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1 消費者参加型商品開発の限界と可能性 Student Innovation College の分析 指導教員:水越康介 准教授 氏名:高橋文人 枚数:24枚

消費者参加型商品開発の限界と可能性 Student Innovation College … · 4-3-1.Student Innovation Collegeの目的を知っているか 4-3-2.何を目的にこの活動を行ったか

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消費者参加型商品開発の限界と可能性

Student Innovation College の分析

指導教員:水越康介 准教授

氏名:高橋文人

枚数:24枚

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【目次】

1.はじめに

2.先行研究

2-1. 空想生活について

2-2.INSIPID PHONE の事例

2-3.消費者参加型商品開発における参加者の価値

2-4.消費者参加型商品開発における課題

2-5.消費者参加型商品開発における可能性と限界

2-6.良品計画について

2-7.良品計画における課題、可能性、限界

2-8.先行研究まとめ

3.事例研究

3-1.Student Innovation College とは

3-2.Student Innovation College の特徴(一般的なビジネスコンテストとの違い)

3-3.Student Innovation College の目的

3-4.研究内容「Student Innovation College の限界及び、可能性を探る」

4.事例分析

4-1.自らの経験からみる Student Innovation college(参加、運営において)

4-2.Student innovation College 発案者に対するインタビュー

4-2-1.Student Innovation College を始めた目的

4-2-2.学生に Student Innovation College で取ってほしい行動

4-2-3.Student Innovation College の一番の特徴

4-2-4.Student Innovation College における企業の課題

4-2-5.Student Innovation College の可能性と限界

4-2-6.インタビューまとめ

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4-3.Student Innovtion college 参加者に対するアンケート

4-3-1.Student Innovation College の目的を知っているか

4-3-2.何を目的にこの活動を行ったか

4-3-3.Student Innovation College を通して成長できたと思う事

4-3-4.Student Innovation College を通して不満に思った事

4-3-5.アイディアを出す上で重視した事は何か

4-3-6.アンケートまとめ

4-4.体験、インタビュー、アンケートから読み取れる Student Innvation College における特異点、可能性、

限界

4-4-1.Student Innovation College の特異点

4-4-2.Student Innovation College の可能性

4-4-3.Student Innovation College の限界

4-4-4.Student Innovation College で考えるべきこれから

5.まとめ

5-1.消費者参加型商品企画の限界と可能性について

5-2.学生のとるべき道

5-3.今後課題

1.はじめに

私が今回、論文のテーマとして考えたものは、Student Innovation College という消費者参加型商品開

発コンテストにおいて、その可能性と限界及び、学生が取るべき行動についてである。先行研究、事例研究

で詳しく述べるが、消費者参加型商品開発は、その名の通り、企業の商品開発において、消費者が参加する

事により、企業が生み出す物をより消費者のニーズに合わせていったり、消費者の声をヒントに新しい商品

を開発して行く事にある。

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Student Innovation College では、学生が企業のこのような商品が欲しい。という大まかな要望に対し

て、自分たちのアイディアをプレゼンし、企業に採用された物が実際に商品化の権利を獲得できると言った

形式の物になっている。一般的な消費者参加型企画と比較してもその様式が違う事が特徴であるが、その特

徴がどのように生きるのか。その可能性と限界を知っていく事がこの論文の目的である。

また、Student Innovation College では学生が賞を取り、商品化するために摂るべき行動があるのか。

という事がもう一つの論点である。このコンペティションに参加、運営と関わっていく上で学生がどのよう

な行動をとれば、Student Innovation College においてその本来の目的を達成されさらに商品化という道

をたどる事が出来るのか。その道しるべを少しでも書いていけたらばと思う。

そこで、一般的な消費者参加型商品開発の可能性と限界を探り、どのようなメリット、デメリットが企業

と参加消費者(学生)にあるのかを考えてみる。そして、筆者が実体験と調査から得られた Student

Innovation College の可能性と限界に照らし合わせて考えてみて、これからの Student Innovation

College においての可能性と限界、課題を考えてみて、そこから学生が Student Innovation College で取

るべき行動を述べて行けるようにして行きたい。

消費者参加型商品開発についてであるが、近年、インターネットのユーザー数が増え、さらに企業もイン

ターネット上にホームページを持つことが一般的になりこれまでよりも消費者と企業がコミュニケーション

を取る機会が増加している(清水(2002)272 頁)。インターネットを用いて、消費者の声を参考に商品を開

発するという事例が生まれているのである。

今までは、企業が出した製品の中から、自分の好みやニーズに合わせて商品を選択し購買をするというス

タイルが、消費者が自らのニーズを直接企業に主張できるようになった事により、その意見を反映した商品

開発を行う企業が増え、消費者が本当に求める製品を購買できるようになったという訳である。

このようにインターネットの機能により、消費者と企業の新しい関わりが生まれて、新しい製品開発がさ

れるようになったという。企業が消費者の声を聞く事には、様々なメリットがある。今までは、販売店や調

査会社を通して間接的に顧客の意見を調べていたが、インターネットにより、それが直接的に、より早く、

より詳細に知れるようになった事などがメリットの例としてあげられる(清水(2002)273 頁)。

このようなスタイルをー消費者がインターネット上で発信する情報を実際に製品化させるービジネスとし

て行う会社がある。それが、エレファントデザイン社の運営するサイト空想生活である。先行研究としてこ

の空想生活における具体例を挙げた上で、一般的な消費者参加型商品開発の基本を学び、その課題や限界と

可能性学びたい。

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また、もう一つ先行研究として良品計画における消費者参加の商品開発における研究を行いたい。前者で

は消費者参加型商品企画の方法や過程を詳しく調べ、消費者と企業においてのそれぞれの課題等を見つけ出

していく。後者では、実際に店頭で販売された商品の販売数や消費者が関わった商品とそうではない商品を

比較したデータを取り上げて消費者参加商品企画の有用性について触れていきたいそして事例分析において

Student Innovation College について学び、その可能性と限界を先行研究から得られた物と照らし合わせ

て課題、可能性、限界を探し出しこれからの学生の取るべき道を探って行きたい。

2.先行研究

2-1. 空想生活について

「空想生活」は「エレファントデザイン株式会社」が運営するサイトである。消費者参加型商品開発をサ

イト上で実際にビジネスとして行っている。「空想生活」ではサイト上に消費者主体のコミュニティが形成

され、そこから作られる「ほしいもの」の企画を製品化につなげる事を行っている(清水(2002)273 頁)。

「空想生活」には「CUUSOO システム」という「エレファントデザイン社」が構築したシステムがある。

これは DTO ビジネス(コンシューマ向け工業製品を注文生産で製造するビジネスモデル)にとって不可欠な

技術インフラを提供する事を目的に開発された。

「CUUSOO システム」における製品化プロセスは以下六段階に整理できる(清水(2002)275−277 頁)。

1、提案受付→デザイナーから受付、一般から要望書き込み、著名人が発案

2、デザイン、CG 作成→デザインコンセプトをサイト上に公表し、投票を受け付ける

さらに自由な意見をサイトに書き込んでもらう

3、メーカー関連→投票数が最低ロット数に対してある程度になったらメーカーを検討、

交渉し概算見積もり、試作品制作を行う

4、販社契約関連→販社を決定 契約凍結 最終的な仕様と価格を決定

5、発注、生産→投票数がロット数に到達したら正式な予約を受け付ける。その後、

メーカーに発注、生産が行われる

6、手元に届く→発送され製品化達成となる。

このプロセスの中で大きなドライビングフォースになるのが、2、の段階における消費者の参加である。

投票数が多くなければ生産は無いし BBS の意見交換で出る様々なアイディアがアイテムの最終仕様に大きく

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反映されるからである。ここに消費者参加型商品開発の特性が見て取れると共に、「空想生活」の大きな流

れをつかむ事が出来る。

2-2.INSIPID PHONE の事例

「空想生活」において消費者の「ほしい」気持ちの参加が、どのようなプロセスを経て製品化されて行く

のか、過去に進行していた「INSIPID PHONE」という電話機の開発ケースを取り上げてみる(清水(2002)277

頁)。

「INSIPID PHONE」はグラフィックデザイナーから提案された電話機である。コンセプトとして、「SOHO

のオフィス部分とプライベート部分の電話をすべて超シンプルな物でそろえたい。かける、受ける、留守電、

転送のみで飽きのこないもの」が挙げられた(清水(2002)278 頁)。

この提案がサイト上で公開されると、気に入った消費者が、BBS に書き込みを始めた。

その書き込みの中では、デザインに対する賞賛や、ほしいという声、もっとこういった機能があった方が良

い。という要望など様々な意見が表れた。この一連の製品化プロセスが進むなかで、次第に「INSIPID

PHONE」に関するコミュニティが形成されてきた(清水(2002)278 頁)。

清水(2002)によると、それは次のような参加者の発言や行動から観察する事が出来た(280 頁)。まず、生

産チームが活動を本格的に開始して以降、BBS での発言数が増加し、また誰かの発言に対する返信の数も増

えているという事だ。発言の内容も、それまではデザイン案を見ての感想や仕様に関する要望が多かったの

だが、これ以降はそうした発言を起点にしたやり取りが行われるケースが増えたのである。ここの BBS には

エレファントデザインの担当者も会話に参加していて、生産チーム側の情報を伝達したりする頻度も同時に

増えていった。つまり BBS が単なる要望書き込みコーナーではなく、それに対する他の参加者の反応が増加

し、参加者同士でのコミュニケーションが増え、関係性が形成されて行く場所になっていったということで

あった(清水(2002)280-281 頁)。

そうすると、製品化の作業そのものに消費者が関わる度合いが大きくなるという事も観察されるようにな

る(清水(2002)281 頁)。発言の内容が商品に対する要望にとどまらず、具体的な解決策についてのアイディ

アを出したりするなど、積極的に開発プロセスを進行させる事に関与しようとする動きが出て来たのであっ

た。このような関与から製品開発活動において焦点を当てるべき製品属性についての問題を、消費者の方か

らエレファントデザイン側に積極的に提起したという事が分かる。

こうした行動によって製品化を実現化させたいという共通の関心の元で多くのコミュニケーションが行わ

れた(清水(2002)282 頁)。もちろん、すべての参加者の意見が同じ方向の物である訳ではなく、時には言い

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争いのような物も生まれた。その際には参加者から BBS のあり方について問題提起がなされたりもした。こ

のように、そこには単に製品の作り手が消費者の意見を集めるための BBS とは異なる、コミュニティと呼ぶ

べきものが形成されていたのだと考えられる(清水(2002)283 頁)。

2-3.消費者参加型商品開発における参加者の価値

このように、「INSIPID PHONE」製品化プロセスの進行は関心の高い参加者によるコミュニティ形成を伴

っていたが、この事は消費者、及びエレファントデザインにとってどのような意味があるのか。

清水(2002)によると、まずは消費者にとっての価値であるが、コミュニティが形成されていき、そこに参

画することで自ら製品開発に関わっているのだと実感できることは大きな価値となるようだ。もちろん、最

終的にこの製品化プロセスが完結し「ほしいもの」を購入することが、消費者のそもそもの目的である。し

かし、そこに至るまでのプロセスに関わった末にその製品を手にすれば、ただ単にその商品を店頭・サイト

上で見つけ購入した場合よりも大きな物になると考えられる。この差が参加者にとってこのコミュニティの

一員になったことによって得られる価値だと言えるのではないかと考えられる(284-285 頁)。

そしてこのことは、エレファントデザインにとっても大きな価値がある。最終の購入予約に至る手前のこ

のプロセスのねらいは「話を進める中で顧客をファンにしていく」ことにあると考えられている。この製品

化プロセスがそれ自体に価値を感じるようなコミュニティ参加者が現れる仕組みであるという点が大きなエ

レファントデザインの強みとなっている。開発途中の製品の企画内容やそこに寄せられる消費者の声などは、

事実上誰でも見ることが出来るので、例えば他のメーカーがそれを閲覧して情報をただで手に入れたり、あ

るいは先に商品化してしまうという可能性がある。しかし、コミュニティの参加者がその製品に見いだして

いる魅力は、純粋に製品の機能やデザインの優れた面だけではなく、自分がその製品に携わっていたという

ことによる価値も大きい。その貴重な体験を他のメーカーが販売した商品から求めることはほとんど不可能

であり、エレファントデザインだけが参加社に提供できる価値である(清水(2002)285 頁)。

このサイトではいくつかのルールを前提とした製品化プロセスがあらかじめ用意されている。したがって

参加者がルールを受容した上で、製品化プロセスにかかわっていくということになるのだ。このようにして

コミュニティ参加者による共同作業として製品開発活動を進められることはエレファントデザインにとって

も価値があると考えられる(清水(2002)286 頁)。

2-4.消費者参加型商品開発における課題

参加者、エレファントデザインに価値を提供する一方で課題も存在する。

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コミュニティが大きくなるにつれて製品の仕様やデザインに対する要望が多岐にわたってしまうという点が

第一に挙げられる(清水(2002)286 頁)。それらの要望をすべて叶えるのは困難である。その際にどのような

基準でデザインや仕様に関して採用していくかが課題である。また、そのルールを参加者が受容出来るよう

に設定しなくてはならないのも課題の一つである(清水(2002)287 頁)。

次に、製品化プロセスにおいてある程度の要望や意見を聞いた上でメーカーとの交渉に入ることが挙げら

れる。メーカーとの交渉は後の方の段階になり、その交渉のなかでメーカー側の都合や、守らなくてはなら

ない項目の発生により製品化プロセスの壁となり始める。つまり、挙げられた要望が製造現場サイドの都合

などにより後から問題が浮き彫りになってしまうという事が起きてしまう。生産台数や、コスト面の問題等

が出てくる事により、仕様に制限が出てしまい新しい仕様を再び決定しなくてはならなくなったり、最悪の

場合仕様の全面見直しに踏み切るという事も提案されたりと、後から課題が発生してしまうという事が見ら

れた(清水(2002)288 頁)。

またメーカー側のコスト面の問題や製造ノウハウについて BBS にかいて参加者に伝える事も、ネット上で

誰でも見られるサイトだからこそ述べる事が出来ず、メーカー側の人間に直接 BBS に参加してもらうにもそ

れもなかなか実現せずと、参加者の意見、メーカーとの交渉内容、エレファントデザインの方針のなかで板

挟みにあってしまうという課題がある(清水(2002)289-290 頁)。

2-5.消費者参加型商品開発における可能性と限界

以上のように、消費者参加型商品開発には様々な価値と課題がある事が分かった。この消費者への価値は

可能性を、課題は限界をそれぞれ示唆しているように思われる。

可能性としては、消費者が欲しいと思える物を、つまり販売すれば購買に繋がる可能性がとても高い物を

企業が開発できるという事が挙げられる。今までに市場には無かったような商品を消費者と一緒になり作っ

ていく事でお互いがより良い満足感を得られるという事に消費者参加型商品開発の可能性が見て取れる。

限界としては、多くの要望を一つ一つは形にする事は出来ず意見要望を取捨選択していかなければならな

い事にある。また、消費者の要望が企業側の利益やコストを考えた時に実現不可能な物であったら、製品化

には繋がらない。それに、消費者は詳しいコストや生産ノウハウを知らないので話の進め方や、現実的な要

望の提案が必ずしも出来ないという点で企業との隔たりが生まれてしまう事、逆の立場で言えば、企業側が

生産ノウハウやコストを消費者にはインターネット上では情報漏洩の観点から伝えられない事にも消費者参

加型商品開発の限界を感じるのである。

2-6.良品計画について

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もうひとつの事例分析として、良品計画の案を考えてみたい。良品計画は無印良品のブランド名で商品・

店舗展開している専門店である(小川、西川(2006)55 頁)。こちらの事例では空想生活と同様に消費者参加

型製品開発において、その方法が従来の TD 法と比較した結果において販売成果がより高い物になるのかと

いう点において論じる。

目的としては、UD 法と TD 法で開発された製品の販売成果を体系的に収集したデータを比較する事により

UD 法がもつ潜在力について正確な理解をする事が挙げられる (小川、西川(2006)49 頁)。

UD 法は 2-1 で述べたエレファントデザインの開発の流れと同じ物なので説明は割愛する。TD 法はマーケテ

ィングの教科書で取り上げられるような伝統的な手法で、メーカーが新製品に関するニーズを感じ取りそれ

を充たす製品を開発し市場化するものである (小川、西川(2006)55 頁)。

ここで、UD 法が TD 法と比較するうえで二つの問いがあがった。一つ目はユーザーが本当に新規性や独自

性の高い製品を開発できるのかということ。二つ目は開発された製品が市場で大きな販売実績を挙げる事が

可能なのか。という問いである。一つ目の問いに関しては、UD 法ではそもそも市場で目にする事が出来な

い商品を入手するために消費者が開発の提示を行うため商品化された製品の新規性や独自性が高い事は当然

の結果として述べる事が出来る。二つ目の問いに対しての研究として今回は良品計画の事例が採用されてい

る (小川、西川(2006)54-55 頁)。その理由として

1、良品計画が 2002 年9月から 2003 年 12 月までの期間で UD 法による製品開発プロジェクトを行った。

2、補完的資源が必要であるが①生産ノウハウと生産受け入れメーカーとのネットワーク②開発された製品

を販売する巨大な自店舗網③開発主体が展開するブランドに対する大規模な消費コミュニティが存在する。

という点においてそれが備わっていた。

3、①ユーザーの会員登録②投票制度を通じた ROM の RAM 化③開発過程の積極的開示④実店頭購入者を主要

ターゲットとする商品企画⑤開発過程の計画化⑥先行予約者に対するインセンティブの提供を行う事により

完成度の高い UD 法の実施を行ったという点がある (小川、西川(2006)55 頁)。

良品計画において UD 法と TD 法で開発された商品の販売成果を比較するにあたっての基準は以下の通りであ

る。

1、UD 法を使い開発され、市場化された商品を特定。次にそれと比較可能な TD 法によって開発された商品

を特定

2、TD 法で開発された商品のうち、UD 法で開発された各製品と同じ販売分野で、かつ販売開始が比較対象

となる UD 法の製品の販売開発時の前後半年以内。

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3、比較のペアとなった製品間での開発担当者に能力差がない事を確認

以上の基準のもと、UD 法3個、TD 法 10 個の合計 13 個のサンプルが挙った。そのサンプルにおいて、初年

度売上額と販売終了時期に関する販売データを収集し比較を行った。その結果、UD 法は TD 法より最低でも

2.7 倍の売上成果を実現した (小川、西川(2006)58 頁)。販売期間についても TD 法で開発された製品が 7割

販売中止になったのに対して、UD 法で開発された製品は販売が継続され、累積販売額を増やしていた。な

かには良品計画の生活雑貨部門全体のなかで売上高 5位となる商品もあった (小川、西川(2006)58 頁)。

この研究結果から、UD法が新規性や独自性が高いものを生み出していただけでなく、売上の点でも TD 法

の少なくとも 2.7 倍の売上額を上げていたということが言える。さらに製品寿命についても UD 法によって

開発された製品の寿命は TD 法によって開発された商品のそれよりも長い傾向を示していた。つまり、UD法

は TD 法に比較して販売額も商品寿命でも高い成果を達成していたのである (小川、西川(2006)59 頁)。

2-7.良品計画における課題、可能性、限界

2-6 では UD 法、つまり消費者参加型商品企画におけて販売された商品が従来の TD 法によって開発された

製品よりも販売成果が高かった事が証明されたが、問題点が存在している。まず一つ目はサンプル数が少な

いということである。これはあくまで良品計画という一企業の数多くある中での一握りの商品の中の比較と

してのデータであり、確証が持てるとは明示できない。また、開発担当者の思い入れ、当該製品が「消費者

参加型で開発された」というメッセージそれ自体などが開発成果に影響を与えた可能性がある (小川、西川

(2006)59 頁)。これによりメッセージ効果やプロモーション効果を上げる事が出来る。

しかしプロモーションについても製品販売開始後は特別行われていないし、その効果が 1年を超えて持続

しているとは考えにくい。よってこの問題は可能性としてあるだけで大きく取り上げる必要は無いと考えら

れる (小川、西川(2006)59 頁)。

そして今回は市場化されなかった製品を分析に含んではいない。もしかすると TD 法では販売化計画上の

理由で市場化すべきでないものを市場化してしまったかもしれない。その結果販売成果が低くなってしまっ

たかもしれない 。さらに当初の企画案のうちどの程度の割合で製品が実際に市場化されることになるのか、

その数に UD 法と TD 法の差はあるのか。本研究では明らかににしていないという問題点が挙げられる (小川、

西川(2006)59 頁)。なので、このデータでは問題点の存在により 2-6 における内容に確証が得られないが、

UD 法が TD 法と比較して高い販売成果を実現する製品開発手法の一つであると考えるのに無理は無いのでは

ないかという事が言える。

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そこで考えられる可能性と限界を探りたい。まず可能性においてであるが、この事例を見る限り市場にあ

る程度の知名度と販売網、製造ノウハウがある企業にとって UD 法には従来の企画方式よりも高い販売成果

を上げる可能性が示唆されているので、消費者の意見がより良い製品の実現に繋がり、さらに企業の利益の

増加をもたらしているという点で、消費者参加型商品企画にはその利点が多く存在し、これからの更なる発

展が伸びるという事が挙げられる。つまり、より多くの消費者から挙げられた企画案が商品化される機会が

多くなり人々のニーズが文字通り形になる可能性が増えるのである。企業としても消費者のニーズを探り、

新しい商品のアイディアを得られるという事、これからのヒット商品を作り出せる可能性が眠っているとい

う点で UD 法は一つの企業発展の可能性として挙げられる。限界であるが、この事例においては過程の研究

が深く出来ていなかったのであまり挙げる事が出来ない。ただやはり、サンプル数が少ないという事におい

て、この方法が持つ可能性を確証させる事が出来ない事、製品化された商品も少ないという事が、企業がリ

スク回避のために摂らざるを得ない結果として、限界と言い表されるのかもしれない。

2-8.先行研究まとめ

二つの消費者参加型商品企画の事例を先行研究で扱った。二つの大きな違いは空想生活は手法それ自体を

ビジネスとしていて、ある程度の目処が立ってからメーカーに発注するシステムである。対して良品計画は、

自分たちで生産ノウハウと生産受け入れメーカーとのネットワーク、開発された製品を販売する巨大な自店

舗網、開発主体が展開するブランドに対する大規模な消費コミュニティが存在する。つまりやっている内容

は同じでもそもそも二つの研究では企業のバックグラウンドが大きく異なるのである。しかしその二つの企

業における大きな差異の中で、消費者参加型商品企画における可能性と限界は共通してみられる事が出来た。

まず一つ目にやはり、消費者の要望が商品として形になるのが挙げられる。二つの事例も失敗したという

例があるが、市場に新しい商品が消費者のニーズに乗っ取って送り出されるという点でこの手法にはこれか

らも進歩していく可能性が多いにある。消費者が自ら欲する商品を手にする可能性が増える、企業も自分た

ちでは考えつかなかった企画を消費者の無料同然の情報から得る事が出来て、商品を企画出来るという点で、

この手法は両者に取ってメリットとなるのだ。そして良品計画の事例からも分かる通り、従来の手法よりも

販売実績が高くなる可能性があるというのもメリットの一つだ。空想生活の事例では過程の中でファンを増

やしつつ販売数も最低の物を把握できるようなシステムは生産においてのロスの発生の阻止などにも繋がる

ので、企業としてもリスクが少なく販売をする事が出来るという可能性が挙げられる。

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このような消費者、企業に取ってのメリットがある一方で課題もある。限界とも言い表せるが、やはり消

費者のすべての要望には応えられないという事だ。多くの要望が寄せられても、そのすべてを実現する事は

不可能であり、一つの商品に対する多くの消費者の要望をまとめる事も容易ではない。また、基本的にネッ

トを通しての消費者とのコミュニケーションになるので、どこか他社に情報が流されたり、奪い取られてし

まうという可能性もある。消費者の要望を形にするまでに時間がかかってしまい、空想生活においてはメー

カーに対しての発注なども含めて企画から販売に至るまでのプロセスの中で不確実さがこの手法の弱点であ

る。

そして消費者は、詳しい生産ノウハウや技術、コスト等を把握してはいないので、要望に要望が重なり、

物事が実現しないという可能性も大いにある。そして良品計画の事例でもあったが、この手法において販売

された商品というのは少ないという事がこの研究の結果である。過去に多く実績があり、販売数も販売会社

も多くなればそのぶん後追い企業もこの手法を使用していくだろう。しかし、すべての企画に言える事では

あるが、この UD 法においての成功事例が少ないと言うのが、これからのこの手法の限界になり得ないので

ある。つまり消費者の要望をすべて答えられない、生産段階において企業、消費者双方に不確定要素が存在

するのがこの手法の課題であり限界である。

さて、消費者参加型商品企画における可能性と限界を知る事が出来た。これを筆者が経験した消費者参加

型商品企画コンテスト、Student Innovation College の中では同じ事が言えるのだろうか。そして Student

Innovation College の特異性は見られるのか。そういった事を事例研究では探していき、可能性と限界を

知った上で学生が取るべき行動や企業において改善すべき点等があるか分析していく。

3.事例分析

3-1 Student Innovation College とは

私が題材にあげる「Student Innovation Coolege」について、まず説明する。「Student Innovation

College」通称「Sカレ」は、様々な大学から参加者を募るインターカレッジ形式で行われ、チームに分か

れて新商品開発のコンペティションを行う企画である。

2006 年から 2012 年の現在に至るまで1年に一度開催されている。実際に企業からこのような商品を提案

してほしいという大枠の依頼をいただき、その大きな条件の中から、各大学が競い、部門の中で優勝を目指

すというものだ。部門優勝のチームには、実際に各企業から商品化の権利が与えられる。期間は約半年間に

渡り行われ、インターネット上でそれぞれのチームが企画内容をアップして、ネットユーザーの方々と意見

交換をし、アイディアをブラッシュアップしていき、ユーザーからの投票数を集めると共に企業の方々を前

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にプレゼンし評価をいただき、その部門で優勝すれば、企業の方と製品化の話合いを行い、ネット上で試作

品をもとに予約を集めて、商品化を目指すといった内容になっている(「空想生活」)。

3-2. Student Innovation College の特徴

他のビジネスコンテストと違い、Student Innovation College における特徴は、大学は違えど、志を同

じに持つ若者が集い、仲間同士で協力し、お互いに切磋琢磨しながら商品企画プロセスとそのマネジメント

を体験できる事にある。その企画をウェブ上で提案し、ネットユーザーの前で発表し、最終的には現実の市

場でその企画を問う。ここが他のものと異なる特徴であると考えられる。学生が、実際のユーザーと対話し

ながら、商品企画を進めるという実践的なマーケティングを学ぶ機会を提供していて、さらに、他の大学の

学生の成果をみながらリアルタイムに競争するという場も他に例をみないものとなっている。このように、

長い期間を通して、他の大学の学生、ネットユーザー、未来の実際のユーザー候補とコミュニケーションを

とり、実践的な体験を通して成長していく場を提供し、その結果として商品化の権利が与えられるという点

で、他のビジネスコンテストにはない成長と体験を得る事が最大の特徴だと考えらる(「流通科学大学

/Student Innovation College −S カレー」)。

3-3. Student Innovation College の目的

Student Innovation College の目的は、未来のマーケターの育成にある。Student Innovation College

は教室でマーケティングを学ぶ学生たちが「ビジネス・モノづくり・発想力」をリアルな現場で学ぶ事を提

供し、商品化にチャレンジする事が出来るプロジェクトとなっている。その実践的な体験の中で、学生に対

して、マーケティングや新製品企画、プレゼンテーションについての深い学習を修める機会を与え、上記の

目的の達成に寄与している(「流通科学大学/Student Innovation College −S カレー」)。

3-4.論文目的「Student Innovation College の限界及び、可能性を探り、学生の取るべき道を示唆す

る」

この論文の目的は「Student Innovation College の限界及び、可能性を探り、学生の取るべき道を示唆

する」事である。一般的な消費者参加型商品企画と student Innovation College の共通点や差異を経験と

アンケート等から探し出し、その中で学生は Student Innovation College に参加し活動するべきかを示唆

していく事が本論文で行いたい事だ。なので以下事例研究で取り扱った Student Innovation College の事

例分析を行い、その限界と可能性、共通点、差異を探していく。

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4.事例分析

4-1.自らの経験からみる Student Innovation college

私自身は、2011 年度の Student Innovation College にプレイヤーとして参加し、さらに 2012 年度にお

いては、Student Innovation College 運営学生委員として参加している。この二つの視点の違う体験から、

まず私がプレイヤーとして参加した際に強く思った事は、実際に商品を本格的な形で企画するのはなんと難

しいかということである。座学で学んでいた事は役には立ったが、それでも、それだけでは補いきれない事

を行える貴重な経験の場であったと思える。商品のコンセプトをチームで考える、プロトタイプを作成する、

ターゲットやセグメンテーション、商品の大まかな価格設定など、実際に企画する事により真剣に考える事

が出来たと思う。そういった点で Student Innovation College は、その目的として書かれている通り、実

体験する事により、深い知識を私たちに与えてくれた。

そして、これは私自身の考えであるが、Student Innovation College というものは、企業が、その会社

の中で生み出す事の出来ないような柔軟な発想を学生のアイディアに求めていると考えてた。なので、自ず

と自分たちの考えに則り、自分たちがいいと思える企画を考えるようにした。そうする事によって、自分た

ちにより力がつくと考えたのに加え、企業の考えられないような物を作っているのかもしれないというモチ

ベーションも持つ事が出来、より Student Innovation College に力を入れる事が出来たからである。

さらに、Student Innovation College の良い点は、要所要所で企業から企画に対するフィードバックを

頂ける事で合う。2011 年度はその機会はとても少なく、本番で最後に言われるだけの物であったので、と

ても不満が残ったが、企業が実際にどのような点を重視しているのか、その妨げとなるような物は何なのか。

座学では学べない、実際の企業の声を聞けた事はとても良かった。

そのような経験を通して、参加した時に思った Student Innovation College の良かった点は、他の大学、

同じ大学の同世代の人たちと切磋琢磨する中で、教授や企業の人たちからリアルな意見を聞きながら実践的

なマーケティングに取り組めた事である。最初にも書いた通り、座学では学べない事を、様々なリアルを通

して学べた事、これは大学時代の活動において他のどれよりもすばらしく将来的にも役立つ事だと確信して

いる。

しかし、その中でもちろん不満に思った事もある。私自身としては Student Innovation College2011 で

は、企業の声を聞く機会があまりにも少なかった事だ。後述するが、Student Innovation College2012 で

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は改善されたのではあるが、私が参加した年は、開会式と閉会式の本番プレゼンテーションのフィードバッ

クでしか企業の声を聞く事が出来なかった。もちろん、自分たちの活動としては、知識もついて、実体験を

通して本来の目的であるマーケティングを学ぶという事は達成されたが、もう一つの学生の目標である賞を

取ると言った点で不満が残ったのである。

賞を決めるのはもちろん企業側である。企業がどのような商品を求めているのか、ニーズをどこに置いて

いるのか。そういった事が過程の中で分かっていればより賞に近づける商品がプレゼンできるのではないか。

また、最低限の情報を得ていれば、例えばコストはどの程度で、こういった技術は外注するので難しいなど

の情報があればそもそも可能性の無いプレゼンは行わなかっただろう。もちろん私自身は賞を取るのは過程

の中でつけていった知識の結果としてついてくれば幸運だと思っていたので、知識をつけられた事だけでも

良いと思っているのだが、賞を取る事を目的としている人たちも大勢いるので、そういった情報の共有が少

なかったという点で不満は残る。

そしてもう一つの不満点は判断基準が曖昧だという事である。各テーマ賞も企業賞もその企業の好みと、

実際に商品化するにあたり障害がより少なく実現性の高い物を求めていると感じた。さらに賞を取っても実

際に商品化されないという話もあるので、企業の姿勢によって学生のモチベーションにも影響が出てしまう

という訳である。投票方式もあまり意味をなさず、本当の意味で欲しいと思える人間がどれほどいるのかと

いうのも分からないので、各賞の判断基準や Student Innovation College のサイト上の投票方式など、変

更すべき点は少なからずあるのではないかと参加時の私は感じた。

そして、student Innovation College2012 では運営側として活動を行った。こちらは参加学生のサポー

トや、学生と企業の間の役割、会場の設置等の裏方の仕事が多かったが、学生とともに半年間 Student

Innovation College を行った。参加時と違い、自分たちの役割が参加学生がより良い環境で出来るために

はどのような改善点があるかなどを話し合い、より良い環境づくりに励んだ。やはり 2011 では企業とのコ

ミュニケーションが足りなかったという改善点があったので、Student Innovation College2012 では担当

の先生をはじめ学生委員からも改善案が出てきた。その中で、大きく変わった事は、開会式のプレゼン、各

テーマによるが夏休みを利用したプレゼン、Facebook 上での質問のやり取り、そして閉会式でのプレゼン

でと多くのコミュニケーションの機会が設けられた。それにより、様々な疑問が解消され企業がどのような

物を求めているかなどがより分かるようになり、参加学生にとってもとても良い事だったと感じた。

運営側に回っての仕事は担当テーマのプレゼンの事前チェック等もあったのだが、どのチームもしっかり

としたアイディアを作り上げていて面白い、まさに学生ならではの提案をしっかりと企業のニーズに沿って

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提案していたのでこのコミュニケーションの機会の増加は大成功だったと思う。しかし、ここでひとつ懸念

しなければならないのは、最低限のニーズが分かれば良いが、より深い部分の制限やニーズを感じ取ってし

まうと、その方向でしか企画が出来なくなり、柔軟な発想が失われてしまうのではないかと言う事である。

もちろん深い部分とは、企業がここまでの商品なら商品化は可能だが、このような技術を使うような商品

は開発が難しい。値段設定も原価や人件費、開発費などを考えるようにと特に出てこなさそうな注文ではあ

るが、学生としては後にそのような制限で商品化が出来ないぐらいなら先に知っておいた方がましなのかも

しれない。これは、賞に近づける代わりに本来の目的である柔軟な学生ならではの発想を求める企業にとっ

ても、過程を通して試行錯誤し、その中で知識をつけていく学生にとっても難しい問題だと考えられる。

このバランスの問題、どこまで企業は学生に情報を提示すべきなのか。これは運営側になってみて感じた

課題点である。さらに企業によっては、そのテーマにおいての商品案が飽和状態となってしまい新しい商品

開発が出来ないのではないか。または、担当者が変わったという事例も耳に挟んだので、一過性が取る事が

出来ず途中で商品化が頓挫してしまうというケースも報告された。このように企業側の姿勢に対して少し疑

問が浮かんだのは学生委員として運営に回ってみてからだ。もちろん、Student Innovation College の運

営はそのような協賛企業の協力無くしては成り立たないので、仕方ないのではあるが、学生と企業がどちら

もより良い結果を得られるために学生は今まで以上に、そして企業もその願いを叶えてあげられるように努

力すべきである。というのが運営として思った事である。

ここまでは私自身の意見である。それが正しいとはとても言えないので、Student Innovation College

を発案し運営に多大な尽力をなさってくださっている先生方、参加し共に活動した学生にインタビューとア

ンケートを行った。その中で、私の意見と照らし合わせて、Student Innovation College の可能性と限界

を探っていきたい。

4-2.Student innovation College 発案者に対するインタビュー

まず始めに、Student Inovation College 発案者の 1人で現在も運営に関わってくれている先生方にイン

タビューを行った。この目的は、先生方はどのような視線で Student Innovation College を見ているのか

を知る事にある。その中に課題が見つかるかどうか探ってみた。以下回答である。

尚、インタビューは 2012 年 11 月 25 日法政大学西川英彦教授、2013 年 1 月 19 日流通科学大学清水信年教

授に実施

4-2-1.Student Innovation College を始めた目的

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清水、西川両教授によると、もともとは、立命館大学のゼミと流通科学大学のゼミとの対抗ゼミ活動とし

て始められたものである。そこから、関心を持った他の先生にも参加してもらう形で、どんどん参加人数の

規模が大きくなって言ったとの事だ。協力してもらう企業の方々にとっても、さまざまな大学生が参加して

いることがより望ましいのでは、と清水先生は考えていた。

4-2-2.学生に Student Innovation College で取ってほしい行動

これを経験したからといって、社会に出てすぐ商品企画のプロになれるというわけではない。しかし、商

品企画の作業には、問題発見、調査、分析、問題解決方法の提案、その表現、といった一連の作業がふくま

れる。また、それらの作業を個人で行なうのではなくチームで協力しながら進めていくのである。こうした

ことが、まさに社会に出て求められる作業である。通常の講義のように、先生の話を聞いて何かを学ぶ、と

いう受け身の態度ではなく、自分で問題解決をしてゆく、そのために自分に不足している能力があることに

気づけば勉強する、という能動的な考え方をもってもらうことが大事だ。という考えが述べられていた。

4-2-3.Student Innovation College の一番の特徴

何より、大学でマーケティングを学ぶ学生が行なっている活動、という点であるとの事だ。それは良い

面・悪い面の両方があって、いわゆる“大学生ならでは”の観点に“学んだマーケティングの応用”という

ことが加わって独特の企画が出てくる可能性がある、という良い面もあるが、逆に“自分自身の問題意識や

関心にもとづいていない”というデメリットもあると考えられている。

4-2-4.Student Innovation College における企業の課題

ご協力いただいている企業に対して望むこと、という意味で捉えると、現状は、どの企業にもSカレの主

旨をご理解いただき、長期でご協力をいただいているので、特に「課題」として挙げるようなことは感じて

いないとの事である。

4-2-5. Student Innovation College の可能性と限界

清水教授によると現在の運営の仕方(参加教員や学生委員がボランタリーで運営している)では、現在の

規模の運営が限界だろうと考えているようだ(すでに限界を超えているのかもしれないが)。また、無料で

使える施設(大学の施設)を使うという点では、参加人数も現在の規模が限界であるようだ。

4-2-6.インタビューまとめ

まとめとしては、先生方としては、しっかりと Student Innovation College の目的がなされていて、学

生達が行うと言った他の物と違う特異性を有している点で、この活動にはとてもメリットがあるという事が

分かる。学生ならではアイディアという物に、メリットでメリット双方あるが、そこを活動を通して補って

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いくのがこの活動の本来の目的だと考えられるので良いと感じられた。運営においては当初のゼミ対抗の物

が、ここまでの大きさになっているという点で運営に関する限界が見えた。これは学生としては見えなかっ

た視点なのでとても参考になった。運営する側でもさらに企業との交渉や学生委員をまとめている先生方な

らではの意見だと感じた。

4-3.Student Innovtion college 参加者に対するアンケート

参加者に対するアンケートでは私自身が感じた事は皆がどのように感じていたのか。また、私が感じ取れ

なかった良い点、課題点は存在するのか。その点を学生視点から探していくのが目的である。回答の中で挙

げられたものの中で同じような意見、自分が感じ取れなかった事を箇条書きで挙げていく。

尚、アンケートは 2013 年 1 月 7日首都大学東京学生 30 名を対象に実施

4-3-1.Student Innovation College の目的を知っているか

・参加学生の商品開発能力を育む

・学生ならではの新しい発想から商品を生み出す

・学生がマーケティングを実践的な場所で学ぶ

・本で学ぶマーケティングとは違うリアルな商品開発を学び、体験する

・学術的に学んだマーケティング論を実践してみて上手くいく事、いかない事を感じる

・未来のマーケッターを育てる

4-3-2.何を目的にこの活動を行ったか

・賞を取るため

・「あったらいいな」と多くの人に思ってもらえるような製品を企画する

・商品開発の過程を学ぶ

・マーケティングの勉強

・チームワークを磨く事

・就職活動のネタとして

4-3-3.Student Innovation College を通して成長できたと思う事

・消費者と企業側の両方の視点から、商品という物を客観的に見る事が出来るようになった

・グループ活動をする上で役割分担等の重要性を学んだ

・自分と違う意見を聞き入れる姿勢が生まれた

・プレゼンテーション能力

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・消費者の目線になる大切さ

・自分一人では良いアイディアや商品を作る事は出来ないという事を学んだ

・競い合う中でよりよい物を目指していく気持ちが出た事

・企画、作成、発表と1から10まで自分たちでやりきる力がついた事

4-3-4.Student Innovation College を通して不満に思った事

・投票方式が適当

・企業の話を聞く機会が少ない

・テーマによっては制約が多く自由な製品企画が出来ない

・企業の審査基準がはっきりとしていない

・テーマによっては商品内容より、発表での印象が賞の行方を左右したと感じた事

・ネット上のページ作成や商品開発において、Student Innovation College にはある程度の形式があり、

結局は学生の独自性が尊重されているのか疑問に感じた

4-3-5.アイディアを出す上で重視した事は何か

・競合商品とのポジショニング

・ひらめき

・一つのアイディアに捕われない事

・消費者のニーズの合っているか

・アイディアを切り捨てず議論する事

・コンセプトに沿っているかどうか

・企業のニーズに沿っているか

・機能性とデザイン生をどちらも高めるのは難しいと感じたのでどちらかに特化させる

4-3-6.アンケートまとめ

アンケートのまとめとして考えれることは、参加学生は少なくとも Student Innovation College の本来

の目的を知った上で、それぞれの目的の元に活動しているという事だ。その中でもチームワークを大事にす

るという意見が目立ち、やはり実践的なマーケティングや商品企画は 1人では到底出来ないと感じているよ

うだ。成長できた事も多岐に渡り、それぞれがなんらかの事を得られた事はとてもすばらしいと感じた。

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反面、学生視点ならではの不満も出て来ている事が分かる。これは、私自身が感じた不満と類似している

ので多くの学生がやはりなんらかの不満を抱きつつ、Student Innovation College に取り組んでいた事が

分かった。これらの良い点、不満点から Student Innovation College についての特異性、可能性、限界を

考えていく。

4-4.体験、インタビュー、アンケートから読み取れる Student Innvation College における特異点、可能性、

限界

4-4-1.Student Innovation College の特異点

まずは特異点を探す。先行研究の二つの事例と異なる事、それは何より、大学でマーケティングを学ぶ学

生が行なっている活動、という点だと考えられる。大学生が学んだ知識を活かしてプレゼンテーションを行

い商品化を目指すという点で、空想生活とも良品計画とも違う形式の物になっていると考えられる。消費者

というひとくくりでは同じかもしれないが、その中で学生、さらにマーケティングを学んでいる物達が集い

活動している事が特異点であり特徴の一つだ。

さらにテーマ毎に企業の性質が違うのでそれぞれのテーマにおいて異なった制限等がある事が挙げられる。

良品計画のように様々な資源がある上で取り組んでいる会社もあるし、そうでない会社もある。多くの製品

化の可能性が眠っている中で、それぞれの企業により制限が違ってくるので、製品化できる基準が変わって

きてしまい、その結果そのテーマでは商品化を達成できないという事も多くのテーマを抱える Student

Innovation College の特異性だろう。

そして、その制限という物は、運営側では把握しきれないのである。空想生活ならばメーカーとの交渉の

中で出て来た制限を伝える事が出来るし、良品計画もまた同様であるが、Student Innovation College は

それを学生が読み取ったり、企業から聞き出す事をしなければ知る由が無いのである。つまり、過程の中で

知れるべき情報がお互いの意識次第では知る事が出来ず、実現不可能な企画を提案してしまうという結果に

なってしまうのも悪い特徴の一つである。

さらに特徴として考えられるのは、商品化された製品が良品計画のように従来品との比較が出来ず、その

売上や企業への貢献が出来ているかが不明であるということである。商品化の検討がされて、話合い、実際

販売されるという過程の話を聞くがその結果についてはあまり語られていない。もちろんそれは企業の秘密

でもある物なので分からないかもしれないが、少なくとも過去の商品化された製品で何かに取り上げられた

り実生活の中で話題になったような物が筆者の知る限りでは無いというのは販売成績があまり期待できない

のではないかという事に繋がっているのかもしれない。

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もう一つ重要な特異点は、これに参加した学生の将来だ。従来の消費者参加型商品企画では消費者はアイ

ディアを出していくという事が主でその中でのやり取りを通して商品化について参加しているだけであった。

しかし、参加学生達はこれらの経験をフルに生かしその知識を他の場面で使う機会がくるのではないかと考

えている。つまり、他の物と違い Student Innovation College は製品だけでなく人材も世に輩出している

という事が大きな特異点だと考えられる。

4-4-2.Student Innovation College の可能性

特異点を探し出した上で、Student Innovation College の可能性を考える。可能性とは様々な事に言え

るが、やはり学生が提案した企画が商品化されるという可能性が一番の大きな物だ。これに、今までの

Student Innovation College の製品化された商品達の販売成果を考えてみるとあまり良くないかもしれな

いが、良品計画の事例からも分かるように従来の手法よりも高い販売成果を上げる事も可能なのである。つ

まり可能性として、これからも学生の企画したアイディアが世に回る事が多いに期待でき、上手くいけばし

っかりと販売成績に繋がる事が期待される。

なので、この Student Innovation College という物の可能性は、その活動の中で得られる知識を持った

学生を育成し、さらにその結果商品も世に出すという事が行えるのである。言い換えると、人材と製品ふた

つの成果を生み出しているのである。Student Innovation College を通して販売される市場に取って新し

い製品を送り出す事も出来るし、この経験を生かして学生が入社後に商品開発を手がけて新しい価値を市場

に送り出す可能性も含まれているという点で、Student Innovation College は消費者参加型商品企画のな

かでも製品だけでなく人材の育成も行っているので、より多くの商品を市場に登場させられる可能性を持っ

た物であると筆者は考える。

4-4-3.Student Innovation College の限界

課題から分かってくる限界も同様に存在する。それは先行研究の二つの事例と同様にすべてのアイディア

が採用される事は無いという事だ。また今のところ判断基準が担当企業に一任されているので、企画内容が

どれほどよくても、企業担当の好みに合わなければ採用される事は無いということである。また、投票に関

しての不満も多くあったが、多重投票の可能性や不正行為が多くなってしまうことは企業にも学生にも不利

益しかもたらさないだろう。投票数は、それだけを見れば欲しいと思っている人間の数に思えてくる。しか

し、その数がただの票数稼ぎのために実際よりも多くなってしまったりすると、あまり内容の無い商品でも、

期待が大きくなってしまうのである。なのでそのシステムも変えていかなければ障害となりかねない問題な

のである。

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また、企業から与えられる情報にも不満があった。これは難しい問題ではあるが、その情報に縛られる事

無く不可能な実現を排除していく事が大切になる。運営に関しても先生のインタビューの回答にあったよう

にこれ以上の規模での運営は難しいと考えられている。企業のサポートや学生のサポート、先生方の尽力だ

けでは補いきれないというのもまた別の意味での限界なのかもしれない。つまり、この活動に参加したいと

思う事があっても運営上の理由で難しいとなってしまうのである。新しい企画の可能性と人材の育成の可能

性を運営の限界によりつぶしてしまうというのが、超えるべき運営面での課題であろう。

Student Innovation College の特異性、可能性、限界がそれぞれの形で現れた。そこで筆者が考えたこ

れからの Student Innovation College について述べさせてもらう。まずは目的や運営方式は現在のままで

良いと思われる。ただ規模が大きくなった時の対応が難しいという点で、参加希望大学や参加希望企業が出

て来た時に規模を拡大するのか、今現在の規模を維持するのか。この問題と直面する事は避けられないと感

じた。

5.まとめ

5-1.消費者参加型商品企画の限界と可能性について

消費者参加型商品企画の可能性としては、消費者すべての願いを叶える事は出来なくても、多くの消費者

にとって今までに市場に無かった製品を届けられる事が分かった。また企業にとっても良品計画の分析によ

り、従来の方式の企画よりも販売成績が高くなる可能性が示唆されているので、取り入れない手は無いと考

えられる。つまりすべての要望をかなえられない、開発に時間がかかり、その途中のプロセスでメーカーと

の交渉や販売数の確保、生産コスト等で多くの障害が出て来てしまうと言った点で真の意味で消費者の要望

が形になる事には限界を感じるが、消費者の声が市場に取って新しい価値や製品を生み出す可能性は大いに

あるのだ。

この消費者の声に対する企業が取るべき行動のバランスこそが消費者参加型商品企画の可能性にもなり限

界にもなると筆者は考えた。つまり、どこまで要望を取り入れるべきか、メーカーとの交渉においての条件

をどこまで消費者に届けるべきか。そういった点での企業のやり方次第で、限界と可能性は大きく変わるの

である。限界と言った点は、やはり諸費者にイニシアチブがあるのではなく、その要望の声をどのように形

にしていくかを企業側が決定権を持っているのでそれが限界として考えられる点であるという事だ。

5-2.学生のとるべき道

Student Innovation College で考えるべきこれから

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Student Innovation College の特異性、可能性、限界がそれぞれの形で現れた。そこで筆者が考えたこ

れからの Student Innovation College について述べさせてもらう。まずは目的や運営方式は現在のままで

良いと思われる。ただ規模が大きくなった時の対応が難しいという点で、参加希望大学や参加希望企業が出

て来た時に規模を拡大するのか、今現在の規模を維持するのか。この問題と直面する事は避けられないと感

じた。

また、企業の企画の判断基準がはっきりしない点や、開発から販売の過程でどのような障害が存在するの

か。そういった企業側の情報がより多くあった方が良いだろう。なので学生は今まで以上に情報を知る努力

を、企業もより良い提案を受けるために可能な限りの提供を行うべきであろう。

また運営の中の過程で、投票に関して不満があった事も改善点の一つに挙げられる。不正行為一つが全体

に起こしうる不利益に繋がる可能性もあるので是非来年度からの運営では対策をとってもらいたい。対応す

べき点はそのようにまとめられるかもしれない。また、是非筆者としてはより多くの人たちにこの活動に参

加してほしいと思っている。ユニークなアイディアや奇抜なプレゼンテーションを見れるし、何より新しい

商品が市場に出る可能性、マーケティングに携わる人間の増加に繋がる事は消費者参加型商品企画でもこの

Student Innovation College 特有の物なので、是非ともより多くの方々がコミットできるような仕組みに

なってほしい。また近年ではメディアに取り上げる事もあるので、より多くの一般人に浸透し、より投票数

を得られるような形になっていけばすばらしいと感じた。

最後に本論文の目的でもある Student Innovation College の限界及び、可能性を探り、学生の取るべき

道を示唆する事に取りかかる。これまでの論文の内容で普通の消費者参加型商品企画とは少し違う Student

Innovation College の形が見えて来た。そのなかで学生がどのような意識を持って参加すべきかを示唆し

ていきたい。

まず一番大切なのは、学ぶ姿勢を見せる事である。この活動は他の座学からは学べない事を実体験を通し

て学ぶ事が出来る。または座学で学んだ知識の発揮の場として活用も出来るのである。なので、受け身にな

らず失敗を恐れずにこの活動には参加してほしい。もちろん賞を取る事が最高の目的となり得るのかもしれ

ないが、この活動の本質である未来のマーケッターの育成という物を少しだけでも意識してほしい。

結果を求めるだけでなくその過程の一つ一つの経験が重要な事だと気づくだろう。その過程の大切さを学

びマーケティングを仲間とともに行い他大学のライバル達と切磋琢磨していく中で賞を得るという結果が得

られたら良いのではないだろうか。結果を最優先にするのでなく過程に重きを置く。そのような姿勢が見ら

れたら良いと感じる。

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また、過去の Student Innovation College では SNS 等をしっかりと活用するようになったのは 2012 年か

らである。これらの新しいデバイスを有効活用し、企業の人たちや他大学の学生とコミュニケーションを図

り、知識を吸収する事が大切になると考えられる。企業の目線、同じ物を開発する他の学生の目線などを知

る事は知識にもなるし、より良い企画づくりのために不可欠である。なので、自分からそういった情報を集

めていく姿勢も大事になると考えられる。特に企業のニーズを知る事や、制限となるような物は予め質問事

項として持っておいて聞く機会に聞くべきである。それが結果に繋がらなくても、制限によって製品化でき

ないという最悪の結果は招かなくなるので、可能な限り知る努力をするべきである。

決してマーケティングや商品企画という物は 1人では出来ない。是非チームで支え合い、それぞれが役割

を担い、様々な議論をして可能性の排除をすぐ行わないでほしい。排除した意見の中に新しいニーズが眠っ

ているかもしれない。排除したアイディア同士を加えれば新しいアイディアが生まれるかもしれない。半年

間という時間をしっかりと活用し、結論を出す事を急がずに、より良い物を作るために活動してほしい。そ

の話合いの最中での発見が知識に繋がるし、より良いプレゼンテーションを作ろうとする姿勢が賞の行方を

左右するかもしれない。

座学で学んだ調査方法や観察方法を是非駆使してみよう。それらの経験の場でもある。以上のような意識

を持ってこれからの学生には Student Innovation College に取り組んでほしい。

その道を示唆できているかは本論文でははっきりとは分からない。しかし、筆者の経験、仲間の意見、先

生方の考え、Student Innovation College の特徴を考えた上で示唆できる道ではある。是非来年活動に参

加する学生にこの論文を見てもらえる事を願うとともに同論文の締めとしたい。

参考文献

小川進、西川英彦(2006)『ユーザー起動法とブランド・コミュニティ:良品計画の事例』、流通研究、第

8巻、第 3号、49-64 頁。

清水信年(2002)『消費者参加の製品開発コミュニティ』、有斐閣。

「空想生活」

http://life.cuusoo.com/cmpn/scolle2012/1

「流通科学大学/Student Innovation College −S カレー」

http://www.umds.ac.jp/region/iga/scollege.html