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電力中央研究所フォーラム2010 研究成果発表会 電力流通部門、土木部門 「電力設備の運用保守技術の高度化を目指して」 1Copyright © 2010 CRIEPI 2010/10/27 電力流通設備の劣化診断・ 高経年運用技術 電力技術研究所 岡本 達希

電力流通設備の劣化診断・ 高経年運用技術 · 10/27/2010  · 塗膜の劣化評価手法を開発するために、交 流インピーダンス法およびカレントインタ

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電力中央研究所フォーラム2010

研究成果発表会 電力流通部門2、土木部門

「電力設備の運用保守技術の高度化を目指して」

〔1〕Copyright © 2010 CRIEPI 2010/10/27

電力流通設備の劣化診断・高経年運用技術

電力技術研究所

岡本 達希

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研究の背景

変電•地中送電設備の診断技術の開発

電力流通設備の保守管理・更新計画策定支援

送電鉄塔の塗膜劣化評価法の開発

まとめ

報告内容

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問題意識

変電機器や地中送電設備では高経年運用の増加が至近年に迫りつつある

一方、送電鉄塔などでは塩害・塵埃等に

より、腐食の発生・進展が懸念されるそのため、電力流通設備の保守管理戦略

の高度化・合理化による設備投資・保守

コスト増加の抑制が重要課題となっている

研究の背景-1

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電力流通設備の劣化診断•高経年運用

発電設備 送電設備 変電設備 配電設備

変圧器GIS遮断器避雷器… …

柱上変圧器線路開閉器配電ケーブル電柱,電線… …

送電鉄塔送電線がいし装置CVケーブル… …

タービン発電機水車発電機… …

経年機器の劣化診断•評価技術

個別の機器を対象に

・状態診断

・補修・更新の要否

・余寿命(更新時期)

保守管理・更新計画策定支援

同種の機器群を対象に

・補修計画策定支援

・更新計画策定支援

・経年運用支援

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プロジェクト研究の目的

変電・地中送電設備の合理的な高経年運用を支援す

るため、以下の技術開発を進める

(1)診断技術の開発とその現場適用

大型変圧器、ガス絶縁開閉装置(GIS)、高電圧CV

ケーブルなどの主要電力機器を対象とする

(2)アセットマネジメント技術を応用した保守管理手法

個別機器の経年運用支援、更新時期最適化支援

(3)送電鉄塔などの補修塗装の効率化

塗膜劣化評価法

研究の背景-2

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大型油入変圧器の絶縁紙劣化推定技術

特徴: 負荷データに基づく簡易な劣化推定技術

大型変圧器の巻線異常検出技術

特徴: FRA技術を適用した簡易な異常検出技術

GIS内部異常検出技術

特徴: ガス吸着剤を用いた超高感度で簡易なガス検出

高圧CVケーブルの劣化診断技術

特徴: 部分放電分信号に基づく水トリー劣化位置推定

変電•地中送電設備の診断技術の開発

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当所提案の過渡温度解析手法を改良し、大

型変圧器の負荷履歴に基づく絶縁紙の重合

度劣化予測手法の精度を向上した

また周波数応答解析(FRA)を利用した巻

線層間短絡や巻線位置異常の簡易診断手法

を開発した

大型油入変圧器の絶縁紙劣化推定技術

66kV級 変電用変圧器

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絶縁紙の熱劣化推定手法の実機器への適用

評価対象とした77kV級変圧器(14台)

絶縁紙重合度の推定結果と実測結果

甘めの評価

寿命レベル重合度:450

絶縁紙重合度初期値:1,000

過渡温度推定手法の改良

+10%

-10%

過渡温度推定手法の改良により重合度推定(引張強度推定)精度が向上

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大型変圧器の巻線異常検出技術

)(

)(log20)(

jV

jVjH

input

output伝達関数:

FRA 変圧器

周波数応答解析(FRA)による伝達関数測定原理

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周波数応答解析(FRA)による現場実測状況

測定器

測定リード

結線図・供試器:220/66kV, 250MVA

・経年:34年・種別:内鉄型

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周波数応答解析(FRA)による巻線異常検出

実機を用いた検証 ー伝達関数測定結果と解体調査結果ー

W相低圧巻線の伝達関数のみ変化が認められた。→W相低圧巻線の変形したと同定される。

W相低圧巻線全景

解体調査でW相低圧巻線に変形が発見された

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柱上変圧器の巻線異常診断

巻線層間短絡が簡易に診断出来る様になった

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〔13〕Copyright © 2010 CRIEPI 2010/10/27

GIS内部異常検出技術

・ SF6 ガスの絶縁自復性・ 固体絶縁スペーサの低ストレス運用

絶縁面からは相当長期の期待寿命

ガス遮断器(GCB)ガス絶縁開閉装置(GIS)

劣化診断ではなく異常検出が重要

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機器内部の異常事象によって発生した、

微量のSF6分解ガスがGIS内に封入されるガ

ス吸着剤に蓄積されることに着目

吸着剤中のSF6分解ガスを簡易にかつ超高

感度に検出する手法を開発

このガス検出法に基づき長寿命機器であ

るGISの異常検出手法として外部吸着剤ユ

ニットによる異常検出手法を提案

GIS内部異常検出技術

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外部吸着剤ユニット方式の提案と特徴外部吸着剤ユ ット方式の提案と特徴

・・ 既設設備に適用可能既設設備に適用可能既設設備 適用可能既設設備 適用可能・・ 吸着剤に蓄積された分解ガスの分離分析が可能吸着剤に蓄積された分解ガスの分離分析が可能

ガ 絶縁開閉装置ガ 絶縁開閉装置

SF

ガス絶縁機器外部吸着剤ユニット

(分解ガス検出ユニット)

外部吸着剤ユニット(分解ガス検出ユニット)

ガス絶縁開閉装置ガス絶縁開閉装置

SFSF6

排気

ドライポンプ

バルブ

(分解ガス検出ユニット)(分解ガス検出 ット)

排気

SF6 ガス バルブ ドライ

ポンプ

吸気吸着剤

吸気

吸着剤

真空ポンプ,ガス検知管など外部吸着剤外部吸着剤

ニ ト方式ニ ト方式

吸着剤

〔15〕Copyright © 2010 CRIEPI 2010/10/27

ユニット方式ユニット方式 ガス検知管

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CV ケーブルの劣化状態と劣化位置を診断

する手法の開発を目指し、現場適用可能な

減衰振動高電圧電源を利用して、ケーブル

中の劣化信号の伝搬・減衰特性を解明

高圧CVケーブルの劣化診断技術

CVケーブル断面図(20kV級)

水トリー

架橋ポリエチレン絶縁層

1.8mm

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減衰振動高電圧試験装置(OWTS)による模擬試験結果例

減衰振動高電圧

発生試験装置

水トリー劣化部位

(部分放電発生箇所)

① 部分放電発生② 部分放電信号伝搬(直接波)

② 部分放電信号伝搬

③ 部分放電信号

は端末部で反射

④ 部分放電信号伝搬(反射波)供試 CVケーブ

部分放電検出点

電圧印加点

1mm

人工的に発生させた水トリー

(供試ケーブル:6.6kV CVケーブル)

水トリー(長さ約2.5mm)

-20

-10

0

10

20

Ap

pli

ed v

olt

age

[kV

]

302520151050

Time [ms]

-40

-20

0

20

40

PD

ch

arg

e [p

C]

課電電圧波形 部分放電

印加した減衰振動電圧波形と部分放電発生状況

(電圧波高値:15kVpeak,部分放電電荷量:35pC)

部分放電発生箇所の

位置標定原理

印加

電圧

[kV

]

部分

放電

[pC

]

部分放電

ケーブル絶縁層

減衰振動波

時間 [ms]

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経年電力流通設備の合理的な保守管理・更

新計画策定手法の構築に向けて、変圧器や

ガス遮断器(GCB)のような単体機器、な

らびにGIS のような複合機器を対象に、ア

セットマネジメント技術を応用

修繕費の経年変化や部分補修効果を考慮し

た更新計画支援プログラムを順次開発

これらの成果を基に、架空送電設備に対応

した更新計画支援プログラムを新たに開発

電力流通設備の保守管理・更新計画策定支援

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GIS部分更新計画支援プログラム画面例

60年目で全体更新するなら、59年目の平均コストが低いシナリオ3が有利

各構成機器ごとに指定した更新経年で決まる平均保守コストの経年推移を図示

別ウインドウを開き保守費用経年特性を設定。個別評価結果を基に各機器ごとの更新年を決定。ここではA、B、Cとした機器名には、実際には遮断器、断路器、母線、接地開閉器、避雷器、計器用変圧器などを指定

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架空送電設備用更新計画支援プログラムの実行画面

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送電鉄塔の塗膜劣化評価法の開発

・ 鉄塔、架構などの補修塗装間隔の適正化・ 電力機器外箱などの錆対策

経年変圧器送電鉄塔

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塗膜の劣化評価手法を開発するために、交流インピーダンス法およびカレントインタラプタ法に着目し、その適用性を検討

代表的な塗膜に対する長期間の大気曝露試験および加速劣化試験を行い、塗膜の劣化指標として塗膜インピーダンス等が有用であることを明らかにした

この成果に基づき、各種塗膜材料や下地金属に対する塗膜インピーダンスの詳細な経時データを蓄積

送電鉄塔の塗膜劣化評価法の開発

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金属構造物の塗膜劣化診断手法

塗装鋼板の等価回路

直流電圧の充・放電時の変化

R・Cの定量化

カレントインタラプタ法(直流法)

実験装置

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〔24〕Copyright © 2010 CRIEPI 2010/10/27

塗装鋼板試験片に対する加速劣化試験/大気曝露試験結果

27ヵ月間の大気曝露試験での塗膜抵抗・容量の経時変化(ポリウレタン樹脂下塗り塗料/ブラスト鋼板)

1.E+03

1.E+04

1.E+05

1.E+06

1.E+07

1.E+08

1.E+09

1.E+10

1.E+11

0 5 10 15 20 25 30 35

暴露時間(月)

塗膜

抵抗

(Ω

・cm

2)

1.E-11

1.E-10

1.E-09

1.E-08

1.E-07

1.E-06

1.E-05

1.E-04

1.E-03

塗膜抵抗

塗膜容量

塗膜

容量

(F

/cm

2)

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高経年機器が増加している電気事業にとって、的確な劣化診断技術に基づく経済性評価も含めた保守計画策定が喫緊の課題

当研究所では、当面の研究課題として、現場適用を目指した劣化診断技術を開発するとともに合理的な保守計画の策定を支援するプログラムを開発中

今回の報告ではその中間結果を紹介した

まとめ