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船体構造国際標準規則研究委員会 報告書 2008 年 1 月 (社)日本船舶海洋工学会 船体構造国際標準規則研究委員会

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船体構造国際標準規則研究委員会 報告書

2008 年 1 月

(社)日本船舶海洋工学会

船体構造国際標準規則研究委員会

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目次

第1章 緒言 3 第2章 IMO および IACS における標準規則制定の動き 5 2.1 IMOにおける標準規則制定の動き 5 2.2 IACSにおける標準規則制定の動き 6 第3章 荷重に関する検討 9 3.1 荒天避航の影響調査 9 3.2 極限海象における船体応答の検討 18 第4章 座屈および最終強度に関する検討 31 4.1 CSR-BC における最終強度算定法について 31 4.2 二軸圧縮と横圧を受ける防撓パネルの最終強度 43 第5章 疲労強度に関する検討 53 5.1 疲労解析におけるシェルとソリッド要素応力の関係 53 5.2 疲労き裂伝播における遭遇荷重の履歴影響について 71 第6章 結言 86 付録 1.:Committee Report: Comparative studies on the evaluations of buckling/ultimate strength and fatigue strength based on IACS JTP and JBP rules 付録 2.:日本船舶海洋工学会東部支部オーガナイズドセッション「国際船級協会連合の共

通船体構造規則の発効と今後の課題」2006 年 5 月 付録 3.:A letter to Royal Institution of Naval Architects with regard to the report of Pilot Panel on the trial application of the Tier III verification process using IACS Common Structural Rules (MSC 83/5/1)

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委員名簿

委員長 角 洋一 横浜国立大学教授

委員 大沢直樹 大阪大学教授

大坪英臣 東京大学名誉教授

重見利幸 日本海事協会

田中義照 海上技術安全研究所

豊貞雅宏 九州大学名誉教授

原田 晋 日本海事協会

深澤塔一 金沢工業大学教授

藤久保昌彦 広島大学教授

矢尾哲也 大阪大学教授

吉川孝男 九州大学教授

賀田和夫 川崎造船

河地三郎 住友重機械マリンエンジニアリング

河邊寛 三星重工業

北村 欧 三菱重工業

柴崎公太 ユニバーサル造船

中島喜之 アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド

西村 勝好 三井造船

藤井一申 新来島どっく

前野嘉孝 サノヤス・ヒシノ・明昌

森 茂博 大島造船

山本 聡 ユニバーサル造船

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第1章 緒言 委員長 角 洋一

1990 年代に相次いで起きた大型バルクキャリアの海難事故やその後の大型タンカーの折損事

故による大規模な海洋油濁汚染を契機に、経年大型タンカー、バルカーの構造検査の見直しだけ

でなく、2002 年頃から国際海事機関(IMO)を中心に新造船構造基準の抜本的見直しに対する社

会的要請が極めて強くなった。このような背景のもとに、国際船級協会連合(IACS)は大型タン

カーと大型バルクキャリアについてそれぞれの共通構造規則の策定に着手し、2006 年 4 月に両規

則(CSR-T, CSR-B)を発効させた。CSR の思想は、安全強化、規則の透明化、共通化・標準化

であり、このような考え方自体は海事産業の社会的要請に対する極めて常識的な対応と見ること

ができる。但し、規則制定の過程で、関係する利害関係者からの政治的意見が、本来科学的に判

断されるべき規則の技術要件を、不合理に歪める可能性も否定できないこと、また余りに

prescriptive な規則は、材料や構造への新技術の導入の阻害要因となることも懸念された。そこ

で、主要造船国のひとつであるわが国の学会として、この問題に積極的に係り、発言する必要が

あるとの観点から、2004 年 12 月に旧日本造船学会構造・材料研究委員会に CSR-WG を設ける

こととなった。その後、2005 年造船三学会の統合に伴いにこの WG を日本船舶海洋工学会のス

トラテジー研究委員会のひとつとして船体構造国際標準規則研究委員会に改組し、関係事項の審

議を行ってきた。この度、3 年間の委員会任務を終えるに際し、検討成果を本報告書として纏め

ることとした。

CSR や現在 IMO で検討されている「新造時構造強度」(GBS-NSC)では、船のライフサイク

ル(25 年とされる)に対する強度を新造時の強度要件のみで満足させようとする考え方が極めて

強く、本来、新造時の基準とともに、あるいはそれ以上に実際的には重要な個船の就航・運航条

件、検査・点検に基づく維持・管理の技術要件の議論を封印してきた。本研究委員会では、技術

的検討事項を船体構造の基本である荷重、構造応答、座屈・最終強度、疲労に大別した上で、現

状の CSR について、その適用性と問題点並びに今後のバルクキャリア規則とタンカー規則におけ

る強度基準の統一化に際して問題となる現状規則の相違点を明らかにするとともに、荷重条件や

疲労については、就航・運航条件の相違が個船の強度に与える影響についても検討した。その具

体的検討項目は以下の通りである。

CSR では、極限波浪荷重条件として北大西洋の 25 年最大値を採用しているが、第 2 章では、

船舶運航中にとられる荒天避航の縦曲げ最終強度と疲労に及ぼす影響を検討している。この問題

は、現行の CSR が持つ強度余裕の定量的把握につながる。また、極限海象における船体応答計算

手法としての設計不規則波の適用性も検討している。第 3 章では、座屈および最終強度について

CSR-B編の最終強度計算法の検証並びに 2軸圧縮と横圧を同時に受ける防撓パネルの最終強度評

価における CSR-T 編と CSR-B 編の相違を明らかにした。この問題は、今後のタンカー規則とバ

ルクキャリ規則の調和作業(harmonization)に際して解決されるべき問題である。第 5 章では

疲労強度評価に際して問題となるホットスポット応力計算法について検討している。評価対象と

なる面材が横圧力による面外曲げを受ける場合に板厚程度の要素寸法のシェル要素を用いた計算

結果からホットスポット応力を推定する手法を提案し、ホッパー構造、バルクキャリア下部スツ

ール構造への適用性を示している。さらに、実際の不規則な荷重履歴による疲労強度の変動が、

確率的にどの程度のバラツキを示すかを推定するため、き裂面における残留塑性域影響を考慮し

た疲労き裂伝播シミュレーションを実施し、き裂伝播の遅延効果と荷重履歴の影響を示した。こ

の問題もまた、現行の CSR が持つ強度余裕の統計的把握につながる。第 6 章では、これらの検討

結果を踏まえ、今後の検討課題を整理する。 本委員会の活動の対外的アピールとして、2005 年 12 月に IACS に対して CSR が今後解決すべ

き問題点を指摘する報告書(付録 1)を提出した。また、今後の規則のあり方と研究の方向性を

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論ずる場として、日本船舶海洋工学会講演会にて OS2 件を開催した(付録2参照)。さらに、2007年 9 月には IMO オブザーバである英国造船学会(RINA)を通じ IMO の「新造時構造強度」

(GBS-NSC)に対する意見表明をすべくコメントの取り纏めを行った(付録3)。本件について

は、RINA の代表が IMO-MSC に欠席ということもあり、現時点では、IMO に直接意見表明でき

ていない状況であり、今後、学会としてフォローアップが必要な事項である。

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第 2 章 IMO および IACS における標準規則制定の動き

2.1 IMOにおける標準規則制定の動き

三菱重工業(株) 北村 欧

国際海事機関(IMO)による船体構造に関する規定は、従来、海上人命安全条約(SOLAS) II-1 規

則にある「旗国政府が認証する船級協会の要求に従って建造されねばならない」だけであり、船

体構造安全性確保の実体は、技術的な専門家集団である各船級協会の規則詳細に依存する状況で

あった。

その様な状況の下、1999 年 12 月に老朽タンカー「ERIKA(船齢 24)」が折損し、大規模な海洋

汚染をもたらした。これを契機に、タンカーとバルカーを対象とした構造点検設備(MOA)の設置

強制化に関する議論が IMO の場で 2000 年から開始された。事故の主原因として、旗国による就

航中の船体構造検査が十分に実施できない現況がやり玉に挙げられた事が、この議論の発端とな

っている。一方、2002 年 11 月に老朽タンカー「Prestige(船齢 26)」の折損事故による大規模

な海洋汚染が続いて発生した結果、世間一般から、海事関連機関/業界による船体構造安全性担

保体制の信頼性が大いに懸念されるに至った。

この様な事態を受け、老朽船リスクを多く抱えるバハマとギリシャから、2002 年の第 89 回 IMO

理事会にて、IMO による船体構造基準策定(新 SOLAS の策定)の開始が提案され、合意された。そ

の際の方法論として、個々の要求規則策定によるボトムアップ的積み上げではなく、ゴール(目標)をまず設定した上でそれに到達する為に必要な諸基準を整備/展開して行くという、トップダウ

ン的アプローチ(Goal-based Standards : GBS)を採用する事が、合意された。

2004 年 5 月に開催された第 78 回海上安全委員会(MSC78)では、ギリシャ/バハマ/IACS から

5 階層からなる GBS の枠組みと、基本的機能要件並びに、具体的規定である設計寿命(25 年)及び

想定運航環境(北大西洋)「案」が提示され、基本的な支持を得た。5 階層は Fig.1 に示すもので、

IMO-MSC が直接基準化するのは第 1 階層から第 3 階層までである。具体的な要求は第 4 階層に相

当する船級規則内となる事から、GBS の位置づけは個々の船舶の構造設計を直接コントロールす

るものでは無く、「船級規則を律する規則(Rules for Rules)」となっている。

当初の取組みでは、GBS のカバーする範囲は船体構造だけではなく、艤装品、復原性、防火、

船員の訓練等を含む広範囲なものとされていたが、タンカーとバルカーの構造強化の早期強制化

を目論むギリシャ/バハマ等の思惑から、航行制限の無いタンカーとバルカーの、更に「新造時

構造強度」に特化した GBS-NSC(New Ship Construction)の策定が最優先で推進されている。

ギリシャ/バハマ等が主導したこの GBS-NSC の策定では、バルクキャリアーの安全性基準策定時

に採用された Formal Safety Assessment(FSA)手法に基づく Risk-based アプローチ

(Safety Level Approach)を採っていない。その結果、従来型の決定論的要件の集合体の体裁

となっており、Goal と Goal を成立させる各要件間の整合性が不明朗になっている。

一方、「第 4 階層に相当する CSR」の、「第 2 階層に記載されている機能要件」への「合致性を

検証する為の手続きと判定基準」が第 3 階層である。当初は GBS-NSC を先取りして具現化された

ものが CSR との大方の理解であったが、先行して発効した CSR の内容(特に腐食予備厚の量)に

不満を持ったギリシャが、GBS-NSC によって CSR の強化を図るとの政治的な挙に出たため、判定

基準に関する IMO 議論は甚だしく揉めた。十分な安全性/Fit for Purpose/Robust Ship等の定義と実現法に関する同床異夢が原因であるが、新造時の構造強度強化のみで経年・老朽船

メンテナンンス投資フリーを狙う極端なギリシャ陣営は結局多数派とはならず、鎮静化の流れが

強くなっている。但し、それでも第 3 階層に記載されている判定基準の原案には、CSR の内容を

超えるもの(例えば、損傷時の冗長性や残存強度、振動や変形の制限、等)が種々盛り込まれてい

る。従って、最終的には CSR の一部強化/改訂は避けられない情勢にあると判断される。

上述の、航行制限の無いタンカーとバルカーに特化した GBS-NSC は、2008 年 12 月の

IMO-MSC85 にて最終化/承認される予定であるが、発効時期については通例と異なり、弾力的な

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措置が採られる事になりそうである(SOLAS 条約である以上、GBS-NSC 発効時点までに、合格す

る船級規則:少なくとも改訂 CSR が発効していないと、建造契約を締結できなくなる)。とは言

え、IMO-MSC による検証と IACS による CSR 改訂及び発効の事務手続きには時間を要するので、

CSR の一部強化/改訂作業は 2009 年初頃から始まる可能性がある。

なお IMO では 2009 年以降に、Safety Level Approach を採らないままに GBS-NSC を他船

種へ拡張する動きがあり、その場合には例えば、各船級別々のコンテナ船規則などの CSR 化が始

まる可能性もあるので、要注意である。

Fig.1 Five-tier Structure of GBS

2.2 IACSにおける標準規則制定の動き

アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド(株) 中島喜之

IACS(International Association of Classification Societies、国際船級協会連合)では、

従来各船級で異なっていた構造規則を統一し、CSR(Common Structural Rule、共通構造規則)を

作成し、2006 年 4 月 1日から発効させた。

この CSR の発効により IACS 加盟の 10 船級が同じ構造規則となったが、対象となるのは国際航

路に従事する長さ 150m以上のタンカー及び 90m以上のバルカーで、かつ 2006 年 4 月 1日以降の

契約船であり、これ以外の船、たとえば LNG 船やコンテナ船、長さが 150m 未満のタンカーや 90m

未満のバルカー、内航船等は従来どおり船級協会ごとの規則で設計・建造されることとなってい

る。

IACS が CSR を制定した目的及び背景について、IACS は以下のように述べている。

CSR は、IACS として共通、かつ、唯一の構造規則として各船級協会が統一的に運用できること、

構造寸法に関する船級協会間の競争を排除すること、IMO GBS の考え方に合致させること、より

安全で、頑健で、かつ、使い勝手のよい船体構造が実現できること、各船級協会の経験を考慮す

ることを目的として制定された共通構造規則である。本共通構造規則制定の背景として、1999 年

のエリカ号、2002 年のプレステージ号の重大海難事故及び海洋汚染があり、これらの事故防止の

観点から船体構造についても見直す必要があったこと、同一設計の船体構造であっても、適用す

る船級規則により要求寸法が異なり、それが、船級間の構造寸法に関する競争の要因となってい

ため、それを排除する必要性があったこと、また、構造強度的な観点だけでなく、運航、検査、

維持の観点にも配慮した構造規則とする必要性があったことが挙げられる。

また、CSR は、その背後にある技術的背景や試計算などを前広に示し、各業界の意見を反映さ

せる透明性の高い手順により制定された。

Tier I Goals

INDUSTRYINDUSTRY

Tier II

Tier IV

Tier V

Tier III

Industry Standards,Practices and Quality

System

Verification of compliance

IMOIMO

IMOIMO

IMOIMO

Classification Classification SocietySociety

Detailed Requirements

FunctionalRequirements

Tier I Goals

INDUSTRYINDUSTRY

Tier II

Tier IV

Tier V

Tier III

Industry Standards,Practices and Quality

System

Verification of compliance

IMOIMO

IMOIMO

IMOIMO

Classification Classification SocietySociety

Detailed Requirements

FunctionalRequirements

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しかしながら、上述の重大事故は、すべて老朽船で、従来に比べ検査を強化していたにもかか

わらず生じたものである。このような重大事故が発生したことを受けて、老朽船に対する検査強

化だけでは海難事故を防ぎきれないという考え方が生じ、それ以外の対策が必要ということにな

り、新造船の構造を強化することにつながっていったと思われる。

もう1つの背景として、造船新興国による建造船の増加がある。これらの国には経験・知識が

不足していることから、これらの国々での建造船において安全性の問題や強度に絡む使い勝手の

問題等が発生し、船主側に多くの不安・不満が発生した。これを受けて、IACS は数年前に UR-S25

(バルクキャリアの強度要件)を定めて、従来は船主と造船会社の間で取り決めていた安全上、

運航上重要で基本的な事項を規則化し、各船級の構造規則へ反映させてきた。この流れの延長上

に CSR がある。すなわち、造船新興国の建造船においても十分な強度・品質を確保することを CSR

によって担保する狙いがあったと考えられる。

なお、IACS は過去に構造規則を緩和することで船級間の競争があったとし、この競争を止める

ことが CSR の目的と公式に述べている。しかしながら、造船所の圧力によって規則を緩和したと

するのはおかしな話であり、構造寸法を下げても問題ないと船級が判断したから下げたのであろ

うし、守るべき安全性は確保されていたはずである。もしそうであれば、確保されていたとされ

る安全性に基づき、構造規則が検討されるべきであったが、上述の背景に基づき、規定の強化の

み考慮された感がある。

これらの目的及び背景から、従来の各船級協会の規則に比べて著しく強化された共通の構造規

則(CSR)が作成されたようである。

CSR の特徴として、以下の 8項目が挙げられる。

① 設計条件の明確化

② 設計荷重の精緻化

③ ネットスキャントリングアプローチ

④ 最終強度評価の明確化

⑤ 強度評価要領の詳細規定

⑥ 構造詳細規定

⑦ バラストタンク塗装要件規定

⑧ 規則改正プロセスの透明化

まず「設計条件の明確化」とは、従来の船級規則では、降伏・座屈が北大西洋 20 年、疲労がワ

ールドワイド 20 年というのが暗黙の了解であったが、CSR では一律明確に北大西洋 25 年となっ

たことを意味している。「設計荷重の精緻化」は、構造応答が最大となるような設計波を考慮した

もので、従来規則に比べ、多くのパラメータ及び複雑な算式により与えられ、また、多くの荷重

ケースを考慮する必要があることを意味している。「ネットスキャントリングアプローチ」とは、腐食

代を考慮した強度設計を要求し、この腐食代と運航後の衰耗限度を明確に関連付けていることであり、

「最終強度評価の明確化」とは、極大荷重に対する崩壊強度を個船の設計において検討すること

を規則化したことを意味している。また「強度評価要領の詳細規定」とは、従来に比べて、強度

計算要領、評価基準などを詳細に定めていること、「構造詳細規定」では、従来は造船所毎に異な

っていた詳細構造を一律に規定していることを指している。「バラストタンク塗装要件規定」は、

従来船級規則の枠外であった塗装使用要件を船級規則の一部としたことである。そして「規則改

正プロセスの透明化」とは、規則改正案の段階で各船級の技術委員会のレビューを受けるプロセ

スとしたことであるが、従来に比べて手続きが複雑になり、規則改正に 20 ヶ月もかかることにな

ったことを指している。

この CSR が船体構造および造船業界に与える影響として、まず船殻重量の増加がある。日本造

船工業会の試算によると、一般的にタンカーで5~8%、バルカーで6~9%重量が増加する。

2~3年前に適用になった UR-S25 により、バルカーはすでに3~4%重量が増加しているので、

5年前と比べると10%強増加していることになる。この重量増により影響するのが、船価(上昇)、

載貨重量(減少)、建造期間(伸長)であるが、それぞれ何らかの方法でカバーしていかなければ

ならない。

次に設計時の複雑で膨大な強度計算の実施が挙げられる。CSR の適用により、造船所は複雑な

作業を強いられることになった。現在は専用ソフトを使って行っているが、手計算での計算結果

のトレースができないという困った状況になっている。造船所としてはブラックボックス化もし

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たくはないし、アナログ的評価も行いたい。しかし、そのためには多大な労力をかけなければな

らず、設計期間が長期化する。そうすると年間にできる新設計の数も減ってくるので、標準船の

採用が増加するのではないだろうか。また、少しの変更にも膨大な強度計算が必要になるので、

船主要望による変更を簡単には受け入れられなくなる可能性が出てくる。

そして詳細な規定による金太郎飴化がある。CSR どおりに造れば誰がどこで造っても同じよう

なものができる。それが CSR の目的でもあるが、日本造船業界はもともと技術で差別化しようと

いう意図を持っており、その余地はかなり狭められてしまったことになる。

今回のCSRの作成段階において学会及び日本造船業界は、CSRをより合理的な規則とすべく、

自主的に事前検討を行い、不備を指摘し、IACS と協議を重ねた経緯がある。CSR が持つ「安全

強化」「透明化」「共通化・標準化」のイメージは時代の流れであり、今後もこのような方向に進

むことは避けられない。このような環境の中、主要造船国のひとつであるわが国の学会として、

IACS に対し積極的に関与し、学会及び日本造船業界の存在感を示すことが、結果的には技術力

を競争力とする上で重要となるはずである。

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第 3 章 荷重に関する検討

3.1 荒天避航の影響調査

サムソン重工業(株)(研究当時東海大学) 河邉 寛

1. 船体応答と航行限界

217×32.26×18.0/13.2m のバルクキャリアの船体運動が最も激しく、かつ、波浪縦曲げモーメ

ントの応答も最大となる短期海象は平均波周期が 10 秒である。この海象を航行するとき、運行者

は船体応答の大きさを押さえるために減速、船の針路と波との角度の変更などを行う。竹川(1)

はこれらの応答の目安として次の値を上げている。 このような応答の閾値と限界波高と波向きとの関係は下の図のようになる。

Table 1 Navigation limit parameter in short-term sea state Kind of response Probability of exceedance or limit value

Deck wetness 1/25 Bottom slamming 1/12.5

Pitch angle Significant value 3.5 deg.

S217 Hom Limit significant wave height( 10 kt, T = 10 sec. )

0

5

10

15

20180

150

120

90

60

30

0

330

300

270

240

210

deck wetnessslammingPitch

Fig. 1 An example of limit significant wave height of bulk carrier in short-term rough sea

state ( L=217m, mean wave period = 10 sec. ) 追い波が 0°、向い波が 180°であり、r 方向に有義波高の値を示している。 この図より、計算例のバルクキャリアは、向い波において有義波高が 8.5m が限界波高となる。

このように、波浪中の船体応答が過大となることを避けるために、船舶が航行可能な海象は限ら

れ、特に有義波高はある上限値があるものと考えられる。 Sternsson(2)、Olsen(3)らは、北大西洋を航行する船舶の遭遇海象を調査し、同じ海域の標準

的な海象統計と言われている GWS(4)と比較を行い、実際に船舶が遭遇する有義波高は特に高波

高の統計値は GWS の有義波高分布より低いことを指摘している。その原因として、weather

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routing や気象/海象予想を利用する船舶の割合が増加傾向にあり、その結果,海象が荒れて船舶

に危険が及ぼすような海域を避けて航行しているので、実際に船舶が遭遇する海象は,現在標準

的に船舶の設計に使用されている海象頻度表よりも厳しくないと主張している。 本報告では,船舶が大洋を航行中に荒天海域に遭遇する可能性があるとき、船舶の運航者は船

体、積荷あるいは乗員に危険が及ぼさないように何らかの判断指針により荒天海域を回避すると

すれば,それが船体構造強度設計を考える上でどのような強度上の余裕があるのか検討を行った。 2. 遭遇最大有義波高に上限があるときの最大荷重

(1) シナリオ 船舶が航行中に荒天に遭遇する場合に、甲板冠水、船首船底露出を避けるように航路を選ぶも

のと考えられる。そのような避航の指標となる海象の有義波高を HL( m )とする。波浪荷重の最大

値を推定する海象を嵐モデル(5)を用いて次の3つのシナリオを考える。 Case(1): 波浪予想、船上での海象判断が的確で遭遇海象は HLを超えない。Fig.3 (a) Case(2)、Case(3):波浪予想、船上判断が不十分で HLを超える海域に侵入し、遭遇最大有義波

高が Hδ(m)増加し、

H = HL + Hδ 3-(1)-(1)

となる。Case(2)は何らか避航が成功する。Case(3)は最悪の状況になる。Fig.3(b)

Limited wave condition

KeepYes

No

Try to escape

Enter a storm

Yes

No

Case (1)

Case (2)

Case (3)

Environmental

Information

weather forecasting

weather routing

On boad observation

Ship performance

Fig.2 Scenario of encountered wave condition in rough sea

Significant wave height

Storm

time

CalmCalmCalm

CalmCalm

Storm StormStorm

HL :Limited wave height

Significant wave height

time

CalmCalmCalm

Calm

Storm StormStorm

HL

probability dostribution of H δ

(a) : Case(1) (b) : Case (b)

Fig.3-(1)-3 Time history of encountered significant wave height (2) 波浪予想の不確定性

一般に行われている海象予想は風の観測データを入力し、波のエネルギーの平衡方程式を数値

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的に解いて有義波高、平均波周期などを出力する。現在では大局的な波浪の数値予測はかなりの

精度まで向上しているが、地球規模の風データ、数値計算のためのモデル化など、局所的な海象

まで完璧とは言えない。したがって、前記のシナリオの Case(1)においても、上限の有義波高 HL

はある幅を持った値であると考えられる。日本造船研究協会第228研究部会(6)では太平洋の

波浪追算とハワイ沖ブイの計測値との 12 年間の比較データを表示している。それによると有義波

高 HLは Fig.4 のような平均値 mH、標準偏差σHの幅を持っている。

0

2

4

6

8

10

12

0 2 4 6 8 10 12 14estimated wave height ( m )

extrapolated

extrapolated

esti. - Bias + RMS

esti. - Bias - RMS

Fig.4Uncertainty of hindcast significant wave height

(3) 遭遇海象の不確定性 海象情報、判断の不備により上限の海象 HLを超える海域に侵入したモデルを Fig.5 のように、

経過時間δの後に HL+ Hδに達すると考える。

HL

δ

Hmax

D Fig.5 Overshoot wave height Hδ in a storm

Hδは嵐の持続時間 D と強さ Hmaxから計算できる。嵐の強さとそれを構成する有義波高は確率的

なものであり、Hδも平均値 mδ、標準偏差σδの確率変数である。北大西洋の嵐モデルデータから嵐

への侵入経過時間δと平均値 mδの関係の例を Fig.3-(1)-6 に示す。

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HL = 10.5m

10.50

11.00

11.50

12.00

12.50

13.00

13.50

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20δ ( hours

constant

K2 = -0.02

K2 = -0.04

K2 = -0.06

b = K1 exp(K2a)

Fig. 6 Relation between surrounding time d in a storm and mean encountered significant

wave height したがって、シナリオ Case(2)、(3)における設定した上限の有義波高 HLは、不確定要因によって

平均有義波高 mH、標準偏差σHの確率変数となり、次の値となる。

mH = mHL+ mδ

σ H = σ HL

2 + σδ2

(2)

(4) 上限有義波高と遭遇最大荷重

河邉(7)、重見(8)らは、船舶の波浪荷重の長期分布の超過確率が Q=10-8の相当する最大荷重 xは、想定海象の中の最悪短期海象中における応答の 1/1000 最大値で近似できることを提案してい

る。すなわち、最悪短期海象を有義波高 Hmax、平均波周期 Tmax、応答の短期パラメータをRとす

れば、x は次式より近似できる。

x = RHmax 2 × ln(1000) (3)

ここに Rは単位有義波高(1m)において計算された短期応答のパラメータであり、応答は有義

波高に比例する線形応答とする。

最悪短期海象の有義波高 Hmaxは、想定海象の中でRが最大となる波周期の中での最高有義波高

である。前記の航海中のシナリオでは、weather routing、気象/海象予想の利用により実際の遭

遇する最大有義波高は Hmaxでなく HLに押さえられていると考えられる。しかし、航海中に遭遇

する上限の最大有義波高を HL と設定したとしても、何らかの判断の遅れ、海象の予測精度など

により必ずしも厳密に設定した上限値を守りうるとは限らず、式(2)のような確率変数とみなされ

る。このような場合,最大荷重は式(3)において Hmax を HL に置き換えて計算できるが、HL は確

定の値ではなく式 3(2)の確率変数となる。また、極値統計論では、式(3)で計算される短期海象中

の 1/1000 最大値も期待値であり、確率変数と見なさなければならない。HLと極値統計の両者の

変数関係を考慮に入れて、最悪短期海象における最大荷重 x の平均値 mN、標準偏差σNは次式と

なる。

μN = R{ 2ln(N) +γ

2ln(N)}(mL + mδ )

σ N = [{R π12ln(N)

(mL + mδ )}2 + ( ∂M∂H1/ 3

)2(σ L2 + σδ

2)}1/ 2 (4)

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13

ここに、N=1000、 ∂M∂H1/ 3

はHL + Hδ に対応した x の応答の感度であり、Fig.7 の様な関係である。

HL

∂M∂H

H

M

Fig.7 Relation between HL + Hδ and ∂M∂H1/ 3

(5) 船体最終縦曲げ強度の検討 Fig.1 のバルクキャリアの船体中央の最終縦曲げ強度について、前記のように遭遇最高有義波高

が与えられているときの強度の安全性がどのような値となるかを検討した。 最終縦曲げ強度の安全度の判断は,次式の FOSM の安全性指標βを用いる。

β =μC − μd

(σ c2 + σ d

2 ) (5)

ここに、μC、σ cは縦曲げ最終強度の平均値、標準偏差

μd 、σ d は縦曲げモーメントの最大値の平均値、標準偏差

最終強度の確率変数のパラメータは、縦強度を構成する部材寸法、材料常数、初期不整などを考

慮に入れて計算をする。 縦曲げモーメントは、次式とする。

μd = MS + μN

σ d = σ N

(6)

ここに、Ms は静水縦曲げモーメントの値で、最も厳しい積み付けの値とする。 設定上限有義波高 HLと縦曲げ最終強度の安全性指標βとの関係は Fig.8 となる。

Safety index ( North Atlantic )

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

8 10 12 14 16 18HL

beta - Case (3)beta - Case (1)

Fig.8 Relation between limited significant wave height and safety index of midship ultimate

strength

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14

図において beta-Case (3)はシナリオ case (1)の厳密に上限の有義波高 HLを守って航行した場合,

beta-Case (1)はシナリオ case (3)の嵐に遭遇しても避けきれない場合で、シナリオ case (2)の嵐

に遭遇しても離脱できた場合は2つの曲線の中間になる。 このように、weather routing、気象/海象予測に基づく危険海域の回避は、船体構造の安全性

に直接関わり今後とも重要な研究領域と言える。 3. 疲労被害度と遭遇波高の上限との関係 Fig. 1 のバルクキャリアとは異なるが、SR228 で使用された L=217m のバルクキャリアの二重

底左舷ホッパーとの交差部、および二重底センターラインロワースツール交差部の応力応答関数

を用いて、疲労被害度と遭遇波浪の上限との関係を調べた。 「計算条件」 波浪頻度表 : IACS 長期波浪頻度表 波との出会い角 : All headings

S−N 線図 : σ = C{N(σ)}n

C = 7.0525 × 55.0 kgf /mm2

n = −0.2564 熊野(9)のリブ付荷重非伝達十字継手 IACS の波浪頻度表を、有義波高 7.5m、8.5m、9.5m、10.5m、11.5m 以下を用いる場合、および

上限無し(14.5m)としてそれぞれの頻度表から計算される疲労被害度の計算を行った。 (1)二重底左舷ホッパーとの交差部 上限の有義波高と疲労被害度の関係を Fig.9に示す。

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1.1

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

Hlimi

t Fig.9 Relation between limited significant wave height and normalized fatigue damage factor

at double bottom hopper side

それぞれの上限値を設けたときの疲労被害度がどのような海象(平均波周期と有義波高)から構

成されているかを次に示す。

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15

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

No limit significant wave height HL = 11.5m

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

HL = 10.5m HL = 9.5m

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

HL = 8.5m HL = 7.5m

Fig.10 Contribution rate of significant wave height and mean wave height for fatigue damage factor in the supposed wave statistics at double bottom hopper side

これらの疲労被害度に対する海象(平均波周期と有義波高)の寄与率は、有義波高 5.5-6.5m、平

均波周期 9.5 秒を中心に広がり、有義波高が 10m 以上の寄与率は小さい。その結果、遭遇海象の

最大有義波高の制限を設けても疲労被害度の減少率は少ない。

(2)二重底センターラインロワースツール交差部

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1.1

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

Hlimi

t Fig.11 Relation between limited significant wave height and normalized fatigue damage

factor at double bottom center line lower stool

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0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

15.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

No limit significant wave height HL = 11.5m

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

HL = 10.5m HL = 9.5m

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

有義波高

平均波周期

HL = 8.5m HL = 7.5m

Fig.12 Contribution rate of significant wave height and mean wave height for fatigue damage factor in the supposed wave statistics at double bottom center line lower stool

これら以外の左舷ホールドフレーム、上甲板左舷、船体外板中央の応力応答関数を用いて疲労被

害度と遭遇海象の上限値との関係を求めたが、すべて同様の結果を得た。 4.あとがき

実船の遭遇海象の調査から、weather routing、気象/海象予測の利用により、実航海において

船舶が遭遇する海象は、荒天を避けて航行する可能性が強く,通常、船舶の設計に用いられてい

る GWS のような海象頻度表は厳しすぎる値を与えているのではないかという観点から、遭遇海

象にある上限の有義波高を設定し、構造強度部材の安全性の余裕を検討した。 最終強度のような、荷重が最大遭遇波高と最も密接な関係がある場合では,ある判断基準によっ

て遭遇波高に上限を設けることは、構造に余裕を持たせることができ、それを数値的に判定する

方法を示した。疲労強度においては、疲労被害度の計算に寄与を与える海象は、比較的中から低

レベルの波高付近の海象であり,遭遇海象に10m 程度の上限値を設けても疲労被害度に有意な

変化は見られなかった。しかし、本計算では,波浪頻度表の上限値以上を単にカットをした簡易

的な計算結果であり、weather routing、気象/海象予測の利用により、波浪頻度表が中波高レベ

ルから全体にわたり穏やかになることも考えられるので、今後このような資料を収集し再度詳細

な検討が必要である。

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17

参考文献 1) 竹川、耐航性理論の設計への応用、第11回運動性能シンポジウム(1994) 2) Sternsson,M, and Bjorkenstam,U. : Influence of weather routing encountered wave

heights, International Shipbuilding Progress, 49, no. 2 (2002) 3) Olsen, A. S., Schoter, C. and Jensen, J. J. : Encountered wave height distributions for

ships in the North Atlantic, 9th Symposium on PRADS, (2004) 4) Hogben, N., Dacunha, NMC and Oliiver, GF : Global Wave Statistics, Brown Union Publ.

London UK (1986) 5) 河邉寛ほか:船体構造部材の疲労強度評価のための嵐モデルについて、日本造船学会論文集

第193号、(2003) 6) 日本造船研究協会第228研究部会報告 7) 河邉寛ほか:波浪荷重の長期分布の簡易推定法、日本造船学会論文集 第189号、(2001) 8) 重見利幸ほか:タンカーの主要構造部材に対する設計荷重の実用的設定法に関する研究、第

1報設計海象、日本造船学会論文集 第191号、(2002) 9) 熊野厚:疲労強度と海象条件、日本造船学会誌、第774号、(1993)

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18

3.2 極限海象における船体応答の検討

金沢工業大学 深沢塔一

1. 緒言

近年、計算機の性能向上に伴い、複雑な構造計算が PC レベルで実行可能となってきている。こ

のような計算環境の変化やこれまでの技術的な蓄積を下に、主要な船級協会では船体に作用する

荷重推定から全船 FEM 解析、疲労強度、最終強度の評価まで一貫して計算して行うことのできる

ソフトウェアを開発している。しかしながら、船全体の最終強度が問題となるような場合に関し

て言えば、設計海象条件の明確化や非線形荷重の推定法、および非線形荷重を用いた全船 FEM 解

析手法の開発など、課題も多く残されている。船体構造設計を合理的に行おうとする場合、通常、

確率・統計理論に基づいた解析が行われるが、船体の座屈・崩壊強度や最終強度に関しては、最大

応答は極限状態で発生すると考えられるため、何らかの方法で極限海象を明確にし、その中での

船体応答を求めるのが常道であろう。

船体には、外部から加わる波浪荷重のみならず、積荷やバラスト水等による内部からの荷重な

ど、複数の荷重が異なる位相差で作用する。また、極限海象においては波浪の岨度や波高が大き

くなるため、その中での波浪荷重や船体応答の非線形性が無視できない。極限海象中でこのよう

な荷重の非線形性や複数荷重の同時性を考慮する方法として、しばしば「設計波」という概念が

用いられる。実際の船体構造設計において用いられる設計波は等価規則波である。すなわち、海

象や波浪状況、船体応答特性などを考慮して等価規則波の波高と波長を定め、その中での応答解

析を行う。しかしながら、設計規則波の最大の問題点は、現実の海象にはこのような規則的な波

は存在しない、ということである。設計規則波は、船体のある強度またはある部材の応力の最大

応答に注目して波高・波長が定められるが、このようにして作られた波に対してそれ以外の強度、

またはそれ以外の部材の応力については必ずしも最大値は得られず、逆にターゲットとしていな

い部分で過大な応答が発生する可能性もある。また、波浪と船体との相対位置・速度に起因する

スラミングや海水打ち込みなどの非線形現象については、その発生についても現実的でない場合

がある。このように、等価規則波を用いた設計規則波法は簡便ではあるが精度的に限界があり、

最近では実際の波浪に近い不規則波を設計波として用いる試みがなされてきた。

Tromans らによって提案された”New Wave” [1] や Hansen らにより提案された MLW(Most

Likely Wave) 法 [2] は、wave elevation が最も大きくなる付近で最大応答が起こるであろう

という仮定の下に、波スペクトルより発生させた波の最大値近傍の波形を推定し波が集中したと

ころの応答を解析するというものである。これらの方法は、いわゆる一発大波中の応答を最大応

答とする、という考え方に基づいているが、船体応答特性を無視しているため、必ずしも最大応

答が得られない。船体応答の特性を考慮したものは Adegeest らにより提案された MLER (Most

Likely Extreme Response) 法 [3,4] である。この方法は、MLW 法を、波スペクトルではなく応

答スペクトルに適用したもので、線形計算により得られた応答スペクトルより各周波数での応答

を求め、その位相を一致させて重ね合わせ、これにより最大応答を求めるものである。また、こ

のようにして得られた各周波数での応答より、応答関数を用いて応答スペクトルを逆変換するこ

とにより素成波を求め、これを重ね合わせることによって設計波とし、この中で非線形応答シミ

ュレーションを行えば非線形性を考慮した応答の最大値が求まるとしている。MLER 法は DNV の船

体構造設計規則にも取り入れられ、いわば最も進んだ設計波法的な船体構造設計ツールと考えら

れている。

一方、深沢は、波スペクトルから発生させる各周波数の素成波を応答の位相を用いて重ね合わ

せる方法(設計不規則波法)を提案した [5,6,7]。設計不規則波法は、波スペクトルの中で応答

が顕著になる範囲の周波数範囲のみより素成波を発生させ、線形計算により得られる応答の位相

を利用して素成波成分の位相を応答が最大になるように調整するものであり、前出の MLER 法とは

計算手順等に違いはあるものの、応答の位相を用いて設計波を求めるという基本的な考え方は同

じである。これらの方法では、「船体応答そのものには非線形影響が顕著であるが最大応答を発生

させる波の推定に関しては非線形性の影響は小さい」という仮定の下、最大応答を発生させる波

の推定に線形計算を用いているが、船体応答そのものは非線形シミュレーションによって求める

ことができ、荷重の非線形性と同時性を考慮することが可能となる。

さて、船体構造設計における FEM 解析に関して、近年、船体運動によって生じる荷重の時系列

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19

データを直接 FEM 全船モデルに負荷する手法(直接荷重解析法、DIrect Loading Analysis Method :

DILAM)が開発され [8,9]、応力レベルでの長期予測なども可能となっている。超大型コンテナ船

や高速艇のように全体強度が問題となり、さらに従来の実績からのスライド設計が成り立たない

構造については大波高時の全船 FEM 解析を行う必要があり、また、タンカーなどの太宗船につい

ても海象条件を明確にした設計波的手法に移行する動きがあるが、DILAM は設計波的手法に対応

しているため、不規則波を含む任意の時系列の設計波中での非線形応答解析が可能で、特に極限

状態を想定した解析に威力を発揮する。したがって、設計不規則波と組み合わせることによって、

より現実に近い最大応力に対する応答解析が期待できる。

これらの状況を踏まえ、本報告では、船体の座屈・崩壊強度や最終強度に関する極限海象につい

ての考察を行い、極限海象における船体応答に対する設計不規則波の適用性を議論する。

Fig.1 Contour Curves of Wave Scatter Diagram

Fig.2 Long-Term Distribution and Maximum Linear VBM in Short-Term Sea State of 10-5 Probability of

Occurrence

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5

7.5

8.5

9.5

10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

15.5

16.5

17.5

18.5

0.5

2.5

4.5

6.5

8.5

10.5

12.5

14.5

16.5

Tz [s]

Hs [m]

IACS North Atlantic

[MN-m]

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

10000

-9 -8 -7 -6 -5 -4log QL

Long-term Tz=9.5[s]

Tz=10.5[s] Tz=11.5[s]

Tz=12.5[s] Tz=13.5[s]

Tz=14.5[s] Tz=15.5[s]

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2. 極限海象の設定

船体の座屈・崩壊強度や最終強度の検討を行うためには、まず、最大応答を与えるような短期

海象(最悪短期海象または極限海象)を何らかの方法で推定しなければならない。長期予測法

では発現確率 10-8 に相当する応答値を最大応答値として設計に利用することになるが、船舶の

最大応答を考えた場合、すべての海象が最大値に影響を及ぼすのではなく、ある限られた厳し

い短期海象のみが影響を及ぼすであろうことは想像に難くない。河邊らや Baarholm and Moan

は 10-8 の長期の超過確率に対応する応答値は、ほぼ、最悪短期海象中での最大値に対応するこ

とを示した [10,11,12,13]。今、船の一生を20年と仮定し、短期海象の平均持続時間を3時間

とすると、船の一生の内である短期海象に1度だけ出合う確率は、

5107.1)2436520(/)3( −×=××= hoursdaysyearshoursp (1)

とすることができる。(1)式から、最悪短期海象が船の一生で1度だけ出合う最悪の海象である

とすると、最悪短期海象の発現確率は 10-5 のオーダーであると考えることができる。一方、船

の一生における時間は、

ssecond106.3seconds60minutes60hours24days365years20t 8×=××××= (2)

となり、波浪の平均波周期をほぼ 10 秒前後と仮定すると船の一生で出合う波の数はほぼ 108の

オーダーとなる。これより、最大応答値の発現確率を 10-8と仮定すると、短期の超過確率は、

35

8

2

2

101010

),()(

2exp)|( ===⎟⎟

⎞⎜⎜⎝

⎛−= −

TzHspxQ

RxRxQ L

S (3)

となる。すなわち、10-5 の発現確率の極限海象中の 1/1000 最大応答値が長期予測における 10-8

の超過確率の応答値(最大応答値)に対応することになる。

以上の議論より、10-5の発現確率を持つ短期海象を最悪短期海象と仮定することができるので、

これを設計短期海象(極限海象)と考えればよいことがわかる。しかしながら、10-5 の発現確

率を持つ短期海象は、1 つには定まらず、複数ある。Fig.1 に IACS で用いられている北大西洋

の短期海象の発現頻度分布を示す。この図で、最外側のコンターラインが 10-5 の発現確率を表

すが、設計短期海象はこのコンター上の海象であることになる。この設計短期海象中で 1/1000

最大応答値を求めれば長期予測における 10-8 の超過確率の応答値(最大応答値)を推定するこ

とができることになるが、この計算例を Fig.2 に示す。応答は 6214TEU コンテナ船の縦曲げモ

ーメントであり、図の実線は長期予測結果、破線と細線は 10-5 の発現確率の短期海象中におけ

る極値の超過確率を表す。短期海象における極値の超過確率は、図の破線(Tz=11.5s)の場合

の応答値が一番大きくなり、1/1000 最大値をみると 10-8の応答値の 96%の値となっている。こ

れより、10-5の発現確率の海象中から設計短期海象を定め、その中での 1/1000 最大応答値を求

めれば、長期予測の 10-8の応答値に対応する値を推定することができることが分かる。

3. 極限海象の有義波高と平均波周期の選定

長期予測を行えば、超過確率 10-8 に対応する応答値を求めることができるが、これからはど

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21

のような海象がこの応力レベルに有意であるのかはわからない。これを解決するために、応答

値の超過確率の密度関数を以下のように定義する [14]。

∫⎭⎬⎫

⎩⎨⎧

⋅−=

π

χπ

2

02

2

),()(2

exp21),( dTzHsp

HsRMTzHsq (4)

ここで、p(Hs,Tz) は波高 Hs、平均波周期 Tz の海象が発生する確率であり χ は船と波との出会

角である。長期予測においては(4)式を有義波高と平均波周期で積分することによって長期の超

過確率を求めることができるが、この密度関数の各超過確率に対する分布形状を調べればどの

短期海象がどの超過確率において支配的であるかがわかる。Fig.3 にこの密度関数の超過確率

10-5~10-8 における分布形状の例を示す。応答は 6214TEU コンテナ船の縦曲げモーメントであ

る。これらの図より、密度関数がある程度の値を持ついわゆる有意海象は 10-Nの N の値が大き

くなるにしたがって有義波高が低波高域から高波高域に移動しているが、波周期はその領域が

あまり変化しないことがわかる。このような図より、密度関数が大きな値を持つ海象(長期分

布に対する寄与度が大きい短期海象)を設計短期海象とすることができる。

Fig.3 Relative Contribution from Different Short-Term Sea States to the Exceeding Value in Long-Term

Distribution of VBM

4. 設計不規則波

船体に加わる荷重やそれによる船体応答を考えた場合、スラミングのようなある閾値を越え

ると現れるような非線形性を除けば、大抵の非線形性は波高の上昇とともに徐々に顕著になっ

てくる。したがって、ある強度にとって重要となる海象や波浪に注目すると、線形理論による

0.5

3.5

6.5

9.5

12.

5

15.5 1.5

9.5

17.5

0.0E+00

2.0E-08

4.0E-08

6.0E-08

8.0E-08

1.0E-07

HsTz

Q=10-7

0.5

3.5

6.5

9.5

12.

5

15.5 1.5

9.5

17.5

0.0E+00

2.0E-06

4.0E-06

6.0E-06

8.0E-06

1.0E-05

Hs

Tz

Q=10-5

0.5

3.5

6.5

9.5

12.5

15.5 1.5

9.517.5

0.0E+00

2.0E-07

4.0E-07

6.0E-07

8.0E-07

1.0E-06

Hs

Tz

Q=10-6

0.5

3.5

6.5

9.5

12.5

15.5 1.5

9.517.5

0.0E+00

2.0E-09

4.0E-09

6.0E-09

8.0E-09

1.0E-08

Hs

Tz

Q=10-8

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推定値は実際の値を過大・過小評価することになってもその強度に対してクリティカルな海象

や波浪を特定するという目的には使用できると考えられる。設計不規則波はある応答の最大値

が発生する海象や波浪を線形理論によって特定し、その中での応答については非線形理論等の

より精度の高い手法を用いて推定を行う、という考え方をベースとする。

1つの短期海象は有義波高と平均波周期で特定でき、一般に波スペクトルの形で表現される。

Fig.4 に最大値を1とした波スペクトルと応答スペクトルの一例を示す。通常の不規則波生成で

は波スペクトルのすべての周波数領域を分割して素成波を作るが、設計不規則波では応答スペ

クトルが有意となる周波数領域を選定し、波スペクトルにおいてこの周波数範囲に含まれる素

成波のみを取り出して不規則波を構成する。これは、図のように一般的に船体応答はある限ら

れた周波数領域において顕著になるため、この応答に有意な波成分のみを取り出すわけである。

実際の計算では、応答スペクトルのピーク値の α 倍となる周波数を上限・下限として、この周

波数範囲を定める。

Fig.4 Wave and Response Spectra

波スペクトル S(ω) において、前出で定めた周波数領域を N 分割し N 個の素成波を発生させ

るには(5)式を用いる。ここで、κi, ωi, εiは i 番目の素成波の波数、円周波数、位相差である。

∑=

−+Δ=N

iiiiiw tXSt

1

)cos()(2)( εωκωωζ (5)

(5)式の各素成波の位相差 εiは、一般的な不規則波を発生させる場合はランダムに定められるが、

設計不規則波ではある応答が最大になるようにそれぞれの素成波中での線形計算により得られ

るその応答の位相を採り、εi = -εMi とする。ここで、εMi は応答の位相差であり、最大応答値は

時刻 t=0 の時に発生することになる。

ここで注意しなければならないのは、波スペクトルの分割数 N は任意に定めることができる

が、(5)式より、N を大きくとればとるほど素成波を重畳した不規則波の最大振幅値は N の平方

根に比例して大きくなってしまうため、なんらかの方法で素成波の数を定めなければならない。

0.0

0.5

1.0

1.5 Ordinary Irregular Wave Components

Wave Spectrum

0.0

0.5

1.0

1.5 Design Irregular Wave ComponentsTarget Response SpectrumWave Spectrum

α

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23

ここでは、波スペクトルから生成した波はどのような重ね合わせがなされても砕波はしないと

考え、以下の制限を科すことにより N の値を決定することにする。

• 設計不規則波の波高は有義波高の β倍よりも小さい。

• 設計不規則波の最大岨度は δより小さい。

1 番目は波高の最大値の制限であり、β=1.934 とすれば最大波高を 1/1000 最大値程度に抑えるこ

とに相当する。2 番目は砕波の条件で、通常 δ=1/10 を用いる。これらの制限により、素成波の

数を 5-20 程度の値に一意に定めることができる。

(1)コンテナ船の縦強度に関する検討

以下では、まず、ハルガーダの曲げモーメントに関して、コンテナ船を対象として長期予測

結果と設計不規則波を用いた結果を比較し、縦強度に関する検討を行う。計算対象としたコン

テナ船は、S175 コンテナ船(L x B x d = 175m x 25.4m x 16.4m - 9.5m)と 6214TEU コンテナ船

(L x B x D – d = 283.8m x 40.0m x 17.0m - 13.07m)で、船速は、荒天中の航行を想定して航海速

力の 70%とした。

Fig.5 に長期予測によって得られた midship の縦曲げモーメントを船級協会規則での値と比較

して示す。これを見ると、S175 コンテナ船では船級協会規則による値は長期予測値の 10-4-10-6

の発現確率に対応する値になっているが、6214TEU コンテナ船では 10-3-10-4とかなり小さな曲

げモーメント値になっている。これは、最近のコンテナ船の大型化に伴って見られる現象であ

るが、この船級協会規則の値が大型コンテナ船に対しても妥当であるのか否かというのは、し

ばしば議論になる問題である。

Fig.5 Long-Term Exceeding VBM Rule-Based VBM

Table 1 Design Short-Term Sea State (IACS North-Atlantic)

Tz [s] 3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5 10.5 11.5 12.5 13.5 14.5 15.5 16.5

Hs [m] 0.5 3.5 5.5 8.5 10.5 12.5 13.5 14.5 15.5 15.5 14.5 14.5 13.5 10.5

Long-term exceeding VBMS175

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

0246810

- Log (Q)

M [MN-m]

Long-termIACS-hogIACS-sag

Long-term exceeding VBM6214TEU

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

0246810

- Log (Q)

M [MN-m]

Long-termIACS-hogIACS-sag

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さて、設計不規則波によって縦曲げモーメントの最大値を検討するためには、設計短期海象

を設定する必要がある。Fig.1 の最外側のコンターライン(10-5の発現確率)の海象を数値で表

すと Table 1 のようになるが、ここではこれらの短期海象中で設計不規則波を設定した。設計不

規則波の各時刻における波形の例を Fig.6 に示す。それぞれの短期海象は 10-8の超過確率に対す

る寄与度が最も大きい海象であり、図の横軸は船体固定座標で、船体は横軸の-0.5-0.5 に存在す

る。一方、波は図の右から左に進行する。図の縦軸は波の隆起を表し、線形計算では時刻 t=0 で

最大曲げモーメントが発生することになる。これらの図より、最大曲げモーメントは、大きな

波の山とそれに続く深い波の谷、その後のもう一つの波の山によって引き起こされることがわ

かる。

次に、設計不規則波中での船体応答を求めてみる。まず、線形ストリップ法を用いて、縦曲

げモーメントを求める。その結果を Fig.7 に示す。図は、横軸が短期海象の平均波周期で、縦軸

が最大曲げモーメントである。これを見ると、S175 コンテナ船では、平均波周期が 9.5s を超え

ると最大曲げモーメントが頭打ちになり、その値は長期予測の 10-6から 10-8の値の中間くらい

になっている。一方、6214TEU コンテナ船では、同様に平均波周期が 9.5s を超えると最大曲げ

モーメントが頭打ちになっているが、その値は長期予測の 10-8 の値を若干超える程度になって

いる。平均波周期が 9.5s を超えると最大曲げモーメントが頭打ちになるのは、設計不規則波の

砕波による制限条件のためである。なお、設計不規則波は、前述のように、長期予測における

10-8 の超過確率の値をターゲットとして、10-5の発生確率の短期海象中での 1/1000 最大値を推

定している。Fig.7 より、線形計算により得られた最大値は、ほぼ、長期予測における 10-8の発

現確率程度の値となっており、設計短期海象中の応答を設計不規則波によって求めると、10-8

発現確率の長期予測値に相当する値(船の一生における最大応答値)を推定することができる

ことがわかる。

Fig.6 Design Irregular Wave for VBM

t = - 6 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = - 4 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = - 2 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = 0 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = 2 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = 4 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = - 8 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

X/Lζ[m]

t = - 6 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = - 4 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = - 2 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = 0 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = 2 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = 4 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

t = - 8 sec.

-20

-10

0

10

20

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

X/Lζ[m]

S175 (Tz=9 5s 6214TEU (Tz=10 5s

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Fig.7 Maximum Linear VBM in DIW

Fig.8 Maximum Nonlinear VBM in DIW

Fig.9 Time History of Nonlinear VBM in DIW

次に、船体応答の非線形性の影響を調べるため、設計不規則波中で非線形シミュレーション

を実施する。用いた計算コードはスラミング等の非線形荷重を考慮できる TSLAM である [15]。

計算結果を Figs.8, 9 に示す。頭上げのピッチング運動の際、船首船底が波から露出し負の復原

力がなくなるため、Hogging モーメントは頭打ちとなっている。一方、頭下げのピッチング運

0

500

1000

1500

2000

3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5 10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

15.5

16.5Tz[s]

VBM[MN-m]

DIW

10-8

10-6

IACS

0

5000

10000

15000

3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5 10.5

11.5

12.5

13.5

14.5

15.5

16.5Tz[s]

VBM[MN-m]

DIW

10-8

10-6

IACS

S175 6214TEU

0

1000

2000

3000

3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5 10.5 11.5 12.5 13.5 14.5 15.5 16.5Tz[s]

VBM [MN-m]

DIW(+)

DIW(-)

10-8

10-6

IACS

0

5000

10000

15000

3.5 4.5 5.5 6.5 7.5 8.5 9.5 10.5 11.5 12.5 13.5 14.5 15.5 16.5Tz[s]

VBM [MN-m]

DIW(+)

DIW(-)

10-8

10-6

IACS

S175 6214TEU

Tz=11.5s

-15000

-10000

-5000

0

5000

10000

-20 -15 -10 -5 0 5 10time [s]

VBM [MN-m]

Sagging

Hogging

Tz=11.5s

-2500

-2000

-1500

-1000

-500

0

500

1000

1500

-20 -15 -10 -5 0 5 10

time [s]

VBM [MN-m]

Sagging

Hogging

S175 6214TEU

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動によって船首船底が波に突入する際スラミングを生じるが、その影響が Sagging モーメント

に現れる。このスラミング衝撃の影響は S175 コンテナ船では比較的顕著となり、かつ波浪によ

る Sagging モーメントも若干増加しているため、非線形 Sagging モーメントは線形値よりも大き

くなっている。一方、6214TEU コンテナ船の場合は、スラミング衝撃の影響があるものの波浪

による Sagging モーメントは若干減少しており、スラミング衝撃を考慮しても非線形 Sagging

モーメントは線形値より小さくなっている。これは、コンテナ船が大型化しても深さはそれほ

ど増加せず、相対的に浅い船型となっていることによる。図に示すように、スラミングによっ

て縦曲げモーメントの Sagging 側に衝撃的なピークが現れるが、この持続時間は非常に短く、

船体の剛性を考慮に入れればホイッピング振動が誘起されると考えられる。これらの衝撃的な

成分に関する検討は別途行う必要があるが、スラミング衝撃による影響を除外し、縦曲げモー

メントの非線形計算値の両振幅の 1/2 をとると、船級協会規則の値とほぼ程度か若干大きな値

となっている。Fig.5 に示すように、長期予測による波浪縦曲げモーメントは船が大きくなれば

なるほど船級協会の波浪曲げモーメントより過大な値となるが、コンテナ船の静水曲げモーメ

ントは Hogging であるので、実際の船の運用においてのトータルな曲げモーメントは Fig.5 の

長期予測値に現れるほどの大きな値にはなっていないのではないかと思われる。

(2)コンテナ船の局部応力に関する検討

設計不規則波はその中での応答が最大となるように不規則波を構成する各素成波の位相を

線形計算により得られる応答の位相の逆符号として与えるため、その生成にあたっては最大値

を求めようとする応答の応答関数の位相情報が必要であった。したがって、船体の局部応力の

最大値を推定する場合など、それを得るために膨大な FEM 解析が必要であるような場合は設

計不規則波の位相を簡単に決定できないという問題が生ずる。

一方、近年、船体構造解析において直接荷重解析法(DIrect Loading Analysis Method : DILAM)

という方法が実用化され、荷重の時系列データを直接 FEM 全船モデルに負荷する手法が開発

されてきた。この方法には、船体全体に作用する荷重を時系列として入力することができ、そ

れぞれの時刻において全体変形や応力分布を出力することができるというメリットがある。こ

こでは、この直接荷重解析法と設計不規則波を統合的に利用し、大型コンテナ船の局部応力の

最大値を推定する手法について検討を行い、局部応力を対象とした設計短期海象について考察

する。

計算は 6,200 TEU コンテナ船(L × B × D – d = 287.0m × 40.0m × 23.9 - 13.0m)について行い、

船速は、荒天中の航行を想定して航海速力の 70%とした。対象とした応力点は、Fig.10 に示す

ように、midship よりやや前方の断面 (Frame 186) の左右舷それぞれ 19 点と、船橋直前の断面

(Frame 86) の左右舷それぞれ 7 点であり、各点での船長方向(x 方向)応力と船幅方向(y 方

向)または上下方向(z 方向)応力について検討を行う。局部応力の応答関数を求めるために

は、線形ストリップ法を用いて船体運動と波浪変動圧の応答関数(振幅と位相)を計算し、こ

れらの応答関数を内圧・外圧・慣性力等の荷重の応答関数に変換して、応答関数より波条件ご

との荷重の時系列を計算し、対象船の全船 FEM モデルに荷重を加え、応力解析を行った。波

条件ごとに得られた各応力点での応力の時系列は、正弦補間して応力振幅と位相を算出し、応

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力応答関数とした。このようにして得られた応力の応答関数を用いて設計不規則波を生成した。

設計不規則波が生成されたら、直接荷重解析法のための荷重データを作成する。このようにし

て得られた荷重の時系列データを対象船の全船 FEM モデルに加え、応力解析を行うことによ

って、設計不規則波中での最大応力を求めることができる。

Fig.10 Stress Evaluation Points at Mid-Hold

Fig.11 Maximum Longitudinal Stress Fig.12 Maximum Transverse / Vertical Stress

さて、設計不規則波法では具体的な入射波形が与えられるため、非線形性を考慮した時刻歴

応答シミュレーションが可能である。また、直接荷重解析法では、運動や荷重の時系列データ

の入力が可能であるので、設計不規則波中で荷重の非線形性を考慮した応答シミュレーション

0

50

100

150

200

250

300

X01X02

X03X04

X05X06

X07X08

X09X10

X11X12

X13X14

X15X16

X17X18

X19X101

X102X103

X104X105

X106X107

[MPa]

Port

Starboard

0

10

20

30

40

50

60

70

Y01Y02

Y03Y04

Y05Z06Z07Z08Z09Y10

Y11Z12Z13Y14

Y15Y16

Y17Y18

Y19Y101

Y102Y103

Y104Y105

Y106Y107

[MPa]

Port

Starboard

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を行って運動応答と荷重応答を求めれば非線形性を考慮した応力応答を求めることができる。

しかしながら、ここでは簡単のために、縦曲げモーメントの線形・非線形計算より得られた非線

形影響係数 0.7 を線形計算値に乗じることによって非線形影響を表すこととした。

設計不規則波中での線形応答シミュレーションでは、各素成波の振幅をその波周波数での応

答関数値に乗じて重ね合わせることによって、最大応答を求めることができる。このようにし

て各短期海象中での各出合角における応力の最大値を求め、すべての中での最大値を各応力点

での最大応力として整理した。得られた結果を Figs.11, 12 に示す。図の横軸は応力の方向・点

番号を表している。なお、応力点は両舷にあるが、そのうちの大きい方の値が発生する短期海

象と出合角をまとめたものを Table 2 に示す。ここで、入射波は右舷から来るものとし、太字・

網掛けで表しているものは右舷(波上)側の応力点を示す。Figs.11, 12 と Table 2 を比較して見

ると、有義波高が 15.25m と観測される最大値程度に高くなっても最大応力値は現行の設計値を

大きく逸脱しておらず、このような値を合理的かつ簡便に求めることができる設計不規則波の

妥当性が示されていると考える。なお、船長方向以外の応力(船幅方向:y、深さ方向:z)に

ついては、有義波高がかなり高くなっても最大応力値はそれほど大きくはなっていない。

Table 2 より、最大応力が発生する短期海象の平均波周期はほぼ 12s-16s であり、有義波高は

ほとんどが有義波高 15.25m となっている。まずこの平均波周期について考察する。縦曲げモー

メント(VBM)とねじりモーメント(TM)の短期パラメータを最大にする波周期は、縦曲げ

モーメントが 12s (χ=180deg)、ねじりモーメントが 8s (χ=60deg)と、Table 2 に現れている波周期

よりも短かった。これは、設計不規則波の生成にあっては砕波が生じないという制限条件を用

いているが、このため、より短い平均波周期の海域では最大波高がそれほど大きくなり得ない。

したがって、平均波周期が長くなると最大波高はより大きくなり得るため、平均波周期が比較

的長い短期海象で最大応力値が出現しやすくなるためである。一方、有義波高については、ほ

とんどが計算に用いた最大値となっており、平均波周期とあわせて考えると、確率・統計的な

議論を別にすれば、応答に有意な周期の素成波を含み、その素成波の波高が高くなり得る海象

が最大応力に対して重要であることになる。

また、Table 2 より、船と波との出合角については、180deg、60deg、30deg という特定の波向

きが重要であることがわかる。縦曲げモーメント(VBM)、ねじりモーメント(TM)、波浪変

動水圧(midship 波上側静止喫水線)の応答関数より、χ=180deg は縦曲げモーメントの短期パ

ラメータや応答関数が有意となる場合であり、χ=60deg はねじりモーメントの短期パラメータ

や応答関数が有意となる場合である。また、χ=30 deg は変動水圧の影響を大きく受ける条件で

あることがわかる。このように、各荷重の応答関数の特徴を利用して設計条件における船と波

との出合角を定めることができることがわかった。

参考文献 1) P.S.Tromans, A.li.R.Anaturk and P.Hagemeijer, “A New Model for the Kinematics of Large Ocean

Waves, -Application as a Design Wave-“, Proc. 1st Int. Offshore Polar Eng. Conf., ISOPE, (1991),

pp.64-71.

2) P.Friis-Hansen and L.P.Nielsen, “On the New Wave Model for the Kinematics of Large Ocean

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29

Waves”, Proc. OMAE, Offshore Technology, 1A, (1995), pp.17-24.

3) L.J.M.Adegeest, A.Braathen and R.M.Lseth, “Use of Non-Linear Sea-Loads Simulations in Design

of Ships”, Proc. 7th PRADS, (1998), pp.53-58.

4) L.J.M.Adegeest, A.Braathen and T.Vada, “Evaluation of Methods for Estimation of Extreme

Nonlinear Ship Responses Based on Numerical Simulations and Model Test”, Proc. 22nd Symp. on

Naval Hydrodynamics, (1998), pp.84-99.

5) T.Fukasawa, “On the Design Wave for Collapse Strength of a Ship”, 9th Technical Exchange and

Advisory Meeting, TEAM’95, (1995), pp.187-201.

6) 深沢塔一、”設計不規則波を用いた最大応答推定法(第1報:縦曲げモーメントの推定)”、

日本船舶海洋工学会論文集、Vol.2, December 2005, pp.123-129.

7) 深沢塔一、金平裕次、宮崎智、”設計不規則波を用いた最大応答推定法(第2報:コンテナ

船の局部応力の推定)”、日本船舶海洋工学会論文集, Vol.4, December 2006, pp.221-227.

8) S. Inoue, K. Sato and H. Otsuka, “DILAM- Latest technology for full spectral ship structural

analysis”, 12th International Conference on Computer Applications in Shipbuilding, Conference

Proceedings, Vol.1, (2005), pp.265-274.

9) 佐藤宏一, “荷重構造一貫解析システム「MHI-DILAM」の紹介”、日本船舶海洋工学会誌

KANRIN(咸臨)、第 6 号、(2006)、pp.22-27.

10) 河辺寛、日比茂幸、田中洋志、柴崎公太、笹島洋、“波浪荷重の長期分布と遭遇海 象との

関係 (第1報 波浪荷重の最大値と想定海象)”、日本造船学会論文集、 第 186 号、(1999)、

pp.319-339.

11) 河辺寛、田中洋志、柴崎公太, “波浪荷重の長期分布と遭遇海象との関係 (第2報 疲労被

害度と想定海象)”、日本造船学会論文集、第 187 号、(2000)、 pp.253-263.

12) G.Sagli Baarholm and T.Moan, “Estimation of nonlinear long-term extremes of hull girder loads in

ships”, J. Marine Structures 13, (2000), pp 495-516.

13) G.Sagli Baarholm and T.Moan, “Application of Contour Line Method to Estimate Extreme Hull

Loads Considering Operational Restrictions”, J. Ship Research, Vol.45, No. 3, (2001).

14) T.Fukasawa, “On the Effect of Sea Condition upon Fatigue Strength of a Ship”, 11th Asian

Technical Exchange and Advisory Meeting on Marine Structures, TEAM’97, (1997), pp.312-319.

15) Y.Yamamoto, M.Fujino and T.Fukasawa, “Motion and Longitudinal Strength of a Ship in Head Sea

and the Effects of Non-Linearities”, Naval Architecture and Ocean Engineering, SNAJ, Vol.18,

(1980), pp.91-100.

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30

Table 2 Short-Term Sea State and Ship Heading Angle to Wave for Maximum Stress

Tz [s] Hs [m] χ [deg] Tz [s] Hs [m] χ [deg]

X01 16 15.25 180 Y01 18 15.25 150

X02 16 15.25 180 Y02 12 13.25 60

X03 16 15.25 180 Y03 12 13.25 60

X04 16 15.25 180 Y04 12 13.25 60

X05 16 15.25 180 Y05 16 15.25 180

X06 16 15.25 180 Z06 14 15.25 30

X07 18 15.25 150 Z07 14 15.25 30

X08 12 13.25 60 Z08 16 15.25 60

X09 14 15.25 60 Z09 14 15.25 60

X10 12 15.25 60 Y10 14 15.25 60

X11 14 15.25 60 Y11 14 15.25 60

X12 12 13.25 60 Z12 14 15.25 30

X13 14 15.25 60 Z13 14 15.25 30

X14 14 15.25 60 Y14 14 15.25 60

X15 14 15.25 60 Y15 14 15.25 60

X16 16 15.25 30 Y16 14 15.25 30

X17 16 15.25 30 Y17 14 15.25 30

X18 12 13.25 60 Y18 8 15.25 30

X19 16 15.25 180 Y19 14 15.25 30

X101 14 15.25 60 Y101 14 14.25 60

X102 16 14.25 150 Y102 14 14.25 60

X103 16 15.25 180 Y103 14 15.25 60

X104 14 15.25 60 Y104 14 15.25 60

X105 16 15.25 180 Y105 14 15.25 60

X106 14 15.25 180 Y106 12 15.25 60

X107 12 14.25 150 Y107 12 15.25 60

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31

第 4 章 座屈および最終強度に関する検討

4.1 CSR-BC における最終強度算定法について

九州大学 吉川 孝男

1.CSR の Bulk ルールにおける縦曲げ最終強度計算方法

CSR の Bulk ルールにおいては、縦曲げ最終強度の計算方法として、①Smith の方法を適用

する方法、②有限要素法を適用する方法の 2 つが示されている。このうち、有限要素法に関して

は、基本的な概念が説明されているにすぎないが、Smith の方法に関しては、縦強度に寄与す

る部材の平均応力~平均歪関係を含めて、具体的な計算方法が規定されている。すなわち、

①船体横断面を構成する部材を Table 1 に示す区分を用いて、防撓パネル要素およびパネ

ル要素に分割し、各部材(要素)に軸荷重が作用したときの平均応力~平均歪関係を求め

る。

②要素の最大軸歪増分が降伏応力の1/10となるように設定して防撓パネル要素の初期剛性

を計算し、船体横断面の中性軸位置を計算する。

③断面に生じる曲率を順次増加させて、増分計算を行う。

④増分計算の各段階において、断面を構成する各部材に生じる軸歪を(曲率)×(中性軸か

らの距離)で計算し、①で与えた平均応力~平均歪関係を用いて各部材に生じる軸応力

を計算する。その際、船体横断面の中性軸位置は、断面全体の軸力がゼロとなる条件から

求める。

⑤各部材に生じる軸力に船体横断面の中性軸からの距離を乗じて、断面の曲げモーメントを

計算する。

⑥計算された曲げモーメントを、前ステップにおける曲げモーメントと比較し、もし、減少してい

れば、前ステップの曲げモーメントを縦曲げ最終強度とする。そうでなければ、ステップ④に

戻り、増分計算を繰り返す。

なお、Bulk ルールにおいては、Table 1 に区分した部材の平均応力~平均歪関係を数式の

形で与えている。例として、座屈が生じないときの平均応力~平均歪関係をFig.1(a)で、また、曲

げ座屈を伴う部材の平均応力~平均歪関係を Fig.1(b)のように与えている。(部材の平均応力

~平均歪関係の詳細については、ルールを参照のこと。)

Table 1 Modes of failure of plating panel and ordinary stiffeners

Element Mode of failure

Lengthened transversely framed plating panel or ordinary stiffeners

Elasto-plastic collapse

Shortened ordinary stiffeners Bending column buckling

Torsional buckling

Web local buckling

Shortened transversely framed plating panel Panel buckling

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(a) elastic-plastic element (b)element collapsing by buckling

Fig.1 Average stress strain relationship

2.縦曲げ最終強度の計算例 CSR の Bulk ルールの記された方法に沿って、船体横断面に生じる曲げ曲率とモーメン

トの関係を求めるプログラムを作成した。さらに、このプログラムを用いて、

ISSC2000VI.2 のベンチマークで取り上げられた Bulk Carrier の船体中央断面(Fig.2 参

照)を例に、Hogging モーメントおよび Sagging モーメントに場合について、曲げ曲率と

モーメントの関係、および断面中性軸位置の上下方向の変化を調べた。

計算結果を Fig.3 および Fig.4 に示す。なお、縦曲げ最終強度(モーメントの最大値)

は、阪大、矢尾先生の計算結果(第 2回西部支部構造研究会資料 2-5a)と1%以内の誤差

で一致することを確認している。

Hogging モーメントが作用する場合には、

まず、デッキが引張り域で降伏応力に達する。

このため、デッキの剛性低下により、まず、中

性軸が下方に移動する。さらに、モーメントが

増加すると今度は bottom に座屈が生じ、これに

より中性軸は再び上方に移動する。このとき、

断面としての最終強度を示すようになる。

これに対して、Sagging モーメントが作用した

場合には、まず deck が圧縮により座屈し、

このとき、断面としての最終強度を示している。

Deck が座屈した場合の剛性低下は、引張り

降伏した場合よりも大きく、このため、中性軸

の移動の割合は Hogging モーメントの場合より

大きくなる。また、モーメントは曲率の増加と

ともに急激に減少している。

eHR−

eHR

σ

CRσ

ε

σ

FiFig.2 Misdship section of Bulk carrier

(Bench mark example of ISSC2000VI.2)

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Vertical bending moment

0

5

10

15

20

0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004

Curvature (1/m)

Mom

ent

(×10

9N

m)

①②

Position of neutral axis

0

2

4

6

8

10

12

14

0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004

Curvature (1/m)

Hig

ht

of

neutr

al a

xis

(m)

①②

(a) Vertical bending moment and curvature

(b) Position of neutral axis

(c) Stress distribution through thickness

Fig.3 Calculation result at hogging moment

NA NA

①yielding

NA

yielding

②buckling

deck

bottom

+ +

- --

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34

Vertical bending moment

0

5

10

15

20

0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004

Curvture (1/m)

Mom

ent

(×10

9N

m)

Position of neutral axis

0

2

4

6

8

10

12

14

0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004

Curvature (1/m)

Heig

ht

of

neutr

al a

xis

(m)

NA

buckling

②yielding +

NA NA

NA

①buckling

NA

deck

bottom +

- -

(a) Vertical bending moment and curvature

(b) Position of neutral axis

(c) Stress distribution through thickness

Fig.4 Calculation result at hogging moment

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3.縦強度部材の座屈、座屈後挙動モデル化の妥当性検討

Bulk ルールにおいては、前述したように Table 1 に区分した部材に対して、平均応力~平均

歪関係を数式の形(以下、CSR 算式と呼ぶ)で与えている。

このモデル化(数式)の妥当性を調べるため、汎用 FEM 解析プログラム ANSYS を用いて弾塑

性大たわみ解析を行い、圧縮を受ける補強材付き平板の平均応力~平均歪関係(座屈、座屈

後挙動を含む)を求め、CSR 算式との比較を行った。

FEM 解析では、Fig.5 に示す Triple Span-double bay モデルを用いた。構造および座屈変形

の対称性を考慮して、荷重辺ではx方向に一様変位を与え、y 軸回転変位を拘束した。また、荷

重に平行な境界ではy方向に変位一様とし、x軸回転変位を拘束した。また、Trans.部材はモデ

ル化していないが、パネルは trans.位置で撓みを拘束している。

初期たわみとしては、パネルには弾性座屈のモードを与え、補強材には横倒れ座屈モードと

ウェブの局部座屈モードを与えて計算した。なお、パネルにやせ馬モードの初期たわみは今回

与えていない。なお、初期たわみの最大値は、stiffener space の 1/200 とした。 FEM 解析モデ

ルを Fig.6 に示す。

・パネルに与えた初期撓み

弾性座屈モード by

axmw pp

ππδ sinsin00 = ①

・補強材に与えた初期撓み

横倒れ座屈モード ⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−=

ws h

zaxBv

2cos1sin00

ππ ②

補強材付き平板の座屈および座屈後挙動は、平板の寸法および補強材の寸法によって変わ

る。そこで、板が最初に座屈する寸法の場合の計算結果を Fig.7 に、補強材が捩り座屈する場

合を Fig.8 に、補強材のウェブが局部座屈する寸法の場合を Fig.9 に示す。また、横方向に補強

される船側外板を想定した圧縮を受ける幅広平板の場合の解析結果を Fig.10 に示す。

補強材付き平板については、いずれの座屈モードについてもピーク荷重については、CSR 算

式の結果は FEM 解析とよく一致しているが、座屈後の荷重についてはルールで示されている

CSR 算式の方が最大10%程度低めの荷重を与える場合のあることが確認できた。

また、幅広平板の場合には、CSR 算式は最大荷重については初期たわみがきわめて小さい

場合の FEM 解析結果に近く、座屈後強度は FEM より若干高めの値を与えていることがわかっ

た。

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Fig.5 Calculation range of stiffened panel

Fig.6 Model for calculation of stiffened panel

a a

b

b

a

b/2

b/2 xσxσ

t

Trans. Trans. Trans. Trans.

Long

Long

Long

x

x

2a

b

a×b×t=2400×800×15 [mm]

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Fig.7 Relation between axial strain and stress

(When lateral buckling of plate occurs)

Fig.8 Relation between axial strain and stress

(When torsional buckling of stiffener occurs)

0

50

100

150

200

250

300

350

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

Strein = ε/εy

Str

ess

σ (

MP

a)

CR1(lateral buckling)

CR2(torsional buckling)

CR3(Web local buckling

ANSYS

0

50

100

150

200

250

300

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

Strain = ε/εy

Str

ess

σ(M

Pa)

CR1(lateral buckling)

CR2(torsional buckling

CR3(Web local buckling)

By FEM(ANSYS)

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Fig.9 Relation between axial strain and stress

(When local buckling of web plate occurs)

Fig.10 Relation between axial strain and stress

(transversely framed plating panel)

0

50

100

150

200

250

300

350

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

Strain = ε/εy

Str

ess

σ (

MP

a)

CR1(iateral buckling)

CR2(torsional buckling)

CR3(Web localbuckling)

By FEM (ANSYS)

0

50

100

150

200

0 1 2 3 4 5

Strain = ε/εy

Str

ess

σ (

MP

a)

CSR (Plate buckling)

ANSYS(δ=1mm)

ANSYS(δ=4mm)

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4.縦曲げ最終強度計算結果の妥当性の検証

CSR の Bulk ルールに基づいた船体縦曲げ最終強度計算の妥当性の検証に関しては、付録(1)に示した Committee Report: Comparative studies on the evaluations of buckling/ultimate strength and fatigue strength based on IACS JTP and JBP rules において、解析コード

HULLST を用いた計算結果との比較によってなされている。HULLST は広島大学および大阪

大学で作成された解析プログラムで、船体縦強度に寄与する部材の構造要素の平均応力と平均

ひずみの関係を準解析的な手法で求め、これを用いて縦曲げモーメントと曲げ曲率の関係を求

めている。付録(1)の計算結果の一部を以下に示す。Fig.11 の(a)と(b)は Sagging および Hoggingモーメント負荷に対する縦曲げ最終強度の計算結果を、HULUST を用いた値(横軸)と CSRの Bulk ルールに基づいた最終強度の計算結果(縦軸)を表しているが、両者はほぼ一致しており、

後者が最終強度について良い評価を与えていることが確認されている。 また、Fig.12 の(a)と(b)は、Sagging および Hogging モーメント負荷における縦曲げ最終強

度と船体横断面の初期降伏モーメントを比較したものであるが、図より、Sagging モーメント

の場合には縦曲げ最終強度は初期降伏モーメントとほぼ一致することがわかる。

Fig.11 Comparison hull girder strength by JBP method and HULLST

Fig.12 Comparison of initial yielding strength with ultimate hull girder strength

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5.縦曲げ最終強度に及ぼす水圧、貨物圧の影響についての検討

2.項で解析結果を示した CSR の Bulk ルールに基づく船体縦曲げ最終強度計算では、横圧によっ

て生じる応力の影響を考慮していない。

ここでは、二重底部分に着目して、Fig.13 に示す水圧によって、Fig.14 に示す変形が生じることを

想定し、内底板および船底外板の船長方向にそれぞれ引張り応力と圧縮応力が生じる hold 中央、

あるいはその逆の応力が生じる hold 端部近傍の横断面における最終強度を調べた。

船体横断面の曲率と曲げモーメントの関係を求める計算では、船底外板および内底板に初期応

力を導入して、その影響を考慮して補強材付き平板の座屈および座屈後挙動、あるいは引張り降伏、

降伏後挙動を CSR 算定式に沿って計算した。なお、水圧によって生じる初期応力は MPa80± とし

た。

Hogging モーメント作用時の曲率と曲げモーメントの関係を Fig.15 に示す。また、初期応力を考

慮した場合と考慮しない場合の最終強度の比較を Table 2 に示す。水圧によって船底外板および内

底板に生じる船長方向初期応力は、Hogging モーメント作用時に2%程度、縦曲げ最終強度を低下

させるが、Sagging 状態ではほとんど影響がないことが確認できた。

Double bottom under water pressure Bulkhead

Pressure Draft17m

1 Hold length ; 20m

Fig.13 Pressure acted on bottom plate

Water pressure

+ーー

End of hold Mid span of hold

Bulkhead Bulkhead

Inner bottom

Bottom plate

Longitudinal direction

Fig.14 Longitudinal stress of bottom and inner bottom plate caused by pressure

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Fig.13 The effect of initial stress on hull girder ultimate strength 6.結言

CSR の Bulk ルールの記された方法に沿って船体横断面に生じる曲げ曲率とモーメントの関係

を求めるプログラムを作成し、まず、1 隻の Bulk Carrier の船体中央断面に対して、Hogging およ

び Sagging モーメントが負荷される場合について曲げ曲率とモーメントの関係を調べた。

その結果、Hogging の場合には、まず、デッキが引張り域で降伏応力に達するが、その後も

断面の負荷モーメントは増加し、次に bottom に座屈が生じて断面としての最終強度を示すよう

になる。これに対して、Sagging モーメントが作用した場合には、まず deck が圧縮により座屈し、

この時点でほぼ断面としての最終強度を示していることを確認した。このため、Sagging の場合に

は、断面の初期降モーメントがほぼ最終強度を与えるのに対して、Hogging の場合には最終強

Table 2 The effect of initial stress on hull girder ultimate strength(%)

-0.4 % +1.7 % Hold end

+0.01 % -2.1 % Mid span

Location Hogging Sagging

0

5

10

15

20

0 0.0001 0.0002 0.0003 0.0004

Curvature (1/m)

Mom

ent

(×109

Nm

)

With initial stress (Mid span)

With initial stress (Hold end)

Without initial stress

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度は初期降伏モーメントより少し大きな値になる。

つぎに、CSR の Bulk ルールにおいて数式の形で与えている船体横断面を構成する部材の平

均応力~平均歪関係の妥当性を検証するために、種々の崩壊モードで崩壊する部材寸法に対

して、FEM でその挙動を求めて比較した。その結果、補強材付き平板については、いずれの座

屈モードについてもピーク荷重については、CSR 算式の結果は FEM 解析とよく一致しているが、

座屈後の荷重については CSR 算式の方が最大10%程度低めの荷重を与える場合のあること

が確認できた。また、幅広平板の場合には、CSR 算式は最大荷重については初期たわみがき

わめて小さい場合の FEM 解析結果に近く、座屈後強度は FEM より若干高めの値を与えている

ことがわかった。なお、この算式を適用して求めた船体縦曲げ最終強度についても、良い評価を

与えることが、別途確認されている。 さらに、Empty HOLD の二重底部分に作用する水圧によって生じる初期応力が縦曲げ最終

強度に及ぼす影響についても検討した。その結果、船長方向初期応力は、Hogging モーメン

ト作用時に2%程度、縦曲げ最終強度を低下させるが、Sagging 状態ではほとんど影響がな

いことが確認できた。 参考文献 1.Yao,T. et al.: Report of Special Task Committee VI.2 "Ultimate Hull Girder Strength”,

Proc. ISSC,Vol.2(2000),pp.321-391

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43

4.2 二軸圧縮と横圧を受ける防撓パネルの最終強度

広島大学 藤久保昌彦

1. 緒言

二軸圧縮と横圧の組み合わせ荷重を受ける防撓パネルの最終強度を JTP ルールおよび JBPルールの方法を用いて解析し,FEM 解析との比較より,両ルールの最終強度計算法の適用性を

検討する。FEM 解析にはシェル有限要素解析コード ULSAS を使用する。ULSAS の精度は,

ISSC のベンチマークスタディ等により既に検証されている[1]。 はじめに JTP ルールで適用される DNV 準拠の PULS システムと JBP ルールで適用される

GL 準拠の最終強度計算法の概要を述べる。つぎに二軸圧縮荷重下の矩形板および防撓パネル

の最終強度を PULS, GL 算式および FEM で比較する。最後に二軸圧縮と横圧の組み合わせ荷

重の場合について比較・検討を行う。

2. JTP/JBP ルールの最終強度推定法の概要

2. 1 JTP ルール

JTP ルールで適用される PULS(Plate Ultimate Limit State)システムは,以下の特徴を

有する半解析的最終強度解析プログラムである[2,3]。 (1) 防撓パネルの変形を,防撓材のたわみを拘束した状態での板・防撓材連成の局部座屈モ

ードと,防撓材のたわみを伴う全体座屈モードの和で表す。 (2) 局部座屈モードは,Fig.1 のたわみモードの重ねあわせで表す。例えば同図(c)のモード

により,矩形板の座屈に対する防撓材の影響が考慮される。 (3) 矩形板のたわみを,4辺単純支持および防撓材辺固定・他辺単純支持の各境界条件を満

足する2種類のフーリエ級数の和で表す。長さ方向のたわみの半波数は板と防撓材で同

一とする。 (4) 局部座屈挙動は,局部構造モデルに弾性大たわみ理論を適用して定式化する。 (5) 全体座屈挙動は,防撓パネル全体を等価異方性板に置き換えて解析する。等価異方性板

の剛性は,局部構造モデルから算出する。

Fig.1 PULS local model with assumed deflection mode

(a)

(b) (c)

(d) (e)

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(6) 局部構造モデルと全体異方性板モデルを組み合わせた弾性大たわみ解析から求められる

メンブレン応力が,板周縁部,防撓材頂部など予め指定された降伏判定点のいずれかで

最初に降伏条件を満足する時点をもって最終強度とする。 (7) 初期たわみ形状は,上記の局部および全体モデルの弾性固有値解析から求められる座屈

モードの足し合わせで表す。溶接残留応力は考慮しない。 2. 2 JBP ルール

JBP ルールで適用される GL 準拠の最終強度計算法には,防撓材間の板の崩壊を対象とす

る single plate field と防撓パネルの崩壊を対象とする partial plate field の2つの評価モデル

がある。single plate field については横圧の影響は考慮しない。一方 partial plate field につ

いては横圧による防撓材のたわみおよび曲げ応力と,圧縮力による曲げモーメントの増加を考

慮する。防撓材には lateral buckling と torsional buckling を考える。最終強度σuは,各崩

壊モードの最終強度の最小値として次式のように与えられる。 σu=Min[single plate, Min.[lateral buckling, torsional buckling]] (1)

GL 算式の特徴の一つに,single plate field に適用されるポアソン効果に関する補正がある。

これは,FEM 解析結果のように応力成分にポアソン効果の影響が含まれる場合は,次式のよう

にポアソン効果分を差し引いた応力σx およびσy について最終強度算式と比較を行う考え方で

ある。

( ) ( )( ) ( )

* * 2

* * 2

1

1

x x y

y y x

σ σ υσ υ

σ σ υσ υ

= − −

= − − (2)

ここでνはポアソン比,またσx*およびσy*は FEM 解析結果を表す。このような補正は,最終

強度算式が周辺部材による拘束のない条件での実験結果等に基づくことによる。ただし,座屈

崩壊挙動の場合,ポアソン効果は降伏および座屈によって変化する。また式(2)の補正項-νσ

y*および-νσx*は非載荷辺が完全固定の場合に相当するが,現実にはそのような拘束状態は

存在しない。これらの点でやや合理性に欠くといえる。なお,式(2)を介して与えられる最終強

度相関関係は,σxあるいはσyによる単軸圧縮最終強度は越えないものとする。 3. FEM 解析モデル

二軸圧縮および横圧を受ける防撓パネルの最終強度を FEM により解析し,PULS および GL算式による推定値と比較する。解析には Fig.2 に斜線で示す領域のトリプルスパン・ダブルベ

イモデルを用いる。このモデルでは,y 軸に平行なモデル端面(スパン中央断面)に周期対称

条件を課すことにより,x 方向に任意の半波数の座屈変形を解析できる。また横圧によるトラ

ンス材に関して対称なたわみモードから座屈による非対称なたわみモードへの変化も考慮でき

る。なおトランス材はモデル化せず,トランス材位置で板のたわみを拘束する。シェル要素に

はたわみおよび面内変位を双一次式で表す4節点アイソパラメトリック要素を使用する。要素

分割は1ロンジスペース当たり 8 分割とし,板の長さ方向および防撓材のウェブ深さ方向も同

程度の要素サイズに分割する。防撓材のフランジは幅方向に6分割する。

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ロンジスペースは b=800mm 固定とし,アスペクト比 a/b,板厚 t,防撓材の形状およびサイ

ズを変化させる。ヤング率 E,ポアソン比νおよび降伏応力σYはそれぞれ 205.8GPa, 0.3 および 314MPa とする。ひずみ硬化は考慮しない。

GL 算式では,板,防撓材とも初期たわみは陽に考慮されていない。一方, PULS では,既

述のように弾性固有値解析から求められる局部および全体座屈モードの初期たわみを仮定する。

局部座屈モードの初期たわみは,後出の Fig.6(a)に示すように板と防撓材で同じ半波数を有す

る。全体座屈モードの初期たわみは,防撓パネル全体を周辺単純支持の異方性板と見なしたと

きの座屈モードである。初期たわみの最大値には,局部座屈モードについてはロンジスペース

の1/200が,また全体座屈モードについてはスパンの1/1000がデフォルト値として設定される。 本研究の FEM 解析では,矩形板と防撓材の初期たわみを以下のように独立に仮定して両者

を足し合わせる。まず矩形板の初期たわみとして,式(3)の弾性座屈モードと式(4)のやせ馬モー

ドの2ケースを考える。後者はすべてのパネルで同一方向に与える。

0 0 sin sinp pm x yw

a bπ πδ= (3)

0 0 sin sinp p mm

m x ywa bπ πδ= ∑ (4)

一般に板厚に対する最大初期たわみの比は薄板ほど大きい。例えば Smith は,実測値を基に

平均的な最大初期たわみ量を細長比 / /Yb t Eβ σ= の関数として 20 0.1p tδ β= のように与えてい

る。これに対し PULS では,細長比に依らず最大初期たわみをロンジスペースの関数としてお

りやや合理性に欠く。しかしここでは比較のため,最大初期たわみ量は PULS のデフォルト値

とする。式(4)のやせ馬モードには矢尾らにより提案された実測初期たわみ形状に基づくたわみ

モードを仮定する[4]。最大値はここでも PULS と同じとする。また防撓材およびトランス材を

はさんで非対称な座屈たわみを誘起するため,隣接するスパンおよびベイで最大初期たわみ量

を 10%変化させる[5]。防撓材には,Fig.3 に示す1半波の曲げおよび曲げ捩り座屈モードの初

期たわみを与える。最大値は PULS のデフォルト値であるスパンの 1/1000 を仮定する。

(a) Plate panel (b) Stiffener

Fig.3 Initial deflection Fig.2 A continuous stiffened panel

b

b

σ σy

x

Long.

Long.

Long.

a/2

b/2

b/2

a/2

a aa

tp

Trans. Trans.Trans.Trans.

x x

σy

σy

q

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4. 解析結果および考察

4. 1 二軸圧縮を受ける矩形板の最終強度

基本的な場合として,二軸圧縮を受ける周辺単純支持矩形板の最終強度を解析した。FEM 解

析では,Fig.2 のモデルではなく,単位矩形板を切り出して周辺単純支持条件で解析した。PULSでは unstiffened panel 用のプログラム (U3)を使用し,入力オプションとして,すべての辺に

simply-supported condition を指定した。 Fig.4 に板厚が 15mm と 25mm の場合の最終強度相関関係を示す。板厚 15mm では PULS

と FEM は比較的良く一致しているが,板厚 25mm では,横圧縮σyが支配的な荷重比で PULSは FEM よりかなり高めの最終強度を与える。この原因として,PULS はメンブレン応力のみ

で降伏を判定するため,厚板で曲げ応力が相対的に大きい場合ほど発生応力を過小に,したが

って最終強度を過大に評価することが考えられる。この点について PULS 開発グループに照会

した結果,次の点が明らかになった。 (1) PULS(U3)の unstiffened panel は,単独矩形板ではなく,multi-bay 領域に渡る連続パ

ネル(Integrated panel)の座屈を対象としている。 (2) Integrated panel では,現実のやせ馬モードの初期たわみが周辺単純支持モードの座屈

の発生に抵抗する効果を考慮して,Fig.1(b)の固定モードのたわみ成分を入れている。

PULS 入力画面の”simply-supported”は,この状態に対応している。Option の rotational constraint は,この状態にさらに周辺部材による回転拘束を考慮する場合である。

(3) 固定モードの初期たわみ成分の大きさは,推定値が既存 DNV 規則に適合するようチュ

ーニングされている。 このように,PULS による最終強度推定値には,既存の DNV 規則に基づく implicit なチュ

ーニングがなされている点に留意が必要である。したがって,上述のメンブレン応力による降

伏判定が最終強度にどの程度影響しているかは不明である。

(a) t=15mm (b) t=25mm Fig.4 Ultimate-strength interaction relationships obtained by PULS, GL and FEM

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

PULSFEM (δ

p0 of buckling mode)

FEM (δp0

of hungry horse mode)

σ y /

σY

σx / σ

Y

aXbXt=2400X800X25mm

δp0

= 4.0mm (default value in PULS)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

PULSFEM (δ

p0 of buckling mode)

FEM (δp0

of hungry horse mode)

σ y /

σY

σx / σ

Y

δp0

= 4.0mm (default value in PULS)

aXbXt=2400X800X15mm

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4. 2 縦圧縮を受ける防撓パネルの最終強度

比較的ウェブ高さの大きい tee-bar 防撓材を有する連続防撓パネルに縦圧縮(防撓材方向の

圧縮)が作用する場合について最終強度を解析した。Fig.5 に,パネル板厚 15mm と 20mm に

ついて得られたウェブ高さ h と最終強度の関係を示す。防撓材の断面寸法は,JTP ルールの許

容寸法の範囲にある。長さ方向 5 半波の座屈モードの初期たわみを矩形板に,また長さ方向1

半波の曲げ捩り座屈モードの初期たわみを防撓材に仮定したFEM解析結果をCase-1として示

す。図のように,いずれのパネル板厚でも FEM 解析結果は,ウェブ高さが増すほど最終強度

は低下する。これに対し PULS では h=550mm 程度まで最終強度はほぼ一定で,それを越える

と,最終強度はウェブ高さと共にむしろ増加する。 Fig.6 に h=550mm の場合の最終強度時点の変形を比較する。PULS は,図に見られるパネ

ル・防撓材連成の弾性局部座屈モードの初期たわみがそのまま増大し,防撓材頂部が降伏した

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

350 400 450 500 550 600 650 700

PULSFEM, CASE1FEM, CASE2FEM, CASE3

CASE1CASE2CASE3

Panelm=5m=1m=5

Stiffenerm=1m=1

m=1+5

Initial deflection

σu / σ

Y

h (mm)

aXbXtp=4000X800X15mm

tee-bar : tw=13.5, b

f=150, t

f=25mm

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

350 400 450 500 550 600 650 700

PULSFEM, CASE1FEM, CASE2FEM, CASE3

σu / σ

Y

h (mm)

aXbXtp=4000X800X20mm

tee-bar : tw=13.5, b

f=150, t

f=25mm

Fig.5 Relationships between ultimate strength of stiffened panel under longitudinal thrust and web height

(a) t=15mm (b) t=20mm

Trans.

Trans.

Fig.6 Comparison of collapse modes of stiffened panels between PULS and FEM (t=15mm)

(a) PULS (h=550mm, m=6) (b) FEM (h=550mm, m=5)

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時点で最終強度と判定される。これに対し FEM では,パネルが局部座屈した後,防撓材頂部

が降伏すると,防撓材に長さ方向 1 半波の曲げ捩り座屈が生じて最終強度に達する。ウェブ高

さ h が大きいほど曲げ捩り座屈強度が低下するため,最終強度も低下する。 一般に最終強度解析では,安全側の強度推定を意図して,PULS と同様に弾性座屈モードの

初期たわみが仮定される場合が多い。しかしながら,本解析例のようにフランジの降伏によっ

て最終強度が決定するような降伏支配型の座屈崩壊の場合は,弾性座屈モードの初期たわみが

必ずしも安全側の強度予測につながらないことに留意が必要である。Fig.7 は,防撓材に長さ方

向 1 半波と 5 半波の 2 つの初期たわみ成分を仮定して解析を行った場合の最終強度前と最終強

度後の変形と降伏域の広がりを示す。また最終強度を Case-3 として Fig.5(a)に示す。最終強度

は Case-1 とほぼ一致しており,また崩壊モードからも,初期たわみに 5 半波成分が存在して

も最終的に1半波成分が成長して崩壊することが分かる。 (a) Pre-ultimate strength (b) Post-ultimate strength

Fig.7 Deformation of stiffened plate obtained by ULSAS FE analysis (t=15mm, h=550mm, initial deformation of CASE3)

4. 3 二軸圧縮を受ける防撓パネルの最終強度

二軸圧縮を受ける連続防撓パネルの最終強度を,いくつかのパネル板厚と防撓材の組み合わ

せについて解析した。Table 1 に防撓材の断面寸法を示す。断面形状として tee-bar, angle-bar, flat-bar の 3 種類を取り上げ,同じ断面二次モーメントを有する 3 つのケースを考えた。また

FEM 解析では,弾性座屈モード(BL)とやせ馬モード(HH)の2種類の初期たわみについ

て解析した。Fig.8 に最終強度相関関係を示す。 Fig.8 から,以下の傾向が認められる。 (1) やせ馬モードの初期たわみは座屈モードのたわみの発生に抵抗するため,いずれの図で

もやせ馬モードの方が座屈モードよりも最終強度は高めである。また厚板ほどその傾向

が顕著である。

Trans.

Trans.

YIELDING (%) 0 100

DEFLECTION X 7.00

Trans.

Trans.

YIELDING (%) 0 100

DEFLECTION X 7.00

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Table 1 Cross-sectional geometries of stiffeners

Type Shape hw tw bf tf

1 Tee-bar 150 9 90 12

Angle-bar 150 9 90 12 Flat-bar 150 17 - -

2 Tee-bar 250 10 100 15

Angle-bar 250 10 100 15 Flat-bar 250 19 - -

3 Tee-bar 400 12 100 17

Angle-bar 400 12 100 17 Flat-bar 350 35 - -

hw: Height of stiffener web (mm) tw: Thickness of stiffener web (mm) bf: Breadth of stiffener flange (mm) tf: Thickness of stiffener flange (mm)

(2) PULS,GL 算式のいずれの最終強度相関関係も,FEM 解析結果と全般に良い相関を示

す。また次項(3)のケースを除いて,全般に安全側の最終強度を与える。 (3) PULS,GL 算式とも厚板で横圧縮が支配的な荷重比において非安全側の最終強度を与え

る。その理由は,PULS については 4.1 に述べた通りである。 (4) GL 算式は,縦圧縮が支配的な荷重比において最終強度を過度に安全側に推定する傾向

がある。 4. 4 二軸圧縮と横圧を受ける防撓パネルの最終強度

Fig.9 に,軸圧縮と横圧の組み合わせ荷重を受ける防撓パネルの最終強度解析結果を示す。横

圧はパネル側から負荷した。FEM 解析では矩形板に座屈モードの初期たわみを仮定し,長さ方

向の半波数は PULS の弾性座屈モードと同じとした。荷重は,はじめに横圧を所定の値まで与

えた後,二軸圧縮強制変位を,荷重比を一定に保ちながら負荷した。 FEM 解析によると,板厚 10mm の場合,水頭 10m 相当の横圧では圧縮最終強度の低下はわ

ずかであるが,水頭 20m 相当では横圧のみを加えた段階で降伏域がかなり生じ,特に横圧縮が

支配的な荷重比で圧縮最終強度が大きく低下している。(参考:周辺固定平板の崩壊圧力=水頭

29m)。縦圧縮が支配的な荷重比では,小型の防撓材ほど圧縮強度の低下が大きい。ただし,

tee-bar と angle-bar の断面形状の違いによる最終強度の違いは小さい。一方,板厚 20mm の

厚板では,ここで考慮した横圧のレベルでは,圧縮最終強度に対する横圧の影響は小さい。 GL 算式は,横圧縮が支配的な荷重比では single plate field が適用され,横圧影響が考慮さ

れない。このため,FEM 解析および PULS に比べて全般に高めの最終強度を与える。横圧縮

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0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

σy / σY

σx / σY

aXb=2400X800mm, tee-bar:150X9+90X12mm

tp=

PULS

GL (with PE)

FEM (δp0 of BL)

FEM (δp0 of HH)

10mm 15mm 25mm

PE : Considering Poisson effectδp0 : Initial deflection of panelBL : Buckling modeHH : Hungry horse mode

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

σy / σY

σx / σY

aXb=2400X800mm, tee-bar:250X10+90X15mm

tp=

PULS

GL (with PE)

FEM (δp0 of BL)

FEM (δp0 of HH)

10mm 15mm 25mm

(a) tee-bar type1, a/b=3 (b) tee-bar type2, a/b=3

0 0.2 0.4 0.6 0.8 10

0.2

0.4

0.6

0.8

1

σy / σY

σx / σY

aXb=2400X800mm, tee-bar:400X12+100X17mm

tp=

PULS

GL (with PE)

FEM (δp0 of BL)

FEM (δp0 of HH)

10mm 15mm 25mm

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

σy / σY

σx / σY

aXb=2400X800mm,angle-bar:250X10X90/15mm

tp=

PULS

GL (with PE)

FEM (δp0 of BL)

FEM (δp0 of HH)

10mm 15mm 25mm

(c) tee-bar type3, a/b=3 (d) angle-bar type2, a/b=3

0 0.2 0.4 0.6 0.8 10

0.2

0.4

0.6

0.8

1

σy / σY

σx / σY

aXb=2400X800mm, flat-bar:250X19mm

tp=

PULS

GL (with PE)

FEM (δp0 of BL)

FEM (δp0 of HH)

10mm 15mm 25mm

(e) flat-bar type2, a/b=3

Fig.8 Ultimate strength interaction relationships of stiffened plate under bi-axial thrust

(Comparison among PULS, GL and FEM)

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Fig.9 Ultimate strength interaction relationships of stiffened plate under combined bi-axial thrust lateral pressure (Comparison among PULS, GL and FEM)

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強度に対する横圧の影響は一般に大きいため,改善が必要と考えられる。この点を含めて,全

般に PULS の方が GL 算式より FEM 解析結果との相関性が良い。ただし横圧縮が支配的な荷

重比では,横圧の影響を過大に評価する傾向が認められる。

5. 結言

二軸圧縮と横圧の組み合わせ荷重を受ける防撓パネルの最終強度を JTP 法(PULS)および

JBP 法(GL 算式)により解析し,FEM 解析との比較より各最終強度計算法の適用性を検討し

た。得られた主な知見は次の通りである。 (1) PULS および GL 算式で得られる最終強度相関関係は,FEM 解析結果と全般に良い相関

を示す。また全体として PULS の方が FEM 解析結果との相関性が良い。 (2) PULS,GL 算式とも厚板パネルで横圧縮が支配的な荷重比において非安全側の最終強度

を与える傾向がある。逆に縦圧縮が支配的な荷重比では,過度に安全側の推定を与える

傾向があり,特に GL 算式がその傾向が強い。 (3) GL 算式は,横圧縮が支配的な荷重比では single plate field が適用され,横圧影響が考

慮されない。このため,FEM 解析および PULS に比べて高めの最終強度を与える。 (4) PULS はウェブ高さの大きい防撓材の曲げ捩り座屈変形を正確に再現することができず,

結果として最終強度を高めに推定する場合がある。 なお,本研究では最終強度の推定精度を議論したが,JTP ルールと JBP ルールの調和化のた

めには,荷重条件を含めたより総合的な比較を行う必要がある。 参考文献 1) For example, Report of Special Task Committee VI.2 “Ultimate Hull Girder Strength”,

Proc. of the 14 Int. Ship and Offshore Structures Congress, Vol.2, 2000, pp.321-391. 2) E. Byklum and J. Amdahl: A simplified method for elastic large deflection analysis of

plates and stiffened panels due to local buckling, Thin-Walled Structures, Vol. 40, 2002, pp. 925–953.

3) E. Byklum et al: A semi-analytical model for global buckling and post-buckling analysis of stiffened panels, Thin-Walled Structures, Vol. 42, 2004, pp. 701–717.

4) Y. Ueda and T. Yao, The influence of complex initial deflection on the behaviour and ultimate strength of rectangular plates in compression, J. of Const. Steel Research, Vol.5, 1985, pp.265-302. 53.

5) M. Fujikubo, Yao,T. and M.R. Khedmaiti, Estimation of Ultimate Strength of Ship Bottom Plating under Combined Transverse Thrust and Lateral Pressure, 日本造船学

会論文集, 第 186 号, 1999, pp.621-630.

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53

第 5 章 疲労強度に関する検討

5.1 Study on the relationship between shell stress and solid stress in fatigue assessment of ship structure

Naoki OSAWA* * Dept. Naval Arch. & Ocean Eng., Osaka University

1. Introduction The approaches to the fatigue strength assessment have been further developed during recent years (e.g. Fricke, 2003). In addition to the conventional nominal stress approach, local approaches such as the (structural) hot-spot stress (HSS) approach have reached the stage of practical application. Regarding the HSS approach, experimental and analytical procedures have been derived for its determination by extrapolating the structural stress outside the localized notch-affected zone to the weld toe (e.g. Niemi, 1995). In most classification society rules where the weld geometry is neglected, the HSS is evaluated with shell FE models. In these cases, special care is needed to avoid misinterpreting the FE results. The Common Structural Rules, CSR, went into effect in 2006. In the CSR, the fatigue design load has been raised drastically in comparison with the conventional rules. Over-conservative HSS evaluation could inadmissibly impair the economy of the ship design. It is necessary to establish a HSS determination technique based on shell FE analysis with a reasonable safety margin. When a solid FE model is employed, modeling of welds is easily possible, and the stress field in the vicinity of the weld can be investigated with a high degree of precision. The safety margin of shell-based HSS determination techniques can be examined by comparing shell stress and solid stress. The HSS figures derived from shell and solid analyses are compared in some studies (e.g. Fricke, 2002). In these studies, relatively coarse solid meshes were used in order to exclude the notch effect. The calculated stress depends considerably on FE mesh. In this case the relation between shell and solid stresses cannot be clearly examined. This ambiguity can be eliminated by comparing shell stress with solid stress as calculated by the use of fine mesh that can reproduce the notch effect. The reference for the HSS can be determined by letting this solid stress be the measured stress. The authors (Osawa et al., 2007b) examined the surface stress in the vicinity of the weld of small joint models. In their study, fine solid meshes that can reproduce the notch effect were used. They found that the solid stress at a distance of d from the weld toe agrees with the shell stress at a distance of d from the plate surface intersection apart from the shell element nearest to the structural intersection. This fact means that the true (solid) stress

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can be estimated by the use of a shell model when the point directory below the intersection of the plate surfaces is selected as the point to represent the weld toe in shell analysis. The validity of the proposed technique was demonstrated only in the cases where cross-sectional deformation of the base plate is negligible. In actual ship structures, the cargo load induces the out-of-plane deformation of the inner walls, and cross-sectional deformation can be comparable to longitudinal bending deformation. The validity of the proposed technique has to be examined for these cases. In this study, the local stresses of T-shape beam, wide hopper corner joint and BC lower stool subject to lateral pressure load are examined by shell and shell-solid coupling FE models. Based on the results, the relation between the shell and solid stresses in the cases where cross-sectional deformation of the base plate cannot be neglected is discussed.

2. Methodologies (1) Shell-solid coupling and shell FE analyses Global shell FE models are usually employed in ship structural analysis for simplicity and low cost. Local solid FE models are used in the investigation of local stress field in the vicinity of the weld. It is needed to transfer the angular rotations or the moments of the global shell elements to the translational displacements or forces of the local solid elements. The rotation / moment can be easily converted by using shell-solid coupling FE models in the local analysis. The shell-solid coupling can be achieved by use of a fictitious shell plane perpendicular to the original shell plane as shown in Fig. 1. Hereafter, this technique is called the ‘perpendicular shell coupling method (PSCM)’. The authors (Osawa et al., 2007a) examined the local stresses of the stool-like welded joint models by using the PSCM-based shell-solid coupling FE models, and proposed the guidelines for PSCM technique for ship structural analysis as follows: a) The thickness of the fictitious shell, tS, is comparable to the plate thickness; b) The 3-dimensional solid part extends to a minimum of five times of plate thickness from the hot spot. In this study, solid surface stress on the solid part of a PSCM-based shell-solid coupling model created in accordance with the above guidelines is used as a reference for shell surface stress calculated by shell models. In solid modeling, the root gaps of the welds are not modeled. Coupling analyses are performed by MSC. Marc 2005r2. Solid parts are comprised of three-dimensional arbitrarily distorted brick elements (Element 7). Shell parts are comprised of 4-node or 3-node bilinear thick-shell elements (Element 75). The number of the integration point in the direction of the thickness is 9 (default). The material properties of steel (E=200GPa, ν=0.3) are given to the models.

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Shell analyses are performed by MSC. Marc 2005r2, and thick-shell (Element 75) elements are used. The surface stresses are evaluated by linear extrapolation of solid element stresses (for solid parts of coupling models) or shell layer stresses (for shell models). (2) Definition of the hot spot In a solid model, the notch is chosen as the hot spot. That is, the intersection of the plate surfaces is chosen for the model having no weld beads, and the weld toe for the model with weld beads. In a shell model, three kinds of hot spot are considered: type-i: the intersection of the mid-planes of shell plates; type-ii: the point directory below the intersection of the plate surfaces (the hot spot of a solid model without weld bead); type-iii: the point directory below the weld toe. Hereafter, let x, ξ and d denote the distances of the read-out-points (ROPs) from the hot spot type-i, type-ii and type-iii as shown in Fig. 2. They are related to each other through the following equations.

( ) , ; cosec cot 2 2v ht t

d x l x= − Δ + ξ = − Δ Δ = φ − φ , (1)

where, th, tv are the thicknesses of the base and cross plates, l the leg length, φ the angle at which the base and cross plates intersect. The authors (Osawa et al., 2007b) showed that the solid stress at d=D and the shell stress at ξ=D are in fairly good agreement when d and ξ is larger than the plate thickness for the hopper corner model examined in JIP FPSO Fatigue Capacity (2000) and the perpendicular joint model examined in Sugimura et al. (2001) subject to longitudinal bending loads.

3. T-shape cantilever beams subject to pressure load (1) Finite element modeling To examine the nature of the relation between shell and solid stresses, a T-shape cantilever beam shown in Fig. 3 subject to pressure load on the flange is examined. Thicknesses of the flange and web, tf and tw, are (tf, tw)= (10mm, 5mm), (10mm, 10mm), (10mm, 20mm), (20mm, 10mm), (20mm, 20mm). 'Downward pressure' and 'Upward pressure' loads shown in Fig. 4 are applied. In the later condition, downward point load is applied at the free end while upward pressure is applied on the faceplate. In this section, the model with (tf, tw)= (10mm, 10mm) is referred to as 'base' model. We consider the coordinates shown in Fig. 3, x in the longitudinal direction (directed from the fixed end to the free end), y in the transversal direction and z in the vertical direction. The longitudinal (x-dir.) and transversal (y-dir.) components of surface stress, σsx and σsy, are calculated by the use of the shell and solid FE models. The element size of the shell model is tf x tf. In the solid model, 8 layers of solid elements are arranged over the thickness.

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The minimum element size is tf/8 x tf/8 x tf/8. These stress components are evaluated along the intersection between flange and web plates. (2) Deformation The deformations calculated by solid models are in good agreement with the results of shell models without distinction of tf and tw. This means that solid models employed reproduce the bending rigidity of shell models. Fig. 6 shows the calculated deformation of 'base' T-shape beam model. Both longitudinal and transversal bending deformations are produced. For 'downward pressure' condition, both bending deformations are convex upward. For 'upward pressure' condition, longitudinal bending deformation is convex upward, and transversal is convex downward. The degree of cross-sectional deformation is comparable to the longitudinal bending deformation in these cases. (3) Surface stress of 'base' model Fig. 7 shows the comparisons of σsx calculated by shell and solid models of 'base' T-shape beam. Unlike the cases where cross-sectional deformation is negligible reported by the authors (Osawa et al., 2007b), large differences between shell and solid stresses are recognized. Fig. 6 and Fig. 7 show that shell stress overestimates true (solid) stress when the transversal bending is convex upward, while it underestimates when convex downward. It is also shown that the larger the transversal bending deformation is, the bigger the difference becomes between shell and solid stresses. We define 'shell / solid stress difference' Δσsx as

sx sx,SHELL sx,SOLIDΔσ = σ − σ , (2)

where, σsx,SHELL and σsx, SOLID are the longitudinal surface stress components calculated by shell and solid models. Hereafter, the transversal shell surface bending stress is represented by σsy,B. The above results lead us to an assumption that a linear relationship exists approximately between Δσsx and σsy,B. Fig. 8 shows the relation of Δσsx and σsy,B. Fig. 9 shows the variation of the ratio of Δσsx to σsy,B with the distance from the fixed end, x. These figures show that the relation between them can be approximated as

sx sy,BkΔσ = σ , (3)

with the exception of the vicinities of both ends. The coefficient k in Eq. (3) is almost the same as the ratio Δσsx / σsy,B within the region of x>40mm, and it is about 0.1 for this 'base' model. Hereafter, this coefficient k is called the 'transversal bending effective factor'. Eq. (3) does not hold true near the fixed end (x≤30mm), but this does not significantly affect the accuracy of the estimated surface stress because Δσsx is much smaller than true stress (=σsx,SOLID) in this region. (4) Effect of plate thickness The relation between shell and solid stresses similar to that of 'base' model is observed for

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all other models. Fig. 10 shows the variation of the ratio of Δσsx / σsy,B along the stress evaluation path for T-shape beams with various plate thicknesses. The transversal bending effective factor k for each model can be identified from Δσsx / σsy,B within the region of x>40mm. This figure shows that k depends on web and flange thicknesses. Hereafter, the ratio of web thickness to flange thickness, R=tw/tf, is called 'thickness ratio'. Fig. 11 shows the relation between k and R. It is shown that this relation can be approximated by a linear equation,

0.09 0.09 w fk R t t= = . (4)

(5) Estimation of solid stress from shell stresses The following equation is derived from Eqs. (2), (3) and (4):

( )sx,SOLID sx,SHELL sy,B0.09 w ft tσ = σ − σ . (5)

Using this equation, we can estimate true surface stress (=solid stress) only from the shell calculation result. Fig. 12 shows the comparisons of σsx calculated by shell and solid models of T-shape beams with various plate thicknesses. The estimated true stresses evaluated by Eq. (5) are also plotted in the figures. It is shown that the estimated true stress agrees well with the solid stress. This demonstrates the validity of the proposed true stress estimation technique for T-shape cantilever beams with various plate thicknesses.

4. Wide hopper corner models subject to pressure load (1) Finite element modeling Wide hopper corner models subject to lateral pressure load are examined. Models with and without end girder are employed. The end plate of the model is fixed on the rigid wall, and downward pressure 0.2N/mm2 is applied on tank top plate. We consider the (x,y,z) coordinates shown in Fig. 13, and the longitudinal (x-dir.) and transversal (y-dir.) components of surface stress, σsx and σsy, are calculated Thicknesses of all plates, t, is 10mm. Weld bead is not modeled in solid modeling. The hot spot is located at the transition from the tank top plate to the sloped plate. The quantities in Eq. (1) are l=0, tv=th=t=10mm, φ=π/4 and Δ=Δ+l=2.071mm. Shell FE meshes employed are shown in Fig. 13. The element size near the hot spot is t x t. Solid stress is evaluated by the use of the PSCM-based shell-solid coupling models. The fictitious shell thickness tS is chosen so that tS/t is 1.0. The solid parts extend to a minimum of seven times of plate thickness from the hot spot. In the solid part, 8 layers of elements are arranged over the thickness. The minimum element size is t/8 x t/8 x t/8. (2) Relation between shell and solid stresses Fig. 15 shows the deformations of shell FE models. Both longitudinal and transversal bending deformations are produced. Transversal bending is smaller than the longitudinal

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one for the model with end girder while transversal bending is dominant for the model without end girder. Fig. 16 shows the comparisons of σsx calculated by shell and coupling models. Distance ξ is plotted in abscissa. The estimated true stresses calculated by Eq. (5) are also plotted. As in the case of T-shape beam, there exists a difference between shell and solid stresses, and the larger the transversal bending deformation is, the bigger the shell / solid stress difference Δσsx. The estimated true stress agrees well with solid stress. These results show that true stress (solid stress) cannot be evaluated accurately when we simply assume that σsx,SHELL equals to σsx,SOLID and choose the intersection of the plate surfaces as the point to represent the notch in shell analysis. The results also demonstrate the effectiveness of the proposed true stress estimation technique in local stress assessment of hopper corner- like structures subject to pressure load.

5. BC lower stool joint (1) Finite element modeling In order to verify the effectiveness of the proposed true stress estimation technique in fatigue assessment of actual ship structures, the local stress in BC lower stool joint is examined. The local stress is examined by the submodeling technique. The nodal displacements near the joint is calculated by 1/2+1+1/2 hold FE model shown in Fig. 17, and they are transferred to local models as boundary conditions. Calculations are performed for two load cases; case 1 (alternate load condition) and case 2 (heavy ballast condition); the CSR-B's P2 wave is chosen as design wave. The local stresses are calculated by shell model and shell-solid coupling model shown in Fig. 18. The hot spot is located at the intersection point of stool, girder and tank top. We consider the (x,y,z) coordinates shown in Fig. 18, and the longitudinal (x-dir.) and transversal (y-dir.) components of surface stress, σsx and σsy, are calculated. The evaluation path lies along the x- direction. Plate thicknesses are 24.15mm for tank top (tf) and 27mm for girder (tw). The element size of the shell model near the hot spot is tf x tf. Solid stress is evaluated by the use of the PSCM-based shell-solid coupling models. Both the solid part with weld beads and those without weld beads are used in coupling FE models. In the model with weld bead, beads of the weld between tank top's upper face and lower stool, and that between tank top's back face and girder, are modeled as shown in Fig. 19. The quantities in Eq. (1) are l=40mm, tv=24.15mm, th=19.8mm, φ=π/2 and Δ=12.08mm. The fictitious shell thickness tS is chosen so that tS/tf is 1.0. The solid parts extend to 200mm from the hot spot. In the solid part, 8 layers of solid elements are arranged over the thickness. The minimum element size is tf/8 x tf/8 x tf/8. (2) Relation between shell and solid stresses Fig. 20 shows the deformations of local shell FE models. Transversal bending is convex

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upward in case 1, and convex downward in case 2. Fig. 21 shows the comparisons of σsx calculated by shell and coupling models. The distance ξ is plotted in abscissa for shell model and coupling model without beads, and d for coupling model with beads. Shell stress underestimates the true stress in case 1, and it overestimates in case 2. These results can be anticipated from the results in the previous sections. The estimated true stresses calculated by Eq. (5) are also plotted in Fig. 21. The estimated true stress agrees well with solid stress. This demonstrates that true local stress can be estimated with satisfactory accuracy from longitudinal and transversal shell surface stresses calculated by 'very fine' (t x t) shell mesh.

6. Conclusions The relation between shell and solid stresses in T-shape cantilever beam models is examined. Based on the results, a technique to estimate true local stress from shell stress components alone is proposed. The validity of the proposed technique is verified by examining the local stress in wide hopper corner joint models and BC lower stool joint. The following results are found: (1) In T-shape beam, a linear relationship exists approximately between the shell / solid stress difference and the transversal shell surface bending stress. The transversal bending effective factor is almost proportional to the ratio of web thickness to flange thickness. (2) It is possible to estimate solid surface stress with satisfactory accuracy only from shell stress components using the relations described in the preceding paragraph. (3) The relation between shell and solid stresses derived from T-shape beam results holds approximately true in wide hopper corner joint models and BC lower stool joint. This demonstrates the validity of the proposed true stress estimation technique in fatigue assessment of actual ship structures.

References Fricke, W. (2002) Recommended hot-spot analysis procedure for structural details of ships

and FPSOs based on round-robin FE analysis. Int. J. Offshore and Polar Engineering; 12(1):40-47.

Fricke, W. (2003) Fatigue analysis of welded joints: state of development. J. Marine Structure; 16:185-200.

JIP FPSO Fatigue Capacity. (2000) "Hot Spot Stress Analysis of Five Structural Details and Recommendeations for Modeling, Stress Evaluation and Design S-N Curve", Germanischer Lloyd.

MSC. Software Inc. (2005), “MSC.Marc 2005 - Reference Manual”, vol. B. Niemi, E. (1995) Recommendations concerning stress determination for fatigue analysis of

welded components. IIW-Doc. XIII-1458-92/XV-797-92, Abington Pub., Cambridge,

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UK. Osawa, N., Hashimoto, K., Sawamura, J., Nakai, T. and Suzuki, S. (2007a) "Study on

shell-solid coupling FE analysis for fatigue assessment of ship structure", J. Marine Structures, in Printing.

Osawa, N., Hashimoto, K., Sawamura, J., Nakai, T. and Suzuki, S. (2007b) "Study on the relationship between shell stress and solid stress in the vicinities of ship's welded joints", Proc. 17th International Offshore and Polar Engineering Conference, Lisbon, in Printing.

Sugimura, T., Inoue S., Shirakihara H. (2001) Study on fatigue assessment of perpendicular cross joint. In: Proc. 2001 Autumn Meeting of Kansai Soc. Naval Architects, Japan. p.63-66 (in Japanese).

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Fig. 1: The concepts of perpendicular shell coupling method (PSCM).

Fig. 2: Distance of the read-out-points (ROPs) from the hot spot.

Fig. 3: A T-shape cantilever beam.

Fig. 4: Pressure load applied to the T-shape cantilever beam.

Fig. 5: Shell and solid FE models of a T-shape beam.

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(a) Downward pressure load.

(b) Upward pressure load.

Fig. 6: Deformation of a 'base' T-shape beam subject to pressure loads.

60

50

40

30

20

10

0

Surfa

ce s

tress

, σ sx

(MPa

)

200150100500

Distance from the fixed end, x (mm)

Coupling (PSCM, ts/t=1.0) t x t shell

T-shape beam(tf, tw)=(10mm, 10mm)Dwn. pressure load

80

60

40

20

0

-20

Surfa

ce s

tress

, σ sx

(MPa

)

140120100806040200

Distance from the fixed end, x (mm)

Coupling (PSCM, ts/t=1.0) t x t shell

T-shape beam(tf, tw)=(10mm, 10mm)Upward pressure load

Fig. 7: The longitudinal surface stress components of a 'base' T-shape beam calculated by shell and solid

models.

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15

10

5

0

-5

-10Δσ

x= σ

x,S

HE

LL−σ

x,S

OLI

D (M

Pa)

150100500-50-100Transversal bending stress, σyb,SHELL (MPa)

T-shape beam(tf, tw)=(10mm, 10mm)

Downward pressure load Upward pressure load Δσx= 0.1 x σy b,SHELL

Fig. 8: Relation of the shell / solid stress difference and shell bending stress ('base' T-shape beam model).

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0.0

Δσx /

σyb

,SH

ELL

140120100806040200

Distance from the fixed end, x (mm)

T-shape beam(tf, tw)=(10mm, 10mm)

Downward pressure load Upward pressure load

Fig. 9: Variation of the ratio of the shell / solid stress difference to the transversal bending stress along the

stress evaluation path ('base' T-shape beam).

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

0.0

Δσx /

σyb

,SH

ELL

100806040200

Distance from the fixed end, x (mm)

T-shape beam models (tf, tw)

(10, 10) (10, 5) (10, 20) (20, 10) (20, 20)

Fig. 10: Variation of the ratio of the shell / solid stress difference to the shell bending stress along the stress

evaluation path (T-shape beams with various plate thicknesses).

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0.25

0.20

0.15

0.10

0.05

0.00k

= Δ

σ sx

/ σ

sy, S

HEL

L

2.52.01.51.00.50.0R= tw / tf

T-shape beam models

k = 0.09 R

Fig. 11: Relation of the transversal bending effective factor and the thickness ratio.

60

50

40

30

20

10

0

Surfa

ce s

tress

, σ sx

(MPa

)

200150100500

Distance from the fixed end, x (mm)

σsx, SOLID σsx, SHELL σsx, SHELL − 0.09 (tw / tf) σsy, SHELL

T-shape beam(tf, tw)=(10mm, 5mm)Dwn. pressure load

14

12

10

8

6

4

2

0

Surfa

ce s

tress

, σ sx

(MPa

)

200150100500

Distance from the fixed end, x (mm)

σsx, SOLID σsx, SHELL σsx, SHELL − 0.09 (tw / tf) σsy, SHELL

T-shape beam(tf, tw)=(20mm,10mm)Dwn. pressure load

Fig. 12: The longitudinal surface stress components of T-shape beams with various plate thicknesses

calculated by shell and solid models.

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(a) Model with end girder.

(b) Model without end girder.

Fig. 13: Shell FE meshes of the wide hopper corner models.

Fig. 14: Shell-solid coupling FE mesh of the wide hopper corner model without end girder.

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(a) Model with end girder (x 700).

(b) Model without end girder (x 50).

Fig. 15: Deformation of wide hopper corner models (shell FE models).

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40

30

20

10

0Su

rface

stre

ss,

σ sx (M

Pa)

100806040200

Distance from the intersection of plate surfaces, ξ (mm)

σsx, SOLID σsx, SHELL σsx, SHELL − 0.09 (tw / tf) σsy, SHELL

wide hopper corner model (45deg)with end girder

(a) Model with end girder.

40

30

20

10

0

Surfa

ce s

tress

, σ sx

(MPa

)

100806040200

Distance from the intersection of plate surfaces, ξ (mm)

σsx, SOLID σsx, SHELL σsx, SHELL − 0.09 (tw / tf) σsy, SHELL

wide hopper corner model (45deg)without end girder

(b) Model without end girder.

Fig. 16: The longitudinal surface stress components of wide hopper corner models.

Fig. 17: BC 1/2+1+1/2 hold model.

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(a) Shell model.

(b) Shell-solid coupling model.

Fig. 18: Local FE models of BC lower stool joint.

Fig. 19: Weld bead in the solid part of the coupling model with weld beads.

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(a) Case 1: Alt. load, CSR-B's P2 wave

(b) Case 2: Heavy ballast, CSR-B's P2 wave

Fig. 20: Deformation of the local shell model of BC lower stool joint subject to actual loads.

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70

800

600

400

200

0S

urfa

ce s

tress

, σsx

[MP

a]

100806040200Distance of ROP, ξ or d [mm]

t x t shell vs ξ W ith bead (PSCM, ts/t=1.0) vs d W itout bead (PSCM, ts/t=1.0) vs ξ Estimated from shell stresses

Case 1: Alt., P2 wave

-800

-600

-400

-200

0

Sur

face

stre

ss, σ

sx [M

Pa]

100806040200Distance of ROP, ξ or d [mm]

t x t shell vs ξ W ith bead (PSCM, ts/t=1.0) vs d W itout bead (PSCM, ts/t=1.0) vs ξ Estimated from shell stresses

Case2: Heavy Ballast, P2 wave

Fig. 21: The longitudinal surface stress components of BC lower stool joint.

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5.2 疲労き裂伝播における遭遇荷重の履歴影響について

角 洋一 大川鉄平 1.緒言

船体構造設計における疲労強度評価は S-N 線図に基づいた手法が一般的であり、S-N 線で

はき裂が構造部材の板厚を貫通するまでを疲労寿命として考える。しかしながら、現実に

は作用荷重や工作精度のバラツキ等の多くの不確定要素が存在するため、板厚貫通までき

裂が成長する可能性は十分考えられ、実際に検査において発見されるき裂も板厚を貫通し

ているものが多い 1)。一方、それらの板厚貫通き裂は船体構造が有する構造不静定性や圧縮

残留応力等の影響によって比較的緩やかな速度で進展することもあり、その伝播経路次第

では構造に特に害を及ぼさないことも考えられる。そこで、使用中の構造で疲労き裂が発

見された場合の対応として、その伝播経路も含めた疲労き裂伝播挙動のシミュレーション

によりき裂を診断し、今後の補修計画を立てることが重要といえる。そのような観点から

著者らのグループは船舶等の溶接板骨構造における疲労き裂の伝播寿命、経路推定のため

の有限要素法の繰り返し計算による自動き裂伝播解析システム(以後 CP-System と呼ぶ)を開発しており、特にき裂伝播経路については高精度で予測できることが確認されている 2)-10)。 著者らの次の目標は疲労き裂伝播寿命推定の高精度化であるが、現状の CP-System では基

本的に一定振幅荷重のみへの対応であり、簡易的に応力比の影響が考慮できる加藤の式 11)

によってき裂伝播寿命を計算している。一方、船体構造に作用する荷重は、主に波浪に起

因して生じる不規則な変動振幅荷重である。変動振幅荷重を受ける構造の疲労き裂伝播挙

動は、一定振幅荷重の場合に比べ明らかに複雑な挙動を呈し、荷重順序が重要な因子とな

ることがこれまでの研究により明らかにされている 12)。これは過去の繰り返し荷重によっ

てき裂先端に形成された塑性域中をき裂が進展することで、き裂縁に残留引張変形層が形

成されることが主要因であると考えられている。そのため、疲労き裂伝播寿命の精度良い

推定のためには、残留引張変形層厚さ及びき裂面の接触を適切に考慮できる手法を確立す

ることが重要と考えられる。

一方、豊貞は、疲労き裂進展はき裂先端部で塑性仕事がなされる間に起きると考え、疲労

き裂伝播速度を律するパラメータとして ΔKRP(き裂先端に引張塑性域が形成される区間に

対応した応力拡大係数範囲)が適切であることを提唱した 13)。更に、豊貞は Newman の

Dugdale モデルの応用によるき裂開閉口モデル 14)を任意の応力分布に対して拡張し、この

モデルによる ΔKRP の数値的な解析法を確立した 15)。この手法を基に開発したプログラム

「FLARP」は変動振幅荷重に対する疲労き裂の伝播寿命を高精度に推定できることが実験的

に確認されている。しかしながら、この手法は単純な形状に対する定式化であるため、複

雑な形状をした実構造に対しては直接適用できない。そこで本研究では CP-System に結合

可能なき裂開閉口モデルとして、有限要素解析によって得られるき裂先端応力場パラメー

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タ等を利用した新たなき裂開閉口モデルを考案した。考案した手法をCP-Systemに結合し、

中央板厚貫通き裂の試験片に対する試解析を行い、その結果を FLARP と比較した。また水

圧荷重が作用する船体構造モデルについて、荷重履歴を嵐モデル 16)と仮定してき裂伝播シ

ミュレーションを行い、遭遇海象の履歴影響による疲労き裂伝播寿命の変動を示した 17)。 2.半無限き裂に対する疲労き裂開閉口モデル

本研究ではき裂を有する有限体の問題を扱うが、き裂先端の塑性域寸法が物体の代表寸

法(き裂長さ、リガメント長さ等)に比べ十分小である場合、そのき裂先端近傍の挙動は半無

限き裂に対するものとほぼ同様と考えられる。そこで、以後では解くべき問題のき裂を半

無限き裂で置き換えて考える。 (1)半無限き裂における応力拡大係数の変化率を考慮したき裂結合力モデル

疲労き裂開閉口モデルを定式化する前段階として、無限板中における無限な長さを持っ

たき裂(半無限き裂)に対するき裂結合力モデルを応力拡大係数の変化率を考慮して定式化

する。Fig.1(a)に示すように、半無限き裂の先端に長さ a の引張塑性域が生じている問題を

考える。このとき、物体の材料は弾完全塑性体を仮定し、塑性域内のき裂面に対して垂直

方向の応力は λσY で打ち切られるものとする。ただし λ は塑性拘束係数、σY は降伏応力で

ある。Fig.1(a)の問題は、Fig.1(b)に示す塑性域先端までき裂先端を伸ばすことで、仮想き

裂先端でモード I の応力拡大係数 k)が作用している問題と、Fig.1(c)の仮想き裂部で結合力

-λσYが作用する問題の重ね合わせとして考えることができる。

Fig.1 Superposition of the strip yield model in an infinite solid: (a) Original problem, (b) A semi-infinite crack having stress intensity factor k

) , (c) A semi-infinite crack subjected to internal load.

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ここで、解くべき問題のき裂先端近傍における弾性応力場を、Fig.2 の実き裂先端を原点

とする座標系に対して

),(22

)0,(

),(22

)0,(

),(22

)0,(

IIII

II

II

xOxbx

kx

xOxbx

kx

xOxbTx

kx

xy

y

x

++=

++=

+++=

ππτ

ππσ

ππσ

(1)

と近似する。ここに、kI, kIIはモード I 及び II の応力拡大係数、T はき裂に平行な一様応力

成分、bI, bIIはき裂先端からの距離の平方根に比例するモード I 及び II 成分の係数である。

このき裂が塑性域の長さ a だけ直進した後の応力拡大係数が k)となるので、文献 2)を参考に

すると { } ,2/ III akbkk ++=

) (2)

となる。ただし k I は有限境界の影響を表すパラメータである。(2)式を見ると、その右辺の

括弧内はき裂進展長さに対する応力拡大係数の変化率を表していることがわかる。仮想き

裂先端では応力の特異性が存在しないことから Fig.1(b)及び(c)の応力拡大係数の和を零と

することができるので、塑性域長さ a は { },)2(8/ III

2Y

22I kkbka +−= πσλπ (3)

と得られる。ただし、a は微小値として2次の項は省略して計算している。

Fig.2 Crack tip coordinate system.

(2) き裂開閉口モデルの定式化 最大荷重時の計算

き裂に最大荷重が作用し、それによって生じる塑性域の先端が過去に生じた塑性域先端

よりも前方にある状態を考える(最大荷重時に形成された塑性域が過去に形成された塑性域

内に留まる場合、後述する最小荷重時の計算を全て最大荷重に対応したパラメータで置き

換えた収束計算が必要となる)。このときのき裂結合力モデルは Fig.1 において仮想き裂先

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端の k)を最大荷重に対応した k

)max で置き換えたものになる。最大荷重に対応する kI, bI, k I

をそれぞれ kmax, bmax, k maxとすると塑性域長さ a は(3)式から

{ },)2(8/ maxmaxmax2Y

22max kkbka +−= πσλπ (4)

となり、 k

)maxは(2)式から

{ } ,2/ maxmaxmaxmax akbkk ++=

) (5)

となる。最大荷重時のき裂開口変位 vmax(x)は

.ln

'2

')(22

)(0

maxmax ∫ −−

−+−

−=

aY dxx

EEkx

xv ξξξ

πλσ

π

) (6)

として与えられる。ただし

⎩⎨⎧

−=

.)1/('

2 strainplaneforEstressplaneforE

(7)

ここに E はヤング率、νはポアソン比であり、座標原点 x=0 は仮想き裂先端に移動した。(6)式右辺の第1項は仮想き裂先端で k

)max が作用する問題の変位、第2項はき裂結合力が作用

する問題の変位にそれぞれ対応する。ここで Fig.3(a)のようにき裂先端塑性域及び残留引張

変形層域に n 個の棒要素を配置する。残留引張変形層域の棒要素は実き裂先端からの距離

が h までの有限な領域のみに配置する(本報の解析では想定される塑性域に対して十分大き

くとり h=50mm としている)。ただし、これらの棒要素長さは過去の計算ステップで累積的

に計算されるものであるので、最初のステップでは零である。Fig.3(b)に示すように、最大

荷重時の塑性域内の棒要素には λσY の引張応力が作用しているので、本来の棒要素長さ

li(i=1,...,k)は

),'/1/()(max Exvl yii λσ+= (8)

となる。塑性域内の棒要素長さを更新した後、最小荷重時の計算へ移行する。

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Fig.3 Schematic illustration of the crack opening/closing model; (a) Configuration of bar elements, (b) Contraction of a bar element. 最小荷重時の計算

Fig.4(a)に示すように、最小荷重時ではき裂先端に圧縮塑性域が形成され、き裂面はそれ

までに形成された残留引張変形層のために接触し、圧縮応力が生じる。この状態は、仮想

き裂先端において k)

min が作用する問題(Fig.4(b))と、最小荷重時に仮想き裂部及び実き裂面

に作用する応力を分布力対として作用させた問題(Fig.4(c))の重ね合わせとして表すことが

できる。このときの仮想き裂部の長さ a*は、過去の履歴を考慮して現時点で最も前方にあ

る引張塑性域の長さである。 最小荷重時に生じる棒要素の応力及び変位は以下のようにして計算する。最小荷重に対

応する kI, bI, k Iをそれぞれ kmin, bmin, k minとすると、 k)

minは(2)式から

{ } *,2/ minminminmin akbkk ++=) (9)

となる。第 j 要素に働く一定直応力を σjとすると、第 i 要素の変位 vmin(xi)は

,),('

)(22)(

1

minmin ∑

=

−−

=n

jjij

ii xxv

Ekx

xv σπ

) (10)

となる。ここに v(xi, xj)はき裂面の区間[bj,bj+1]に単位応力対が作用した時の第 i 要素の中心位

置(座標値 xi)における変位であり、

,ln'

2),( 1

∫+−

− −−

−+= j

j

b

bi

iji d

xx

Exxv ξ

ξ

ξπ

(11)

で与えられる。一方、実き裂部と仮想き裂部の弾性変形しかしない棒要素では

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,)'/1()(min iii lExv σ+= (12)

が成り立つので、(10)式と(12)式を等値して書き直すと

,),('

/),('

)(22

1

min

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧ +

⎥⎥⎥

⎢⎢⎢

⎡−−

−= ∑

≠=

iii

i

n

ijj

jiji

i xxvEllxxv

Ekx

σπ

σ)

(13)

となり、これを Gauss-Seidel 法で解くことで各棒要素に働く応力を得ることができる。た

だし、棒要素は弾完全塑性体であり、実き裂内では引張応力を受け持たないことから ・xi<-a*(実き裂内)では σi>0 のとき σi=0, σi<-λσYのとき σi = -λσY

・-a*<xi<0(仮想き裂内)では σi >λσYのとき σi =λσY, σi <-λσYのとき σi = -λσY

と収束計算中に置き換えを行う必要がある。得られた棒要素応力を再び(10)式に代入するこ

とで、最小荷重時の棒要素変位 vmin(xi)が得られる。最小荷重時に圧縮降伏した棒要素の長

さは、

),'/1/()(min Exvl yii λσ−= (14)

として再設定される。

Fig.4 Superposition of the strip yield model at the minimum load: (a) Original problem, (b) A semi-infinite crack having stress intensity factor k

)min, (c) A semi-infinite crack

sub- jected to internal load. ΔKRPの計算 負荷過程において、き裂先端に再び引張塑性域が形成される瞬間の荷重を RPG 荷重

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(Re-tensile Plastic zone Generated Load)13)15)と呼ぶ。kRPGは、き裂が完全開口してき裂先

端の棒要素(第 k要素)の応力が λσYとなった瞬間の実き裂先端に対する応力拡大係数として

定義される(仮想き裂先端では k)

RPG となる)。仮想き裂部の要素の応力 σi(i=1,...,k-1)は、実き

裂部の要素の応力を零、実き裂先端の要素の応力を λσYとして(13)式を書き直し

(15)

となる。一方、実き裂先端の要素において応力が λσY となる瞬間の応力拡大係数 k) ’RPG (k)

,'

)(22/),(),(

'1)(

1

1

'

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛ −⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡++⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛ += ∑

= πσλσλσ

Ex

xxvxxvE

lkk kk

jjkjkkY

YkRPG

)

(16) また、実き裂部の要素においてき裂面変位と棒要素長さが一致する瞬間の応力拡大係数

k) ’RPG(i)(i=k+1,...,n)は

),...,1(,'

)(22/),(),()(

1

1

' nkiE

xxxvxxvlik i

k

jjijkiYiRPG +=

⎪⎭

⎪⎬⎫

⎪⎩

⎪⎨⎧ −

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧

++= ∑−

= πσλσ

)

(17) である。(16)、(17)式から得られた k

) ’RPG(i)(i=k,...,n)の中で最大となるものを k)

RPG とすると、

このときき裂が完全開口かつ実き裂先端要素の応力が λσYとなる条件を満たす。 (15)~(17)式の計算を応力が収束するまで繰り返し、得られた k

)RPGから kRPGは

),/( maxRPGmaxRPG kkkk))

= (18)

となり、ΔKRPは ,RPGmax kkK RP −=Δ (19)

と計算される。 き裂進展時の計算

本計算モデルでは、各計算ステップで ΔKRPを計算した後にき裂を進展させる。各ステッ

プでのき裂進展長さ Δc は ,)( m

RPKCNc Δ⋅Δ=Δ (20) とする。ΔN は1計算ステップあたりの荷重の繰り返し数に対応し、荷重履歴の状態に応じ

て変化させる。C 及び m は実験的に得られる定数であり、一般的な鋼材では C=3.514×10-11, m=2.692, (unit: ΔKRP in MPa m , da/dN in m/cycle) である 15)。 き裂進展時にき裂面に残留する棒要素の長さは、塑性収縮 15)を考慮して以下のように定

める。

),)(('/1

1min ii

Yi xv

El κδ

λσ−

−= (21)

)1,...,1(,),('

/),(),('

)(22 1

1−=

⎭⎬⎫

⎩⎨⎧ +

⎥⎥⎥

⎢⎢⎢

⎡−−−

−= ∑

≠=

kixxvEllxxvxxv

Ekx

iii

i

k

ijj

jijkiYRPGi

i σλσπ

σ)

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ただし

⎪⎩

⎪⎨⎧

<=

),1)/((1

)1)/(()/(

の場合

の場合

npie

npie

npie

γγα

γγαγγακ

(22)

である。δiはき裂面の接触応力が全て解放されたと仮定した場合の塑性収縮量、γeは現在最

も前方にある塑性域長さ、γpi は現荷重サイクルでの引張塑性域長さ、α, n は定数である。

き裂進展部の棒要素長を設定した後、最大荷重時の計算に戻る。以上の計算をき裂がある

設定した長さに達するまで繰り返す。 3.き裂開閉口モデルの CP-System への結合

CP-System では板厚貫通き裂を局所的に2次元平面のき裂進展問題とみなし、逐次有限

要素解析によりその伝播挙動をシミュレートする。またスーパーエレメント 18)を利用する

ことで大規模構造物への適用が可能であり、複数き裂の同時進展に対応できる等の特徴が

ある。CP-System に前節で定式化したき裂開閉口モデルを結合し、自動プログラムを作成

した。シミュレーションの手順を以下に示す(Fig.5 参照)。 (1)データ入力:GUI を用いた専用プリプロセッサーによりき裂伝播領域、初期き裂形状、

材料定数、溶接残留応力等を入力する。荷重履歴は外部ファイルから入力する。き裂が伝

播しない周辺領域はスーパーエレメントとして取り込む。このとき負荷荷重の情報はスー

パーエレメントに含まれることになる。 (2)メッシュ分割:き裂伝播領域において改良 Paving 法により四辺形有限要素を自動生成す

る。 (3)有限要素解析:いくつかの解くべき問題について有限要素解析を行い、き裂先端要素の

応力を算出する。 (4)き裂先端応力場パラメータ等の算出:有限要素解と解析解の重ね合わせ法によりき裂先

端応力場パラメータ kI, kII, T, bI, bII及び有限境界影響を表すパラメータ k I, k IIを算出する。 (5)き裂開閉口シミュレーション:き裂開閉口シミュレーションによって前ステップから現

在までのき裂伝播寿命を求める。き裂開閉口シミュレーションに必要となるき裂先端応力

場パラメータ等は前ステップと現ステップにおいて有限要素解析で得た値を線形内挿して

用いる。 (6)状態のチェック:KII の KI に対する割合、KI の前ステップに対する変化率、複数き裂間

のき裂伝播寿命の誤差をチェックし、許容値を超えた場合はき裂進展長を再設定して(2)に戻る。 (7)き裂伝播経路の推定:き裂伝播経路を第一次摂動法と局所対称性規準の組み合わせ 2)に

よって求める。 (8)き裂進展経路に沿ってき裂を伸ばし、(2)に戻る。

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Fig.5 Flowchart of the CP-System. 4.中央板厚貫通き裂試験片に対する試計算 本研究で開発したプログラムを用いて、Fig.6 に示す引張荷重を受ける中央板厚貫通き裂

試験片について試計算を行った。荷重条件として、最大荷重を 19.6kN、応力比を 0.05 と

する一定振幅荷重においてき裂が 8mm となった時点で最大荷重が2倍となる 39.2kN の単

一過大荷重を作用させた。本解析では平面応力状態を仮定し、以下の計算パラメータを使

用した。 C=3.514×10-11, m=2.692 (unit: ΔKRP in MPa m , da/dN in m/cycle) E=206[GPa], ν=0.3, σY=352.1[MPa], λ=1.04 α=0.1, n=0.1

Fig.7 にき裂伝播領域及び周辺領域のメッシュ分割図の一例を示す。本計算の逐次有限要素

解析は全 11 ステップ、計算時間は全体で 15 分程度であった(本研究の計算では Dell Precision 530、インテル®Xeon プロセッサ 2.4GHz を使用)。Figs.8,9 にき裂長さに対する

ΔK、ΔKRP の変化とき裂成長曲線の計算結果をそれぞれ示す。図中には FLARP15)による計

算結果も同時に示している。本手法により単一過大荷重によるき裂伝播の加速とその後の

減速現象を表現できており、これは FLARP での結果とも良く一致している。以上より本手

法の妥当性を示すことができた。

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Fig.6 Center crack tension specimen.

Fig.7 Finite element model of the specimen.

Fig.8 Variation of ΔK and ΔKRP.

Fig.9 Simulated crack growth curves of the specimen.

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5.波浪荷重を受ける船体構造の疲労き裂伝播シミュレーション (1)解析モデルと荷重履歴について 船体構造の縦横部材交差部に生じる疲労き裂についてシミュレーションを行う。解析モデ

ルとして、Fig.10 のように標準的なダブルハルタンカーの縦通材と横部材との交差部を 2トランススペース、1.5 ロンジスペースの範囲をモデル化し、負荷荷重はスキン材への一様

水圧荷重を考慮する。水圧荷重の発生パターンは Fig.11 に示す平均値を 25kPa、F 嵐での

最大荷重振幅を 200kPa とする嵐モデル(A~F)を仮定し、各嵐が Table.1 の確率でランダム

な順序で発生するものとした 16)。

Fig.10 Analysis model of a stiffened panel structure.

Fig.11 Loading patterns of the water pressure.

Table.1 Probability of occurrence of the storm A~F Storm A B C D E F

Probability 42/93 25/93 12/93 7/93 6/93 1/93 (2)解析結果及び考察 本解析では平面応力状態を仮定し、計算パラメータは前節と同様の値を用いた。初期き

裂はウェブスチフナのトウ部を起点として、フェイスに半幅 20mm、ウェブに 10mm 進展

した状態を仮定した(これは板厚を考えないシェルモデルとしてのき裂長さである)。Fig.12にウェブとフェイスにおいてき裂が同時進展する状態の有限要素モデルの一例を示す。き

裂がフェイスを破断した後は、ウェブのみのき裂伝播としてき裂伝播領域を再設定してシ

ミュレーションを行った。本シミュレーションでは逐次有限要素解析が全 61 ステップ、総

計算時間は約 2 時間半であった。

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Fig.13 にウェブ及びフェイスでのき裂伝播経路を示す。ここではき裂の起点を原点とし

ている。ウェブのき裂は横隔壁方向に傾いて進展し、スキン材に近づくに従って大きく湾

曲しており、き裂のスキン材への進入を免れる可能性がある。フェイスのき裂はフェイス

の幅方向にほぼ真直ぐ進展している。これらは前報 10)とほぼ同様の結果であった。 Figs.14、15 にフェイスおよびウェブのき裂成長曲線をそれぞれ示す。結果のバラツキを

検討するために計算は 10 回実施した。ここでは比較のために、加藤の式による簡易計算の

結果も同時に示している。簡易計算ではき裂伝播速度は },)(){(/ theff

mm KKUCdNda Δ−Δ⋅= (23) である。ただし、U はき裂開口比であり、応力比 R を用いて

⎩⎨⎧

≤≤≤≤−∞−

=),15.0(1

)5.0()5.1/(1RRR

U (24)

と与えられる。また材料定数は文献[15]より C=1.411×10-11, m=2.958, (ΔKeff)th=2.58 (unit: ΔK in MPa m , da/dN in m/cycle)

とした。本手法による結果は簡易手法のものに比べてバラツキが大きく、平均寿命は 2~3倍程度長く推定されている。これは、本手法では荷重順序の相互作用によるき裂伝播の遅

延現象を表現できるためと考えられる。Fig.16 にウェブのき裂に対する 0~80 万サイクルま

でのき裂成長曲線とそれに対応する負荷荷重を示す。本手法による結果では、高レベルの

嵐を受ける間はき裂進展速度が大きく加速するが、直後の低レベルの嵐では大きく減速し

ている。このような高レベルの嵐の影響によるき裂伝播の遅延が定期的に起きることで、

き裂伝播寿命が大きく引き伸ばされたと推察される。一方、簡易法では荷重順序の影響に

よるき裂伝播の遅延を考慮できないため、疲労き裂伝播寿命がかなり短寿命に評価される

可能性があるといえる。

Fig.12 Finite element model of the stiffened panel structure.

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-300

-250

-200

-150

-100

-50

00 50 100 150 200

x[mm]

y[m

m]

-50

-40

-30

-20

-10

0-5 0 5

x[mm]

z[m

m]

(a) (b)

Fig.13 Simulated crack paths; (a) in the web-plate, (b) in the face-plate.

Fig.14 Simulated crack growth curves in the face-plate.

Fig.15 Simulated crack propagation lives in the web of a longitudinal stiffener.

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Fig.15 Effect of high-level clustered loads for crack growth in the web-plate.

6.結言 本研究では、有限要素解析によって得られるき裂先端応力場パラメータ等を利用した新た

なき裂開閉口モデルによる ΔKRP 計算法を考案し、それを CP-System に結合することで、

構造物に作用する実荷重を直接適用できる疲労き裂伝播シミュレーションプログラムを作

成した。このシミュレーションプログラムを用い、中央板厚貫通き裂試験片に対するき裂

伝播シミュレーションを行い、FLARP による結果との整合性を確認するとともに水圧荷重

が作用する船体構造モデルについて、嵐モデルによる荷重履歴を仮定し、疲労き裂伝播シ

ミュレーションを行った。その結果、加藤の式による簡易伝播計算結果に比べ疲労き裂伝

播寿命は、 ● 荷重パターンのクラスター性による疲労き裂伝播の遅延効果 ● 遭遇海象の順序による荷重履歴の相違の影響

により2~3倍程度長いき裂伝播寿命を与えると推定された。この結果は、遭遇海象の順

序による疲労強度の統計的変動を考慮した信頼性に基づく疲労寿命推定ガイドラインが、

今後必要であることを示唆していると考えることが出来る。 謝 辞 本研究に際して、九州大学教授豊貞雅宏先生をはじめとする FLARP 研究会の参加者から有

益な示唆を頂いた。本研究は文部科学省科学研究補助金(A1720608600)の補助を受けた。こ

こに記して謝意を表します。 参 考 文 献 1) 日本造船研究協会 :第 219 研究部会報告書 ,き裂伝播解析手法の実用化に関する研

究,(1996). 2) Y.Sumi, S.Nemat-Nasser, and L.M.Keer: On crack branching and curving in a finite

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body, International Journal of Fracture, 21, (1983), pp.67-79. 3) Y.Sumi, Y.Chen, and S.Hayashi: Morphological aspects of fatigue crack propagation Part I Computational procedure, International Journal of Fracture, 82-3, (1996), pp.205-220. 4) Y.Sumi, Y.Chen, and Z.N. Wang: Morphological aspects of fatigue crack propagation Part II Effect of stress biaxiality and welding residual stress, International Journal of Fracture, 82-3, (1996), pp.221-235.

5) Y.Sumi: Fatigue crack propagation and computational remaining life assessment of ship structure,

Journal of Marine Science and Technology, 3-2, (1998), pp.102-112. 6) Y.Sumi, Z.N.Wang: A finite-element simulation method for a system of growing cracks in a heterogeneous material, Mechanics of Material, 28, (1998), pp.197-206. 7) 毛利,角,川村,松田:疲労き裂伝播経路予測のシステム化と疲労試験による検証,日本造船

学会論文集,第 194 号,(2003), pp.185-192. 8) Y.Sumi, M.Mohri, Y.Kawamura: Computational prediction of fatigue crack paths in the ship structural details, Fatigue Fract. Engng. Mater. Struct., 28, (2004), pp.107-115. 9) Y.Sumi, M.Mohri, T.Okawa: Simulation-based fatigue crack management for ship structural details, 9the Symposium on Practical Design of Ships and Other Floating Structures, Lubeck Travemuende, Germany, (2004), pp.855-861. 10) 大川,角,毛利,川村:船体縦通材の疲労き裂伝播に関する研究-3次元板骨構造の複数き裂

同時進展解析-,日本船舶海洋工学会論文集,第 2 号,(2005), pp331-339. 11) 加藤,栗原,川原:広範囲の応力比条件下での疲労き裂伝播速度式の検討-き裂開閉口挙動

に基づいた考察-,日本造船学会論文集,第 153 号, (1983), pp.336-343. 12) W.Elber: Significance of fatigue crack closure, ASTM STP, 486, (1971), pp.230-241. 13) 豊貞,山口,丹羽,武中,梶本,矢島:新疲労き裂伝播パラメータの提案と高精度コンプライ

アンス計測法の開発-RPG 規準による疲労き裂伝播挙動の研究(第 1 報)-,日本造船学会論文

集,第 169 号,(1991), pp.245-255. 14) J.C.Newman Jr., A crack-closure model for predicting fatigue crack growth under aircraft spectrum loading, ASTM STP, 748, (1981), pp.53-84. 15) 豊貞,丹羽:鋼構造物の疲労寿命予測,共立出版,(2001)

16) 冨田,河辺,福岡,田所:波浪荷重の統計的性質と疲労強度評価のための波浪荷重のシミ

ュレーション法(その 1),日本造船学会論文集,第 170 号,(1991),pp.631-644.

17) 大川,角:変動振幅荷重を受ける構造体の疲労き裂伝播シミュレーション―き裂開閉口

モデルを結合した児童き裂伝播解析システムの開発―,日本船舶海洋工学会論文集,第 4号,(2006), pp269-276. 18) 日本エムエスシー株式会社:MSC.Nastran スーパーエレメントユーザーズガイ

ド,(2003)

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第 6 章 結言

委員長 角 洋一

本研究委員会では、船体構造の基本である荷重、構造応答、座屈・最終強度、疲労に大

別し技術的検討をした。座屈・最終強度については、かなり解明が進んでおり今後のバル

クキャリア規則とタンカー規則における強度基準の統一化に際して問題となる現状規則の

相違点も明確にできたものと思う。また、現行規則に対する波浪荷重の効率的計算法、疲

労解析のためのホットスポット応力の算定方法についてもシェル要素による解析をベース

とした計算法が提案できた。これらの手法は、設計実務に適用される中でさらに洗練され

ていくものと考えられる。 緒言でも述べたように、現行 CSR や現在 IMO で検討されている「新造時構造強度」

(GBS-NSC)は、船のライフサイクル(25 年とされる)に対する強度を新造時の強度要件

のみで満足させようとする考え方に極めて影響されており、本来、新造時の基準とともに、

あるいはそれ以上に実際的に重要な個船の就航・運航条件、検査・点検に基づく維持・管

理の技術要件の議論を封印してきた。現在 IMO で検討中の GBS-NSC がどのような船体構

造規則を要求してくるのかは、船級規則の GBS への適合を認証する Tier III の判定基準が

開示されていないので不明の点が多い。また、将来的に船種別に prescriptive な共通規則

を次々に作ることになれば、これは船級協会にとってはかなりの重圧となろう。あるいは、

リスクベースのより普遍的な規則が船舶全般に適用可能なものとして構築されていくので

あろうか?この場合は、船殻設計者は縦強度を除き、抽象的設計条件のもとで具体的な設

計限界データの欠如に直面することになろう。船舶の大量供給が求められている現在、迅

速な構造設計が要求されているが、この社会的要請と現在の規則制定が内包するこの矛盾

はいずれにしても早急に解決されねばならい。このためには、現在まで事実上封印されて

きた個船の就航・運航条件、検査・点検に基づく維持・管理の技術要件の基準化をデータ

に基づいて議論し、実効ある実施体制を整備することが必要なのではないか?本委員会の

報告書では、このような観点にも触れたつもりである。IMO における構造規則の検討は、

技術体系を俯瞰する大所高所からのものであって欲しい。 本委員会の活動はこれで終わるが、学術の立場からの国際的アピールは今後も継続する

必要がある。IMO-MSC には、RINA が中立学術機関としてオブザーバの資格を有し発言権

があるが、RINA を通じた学会意見の表明にも限界があるので、今後、学会としての IMO対応をどのようにしていくか RINA との連携体制の整備も含めフォローアップが必要であ

る。