていない知識(Hansen, 1999;Levin & Cross, 2004),コンピタンスに対する信頼(Levin & Cross, 2004),集団教育(Zhao & Anand, 2009),専門知識のオーバーラップの程度(Reagans & McEvily, 2003)の各変数を作成した(各質問項目は論文末の注 7参照)7).コントロール変数は紙幅の関係上,詳細は省略

するが,職位,在職期間,教育水準,発展的な技術課題に積極的に取り組む程度を表す技術知識(Obstfeld, 2005),他部門の非公式な内部情報を容易に得られるかを表す指標である社会的知識(Obstfeld, 2005),仕事を遂行する上での他者への依存度(Hansen, 1999),保有する知識の多様

度,上司,友人関係(Reagans &McEvily, 2003),アクセスの容易さ(Borgatti & Cross, 2003), 裏切らないという信頼性(Tsai & Ghoshal, 1998)を用いた.

Ⅳ.分析結果

表 1は,変数間の相関係数および各変数のクロンバックのαを示したものである.表 2は重回帰分析の結果である.他部門間の知識移転に関する分析結果について,コントロール変数からは,職位が低く,教育水準が高く,社会的知識を有している人が有用な情報を得ていることがわかる.弱い紐帯は負の 5%有意で仮説 1-1は支持された.先行研究に新たな視点を導入した仮説 5 の集団的教育は,正の 5%有意で支持された.仮説 6に関して,交差項については,集団的教育が 1%有意,ネットワーク密度が正の 0.1%有意で支持されたが,弱い紐帯やアクセスの容易さなどは有意な結果が得られなかった.同一部門内に関するモデルにおいては,職位が低く,高い教育水準と技術知識を有している回答者が,上司からの情報を有用なものとしていることがわかる.分析結果から,弱い紐帯は正の 5%

68 組織科学 Vol. 48 No. 2

表 1 基本統計量と相関*

Variables Mean s. d. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

1.有用な知識獲得 4.55 0.90 (0.81)2.職位 0.17 0.37 -0.15 -3.在職期間 4.35 1.08 -0.07 0.56 -4.教育水準 2.63 0.55 0.12 -0.40 -0.51 -5.技術知識 5.09 1.11 0.08 0.19 0.19 -0.10 -6.社会的知識 4.18 1.46 -0.06 0.43 0.42 -0.32 0.36 -7.依存度 5.21 1.14 0.07 0.30 0.25 -0.19 0.15 0.33 (0.75)8.知識の多様性 5.47 1.12 -0.13 0.22 0.13 -0.12 0.21 0.26 0.21 -9.ネットワーク密度 0.78 0.21 0.07 -0.17 -0.24 0.08 -0.22 -0.18 -0.15 -0.04 -10.専門分野の重複 5.00 1.46 0.15 -0.10 -0.15 0.08 -0.04 -0.02 -0.00 -0.02 0.28 -11.上司 0.59 0.86 0.11 -0.08 -0.08 0.03 -0.11 -0.07 -0.09 -0.07 0.12 0.01 -12.友人関係 1.74 0.86 0.09 -0.19 -0.21 0.09 0.03 0.06 -0.12 -0.02 0.11 0.12 -0.0113.アクセス 5.44 1.47 0.27 0.10 0.05 -0.04 0.03 0.07 0.01 -0.03 -0.02 0.21 0.0014.弱い紐帯 3.05 1.75 -0.08 0.01 0.01 0.01 0.06 0.02 0.00 0.02 -0.33 -0.32 -0.1515.暗黙知 4.51 1.12 -0.12 0.04 -0.00 0.07 0.05 0.04 0.05 0.12 0.01 -0.09 0.0416.能力への信頼 5.68 1.25 0.21 0.02 0.29 -0.03 0.00 -0.03 -0.01 -0.05 0.16 0.16 0.1317.信頼性 5.09 1.15 0.22 0.05 0.02 -0.02 0.12 -0.00 -0.08 -0.07 0.12 0.14 0.1018.集団的教育 3.47 1.46 0.31 -0.22 -0.28 0.16 0.07 -0.07 -0.12 -0.10 0.14 0.20 0.40

n=609.*0.08 より大きい数値は有意水準 5%,0.11 より大きい数値は有意水準 1%.括弧内はCronbach’s alpha.

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有意であり,仮説 1-2 は支持された.能力への信頼は正の 1%有意で仮説 3-2 は支持された.また,集団的教育は正で 0.1%有意であることから仮説 5は支持された.仮説 6については,暗黙知との交差項のうち,弱い紐帯は負の 5%有意で,アクセスの容易さについては正の 5%の有意水準で支持された.

Ⅴ.おわりに

本稿では,新製品開発プロジェクトにおける技術者間の知識移転を促進する要因を実証分析によって探究した.本稿の主たる関心は,知識移転を促進または阻害する要因が,職能部門内と部門間で異なるのかどうかにあった.同一部門内で移転される情報と部門間で移転される情報の内容や種類が異なるとすれば,同一部門内と部門間でそれぞれ移転を促進または阻害するファクターが異なる可能性があるが,先行研究ではこうした組織の境界の影響についてほとんど注目してこなかった.そこで本論文では,同一部門内のコミュニケー

ションと部門間のコミュニケーションを区別することによって,分析モデルの精緻化を図った.分析の結果,部門内部では,弱い紐帯や信頼関係,

技術知識,形式知化された情報,集団的教育指導,アクセスのしやすさなどが有用な知識の移転を直接的に促進する効果があり,暗黙知の移転については強い紐帯やアクセスが関係性をモデレートすることがわかった.他方,部門間の知識移転では,強い紐帯,社会的知識,集団的教育指導が重要であり,暗黙知の移転を促進する要素としてはネットワーク密度と集団的教育指導が有効であるとわかった.こうした分析結果から,部門内と部門間それぞれにおける効率的なコミュニケーション・パターンが見えてくる.部門内では,職位は低いが教育水準が高く技術知識を有しているエンジニアが主に上司や元上司から有用な情報を得ているようである.また,部門内では重要であった技術的知識の保有は,部門間でのコミュニケーションでは有効ではなく,他部門のインフォーマルな情報へのアクセスを持っていること(社会的知識)が重要である.こうした結果は,事前のインタビュー調査によっても裏付けられている.なお情報獲得者は,部門内の情報提供者に対して,能力的にも人としても高い信頼を寄せていて,彼らとは弱い紐帯の関係にあるが,必要に応じて容易に尋ねること(アクセス)ができる場合に,開発の効率性に繋る有用な情報を得たと感じているようである.他方で,部門間においては,情報提供者に対する信頼性は重要ではなく,強い紐帯が知識移転を促進することがわかった.また,暗黙知の移転に関しては,部門内では強い紐帯やアクセスなど主にダイアド間の関係性が重要である一方で,部門間ではトライアド関係を表すネットワーク密度と集団的教育指導が重要であることが見出された.こうした一連の実証結果が示唆しているのは,個人間の知識移転を考える場合,組織の境界を考慮することの重要性である.先行研究では,強い紐帯と弱い紐帯について多くの異なる実証結果を得ており,これまでモデレータ・ファクターとして知識の種類(Hansen, 1999;Reagans&McEvily,2003)や信頼(Levin & Cross, 2004),相手組織への依存度(Hansen, 1999)などが見出されてい

技術者間における知識移転の促進要因 69

12 13 14 15 16 17

-0.15 --0.25 -0.21 (0.83)-0.01 -0.02 -0.02 (0.77)0.05 0.13 -0.39 -0.04 (0.91)0.07 0.18 -0.34 -0.07 0.60 (0.71)0.23 0.13 -0.16 -0.07 0.14 0.13 (0.90)

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70 組織科学 Vol. 48 No. 2

表 2 重回帰分析結果

部門間の知識移転 同部門内の知識移転

Model 1a Model 2a Model 3a Model 4a Model 5a Model 6a Model 1b Model 2b Model 3b Model 4b Model 5b Model 6b

Intercept 3.22**(1.06)

2.79**(0.84)

2.99**(1.09)

2.59*(1.02)

3.25**(1.08)

2.78**(0.99)

1.60**(0.53)

1.86***(0.53)

1.65**(0.53)

1.59**(0.53)

1.56**(0.53)

1.90***(0.52)

職位 -0.77**(0.27)

-0.63*(0.26)

-0.72*(0.28)

-0.59*(0.26)

-0.77**(0.27)

-0.59*(0.26)

-0.29*(0.13)

-0.27*(0.12)

-0.28*(0.12)

-0.30*(0.13)

-0.27*(0.13)

-0.26*(0.12)

在職期間 -0.05(0.13)

-0.01(0.12)

-0.05(0.13)

-0.15(0.12)

-0.06(0.13)

-0.11(0.12)

0.08†

(0.04)0.12**(0.04)

0.08†

(0.04)0.08†

(0.04)0.09*(0.04)

0.11*(0.04)

教育水準 0.59**(0.21)

0.65**(0.20)

0.65**(0.22)

0.59**(0.19)

0.59**(0.21)

0.48*(0.20)

0.17*(0.08)

0.16*(0.08)

0.17*(0.08)

0.17*(0.08)

0.18*(0.08)

0.16*(0.08)

技術的知識

-0.08(0.10)

-0.13(0.09)

-0.08(0.10)

-0.03(0.09)

-0.08(0.10)

-0.08(0.09)

0.09**(0.04)

0.07*(0.04)

0.09**(0.04)

0.10**(0.04)

0.09**(0.04)

0.07†

(0.03)社会的知識

0.18*(0.09)

0.14†

(0.08)0.19*(0.09)

0.20*(0.08)

0.18*(0.09)

0.14†

(0.08)-0.02(0.03)

-0.03(0.03)

-0.02(0.03)

-0.02(0.03)

-0.03(0.03)

-0.03(0.03)

依存度 0.18†

(0.10)0.21*(0.10)

0.18†

(0.10)0.17†

(0.10)0.17†

(0.10)0.20*(0.09)

0.10**(0.03)

0.10**(0.03)

0.10**(0.03)

0.10**(0.03)

0.11**(0.03)

0.10**(0.03)

知識の多様度

-0.15*(0.06)

-0.11†

(0.06)-0.14*(0.06)

-0.10(0.06)

-0.15*(0.06)

-0.07(0.06)

-0.06†

(0.04)-0.06(0.03)

-0.06†

(0.04)-0.06†

(0.04)-0.07†

(0.04)-0. 06†

(0.03)専門分野の重複

0.07(0.06)

0.09(0.06)

0.08(0.06)

0.06(0.06)

0.07(0.07)

0.04(0.06)

0.03(0.03)

0.01(0.03)

0.03(0.03)

0.03(0.03)

0.04(0.03)

0.01(0.03)

上司 -0.06(0.12)

-0.19(0.12)

-0.05(0.13)

-0.04(0.12)

-0.06(0.13)

-0.18(0.12)

0.12**(0.04)

0.05(0.04)

0.13**(0.04)

0.12**(0.04)

0.12**(0.04)

0.05(0.04)

友人関係 -0.03(0.12)

-0.09(0.11)

-0.03(0.12)

0.04(0.12)

-0.03(0.12)

-0.02(0.12)

0.07(0.04)

0.04(0.04)

0.07(0.04)

0.07†

(0.04)0.07†

(0.04)0.04(0.04)

アクセス 0.13(0.11)

0.13(0.10)

0.12(0.11)

0.09(0.10)

0.13(0.11)

0.12(0.10)

0.21***(0.04)

0.20***(0.04)

0.21***(0.04)

0.21***(0.04)

0.19***(0.04)

0.19***(0.04)

信頼性 0.04(0.10)

0.09(0.10)

0.03(0.10)

0.09(0.10)

0.04(0.10)

0.14(0.10)

0.12**(0.04)

0.11**(0.04)

0.12**(0.04)

0.12**(0.04)

0.12**(0.04)

0.11**(0.04)

弱い紐帯 -0.32*(0.14)

-0.28*(0.13)

-0.34*(0.14)

-0.29*(0.13)

-0.32*(0.14)

-0.22†

(0.13)0.14**(0.04)

0.13**(0.04)

0.13**(0.04)

0.14**(0.04)

0.14**(0.04)

0.12**(0.04)

ネットワーク密度

0.05(0.13)

-0.05(0.13)

0.02(0.13)

0.05(0.12)

0.05(0.14)

0.01(0.13)

0.02(0.04)

0.02(0.04)

0.02(0.04)

0.02(0.04)

0.03(0.04)

0.02(0.04)

能力への信頼

-0.09(0.10)

-0.08(0.09)

-0.10(0.10)

-0.08(0.09)

-0.09(0.10)

-0.05(0.09)

0.12**(0.04)

0.11**(0.04)

0.11**(0.04)

0.12**(0.04)

0.12**(0.04)

0.10**(0.04)

暗黙知 -0.08(0.09)

0.00(0.09)

-0.06(0.09)

-0.01(0.08)

-0.09(0.09)

0.01(0.09)

-0.10**(0.04)

-0.09*(0.04)

-0.09*(0.04)

-0.09*(0.04)

-0.09**(0.04)

-0.08*(0.04)

集団的教育

0.26*(0.10)

0.23*(0.10)

0.17***(0.04)

0.18***(0.04)

暗黙知×集団的教育

0.21**(0.08)

0.21*(0.10)

0.01(0.04)

-0.00(0.04)

暗黙知×弱い紐帯

-0.08(0.08)

0.21†

(0.11)-0.08*(0.03)

-0.07*(0.03)

暗黙知×ネットワーク密度

0.34***(0.10)

0.33**(0.12)

0.01(0.03)

0.00(0.03)

暗黙知×アクセス

-0.01(0.08)

0.02(0.08)

0.07*(0.04)

0.05(0.04)

観測数 101 101 101 101 101 101 508 508 508 508 508 508F 値 5.80*** 6.73*** 5.51*** 6.92*** 5.40*** 6.62*** 8.90*** 9.09*** 8.77*** 8.38*** 8.69*** 8.32***調整済R-square 0.43 0.51 0.43 0.50 0.43 0.54 0.20 0.22 0.21 0.20 0.20 0.23

†p < 0.10,*p < 0.05,**p < 0.01,***p < 0.001(two-tailed tests). ※交差項に使われた変数は標準化されている.括弧内は標準誤差.

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るが,本稿の結果は,職能組織の境界が新たなモデレータ要因として機能する可能性を示しているものと考えている.なお,先行研究に新たな視点を加えた集団的教

育指導については,分析の結果,部門内と部門間の両方に共通して知識移転に有効であることが示された.この結果が示唆しているのは,集合知を移転することの有用性である.先行研究では,主に個人間の知識移転に焦点が当てられてきたが,業務上必要となる知識の多くが,所属する組織の文脈特有のものであることが多い(Lave &Wenger, 1991)ことを考えると,集合知をどのように移転するのかを考えることはマネジャーにとっても重要であろう.本稿の結果は,集団的教育指導がその役割の一部を担っている可能性を示している.最後に本稿の射程についての留意点を述べる.

記名式の質問票データの入手は容易ではないため分析対象は 1社となってしまったが,当該企業特有の事情が分析結果に何らかの形で反映されている可能性は否定できない.よって,今後は対象企業を広げていくことが実証結果のロバストネスをチェックする上でも求められると認識している.また,本稿では比較的大規模な職能制組織を分析対象としているが,事業部内および事業部間のコミュニケーションや,プロジェクト内およびプロジェクト間のコミュニケーションについては,移転や促進の要件が異なっている可能性がある.これらについては今後の課題としたい.

注1) たとえば,Reagans & Zuckerman(2001)は,チーム内の

メンバーとのコミュニケーションとチーム外のメンバーとのコミュニケーションを識別して,チームの生産性との関係性について分析している数少ない研究のひとつである.彼らが前提としているのは,チーム・パフォーマンスの決定要因は,組織に分布している広範な情報やリソース,ものの見方などへアクセスする能力であり,管理者はそのようなアクセスの幅を最大化する必要がある(Reagans,Zuckerman, McEvily, 2004)という考えである.これに関連してReagans & McEvily(2003)は,異なる知識の集合を超えて複雑なアイデアを伝達するためには,チーム間のコミュニケーションを促進するようなネットワーク範囲(network range)の広さが重要であるとしている.

2) 常に同一のファクターが知識移転を促進・阻害するのであれば,部門内と部門間のコミュニケーションの相違を考慮する必要は無い.他方で,部門間と部門内それぞれでやり取りされる情報の内容や質に関して違いがあるのであれば,移転の要件も変わってくる可能性がある.

3) これに関して Zhao & Anand(2009)は,大学で機械設計を学んできたエンジニアの例を挙げている.実際の業務において機械部品を設計するには,要求品質(quality re-quirement)や設計予算,組織の様々なエンジニアリングリソースの利用可能性といった当該組織に特有の多くの文脈的知識が必要である.こうした知識は,特定の人から教えてもらう個人教育スタイルよりも,情報源となる組織の設計ユニットで一緒に働くことの方が,はるかに機械設計についての文脈的知識を獲得できるようになるはずである.

4) 知識移転の実証研究において Prochno(2003)は,集団教育の一形態である海外訓練によって,情報を受け取る組織のメンバーが,情報源となる個人間または職能横断的な調整のパターンやその意味の理解を得られるようになることを見出している.また,集団教育では,集合知の学習者を情報源のコミュニティ環境に放り込むことで社会的プレッシャーを与え,新しい価値観やモノの見方を習得しようとする彼らのモチベーションを高める効果もある(Weick &Roberts, 1993).なぜなら,組織に入った新人は,彼らに掛けられる社会的プレッシャーから,当該組織の価値観を身につけ,期待に応えようとする傾向がある(March,1988)ためである.

5) 主成分分析によって固有値が 1以上のファクターが 5個あった.これらのファクターは,寄与率 87.1%を説明していた.最大のファクターは寄与率 26.7%.

6) 質問項目①このプロジェクトを予算内に抑えることができた,もしくは予算に近付けたことに対しては,どの程度効果がありましたか? ②このプロジェクトのコスト削減に対しては,どの程度効果がありましたか? ③このプロジェクト(または製品開発)の完了までの時間短縮に対しては,どの程度効果がありましたか? ④このプロジェクトにかかわる貴方自身の業務時間の短縮に対しては,どの程度効果がありましたか?

7) 独立変数(7 point Likert Scale) 注)この人=情報提供者※各情報提供者(最大 7名)について回答《弱い紐帯》“この人に情報/アドバイスを求める前の時点(今回のプロジェクト開始前)ですでに,貴方にとってこの人はどのくらい親密な存在でしたか”“この人に情報/アドバイスを求める前の時点ですでに,貴方はこの人とどのくらい頻繁にコミュニケーションをとっていましたか(Reagans & McEvily, 2003;Levin & Cross, 2004)《能力への信頼》“この人に情報/アドバイスを求める前の時点(今回のプロジェクト開始前)ですでに,私は,この人がプロ意識を持ち,献身的に仕事に取り組んでいると信じていた,または知っていた”“この人に情報/アドバイスを求める前の時点ですでに,この人の過去の実績を考えると,この人の能力や心構えを疑う余地はないと思っていた”(Levin & Cross, 2004)《暗黙知》“この人からの情報・アドバイスはすべて十分に文書(レポート,マニュアル,資料,メール,FAX など)で説明されていましたか”“この人から受け取った情

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報・アドバイスはどの程度きちんと文書で解説されていましたか”“この人から受け取った情報・アドバイスのタイプは何ですか?(1=主としてレポート,マニュアル,メール,文書など,7=主として個人的な実践的ノウハウ,仕事のコツや秘訣)(cf. Reagans & McEvily, 2003;Levin& Cross, 2004)《集団的教育》“この人は,部門間ミーティングに私を同行・出席させた”“この人は,部門間での共同プロジェクトを実行するにあたって,私を加わらせた”“この人は,チームとしてどのように部門間の問題を解決するのか,私に示してくれた”“この人は,技術プロジェクトを合同で計画・実行する方法を,私に示してくれた.”(cf. Zhao &Anand, 2009)

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2013 年 9 月 17 日 受稿2014 年 6 月 21 日 受理

[担当シニアエディター 小川 進]

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