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四方転び椅子製作解説書
( ダイジェスト 版 )
Moku
當間 孝
はじめに 家具を製作していて、作りたくてもなかなか作れないのが四方転びの椅子やテーブルではないでしょうか。本
や講習会で教えている作り方は、さしがね(規矩術)を使用した方法だと思います。さしがねを普段用いないで
家具を作っている人にとっては、英語で話されているくらい難しいのではないでしょうか。
そこで、なんとか簡単にできないかと考案したのが、このプログラムです。製作するのに必要な数値を、普段使っ
ている、(長さ)と(角度)で表しています。
また、小規模木工房で製作できるように、ほとんどの加工が基本的な機械(万能機、角のみ機、スライドソー)
と簡単に自作できる治具で行えるように工夫しています。また、機械作業による製作にこだわったのは、生産性、
正確性(強度に関係)のためです。
*この解説書は、4~5ページの製作実例に基づいて寸法等を記入しています。
ー加工工程の説明ー(1)木取り (写1-1~2)
木取り寸法表を作り木取りを行う。
脚は癖角(∠D=91.47)があるため、手押しをかける前に位置決めをする。(木目に方向性があるため。)
(安定感を出すために、木目が下に向かって広がって見えるように配置するのが一般的)
(2)基本加工
a) 貫の加工
貫を手押しカンナ盤(直角を確認の事)、自動カンナ盤等で幅と厚みを加工する。長さはカットしない。
b) 脚の加工 (写2-1~3)
1) 手押しカンナ盤の案内定規を、角度計を使って∠D(=91.47)に合わせる。
2) 内側の2面(貫のあたる面)を、癖角度(=91.47)になるように手押しを掛ける。
3) 残り2面を自動カンナ盤に通し、設計寸法にする。出来上がった脚は、癖のとれたひし形になっている。
(厚みが多く残っている場合は、昇降盤で注意しながらカットした後自動を掛ける)
(3) スライドソーによる胴付き加工 (写3-1~8)
a) 脚の加工
1) 脚の下端を直角にカットする。(全体の長さは、まだカットしない)
2) カット用自在定規を、∠C(=80.89)に合わせる。(写3-1)
3) 2)の定規をセットし、スライドソーの刃を左に傾斜させて、試し切りしながら∠C(=80.89)に合わせる。
4) セットできたら下端を基準に、脚の上端をカットする。(写3-3) (カットするときは、(写3-2)のように
傾斜方向を書いて、間違えないよう注意する。また総長さは余裕を取っておく)
5) カットした上端面を基準に、胴付きの墨付け(Ls=35.8)をする。
6) スライドソーの刃の高さを、胴付き高さに調整する。(忘れやすいので注意する)
7) (写3-4')のような直角なプレート(アクリル板)を当て板にして、左側で2面(カット用自在定規(自作)の方
向を変えて)、同様に右側で2面、胴付きをカットする。カット用自在定規を使用すると、(ターンテーブルが正確に
直角に調整されていれば)鋸刃の傾斜を一度合わせるだけで、角度のある胴付をカットできる。(写3-5~6)
8) 下端は、ホゾ穴の墨付け等のために、直角のままにしておく。(長さは、最後にカットする)
b) 貫の加工 (写3-7~8)
1) a)の脚の加工で使用した定規(∠C=80.89)をセットし、スライドソーの刃を左に傾斜させて、試し切りをし
ながら∠F(=88.51)に合わせる。
2) それぞれの貫の総長さを、正確にカットする。(正確にカットするとホゾの長さが全部同じになるので、ホゾ
の長さを基準に胴付き加工ができる)
3) 一本の貫に、胴付、ホゾの墨付けをする。(貫内のり寸法は、貫の下端の内側の寸法である。また上下は
∠F(=88.51)で、外に向かって狭くなる)
4) スライドソーの刃の高さを調整する。
5) 脚の加工と同様に、(写3-4)を参考に胴付きをカットする。(写3-7~8)
(四ダ11-02)
(4) 脚のホゾ穴加工 (写4-1~4)
a) 墨付け
1) まず、墨付け用定規を作る。 表の正1’、側1’等は脚の胴付きから貫の下端までの寸法なので、そこから
上方向に貫の高さをとる。次にホゾ穴の位置を決める。(写4-1)
2) 次に、脚の各面に中芯線を引き、胴付き面を基準にホゾ穴の位置を墨付けする。(写4-1)
*厳密には、ホゾ穴の上下の線は脚面に対して小中勾こう配になるが、ズレがわずかなので直角として扱う。
b) 穴あけ
1) はじめに、穴あけ用勾配治具の角度を∠C(=80.89)に角度計で合わせる。(写4-2)
2) 次に、角のみ盤に治具をセットしてホゾ穴をあける。このとき、写真のように傾きの方向に注意しながら
作業を行う。(写4-3~4)
3) ホゾ穴は傾斜させて掘るので、きれいに掘れない。そのためノミで掃除する。このときクサビのため に、
外側を0.5ミリ程度広げる。
( 5) 座板の加工 (写5-1~4)
1) 座板の木取り、および手押し、自動カンナ盤を通し、長さ、幅もカットする。
2) まず、裏面から墨付けを行う。脚間の寸法W0(正面、側面ともW0=130)を引く。次に、脚幅を外側に取り
線を引く。これで脚の位置が決まったので、これを基準にホゾ穴の墨付けを行う。(写5-3)
3) このホゾ穴の位置を、ズレ寸法P(=4.9)を利用して表側に移す。一般的な本では木口、木端面にホゾ穴
位置を移し、平勾配(座板用角度A=80.77)で表側に移動させている。
4) 座板穴あけ用治具の角度(∠A=80.77)を、角度計で合わせる。(写5-1~2)
5) この治具を使用して裏、表両側から穴を掘る。(写5-4)
6) 表側にクサビのために0.5ミリ程度広げながら穴を掃除する。(クサビは長さ方向に効かすこと。幅方向に効
かすと座板が割れてしまう場合がある)
( 6) 貫のホゾ加工
1) 貫の上下面の胴付きは手鋸でカットする。
2) ホゾは各面に平行なので、比較的簡単に加工ができる。
3) 四方転びは四面を同時に組まなければならないので、 ホゾの強さはすこし弱めにしたほがよい。(最後は
クサビを打って締めるので、強度に問題はないと思われる)
4) クサビのための切れ込みを入れる。
* 正面と側面の貫が同じ高さのときは、ホゾがお互い斜めで交差するため、単純にホゾの高さを1/2にすると
ケンカをするので、それを考慮してホゾの高さを決めること。(デザインが許せば、正面と側面の貫 はケンカ
しないようにずらしたほうが、ホゾの効きが良い)
( 7) 脚のホゾ加工、長さ決め
1) 脚のホゾは、各面に平行である。ただし癖角があるので注意すること。
2) スライドソーで上端と平行に、胴付き下長さ(L0=410.4)でカットして、最終的に長さを決める。(写7-1)
3) クサビのための切れ込みをいれる。
(8)中つなぎ貫の加工
補強のために入れるH型の中つなぎ貫は、貫の(高さの)センターの位置を想定 している。また長さは、中つ
なぎ貫の高さの中心線上の長さである。ホゾの縦方向は、側に平行ではないので、加工するのに工夫が必要
である。(写8-1)のようなホゾ取り機(自作)を使用すると便利である。
(9) 加飾および仕上げ、組立
1) それぞれのデザインに沿った加飾を行い、カンナ等で仕上げて組み立てる。
(四ダ11-03)
ープログラムの前提ー
* このプログラムは、脚のホゾ穴と貫のホゾの中芯線は同一面上にあるという前提で、計算を行っている。基礎
計算では貫の寸法はホゾの中芯線上で算出しているが、墨付けを簡単にするために表面寸法(貫下端内側)に
修正している。そのため貫のホゾは、幅の中心にすること。
ープログラムの入力についてー
各寸法と入力欄との関係
設計図
四方転び椅子設計プログラム(設計寸法)
脚間の内のり寸法 (胴付部)W0 (?) 高 さ 転 び 脚の幅
正面側 130 A (?) B(?) t (?)
側面側 130 400 65 30
天板下用貫 (正天,側天) ※1 その他貫 (正、側1~2) 座板厚
高さ f (?) 幅 e (?) 高さ f ’(?) 幅 e’ (?) s (?)
35 22 30
*1 正、側1は天板下用、その他貫は中間用で区別して使用する事。どちらかが0でもよい。
正面側
胴付部(座下端)正天 (計算による) 正1 (?) 正2 (?)
より貫下端 0 100 0
までの 高さ 側面側
側天 (計算による) 側1 (?) 側2 (?)
0 300 0
※2貫(正1、側1)は天板に接する場合で、脚の上面と面になるように貫高さ、幅から位置を自動計算するので、入力しない。
ー注意ー
* その他貫(正、側1~2)について高さ(f')と幅(e')の欄が一種類しかないのでそれぞれ違う場合ですが、
プログラムを2回、3回開いてそれぞれ計算するのが一番わかりやすい。高さと幅の数値がどの計算結果
に 関係するかというと、高さ(f')は中つなぎ貫の長さ決めにのみ使用されるので中つなぎ貫が付かない
貫は関係ありません。幅(e')は非常に大事で貫内のり長さ、総長さに関わってきますので違う場合はそれ
ぞれ計算する事。
(四ダ11-04)
※2
※2
四方転び椅子設計プログラム(設計寸法)
脚間の内のり寸法 (胴付部)W0 (?) 高 さ 転 び 脚の幅
正面側 130 A (?) B(?) t (?)
側面側 130 400 65 30
天板下用貫 (正天,側天) ※1 その他貫 (正、側1~2) 座板厚
高さ f (?) 幅 e (?) 高さ f ’(?) 幅 e’ (?) s (?)
35 22 30
*1 正、側1は天板下用、その他貫は中間用で区別して使用する事。どちらかが0でもよい
正面側
胴付部(座下端)正天 (計算による) 正1 (?) 正2 (?)
より貫下端 0 100 0
までの 高さ 側面側
側天 (計算による) 側1 (?) 側2 (?)
0 300 0
※2貫(正1、側1)は天板に接する場合で、脚の上面と面になるように貫高さ、幅から位置を自動計算するので、入力しない
(計算結果)
(脚について)
角 脚の癖角 D 脚胴付角度 C 長 座板用ホゾ長さLs 実際の長さ L0
度 91.47 80.89 さ 35.8 410.4
脚中心線上での 正面側 側面側
貫位置 正天’ 正1’ 正2’ 側天’ 側1’ 側2’
(貫下端位置で) 0 102.6 0 0 307.8 0
(貫について) (座板について)
貫について 座板について
角 度 垂直方向角 C 水平方向角 F 座板用角度 A 座板上下面でのズレ寸法 P
80.89 88.51 80.77 4.9
正面側 側面側
正天 正1 正2 側天 側1 側2
①貫内のり 0 163.1 0 0 228.1 0
②貫総長さ 0 229.1 0 0 294.1 0
(正確に!) *貫の内のり寸法は、中心線上ではなく、内側下端の寸法である
*貫の総長さは、貫内のり+(柱幅+3ミリ)*2
(*テーブル等で下の貫のセンターにつなぎを入れる場合の貫長さと角度について)
*中つなぎ貫を入れる位置は、側面側のその他貫(側1~2)の高さの真ん中を想定している。取り付けたい側貫
の基準高さから側貫の下端まで(上と同じく中芯線で)の高さ(hm)を下表に入れる。また(中つなぎ貫内のり長さ)
は中つなぎ貫材厚みのセンター上の長さである。(側貫の高さ(f')、幅(e')、勾配等の条件は、上の設計寸法を使用)
側貫位置高さ 中貫総長さ 中貫内のり長さ 角度
hm(?) WM Wm A
300 280.6 230.6 80.77
(横から見た図)
(四ダ11-05)
※2
※2
設計図 (*この図面は説明のためCADで描いたもので、プログラムにより自動的にでるものではない)
結果図
脚
貫
中つなぎ貫結果図 座板
ホゾは外側各面に平行である。
ホゾは外側各面に平行である。
上
ホゾは外側各面に平行である。
ホゾは外側各面に平行である。
(四ダ11-06)
ープログラム使用上の注意ー
* テーブル等で貫が、天板裏に接するとき
天板がのるときは、脚と貫の上端が平らにならなければならない。そのため脚が傾斜している分、貫の
上端をカットしなければならない。このプログラムでは、正天と側天の貫は材料の高さから、カットする分を
考慮して取り付け位置を計算で決めている。ということで、正天、側天はテーブルの幕板用、正1,2と側1,2
は一般的な貫として利用すること。
* プログラム中の挿入図が少し見にくいので拡大して載せておきます。
(四ダ11-07)
※1
※1 プログラムに必要な基準からの高さ ( f 、eの値から自動的に計算する)
(写1-1) (写1-2)
(写2-1) (写2-2)
(写2-3) (写3-1)
(写3-2) (写3-3)
∠91.47=∠D
傾斜方向に注意する
癖角に手押しを掛ける前に、木目に応じて位置決めをする
①
②
③
加工順番
1) ①、②を手押し掛けする
2) ③、④を自動に通す
正前
側右
正前
側右
正後 正後
側左
側左
正前
側右
上端のカット
直角にカットしておく
傾斜
∠80.89
カット用アクリル自在定規(自作)
キャップの色で向きを確認
印を目印にする
(四ダ11-02) (四ダ11-08)
91.47
91.47
④
*左の写真のように胴付きをカットしていくと、
両方に傾斜がある胴付きでも簡単に加工
できる。ただしターンテーブルが正確に0度
(直角)であり、アクリル板の角が正確に
直角であること。(写真は、貫であるが、脚
(写3-4) も同様)
(写3-5) (写3-6)
(写3-7) (写3-8)
(写4-1) (写4-2)
直角
アクリル板
直角
∠80.89
①
工程①
②
③ ④
アクリル板アクリル板
貫内のり長さ(163.1)
アクリル
当て板
アクリル
当て板
墨付け用定規
胴付き面を基準に脚の中芯線上に寸法をとる
共通事項黒字・・・表側(外)赤字・・・裏側(内)
(写3-4’)
工程④
工程③
工程②
(四ダ11-03) (四ダ11-09)
(写4-3) (写4-4)
(写5-1) (写5-2)
(写5-3) (写5-4)
(写7-1) (写8-1)
∠80.77
最後に高さを合わせる
→の二面の角度を合わせる
傾斜方向に注意して、両面から穴を掘る
裏側
前後、右側の両方向に傾斜する。
自在ホゾ取機脚の長さ決め
130
a
b
a+4.9
b+4.9 ホゾ穴ホゾ穴
(四ダ11-04) (四ダ11-10)
(完成写真)
(参考写真) (参考写真)
の基準高さから側貫の下端まで(上と同じく中芯線で)の高さ(hm)を下表に入れる。また(中つなぎ貫内のり長さ)
(四ダ11-05) (四ダ11-11)