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女性議員を増やすための選挙制度改革
2018年6月16日(土)
於 : 桜美林大学
日本公共政策学会
選挙市民審議会共同代表
元早稲田大学公共経営大学院教授
元自治省選挙部長
片木 淳
(虎ノ門法律経済事務所 弁護士)
(写真は、1910年代のイギリスで婦人参政権を求めて闘った女性たちの姿を描いた映画『未来を花束にして』(2015年、イギリス)公式HPによる。)
【参照:片木「多事争論『地方自治と選挙制度』改革」(旧片木研究室) HP http://www.f.waseda.jp/katagi/1
先進国最低の「女性国会議員比率」(世界160位、2018.5.1現在)
Rank CountryLower or single House Upper House or Senate
Elections Seats* Women % W Elections Seats* Women % W
1 Rwanda 16.09.2013 80 49 61.30% 26.09.2011 26 10 38.50%
2 Cuba 11.03.2018 605 322 53.20% --- --- --- ---
3 Bolivia 12.10.2014 130 69 53.10% 12.10.2014 36 17 47.20%
4 Grenada 13.03.2018 15 7 46.70% 27.04.2018 13 4 30.80%
5 Namibia 29.11.2014 104 48 46.20% 08.12.2015 41 10 24.40%
6 Nicaragua 06.11.2016 92 42 45.70% --- --- --- ---
7 Costa Rica 04.02.2018 57 26 45.60% --- --- --- ---
8 Sweden 14.09.2014 349 152 43.60% --- --- --- ---
9 Mexico 07.06.2015 500 213 42.60% 01.07.2012 128 47 36.70%
10 Finland 19.04.2015 200 84 42.00% --- --- --- ---
16 France 11.06.2017 577 225 39.00% 24.09.2017 348 102 29.30%
29 Italy 04.03.2018 630 225 35.70% 04.03.2018 320 113 35.30%
41 United Kingdom 08.06.2017 650 208 32.00% N.A. 805 207 25.70%
47 Germany 24.09.2017 709 218 30.70% N.A. 69 27 39.10%
103 United States of America 08.11.2016 427 83 19.40% 08.11.2016 100 23 23.00%
160 Japan 22.10.2017 465 47 10.10% 10.07.2016 242 50 20.70%
189 Micronesia (Federated
States of)
07.03.2017 14 0 0.00% --- --- --- ---
" Papua New Guinea 24.06.2017 106 0 0.00% --- --- --- ---
" Vanuatu 22.01.2016 52 0 0.00% --- --- --- ---
" Yemen 27.04.2003 275 0 0.00% 28.04.2001 111 2 1.80%
? Paraguay 22.04.2018 80 ? ? 22.04.2018 45 ? ?
【出典:列国議会同盟(Inter-Parliamentary Union IPU)HP「PARLINE database」「Women in national parliaments」(Situation as of 1st May 2018)より抜粋・作成】2
女性議員の意義と地方議会における現状(内閣府調査研究報告)
【出典:内閣府HP「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告 」(2018年3月、概要)より抜粋】
3
女性議員が少ない理由→ 立候補がそもそも少ない
<同上:男性候補者の当選率>(同上)
<H.27統一地方選:女性候補者の当選率>(平成27年 統一地方選結果。人、%)
区分 県議 指定市議 市議 特別区議 町村議 計
候補者数 379 263 1,258 273 4912,664
当選人数 207 178 1,103 227 4432,158
当選率 54.6 67.7 87.7 83.2 90.281.0
区分 県議 指定市議 市議 特別区議 町村議 計
候補者数 2,893 1,213 7,125 862 4,34116,434
当選人数 2,077 844 5,762 590 3,82213,095
当選率 71.8 69.6 80.9 68.4 88.079.7
【出典:総務省HP「選挙・政治資金 > 選挙 > 選挙関連資料 > 地方選挙結果調 > 地方選挙結果」「最新の資料」「第18回地方選挙結果(27.4執行)」により作成】 4
女性議員:立候補の理由(内閣府調査研究報告)
立候補の理由(全体)
1. 議員となり課題を解決したいという使命感(88.9%)2. 地方議会に女性の声を反映させるため(79.4%)3. 政党や所属団体、地域等からの要請(72.2%)4. 家族や知人の後継(22.8%)5. ロールモデルとなる人物に影響を受けて(17.7%)6. 政治塾や模擬議会、政治参画に係るシンポジウム等に参加したことをき
っかけに(11.3%)
立候補の理由の年代別クロス集計
【出典:内閣府HP「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告 」(2018年3月、概要)】
5
女性議員の立候補から選挙期間中の課題(内閣府調査研究報告、選択項目に対する回答)
女性議員の立候補から選挙期間中の課題1. 知名度がない(57.5%)2. 自分の力量に自信が持てない(39.7%)3. 選挙活動の方法が分からない(38.4%)4. 仕事や家事等があり選挙活動にかける時間がない(38.1%)5. 仕事を辞めなければならない(30.6%)6. 選挙資金の不足(28.7%)7. 地域の理解やサポートが得られない(23.2%)8. 家族の理解やサポートが得られない(16.5%)9. 政党や後援会のサポートが得られない(8.7%)
(参考) 一般的に女性地方議員が少ない原因として考えられる理由
1. 議員活動と家庭生活(子育てや介護等)との両立が難しい(78.6%)2. 家族や周囲の理解を得づらい(73.4%)3. 政治は男性が行うものという固定的な考え方が強い(59.1%)4. 研修や勉強会等の女性候補者を育成するための機会が少ない(48.3%)5. 立候補に必要な資金を調達する負担が大きい(44.0%)6. 選挙制度が女性にとって不利である(18.7%)
【出典:内閣府HP「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告 」(2018年3月、概要)】
6
女性議員の立候補から選挙期間中の課題(内閣府調査研究報告、自由記述回答)
・ 国会議員・県議会議員・男性議員との連携が大変である・ 妨害・いやがらせ・セクハラを受ける・ 地域特有の慣習・選挙スタイルがある・ 人員確保・協力体制作りが難しい・ 女性・若い世代が立候補することの理解が得づらい・ 家事・育児・介護との両立が難しい・ 選挙活動に制約が多い、選挙活動が精神的・体力的につらい・ 選挙までの準備時間が不足・ プライバシーを公開する必要がある・ 他候補の選挙違反が取り締まられない・ 地元の課題把握が難しい・ 旧姓でないと認識されない・ 議員の仕事内容が分からない・ 活動拠点の確保が難しい等
【出典:内閣府HP「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告 」(2018年3月、概要)】
7
女性議員の増加を阻む3つの課題(内閣府調査研究報告)
【出典:内閣府HP「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告 」(2018年3月、概要)】
8
公共政策学とテーゼによる政策提言
個人では解決しにくく、社会で対応すべき問題が「政策問題」であり、その「政策問題」の
解決案が「公共政策」。
公共政策学は、従来の学問とは異なり、政策問題の解決を志向し、様々な学問の知識
を総合化する新しい社会科学として位置づけられる。
政策問題の解決には、まず、その問題をどのような枠組みでとらえるかという「フレーミ
ング」、次に、問題の構造(問題を構成する要因と要因間の関連性)の分析が行われる。
(秋吉貴雄「入門 公共政策学」(中公新書、2017年、中央公論新社)
(私見) 因果関係の厳密、実証的な検証(コーザリティ分析)は、特に社会科学におい
ては限界があり、これにあまりに拘泥することは、賢明とはいえず、有害ですらある。
テーゼの提示とこれに対する多くの参加者の反論、討論により、大方が現時点で妥当と
考える政策案(制度改革案)を適宜、提案すべき。9
テーゼ These
「テーゼ」は、説得的な理由付けを持った、先鋭的でかつ(理想的には)論
争を呼ぶような主張であり、事実についての解釈や意見を提示する。
テーゼの設定によって、広いテーマの中から研究の焦点をしぼることが
できるようになり、これに導かれた研究は、単に事実を記述するだけでなく、
説得的な性格を持ち、論争を刺激する。
統計を調べれば決着がつき、討論的な意見のやり取りをともなわない事
実命題は、たとえ、それが事実かどうかの検証が必要なものであっても、
「ありふれた見解(Allgemeinplatz)」にすぎず、テーゼではない。逆に、「あり
ふれた見解」に反駁し、これを疑問視するものこそ、よいテーゼである 。
(Brühl )10
仮説の限界と因果関係
「仮説は世界について考える手段、あるいは世界を観察する手段にすぎ」ず、この仮説を用いて、「頭の中に世界を合理
的に見るためのモデルが構築される」 。
モデルは、「どれも、単なる構成概念、単なる見解、単なる意見にすぎない」 ものであるにもかかわらず、「あるモデルのパ
ラダイムなり見解なり公理なりが証明されていなくとも、そのモデルの仮定や結論だけに注目して、自分の世界観によくマッ
チするものがえらばれている」。
経済学者は、「未来を予想するときに魔法の呪文を使」い、「毎回、『セテリス・パリバス(ceteris paribus)』と唱える」。「これ
は、『他の条件が等しければ』とか『他の条件が一定なら』というほどの意味である」が、「まるで『アダブカタブラ』のような怪し
げな響きであることはともかく、現実がセテリス・パリバスでないことは認めなければならない」 (以上、セドラチェク)
「交絡(confounding)」とは、従属変数と独立変数の双方に影響する第3の変数が存在する状況のことをいい、この第3変
数を「交絡要因」と呼ぶ。この場合「偽相関」であり、両者の間に真の因果関係はない(久米)。
ある変数を交絡要因として統制できるためには、分析者は変数間の構造についてあらかじめ知識を持っていることが必要
であるとされる(加藤等) 。
結局のところ、「従属変数、独立変数による科学的立証」などといわれるが、そのためには、因果関係等についての常識的
で一定の説得力を有する推論が前提となる。相関分析自体から、因果関係が解明されるわけではない。
11
藤田哲也~Mr.トルネード 気象学で世界を救った男~
気象学者「藤田哲也」は、シカゴ大学の教授として、70年代に米
国等で続発した航空機墜落事故の原因を「ダウンバースト」であ
るとの新説を発表し、当時の気象界から猛烈な批判を浴びたが、
10年に及ぶ論争を経てダウンバーストの存在を立証した。
そのおかげで、航空機の墜落防止策がとられるようになり、世界
の“空の安全”に多大な貢献をした。
【出典:NHKのHP『もっとNHKドキュメンタリー』「ブレイブ 勇敢なる
者『Mr.トルネード~気象学で世界を救った男~』」(初2016年5月
2日(月)午後10時25分(50分))。写真も同HPによる】
12
藤田哲也とテーゼ
「 私は確証を得る前に人にものを言う。まぁ否定されるのは覚悟の上ですが。私は多くの論争を巻き起こし
たけど、少なくとも一つ二つは解決できましたね。私の命が尽きる前に。ともあれ、より多くの考えを発表し論
争を生み出したい。見極めるのは君たちだ。」
「 特に若い人は恥ずかしがらず言いたいことを言うべきです。半分は間違っているかもしれない。だが、残りの
半分は正しいかもしれない。もし、50%が正しければ価値ある人生を送ったということです。幸運を祈りま
す。」
「 私は常に論争の中に身を置いている。慎重な研究者なら立証に10年を費やすだろう。でも、この飛行機事
故の件は緊急を要した。緊急だったこと、1945年の原爆調査などの経験から私は勇気をもって『原因はダ
ウンバースト』と言い切った。」
【出典:「テレビのまとめ」HP「藤田哲也 ~Mr.トルネード 気象学で世界を救った男~|ブレイブ 勇敢なる
者」(NHK番組。 2016年5月2日(月) 午後10時25分(50分))】
13
議員の成り手不足の一般的要因総務省「町村議会のあり方に関する研究会」報告書
[議決事件]
地方議会は、長年の制度改正により、議決対象が拡大し、議員としての専門性がより強く求められるとともに時間的にもより拘束されるようになり、一般の有権者が議会に参画しにくくなっている。
[定数]
議員定数が少ない小規模市町村ほど、議員の負担感が増加。
[議員報酬]
議員活動に係る時間的拘束が大きい一方で、小規模市町村の議員報酬は低く、それだけでは生計を立てていけない。
[兼職禁止及び請負禁止]
地方議会議員に係る兼職禁止及び請負禁止のため、小規模市町村においては、人口が少ないことに加え、事業所も限られていることから、公務部門の人材や市町村との取引関係がある事業者等が議員になり得ない。
[議会運営]
小規模市町村においても、当初予算や決算の審議などに際しては、議会活動のために仕事を休まなければならない日が1週間以上続くなど、兼業議員としての活動に対して各企業等の理解が得られにくい状況にある。
[勤労者の参画]
諸外国における労働者の議員活動に係る使用者の配慮義務等の例と比較すると、勤労者の参画に対する保障が必ずしも十分ではない。
【出典:総務省「町村議会のあり方に関する研究会」報告書(2018年3月26日)】
いずれも、男女間に顕著な差がある要因ではないが、公務員を含む勤労者全体の議員なり手が増えれば、それに伴い、女性議員のなり手も増加する可能性は多いであろうという意味で、女性の立候補を阻害している要因ととらえることもできよう。→ テーゼⅡ 立候補を容易にするための選挙制度の改革(後述) 14
女性議員(の立候補)が少ない要因(先行研究等)
A 個人的・社会的要因 男性に比べて
① 政治的関心が低い(大山)。政治は「汚い」という意識がある(笹川平和財団)。
② 「性別役割分担意識」により「家庭責任」をより負わされている(大山、竹安、三浦)。家族・親族の援助を受けにくい(三浦)。
③ 政党や政治団体、組合、地域の活動が少ないなどのため、政党等から要請されない(大山、竹安、三浦))。
④ 選挙にお金がかかるため経済力のない女性は立候補できないと言われる(大山)。
(しかし、家庭の経済的支柱である男性の方が、よりリスクの高いとの見解もある(同上))。
⑤ 育休の制度がなく保育施設もないなど議員活動をする上での不備がある(大山)。
⑥ 女性の指導力全般の向上、および若い女性の関心を政治生活に向けるための充実した教育および女性が訓練を受ける機会の欠如(笹川平和財団)。
B 選挙制度からの要因
女性議員の選出比率が高くなる比例代表制、連記投票制が採用されていないため、当選の確立が低く、立候補しない(大山)。
以上、出典()については、【参考文献】参照。
15
女性の立候補を増やす政策
A 個人的・社会的要因
→ 14の6つの要因に対応して、次の6つの政策
① 低い政治的関心 → 女性に対する政治教育(主権者教育)の拡充
② 「性別役割分担意識」 → 男性を含め学校教育と社会教育における男女共同参画意識の啓発等
③ 政党等の要請 → 政党や政治団体、組合、地域の活動への女性の参加促進
④ 女性の経済力 → 女性の経済的地位の向上
⑤ 育休制度、保育施設等 → 各議会における制度化
⑥ 女性の指導力全般の向上等 → 女性に対する政治教育(主権者教育)の拡充
本報告では、触れない。
B 選挙制度からの要因
→ 女性議員を増やす選挙制度改革:3つのテーゼ
テーゼⅠ 比例代表制・連記制の導入
テーゼⅡ 立候補を容易にするための選挙制度の改革
テーゼⅢ クオーター制の導入
〔金のかかる選挙 → 政治資金制度の改革〕 本報告では、触れない。16
テーゼⅠ 比例代表制・連記制への改革① 先行研究等
「 選挙制度と女性の政治進出との関連についての研究は多いが、概
して小選挙区制よりも比例代表制において女性議員の選出比率が高
くなること、また選挙区の定数が大きい大選挙区において女性の当選
が多くなることなどが示されてきた。」
「 一方、有権者が複数票を持っている連記制も女性にとって有利と
の見方もある。2票以上を持っていれば、そのうちの1票を女性に振り
分ける、という有権者の意識が生ずるからだ。」
(以上、大山)17
テーゼⅠ 比例代表制・連記制への改革② 選挙市民審議会答申
市区町村選挙:制限連記制の導入
都道府県議会・政令市議会選挙:比例代表制に
【出典:選挙市民審議会「選挙・政治制度改革に関する答申」(2017年12月31日、骨子)より抜粋。】なお、総務省「地方議会・議員に関する研究会」報告書(2017年7月)参照。
18
テーゼⅡ 立候補を容易にするための選挙制度の改革選挙市民審議会答申①
○ 供託金の廃止最大600万円の選挙供託金を立候補の要件とする制度を廃止する。見込める効果として、資力をもたないことによって立候補の制約を受けている有為な人材の立候補の促進、貧困層の政治参加の促進等がある。
○ 被選挙権年齢の引き下げ立候補の要件としての被選挙権年齢を、選挙権年齢に合わせて一律18歳とする。現在は、参議院議員・知事の被選挙権年齢は30歳、衆議院議員・地方議会議員・知事以外の首長の被選挙権年齢は25歳。見込める効果として、年齢によって立候補の制約を受けている有為な人材の立候補の促進、若者の政治参加の促進等がある。
○ 立候補休暇と議員活動のための休職・復職制度の整備被用者の立候補のための休暇と議員活動のための休職、議員退職後の復職を使用者に義務付ける。公務員の立候補制限、議員との兼職制限を撤廃する。見込める効果として、職業によって立候補の制約を受けている有為な人材の立候補の促進、サラリーマン層の政治参加の促進等がある。
【出典:選挙市民審議会「選挙・政治制度改革に関する答申」(2017年12月31日、骨子より抜粋)】
なお、総務省「地方議会・議員に関する研究会」報告書(2017年7月)「Ⅴ地方議会議員としての立候補を促進する環境整備」参照。 19
テーゼⅡ 立候補を容易にするための選挙制度の改革選挙市民審議会答申②
○ 選挙運動規制の廃止公選法129条から178条の3までのうち、ウエブサイト・電子メール・政見放送・経歴放送・個人演説会・選挙公報・投票記載所以外の定めについて削除・廃止する。政治的表現の自由を保障することによって、健全な民主政治の発展が見込まれる。
① 選挙運動期間の撤廃―選挙手続規定の新設選挙運動期間を廃止し、全ての期間の政治的表現の自由を保障する。選挙期日の決定・政党等の届出・候補者ないし候補者名簿の届出・候補者ないし候補者名簿の公表を定めた「選挙手続規定」を新設する。
② 戸別訪問の自由化戸別訪問による政治的表現の自由を保障する。政策中心の選挙を促進する。
③ 公開討論会の自由化と公営立会演説会の復活候補者間の政策論争を促す集会を自由に開催できるようにし、有権者の「知る権利」も保障する。公営の立会演説会を復活させ、資力のない候補者の必要最低限の選挙運動を保障する。等
【出典:選挙市民審議会「選挙・政治制度改革に関する答申」(2017年12月31日、骨子より抜粋)】
なお、総務省「地方議会・議員に関する研究会」報告書(2017年7月)「Ⅴ地方議会議員としての立候補を促進する環境整備」参照。
20
テーゼⅢ クオーター制の導入①「政治分野における男女共同参画推進法」
政治分野における男女共同参画の推進は、
① 衆議院議員、参議院議員及び地方公共団体の議会の議員の選挙において、政党その他の政治団体の候補者の選定の自由、候補者の立候補の自由その他の政治活動の自由を確保しつつ、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指して行われるものとすること
② 自らの意思によって公選による公職等としての活動に参画し、又は参画しようとする者に対するこれらの者の間における交流の機会の積極的な提供及びその活用を通じ、かつ、性別による固定的な役割分担等を反映した社会における制度又は慣行が政治分野における男女共同参画の推進に対して及ぼす影響に配慮して、男女が、その性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できるようにすることを旨として、行われなければならないこと
③ 男女が、その性別にかかわりなく、相互の協力と社会の支援の下に、公選による公職等としての活動と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として、行われなければならない(2条)。
さらに、同法は、国及び地方公共団体の責務について定めるとともに、特に、政党その他の政治団体に対しては、上記の基本原則にのっとり、「所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数について目標を定める等、自主的に取り組むよう努めるものとする」との努力義務を課している。
【出典: 「政治分野における男女共同参画推進法」(2018年5月16日成立、23日施行)】21
テーゼⅢクオーター制の導入
②各国のクオータ制等の取組
【出典:内閣府「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告 」(2018年3月)】22
選挙制度の改革と「女性議員過少」問題の解決
特に、 クオータ制については、
○ 単に、数字的に男女の議員比率が同じになればいいということなのか?
○ そうすることによって、逆に、男女の不平等が固定化されるのではないか?
等の批判
→ 原点に戻って、 「女性議員が少ない」という問題の再フレーミングが必要。
結局、何が問題なのか?
→ 選挙制度の改正だけでなく、女性の参画が妨げられているという社会的問題の
究明とその全体的解決が必要となるがーーーー
→ 公共政策学の今後の取組に期待!!
23
24
【参考文献】
・ 内閣府「政治分野における男女共同参画の推進に向けた地方議会議員に関する調査研究報告」(2018年3月)
・ 選挙市民審議会「選挙・政治制度改革に関する答申」(2017年12月31日抜粋)
・ 第4次男女共同参画基本計画(平成27 年12 月閣議決定)
・ 「政治分野における男女共同参画推進法」(2018年5月16日成立、23日施行)
・ 総務省「町村議会のあり方に関する研究会」報告書(2018年3月)
・ 総務省「地方議会・議員に関する研究会」報告書(2017年7月)
・ 大山七穂「第5章 女性と政治」NWEC-JK201505『 NWEC 実践研究 第6 号 女性のエンパワーメント』(国立女性教育会館HP「NWECとは」「出版物・報告書」「2015年度」)
・ 竹安 栄子「地域政治への女性参画を阻む要因」(京都女子大学現代社会研究5、2002年3月10日)【出典:京都女子大学HP「京都女子大学図書館」「京都女子大学学術情報リポジトリ(京女AIR)」資料】
・ 三浦まり『日本の女性議員どうすれば増えるのか』 (2016年、朝日選書)
・ 笹川平和財団・民主主義・選挙支援国際研究所「多様性のある政治リーダーシップ〜男女平等な政治参画に向けて〜」(2016年)・ 秋吉貴雄「入門 公共政策学」(中公新書、2017年、中央公論新社)
・ Brühl , Tanja (2016) „Hinweise zur Formulierung von Thesen, Hypothesen und Annahmen“ (Goethe-Universität Frankfurt am Main, Institut für Politikwissenschaft HP)
・ 久米郁男『原因を推論する 政治分析方法論のすゝめ』(2013年、有斐閣)
・ 加藤淳子・境家史郎・山本健太郎(編)「政治学の方法」。(有斐閣アルマ、2014年)
・ トーマス・セドラチェク『善と悪の経済学』(村井章子訳、2015年、東洋経済新報社)
・ 「ブレイブ 勇敢なる者『Mr.トルネード~気象学で世界を救った男~』」(初2016年5月2日『もっとNHKドキュメンタリー』)
・ 拙著「町村総会と地方議会改革」『地方行政キーワード』(ぎょうせい、2018年3月追補)
・ 拙著『ドイツの自治体議員と市民近接性: 名誉職議員制度に関する5つのテーゼ』(2016年、アマゾン・キンドル出版)】
・ 市民政調・片木『公職選挙法の廃止』(生活社、2009年)
・ 「選挙運動規制を撤廃し 自由な選挙の実現を」(『救援情報 特集 選挙制度はどうあるべきか』2016年秋号インタビュー記事)
・ 「市民による『21世紀の普選運動』を起こそう」(『公明』2016年7月号)
・ 座談会「市民のできる選挙/選挙のできる市民」『 2015年安保から2016年選挙へ 政治を市民の手に』(2016年3月23日発売 世界 別冊no.881))
・ 「議員は貴族か?代表民主制と市民近接性」(『自治日報』2016年9月9日号)
・ 「シティズンシップ教育と選挙」(早稲田大学マニフェスト研究所「シティズンシップ推進フォーラム2016」(2016.1.14)講演)
・ 「盛り上がらなかった「ネット選挙」(早稲田ONLINE・オピニオン「『ネット選挙』と選挙運動規制の全面撤廃」)
・ 経団連・21世紀政策研究所「日本政治における民主主義とリーダーシップのあり方」(報告書)拙著P.42~
・ 「ネット社会におけるメディアと民主主義 『ネット集合知』の活用と討論(「argument」)」(『メディアの将来像を探る』(一藝社、2014年、早稲田大学メディア文化研究所)第1章 24