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身近なコロイドと最先端ナノ粒子 東北大学多元物質科学研究所 村松淳司 http://res.tagen.tohoku.ac.jp/mura/ E-mail: [email protected] ~多元物質科学の世界~ 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 1

身近なコロイドと最先端ナノ粒子 · 2013-01-03 · 「0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等し い数の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされ

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  • 身近なコロイドと最先端ナノ粒子

    東北大学多元物質科学研究所 村松淳司

    http://res.tagen.tohoku.ac.jp/mura/ E-mail: [email protected]

    ~多元物質科学の世界~

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 1

  • 基礎知識

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 2

  • 物理化学 physical chemistry

    Physical (形容詞)

    【1】物質の、物質的な、物質界の、自然の、自然界の、有形の、実際的な、実際の、天然の

    【2】身体の、肉体の、身体的な、人的な

    【3】相手の体を求めたがる、好色な

    【4】物理学の、物理学上の、物理的な

    【5】自然の法則による、自然科学の

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 3

  • 物理化学とは

    物質の動きをとらえる化学

    平衡論と速度論の世界へ

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 4

  • 平衡論と速度論

    平衡論は、いわば、桃源郷ユートピアの世界の話である。この世界と今とのエネルギー差が、まさしく、ギブスの自由エネルギー変化なのである。平衡論は、エネルギー的に最も安定なところは、どこか、「ある条件下」で、規定しようとする学問である。理想と現実の間の、今、どこに位置しているか、それを数値解析するのが平衡論である。

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 5

  • 平衡論と速度論

    速度論は、桃源郷に如何にたどりつくか、というガンバリ度を表している。詳しくは、講義の後半で話していく。簡単にまとめると、

    物理化学とは物質の動きを数式化し、理解すること。

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 6

  • 平衡論と速度論

    平衡論と速度論

    平衡においては、正方向と逆方向の速度が等しい

    平衡に達するまでの速度

    不可逆過程と可逆過程

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 7

  • 化学ポテンシャル

    系全体のギブスの自由エネルギー変化に及ぼす、個々の成分のエネルギー変化の寄与分をさしている。式的に表すと、 G = f (T,P,V, n1, n2, n3 ...) で V一定で、全微分すると、 d G = (∂G/∂T) d T + (∂G/∂P) d P + Σ (∂G/∂ni) d ni

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 8

  • 化学ポテンシャル

    T,P,njが一定の時の、(∂G/∂ni) = μ を 成分iの化学ポテンシャルという。 ある成分のガンバリ度を示している、と考えても良いだろう。

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 9

  • 1モルの定義とは かつて1970年代までは、12Cが、0℃, 1 atmで12gあるとき、1 molという、とかが定義だったが、計測法の進歩とともに、電子の質量など不確定性要因が無視できなくなり、定義を変更する。

    「0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子を含む系の物質量」

    ちょっと前の定義は下

    「0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る)で構成された系の物質量」

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 10

  • 1モルの定義とは

    n(X)mol = N(X)/Na [X要素粒子、Nは数]

    結局、原子が、Na(アボガドロ数)個集まったとき、1 mol原子などと呼ぶ」ということになっており、肝心のアボガドロ定数は、6.0221415 x 1023 個/ molである。化学と工業4月号から。

    つまり、定義に入っている、アボガドロ数も経時変化する、という変な定義なのである。

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 11

  • pHの定義とは

    ガラス電極法によるpH測定での拡張不確かさU(k =2) は、0.025 ~0.030

    pH一次標準液を用い、この標準液と同一組成と見なせる場合は~0.01;

    Differential – potentiometric cell を用いた場合の拡張不確かさは~0.004

    H10log apH -=

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 12

  • 活量とは

    理想溶液と実際の溶液の架け橋として考えられた概念。

    Activityを訳すときに、活量という名前をつけたが、本当は、活動度とか、活性度みたいな量で、単位は mol/L。

    濃度と同じ単位だけど、濃度を補正したものではない。たとえば、1 mol/Lの塩酸のプロトンが100%の活動をすれば、1mol/Lの活量になるが、実際の溶液ではそうではない。80%の活動をしたとき、0.8 mol/Lの「活量」と呼ぶ。

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 13

  • 1.生活の中のコロイド

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  • コロイドとは何か

    理化学辞典にみるコロイド

    物質がふつうの光学顕微鏡では認められないが、原子あるいは低分子よりは大きい粒子として分散しているとき、コロイド状態にある、という。

    コロイド粒子自体は定義が難しく、分散状態にあるときのみを、コロイド状態、と定義できる

    では、巨大分子が溶けているのと、何が違うのだろうか?

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 15

  • 1m

    10cm

    1cm

    1mm

    100μm

    10μm

    1μm

    100nm

    10nm

    1nm

    1Å

    光学顕微鏡

    電子顕微鏡

    ソフトボール 硬貨 パチンコ玉

    小麦粉

    花粉

    タバコの煙 ウィルス

    セロハン孔径

    100μm

    10μm

    1μm

    1nm

    100nm

    10nm

    微粒子

    超微粒子

    クラスター

    ナノ粒子 サブミクロン粒子

    コロイド分散系

    粒子径による粒子の分類

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  • 身の回りのコロイド

    温泉

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  • 別府・地獄めぐり

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  • 別府・海地獄

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 19

  • 青い熱湯 ~海地獄

    1.温泉水 20 mlを遠心分離機にかける

    遠心分離 10,000 r.p.m. 30 min

    この条件で、コロイドはすべて沈んだ

    (この条件でシリカなら、20 nm程度のものまで沈む)

    2.上澄み液(固相のない)を保存

    3.沈んだ固体(白色)に2段蒸留水 20 mlを入れる

    4.超音波分散

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  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 21

    海地獄 遠心分離後 の上澄み

  • 青色の正体は何か?

    遠心分離により、透明になった 色がつく原因のものは固相になった。

    可能性1: シリカコロイドによる着色

    可能性2: シリカコロイドに色の原因のイオンが吸着

    可能性2は、遠心分離で得た固相の色が白色だったことから可能性が薄い。

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  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 23

    海地獄 遠心分離後 の上澄み

    再分散後

    写真では見えにくいが、右はほぼ元の青白い色を呈している。

  • 酸化物の等電点

    SiO2 2~3

    TiO2 6~8

    Fe2O3 6~8

    ZrO2 7~9

    Al2O3 7~9

    MgO 9~11

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 24

    +

    -

    pH

    結晶面、構造等によって変化する

  • 青色の正体=シリカコロイド

    このシリカコロイドは小さいためにまるで溶液のように見えたわけ。

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  • そのシリカコロイドの 電子顕微鏡写真

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  • シリカ微粒子

    形は球形で、アモルファス(非晶質)であることがX線などの解析によってわかった。

    なお、FT-IRで分析したところ、シリカ組成であることがわかった。

    球形シリカ粒子は、高いアルカリ領域で加水分解により合成されるので、地下深部で高アルカリ、高温で生成したものと推測される。

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  • シリカ=化学分析

    20.0℃で pH 8.438

    ICP

    Si濃度: 2.706 mmol/L

    これを H2SiO3(分子量=78.09958)の標記に変えると

    211.3 mg/L

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 28

  • なぜ、青いのか?

    Rayleigh散乱の概念で説明可能

    粒径が小さくなると短い波長、つまり青色は散乱しやすい。

    数十nm程度以下のシリカによって青色を散乱→懸濁液は青くなる

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 29

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

    𝑘𝑠 =2𝜋5

    3𝑛

    𝑚2 − 1𝑚2 + 2

    2 𝑑6

    𝜆4

    n:粒子数, d:粒子径, m:反射係数, λ:波長

    レイリー散乱の散乱係数ks は

    𝛼 =𝜋𝑑𝜆

    サイズパラメータαは

    𝛼 ≪ 1 レイリー散乱 𝛼 ≈ 1 ミー散乱

    𝛼 ≫ 1 幾何光学近似

    30

  • UV分析結果

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 31

  • シリカコロイドの凝集・沈殿

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 32

    左側が、温泉水。右側は、温泉水に、KCl(塩化カリウム)を混ぜて、1 mol/l KCl溶液としたもの。2~3時間で完全に凝集体となって沈殿した。右側の底にこずんでいるのが、そのシリカコロイド凝集体。

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 33

    鳴子温泉 すがわら旅館

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 34

    すがわら旅館の湯も青色に!

  • 鳴子温泉「すがわら」のコロイド

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 35

  • すがわらコロイドは炭酸カルシウム

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 36

  • すがわらの湯が青色になったのは

    湯口の炭酸カルシウムがお湯に分散

    お湯に分散した炭酸カルシウムは、メタケイ酸による高いアルカリ性により、非常によく分散

    海地獄と同様、レイリー散乱で青色を呈色

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 37

  • 身の回りのコロイド

    牛乳

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 38

  • 牛乳

    2012/5/29 39

    人乳と牛乳の主要栄養価(100g≒97ml)

    栄養素名 人 乳 牛 乳

    工ネルギ― 65kcal 67kcal

    たルばく質 1.1g 3.3g

    脂質 3.5g 3.8g

    炭水化物(糖質) 7.2g 4.8g

    灰分(ミネラル等) 0.2g 0.7g

    力リウム 48mg 150mg

    力ルシウム 27mg 110mg

    リン 14mg 93mg

    マグネシウム 3mg 10mg

    ビタミン A(レチノ

    ール当量) 47μg 39μg

    ビタミン K 1μg 2μg

    ビタミン B1 0.O1mg 0.04mg

    ビタミン B2 0.03mg 0.15mg

    ビタミン B12 Tr 0.3μg

    パントテン酸 0.50mg 0.55mg

    五訂日本食品標準成分表より:100g 当たり 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 乳脂肪

    タンパク質

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 40

  • 牛乳はO/Wエマルション

    O/Wエマルション

    W/Oエマルション

    界面活性剤 界面活性剤

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 41

  • コーヒー牛乳に塩を入れる

    コーヒー牛乳だけ 1 mol/L KCl溶液

    乳脂肪が浮上している

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 42

  • 身の回りのコロイド

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 43

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 44

    膠の働きを確かめるため、 煤と膠を分離する実験をしました

    1つ目の容器には、水で溶いた墨のみを入れます。 2つ目の容器には、水で溶いた墨とタンパク質、つまり膠を分解する酵素を入れます。 3つ目の容器には、水で溶いた墨と、酵素と同じような働きをするキウイの搾り汁を入れます。

    1日ほど置いておきました。 1つめの墨を薄めただけのものは変化がありません。 一方、膠の働きが弱まった2つの容器では、煤だけが分離して底に沈みました。これを使って字を書くと、煤がだまになってしまい、黒い線になりません。

    もともと、墨と水は分離します。膠を入れることで、膠が煤の周りを覆い、煤が水と分離せず混ざり合うようになります。膠のおかげで、水と一緒に煤が紙に染み込むことで、墨独特の黒の世界が生まれるのです。

  • 身の回りのコロイド

    ビール

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 45

  • ビール

    移流集積によって下から上に運ばれ、二次元の結晶構造を形成するコロイド。下の方のコロイドは動いているためブレている。

    永山国昭(東京大学教養学部)

    ビールの泡

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 46

  • ビールの泡

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 47

  • ビールの泡

    なぜ合一しにくいのか?

    分散安定化への指針

    泡の表面にホップと麦芽由来のフムロンや塩基性アミノ酸が吸着し、分散剤的な働きをしている

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 48

  • 2.界面電気現象

    コロイドが奏でる、物理現象

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 49

  • チンダル現象

    分散系に光を通したときに、光が主にミー散乱によって散乱され、光の通路がその斜めや横からでも光って見える現象

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 50

  • 電気泳動

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 51

  • 電気浸透

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 52

  • 電気泳動

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 53

  • なぜ電気現象が起こるのか

    コロイド粒子は電荷を帯びている

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 54

  • ゼータ電位

    ゼータ電位は、それぞれの物質の固有の物理量である

    ゼータ電位は、水溶液のpHで変化する

    ゼータ電位は、分散・凝集のヒントになる

    ゼータ電位が低いと、通常凝集する

    ホモ凝集という

    55 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 56

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 57

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 58

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 59

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 60

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 61

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 62

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 63

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 64

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 65

  • 2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 66

  • 3.嬉野温泉豆腐の秘密

    嬉野温泉の温泉湯豆腐は、ただの湯豆腐ではありません。豆腐を鍋で煮るのは湯豆腐と同じですが、温泉湯豆腐の場合、鍋の中に入っているのはお湯ではなく温泉水。するとなぜかコトコト炊いているうちに、豆腐の表面が溶け出してお湯は豆乳のように白く濁ってきます。角のとれた豆腐は、食感も味わいも一段とまろやかに。白濁した温泉水は、コクがあり、一緒にすするとさらに深い味わいとなります。しかし、なぜこんなに不思議な湯豆腐ができるのでしょうか。

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 67

    ここここここここここここここここここ

  • 飲料、血液のpH

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

    68

    コーラ pH 2.2 カロリーオフコーラ pH 2.9 栄養ドリンク pH 2.9 缶チューハイ pH 2.9 梅酒 pH 2.9 黒酢 pH 3.1 乳酸菌飲料(カルピスなどのような飲料) pH 3.4 スポーツドリンク(ポカリのような飲料) pH 3.5 りんごジュース pH 3.6 ヴィタミンウォーター pH 3.7 赤ワイン pH 3.8

    100%オレンジジュース pH 4.0 アクアライト pH 4.2 ビール pH 4.3 日本酒 pH 4.9 ウイスキー pH 5.0 アクアライトORS pH 5.5 水 pH 5.7 お茶 pH 6.3 牛乳 pH 6.8 イオン交換水 pH 7.0 血液 pH 7.4

  • 嬉野温泉豆腐の秘密

    §嬉野温泉と豆腐の関係

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

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  • 豆腐

    ® 通常の大豆蛋白質の等電点は4.5~5.0程度 § pH 5以上で、 - § pH 4.5 以下で、 +

    ® 家庭の水のpHは § 5.0~7.0

    ® 等電点付近ではホモ凝集 ® pHを上げると分散

    2012/5/29

    70

    講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 豆腐

    ® 豆腐を作るというか、固めるときにつかう、にがりの主成分は、塩化マグネシウムで少し硫酸マグネシウムなどが入っている。

    ® マグネシウムやカルシウムは、塩水の主成分のナトリウムと違って、イオンとしては、2価の陽イオンとなって溶けている。

    ® 硫酸マグネシウムの硫酸イオンは2価の陰イオンだ。

    ® 一般に物質が凝集をおこすときに、あるトリガー(引き金)があって起こる。

    ® これを急速凝集といい、そのトリガーになるのが電解質イオン、すなわち塩なのだ。

    ® 塩化ナトリウムとか、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどが該当する。

    ® この急速凝集速度は、Schulze-Hardyの理論で説明できると言われている。

    2012/5/29

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    講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 豆腐

    ® これは、一定時間内に凝集沈殿を起こすのに必要な1価、2価、3価の最低対イオン濃度をC1, C2, C3とすると、同じ凝集を得るための濃度は1価よりも、2価、3価の方が圧倒的に有利で、その濃度比は、1/C1:1/C2:1/C3=100:1.6:0.3となることが実験的に得られているのだ。

    ® つまり、イオンの価数の6乗に反比例して凝集するというわけ。

    ® ナトリウムイオンよりもマグネシウムイオンの方が同じ濃度でも6乗倍、つまり、64倍凝集させる力があるということなのだ!

    ® 人工にがりの方が天然にがりよりも、硫酸マグネシウム濃度が大きい理由は、1価の塩化物イオンClよりも2価の硫酸イオンの方がナトリウムとマグネシウムイオンの関係と同じように、64倍凝集させる力が強いということに依っている。

    2012/5/29

    72

    講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 豆腐

    ® 豆腐は豆乳のタンパク質の一部を熱等で変質させた

    あと、急速凝集させたものであり、プリンやゼリー、

    ヨーグルトとともにコロイドのひとつとなる。

    ® その豆腐では、大豆の粉砕後、懸濁液を熱処理し、

    濾過して、豆乳を作るが、この段階で、タンパク質

    が変性して、タンパク質表面が活性になり、このと

    き、界面活性剤のタンパク質によって、泡が多くで

    る現象がある。ここに凝集剤として、にがりを加え

    るわけだ。

    2012/5/29

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    講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 嬉野温泉の成分

    2012/5/29

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    講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 嬉野温泉の成分

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    講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 嬉野温泉の成分

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    講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 嬉野温泉の成分

    ® 嬉野温泉は、ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉で、昔でいうと、重曹泉に近い。

    ® 弱アルカリ泉(pH7.5-8.5)ナトリウム含有量:試料1kg中400-500mg程度。

    ® また、カルシウムやマグネシウムの量が少ないため、豆腐をpHの作用で溶かす。

    ® カルシウムやマグネシウムは、豆腐を凝固させる方向に働くため、これらの含有量が少ない方がいい。

    ® また、これは一般に言われるような、タンパク質を分解しているわけではなく、「分散」という物理化学現象。

    2012/5/29

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    講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子

  • 来週は・・・・

    最先端ナノ粒子

    2012/5/29 講義「多元物質科学の世界」身近なコロイドと最先端ナノ粒子 78

  • 1mm

    Fe2O3

    2mm

    Fe2O3

    1mm

    Fe2O3 Fe2O3

    Ni metal CdS BaTiO3

    50 nm

    10 nm

    SrTiO3

    TiO2 TiO2 TiO2 TiO2 TiO2 TiO2 TiO2 TiO2 AlSO4(OH) Na0.5K0.5NbO3

    ITO (Indium Tin Oxide)

    Beautiful particles, with large qty ~ 100g/L.

    We provide …

    79

    身近なコロイドと最先端ナノ粒子�基礎知識物理化学 physical chemistry物理化学とは平衡論と速度論平衡論と速度論平衡論と速度論化学ポテンシャル化学ポテンシャル1モルの定義とは1モルの定義とはpHの定義とは活量とは1.生活の中のコロイドコロイドとは何かスライド番号 16身の回りのコロイド別府・地獄めぐり別府・海地獄青い熱湯 ~海地獄スライド番号 21青色の正体は何か?スライド番号 23酸化物の等電点青色の正体=シリカコロイドそのシリカコロイドの�    電子顕微鏡写真シリカ微粒子シリカ=化学分析なぜ、青いのか?スライド番号 30UV分析結果シリカコロイドの凝集・沈殿鳴子温泉 すがわら旅館すがわら旅館の湯も青色に!鳴子温泉「すがわら」のコロイドすがわらコロイドは炭酸カルシウムすがわらの湯が青色になったのは身の回りのコロイド牛乳スライド番号 40牛乳はO/Wエマルションコーヒー牛乳に塩を入れる身の回りのコロイドスライド番号 44身の回りのコロイドビールビールの泡ビールの泡2.界面電気現象チンダル現象電気泳動電気浸透電気泳動なぜ電気現象が起こるのかゼータ電位スライド番号 56スライド番号 57スライド番号 58スライド番号 59スライド番号 60スライド番号 61スライド番号 62スライド番号 63スライド番号 64スライド番号 65スライド番号 663.嬉野温泉豆腐の秘密飲料、血液のpH嬉野温泉豆腐の秘密豆腐豆腐豆腐豆腐嬉野温泉の成分嬉野温泉の成分嬉野温泉の成分嬉野温泉の成分来週は・・・・スライド番号 79