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運転寿命延伸を後押しする
高齢者運転特性データベースDAHLIA:Data Repository for Human Life-Driving Anatomy
名古屋大学COI
モビリティ研究人間・加齢特性研究
人間・加齢特性グループ
2020.09.
コンセプト
2
安全運転を支援するアプリケーションの
迅速な社会実装を後押し
運転支援(主に民間主導) 公共政策(国・自治体)
装置 サービス
例)ペダル踏み間違い急発進抑制装置
例)免許制度、高齢者講習、職業ドライバの運転能力診断
高齢ドライバ対策
例)運転能力評価とそれに基づいたアドバイス
高齢ドライバの特性に合わせ、効果的で受容性の高い装置設計が必要
エビデンスに基づく運転評価と、個人に合わせた受容性の高い手法が必要
エビデンスに基づく政策立案が必要運転技能を評価するための具体的な判断基準や、効果的かつ効率的な認知機能検査など、検討を要する課題が山積み[1]
[1]警察庁:高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究、2019年12月
■アプリケーションの例
共通の
課題
• 現状、人間特性と運転行動とを関連付けて分析可能なデータセットがなく、
エビデンスを得ることができない• 自らで行なおうにも、そのスキルと時間が不足している
高齢者運転特性データベース(DAHLIA)によって解決
2020.09.
背景:高齢ドライバによる事故
3
機能低下の実態
視機能低下
・動体視力低下・視野狭窄・明暗順応・焦点距離
聴力低下
・高周波音聴力低下
判断能力の低下
・反応時間低下・正確さの低下・同時処理力の低下・敢行判断の遅延、ミス
運動機能低下
・筋力低下・衝撃耐性の低下・疲労耐性の低下
【特徴】
複数同時バラつき大(個人差大)
運転能力低下
高齢者特有の事故出合い頭、右折事故など(見落とし、一時不停止)
高齢者の身心機能低下は複数同時に起こり、程度は個人差大
⇒ 運転能力の低下につながり、事故原因となっている
個人の身心機能状態や運転状況に合わせた支援が必要2020.09.
2020.09.
背景:三方よし、を目指す取り組み
4
高齢ドライバ
家族
社会
運転中止現状維持
事故リスクの増加
運転能力の低下
加齢による
心身機能の低下
加害者になる恐れ
本人・同乗者の死傷
高齢ドライバによる事故への不安
交通事故が多い危ない町
事故に巻き込まれる恐れ
高齢ドライバによる事故への不安
交通事故が少ない安心な町
事故に巻き込まれるリスク減高齢ドライバによる事故の減少
運転寿命延伸
安全運転を支援する
装置・サービス、政策
自由な移動の実現による
活動量や心身機能、
Well-beingの維持
医療費や介護費用などの
社会保障費の抑制
心身機能の維持で家族の負担が軽減
第一当事者になる不安の低減
事故を起こしにくくなる
医療費や介護費用などの
社会保障費の増加
認知症・要介護リスク増
活動量減少心身機能低下
生活範囲の狭小化
医療費、介護費用など
生活支援、要介護
家族にかかる負担の増加
背景:ドライバの心身機能と運転能力の関係
5
安全運転を支援するアプリケーションの開発にはドライバの心身機能と運転能力の関係解明が必須だが
それを可能とするデータセットがなかった
視機能低下
聴力低下判断能力の低下
運動機能低下
高齢者運転特性データベース(DAHLIA)なら分析可能
人間特性のデータセット、運転に関するデータセットはそれぞれあるが、そのすべてを網羅的に収集し、両者を関連付けて分析できるデータセットがない
人のデータ 運転のデータ
2020.09.
2020.09.
比較:運転行動に関するデータベース
6
データベース 国(機関)
人間特性運転適性
運転データ
経年
対象
規模認知機能
視覚機能
運動機能
DS運転
DR通常時
DRCNCDR事故
事故職業
ドライバ年齢
DAHLIA名古屋大学COI ○○○○○○○△△○ 50-90以上 300人
高齢運転者に関する調査研究(III)(高齢者講習データ)
自動車安全運転センター
○ ○ ○ 68-90以上 191人
運転行動データベース(NEDOプロジェクト)(H13-15)
一般社団法人人間生活研究センター
○ ○ ○ 20-71 97人
ヒヤリハットデータベース
東京農工大学 ○ ○ ○ 15万件
健康診断データベース弘前大学COI岩木プロジェクト
△ ○ ○ △ 全年齢約1000人
/年警察庁高齢者講習データ(非公開・事故以外の記録は紙媒体)
警察庁 ○ ○ ○ ○ 70以上250万人/
年
交通事故データベース交通事故総合分析センター(ITARDA)
○ △ 全年齢 70万件/年
運転適性診断データ自動車事故対策機構(NASVA)
○ ○ ○ ○ 全年齢 50万人/年
The Salisbury eye evolution and driving study (SEEDS)
米国ジョンズ・ホプキンス大Wilmer Eye Institute
○ ○ △ ○ 67-87 1155人
Maryland Pilot Older Drivers study
米国NHTSA ○ ○ ○ 55-96 2508人
Fators Associaed wutgDriving Performance of Older Drivers
米国Univerysityof Nebraska
○ ○ ○ ○ 65-88 105人
Candrive IIカナダCandriveII Research Team
○ ○ ○ ○ 70-94 928人
高齢者運転特性データベース:収載データ
7
中年~高齢ドライバの運転行動と人間特性のデータセット
運転に関連すると言われている幅広い項目を継続的に収集
収集したデータの分析結果を踏まえ、項目は随時見直し
経過が異なる経時変化や、他の年代との比較により、高齢ドライバならではの特徴が
分析可能
人間特性認知
e.g., MMSE, TMT, UFOV,
working memory
視覚e.g., Kinetic/night vision,
Contrast, Field of view
身体能力e.g., Walk speed,
head/neck flexibility
脳機能e.g., fMRI
運転特性e.g., 単純/複数課題反応、運転スタイルチェックシート(DSQ)、負担感受性チェックシート(WSQ)、
運転時認知障害早期発見チェックリスト30、OD式安全性テスト(簡易版)、運転の変化、日頃の運転、中研式)
N=300/年
N=300/年
運転データドライブレコーダ普及版自家用車による日々の運転データ
ドライブレコーダ詳細版一部ドライバ生理データ
ドライビングシミュレータ
e.g. 特定シーン、支援手法評価
N=100/年 N=50/年
DAHLIAData Repository for Human Life-Driving Anatomy
5年×約400名×約2000項目
2020.09.
分析例:一時交差点での運転特性と心身機能
8
人間特性 運転データ 運転特性
認知視覚
身体特性
一時停止交差点急ブレーキ頻度(簡易ドライブレコーダ)
一時停止交差点左右確認(指導員同乗、試験車)
警察庁方式運転適性検査
他、各種アンケート
“運転”は総合能力
様々な関係を複合的に分析
2020.09.
分析例:一時交差点での運転行動と認知・視覚機能
9
MMSE(Mini-Mental State
Examination)
TMT-B(Trail-Making Test Part
B)
有効視野(UFOV:
Useful field of view)両眼視力
指導員の教示頻度 0.132 0.175 0.451 -0.347
左右確認時間(sec)
0.443 -0.026 0.163 -0.202
左右確認回数 0.375 -0.384 -0.082 0.021
認知機能視覚機能
認知機能 視覚機能
認知機能が低い
左右確認が少ない
周辺監視能力が低い
指導員の教示頻度が多い
運転行動
2020.09.
分析例:一時停止交差点でのブレーキ頻度と左右確認時間
10
0
20
40
60
80
100
120
0 1 2 3 4 5 6
1
5
7
19
20
4
9
14
16
61510
128
18
2
211713
22113
一時停止交差点での急ブレーキ頻度
(
回数/
1
万キロ)
左右確認時間(秒)
短い 長い
多い
少ない
D
CB
A
2020.09.
分析例:認知特性検査との関係
11
グループ A B C D安全傾向
判定基準ID 3 11 1 5 9 16 4 14
年齢 77 70 79 75 70 65 76 67
一時停止交差点での
運転行動
左右確認時間(sec) 3.6 4.8 5.1 4.8 1.5 1.6 2.0 1.8 4≦ 2≧
左右確認回数 3.6 4.9 3.8 4.3 2.1 2.6 3.2 3.2 4< 3>
緊急制動頻度 (回数10000km) 0 0 15 4.8 3.1 4.2 31 104 20< 10>
認知機能検査
Mini-Mental State Examination 28 29 30 28 27 27 28 28 29< 28>
Trail Making Test part B (sec) 92 72 155 180 98 124 104 139 140< 100>
DrivingHealth
Inventory
Mouse Practice (sec) 15.4 12.2 20.1 18.9 20.3 20.2 20.1 32.5 25< 15>
UFOV (response, ms) 100 337 257 363 117 340 100 100 200< 100=
UFOV (accuracy) 1 0.96 0.52 0.16 1 0.44 0.84 0.56 0.8< 0.6>
VSB (TMT, sec) 94.9 78.6 164 175 116 76.9 152 214 150< 100>
Walk (Time of 6m, sec) 5.44 5.9 5.13 6.48 6.63 4.82 6.38 9.52 6< 5>
Accuracy memory 1 0.67 0.67 1 0.33 1 1 0.67 1.0= 0.8>
産総研認知加齢テスト
Working memory 7 8 11 6 3 12 6 3 4< 4>
Visual attention 23 32 31 36 35 35 35 35 31< 32>
Planning 3 4 4 3 4 4 4 4 3< 4>
Task switching 43 28 26 27 39 44 10 27 38< 30>
認知機能が
低い
認知機能が
高い左右確認時間
多い
多い
少ない
多い
短い
短い
長い
長い
急ブレーキ頻度 C AB
DNormal
2020.09.
2020.09.
分析例:視覚、運転適性検査との関係
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グループ A B C D安全傾向
判定基準ID 3 11 1 5 9 16 4 14
年齢 77 70 79 75 70 65 76 67
一時停止交差点での運転行動
左右確認時間(sec) 3.6 4.8 5.1 4.8 1.5 1.6 2.0 1.8 4≦ 2≧
左右確認回数 3.6 4.9 3.8 4.3 2.1 2.6 3.2 3.2 4< 3>
緊急制動頻度 (回数10000km) 0 0 15 4.8 3.1 4.2 31 104 20< 10>
視力検査
左眼静止視力 0.6 0.8 0.9 0.6 0.6 0.7 0.6 0.5 0.6< 0.7>
右眼静止視力 0.4 0.5 0.7 0.7 0.9 0.6 0.8 0.3 0.6< 0.7>
両眼静止視力 0.6 0.9 0.9 0.6 1.3 0.7 0.9 0.6 0.6< 0.7>
動体視力 0.1 0.2 0.2 0.2 0.1 0.1 0.2 0.2 0.1< 0.2>
夜間視力 (sec) 110 52 56 79 301 301 32 45 100< 100>
右側水平視野 80 70 87 42 70 82 65 50 69< 70>
左側水平視野 83 80 84 67 70 80 67 50 69< 70>
両側水平視野 163 150 171 109 140 162 132 100 160< 140>
右眼コントラスト感度 1.2 1.2 1.2 1.5 1.3 1 1.6 1 1.2< 1.2>
左眼コントラスト感度 1.2 1.4 1.2 1.3 1.3 1.3 1.3 1.3 1.2< 1.2>
CRT 運転適性検査
緊急反応時間 (ms) 533 335 357 440 528 555 542 466 500< 400>
連続緊急反応時間 (ms) 279 268 445 423 361 250 366 404 400< 300>
信号確認反応時間 (ms) 621 531 506 764 633 794 747 808 700< 700>
アクセルペダル反応時間 (ms) 546 533 578 749 623 468 662 518 600< 600>
側方警戒中心誤反応 13 9 28 32 16 8 13 26 20< 10>
側方警戒反応時間 (ms) 620 717 705 642 653 682 701 668 650< 650>
アクセルブレーキ反応時間 (ms) 872 883 1066 1191 1103 814 988 1300 1100< 900>
運転適性検査総合評価 3 4 2 2 4 2 3 2 3< 3>
Normal
反応が
速く正確
反応が遅く不正確
左右確認時間
多い
多い
少ない
多い
短い
短い
長い
長い
急ブレーキ頻度 C AB
D
視覚機能が
低下
高齢者データベース:全体像
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長年に渡り築かれた信頼関係
十分な習熟
5年にわたって蓄積された約400名の同一高齢者の約2000項目に及ぶ認知機能・身体・運転の連続データ
密な連携
高齢者運転特性データベース
5年×約400名×約2000項目
高いスキルを持った計測スタッフ
多彩で最新鋭の計測・実験施設
専門的知識を持った研究スタッフ
DBに各種特性データがあり、いつでも実験に駆けつけてくれる協力的な高齢運転者 約400名
2020.09.
2020.09.
高齢者運転特性データベース:活用方法
14
DAHLIA参加者
研究開発に必要なデータ
単独の実験では得られない厚みのある結果
あわせて分析
DAHLIA-DB顧客依頼実験
データの
継続提供
実験への
参
加
計測データ
同一被検者×数年分
すでに人間特性などがわかっている高齢者を被検者に、新たな実験を行うことで、低コスト・短時間で、開発に必要なデータを得ることが可能
高齢者運転特性データベース:活用するメリット
15
製品化
フィールド
テスト
設計・試作
企画評価
評
価
企
画
マーケティングエビデンスデータ収集ニーズ分析
企画検討各種調査・分析結果をもとにGo/NoGo判断
製品の詳細や仕様、意匠デザインハード、ソフトプロトタイプ製作
コンセプトや仕様との一致度効果検証
実際の使用場面での効果検証
横串で分析可能な多項目データ
(1人×多項目×経年)
DBを活用
基礎データが揃っているため、早期に取り掛かれる
DBを活用
検討に必要な基礎データが揃っているため、即座に判断可能
DBを活用
一度の実験で数年分のデータが必要な分析が可能手戻りも少ない
DBを活用
高齢者運転特性データベースを活用することで
企画立案から完成までにかかる時間を短縮
2020.09.
2020.09.
活用事例:運転支援(装置)
16
後付け可能な「ペダル踏み間違い加速抑制装置」2018年12月5日発売(デンソー、トヨタ自動車)
エビデンスをもとに安全装置企画の、Go/No Goを判断
製品のプロトタイプを作製
DB協力者から被験者をリクルートし、効果検証のための実験を実施高齢者のタイプ別の効果の違いも検証
製品化高齢ドライバ向け安全装置の企画の妥当性を裏付けるデータをDAHLIAから取得
DAHLIA協力者から被験者をリクルートし、不測の事態をドライビングシミュレータ―で模擬し、支援装置の効果を検証
ブレーキ反応時間
ブレーキ踏込速さ
支援装置がある方が、ない方より、ブレーキを踏むまでが速く(反応時間)、ブレーキを踏む速度も速い
支援装置の効果 人間特性による効果の違い
3メートル往復歩行時間が遅い人は、支援装置があった場合に踏み込み速度が速い(被験者間比較)
人間特性データは、DAHLIAに蓄積された被検者本人のデータを利用
効果検証実験
17
【問い合わせ先】
高齢者運転特性データベース(DAHLIA)や研究成果について
名古屋大学未来社会創造機構モビリティ社会研究所
青木宏文研究室
データの利用について
一般社団法人モビリティと人のデータラボ
*名古屋大学COIで蓄積したドライバに関する様々なデータを、安定的に維持・管理・拡充するとともに、収集されたデータを広く有効活用するために設立された法人です
http://mohitolab.org/
2020.09.
付録 論文情報
18
• 米川隆, 青木宏文, 山岸未沙子, 田中貴紘, 吉原佑器, 藤掛和広, 稲上誠,
金森等, 青木邦友, 平野昭夫, 武田夏佳.ドライブレコーダで計測した一時停止交差点での緊急制動頻度・左右確認行動と高齢ドライバの認知身体特性・運転意識の関係, 自動車技術会論文集, 2020, Vol.51, No.4, pp. 701-
706.https://doi.org/10.11351/jsaeronbun.51.701
• 山岸未沙子,稲上誠,田中貴紘,米川隆,河野直子,佐藤稔久,赤松幹之,青木宏文.高齢ドライバの運転評価に向けた運転特性データベース,人間工学,2020,Vol.56,No.1,pp.1-10.
• 米川隆 , 田中貴紘 , 青木宏文 , 山岸未沙子 , 吉原佑器 , 稲上誠 , 藤掛和広 , 木下史也 , 金森等 , 二宮芳樹, 鈴木達也,ドライブレコーダを用いた安全運転行動評価法の提案とそれを用いた高齢ドライバ特性分析,自動車技術会論文集,2018,Vol.49,No.2, pp.384-389.
• 青木宏文,高齢ドライバの個人特性を踏まえた運転寿命延伸をめざした取り組み,BIO Clinica,2020,Vol.35,No.4.
• 青木宏文,高齢ドライバの人間特性と運転特性:傾向と対策に向けて,Medical Science Digest,2019,Vol. 45,No. 3,51-54 (2019)
2020.09.