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腐食センターニュース No. 065 2013 9 31 電子部品用銅材料の腐食挙動と防食技術-II、銅の腐食性成分による腐食機構と腐食形態 II-1. 腐食成分による腐食反応と損傷機構 尾崎敏範、石川雄一 1.はじめに 前報〔腐食センターニュース、 No.064 (2013 5 )、「I、銅の腐食変色、腐食皮膜形成の特徴と影響」〕 に続き、II として屋内外で使用される電子部品用銅材料の腐食性成分による腐食機構と腐食形態について報 告する。なお、1 編にまとめるには長くなりすぎるため、三つに分け II-1 では「銅の腐食成分による腐食反 応と損傷機構」、II-で「銅の大気腐食挙動の理解」を、II-で「損傷事例と防食法」を報告する。 2.電子部品の腐食損傷と腐食形態 表 1 は新聞報道あるいは業界紙に報告された電子機器・部品における腐食損傷例である 1) 。それらはパソ コン、自動車、家電品など幅広い分野に存在し、損傷部品、損傷形態なども様々である。また、損傷の問題 点や防止策も部品毎に様々な固有の手法が採られている。 次に、銅よび銅合金製電子部品における腐食損傷・障害を表 2 にまとめて示す 2) 4) 銅材料は様々な電気 機器・部品に使用されていることが認識される。しかし、同時に各部品には様々な腐食損傷の発生すること も理解される。 ここで、Cu は他の金属材料に比べ導電性、伝熱性、被加工性、コストなどが多くの面で優れており、他の 金属材料に代替えすることが困難な現実がある。このように見ると、これらの各腐食損傷については腐食損 傷現象、性格、特異性などを十分理解し、適確に対応することが必須である。 これらは次報および次々報で実例を挙げて紹介する。 表 1 最近における電子部品の腐食損傷 出典: 尾崎敏範、石川雄一:防錆管理、51, (6), p.308(2007).

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腐食センターニュース No. 065 2013 年 9 月

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電子部品用銅材料の腐食挙動と防食技術-II、銅の腐食性成分による腐食機構と腐食形態

II-1. 腐食成分による腐食反応と損傷機構

尾崎敏範、石川雄一

1.はじめに 前報〔腐食センターニュース、No.064 号 (2013 年 5 月)、「I、銅の腐食変色、腐食皮膜形成の特徴と影響」〕

に続き、II として屋内外で使用される電子部品用銅材料の腐食性成分による腐食機構と腐食形態について報

告する。なお、1 編にまとめるには長くなりすぎるため、三つに分け II-1 では「銅の腐食成分による腐食反

応と損傷機構」、II-2で「銅の大気腐食挙動の理解」を、II-3で「損傷事例と防食法」を報告する。

2.電子部品の腐食損傷と腐食形態 表 1 は新聞報道あるいは業界紙に報告された電子機器・部品における腐食損傷例である 1)。それらはパソ

コン、自動車、家電品など幅広い分野に存在し、損傷部品、損傷形態なども様々である。また、損傷の問題

点や防止策も部品毎に様々な固有の手法が採られている。 次に、銅よび銅合金製電子部品における腐食損傷・障害を表 2 にまとめて示す 2)~4)。銅材料は様々な電気

機器・部品に使用されていることが認識される。しかし、同時に各部品には様々な腐食損傷の発生すること

も理解される。 ここで、Cu は他の金属材料に比べ導電性、伝熱性、被加工性、コストなどが多くの面で優れており、他の

金属材料に代替えすることが困難な現実がある。このように見ると、これらの各腐食損傷については腐食損

傷現象、性格、特異性などを十分理解し、適確に対応することが必須である。 これらは次報および次々報で実例を挙げて紹介する。

表 1 近における電子部品の腐食損傷

出典: 尾崎敏範、石川雄一:防錆管理、51, (6), p.308(2007).

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表 2 銅および銅合金製電子部品における腐食損傷と障害 用途 Cu 製部品名 Cu 部品の腐食損傷に伴う障害

電話・通信機器部品 電線、リレー、バネ、コネクター、スイッチ、

変色、接触不良、オープン、クリープ、電解腐食、誤動作(リーク電流の増大)、応力腐食割れ、

TV,携帯機器 プリント基板、MDF、半導体リードフレーム、 抵抗、コンデンサー

変色、接触不良、マイグレーション、クリープ、ウイスカー、めっき不良、 ワイヤボンデイング不良、はんだ付け不良、

自動車機器、 家電品

接続端子、 ワイヤハーネス

変色、接触不良、断線、電解腐食、 フレッティング、腐食疲労、

製紙パルプ工場 一般電子機器、 変色、接触不良(漂白剤による)、 応力腐食割れ(アンモニア環境、板バネ)

出典:日本伸銅協会編:伸銅品データブック、p.155 (1997). 日本伸銅協会編:銅および銅合金の基礎と工業技術、p.492 (1994). 腐食防食協会編:電子機器部品の腐食・防食 Q&A, 丸善、p.20 (2006).

ここで、図 1 は上記部品の一つ、プリント基板における代表的な腐食損傷例である。なお、本図では剥離

腐食、摺動腐食、応力腐食割れについては省略した。本部品は下地金属(Cu 箔)上にめっき膜(主に Ag、Au など)が施こされ、電極間に数ボルトの電位が付与されている。本部品には外界から水分、埃、腐食性成

分が到達すると、皮膜形成、ポアコロージョン、クリープ、ウイスカーなど様々な腐食損傷が生じる。また、

電位差を駆動力としたマイグレーション、電解腐食も発生する。 これらの部品に発生する腐食損傷を腐食形態別に列挙すると概略以下の8種類,a)~h)の腐食形態に分類

できる 5)。

図 1 電子部品・プリント基板に発生する腐食損傷の例 a) 全面腐食(皮膜形成):プリント基板銅箔やめっき膜上の自由表面がほぼ平面的に腐食侵食する現象。 細線束やビス締結接点(すきま間隔>数μm)に水分が侵入し、腐食生成物が厚く成長すると機器に動作不

良(断線、短絡、接続不良、ノイズ発生など)をもたらす6)。 なお、銅は Passivation 金属(Zn,Pb,Mg など)と分類されるので、Passivity 金属(ステンレス鋼、Ti

など)と異なり、自由表面に比べタイトなすきま内(すきま間隔<1μm)において環境条件によらずすき

ま腐食損傷が生じ難い7)。この点は Cu 材料を使用する上で数少ない救いの一つである。 b) 剥離腐食:貴金属めっき膜(Ag、Au など)の下地金属(Cu、Ni など)がめっき膜直下に沿って横方 向に優先浸食することで、めっき膜が剥離する現象。剥離しためっき膜片が電子機器箱内を浮遊すると、ピ

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ン間をランダムに短絡させる場合があり、機器を誤動作させる可能性がある8)。 c) ポアコロージョン・クリープ:貴金属めっき膜部品におけるめっき膜ピンホールや基板端面において下 地卑金属の腐食生成物が貴金属めっき膜上に這上がる現象 9)。本腐食反応は下地金属自身の腐食損傷に加え、

貴金属/下地金属間の腐食電位差が駆動力になっていると思われる。なお、本現象は全面腐食に比べ腐食生

成物の移動速度が早く、堆積量も多いので動作不良(ピン間の短絡など)の原因になりやすい。 d) 電解腐食:電場が付与された電極対において、陽極側がアノード溶解する現象。腐食速度は部品材料種 によらず主に電極間のリーク電流量に依存する。本腐食速度は上述の a)~c)に比べ格段に大きい。 e) マイグレーション:電場が付与された電極対において、陽極側でアノード溶解した金属イオン種が陰極 側で還元されデンドライト状に再析出することで 終的に電極間が短絡する現象であり、機器を誤動作させ

る 10)。 f) ウイスカー:通常、ウイスカーは高温高湿度環境において下地金属(たとえば、Sn)が内部応力(たと えば、Sn が腐食する際、腐食生成物 SnO2 の体積膨張)により押し上げられ再結晶に伴い針状(数μm太

さ、数十μ~数mm長さ)結晶が発生する 11)~13)。 一方、別の生成機構によりウイスカーが生成することも知られている。たとえば、Ag は硫黄蒸気中で腐

食生成物(Ag2S)が形成する際、下地金属の特定結晶面にそって Ag2S が成長し針状ウイスカーを生成する

14),15)。硫化 Ag や硫化 Cu は良導体なのでこのウイスカーが脱落し、不幸にしてプリント基板上のピン間を

短絡すると機器を誤動作させる。 g) 摺動腐食・フレッティング:機械的摺動により露出した新生面が優先的に摩耗・腐食あるいはスパーク 放電して黒色粉末が発生する。この粉末が掻取られ接点間に堆積すると接点の接触不良や電極間を短絡する。

堆積物が吸水し導電性を持てばマイグレーションの原因になることもある。 h) 応力腐食割れ:一般に Zn 含有量の多い銅合金部品に大きな引張応力(残留応力)が付与され発生する 割れ状の腐食現象。汚染大気中では 70Cu/30Zn 黄銅(接点材)や 18Ni/32Zn/50Cu 高強度銅合金(バネ材)

などに事例がある 16),17)。純銅では架空被覆線における発生例が報告されているが発生例は少ない 18)。 なお、黄銅(Zn>30wt%)は淡水中で脱元素(脱 Zn)腐食を発生するが、大気環境中では損傷例が見当

たらない。これは後述するように大気腐食速度が極めて小さいと共に大気中では溶出した脱元素成分(Zn)が部品表面より移動・流失し難く腐食

反応が継続しにくいので、損傷が顕在

化し難いためと思われる。 次に、これら腐食現象に関し腐食速

度を文献より拾い、まとめて図2を示

す。ここでは大気中および淡水中に分

けて示した。なお、本図の出典および

具体的内容は参考文献後の付録―1に

示す。 本図より、全面腐食の腐食速度は材

料自身の腐食感受性により平面的損

傷なので、大気中・屋内で数十 nm/ 年、

屋外で数μm/ 年と小さく、淡水中に

おいて数十μm/ 年程度である。一方、

材料間の電位差や外部付与電位を剥

駆動力として進行する電解腐食、マイ

グレーションは、腐食速度が数百μm/ 年と全面腐食に比べが1~3桁大きいのが特徴である。また、物理

的作用が加味され、且つ損傷が局所化する孔食や応力腐食割れも大きな腐食速度を示している。 これらの各腐食速度は、微細化が進む多くの電子機器における部品サイズを考慮すると、無視できない値

であることに注目すべきである。

図 2 大気中および淡水中における銅の腐食形態とその速度

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3.銅材料の腐食特性 表 3は大気腐食成分による電子部品用各種金属の腐食感受性(半定量的評価)である 19)~21)。 ここでは、Cu の腐食反応に強く関与する 11 種類の腐食成分に対しその発生源と腐食作用を、また4種類

の金属材料に対する腐食感受性を4レベル(高い順に H,M,L および N)に分類して示した。これらより、腐食

性成分の発生源は汚染大気に限らず、電子機器・部品構成材料(接着剤、ゴム、樹脂材料など)からも発生

している点が注目される。また、各腐食性成分の Cu に対する腐食作用は CO2/CO32-を除く全ての腐食成分に

対し強い腐食作用を有している。4種類の金属材料に対する耐食性は、Sn がほとんどの腐食成分に対し Lレベル(腐食感受性なし)であるのに対し、Cu は Ag とほぼ同等でほとんどが M レベル(腐食感受性中)

か H レベル(H2S 中、腐食感受性大)である。 このように見ると、Cu 製電子部品は実環境中に存在する多くの腐食性成分に対し腐食感受性が高く、その

使用には格段の配慮が必要であると認識すべきである。

表 3 電子部品用各種金属の大気腐食成分による腐食感受性

H:腐食感受性大、M;腐食感受性中、L:腐食感受性小、N:腐食感受性なし 出典:Christofer Leygraf, T. E. Graedel: Atmospheric Corrosion, John Wiley & Sons, Inc., p.38 (2000)

腐食防食協会編:腐食・防食ハンドブック、丸善、p.848 (2000). 菊池靖志、他:材料と環境, 47, 7, 468 (1998).

表 4 は機械構造物を対象とした場合の汚染ガス成分中における腐食感受性の評価例である(電子部品より

評価が緩い)22)。ここではリン脱酸銅およびアルミ黄銅の場合を示した。本表で注目される点は次の通りで

ある。 ⅰ) 両材料は多くの汚染ガス成分に対し、おおむね B レベル以上(問題なく使用可)の耐食性を示してい

る。そして、H2S(Wet)、NH3ガス(Wet)および CN ガスが D レベル(腐食され使用不可)である。 ⅱ) Cl2、H2S 、NH3、Br2、SO2、CO2およびトリクロロエチレン中では Dry 環境と Wet 環境で耐食性に

決定的な違いが見られ、Dry 環境では Wet 環境に比べ腐食感受性が大幅に軽減される。 ⅲ) リン脱酸銅とアルミ黄銅の耐食性はほぼ同等であり、唯一、酢酸に対してのみ後者の耐食性が劣る程

度と評価される。 これらの点は、銅製電子部品の腐食損傷対策として、材料選択(銅合金種の選択)が必ずしも効果的でな

いことを示唆しており、従来からの経験に合致している。 以上より、「汚染大気中における銅製電子部品の腐食損傷問題」は、以下のように整理される。

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① 銅製電子部品は様々な種類・構造が存在する(半導体、プリント基板、接点など十数種類)。 ② それらに生じる腐食損傷現象は様々である〔a)~h)の 8 種類〕。 ③ 銅に対する腐食性成分は数多く存在し、それらに対する腐食感受性は比較的大きい〔8 成分が M レベ

ル、2 成分が H レベル〕。 ④ 銅は他の金属材料と比べ汚染大気中で容易に腐食しやすい〔耐食性:Sn>Ni>Ag≧Cu〕。 ⑤ 汚染ガス中では銅および銅合金の耐食性は銅合金種間で大差ない〔純銅≧黄銅〕。

表 4 汚染ガス成分中における銅の腐食性

出典:ASM:Metals Handbook 9th ed,. vol.13, 617(1987).

このように見ると、電子部品用 Cu 材料の腐食問題は各構成要因〔材料―使用環境―部品構造―腐食現象〕

の組合せが数限りなく存在し、本問題の理解や損傷防止策の検討が容易でないことに気付く。 しかし、本問題における唯一の救いは、図 2 に示したように腐食現象(腐食速度)が比較的緩やかに進行

する点である。図 3は大気開放した銅表面上に形成される緑青膜厚と暴露時間の関係例である 23), 24)。このケ

ースにおける銅の腐食速度は 10μm/4 年程度であり、屋内に暴露した場合はさらにその 1/100 程度である。

これらは淡水中における腐食速度に比べ 1/10~1/1000 倍緩やかである。これは腐食性成分濃度が水中に比べ

3~4桁少ない為(拡散律速)、あるいは部品表面への腐食性成分供給速度が小さい為(大気中拡散≪水中流

動)と思われる。また、腐食生成物の堆積・蓄積過程では形成皮膜の Aging 過程が防食皮膜形成に対し有利

に作用するためと思われる。 何れにしても、大気中における腐食速度が十分小さい点は、電子部品が単なる腐食減肉や局部腐食により

損傷し難いことを意味している。このように考えると、本電子部品における腐食損傷問題は、各構成要因の 組み合わせで決定される固有の腐食現象〔上記 a)~h)〕を正確に理解すれば、適確な腐食損傷防止策を見出

すことが可能と思われる。

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図 3 カナダの農村大気に暴露した純銅の腐食減量

腐食減量Mは、暴露時間 t の 0.52 乗に沿って増大している。 出典:Christofer Leygraf, T. E. Graedel: Atmospheric Corrosion, John Wiley & Sons, Inc., p.104 (2000).

4.汚染大気中の腐食性成分による Cu の腐食反応の電位-pH 図による理解

一般に、Cu は Fe、Ni,、Al などに比べ 多様な腐食性成分と容易に反応し、形成される数多くの腐食生成

物は色相変化や結晶性に富むことが知られている(後述の表 5参照)。これら Cu の腐食反応は先人の努力に

より pH-電位図により整理され、実環境中での測定データと良く対応することが確認されている 25),26)。 まず、図 4に Cu-H2O 電位―pH 図を示す 27)。Cu

は標準状態において、酸化剤を含む pH<6.5 の酸性

域で Cu2+イオンを、pH>13 のアルカリ域において

CuO22-イオンを生成し共に Cu が溶解する。一方、

酸化剤を含む pH=6.5~13 の範囲では、低酸化性域

(低溶存酸素濃度)で Cu2O を生成、高酸化域(高

溶存酸素濃度)では CuO を生成することが読み取れ

る。 代表的な腐食性成分(S2-、CO32-、Cl-および NH3)

中における Cu の腐食反応は図5~8が知られている

25),26)。ここで、これらの図の理解を容易とするため、

参考として図 9 を示す 28)。本図は天然水中〔a)〕お

よび大気と接触状態〔b)〕における Cu の腐食電位

と pH の実測値である。a) 環境では、天然水(湧き

水)であるため溶存酸素濃度が比較的低く腐食電位

が-0.2~+0.2V vs. SHE を、また、流動水中である

ため pH 変動が少なく pH:~7の縦長に分布してい

る。一方、 b)環境では、Cu 板が薄い水膜を介して 大気と接触しているため溶存酸素濃度は飽和状態に

近く腐食電位が+0.2~+0.5V vs.SHE を、また、薄い

水膜中に各種腐食性成分が溶込むため pH変動が生じ

やすく pH:4~9、の横長に分布している。そこで、上記、図 5~8 中には、b)環境に相当する分布を赤色破

線の楕円で記入した。

図 4 Cu-H2O 系の電位- pH 図 出典: M. Pourbaix: Atlas of Electrochemical Equilibria

in Aqueous Solutions, NACE, Huston(1966).

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図5 Cu-S-H2O 系電位―pH 図(全 Cu 濃度:10-4mol/l,全 S 濃度:10-2mol/l) 出典:腐食防食協会編:腐食・防食ハンドブック、p.11(2000).

図 6 Cu-CO32--H2O 系の電位―pH 図 出典:P.Duby: The Thermodynamic Properties of Aqueous Inorganic Copper Systems, INCRA Series on the Metallurgy of Copper, New York , p.62 (1977).

図 7 Cu-Cl-H2O 系の電位―pH図 出典: P. Duby: The Thermodynamic Properties of Aqueous Inorganic Copper Systems, INCRA Series on the Metallurgy of Copper, New York ,p.35 (1977).

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図 5~8 より、様々なことが読み取れる。まず、図 5(全 S 濃度:10-2mol/l)の楕円内において、Cu の表

面には様々な腐食生成物〔Cu2+、Cu4SO4(OH)6(緑青)、CuO および Cu2O〕を生成する可能性が窺える。

また、この地点より酸化力が低下すれば Cu、Cu2S および CuS が形成される。 ここで、緑青は多くの腐食性成分を取り込んで構成されるので分子構造が下地 Cu に対し膨張性である。

たとえば、緑青 Cu4SO4(OH)6では Cu4原子に対し SO41分子、OH6 分子を取り込み表面皮膜が形成され、

図 8 Cu-アンモニア-H2O 系電位―pH図(全 Cu 濃度:10-3mol/l, 全アンモニウム濃度 :10-3mol/l) 出典: 腐食防食協会編:腐食・防食ハンドブック、p.12(2000).

図 9 天然水中および大気と接触状態における Cu の電位ーpH の実測値 出典: L. G. B, Becking, et al: J .Geology 68, 243 (1960).

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立体障害が生じやすい。その為、本来、緑青は下地金属との密着性に乏しく保護性皮膜とはなりにくいはず

である。 しかし、大気環境中において腐食生成物が数多く形成される場合、腐食生成物は酸素拡散障壁作用や pH

緩衝作用を有するので、堆積した腐食生成物内部にはそれぞれの膜地点に相当する酸化電位および pH に応

じた腐食生成物が順次準備される。長時間経過後は、単一腐食生成物が表面皮膜として堆積する場合に比べ

格段に安定な多層構造膜が形成されるはずである。そして、これらの多数の腐食生成物が順次積み重なるこ

とで穏やかな傾斜機能(膜組成変化、密度変化、親和力変化など)が得られると考えられる。 たとえば、pH=5.5(図中、矢印)における腐食電位変化を見ると、腐食生成物は低電位側〔多層膜の 下

層〕より高電位側〔多層膜の 上層〕に向かい、Cu(下地)⇒Cu2S ⇒CuS ⇒Cu2S ⇒Cu ⇒Cu2O ⇒Cu4SO4(OH)6、へと順次形成される可能性がある。このように Cu 下地より腐食生成物が順次積み重なれば、

膜内外の傾斜が穏やかになり、密着性に富んだ安定な多層膜になる可能性がある。これらは後述するように

他の腐食性成分に対してもほぼ同様と思われる。 次に、図 5 には以降の図には表れない特殊な反応領域が示されている。それは Cu2S の生成領域〔図中、

①地点〕であり、直線(a)〔H+/H2O の平衡電位 〕の下方に位置している。これは本反応が水膜の存在しな

い Dry 環境中で Cu との直接化学反応〔 2Cu+S=Cu2S 〕が起こることを意味している。これは電子部品の

腐食損傷防止策を考える点で極めて重要な意味を有している。すなわち、S以外の腐食性成分では、Cu の腐

食領域が直線(a)より上方に位置するので、Cu の腐食反応は水膜の存在(高湿度環境)が不可欠である。

一方、Sの場合は乾燥雰囲気中でも腐食損傷が生じるので、損傷防止策には独自の対策を必要となる。もち

ろん、水膜が存在すれば、電気化学反応〔 2Cu+H2S=Cu2S+2H+ 〕が加算されるので、その腐食速度は更

に増大することは当然である。 同様に、図 6~8からは以下が読みとれる。すなわち、Cu-CO32--H2O 系における湿潤ガス環境では、腐食

生成物として Cu2+、Cu2O および 2CuCO3・Cu(OH)2と CuCO3・Cu(OH)2〔共に、塩基性炭酸銅〕を生成す

る可能性がある。同様に、Cu-Cl-H2O 系における湿潤ガス環境では、CuCl、Cu2O、2CuCl2・3Cu(OH)2〔塩

基性塩化銅〕および CuO を生成する可能性がある。CuCl は平衡電位を卑に移行し、銅の溶解を促進する作

用がある。さらに、Cu-NH3-H2O 系における湿潤ガス環境では、Cu2O、Cu(NH3)2+ および CuO を生成す

る可能性がある。NH3の作用は中性環境において可溶性 Cu アンミン錯体(図中⇒)を形成し、保護性酸化

膜 CuO および Cu2O を溶解することで腐食反応を促進させる作用がある。 これらの腐食性成分の場合も腐食生成物が厚く堆積すると、上述した論理に沿って安定な多層構造膜が形

成しやすいと考えられる。 次に、これら腐食生成物の構成に対する腐食性成分の濃度依存性については、様々なイオン種に対し検討

され、貴重なデータが蓄積されつつある 29)。その例を図 10 に示す 30)。ここでは Cu-SO2-H2O 系における SO2

濃度および pH の影響である。この場合は腐食性成分濃度およびpHにより、腐食生成物が4種類に形態変

化することが伺える。たとえば、図中に示した日本の酸性雨において銅はその表面に保護性を有す CuO およ

び Cu4SO4(OH)6・Brochantite が形成され、腐食損傷が抑制されることが理解される。ただし、別の酸性ガ

ス成分(HCO3-など)が溶込んだり、付着水膜が蒸発・濃縮することで、仮に pH<3.5 になれば Cu2+イオン

を生成し腐食溶解反応が発生する。このように、大気腐食は水溶液腐食に見られない固有の環境条件変化が

生じやすく、それらの変化に伴う腐食反応に格段の注意が必要である。 環境条件変化に関し、その代表例として炭酸イオン濃度と pH の関係を図 11 に示す 31)。炭酸イオンは pH変化により3種類の形態を有し、例えば HCO3-イオンの平衡濃度は pH=7~10 間で高いものの、その前後

で急激に減少して pH 緩衝強度βも大きく変化することで水膜のpHが変化しやすい。この変化を図6に適

用すれば炭酸イオン濃度の変化により腐食生成物組成およびその割合が複雑に変化することを暗示している。 これらの変化に対する実環境における挙動例を図 12 および 13 に示す 32)。図 12 は SO2/SO42-および Cl-イ

オンを含む湿潤大気中で形成される腐食生成物の形態とその経時変化である。腐食生成物の形態は SO2/SO42-

濃度および Cl-イオン濃度に依存して複雑に変化し、図上方では塩基性硫酸塩が主体的に形成され、図下方で

は塩基性塩化物塩が主体的に形成される。

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図 10 Cu-SO2-H2O 系における安定性ダイヤグラム(図中は国内での酸性雨の値) 日本の酸性雨において銅は CuO および Brochantite が安定であり、腐食損傷し難いことが理解される。

出典: T. E. Graedel: Corrosion Science, 27, 721 (1987). なお汚染大気中で使用されるターボ圧縮機では Antlerite の生成を確認している。 尾崎敏範、石川雄一:防食技術、37,10, p.608(1988).

図 11 炭酸イオン濃度のpH 依存性 (βはpH緩衝強度) 出典: 世利修美:金属材料の腐食と防食の基礎、成山堂書店、p.62(2006).

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本図では、腐食生成物の形成に関し経時変化が興味深い。反応初期は腐食性成分の存在に関わらずまず

Cu2O が形成され、次いで腐食成分に応じて非晶質硫酸銅あるいは塩化銅が生成、数ケ月後は結晶水を有す

塩基性硫酸銅(緑青)あるいは塩基性塩化銅が生成、そして数年後には 終的に脱水された緑青に変化して

いる。これらの変化は別の観察結果からも伺うことができる。図 13 はチェコの都市大気中で生成した銅の腐

食生成物とその経時変化である。銅表面には5種類の腐食生成物が生成しているが 8 年間の経時変化に伴い

その組成割合が微妙に変化している。一方、図は省略するがイングランドの農村では、塩基性硫酸銅の内、

Antlerite および Strandbergite が生成されないことも確認されている。 通常、緑青はまず Brochantite(塩基性硫酸銅)が生成し、まれに Malachite(塩基性炭酸銅)が生成す

る。海岸近くでは Atacamaite(塩基性塩化物)が検出されやすいことが知られている 32)。

図 12 SO2/SO42-と Cl-イオン環境中において生成するCuの腐食生成物の経時変化、 長時間経過後、図上方で塩基性硫酸塩が形成、図下方で 塩基性塩化物塩が形成される。 出典: Christofer Leygraf, T. E. Graedel: Atmospheric Corrosion, John Wiley & Sons, Inc., p.142 (2000).

図 13 チェコの都市大気中で生成した銅の腐食生成物の経時変化、 本腐食生成物は Cu2O,Cuprite および4種類の塩基性硫酸銅で構成されている。

出典: Christofer Leygraf, T. E. Graedel: Atmospheric Corrosion, John Wiley & Sons, Inc., p.143 (2000).

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表 5 銅の腐食性成分との腐食反応および腐食生成物

実環境下における腐食挙動は熱力学計算値と組み合わせて整理することで合理的に理解され、実環境条件

の違い(都市、農村、工業地帯など)における腐食生成物組成を説明することも可能になりつつある 33)。 以上述べた知見を整理すると、腐食性成分による Cu の腐食反応は概略表 5 のように整理される 31),34)。こ

こでは主な腐食性成分8種類において生じる腐食反応〔反応物質の収支を考慮した形で整理〕および 終腐

食生成物を示した。Cu に対する腐食性ガス成分の腐食性はいずれの成分も強く反応し、その存在が無視し難

い。あえて各腐食性ガス成分の腐食性を比較すると従来の知見より概略次のように整理される。 H2S≫NH3≒O3≫HCl> SO2>CO2

ここで、上述したようにこれらの腐食成分はその濃度が高い場合、上述および表中に示した様々な腐食生成

物が生成する。しかし、H2S や NH3濃度が十分低い環境(たとえば、汗や指紋の付着)あるいは O3、HCl、SO2、CO2 が比較的低濃度の場合、特に反応当初は腐食生成物が Cu2O や CuO であることが多い。これは、

H2S の場合、硫化銅と酸化銅の生成自由エネルギ(絶対値)が後者の方が大きい為とも推察され、硫化銅の

生成に先立ち酸化銅が生成しやすい為と推測される 34)。 なお、SO2の Cu に対する腐食反応は以下が知られている。

2Cu+1/2O2+H2O+SO2=Cu2O+H2SO3 ――――1) 2Cu2O+SO2+3/2O2+3H2O=3Cu(OH)2・CuSO4 〔緑青〕 ――― 2)

1)式より、Cu に対する SO2 の関与は直接的でなく触媒的と見ることができる。そして、2) 式より当初 Cu表面に生成した Cu2O 皮膜は長時間経過後、徐々に酸化され皮膜の外側に 3Cu(OH)2・CuSO4 〔緑青〕を形

成し2層構造になる。これらの反応は基本的に HCl、CO3の場合も同様であり、腐食性成分は触媒的に作用

するようである。

出典:世利修美:金属材料の腐食と防食の基礎、成山堂書店、p.153(2006).能登谷武紀、他:ベンゾトリアイゾール、銅および銅合金の腐食抑制剤、日本防錆技術協会、p.8(2008).

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以上述べた点は腐食損傷部品の進行過程の検討あるいは分析調査に際し留意すべき点である。すなわち、

損傷品を分析して酸化物以外検出されない場合も上記の種々な腐食性ガス成分が深く関与(加速要因となる)

している可能性がある。これは、前節に述べた様々な腐食損傷に対し、腐食挙動の理解、原因調査、寿命評

価、損傷防止策の決定などに重要なポイントである。上述したように、特定な腐食性成分が深く関与した場

合でも腐食生成物中にその成分が存在しないことがあり、環境条件の複雑な経時変化によっては逆のケース

もある。さらに、複数の腐食性成分が組み合わさって腐食損傷したケースに、検出された単一成分に全ての

原因を求めるなどの愚を犯さないことも重要である。 これらを理解するには、上述の知見を正確に理解することが欠かせない。 次に、腐食生成物による特異な腐食損傷として、稀に異種金属接触腐食損傷が経験される。本腐食現象は

本来 Cu 部品と卑金属部品(Ni,Sn,Fe,Al など)が直接メタル接触し腐食電位差を駆動力として発生する現象

であるが、電子部品の場合は両材料部品が導電性を有す腐食生成物(吸湿することで導電性を有すケースを

含む)を介し間接的に導通することで発生する。本損傷は微細電子部品固有の腐食損傷であり、部品間距離

が小さい(数十μm~数 mm)と部品間の電位差が相互に影響しやすいためである。これはワグナー長さ(水

膜の抵抗率と電位影響距離の関係)として定量的に説明することができる 35)。 次に、前述としたように緑青は強い酸化性を有するので、卑金属製部品(鉄鋼材料、Al 部品など)表面に

緑青粉末(Antlerite)が付着するとその酸化作用により付着物下方が著しく腐食損傷することも経験されて

いる 35)。 これらの腐食挙動についても、発生の可能性に留意すべきである。

4.おわりに 本報では電子部品用 Cu 材料の腐食性成分による腐食反応と損傷機構を報告した。その結果、銅製電子部

品の種類・構成、腐食性成分種、それらの腐食性、腐食損傷現象には、それぞれ多くの影響因子が関与し、

それらの各組合せは数限りないことが明らかとなった。その結果、本問題の理解や損傷防止策を打ち出すこ

とは容易でないことが理解できる。 この為、現段階で本問題を画一的に理解し記述することはできない。これらを解決する為には、3節で述

べた①~⑤の変化を念頭に様々なシチュエーションにおける腐食現象を正確に把握し、関連資料を蓄積する

作業が欠かせない。 参考文献

1) 尾崎敏範、石川雄一:防錆管理、51, (6), 308 – 313 (2007).

2) 日本伸銅協会編:伸銅品データブック、p.155 (1997).

3) 日本伸銅協会編:銅および銅合金の基礎と工業技術、p.492 (1994).

4) 腐食防食協会編:電子機器部品の腐食・防食 Q&A, 丸善、p.20, 38 (2006).

5) 石川雄一:Electrochemistry, 73, (2), 150 – 155 (2005).

6) 津久井勤:エレクトロニクス実装学会誌、8,339(2005)

7) 腐食防食協会編:材料環境学入門、丸善, p.20 (1993).

8) 尾崎敏範:失敗例に学ぶ電子部品のめっき技術、工業調査会, p.58(2006).

9) 志賀章二:古河電工時報、79,93(1986).

10) 腐食防食協会編:材料環境学入門、丸善、p.115 (1993).

11) 腐食防食協会編:電子機器部品の腐食と防食 Q&A、丸善、p.159 (2006).

12) Y. Hiramoto et al: 11th Symposium on Microjoining and Assembly Technology in Electronics,pp.363~399(2005).

13) A. Nishimura: J. Japan Institute of Electronics Packaging ,11, p.348 (2008).

14) J. D. Sinclair: J. Electrochem. Soc., 129, 33 (1982).

15) 平本抽:第11回表面技術セミナー、腐食防食協会東北支部講演大会予稿集、p.157(1996).

16) D. H. Tompson :Materials Research & Standards , 1, 108 (1996) .

17) 腐食防食協会編:腐食防食データーブック、丸善、p.506(1995)

18) 鈴木揚之助、久松敬弘:防食技術、23, 29 ,477 (1974) & 24, 75 (1974).

19) Christofer Leygraf, T. E. Graedel: Atmospheric Corrosion, John Wiley & Sons, Inc., p.38 (2000).

20) 腐食防食協会編:腐食・防食ハンドブック、丸善、p.848 (2000).

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21) 菊池靖志、他:材料と環境, 47, 7, 468 (1998).

22) ASM: Metals Handbook 9th ed., vol.13, p.617 (1987).

23) T. E. Graedel: Corrosion Science, 27, 741-769 (1987).

24) 文献 19), p.104.

25) P. Duby: The Thermodynamic Properties of Aqueous Inorganic Copper Systems, INCRA Series

on the Metallurgy of Copper IV, New York , p.35 & p.62 (1977).

26) 文献 19), pp.10-12.

27) M. Pourbaix: Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions, NACE, Huston(1966).

28) L. G. B, Becking, et al: J .Geology, 68, 243 (1960).

29) 渡辺正満、他:材料と環境、58, 9, 328 (2009).

30) T. E. Graedel: Corrosion Science, 27, 721 (1987).

31) 世利修美:金属材料の腐食と防食の基礎、成山堂書店、p.62 & p.153 (2006).

32) 文献 19), pp.142-143.

33) 文献 19), p.80.

34) 能登谷武紀、他:ベンゾトリアイゾール、銅および銅合金の腐食抑制剤、日本防錆技術協会、

p.8(2008).

35) 腐食センターニュース No.037,「自然ピット径は Wagner 長さを超えない?」(2006.3).

36) 尾崎敏範、石川雄一:防食技術、37, (10), 608 (1988).

環境 腐食形態 純銅の腐食速度測定値 年間当たり換算値 参考文献

大気 a-1)全面腐食、屋外 1μm/年、屋外暴露試験結果、 1μm/年 a

a-2)全面腐食、屋内 10nm/年、屋内暴露試験結果、 0.01μm/年 a

b)剥離腐食 Ag めっき膜/Cu 合金下地、めっき膜剥離横方向速度:

~100μm/年、 ~100μm/年 b

d)電解腐食 >~200μm/年、付与電位(電流)に依存、 >~200μm/年 b e)マイグレーション 100μm/500hr で成長 1700μm/年 c

h)応力腐食割れ 硬銅撚り線の応力腐食割れ進行速度:2mm/1~10 ケ月、 200~2000μm/年 d

淡水 i)全面腐食 淡水中腐食試験結果、24μm/年 24μm/年 e j)孔食 水道用銅管孔食:0.71mm/3~5 年で貫通穴発生 140~230μm/年 f

付録―1 大気中および淡水中における純銅の腐食速度

参考文献: a) W. H. Abbott: Mater. Perform., 24, 46 (1985). b)尾崎敏範,石川雄一:電気化学、64,27(1996). c) 岡本健次、他:回路実装学会誌 12,6,p.418(1997)、 d)井上定雄、芳村徳巳:防食技術、27,4,p.179(1978) 、 e)南谷林太郎、初田俊雄、他:材料と環境,50,5,p.231(2001) 、 f)境昌宏、世利修美:材料と環境、49,9,p.396(2000).