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圧ケーブル 原子力発電所での低圧ケーブルの劣化診断 The Degradation Diagnosis of Low Voltage Cables Used at Nuclear Power Plants ケーブルが ためにさまざま いられて いる。 かつ安 ために ,これら ケーブルが よう において たすこ あるこ うま いが, められる ,ケーブルについて 確に するため されるように ってきている。そこ ケーブ める 圧ケーブルについて, させた から「 び」を し,これを して 圧ケーブル する「 圧ケーブル 」を した。 プローブをシーケンシャル により移 させ, したこ により, うこ ある。ここ する。 キーワード圧ケーブル,ポリ ニル,エチレンプロピレンゴム, Summary Low voltage cables which have been used for the supply of electric power and the propagation of control signals in nuclear power plants must be sound for safe and stable operation. The long use of nuclear power plants has been reviewed, and the degradation diagnosis to estimate the soundness of low voltage cables has been emphasized. Mitsubishi Cable Industries has established a degradation diagnosis method of cables which convert the velocity of ultrasonic wave in the surface layer of the cable insulation or jacket into breaking elongation, and has developed a degradation diagnosis equipment of low voltage cables used at nuclear power plants in cooperation with Mitsubishi Heavy Industries. This equipment can be moved by an ultrasonic probe by sequential control and measure the ultrasonic velocity automatically. It is capable of a fast and sensitive diagnosis of the cables. We report the outline of this degradation diagnosis equipment and an example of the adaptability estimation at an actual nuclear power plant. Key wordsNuclear power plant, Low voltage cable, Polyvinyl chloride, Ethylene-propylene rubber, Degradation diagnosis, Ultrasonic wave 53 *1  *2  *3  エンジニアリング *4  システム 1.まえがき 51 しており, アメリカ,フランスに 3 っている。そ 4,500 kW にお ける 3 1 めており, 活に かす いエネルギー して大き 割を ってい る。こ 51 うち 20 がす 20 *1 芦  *2 *2 T. Yamamoto T. Ashida T. Ikeda 安  *3 *3 *4 T. Yasuhara K. Takechi S. Araki 30 し,いわゆる えよう ている ,各 に対する っている。 ケーブルが ために いられており, える ケーブル 割を たしている。したがって ケーブルがそ するよう に大き る。こ ため

The Degradation Diagnosis of Low Voltage Cables … · 原子力発電所での低圧ケーブルの劣化診断 原子力発電所での低圧ケーブルの劣化診断 The Degradation

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原子力発電所での低圧ケーブルの劣化診断

原子力発電所での低圧ケーブルの劣化診断The Degradation Diagnosis of Low Voltage Cables Used at Nuclear Power Plants

要  約

原子力発電所では種々のケーブルが電力の供給や監視・制御信号の伝達のためにさまざまな環境下で用いられている。発電所の安全かつ安定な運用のためには,これらのケーブルがどのような状況においても機能を果たすことが必要であることは言うまでもないが,原子力発電所の高経年化対策が進められる中,ケーブルについても的確に

健全性を評価するための劣化診断が重要視されるようになってきている。そこで,三菱重工業�殿と共同でケーブルの中で大部分を占める低圧ケーブルについて,絶縁層の表層近傍に伝搬させた超音波の速度から「伸び」を評価し,これを劣化指標として低圧ケーブルの健全性を診断する「原子力発電所用低圧ケーブルの劣化診断装置」を開

発した。本劣化診断装置では超音波プローブをシーケンシャル制御により移動させ,超音波速度計算に必要な計測を自動化したことなどにより,短時間に高精度な劣化診断を行うことが可能である。ここではこの劣化診断装置の概要と実際の原子力発電所での適用性評価の一部を報告する。

キーワード:原子力発電所,低圧ケーブル,ポリ塩化ビニル,エチレンプロピレンゴム,劣化診断,超音波

Summary

Low voltage cables which have been used for the supply of electric power and the propagation of control signals in

nuclear power plants must be sound for safe and stable operation. The long use of nuclear power plants has been

reviewed, and the degradation diagnosis to estimate the soundness of low voltage cables has been emphasized.

Mitsubishi Cable Industries has established a degradation diagnosis method of cables which convert the velocity of

ultrasonic wave in the surface layer of the cable insulation or jacket into breaking elongation, and has developed a

degradation diagnosis equipment of low voltage cables used at nuclear power plants in cooperation with Mitsubishi

Heavy Industries.

This equipment can be moved by an ultrasonic probe by sequential control and measure the ultrasonic velocity

automatically. It is capable of a fast and sensitive diagnosis of the cables.

We report the outline of this degradation diagnosis equipment and an example of the adaptability estimation at an

actual nuclear power plant.

Key words:Nuclear power plant, Low voltage cable, Polyvinyl chloride, Ethylene-propylene rubber, Degradation

diagnosis, Ultrasonic wave

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*1 三菱重工業株式会社 *2 技術本部 総合研究所 *3 技術本部 エンジニアリング部*4 電力・電線事業部 システム部

1.まえがき

現在,日本全国で 51基の原子力発電所が稼動しており,アメリカ,フランスに次いで世界第 3 位の発電設備容量を

持っている。その発電電力量は約4,500万kWで,日本における総電力量の約3分の1を占めており,日常生活に欠かすことのできないエネルギー源として大きな役割を担ってい

る。この 51基の原子力発電所のうち 20基がすでに 20年以

山 本 歳 雄*1   芦 田 哲 哉*2   池 田   毅*2

T. Yamamoto T. Ashida T. Ikeda

安 原 健 史*3   武 知   圭*3   荒 木 章 吾*4

T. Yasuhara K. Takechi S. Araki

上(最長30年)稼動し,いわゆる高経年化を迎えようとし

ている中,各種の機器に対する技術評価や保全評価など,高経年化への対応が重要課題となっている。原子力発電所では種々のケーブルが電力の供給や監視・

制御信号の伝達のために用いられており,人間に例えるとケーブルは神経系統の役割を果たしている。したがってケーブルがその機能を喪失するようなことになれば,原子

力発電所の安全な運用に大きな障害となる。このため原子

三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

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力発電所用に使用されているケーブルのうち安全系ケーブルには,通常運転時は言うに及ばず,事故時においても

必要な機器に電力を供給するとともに,機器からの監視・制御信号を伝達して設備を制御可能な状態に保つ機能が要求されている。

原子力発電所で使用されているケーブルの絶縁体やシースにはポリ塩化ビニル,各種ゴム,ポリエチレンなどが用いられているが,これらの材料は熱,放射線,紫外線

などの環境により経時的に変化し,その機械的特性や電気的特性が徐々に低下する。このため原子力発電所の安全な運用のためにはケーブルの経年変化状況を経時的にモニ

ターし,余寿命を推定する保守管理が必要である。原子力発電所で使用されているケーブルの中で大部分

を占める低圧ケーブルは,これまで定期検査時に行われる

線間または対地の絶縁抵抗測定などにより電気的な診断がなされてきた。しかし低圧ケーブルは印加できる電圧が低いため,電気的な診断では経年変化の末期,すなわち絶

縁抵抗が著しく低下した後でなければ変化を検知できない。このため経年変化の初期や中期からの連続的な変化の監視は困難であり,余寿命の推定は不可能であった。

しかしながら,ケーブルでは電気的特性の低下に先立って,絶縁体やシースの伸びなどの物理的特性の緩慢な低下が早期から現れ,低圧ケーブルの連続的な経年変化の監

視,余寿命の推定のためには,その物性変化を非破壊的に精度よく検出できる診断技術が有用であると考えられ,このための種々の要素技術が存在している。

当社では各種高分子材料中を超音波が伝搬する速度(以後,「超音波速度」と呼ぶ)と伸びとの相関関係を利用した超音波法による劣化診断手法を確立し�,�,その診断手法

を応用して三菱重工業�殿と共同で「原子力発電所用低圧ケーブルの劣化診断装置」を開発した。本報では開発した劣化診断装置の概要と,三菱重工業�

殿が行った実際の原子力発電所での本診断装置の実機適用性評価の一部を紹介する。

2.超音波劣化診断の原理

ケーブルの絶縁体やシースに使用される高分子材料は

前報� で述べたとおり,熱,放射線や紫外線などの外的な環境により,材料ごとにさまざまなメカニズムで化学的経年変化が生じ,徐々に機械的特性や電気的特性が低下す

る。この特性低下をもたらす化学的経年変化を一般に「劣化」と総称する。低圧ケーブルでは劣化の一般的な指標として,シースや絶縁の「引張強さ」,「破断時の伸び」(以後,

「伸び」と呼ぶ),「絶縁抵抗」,「交流破壊電圧」などが用いられるが,これら劣化指標のうち「伸び」は絶縁抵抗などの電気的特性に比べて緩慢,経時的に相関良く変化し,か

つ劣化初期から低下が検出できる。このため予防保全的にケーブルの劣化を初期段階からモニターするためには,「伸び」をケーブルの劣化指標とすることが望ましい�。

しかしながら,伸びを直接測定するためには破壊試験である引張試験が必要であり,ケーブルの劣化度を非破壊的

に求めるためには,非破壊的に測定できる別の物性から伸びを間接的に換算・推定することが必要である。そこで,当社では(1)式�に示すように材質中を伝搬する超音波の縦

波速度VUが物理的特性の変化を鋭敏に検出すること,多く

の材料で超音波の伝搬速度と伸びとに明確な相関関係があることに着目し,超音波によるケーブルの絶縁体やシー

スの劣化診断手法を確立した�,�。

VU =[(E/ρ)×(1-ν)/(1+ν)(1- 2ν)]1/2 ………(1)

ここで,E は弾性率,ρは密度,νはポアソン比である。ケーブルの絶縁体やシースの高分子材料は熱や放射線

などによって劣化すると弾性率や密度などが変化し,(1)式からわかるように弾性率や密度の変化に応じて材料中の超音波伝搬速度V

Uが変化する�。この性質を利用して材

料中を伝搬する超音波速度を測定することにより,その材料の劣化診断を行うことが可能となる。

3.超音波速度の測定方法

超音波速度の代表的な測定方法として Fig. 1に示すよう

な「パルス反射法�」が挙げられる。これは被測定物の表面から厚さ方向(垂直方向)に超音波を入射し,裏面で反射した超音波を検出する方法であり,ここで得られた時間と

材料の厚さから超音波速度を求める手法である。このパルス反射法は被測定物の厚さが正確に計測できれば非常に有効な超音波速度測定法である�。

しかしながら,ケーブルの絶縁体やシースの厚さは必ずしも均一ではなく,特に絶縁体はより線導体の上に直接被覆さ

れているため厚さが一様ではない。これらの厚さを非破壊的に精度よく計測することは困難であり,パルス反射法でケーブル被覆材の超音波速度を精度よく測定することは難しい。

そこで,当社ではこの問題を解決するために斜角超音波プローブを用いて屈折を利用し,超音波をケーブル被覆材の表層に伝搬させて超音波速度を精度よく測定する手法

thicknesstime

Ultrasonic probe

Fig. 1 Schematic diagram of the pulse

reflection method

パルス反射法の概念図

原子力発電所での低圧ケーブルの劣化診断

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を開発した。本手法ではケーブル被覆材表層近傍に超音波を伝搬さ

せるために Fig. 2に示すように音響プリズムと呼ばれるくさび状の材質を介して超音波をケーブル被覆材に斜めに入射し,(2)式�で示される超音波の屈折を利用した。

  sinθi /sinθ

t= Va / Vc ……(2)

ここで,θiは入射角,θ

tは屈折角,Vaは送・受信プロー

ブの音響プリズム内の超音波速度,Vcは被覆材中の超音波速度である。

Fig. 2および(2)式より,超音波をケーブル被覆材の表層近傍に伝搬させるために Va< Vcで,かつできるだけ音響プリズム内での超音波の損失を低減するために減衰量

が少ない音響プリズムの材質を選択し,θt≒90°となるよう

にθiを設定した。超音波速度の測定は,Fig. 3に示すように

まず送信・受信それぞれの超音波プローブを距離L1離して

ケーブルの長手方向に置き,送信プローブから受信プローブまで超音波が伝搬する時間T

1を計測する。次に送信・受

信プローブ間の距離をL2に変えて伝搬時間T

2を計測する。

このときのプローブ間距離の差と伝搬時間の差から(3)式によりケーブル被覆材中での超音波速度を求めることができる。

VU =(L

2- L

1)/(T

2- T

1)……(3)

本方法ではケーブルの被覆材の厚さに関係なく超音波速度が測定できるため,さまざまな種類およびサイズのケーブルについて行われる劣化診断に適しており,ケーブ

ル被覆材の硬度測定などのようにケーブルの構造や被覆材の厚さが劣化診断の結果に影響を与えることがない。

4.劣化診断装置の概要

前章で解説した超音波法による診断技術をもとに,三菱

重工業�殿と共同でFig. 4に示す原子力発電所用低圧ケー

ブルの劣化診断装置を開発した。この劣化診断装置は,以下の 3 部から構成されている。� 制御部

超音波プローブの移動および超音波データ取り込みなどの制御信号を送受信する部分

� 測定部

超音波プローブおよびプローブ移動治具� 演算部超音波の発信・受信,伝搬時間の計測および超音波速

度の演算を行なう部分原子力発電所では放射能レベルの高い(高線量)領域で

用いられているケーブルを診断するため,劣化診断に伴う

放射線被ばく線量の低減が最優先されなければならない。そこで以下の点を考慮して装置開発を行った。(ⅰ)短時間での測定が可能

超音波プローブの移動,測定点の移動などをシーケンシャル制御とし,自動化を図ることで高精度な計測と診断時間の短縮を両立させた。

θi

θt

Va

Vc

Ultrasonic probe

Sample

Fig. 2 Relation between incidence and

refraction of ultrasonic waves

超音波の入射と屈折の関係

L1Ultrasonictransmit probe

Ultrasonicreceive probe

Propagation time T1

L2

Propagation time T2

Fig. 3 Measurement principle of the ultrasonic velocity

超音波速度の測定原理

Fig. 4 Appearance of the degradation tester of low

voltage cables used at nuclear power plants

原子力発電所用低圧ケーブルの劣化診断装置の外観

三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

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(ⅱ)オペレータが低線量領域で作業可能オペレータの被ばく量を低減するためには,高線

量領域での作業時間を短くすることが重要であり,本診断装置ではセンサ部にケーブルをセットすれば,その後はすべて遠隔操作できるようにした。

本装置での超音波速度の測定フローを Fig. 5に示す。

5.データベースの蓄積

ケーブルの劣化診断を行うためには 2章で述べたように「伸び」を劣化指標とすることが望ましい。そこで,Fig. 5

のフローにより測定された超音波速度から伸びを評価するためには,劣化したケーブルの超音波速度と伸びとの関係についてのデータ(以後,診断カーブと呼ぶ)を蓄積し,

その診断カーブに基づいて伸びを評価する必要がある。そこで,加圧水型軽水炉(PWR)を運用されている関西

電力�殿,北海道電力�殿,四国電力�殿,九州電力�

殿および日本原子力発電�殿と三菱重工業�殿の共同研究において,さまざまな放射線量率および温度で劣化させた電線メーカー各社の原子力発電所用ケーブルを使用し

て超音波速度データを取得し,各社のケーブルの超音波速度と伸びの関係についてのデータベースが纏められた。

データベース作成に用いられたケーブルの絶縁材料は,エチレンプロピレンゴム,難燃エチレンプロピレンゴム,ポリ塩化ビニル,特殊耐熱ポリ塩化ビニルおよびシリコンゴ

ムであり,シリコンゴムについては超音波速度と伸びとの相関性が若干劣るものの,その他の材料については明確な相関関係が得られている。

一例として,Fig. 6に当社製の難燃エチレンプロピレンゴム絶縁ケーブル,Fig. 7に同じく当社製の特殊耐熱ポリ塩化ビニル絶縁ケーブルの診断カーブを示す。このように

線形回帰式における相関係数Rは 0.9以上であり,超音波速度を測定することで精度よく伸びを評価して劣化診断することが可能である。

Breaking Elongation (%)

400

300

1550 16501600 1700 1750

200

100

0

Ultrasonic Velocity (m/s)

Fig. 6 Relation between the ultrasonic velocity and

breaking elongation of fire resistance ethylene-

propylene rubber insulation

難燃エチレンプロピレンゴム絶縁ケーブルの超音

波速度と伸びの関係

Breaking Elongation (%)

300

1900 2000 2100 2200

200

100

0

Ultrasonic Velocity (m/s)

Fig. 7 Relation between the ultrasonic velocity and

breaking elongation of special heat resistant

polyvinyl chloride

特殊耐熱ポリ塩化ビニル絶縁ケーブルの超音波速

度と伸びの関係

*1 測定ケーブル長に合わせて,測定回数は1~20回,測定ピッチは0.5~2.0mmから選択可能である。�

*2 サンプル名,No.はデータ呼び出しなどの管

理を行う。�

規定測定回数�測定ピッチを選択*1��

測定部をケーブルに設置�

サンプル名,No.,材質,�測定温度を入力*2

規定回数の�超音波音速測定�

データ確認�

Fig. 5 Measurement flow of the

ultrasonic velocity

超音波速度の測定フロー

原子力発電所での低圧ケーブルの劣化診断

6.実機への適用

本劣化診断装置と前章で述べたデータベースを使用して,関西電力�殿と三菱重工業� 殿により,実際の原子力発電所で実機適用性評価が行われた。

この場合,超音波速度の測定対象は絶縁体で,シースが取り除かれたケーブル端末部において劣化診断が行われた。

超音波速度の測定状況の一例を Fig. 8および Fig. 9に示す。

診断の結果,いずれのケーブルにも顕著な劣化は見られず,現状ではいずれも健全な状態であると判断されている。そして今回実施されたケーブル劣化診断は,準備,測

定,復旧などの作業も含めて 2日で完了し,本診断装置を用いたケーブル劣化診断が短時間で可能なこと,被ばく線量が少なくできることなどが実証された。

7.む す び

ケーブルの被覆材の表層に超音波を伝搬させてその速度を測定し,超音波速度を劣化指標である「伸び」に換算してケーブルの劣化度を診断する方法を確立した。

Fig. 9 Conditions for measuring the

ultrasonic velocity for cable (2)

実機ケーブルの超音波速度の測定状況

(2)

Fig. 8 Conditions for measuring the

ultrasonic velocity for cable (1)

実機ケーブルの超音波速度の測定状況

(1)

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この劣化診断方法を用いて,シーケンシャル制御により超音波プローブ移動および超音波データ収集を自動化し,

かつオペレータが低線量領域で遠隔操作することができる「原子力発電所用低圧ケーブルの劣化診断装置」を開発した。

本劣化診断装置を用いることにより作業時間を短縮し,診断時の被ばく線量を低く抑えながら精度のよいケーブル非破壊劣化診断が可能となる。劣化指標として採用した

「伸び」は劣化の初期から緩慢に変化するため,劣化の初期段階から連続的にトレンド監視が可能であり,本装置により評価した伸びのデータを蓄積,解析することによりケー

ブルの余寿命を推定することが可能である。今後,本劣化診断装置が原子力発電所のケーブル保全計

画の一翼を担い,原子力発電所の安全かつ安定な運用に貢

献できることを期待する。

参考文献

� 池田 毅ほか.超音波による高分子材料の劣化診断(1).三菱電線工業時報.(94),1998,p.43-47.

� 池田 毅ほか.超音波による高分子材料の劣化診断(2).

三菱電線工業時報.(95),1999,p.27-32.� Nishida,Y. et al.Non-destructive diagnosis technique

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� 川端 昭.やさしい超音波工学.東京,工業調査会,

1988,p.18.

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Ultrasonic Symposium,1998,p42.� 吉川育太郎.超音波探傷法.東京,日刊工業新聞社,

1974,p.2.

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746.

� 超音波便覧編集委員会編.超音波便覧.東京,丸善,1999,p.25.

山本歳雄(やまもと としお)

三菱重工業株式会社 神戸造船所

原子力発電所プラントの配線設計に従事

芦田哲也(あしだ てつや)

技術本部 総合研究所 金属グループ

(現在,部品事業本部 箕島製作所 技術開発部)

超音波劣化診断器の開発に従事

日本非破壊検査協会会員

三 菱 電 線 工 業 時 報 第97号 平成13年1月

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池田 毅(いけだ たけし)

技術本部 総合研究所 金属グループ

導電用アルミ合金,銅合金の開発,超音波劣化診断器

の開発に従事

日本金属学会,軽金属学会,日本材料学会会員,工学

博士

安原健史(やすはら たけし)

技術本部 エンジニアリング部 電装・自動化グルー

自動化生産設備・生産技術の開発に従事

武知 圭(たけち けい)

技術本部 エンジニアリング部 非電線設備グループ

非電線分野の生産技術・設備の開発に従事

荒木章吾(あらき しょうご)

電力・電線事業部 システム部 電線システムグルー

配電用ケーブルおよび被覆線の設計・開発に従事