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血管炎/ A.小血管の血管炎  167 11 (紫斑病性腎炎,腸出血,腸重積,腸管穿孔,脳出血)をみる. 成人例では腎不全に至るリスクが高く,注意を要する. 3.蕁麻疹様血管炎 urticarial vasculitis 24 時間以上持続する蕁麻疹様皮疹をみた場合は本症を疑う. 蕁麻疹様あるいは多形紅斑様の皮疹を繰り返し,紫斑や色素沈 着を伴う(11.6).病理組織学的には真皮上層に白血球破砕 性血管炎の像を認める.本症は特発性のものと,基礎疾患(と くに SLE)を有するものがある.多くは低補体血症を伴い〔低 補体血症性蕁麻疹様血管炎(hypocomplementemic urticarial vasculitis)〕,関節痛や腹痛,腎症などの他臓器症状を呈する 場合もある. 4.持久性隆起性紅斑  erythema elevatum diutinumEED 中年以降の男女に好発し,肘や膝などの関節伸側に対称性に 出現する.最初は軽度隆起した赤紫色の局面であるが,次第に 線維化をきたしケロイド状となる.まれに水疱や潰瘍を形成す ることもある(11.7).関節炎を伴うこともある.病理組織 学的に白血球破砕性血管炎がみられる.自覚症状はほとんどな く慢性に経過する.血液疾患(とくに単クローン性 IgA 血症) などを合併することがある.治療は DDS が有効である. 5.顔面肉 にく 腫 granuloma faciale 顔面に境界明瞭な紅褐色の局面や小結節を呈する(11.8). 日光曝露が関与するとされるが原因不明である.病理組織学的 に肉芽腫はみられず,白血球破砕性血管炎の像を呈する.色素 レーザー療法,ステロイド局所注射や DDS などが行われるが 治療抵抗性である. 11.4② IgA 血管炎(IgA vasculitis11.5 IgA 血管炎の蛍光抗体直接法 病変部の真皮上層の血管壁に IgA が沈着している. 11.6 蕁麻疹様血管炎(urticarial vasculitis紫斑を伴う紅斑が多発しており,膨疹を伴っている. 11.8 顔面肉芽腫(granuloma faciale

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血管炎/ A.小血管の血管炎  167

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(紫斑病性腎炎,腸出血,腸重積,腸管穿孔,脳出血)をみる.成人例では腎不全に至るリスクが高く,注意を要する.

3.蕁麻疹様血管炎 urticarial vasculitis

24 時間以上持続する蕁麻疹様皮疹をみた場合は本症を疑う.蕁麻疹様あるいは多形紅斑様の皮疹を繰り返し,紫斑や色素沈着を伴う(図 11.6).病理組織学的には真皮上層に白血球破砕性血管炎の像を認める.本症は特発性のものと,基礎疾患(とくに SLE)を有するものがある.多くは低補体血症を伴い〔低補体血症性蕁麻疹様血管炎(hypocomplementemic urticarial vasculitis) 〕,関節痛や腹痛,腎症などの他臓器症状を呈する場合もある.

4.持久性隆起性紅斑 erythema elevatum diutinum;EED

中年以降の男女に好発し,肘や膝などの関節伸側に対称性に出現する.最初は軽度隆起した赤紫色の局面であるが,次第に線維化をきたしケロイド状となる.まれに水疱や潰瘍を形成することもある(図 11.7).関節炎を伴うこともある.病理組織学的に白血球破砕性血管炎がみられる.自覚症状はほとんどなく慢性に経過する.血液疾患(とくに単クローン性 IgA 血症)などを合併することがある.治療は DDS が有効である.

5.顔面肉に く

芽げ

腫 granuloma faciale

顔面に境界明瞭な紅褐色の局面や小結節を呈する(図 11.8).日光曝露が関与するとされるが原因不明である.病理組織学的に肉芽腫はみられず,白血球破砕性血管炎の像を呈する.色素レーザー療法,ステロイド局所注射や DDS などが行われるが治療抵抗性である.

図 11.4② IgA 血管炎(IgA vasculitis)

図 11.5 IgA 血管炎の蛍光抗体直接法病変部の真皮上層の血管壁に IgAが沈着している.

図 11.6 蕁麻疹様血管炎(urticarial vasculitis)紫斑を伴う紅斑が多発しており,膨疹を伴っている.

図11.8 顔面肉芽腫(granuloma faciale)