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海岸防護施設の風景
早稲田大学創造理工学部 社会環境工学科 佐々木葉
土木学会 景観デザイン委員会
国土交通省 水管理・国土保全局 2011.9.1
「河川・海岸構造物の復旧における景観検討会」第1回
2011.9.20
土木学会 景観デザイン委員会からの要望
2011.11.11
「河川・海岸構造物の復旧における景観配慮の手引き」
2011.11.16
「平成23 年東北地方太平洋沖地震及び津波で被災した
海岸堤防等の復旧に関する基本的な考え方」
河川・海岸構造物の復旧における 景観配慮の手引き;解説
平成23年11月 国土交通省 水管理・国土保全局
【目的】 河川・海岸構造物の復旧にあたって必要となる具体的な景観への配慮方法を緊急的かつ一体的にとりまとめ、国、県等による河川・海岸構造物復旧における景観への配慮を支援する。
【検討会の経緯】
• 第1回検討会 平成23年 9月 1日• 第2回検討会 平成23年 9月21日• 第3回検討会 平成23年10月14日
(委員)
天野 邦彦: 国総研 環境研究部河川環境研究室長
萱場 祐一: 土木研究所 自然共生研究センター長
佐藤 愼司:東京大学大学院 教授
島谷 幸宏(座長):九州大学大学院 教授
諏訪 義雄: 国総研 河川研究部海岸研究室長
平野 勝也:東北大学大学院 准教授
松本 中 :岩手県 県土整備部 河川課総括課長
後藤 隆一:宮城県 土木部 河川課長
宮崎 典男:福島県 土木部 河川整備課長
(オブザーバー)
西條一彦:国交省 東北地方整備局
河川部 流域・水防調整官
(事務局)国交省 水管理・国土保全局 河川環境課国交省 水管理・国土保全局 治水課国交省 水管理・国土保全局 防災課
国交省 水管理・国土保全局 海岸室
河川・海岸構造物の復旧における景観検討会
【河川・海岸構造物の復旧における景観配慮の手引き】 は下記URL(国交省HP)からダウンロードできます。 h t t p : / / w w w . m l i t . g o . j p / r e p o r t / p r e s s /
mizukokudo03_hh_000426.html
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手引きの位置づけ
手引きの対象施設:
東日本大震災で被災した河川河口部及び海岸の堤防とその付帯施設、水門、樋門等の構造物
※長期的な観点からの景観配慮のため、覆土や海岸林等 との一体的な整備も扱う
手引きの利用者:国及び県の実務担当者
※ 本手引きの内容は、今般の大震災からの施設復旧のみならず、他の河川、海岸事業にも適用可能であり、積極的な活用が望まれる
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構成 記載事項
3-1景観配慮にあたっての視点 (本編:P.5~)
景観配慮にあたって踏まえるべき視点とその考え方の説明(1)視覚的景観(2)地域性(3)生態系(4)サステイナビリティ(持続可能性)(5)コスト
3-2景観配慮の方法 (本編:P.10~)
上記の視点を踏まえて、整備する施設に応じた具体的な配慮方法を説明(1)堤防の位置・線形(2)堤防の法面処理(3)堤防の天端処理(4)裏法尻等の覆土(5)海岸林、樹木等の活用(6)階段等の付帯施設(7)水門等の構造物
(別冊)ケーススタディ地区における景観配慮例
ケーススタディ地区(A~F地区)における現場の条件に応じた具体的な検討例を記載
手引きの構成 ~全体の流れ~
…………………… P.12~
……………………… P.16~
……………………… P.22~
……………………… P.24~
……………… P.27~
…………………… P.30~
……………………… P.33~
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前提とする堤防の構造 ~検討の前提とした構造~
勾配1:2程度
勾配1:2程度
被覆コンクリート または被覆コンクリートブロック
被覆コンクリート または被覆コンクリートブロック
(海 側) (陸 側)
堤防断面の例
l 河川河口部及び海岸の堤防の高さについては、地区毎に想定される津波や高潮の高さにより決定
l 設計に用いる津波については、「設計津波の水位の設定方法等について(平成23年7月8日、農林水産省農村振興局・水産庁漁港漁場整備部・国土交通省水管理・国土保全局・国土交通省港湾局)」に基づき設定
l 構造物としての安定性や既往の実績を踏まえ、被覆コンクリートまたは被覆コンクリートブロックとし、堤防法面の勾配は1:2程度を想定して検討
「海岸保全施設の技術上の基準を定める省令(平成16年3月農林水産省・国土交通省)」「海岸保全施設の技術上の基準・同解説 (平成16年6月海岸保全施設技術研究会編) 」「河川管理施設等構造令(平成12年国土交通省)」「河川砂防技術基準(平成16年国土交通省河川局(現水管理・国土保全局))」
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本編:P.10~
視覚的な景観のみならず、地域と海岸との関係や日常の利用、生態系等の観点も含めた“広い意味での「景観」” に十分に配慮
景観配慮にあたっての視点 ~広い意味での「景観」~
河口・海岸部は…
• 豊かな恩恵に根ざした人々の生活、特徴的な美しい風景、多様な生物がおりなす生態系等が相まって、地域の個性、魅力となっている
• 度重なる災害にも見舞われてきた地域であり、津波等に対する防護機能の確保が不可欠
復旧される堤防等の施設は、今後長期間に亘って供用され、地域の人々にとっては日常的に接する
■広い意味での「景観」:
地形や生態系の自然の営み、歴史、文化、レクリエーション等の人々の営み、それらの相互作用も含む環境の相対的な姿のこと 12
本編:P.5~
景観配慮にあたっての視点
(1)視覚的景観構造物を地域の空間構造を構成する要素として捉え、周辺環境に調和させる。構造物の視覚的な圧迫感や周辺環境のなかでの違和感の軽減に努める
(2)地域性地域独自の生業と文化を継承し、人々の豊かな活動の支えとなるような地域性への配慮を行う。復興の緊急性や地域のまちづくり、土地利用の意向を尊重する
(3)生態系沿岸流、波浪、潮位変動、風等の外力とそれによるダイナミックな砂の移動により形成される地形及びその地形に応じて分布する植生が相まって形成される海岸独特の生態系を尊重し、施設配置にあたり、これらのシステムの保全・復元に配慮する
(4)サステイナビリティ(持続可能性)復旧施設は長期間に亘り供用されることから、物理的のみならず文化的にも耐久性を高めたデザインの質を備えたものとする。また、長期的な海岸保全や維持管理面、地球温暖化の影響への対応なども考慮する
(5)コスト短期的な整備に要する費用のみならず、長期的に防護機能を確実に発揮させるために必要となる維持管理費等を考慮する。法線形を変更する場合は、用地費や取得に係る長期間の調整が想定される。一方で、汀線からの距離が十分に確保されれば、長期的な施設の維持管理費の軽減につながることも考えられるため、地域の意向や土地利用等を踏まえた総合的な判断を行う
●“広い意味での「景観」”の観点を踏まえ、手引きでは以下の5つの視点を踏まえるべきとしている
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本編:P.5~
景観配慮の方法 ①堤防の位置・線形の工夫
被災により水没
被災により消失した海岸林
被災により消失した既存堤防
引 堤
■原位置での復旧
■引堤による復旧
自然地形に応じた本来の生態系の保全・復元の余地等が生まれる
• 周辺環境の中で違和感のない形状とする(既存資料等から、元々の海岸地形を判断)• “「地」の景観”となる配慮(山付き等の地形特性を積極的に活用)• エコトーンの保全・復元あるいは影響の極小化• 背後の土地利用やまちづくり計画との整合、調整を図る• 短期的、長期的に要するコスト(地形の復元や砂浜の形成・維持、海岸保全)に配慮
堤防防護の消波工等が必要
見えの高さ(圧迫感)を軽減
今般の大震災からの施設復旧は、災害復旧事業により実施されることが想定され、原位置復旧が基本となるが、その場合においても、視覚的景観の向上、生態系への影響の極小化、サステイナビリティの確保等に資する位置・線形を可能な限り設定することが肝要である
14
本編:P.12~
13
20
景観配慮の方法 ①堤防の位置・線形の工夫
自然地形(山)の特性を活かした海岸堤防の整備により、海岸堤防が「地」の景観となり(海岸堤防が周辺景観に馴染む)、長大な印象を回避
引堤により、自然地形に応じた本来の生態系の保全・復元の余地の確保
湾曲な地形に呼応した曲線形状による長大で直線的な印象の緩和
引堤による整備のため、背後の土地の確保が必要となる(背後のまちづくり計画と調整が必要)
アイストップとなる特徴的な岩礁等の自然地形の保全
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本編:P.12~
景観配慮の方法 ①堤防の位置・線形の工夫(生態系)堤防位置による生態系への影響
ⅰ.前浜に堤防を設置
ⅱ.後浜に堤防を設置
ⅲ.後浜(砂丘)に堤防を設置
ⅳ.後背湿地より陸側に堤防を設置
・背後の砂の移動が抑制され、海岸特有のエコトーンの形成が極めて困難・波浪等の外力が大きいため、消波工等による生態系への影響も生じやすい
・コウボウムギ等の後浜に生育する植生の生育が妨げられる・砂丘も含めたダイナミックな砂及び植生の変動が阻害されるため、海岸特有の生態系への影響が大きい
・ⅰ,ⅱに比べ、後浜の植生への影響が緩和されるが、砂丘も含めた砂及び植生のダイナミックな変動は抑制される・地盤からの堤防の高さが抑制され、背後地への飛塩、飛砂への影響は軽減
・砂浜と湿地の連続性が保たれ、それらが一体となった海岸生態系の保全が可能となる
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本編:P.12~
景観配慮の方法 ②堤防法面のデザイン• 機能美を備えたシンプルなデザインを基本理念(化粧型枠による擬似的な自然風、ペインティング等は不可)
• 縦のリブ模様の強調により“安定感、支える感覚”を表現• 隔壁工を法面の表面に突出させることや、表面に凸部を配したブロックの利用、伸縮目地の強調等により縦リブ模様を作る(構造上の安全を確認した上で採用する)
縦リブのラインを形成するようブロックを連続して配置する
擬似的な自然風な表面処理、ペイン
ティング等は不可
隔壁工を突出させる等による縦リブ
を表現
縦リブを強調した整備イメージ
凸型ブロックを使用するとともに、隔壁工を活かして、縦リブを表現することにより、
均等な間隔での分節化が視覚的なリズム感
を生み、長大な印象を軽減する 17
本編:P.16~
防潮堤のデザインの困難
• 津波・高潮を防ぐ=連続した線状の構造 • 陸と海を行き来する人・物・水・生き物を通
さなければならない
• 不連続点・特殊部 折れ曲がり 水門・陸閘・階段 → 弱点・高コスト・風景としての違和感
防潮堤の課題
• 現況復旧のための防護施設のあり方 課題がありすぎる 全部完成して初めて機能を発揮する 施設(構造物)でなく計画(まちづくり)で考える • 日本の沿岸域のあり方のみなおし 「海をいじめてきた歴史に対する海岸の復讐」
「海岸法」という法律
• 1956(S31)制定
• 河川法1896(M29) • 砂防法1897(M30) • 道路法1919(T8) • 都市計画法1919(T8) • 公有水面埋立法1920(T10)
• 港湾法1950(S25)
海岸法制定の経緯
• S24キティ台風・S25ジェーン台風 • S25〜27 法案検討 3省の合意得られず
流れる
• S28台風13号 被害全国に及ぶ 復旧に特別立法 国庫負担比率が適用
復旧計画が工学的に定められる (計画潮位・波の打ち上げ高・堤防の高さ構造)
• S31年5月 海岸法 成立
海岸法の根幹
• 都道府県知事が防護の必要ある区域を海岸保全区域に指定し、海岸管理者を定める。
• 所轄を明確にすることが重要な目的。 • 国の直轄工事を認める。 • 海岸保全施設の築造基準を定める。 • 海岸の保全に支障のある行為の制限。
海岸法 第1条
(目的)
• この法律は、津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護するとともに、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図り、もつて国土の保全に資することを目的とする。
*青字は1999年の改訂で追加
河川法 第1条
(目的)
• この法律は、河川について、洪水、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする。
*青字は1997年の改訂で追加
人と海との関わりの歴史• 縄文 • 古代・中世 • 近世〜20C前半 干拓による農地の拡大 • 戦後 工業用地・市街地の拡大 埋立
構造物による防護
20c16c 201119c18c7c 9c貞観地震
海岸法
明治維新
近世人口増加
海岸砂防林