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課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野生動物 の侵入防止策及び衛生害虫まん延防止策の確立 研究期間:平成26年度~平成28年度(3年間) 研究総括者名:浅井 鉄夫 試験研究機関名:家畜衛生対策研究グループ 岐阜大学、東京農工大学、日本獣医生命科学大学、 一般財団法人 生物科学安全研究所 1 家畜衛生対策研究グループ

課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

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Page 1: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

課題番号:2604畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野生動物の侵入防止策及び衛生害虫まん延防止策の確立研究期間:平成26年度~平成28年度(3年間)

研究総括者名:浅井 鉄夫試験研究機関名:家畜衛生対策研究グループ

岐阜大学、東京農工大学、日本獣医生命科学大学、一般財団法人 生物科学安全研究所

1家畜衛生対策研究グループ

Page 2: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

研究内容研究課題(中項目)

1)野生動物及び衛生害虫の食中毒菌及び家畜疾病病原体の汚染源としての危険度の評価

2)農場周囲に生息する野生動物の防除法の確立

3)農場に生息する衛生害虫の防除法の確立と経済効果

4)野生動物の侵入防止及び衛生害虫の駆除に関する経済分析

2家畜衛生対策研究グループ

Page 3: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

研究体制

• 岐阜大学 微生物研究室

• 東京農工大学 農学部附属国際家畜感染症防疫研究教育センター

• 日本獣医生命科学大学獣医保健看護学基礎部門

• 岐阜大学 連合獣医学研究室

• 岐阜県家畜保健衛生所

微生物検査チーム

採材・細菌検査

ウイルス・遺伝子検査

• 岐阜大学 野生動物医学研究室

• 岐阜大学 野生動物管理学研究センター

野生動物対策チーム

• 一般財団法人 生物科学安全研究所

• 岐阜大学 連合獣医学研究室

衛生害虫対策チーム

東京農工大学 農学部附属国際家畜感染症防疫研究教育センター

経済評価

採材場所:畜産農家、位山演習林(下呂)、山林(岐阜市・私有地)

家畜衛生対策研究グループ 3

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畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野生動物侵入防止策及び衛生害虫まん延防止策の確立

肉牛、豚、ブロイラー畜舎周囲

畜舎内

岐阜大学:・家禽病原体検

査東京農工大学:・網羅的解析

日本獣医生命科学大学:・牛病原体検査・豚病原体検査

岐阜大学・岐阜県家畜保健衛生所:• 農場材料(野生動物及び衛生害虫)の採材• 防除対策の実施状況及び効果を聞き取り調査• 細菌(食中毒菌等)検査:岐阜大学と共同• 検査材料の送付

農場材料

岐阜大学:• 山中の野生動物の捕獲• 野生動物の採材と細菌(食中毒菌等)検査• 検査材料の送付

山中材料

農場

畜舎

生物科学安全研究所・衛生害虫の捕獲・細菌検査・駆除対策実証: ・疾病浸潤調査

協力機関:岐阜県家畜保健衛生所

岐阜大学東京農工大学日本獣医生命科学大学生物科学安全研究所

農場エリア

イタチ、テン、タヌキ、キツネ

岐阜大学・行動様式の調査:定点カメラ、捕獲、発信機・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証

情報収集調査・研究

検証防止策の実施・有効

性経済評価

野生動物・衛生害虫の重要度防止策の提案

情報の発信

4家畜衛生対策研究グループ

Page 5: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

平成27年度の計画(案)

肉牛、豚、ブロイラー畜舎周囲

畜舎内

岐阜大学:・家禽病原体検査

東京農工大学:・網羅的解析

日本獣医生命科学大学:・牛病原体検査・豚病原体検査

岐阜大学・岐阜県家畜保健衛生所:• 農場材料(野生動物及び衛生害虫)の採材• 防除対策の実施状況及び効果を聞き取り調査• 細菌(食中毒菌等)検査:岐阜大学と共同• 検査材料の送付

農場材料

岐阜大学:• 山中の野生動物の捕獲• 野生動物の採材と細菌(食中毒菌等)検査• 検査材料の送付

山中材料

農場

畜舎

生物科学安全研究所・衛生害虫の捕獲・細菌検査・駆除対策実証: ・疾病浸潤調査

協力機関:岐阜県家畜保健衛生所

岐阜大学東京農工大学日本獣医生命科学大学生物科学安全研究所

農場エリア

イタチ、テン、タヌキ、キツネ

岐阜大学・行動様式の調査:定点カメラ、捕獲、発信機・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証

2県3地点で捕獲した野生小型げっ歯類49頭からサルモネラ、カンピロバクター及びSTECは分離されなかっ

た。

農場を選定して状況を詳細に調査

肉用牛 17農場豚 7農場肉用鶏 7農場

肉用牛 3農場豚 3農場肉用鶏 2農場

26年度

27年度

5家畜衛生対策研究グループ

Page 6: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

平成28年度の計画(案)

肉牛、豚、ブロイラー畜舎周囲

畜舎内

岐阜大学:・家禽病原体検

査東京農工大学:・網羅的解析

日本獣医生命科学大学:・牛病原体検査・豚病原体検査

岐阜大学・岐阜県家畜保健衛生所:• 農場材料(野生動物及び衛生害虫)の採材• 防除対策の実施状況及び効果を聞き取り調査• 細菌(食中毒菌等)検査:岐阜大学と共同• 検査材料の送付

農場材料

岐阜大学:• 山中の野生動物の捕獲• 野生動物の採材と細菌(食中毒菌等)検査• 検査材料の送付

山中材料

協力機関:岐阜県家畜保健衛生所

岐阜大学東京農工大学日本獣医生命科学大学生物科学安全研究所

農場エリア

イタチ、テン、タヌキ、キツネ

岐阜大学・行動様式の調査:定点カメラ、捕獲、発信機・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証サポート

データの補強

• 学内外調査の総括• 家畜保健衛生所のサポート

肉用牛 3農場豚 2農場(-1)肉用鶏 1農場(-1)

28年度

農場

畜舎

生物科学安全研究所・衛生害虫の捕獲・細菌検査・駆除対策実証: ・疾病浸潤調査

ハエ防除の検証を実施

6家畜衛生対策研究グループ

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研究概要1)野生動物及び衛生害虫の食中毒菌及び家畜疾病病原体の汚染源としての危険度の評価

1. 野生動物及び衛生害虫が汚染源になりうるか⇒野生動物及び衛生害虫が

食中毒菌や家畜疾病病原体を保有する。

2. 野生動物及び衛生害虫が農場内(畜舎内、畜舎間)で病原体のまん延・

拡散に関与するか?⇒飼育動物と関連する病原体を保有する。

3. 野生動物及び衛生害虫が病原体を農場に持ち込む危険性はあるか?⇒飼

育動物と関連しない病原体を保有する。

7

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BCoV BVDV PPV Salmonella Camp STECTyphimurium Infantis Nagoya衛生害虫 ◎ネズミ糞 〇 ◎野生動物糞野鳥糞 ◎ 〇 〇 〇環境スワブ ○

(発病牛糞便) 〇 〇

PCV2 PPV BVDV Salmonella Camp STECO4i- Infantis Nagoya衛生害虫 ◎ ◎ ◎ 〇 ◎ネズミ糞 〇 ◎ 〇 ◎ 〇 〇野生動物糞 〇 ◎ 〇 〇野鳥糞 〇 ◎ 〇 〇環境スワブ 〇 〇 〇 〇

IBDV IBV ヘルペスウイルス

クラミジア

SalmonellaCamp STECInfantis Manhattan

衛生害虫 ◎ ○ネズミ糞 ○野生動物糞野鳥糞 ○環境スワブ ○ ○ ○

〇:遺伝子又は菌検出、◎:遺伝子又は菌検出かつ環境スワブと遺伝子型が一致、Camp:カンピロバクター属菌

調査結果のまとめ

8

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研究概要1)野生動物及び衛生害虫の食中毒菌及び家畜疾病病原体の汚染源としての危険度の評価1. 野生動物及び衛生害虫が汚染源になりうるか⇒野生動物及び衛生害虫が

食中毒菌や家畜疾病病原体を保有する。

2. 野生動物及び衛生害虫が農場内(畜舎内、畜舎間)で病原体のまん延・

拡散に関与するか?⇒飼育動物と関連する病原体を保有する。

3. 野生動物及び衛生害虫が病原体を農場に持ち込む危険性はあるか?⇒飼

育動物と関連しない病原体を保有する。

以上から、農場内の食中毒菌や家畜疾病病原体分布や野生動物・衛生害虫

出現状況を把握して、動物種や病原体の特性に基づく衛生対策が必要であ

る。 9

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食中毒菌が分離された農場における畜舎内外サンプルからの分離状況(平成28年度)

病原体 農場番号

畜舎内 畜舎外環境スワブ 害虫・動物 環境スワブ 害虫・動物

C jejuni/coli B-L 1/29 0/9 0/1 0/2P-D 8/23 2/24 NT 0/5計 9/52 2/33 0/1 0/7

STEC B-E 0/2 1/6 1/2 0/5B-L 1/29 2/9 0/1 0/2P-G 0/4 0/2 NT 1/2計 1/35 3/17 1/3 1/9

Salmonella B-L 0/29 1/9 0/1 0/2P-D 4/23 1/24 NT 1/5C-B 1/1 0/2 0/1 1/4計 5/53 2/35 0/2 2/11

10

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サルモネラ症発生肉牛農場におけるサルモネラ分離状況(平成27年度)

農場 採材月

検査材料 採取場所 検体

数 STEC サルモネラ カンピロバクター

B-L 8月10月

ハエ畜舎内 1 - - -畜舎外 1 - - -

アブ畜舎内 1 - - -畜舎外 1 - - -

野鳥糞便

畜舎内 2 - Typhimurium (2検体)Infantis(1検体)

C. jejuni (1検体)

畜舎外 2 - - -

キツネ糞便

畜舎内 1 - - -畜舎外 1 - - -

★平成26年11月、平成27年5月にサルモネラ症が発生した農場発症牛由来株と同一血清型が野鳥から分離された。

11

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牛サルモネラ症発生農場で分離されたS. Typhimurium株の解析牛B-L農場:対策前 H26 牛サルモネラ症発生(S.Typhimurium)

H27 牛サルモネラ症再発生(S.Typhimurium)

H27 RS事業S.Typhimurium、S.Infantis、C.jejuni畜舎内 野鳥糞便より分離

PFGE

H27牛

H27野鳥

H26牛

MLVA法 反復配列多型解析法(multiple- locus variable-number tandem-repeat analysis)12

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野生動物の畜舎侵入

野鳥、キツネの侵入を確認

B-L農場(牛)

自動撮影カメラ設置

13

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農場で確認された野生動物・野鳥の糞便B-L農場(牛)

畜舎内通路床 野鳥糞便※サルモネラカンピロバクター分離

バンクリーナー出口野鳥糞便

畜舎外 キツネ糞便14

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野生動物・野鳥対策 B-L農場(牛)

畜舎入口に野鳥・小動物侵入防止用ネットの設置

ネットが持ち上がらないような工夫15

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牛サルモネラ症発生農場での食中毒菌の分離状況• B-L農場:ハエ、野鳥対策対策前 H26 牛サルモネラ症発生 (S.Typhimurium)

H27 牛サルモネラ症再発生(S.Typhimurium)S.Typhimurium、S.Infantis、C.jejuni 畜舎内 野鳥糞便

H27.11~ 野鳥対策実施(防鳥ネット、カラス除けテグス)

H28.6 S.Nagoya 畜舎内 1検体(牛舎柵のふき取り:野鳥糞便付着)C.jejuni 畜舎内 1検体(牛舎通路ふき取り)STEC 畜舎内 3検体

(ウォーターカップふき取り、アブ、ネズミ腸内容)野鳥対策継続、ハエ対策追加

対策1ヶ月後 分離されず対策2ヶ月後 STEC 畜舎内 2検体(飼槽、ウォーターカップふき取り)

野鳥対策未実施の畜舎内で野鳥糞便汚染部位のふき取りから別の血

清型のサルモネラが分離

16

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豚農場で実施した衛生害虫や野生動物の対策による影響

P‐D農場 採材物*1PPV PCR

陽性 陰性対策前 スワブ 6 17 23

昆虫 4 20 24

対策後1か月

スワブ 5 19 24

昆虫 1 1 2

対策後2か月

スワブ 12 12 24

昆虫 3 6 9

31 87 118

P‐D農場 採材物PCV2 PCR

陽性 陰性

対策前スワブ 6 21 27

昆虫 4 20 24

対策後1か月スワブ 1 27 28

昆虫 0 5 5

対策後2か月スワブ 1 27 28

昆虫 0 9 9

計 12 129 141

0

5

10

15

対策前 対策1ヶ月後 対策2ヶ月後

P‐Dハエ・アブ捕獲量

(g)

17

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検出されたPCV2の分子系統樹解析

P‐D農場において、隔年検出(PCV2‐2E)と2種類の検出(PCV2‐2B)。後者がDominant?

2E_AB072303_Jpn

PCV2_H

28_RS158

(床牽引)

PCV2_H

26_RS58

(ハエ)

2E_AY699793_USA

2E_AY325495_SAf2E_AY181948_C

ha2D

_AF109399_Can

1B_AY484407_Holl

2D_AY322004_Fra

2C_AY256459_H

un2C

_AF201309_Spa1C

_AY713470_Ger

2A_AF117753_Can

2A_AB072302_Jpn1A_AY484416_H

ol1A_AY322001_Fra

1A_DQ

141322_Cha

1A_AY424404Aus

PCV2_H

26_RS50

(ハエ)

PCV2_H

26_RS52(ネズミ糞)

PCV2_H

26_RS26

(ネズミ糞)

PCV2_H

26_RS76

(ハエ)

PCV2_H

26_RS78

(アブ)

PCV2_H

27_RS2(ハエ)

2A_AF109398_Can

1C_AY943819_C

haPC

V2_H26_R

S15(ハエ)

PCV2_H

26_RS16

(ハエ)

1C_AY484410_H

oll

PCV2_H

26_RS48

(ハエ)

2B_AY180397_Twn

2B_146993_Twn

PCV2_H

28_RS264

(窓拭取)

2B_JPN

PCV2_H

28_RS1(床スワブ)

PCV2_H

28_RS3(床スワブ)

PCV2_H

28_RS4(床スワブ)

PCV2_H

28_RS20

(床スワブ)

PCV2_H

28_RS102

(ハエ)

PCV2_H

28_RS104

(ハエ)

PCV2_H

28_RS101

(ハエ)

PCV2_H

28_RS115

(ハエ)

6929

62

79

92

67

55

29

99

58

48

56

50

97

94

77

88

47

46

42

40

56

73

43

97

68

59

72

64

97

89

0.005

2B

F

1C 1A

E E GD DB

2E

農場

亜型

赤:H28年度青:H27年度白:H26年度

18

Page 19: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

研究概要1)野生動物及び衛生害虫の食中毒菌及び家畜疾病病原体の汚染源としての危険度の評価1. 野生動物及び衛生害虫が汚染源になりうるか⇒野生動物及び衛生害虫が

食中毒菌や家畜疾病病原体を保有する。

2. 野生動物及び衛生害虫が農場内(畜舎内、畜舎間)で病原体のまん延・

拡散に関与するか?⇒飼育動物と関連する病原体を保有する。

3. 野生動物及び衛生害虫が病原体を農場に持ち込む危険性はあるか?⇒飼

育動物と関連しない病原体を保有する

以上から、農場内の食中毒菌や家畜疾病病原体分布や野生動物・衛生害虫出

現状況を把握して、動物種や病原体の特性に基づく衛生対策が必要である。19

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研究概要2)農場周囲に生息する野生動物の防除法の確立1. 野生動物の侵入防止方法は野生動物の種類によって異なるため、行動

様式に基づいて策定した。

2. また、「エサこぼし」を野生動物の出現要因として特定されたことか

ら、農場に出没する野生動物は、環境整備を含め総合的に防除するこ

とが重要となる。

3. 具体的な防除方法につては、別添1「鶏舎、畜舎における野生動物の防

除」及び「脱皮阻害剤(IGR剤)の投与方法」にまとめた。

20

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野生哺乳類の接近を防ぐ管理点の抽出

【トレイルカメラ調査】出現する動物種侵入経路出現頻度

【捕獲調査】食中毒菌の検出食性分析

【侵入防止実験】餌資源の除去物理的防除

Ⅰ.どのような侵入ルートで?Ⅱ.家畜・飼料・ネズミ等の何を誘因として?

Ⅲ.家畜へ病原体を届けうる可能性のある経路は?

↓野生哺乳類を介した食中毒菌が畜舎内へ到達するまでのコントロールポイントの抽出

???Ⅰ.侵入ルートⅡ.誘因Ⅲ.感染ルート

敷料 飼料

疑問?

21

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トレイルカメラ調査で観察された動物

豚舎:餌タンク下

学内農場

牛舎2階22

Page 23: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

対策前の畜舎内侵入野生動物とその対策例

カラス除けワイヤー(テグス)(カラスは羽がテグスに当たり嫌って入ってこ

ないが、スズメの侵入は防げない)

野生鳥獣対策ネット(カーテン式で作業性良好、下側にチェーンが付いているので、キツネが入ってこられない)

市販カラス用ワイヤー23

Page 24: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

Ⅰ.対象農場における侵入ルートを特定Ⅱ.キツネの誘因は糞を搬出するコンベヤー周辺のネズミと推測

ネズミに関しては対策を終えており、フェンスの穴も対策中とのこと侵入ルートを監視しながら出現の変化を調査する予定(調整中) 24

Page 25: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

採卵鶏農場におけるカメラ別ネズミ出現数

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100 カメラ1 カメラ2 カメラ3

ネズミ出現数

(匹)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100 カメラ6 カメラ5 カメラ4

カメラ3カメラ2

カメラ1 カメラ6

カメラ4 カメラ5

対策未実施鶏舎 対策実施鶏舎(各週前後3日間の平均値)

糞を搬出するコンベヤー

25

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野生動物の施策を打たなくても変化が続く(肉養鶏農場のイノシシ)

12:00 AM

2:00 AM

4:00 AM

6:00 AM

8:00 AM

10:00 AM

12:00 PM

2:00 PM

4:00 PM

6:00 PM

8:00 PM

10:00 PM

12:00 AM

2015/7/20 2015/7/30 2015/8/9 2015/8/19 2015/8/29 2015/9/8 2015/9/18 2015/9/28 2015/10/8

2号団地 3号団地 1号団地

恐らくは季節的な変化 → 背景の環境変化は把握が難しい(餌資源が影響した可能性)

26

Page 27: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

各地点での出没

0

200

400

600

800

1000

1200

① ② ③ ④ ⑤ ⑦ ⑧ ⑩

期間中のイノシシの撮影回数

⑤及び⑦が突出して撮影頻度が高い

イノシシの誘因は何か獣道等、環境的な要因?老朽化等による破損?餌がこぼれやすい構造?

イノシシの接触で破損しやすい構造?

カメラでの観察から・・・複合的な理由

あるいはこれら全てである可能性

27

Page 28: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

肉用鶏農場におけるイノシシ

タンク交換時にこぼれた餌を採食するイノシシ 飼料タンクへの探餌行動からくる攻撃

電気柵の設置 警戒して近づかなくなるイノシシ

28

Page 29: 課題番号:2604 畜産農場における食中毒菌汚染低減に向けた野 …€¦ · ・野生動物の防除法の検討:侵入防止策の実証 2県3地点で捕獲

研究概要3)農場に生息する衛生害虫の防除法の確立と経済効果

1. 農場に生息する衛生害虫は、発生場所の衛生管理と発生した成虫の捕獲を徹底する。

2. 生産者が積極的に取り組むように誘導する。3. 効果的かつ具体的な対策方法の提示

29

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①②③④

⑤⑥⑦

⑨⑧

ハエ対策 (IGR剤)発生場所の特定

散布方法• 頻度:

• 3~5月、11月:月1回• 6月と10月:月2回• 7~9月:週1回

• 使用量:20g/m2

バンクリーナー

子牛周り

育成舎

運動場

IGR剤(2kg )1762円x 21袋=37002円

使用場所:例

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飼槽

柱 柱 柱 柱 柱

柱 柱 柱 柱 柱

搾乳牛舎

サシ0イエ44

サシ0イエ5

サシ416イエ5

サシ2イエ1

サシ20イエ62

ハエの捕獲数変化ハエ対策前との比較 2015年11月8日と2016年11月14日

注 :Ttrap (ハエ捕りトラップ)

黒字は2015年11月の捕獲数、赤字は2016年11月の捕獲数

サシ0イエ0

サシ1イエ95

サシ1イエ0サシ3

イエ0

サシ2イエ0

• Ttrapを月に一度、13:00-15:00設置• イエバエとサシバエを同定STECの分離を実施

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34.6

12.5

66.7

16.0 15.4 16.0

4.3 4.3 0.0

0

10

20

30

40

50

60

70

2015年9月2016年4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月

分離率

採材年月日

STEC O26の分離率の変化

(0/22)

STEC O26の分離率の月別の変化2015年9月と2016年9月の分離率の比較

注 括弧内 左 O26が分離された頭数右 搾乳頭数

2015年9月のO26の分離率34.6% (9/26) 2016年9月のO26の分離率4.3%

(1/23)

有意に分離率減少 (P<0.05 χ2テスト)

(9/26)

(3/24)

(16/24)

(4/25)

(4/26) (4/25)

(1/23) (1/23)

ハエ対策開始

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防除対策に使用した資材畜種 農場記号 対策費用 環境整備 ハエ対策 ネズミ対策 野生動物対策

肉用鶏 RS-C-B 167,400ゾール剤 2缶 IGR剤 18袋

肉用牛 RS-B-E 229,284 消石灰 10袋IGR剤 1袋

ハエ取り紙 10セットETB乳剤 1個

防虫ネット 1セット

ネズミ取りシート 3セット

豚 RS-P-D 298,620 消石灰 10袋 IGR剤 5袋ハエ取り紙 17セット

殺鼠剤A 20缶殺鼠剤B 10袋

防鳥ネット 2セットカラス用ワイヤー 2

セット

肉用牛 RS-B-L 48,600 IGR剤 10袋

肉用牛 RS-B-M 45,252 IGR剤 2袋ハエ取り紙 17セット

ネズミ取りシート 2.5セット

豚 RS-P-G 45,252 IGR剤 2袋ハエ取り紙 17セット

ネズミ取りシート 2.5セット

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平成28年度 ハエ・アブ捕獲量(g)

0

2

4

6

8

10

12

14

対策前 対策1ヶ月後 対策2ヶ月後

B‐E

B‐M

B‐L

P‐D

P‐G

C‐B(畜舎内)

C‐B(畜舎外)

ハエ・アブ捕獲量(g)※

※イエバエ1gは15㎖遠沈管の半分程度の体積。12gあるとTトラップ2枚にすきまなくびっしり付着

ハエ対策内容・B-E:幼虫&成虫対策(IGR剤、ETB剤、ハエ取シート、防虫ネット)・C-B:幼虫&成虫対策(IGR剤、ゾール剤)・B-M,P-D,P-G:幼虫&成虫対策(IGR剤、ハエ取シート)・B-L:幼虫対策のみ

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アンケート結果の集計区分 種類 農場数 効果 作業性 費用 継続性ネズミ対策 殺鼠剤 2 有効2 概ね良好 普通2 100

ネズミ取りシート 3 有効1、無効2 良い 普通2、安い

1 33

計 60.0ハエ対策 IGR製剤 6 有効5、無効1 概ね良好 高い4、安い2 50

殺虫剤 1 有効1 良好 安い 100捕虫シート 4 有効3、無効1 概ね良好 普通2、安い2 50.0防虫ネット 1 有効1 悪い 普通 100

計 58.3環境整備 消毒 3 有効3 良好 安い2、高い1 100

野生動物対策 ネット・ワイヤー 3 有効3 概ね悪い 安い3 100

• ネズミ対策、ハエ対策、環境整備、野生動物対策の重要性は多くの農場で理解され、過半数の農場が継続すると回答した。

• 特に、環境整備と野生動物対策は新たに実施した全農場で継続すると回答した。35

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防除対策の継続性への影響要因○有効・良いもしくは安い

継続率(%)

△普通

継続率(%)

×無効・悪いもしくは高い

継続率(%)

効果 19 84.2 0 - 4 0

作業性 17 64.7 2 100 3 100

コスト 11 81.8 7 71.4 5 40.0

継続率は、継続について「不明」とした回答は「しない」と判断した。

• コストは継続率に影響する要因であるが、効果が最も影響する。• 作業性は、継続率に影響しない

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研究概要4)野生動物の侵入防止及び衛生害虫の駆除に関する経済分析

1. 肉用鶏農場の解析により食中毒菌であるサルモネラ汚染と家畜疾病病原

体である大腸菌症やマレック病の発生は、生産性の損失となることが示

唆された。

2. 発生に伴う損失を金額ベースで試算した。

3. 病原体を媒介する野生動物の侵入防止及び衛生害虫の駆除は、畜産業に

おける生産性への向上に寄与する可能性を示唆した。

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肉用鶏農家における廃棄理由ごとの生産効率への影響について• 解析方法:一般化線形モデル

• 目的変数:もも及びむねの歩留率に各市場価格を乗じた値の和• 説明変数:廃棄理由ごとの廃棄率

• 感染症による廃棄率が生産効率に影響を及ぼす可能性が示唆され、平均1回出荷量約8,000羽の出荷規模において感染症による廃棄が1%増加することによる損失は、約28万円/日と推定された。

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肉用鶏農家における廃棄理由ごとの生産効率への影響について

A農場

A農場(平均1回出荷量約8,350羽)における大腸菌症とB農場(平均1回出荷量約6,900羽)におけるマレック病による廃棄が1%増加することによる損失は、それぞれ約16万円と約22万円と推定された。

B農場

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肉用鶏農場における育成率に与える影響• 肉用鶏農家(1戸・2農場)から平成25~27年の食鳥検査記録、生産記録、及び出荷記録、合計488セットを供試した。

• 食鳥検査記録のうち、マレック病、大腸菌症、ブドウ球菌症、サルモネラ症、及び全身性の炎症により廃棄となった個体数を合計し感染症による廃棄として集計した。

• 解析方法:一般化線形混合モデル• 目的変数:育成率及び生産指数• 説明変数:感染症による廃棄数• 感染症による廃棄数:四分位数を基にカテゴリー変数とした。

• 感染症による廃棄数の「多い」農場が対策により「少ない」状態になった場合、育成率が94.1%から96.5%となり、経済的なメリット(8,000羽規模の鶏舎で約7.8万円)がある可能性が示唆された。

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研究のまとめ研究課題(中項目)1. 野生動物及び衛生害虫の食中毒菌及び家畜疾病病原体の汚染源としての危険度の評価

• 野生動物及び衛生害虫が食中毒菌や家畜疾病病原体を保有し、農場内での感染環に関与するとともに、病原体を農場に持ち込む危険性がある。

2. 農場周囲に生息する野生動物の防除法の確立

3. 農場に生息する衛生害虫の防除法の確立と経済効果• 農場内の食中毒菌や家畜疾病病原体分布や野生動物・衛生害虫出現状況を把握して、動物種や病原体の特性に基づく衛生対策が必要である。

4. 野生動物の侵入防止及び衛生害虫の駆除に関する経済分析• 感染症の発生は生産性の損失となるため、病原体を媒介する野生動物の侵入防止及び衛生害虫の駆除は、畜産業における生産性への向上に寄与する。

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