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(6) 第 418 号 2013 年(平成 25 年)1 月 5 日発行(毎月 1 回 5 日発行)1977 年(昭和 52 年)4 月 1 日創刊 ISSN 0913-3380 粟田 卓也(埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科)� 第9回� インスリン製剤の� 変遷をたどる� 脂肪酸が付いた� 持効型溶解インスリン製剤の誕生� 前回(2012年DITN 11月号)に紹介し たインスリン グラルギンはヒトインス リンアミノ酸配列の修飾により中性環境 下では難溶性の沈殿となることから持続 的な効果を示すことに成功したが、別の 方法による持続性製剤の開発も進められ ていた。3 価コバルトインスリンと脂肪 酸を付加したインスリンである。 原子番号が 27 の遷移元素であるコバ ルトは、生体ではビタミン B12 に含まれ ている。第 6 回(2012 年 DITN 7 月号)で 紹介したように、ヒトインスリンは 3 個の 2 量体が集まった 6 量体の結晶を形成す るが、2 価の陽イオンである亜鉛イオンが 2 個配位することで安定化する。ノボ ノル ディスク社・ノボ研究所のクルツハルス らは、亜鉛をコバルトに置換したインスリ ン結晶の可能性に注目する。2 価亜鉛イオ ンを 2 価コバルトイオンで置換した 6 量体 結晶を、さらに酸化することより作出さ れる 3 価コバルトインスリン結晶は、きわ めて安定である(図1)。 3 価コバルトインスリンは中性溶液で可 溶性であり、皮下注射後でも沈殿しない が持続性効果を示す。2 価コバルトイン スリンは 2 価亜鉛インスリンとほぼ同様の 薬物動態を示すことや、3価コバルトイ ンスリンがインスリン受容体と結合しない ことから、3 価コバルトインスリンが 2 価 に還元される段階および血中半減期の延 長により持続性効果がもたらされるもの と考えられた。しかしながら、NPH イ ンスリンに優る利点は認められず製剤化 には至らなかった。 アルブミンは細胞外液に最も豊富に含 まれるタンパクであるが、微量元素・脂 肪酸・酵素・ホルモンなどの内因性物質 や外因性の薬物などを吸着し運搬する。 1995 年に、クルツハルスらは、B 鎖 29 位 リジンのεアミノ基に炭素数 10 ~ 16 の直 鎖飽和脂肪酸を付加したインスリンア ナログについて検討し、アルブミンと の結合度が動物における効果の持続性 と強く相関することを見いだした。そ の中で、炭素数 14 のミリスチン酸を付加 し B 鎖 30 位のトレオニンを除いたインス リンアナログ(図2)の効果が最も遅延す ることが注目され、新しい溶解性の持続 性インスリンアナログとして開発が進めら れることとなった。なお、このインスリ ンアナログは、トレオニンを除いて( de s t hre onine)ミリスチン酸<myristic(mir acid>を付加してあることから、デテミ ル(detemir)と命名された(図3)。 非臨床試験において緩徐で持続的な薬 理作用と安全性が確認された後に、ヨー ロッパおよび日本において行われた臨床 試験において、NPHインスリンと比べて、 よりピークが少なく、より持続性の高い 製剤であることが認められ、インスリン デテミル(商品名レベミル ® )は2004年(国 内では 2007 年)に発売された(図3)。 製剤は無色透明の中性溶液であり、注 射後の皮下組織においても沈殿せずに溶 解したままである。ミリスチン酸部分の接 触により6 量体が 2 つ結合したダイヘキサ マーが形成されることと(図4)、ダイヘキ サマー、6 量体、2 量体、単量体の各段 階の状態で、皮下組織液中のアルブミンと ミリスチン酸が結合することによる血液中 への吸収遅延のために効果の持続性がも たらされる。血液中ではインスリンデテ ミルは 98 %がアルブミンと結合している が、この結合は作用の遅延には少ししか 影響しない。なお、血液中のアルブミン 分子の数万分の 1 程度にしか結合しない ため、低アルブミン血症患者における効 果の不安定性といったことは生じない。 臨床試験においては、インスリンレベ ミルの特徴として、持続性とともに効果 の安定性が認められた。基礎インスリン 分泌補充として従来用いられてきた NPH インスリンでは、効果の個体内変動によ る不安定な血糖変動が大きな問題であっ た。インスリン デテミルでは、インスリン 効果の個体内変動が NPH インスリンの半 分以下であり、インスリン グラルギンより も優れていた(図5)。国内の1型糖尿病 を対象とした臨床試験でも、NPHインス リンと比較して、空腹時血糖の低下とと もに個体内変動の有意な低下が認められ た。皮下組織で沈殿が生じない点と、血 中でのアルブミン結合によるバッファリ ング効果(遊離インスリン濃度の変動が減 少)のためと考えられている。個体内変 動の少なさはインスリン効果の予測性を高 め、血糖コントロールの改善に寄与する だけでなく、予期しない高血糖や低血糖 を少なくすることができるので、患者 QOL の改善にもつながる。それ以外にも、イ ンスリン デテミルは、インスリン治療にお ける重要な問題である体重増加が他の基 礎インスリンに比べて少ないという利点も 認められる。 生理的なインスリン基礎分泌補充を目 的とした、理想的なインスリンアナログ 製剤として期待されることとして、少な くとも24 時間以上の持続性、ピークのな い平坦な効果、個体間および個体内変動 が少ないことなどがある。しかし、持効 型溶解インスリン製剤として登場したイ ンスリン グラルギン、インスリン デテミ ルともに、NPHインスリンに対する優越 性は超速効型インスリンとの組合せによ る HbA1c の改善や夜間低血糖の減少な どとして認められたが、その限界も次第 と明らかとなってきた。そのため、ノボ ノルディスク社は、さらに安定して長い 持続時間を持つインスリンアナログ製剤 の開発を進めることとなった。 参考書籍 1)粟田卓也 : インスリンアナログ製剤の薬理学的特徴 と有効性, 安全性. 月刊糖尿病 2010; Vol.2 No.6: 21- 32. 2)小坂樹徳, 門脇孝 : 糖尿病診療の歩みと展望. 文光堂. 2007; pp337-349. 3)Kurtzhals P: Int J Obes 2004; 28(Suppl 2) : S23-S28. 4)Russell-Jones D: Int J Obes 2004; 28(Suppl 2) : S29- S34. 新たな持効型溶解インスリンを求めて� 新たな持効型溶解インスリンを求めて� 3価コバルトインスリン� 3価コバルトインスリン� アルブミンとの結合と持続性効果� アルブミンとの結合と持続性効果� 脂肪酸が付いたインスリン製剤の誕生� 脂肪酸が付いたインスリン製剤の誕生� さらなる改良を目指して� さらなる改良を目指して� 図1 3価コバルトインスリン6量体の立体構造� インスリン1分子を除いて表示してある。2個の3価コバ ルトイオンが、それぞれ3分子のインスリンとB鎖10位の ヒスチジン部位(Nとして表示)で水素結合を形成する。 また、上下各3個の疎水性ポケットには溶液由来の水 分子や塩素イオンなどのリガンドが結合する(Lとして 表示)。� 図2 インスリン デテミルの1次構造� 図5 2種類の持効型溶解インスリンおよびNPHインスリンの個体内変動の比較� 右に代表的な症例におけるインスリン効果のプロファイルが示されているが、1型糖尿病 患者における皮下注射後24時間のインスリン効果(ブドウ糖注入率、GIR)の曲線下面 積を4日間測定した時の個体内変動(変動係数、CV)は、インスリン デテミル(18例)、イン スリン グラルギン(16例)、NPHインスリン(17例)の順に大きくなり、有意差が認められた。� 図3 脂肪酸を付加した持効型溶解インスリン製剤� 図4 インスリン デテミル6量体とダイヘキサマー� Diabetes 1995; 44: 1381-1385. インスリン デテミル6量体� Diabetes 2004; 53: 1614-1620. ダイヘキサマー� p<0.05 80 (%)� 70 60 50 40 30 20 10 0 0 6 12 18 24 8.0 6.0 4.0 2.0 0 ブドウ糖注入率� (mg/kg/min)� A21 A1 B1 B29 Asn Cys Tyr Asn Glu Leu Gln Tyr Leu Ser Cys le Ser Thr Cys Cys Gln Glu Val le Gly Thr Lys Pro Thr Tyr Phe Phe Gly Arg Glu Gly Cys Val Leu Tyr Leu Ala Glu Val Leu His Ser Gly Cys Leu His Gln Asn Val Phe 17A L L L L L L Co N N N N N N 50A 35A Co C14直鎖飽和脂肪酸� (ミリスチン酸)� *� *� インスリン デテミル� 0 6 12 18 24 8.0 6.0 4.0 2.0 0 インスリン グラルギン� 0 6 12 時間� 18 24 8.0 6.0 4.0 2.0 0 NPHインスリン� インスリン デテミル� インスリン グラルギン� NPHインスリン�

脂肪酸が付いた 持効型溶解インスリン製剤の誕生 › uinfo › mnaika4 › pdf › ditn2013-01.pdf第418号 2013年(平成25年)1月5日発行(毎月1回5日発行)1977年(昭和52年)4月1日創刊

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Page 1: 脂肪酸が付いた 持効型溶解インスリン製剤の誕生 › uinfo › mnaika4 › pdf › ditn2013-01.pdf第418号 2013年(平成25年)1月5日発行(毎月1回5日発行)1977年(昭和52年)4月1日創刊

(6)第418号 2013年(平成25年)1月5日発行(毎月1回5日発行)1977年(昭和52年)4月1日創刊 ISSN 0913-3380

●粟田 卓也(埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科)�

第9回�

インスリン製剤の�変遷をたどる�

脂肪酸が付いた�持効型溶解インスリン製剤の誕生�

持効型溶解インスリン製剤の誕生��

前回(2012年DITN 11月号)に紹介し

たインスリン グラルギンはヒトインス

リンアミノ酸配列の修飾により中性環境

下では難溶性の沈殿となることから持続

的な効果を示すことに成功したが、別の

方法による持続性製剤の開発も進められ

ていた。3価コバルトインスリンと脂肪

酸を付加したインスリンである。

原子番号が27の遷移元素であるコバ

ルトは、生体ではビタミンB12に含まれ

ている。第6回(2012年DITN 7月号)で

紹介したように、ヒトインスリンは3個の

2量体が集まった6量体の結晶を形成す

るが、2価の陽イオンである亜鉛イオンが

2個配位することで安定化する。ノボノル

ディスク社・ノボ研究所のクルツハルス

らは、亜鉛をコバルトに置換したインスリ

ン結晶の可能性に注目する。2価亜鉛イオ

ンを2価コバルトイオンで置換した6量体

結晶を、さらに酸化することより作出さ

れる3価コバルトインスリン結晶は、きわ

めて安定である(図1)。

3価コバルトインスリンは中性溶液で可

溶性であり、皮下注射後でも沈殿しない

が持続性効果を示す。2価コバルトイン

スリンは2価亜鉛インスリンとほぼ同様の

薬物動態を示すことや、3価コバルトイ

ンスリンがインスリン受容体と結合しない

ことから、3価コバルトインスリンが2価

に還元される段階および血中半減期の延

長により持続性効果がもたらされるもの

と考えられた。しかしながら、NPHイ

ンスリンに優る利点は認められず製剤化

には至らなかった。

アルブミンは細胞外液に最も豊富に含

まれるタンパクであるが、微量元素・脂

肪酸・酵素・ホルモンなどの内因性物質

や外因性の薬物などを吸着し運搬する。

1995年に、クルツハルスらは、B鎖29位

リジンのεアミノ基に炭素数10~16の直

鎖飽和脂肪酸を付加したインスリンア

ナログについて検討し、アルブミンと

の結合度が動物における効果の持続性

と強く相関することを見いだした。そ

の中で、炭素数14のミリスチン酸を付加

しB鎖30位のトレオニンを除いたインス

リンアナログ(図2)の効果が最も遅延す

ることが注目され、新しい溶解性の持続

性インスリンアナログとして開発が進めら

れることとなった。なお、このインスリ

ンアナログは、トレオニンを除いて(des

threonine)ミリスチン酸<myristic(mir)

acid>を付加してあることから、デテミ

ル(detemir)と命名された(図3)。

非臨床試験において緩徐で持続的な薬

理作用と安全性が確認された後に、ヨー

ロッパおよび日本において行われた臨床

試験において、NPHインスリンと比べて、

よりピークが少なく、より持続性の高い

製剤であることが認められ、インスリン

デテミル(商品名レベミル®)は2004年(国

内では2007年)に発売された(図3)。

製剤は無色透明の中性溶液であり、注

射後の皮下組織においても沈殿せずに溶

解したままである。ミリスチン酸部分の接

触により6量体が2つ結合したダイヘキサ

マーが形成されることと(図4)、ダイヘキ

サマー、6量体、2量体、単量体の各段

階の状態で、皮下組織液中のアルブミンと

ミリスチン酸が結合することによる血液中

への吸収遅延のために効果の持続性がも

たらされる。血液中ではインスリン デテ

ミルは98%がアルブミンと結合している

が、この結合は作用の遅延には少ししか

影響しない。なお、血液中のアルブミン

分子の数万分の1程度にしか結合しない

ため、低アルブミン血症患者における効

果の不安定性といったことは生じない。

臨床試験においては、インスリン レベ

ミルの特徴として、持続性とともに効果

の安定性が認められた。基礎インスリン

分泌補充として従来用いられてきたNPH

インスリンでは、効果の個体内変動によ

る不安定な血糖変動が大きな問題であっ

た。インスリン デテミルでは、インスリン

効果の個体内変動がNPHインスリンの半

分以下であり、インスリン グラルギンより

も優れていた(図5)。国内の1型糖尿病

を対象とした臨床試験でも、NPHインス

リンと比較して、空腹時血糖の低下とと

もに個体内変動の有意な低下が認められ

た。皮下組織で沈殿が生じない点と、血

中でのアルブミン結合によるバッファリ

ング効果(遊離インスリン濃度の変動が減

少)のためと考えられている。個体内変

動の少なさはインスリン効果の予測性を高

め、血糖コントロールの改善に寄与する

だけでなく、予期しない高血糖や低血糖

を少なくすることができるので、患者QOL

の改善にもつながる。それ以外にも、イ

ンスリンデテミルは、インスリン治療にお

ける重要な問題である体重増加が他の基

礎インスリンに比べて少ないという利点も

認められる。

生理的なインスリン基礎分泌補充を目

的とした、理想的なインスリンアナログ

製剤として期待されることとして、少な

くとも24時間以上の持続性、ピークのな

い平坦な効果、個体間および個体内変動

が少ないことなどがある。しかし、持効

型溶解インスリン製剤として登場したイ

ンスリングラルギン、インスリンデテミ

ルともに、NPHインスリンに対する優越

性は超速効型インスリンとの組合せによ

るHbA1cの改善や夜間低血糖の減少な

どとして認められたが、その限界も次第

と明らかとなってきた。そのため、ノボ

ノルディスク社は、さらに安定して長い

持続時間を持つインスリンアナログ製剤

の開発を進めることとなった。

参考書籍1)粟田卓也 : インスリンアナログ製剤の薬理学的特徴と有効性, 安全性. 月刊糖尿病2010; Vol.2 No.6: 21-32.

2)小坂樹徳, 門脇孝 : 糖尿病診療の歩みと展望. 文光堂.2007; pp337-349.

3)Kurtzhals P: Int J Obes 2004; 28(Suppl 2) : S23-S28.4)Russell-Jones D: Int J Obes 2004; 28(Suppl 2) : S29-S34.

3価コバルトインスリン�

アルブミンとの結合と持続性効果�

脂肪酸が付いたインスリン製剤の誕生�

さらなる改良を目指して�

新たな持効型溶解インスリンを求めて�新たな持効型溶解インスリンを求めて�

超速効型インスリン製剤の�ラインナップ�

3価コバルトインスリン�3価コバルトインスリン�

アルブミンとの結合と持続性効果�

脂肪酸が付いたインスリン製剤の誕生�

さらなる改良を目指して�

新たな持効型溶解インスリンを求めて�

超速効型インスリン製剤の�ラインナップ�

3価コバルトインスリン�

アルブミンとの結合と持続性効果�アルブミンとの結合と持続性効果�

脂肪酸が付いたインスリン製剤の誕生�

さらなる改良を目指して�

新たな持効型溶解インスリンを求めて�

超速効型インスリン製剤の�ラインナップ�

3価コバルトインスリン�

アルブミンとの結合と持続性効果�

脂肪酸が付いたインスリン製剤の誕生�脂肪酸が付いたインスリン製剤の誕生�

さらなる改良を目指して�

新たな持効型溶解インスリンを求めて�

超速効型インスリン製剤の�ラインナップ�

3価コバルトインスリン�

アルブミンとの結合と持続性効果�

脂肪酸が付いたインスリン製剤の誕生�

さらなる改良を目指して�さらなる改良を目指して�

新たな持効型溶解インスリンを求めて�

超速効型インスリン製剤の�ラインナップ�

図1 3価コバルトインスリン6量体の立体構造�インスリン1分子を除いて表示してある。2個の3価コバルトイオンが、それぞれ3分子のインスリンとB鎖10位のヒスチジン部位(Nとして表示)で水素結合を形成する。また、上下各3個の疎水性ポケットには溶液由来の水分子や塩素イオンなどのリガンドが結合する(Lとして表示)。�

図2 インスリン デテミルの1次構造�

図5 2種類の持効型溶解インスリンおよびNPHインスリンの個体内変動の比較�右に代表的な症例におけるインスリン効果のプロファイルが示されているが、1型糖尿病患者における皮下注射後24時間のインスリン効果(ブドウ糖注入率、GIR)の曲線下面積を4日間測定した時の個体内変動(変動係数、CV)は、インスリン デテミル(18例)、インスリン グラルギン(16例)、NPHインスリン(17例)の順に大きくなり、有意差が認められた。�図3 脂肪酸を付加した持効型溶解インスリン製剤� 図4 インスリン デテミル6量体とダイヘキサマー�

Diabetes 1995; 44: 1381-1385.

インスリン デテミル6量体�

Diabetes 2004; 53: 1614-1620.

ダイヘキサマー�

*p<0.05

80(%)�

70

60

50

40

30

20

10

0

個体内変動�

0 6 12 18 24

8.0

6.0

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2.0

0

ブドウ糖注入率�(mg/kg/min)�

A21

A1

B1

B29 Asn CysTyr

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Glu

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Gln

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N

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(ミリスチン酸)�

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インスリン デテミル�

0 6 12 18 24

8.0

6.0

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2.0

0

インスリン グラルギン�

0 6 12時間�

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8.0

6.0

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NPHインスリン�

インスリン デテミル�

インスリン グラルギン�

NPHインスリン�

インスリン製剤の�変遷をたどる�

Page 2: 脂肪酸が付いた 持効型溶解インスリン製剤の誕生 › uinfo › mnaika4 › pdf › ditn2013-01.pdf第418号 2013年(平成25年)1月5日発行(毎月1回5日発行)1977年(昭和52年)4月1日創刊

(7) 第418号 2013年(平成25年)1月5日発行(毎月1回5日発行)1977年(昭和52年)4月1日創刊 ISSN 0913-3380

D I T N 編 集 部 よ り �D I T N 編 集 部 よ り �DITN紙では、読者の皆さまから「Q&A」のテーマを募集しています。�

「Q&A」のほか、読みたいテーマなどがございましたら、施設名、住所、氏名、

職業、電話番号を明記のうえ、FAXまたはE-mailにてお寄せください。�

掲載分には記念品を進呈いたします。�

宛先�

DITN編集部�FAX:03-3265-5820�E-mail:[email protected]

第35回 糖尿病スタッフ教育研究会�■日 時:2013年4月20日(土)16:00~4月21日(日)12:10�■会 場:上郷・森の家  横浜市栄区上郷町1499-1 TEL 045-895-2211�■内 容:� 《4月20日(土)》1型、2型糖尿病患者さんのご講演/グループディスカッション  � 《4月21日(日)》早朝ウォーキングおよび講習�  特別講演:東京女子医科大学糖尿病センター 内潟 安子 先生� 《両日》患者疑似体験(SMBG体験)予定(体験は拒否することも可能です)�■参加対象:医療関係者�■参加費:10,000円�■申込・問合先:� ノボ ノルディスク ファーマ(株)横浜オフィス 「糖尿病スタッフ教育研究会」担当 迄� 住所、電話番号、氏名、性別、職種をご連絡下さい。� 【TEL】045-474-0361 【FAX】045-474-0347� 参加費の振込みをもって受付完了と致します。� 振込先:郵便口座名 糖尿病スタッフ教育研修会 記号10280 番号84681501�※日本糖尿病療養指導士認定更新のための研修単位(第2群)�※日本糖尿病療養指導士認定更新のための研修単位(第1群:看護の研修)�※日本糖尿病療養指導士認定更新のための研修単位(第1群:栄養士の研修)�※神奈川県糖尿病療養指導士(KLCDE)認定更新のための研修単位�以上の単位申請を予定しております。�

第8回 九州糖尿病看護スキルアップセミナー�■日 時:2013年2月11日(月・祝) 9:25~16:45 �■会 場:九州大学医学部百年講堂�■内 容:� ・特別講演「認知症と糖尿病~アルツハイマー病にならないために~」�   大分大学総合診療科学講座 診療講師 吉岩 あおい 先生� ・講演「認知症を患う高齢者の理解とケア」�   社団医療法人 製鉄記念広畑病院 老人看護専門看護師 森山 祐美 先生� ・講演「認知症介護と認知症ケアマネジメントについて」�   いまじん介護相談室(居宅介護支援事業所)主任介護支援専門員 工藤 美奈子 先生� ・講演「糖尿病療養指導士を活用した地域連携パス」�   医療法人 社団シマダ 嶋田病院 内科部長 赤司 朋之 先生� ・講演「地域連携パスにおけるコーディネートナースの役割」�   医療法人 社団シマダ 嶋田病院 �   福岡県糖尿病療養指導士 糖尿病連携コーディネートナース 坂本 則子 先生� ・講演「佐賀県糖尿病地域連携の取り組み~地域とつながるチーム作り」�   佐賀大学医学部附属病院 糖尿病看護認定看護師 藤井 純子 先生�■参加費:JADEN会員 事前申込3,000円、当日参加3,500円�     JADEN非会員 事前申込5,000円、当日参加5,500円�     (参加費には昼食代が含まれています)※定員300名(会員優先、先着順)�■申込・問合先:往復はがき、1人1枚(連名は無効)に、下記の必要事項を記入の上、お申込みください。必要事項:①氏名、②JADEN会員番号、③住所、④施設名と所属、⑤TEL番号、⑥FAX番号、⑦職種、⑧復側のはがきの表書き(ご自分の郵便番号、住所、氏名)�

 送付先:〒862-0976 熊本県熊本市九品寺6-2-3 医療法人 社団陣内会 陣内病院 川口はるみ宛 担当・問合先:【FAX】096-364-2654 陣内病院 川口はるみ宛 � 申込締切:平成25年1月24日(木)(当日消印有効)� 受講決定通知:12月3日以降順次発送いたします。セミナーに関してのお問い合わせはFAXに限らせていただきます。お返事もFAXでいたしますので、問い合わせの際には必ずご自分のFAX番号をご明記ください。�※日本糖尿病教育・看護学会より<第1群>4単位(申請中)�※日本糖尿病療養指導士認定機構より<第2群>2単位(申請中)�のいずれかの取得ができます。�

妊娠とインスリンアナログ製剤�

図6 1型糖尿病母体からの出生児45例における�   臍帯血血清中のインスリン抗体と動物インスリンの検出濃度との相関�

表 医薬品の胎児危険度分類(FDA)�

カテゴリーA ヒトの妊娠初期3カ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠もないもの。�

カテゴリーB 動物実験では胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは、動物実験で有害な作用が証明されているが、ヒトでの妊娠期3カ月の対照試験では実証されていない、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの。�

カテゴリーC 動物実験では胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。注意が必要であるが投薬のベネフィットがリスクを上回る可能性はある。�

カテゴリーD ヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されることもありえる。�

カテゴリーX 動物またはヒトでの試験で胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、またはその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性の方が大きいもの(事実上の禁忌)。�

インスリン製剤の�変遷をたどる�

0 50403020インスリン抗体(%結合率)�

動物インスリン�

相関係数0.76�p<0.001

10

4000

3000

2000

1000

0

N Engl J Med 1990; 323: 309-315.

(pmol/L)�

妊娠時には母体および胎児の合併症

を防ぐために厳格な血糖コントロール

が必要であり、生理的なインスリン分

泌をうまく再現するインスリンアナロ

グ製剤のほうが適している。しかしな

がら、ヒトインスリンと異なる細胞増

殖活性や免疫原性が胎児に悪影響を及

ぼす懸念もあり、インスリンアナログ

製剤についての妊娠への安全性は個々

に検討されなければならない。ヒトイ

ンスリン、インスリンアナログともに、

非生理的な血中濃度に至らなければ胎

盤は通過しないと考えられてはいるも

のの、インスリン抗体とそれに結合し

たインスリンは胎盤を通過することが

認められ(図6)、巨大児の成因となっ

ている可能性も指摘されている。

アメリカ食品医薬品局(FDA)の分類

では、胎児に対する薬剤の危険度はA

のほぼ安全からXの禁忌まで5つのカ

テゴリーに分かれる(表)。インスリン

アナログ製剤に関しては、従来は超速

効型インスリンのインスリン リスプロ

およびインスリン アスパルトのみがヒ

トインスリンと同等のカ

テゴリーBであったが、

最近のNPHインスリンを

対照とした前向きランダ

ム化比較試験の結果を受

けて、持効型溶解インス

リンのインスリン デテ

ミルは従来のカテゴリー

CからカテゴリーBに引

き上げられた。耐糖能異

常妊婦にとっては朗報で

ある。