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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台 4-6-1 リハと栄養・嚥下障害(6) 重度嚥下障害者のゼリー以上の摂食・嚥下を目指して―効果的なST介入の時期を検討― 富家病院 リハビリテーション科 あさの まいこ ○浅野 舞子(言語聴覚士),宮崎 弥重,冨張 修平 [はじめに] 当院は重度慢性期の患者様が多く入院している。脳血管疾患や神経難病等により、気管切開を行い、 気管カニューレを装用している重度嚥下障害者が多い。摂食嚥下障害により非経口摂取が続くと、口腔内乾燥 や汚染、誤嚥性肺炎、脱水、低栄養、口腔構音器官の廃用症候群などの二次的合併症の危険性が生じる。当院 では入院直後からSTが介入し、摂食嚥下機能の評価・練習を行っている。ゼリー以上の摂食嚥下が可能となり、 食事を再開できた症例を経験している。STの介入がより効果的に行えるよう、状況の振り返りを行った。 [目 的] 重度嚥下障害者の摂食嚥下機能の改善に向けて、当院のST介入時期について調査・検討する。 [方法]入 院時に、経管栄養や点滴管理などの非経口摂取患者に対し、STが介入開始した時期と摂食嚥下機能の変化を 調査する。 [調査対象]平成28年7月1日~平成28年12月31日までの期間に新規入院をした26名の非経口摂取の患 者を対象とした。 [結果]26名の非経口摂取患者のうち氷なめ以上の摂食を進めた患者4名(15%)。ゼリー以上 の摂食を進めた患者15名(58%)。3食経口摂取まで進めた患者6名(23%)。患者への介入は、いずれも入院1 週間以内にSTの介入を実施していた。意識障害の有無に関わらず、摂食嚥下機能の評価、間接練習を開始し ていた。 [考察] 当院では、意識障害を伴う重度嚥下機能障害者であっても、入院1週間以内にSTが介入し、 嚥下運動や空嚥下を認めた症例は、気管切開の有無に関わらず、摂食嚥下機能の評価を実施している。繰り返 し評価や練習を重ねながら、状況に合ったプログラムを実施したことが、ゼリー以上の経口摂取へと繋がった と考える。

重度嚥下障害者のゼリー以上の摂食・嚥下を目指して―効果的 … · 第25回日本慢性期医療学会 in 仙台 4-6-1 リハと栄養・嚥下障害(6)

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-6-1 リハと栄養・嚥下障害(6)重度嚥下障害者のゼリー以上の摂食・嚥下を目指して―効果的なST介入の時期を検討―

富家病院 リハビリテーション科

あさの まいこ

○浅野 舞子(言語聴覚士),宮崎 弥重,冨張 修平

[はじめに] 当院は重度慢性期の患者様が多く入院している。脳血管疾患や神経難病等により、気管切開を行い、気管カニューレを装用している重度嚥下障害者が多い。摂食嚥下障害により非経口摂取が続くと、口腔内乾燥や汚染、誤嚥性肺炎、脱水、低栄養、口腔構音器官の廃用症候群などの二次的合併症の危険性が生じる。当院では入院直後からSTが介入し、摂食嚥下機能の評価・練習を行っている。ゼリー以上の摂食嚥下が可能となり、食事を再開できた症例を経験している。STの介入がより効果的に行えるよう、状況の振り返りを行った。 [目的] 重度嚥下障害者の摂食嚥下機能の改善に向けて、当院のST介入時期について調査・検討する。 [方法]入院時に、経管栄養や点滴管理などの非経口摂取患者に対し、STが介入開始した時期と摂食嚥下機能の変化を調査する。 [調査対象]平成28年7月1日~平成28年12月31日までの期間に新規入院をした26名の非経口摂取の患者を対象とした。 [結果]26名の非経口摂取患者のうち氷なめ以上の摂食を進めた患者4名(15%)。ゼリー以上の摂食を進めた患者15名(58%)。3食経口摂取まで進めた患者6名(23%)。患者への介入は、いずれも入院1週間以内にSTの介入を実施していた。意識障害の有無に関わらず、摂食嚥下機能の評価、間接練習を開始していた。 [考察] 当院では、意識障害を伴う重度嚥下機能障害者であっても、入院1週間以内にSTが介入し、嚥下運動や空嚥下を認めた症例は、気管切開の有無に関わらず、摂食嚥下機能の評価を実施している。繰り返し評価や練習を重ねながら、状況に合ったプログラムを実施したことが、ゼリー以上の経口摂取へと繋がったと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-6-2 リハと栄養・嚥下障害(6)当院回復期病棟における嚥下スタッフ育成の取り組み―第二報~取り組み前後の効果判定について~

原病院 リハビリテーション部

なかむら けいた

○中村 圭太(言語聴覚士),仲野 里香

【はじめに】 摂食嚥下障害の患者に対する安全な摂食援助は,高齢者ケア・キュア領域における重大な課題となっている.当院では,2015年8月より6カ月間,回復期病棟において看護士・介護職からなる嚥下スタッフを育成する取り組みを行い,慢性期リハビリテーション学会2016にて「当院回復期病棟における嚥下スタッフ育成の取り組み~嚥下クリニカルパス作成にむけて 第一報~」を報告した.今回,その取り組みが誤嚥性肺炎を予防する役割を果たしているか,また誤嚥性肺炎患者のADL能力との関連について後方視的に調査したので報告する.

【対象】 2014年~ 2016年の24カ月間,当院回復期病棟に90日以上入院していた患者計111名

【方法】 嚥下スタッフ育成の取り組み前後のそれぞれ1年間において,(1)37.5℃以上の原因不明熱があった患者及び肺炎を発症した患者(以下,発熱群とする)の割合.(2)発熱群におけるST介入の有無.(3)回復期病棟入院患者全体の退院時FIMの平均得点と発熱群の退院時FIMの平均得点を比較.

【結果】 (1)発熱群は取り組み前43%,取り組み後35%と減少した.(2)ST介入率は取り組み前61%,取り組み後45%と減少した.(3)退院時FIMの平均は,病棟全体では,取り組み前71.4,取り組み後80.2,発熱群では,取り組み前52.1. 取り組み後61.4と有意に向上した.

【考察】 嚥下スタッフ育成の取り組み前後で,原因不明熱・肺炎発症率が減少し,ST介入率が低下,ADL能力が向上した.このことは,病棟内に嚥下障害を得意領域とする看護士・介護士が存在することで,迅速で適切な対応が可能になった成果であると考える.嚥下スタッフ育成は,嚥下障害の予防,ADL能力の低下予防に寄与する可能性が示唆された.

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-6-3 リハと栄養・嚥下障害(6)療養型病床入院中の高齢者の栄養状態と運動機能および嚥下機能との関連性

1 並木病院 リハビリテーション科,2 並木病院 栄養科

おの りょうこ

○小野 僚子(言語聴覚士) 1,池俣 裕一 1,小石 将秀 1,高柳 仁美 1,若林 陽 1,鈴木 研 1,熊崎 由紀 2

【はじめに】昨年、第24回日本慢性期医療学会において、療養型病床入院中の高齢者の脳血管疾患に伴う嚥下障害は、低栄養やADL低下のリスクとなり得るという先行研究と同様の結果が得られたことを報告した.

【目的】今回は前回の報告を踏まえて、疾患を限定せず高齢者の栄養状態と運動機能および嚥下障害の関連性についての検討である.

【対象】当院入院中の患者のうち、一時的な末梢点滴使用を含む、3食経口摂取で栄養管理が行われている65歳以上の29名(男性7名、女性22名、年齢85.3±7.3歳)とした.なお、対象者に栄養補助食品の提供はない.

【方法】2015年10月から2016年7月をデータ収集期間とし、カルテ情報をもとにMini Nutritional Assessment-Short Form(以下、MNA®-SF)、機能的自立度評価表(以下、FIM)、摂食嚥下能力のグレード(以下、嚥下Gr)を言語聴覚士と管理栄養士で評価し、MNA®-SFとFIM、MNA®-SFと嚥下Grの相関係数を算出した.

【倫理的配慮】当院内の倫理委員会の承認を得て行った.

【結果】MNA®-SFとFIMでは比較的強い相関(r=0.52 p<0.05)があり、MNA®-SFと嚥下Grでは弱い相関(r=0.25 ns)がみられた.順位相関係数を算出したが、MNA®-SFとFIMではrs=0.55 p<0.01、MNA®-SFと嚥下Grではrs=0.31 nsとなり、大きな変化はみられなかった.

【考察】今回の調査では、MNA®-SFとFIM・MNA-SFと嚥下Grのいずれも正の相関関係があったが、前回の報告に比して弱い相関となった.要因として以下の可能性があげられた.FIMやMNA®-SFが高得点であっても、末梢点滴併用の場合や食物形態が低い場合は嚥下Grが低下した.また、透析患者の体重推移についての得点は栄養状態を反映していない場合があり、さらに対象者の70%以上に認知機能の低下がみられたため、機能的にはある程度保たれていても喫食率のムラによって嚥下GrとMNA®-SFの摂取量についての得点に差が出た可能性があると考えられた.

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-6-4 リハと栄養・嚥下障害(6)先行期の摂食機能障害に対する環境設定

老人保健施設ひまわり 事務部診療技術科

やまもと きょうこ

○山本 恭子(言語聴覚士)

【はじめに】認知症や高次脳機能障害の影響により、摂食に集中できず、摂取量が低下する患者が多く見られる。盛り付けを工夫するなど環境調整することにより、摂取量が向上した症例について報告する。

【症例】70代後半女性  既往:認知症 HDS-R 6点入所当初、食事の混ぜ合わせ、未摂取の器の重ね合わせ、一つの器から集中的に摂取する様子が顕著に見られた。それにより、疲労感が出現し、摂取量が低下した。食事動作を全介助とすることで摂取量は向上したが、徐々にADL動作全般の意欲低下が見られるようになった。

【経過】始めに、本人の注意が向きやすい位置に器を並べる調整を行なった。集中しやすくなったが、食事の混ぜ合わせや食器の重ね合わせはなくならなかった。また、食事時間も短縮に至らなかった。次に、ワンプレートでの提供を行なった。混ぜ合わせはなくなり、食事時間が大幅に短縮された。しかし、器の形状により中身がこぼれやすく、こぼれた食物に注意が向く様子が見られた。次に、最もすくいやすい器を検討する為、縁のやや高い丸皿・縁のやや高い角皿・介助皿(大)、それぞれの器での摂取状況を3日程度、観察・評価し、最もこぼれにくかった介助皿(大)を採用した。

【結果】ワンプレートで提供することにより、混ぜ合わせ行為が見られなくなった。それに伴い、1時間以上を要していた食事時間が、30 ~ 40分程度に短縮し、疲労感の軽減、活動性の向上に繋がった。

【考察】器の数、形状といった環境設定を実施したところ、何をどう扱ってよいかわからない混乱した状態が改善し、さらに操作時のエラーが減ることにより、摂食そのものに集中できたと考えられる。摂取量の向上を目的とし、安易に介助量を変更するといった視点ではなく、本人の自分で食べる喜び・意欲を尊重しつつ、嚥下機能、姿勢、食器や食事形態などといった食事動作全体に対する評価および、対応を行っていくことが必要である。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-6-5 リハと栄養・嚥下障害(6)リハビリテーション病院における摂食・嚥下障害診療の課題

1 新戸塚病院,2 西山耳鼻咽喉科医院

おだ うみ

○小田 海(言語聴覚士) 1,池谷 聡毅 1,中尾 健太郎 1,西山 耕一郎 2,橋爪 義隆 1

【はじめに】当院入院患者の嚥下機能の変化や転帰から摂食・嚥下障害の診療体制に必要な課題を整理したので当院の取り組みと合わせて報告する.

【対象】平成28年度に当院に入院した回復期患者638名,療養患者474名.

【方法】入退院時の栄養ルート,嚥下障害の重症度や摂食状況と転帰を調査.嚥下障害の重症度は嚥下障害の臨床的重症度分類(以下DSS)を,摂食状況の変化は藤島の摂食嚥下状況レベルを用いて調査.

【結果】回 復 期 病 棟: 在 宅 復 帰 率87 %. 非 経 口 患 者11%. 入 院 時 の 栄 養 ル ー ト は3食 経 口88 % ,経 鼻8%,胃 瘻2%,IVH1%,DIV1%.退院時DSSは問題なし31% ,軽度問題25%,口腔問題12%,機会誤嚥11%,水分誤嚥12%,食物誤嚥6%,唾液誤嚥4%.摂食状況の改善度は少量経口58.3%,3食経口31.9%. 療養病棟:在宅復帰率54%.非経口患者58%.入院時の栄養ルートは3食経口36%,経鼻28%,胃瘻15%,IVH12%,DIV9%.退院時DSSは問題なし7% ,軽度問題9% ,口腔問題4%,機会誤嚥12%,水分誤嚥15%,食物誤嚥18%,唾液誤嚥35%.摂食状況の改善度は少量の経口摂取12.7%.3食経口摂取1.4%.

【考察】回復期病棟患者の多数が摂食・嚥下障害を有する状態で在宅生活しており,退院後の継続的関わりが必要であると示唆された.療養病棟でも在宅生活となる嚥下障害例は存在するが,最重度の嚥下障害例も多く,全身管理や栄養ルートの検討が優先される場合が多いことが示唆された.当院ではVF・VEによる客観的評価、全患者への嚥下スクリーニング、嚥下サポートチーム、訪問STなど嚥下障害への連携体制最適化を図っているが,入院時から退院後の生活までの包括的診療体制の整備は今後の課題である。

【まとめ】摂食・嚥下障害は退院後の継続的関わりが必要であり,地域・在宅・訪問領域においても適切な病態診断,嚥下機能評価,嚥下リハビリテーションの提供が必要である.重症化・複雑化する嚥下障害例に対応できる院内外での多職種協働による体制整備が望まれる.

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-6-6 リハと栄養・嚥下障害(6)当院のえんげ外来開設についての報告

戸畑リハビリテーション病院

なかむら ともこ

○中村 智子(言語聴覚士),木村 英一,佐藤 恵美子,山本 祐子,大森 岳,福田 省三,剣持 邦彦,弘中 佐智恵

【目的】様々な疾患により嚥下機能に問題や不安を有する方々を対象に、早期発見・早期対策を図る目的で平成27年6月えんげ外来を開設した。外来の概要と開設してからの現状や今後の課題について検討したので報告する。【概要】当院えんげ外来は完全予約制で、週1回午後に行っている。初回に医師及び言語聴覚士による嚥下に対する問診を行い、必要であれば翌週嚥下内視鏡(VE)や嚥下造影検査(VF)を実施する。その結果により安全な食事形態・食べ方・姿勢、自主訓練方法、栄養指導等を行っている。【現状】開設から平成29年3月までの22 ヶ月間で受診患者数27名(のべ48名)。平均年齢77.85歳(45 ~ 95歳)。紹介元は当法人病院4名、当院外来4名、かかりつけ医7名、施設10名、施設デイケア2名。症状は食思低下や嚥下障害等。藤島Gr.Ⅱ中等症1名、Ⅲ軽症16名、Ⅳ正常10名。反復唾液嚥下テスト:2回以下15名(異常あり)、3回以上12名(正常)。改定水飲みテスト:異常2名、摂取可25名。MASA:平均156/200点(最低55点、最高198点)。VE実施者18名、VF実施者6名。受診の結果、経口摂取や栄養管理方法の継続は26名、当院地域包括ケア病棟への入院1名であった。【今後の課題】VE・VFを初めて経験する患者・家族・施設職員も多く、画像を見て指導を行うことで嚥下障害に対する理解を深め関心を持ってもらうことができた。また軽度から中等度の嚥下障害を有する患者が大半であったことから、地域にはそのような患者が多数存在することが窺えた。さらに受診後の経過観察として開設1年後に重症度により3ヵ月・6ヵ月後に電話でのフォローを開始したが、リハビリや栄養指導が継続して行われているか等の確認も必要であり、フォロー体制の再検討も今後の課題である。何よりも地域に暮らす嚥下障害患者もしくは予備軍の方々に対しもっと広く認知してもらうことが急務であり、地域や多職種間での連携の強化が重要と考えられる。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-7-1 褥瘡(1)浜松東病院での褥瘡予防・ケアに対する取り組み

1 浜松東病院 褥瘡対策チーム,2 中山皮膚科形成外科

さいごう くにこ

○ 西 郷  公 仁 子( 看 護 師 ) 1, 田 中  圭 1, 鈴 木  友 美 子 1, 市 川  淳 子 1, 伊 与 田  綾 子 1, 黒 滝  幸 1,川村 哲也 2

はじめに当院は99床の医療療養型病院である。入院患者の主な疾患は、脳血管疾患・認知症・誤嚥性肺炎等で、約80%が寝たきり全介助の患者である。平成28(以後Hと表記)年度は、院内褥瘡発生0人の期間が229日と大幅に更新された。その要因として、継続的に行われてきた勉強会が、職員の意識や知識・技術の向上に反映されたと考えた。今回、看護部全員にアンケート調査を行い、褥瘡ケアに対する意識と今後の課題を見出したので報告する。

方法 1.H25 ~ 28年度の褥瘡発生状況の経過表を用いて比較 2.H20 ~ H28年度の活動(勉強会・書類作成・マニュアル・業務変更等)を整理し、褥瘡ケアに活かされているかアンケート調査した。職種・入職年度・病棟を記入「はい、いいえ」で回答を得た。対象は看護師30名、介護士38名。

結果 1.褥瘡発生状況 褥瘡発生0人期間がH25年度119日、H26年度77日、H27年度102日であったが、H28年度は229日と大幅に改善された。 2.アンケート結果改善が以下の点であった  ①体位交換時に背抜きとポジショニングが確実に行えていた  ②寝衣やシーツ類のしわを伸ばす等ベッド上の環境を全員が整える事ができていた  ③栄養と体圧分散の視点から、多職種と協働しリスク管理を行えるようになった課題が以下の点であった  ①職種間ではポジショニングの根拠の理解と伝達方法に、病棟間では背抜きグローブ使用頻度の差があった  ②習慣化されている業務は、方法の変更や追加がされにくかった

まとめ褥瘡を作らない為には日々の細やかな看護介護が重要になる。褥瘡委員会が継続し行ってきた勉強会・マニュアル作成等が職員の意識を改善し技術を向上させ、褥瘡発生の予防に繋がったと考えられる。全職員が、褥瘡の予防・ケアに関し正しい知識と技術を身につけ、個別性のあるケアができるよう、より一層の啓蒙活動をしていく事が必要と考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-7-2 褥瘡(1)療養型病院における褥瘡対策委員会の効果

はいなん吉田病院

わらしな きみえ

○藁科 王恵(看護師)

【はじめに】当院は医療療養型180床。褥瘡対策を見直すことで、褥瘡治癒率1.13%(H23年度)を2.18%(H28年度)に改善することができた。

【活動内容】1.褥瘡予防・管理ガイドラインを基準にマニュアルの改訂。①体圧分散寝具の変更、増数。使用可能率を83%から92%へ上昇させたことで褥瘡発生リスクの軽減につなげた。②ドレッシング材の種類の変更と整理をし褥瘡の深達度により使用できるようにした。③褥瘡評価をNPUAPの分類とDESIGNが混在している評価からDESIGN-Rの評価のみとした。現場で考える力を高める事を目的に院内研修会を開催。点数に重みがついたことで重症度がわかりやすくなった。④褥瘡対策委員に対する勉強会を実施。委員が知識、技術を高めることで褥瘡治癒の向上を図った。⑤除圧方法(背抜き、圧抜き)やポジショニングの体験型院内研修会の実施。自ら体験する事で患者の気持ちに寄り沿えるケアにつなげられた。⑥管理栄養士と連携して褥瘡栄養補助食品を試用実施。使用結果により栄養状態が改善し、導入開始となる。

【まとめ】統計をとり始めてからの6年間で、褥瘡保有率平均5.08%、新規発生率平均1.65%、新規持込率が平均0.88%。日本褥瘡学会実態調査委員会による、H25年度療養型病床を有する病院の褥瘡有病率2.20%、推定発生率1.52%と比較すると当院は平均より若干高めになっている。今後も急性期からの早期退院でより全身管理が必要となる患者が増え、褥瘡リスク要因の高い入院患者が予想される。褥瘡ケアについては、診療報酬上、材料費等点数化されないため、病院からの持ち出しが増えない様ケアをしなければならない。皮膚・排泄ケア認定看護師の配置やNSTの設置はないが、褥瘡対策に関する知識、技術を高められるよう委員会活動を工夫し、ケアの統一を図ることで、褥瘡治癒率を上げる事が実証できた。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-7-3 褥瘡(1)もう二度とつくらない~褥瘡再発・予防への取り組み~

花川病院

たかはし さとこ

○高橋 聡子(介護福祉士),中田 栄二郎,菊地 俊介,豊澤 涼子,桐腰 祐子

【はじめに】医療療養病棟は長期臥床やADL低下などの患者が多く、褥瘡の発生、再発することが多い。今回、入院時より褥瘡があり、治癒と再発を繰り返す患者のケアや手技統一することで治癒や再発予防できないかと考えた。

【研究目的】褥瘡に対する意識を向上させケアや手技を統一することで褥瘡の治癒、発生予防に効果があるか検証する。

【方法】①再発を繰り返す仙骨部に褥瘡あるHさんのケアを見直し治癒に向けて統一した手技に取り組む。②スタッフに褥瘡ケア確認アンケート。③Hさんの治癒後、手技研修を実施し写真や注意事項をベッドサイドに掲示し再発予防に取り組む。

【結果】Hさんは入院時から仙骨部に褥瘡があり、食事は三食ギャッジアップで介助、食事量は保たれ、栄養状態は良好であるがd1、d2の褥瘡を繰り返していた。そこでケアをみなおし、食事のギャッジアップや仰臥位時間、左右体位変換、角度など統一した方法を掲示し実施することで治癒になった。その後、実技研修を4日間かけ全員に実施し再発予防は継続している。また、看護師、介護士31名にアンケート実施した。ポジショニングなど基本は意識しているが体位変換時の方法に問題が見られた。

【考察、結論】摩擦とずれは褥瘡発生要因の外的因子で、摩擦・ずれ予防には日常生活の基本的援助の配慮が必要といわれている。今回、Hさんの日常生活の中で食事のギャッジアップが褥瘡再発の一因ではないかと考えた。そこでギャッジアップは配膳がきてから、食後は直ぐに30度以下、側臥位とした。さらに背抜きをする、左右のみの体位変換など統一したケアが治癒を促進した。また、統一したケア継続のための研修や掲示して取り組むことがその後の発生予防に繋がっている。今後の課題として患者やスタッフへの身体的負担軽減のために、2人体位変換の実施、それがスタッフ同士声を掛け合い安楽な体位の確認、ケア向上に繋がると考えられる。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-7-4 褥瘡(1)入院時検査データと褥瘡発生の関連性

1 西仙台病院 栄養科,2 西仙台病院 医局

たかはし かよこ

○高橋 加代子(管理栄養士) 1,畑井 静香 1,五十嵐 美久 1,宗田 庸 2

【目的】当院では年間約200名の入院患者に対し、入院時検査データの測定を行い、栄養評価に用いている。褥瘡対策委員会では、マットレス選択の指標としてOHスケールを測定しているが、その他は褥瘡発生後の活動が主体であった。そこで、褥瘡発生予防対策としてリスクアセスメント基準を設定するにあたり、入院時検査データを利用できないか調査を行った。

【方法】平成26年4月~平成29年1月までの入院患者(入院時褥瘡保有者を除く)を入院後90日以内の褥瘡発生群と非発生群に分け、入院時検査データ(BMI、血清Alb、TP、Hb、OHスケール)について比較検討を行った。解析は、Mann-WhitneyのU検定にて行い、有意水準はP<0.05とした。また、有意差が確認できたものはROC曲線にてカットオフ値の検討を行った。

【結果】期間中の対象入院患者は485名(男性234名、女性251名、平均年齢79.4歳±10.2)。褥瘡発生群39例、非発生群446例。血清Alb(P<0.01)、OHスケール(P<0.05)にて有意差が認められた。血清Albのカットオフ値は3.3g/dl。OHスケールでは7.0点となった。

【考察】今回の調査により、血清Alb低値・OHスケール高度レベルの者は褥瘡発生リスクが高くなることが裏付けられる結果となった。血清Alb値、OHスケールとも栄養介入やリハビリテーションなど多角的なケアにより改善できる可能性がある。得られた結果をもとに、今後は褥瘡対策委員会としてリスクアセスメントを行なうように検討し、褥瘡発生リスクの低減を行なっていく。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-8-1 褥瘡(2)医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)の予防・対策~チェックシートを用いての取り組み~

高田病院

いけだ まこと

○池田 慎(看護師),村上 裕樹,大久保 友美,池田 田美子,宮原 里香,的場 莉紗,萩原 隆二,髙田 昌実

【はじめに】 医療関連機器圧迫創傷(以下MDRPUとする)は、当病棟においても発生している事例がある。しかしMDRPUについては予防や対策についての先行研究は少ない。そこで、今回、MDRPUについてチェックシートを用いて予防、対策に取り組んだ。その結果をここに報告する。

【期間】 H28年11月下旬~ H29年1月下旬

【対象】 4階病棟 医療関連機器を装着されている患者様

【実践】・MDRPUチェックシートを作成し、就業時チェックしていく。・気付いた事に対しカンファレンスを行い、対策を考え実践した。・研究終了時にスタッフに対しアンケート調査を行った。・MDRPU発生の変化を集計。【結果】・チェックシートを用いることで、医療関連機器を装着されている患者様を意識して観察するようになったとの意見がでた。・スタッフ間で医療関連機器の項目別に予防対策を考え実践に結びついた。・研究開始前のH28年、9 ~ 11月中旬の間でMDRPU発生は8件であったが、研究導入後H28年11月~ H29年1月下旬までにおいてはMDRPU発生2件と減少がみられる。

【考察】チェックシートを用いることで、医療関連機器を装着されている患者様に対し、観察する意識付けがチーム間で定着した。その結果、対策として挙げたことを情報共有し予防に繋がり、結果としてMDRPU発生の減少に結びついたと考察できる。医療関連機器装着時はMDRPUのリスクがあるという認識をチーム間で共有し統一した予防、対策が重要と言える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-8-2 褥瘡(2)カイロによる低温熱傷から30cm台の褥瘡を呈した症例に対して病棟チームで取り組んだ事例

シーサイド病院 リハビリテーション科

きやぶ たくる

○木藪 琢塁(作業療法士)

<はじめに>平成28年度より退院強化病棟を立ち上げ、病棟の大きな変革を行った。入院時カンファレンスや全患者様に月1回のチームカンファレンスを導入した。そのことで、以前ではカンファに参加していなかった看護助手等の参加により、他職種の連携を強めること出来た。今回、当病院に33cm×17cmの褥瘡を呈した症例が入院し、チームアプローチの取り組みを報告する。

<症例>91歳女性。褥瘡になる前ADLは自立レベル。自宅で長男一家と同居。平成25年よりデイサービスを利用する。入院時は寝たきり状態で、経口摂取、HDS-Rは10点であった。

<経過>カイロによる低温熱傷から仙骨部が潰瘍化。ショートステイ中に利用中に褥瘡悪化。デブリードマン施行後、当院へ入院。入院時カンファレンスを行い、病棟での方向性の統一を図る。ラップ療法での処置、栄養面でのアプローチを中心に褥瘡治療に取り組む。リハビリは半腹臥位でのポジショニングを製作。体位変化について看護師、看護助手と話し合い、写真の掲示や申し送りで情報を共有した。また、月に1回のチームカンファレンスにより回復経過などの情報を共有し、ポジショニングの修正や、食事のアプローチの変更が出来ている。入院時33㎝×17㎝あった褥瘡が6㎝×6㎝までに改善している。

<まとめ>カンファレンスや申し送りをすることで情報を共有し、全職種の意識、知識が高まった。その為、ポジショニングのずれや、体位変換の方法の統一化、褥瘡に対する意識を変えることが出来た。治療のみで褥瘡を無くすのではなく、一つ一つの職種が理解し、職務を行うことで、褥瘡の治癒につながったのではないかと考える。カンファレンスを通し、褥瘡だけでなく患者様の様々なニーズに対応できるようこれからも続けていきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-8-3 褥瘡(2)下肢創傷治癒困難症例に対するNSTと褥瘡対策委員会と特定看護師の協働~コラーゲンペプチドの効果~

堺温心会病院

ぼう はるみ

○房 晴美(管理栄養士),井上 江里子,原田 香織,倉田 俊介,五百藏 真史,富沢 健二,正木 浩喜

[はじめに]当院の褥瘡予防管理委員会は、コラーゲンペプチドが含有された栄養補助飲料を褥瘡患者様に提供しその改善効果を得ている。今回、新田ゼラチン社製のコラーゲンプロⓇを使用し、下肢創傷治癒困難症例の早期治癒を経験したので報告する。

[方法]症例1:67歳男性。主病名:糖尿病性腎症、頸椎後靭帯骨化症。平成27年5月19日に当院に入院されたが、同年12月29日に右下腿に褥瘡が発生した。発症231病日後に、経口から腎臓食1/3量

(E470kcal P12g F12g)にコラーゲンプロ®10gを添加したゼリー(E340kcal P12g F13g)を補助食品として提供し、TPNとあわせてE2084kcal P40g F48gの栄養量での介入を行う。症例2:69歳女性。平成27年12月9日に仙骨部褥瘡治癒目的にて当院に入院される。平成29年2月7日にコラーゲンプロ®10gを添加した『一挙千菜®』を補助食品として提供し、経腸栄養剤とあわせてE966kcalP40.4g F36.8gの栄養量での投与を行う。

[結果]症例1:介入28日後に創面積比が34.6%となり、52日後に24.7%、80日後に治癒となった。血清Alb値は開始時2.9から終了時3.0であった。症例2:介入56日後にポケットは消失し創面積比が53.3%となった。血清Alb値は開始時3.4から3.5であった。

[考察]今回使用したコラーゲンプロ®は皮膚線維芽細胞の増殖亢進など、生理活性が報告されているジペプチドPro-Hyp、Hyp-Glyを高含有し、血中に多く発現できるコラーゲンペプチドである。今回の結果より、褥瘡患者に対してのタンパク質の一部にコラーゲンペプチドを使用する栄養管理の方法は、褥瘡早期治癒の一助となると考えられる。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-8-4 褥瘡(2)下肢創傷治癒困難症例に対するNSTと褥瘡対策委員会と特定看護師の協働~陰圧閉鎖療法の効果~

堺温心会病院

いのうえ えりこ

○井上 江里子(看護師),原田 香織,房 晴美,今西 亨,岩城 八重喜,名迫 行康,正木 浩喜,富沢 健二

[はじめに]平成27年10月より看護師特定行為研修が開始された。研修修了者は、創傷管理関連において、壊死組織の除去と陰圧閉鎖療法の実施が特定行為として行うことができる。当院においても、陰圧閉鎖療法を導入することとなった。そこで、下肢創傷治癒困難症例に対し、創傷治癒促進及び患者のQOL(生活の質)・ADL(日常生活動作)の向上を目指し、多職種協働にて、治療方法や処置内容の検討を行ない、その効果を検証する。

[方法]症例67才、男性 主病名:糖尿病性腎症褥瘡委員会介入によるDESIGN-Rによる下肢創部の状態計測症例患者は、腎機能障害、肝機能障害もあり、TPNメニュー(NST薬剤師)と経口食事内容(NST管理栄養士)にて、内容の検討がなされる。その後、陰圧閉鎖療法を4週間使用し、評価する。

[結果]下腿創部の肉芽形成も良好となり創部も収縮した。DESIGN-Rも点数が軽減し、陰圧閉鎖療法終了後、病棟での処置回数も減少した。

[考察]今回の症例患者は、医療療養病棟に入院中であり、下肢創傷治癒困難で治療方法の選択制限されていた。陰圧閉鎖療法は、処置としての算定が可能であり療養病棟においても選択できる治療方法となった。DESIGN-Rも点数が減少したが、治癒には至らなかった。しかし、陰圧閉鎖療法は、創傷治癒促進する上で、有効な処置選択であったと思われる。また、多職種の知恵を集結させ、患者の病態から十分な栄養を検討し、実践することが、創の収縮にもつながったと考える。そして、ドレッシング材の交換や多職種の頻回訪室は、患者本人の意欲向上にもつながり、患者の笑顔もみられ、QOLの向上につながったのではないかと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-9-1 地域包括ケア(3)老健施設における相談員の在宅復帰支援の取り組み~在宅介護スコアを用いてみえた在宅支援の考え~

介護老人保健施設 敬愛荘 支援相談室

とむら じゅんいち

○戸村 淳一(ソーシャルワーカー),伊東 勇哉

《はじめに》地域包括ケアシステムにおいて老健施設は、在宅復帰支援の一端を担っている。当施設においても在宅復帰支援に取組んでいる。そのなかで在宅復帰には家族介護力が関っていると考えた。そこで在宅復帰支援実績を「在宅介護スコア(1992年、宮森正、日本プライマリ・ケア学会誌)」(以下スコア)を用いて在宅復帰と家族介護力を整理し、相談員の役割について考察したので報告する。

《調査方法》1.平成28年10月から平成29年6月までの退所者80名。2.性別、年齢、介護度、家族形態、棟別、退所先、在所日数に分類。3.スコアを入・退所時点で評価。4.在宅復帰群のスコア変化を整理。

《結果》在宅復帰の総数は42名。男性:10、女性:32。平均年齢:85.5、最高齢:101.0、最年少:66.0。介護度1:5、2:10、3:15、4:10、5:2。一般棟31、認知棟11。自宅:39、有料:2、GH:1。同居:36、独居:6。平均の在所日数:277.6、中央値:156.0、最大値:1685.0、最小値:30.0。スコアの平均は入所時12.0、退所時12.3と0.3上昇。42名中7名が上昇、他35名は変化なく在宅復帰した。また、スコアにおける安定的在宅ケア分岐点は11であるが、11以下が14名であった。

《考察》結果から有料老人ホーム等との連携が主ではなく、自宅に戻る支援をしたと評価できる。その他、介護度、家族形態等、半年程度で幅広く在宅復帰支援していることが窺えた。退所時の平均スコアが12.3と決して高値でないこと。11以下が14名在宅復帰したことから取組みを確認すると、インテーク・入所時に退所までと退所後の在宅介護のイメージが共有できる面接を行うことが家族の受入を創出するポイントとなっていた。

《まとめ》在宅復帰支援には、利用者・家族に対し向き合い、ぶれない姿勢を持ち続けることが重要である。そのために面接技術やアセスメント力を高める等、日々の努力と研鑽が必要であると考える。今後、地域包括ケアシステムの中核を担う施設を目指していきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-9-2 地域包括ケア(3)在宅強化型老人保健施設の維持 ~在宅復帰率向上への取り組み~

老人保健施設ひまわり 事務部支援・相談課

かみや まさとし

○神谷 雅俊(介護支援専門員)

I はじめに地域包括ケアシステムの構築が急がれる中、老人保健施設(以下老健)に期待される役割は「在宅介護の拠点となること」と言える。「在宅強化型老健ひまわり」は、入所・デイケア・訪問リハビリ・ショートステイを有している。また、医師、看護師等、様々な専門職による、多職種協働の典型的施設であり、すでに地域の中で無くてはならない存在となっている。今後も「存続」が至上命題であり、従業員は、それをモチベーションとし、日々のケアに邁進している。しかし、平成28年9月頃から、在宅強化型の主な算定要件「在宅復帰率」の急激な低下があり、存続が危ぶまれた。今一度、在宅復帰率と向き合い、向上にむけた取り組みを行った結果を報告する。

Ⅱ 方法1 安定した在宅退所者数の確保 1) 本人・家族への事前説明の徹底 2) 長期化した入所者の中で、在宅可能な入所者の掘り起し 3) 受け入れ施設の洗い出し、小規模多機能ホーム活用 4) リピーターの確保(レスパイト入所)2 入院者数の抑制 1) 施設全体の課題とし、繰り返し周知 2) 協力医療機関との連携強化 3) 各専門職間の情報共有の強化

Ⅲ 結果平成28年9月末(55.7%)、平成28年10月末(50.7%)、平成28年11月末(50.0%)と、減少の一途をたどった在宅復帰率。取り組み後は、平成29年1月末(54.5%)、平成29年2月末(57.8%)、平成29年3月末(63.9%)、平成29年4月末(74.5%)と上昇傾向となる。

Ⅳ 考察H29.1月以降は、入院減少に伴い、徐々に在宅復帰率が向上。在宅強化型を維持するためには「在宅退所者を一定数確保しつつ、入院数を限りなくゼロに近づける」ことが重要である。今回、在宅復帰率向上のために、真新しい取り組みをしたわけではない。従業員全員で、在宅復帰率と向き合い、できる全てのことを行い、一つ一つの精度をあげる取り組みをしたに過ぎない。今後も、在宅復帰率の維持を、施設全体の課題と捉える体制を強固とし「在宅介護の拠点」として存続し続けて行きたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-9-3 地域包括ケア(3)継続した在宅復帰機能強化加算算定のための取り組み及び今後の展望

福井リハビリテーション病院 地域連携室

かわばた さち

○川端 紗知(社会福祉士),木下 真妃枝,山田 絵莉

【はじめに】当院は、医療療養病床115床、介護保険病床36床(H29年6月現在)からなる療養型病院である。当院が属する医療法人穂仁会 大滝グループには大滝病院(一般病棟、回復期病棟、地域包括ケア病棟)、福井ケアセンター(老人保健施設)、その他在宅サービスを有しており、それぞれの強みを生かしたグループ内連携をとっている。

【目的】療養病床における在宅復帰機能強化加算(以下、在宅復帰加算)において、平成28年度から『自院または他院の一般病棟・地域包括ケア病棟から入院し、在宅退院した患者が当該病棟の年間平均入院患者の10%以上』という要件が新たに追加された。当院への転院依頼は長期療養目的の場合が多く、医療度も高い患者様がほとんどである。そのため転院から在宅退院へつながるケースが極めて少ない中で、在宅復帰加算算定のために1年間行ってきた取組みを見直し、今後の計画的な算定を目指した課題を探る。

【方法】当院では毎月1回病床管理委員会を開催し、ひと月の入退院数の推移・次月の病床管理について検討を行っている。そこで集計している平成28年度(H28.4.1 ~ H29.3.31)の入退院数のデータ(以下、病床管理)を見直す。

【課題】急性期病院から在宅退院したケースは退院へ向けたサービス調整目的での転院が多く、その医療度や要介護度は低いことが分かった。今後は医療度の高い患者様に対しての在宅復帰支援が大きな課題といえる。当グループには在宅サービスも充実していることが強みである。MSWとしてそれらを武器にしながら、家族に対して早期から在宅退院への可能性をはたらきかけていきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-9-4 地域包括ケア(3)

「家に帰りたい」から始まる~在宅復帰の可能性を多職種で明確化するために~

湖東病院 看護部

きんぱら のりこ

○金原 紀子(看護師)

「はじめに」当院では「最期までここで」というご家族様が多く、看取りに重きをおいてきたが、「地域包括ケアシステム」の推進を受け、今後は在宅復帰にも目を向ける必要がある。病状は回復しても入院が長引くにつれ、ADL低下など病前とは異なった状態になりやすく、在宅への受け入れが難しくなる現状がある。今回、「家に帰りたい」を『家に帰れる』にする為の取り組みをしたので報告する。

「方法」①在宅復帰までの流れを見直し、在宅支援パスを作成②自宅の生活力・介護力を把握し、共に考えるアセスメントシートを作成③在宅復帰を見据えた、他職種と連携した指導の実施

「結果」「家に帰りたい」には『社会復帰』『家族』『看取り』など様々な思いがあった。『家に帰れる』を実現するには、在宅生活を理解する為のアセスメントを実施し、不安なく帰る為の指導や調整を行うことで、関わる人が同じ方向性・同じ思いになることが重要だと感じた。ADL低下を抑え、入院前の状態に近づける為には早い段階で在宅復帰のアセスメントをし、疾病の治療と同時進行で在宅復帰に向けて取り組む事が大切である。また、看取りの為の退院にはスピーディーさをより求められた。

「考察」在宅復帰はご本人のADLとご家族様の介護力にかかってくる。どの部分にどんなサービスを提供すれば在宅復帰の可能性が実現するかを見出し、早期から多職種連携したこまめな情報共有と指導検討を繰り返し、在宅生活のイメージが実現するように支援する必要がある。住み慣れた地域でその人らしい暮らしを継続できるように、「ときどき入院、ほぼ在宅」をキーワードとし、当院はその通過点としての位置づけであることを認識し、ご本人ご家族様の想いに寄り添う。「生活力・介護力」に合わせ、在宅復帰の不安を解消出来る様に努め、長く安全に家での生活を維持できるよう支援していきたいと思う。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-9-5 地域包括ケア(3)高齢者の在宅復帰に向けて地域包括ケア病棟看護師が行う支援―社会福祉資源の活用に焦点を当てて―

細木病院

ももた えな

○桃田 恵苗(看護師),山本 美里,西山 若菜,藤本 あゆみ

I目的:地域都市にあるケアミックス型のA病院では、2014年に地域包括ケア病棟を開設した。高齢者世帯の患者・家族の退院に向けては計画的な支援が求められるが、実際に在宅サービスの導入や多職種の連携に対して看護師がどのような関わりを行っているのかは明らかにされていない。本研究の目的は、地域包括ケア病棟の看護師が高齢者世帯の患者・家族に対し、在宅サービス導入や多職種連携として行っている支援の内容を明らかにすることである。Ⅱ方法:臨床経験5年以上、地域包括ケア病棟での経験1年以上の7名の看護師を対象とした。期間はH28年8月~ 10月で、半構成的質問用紙を用いて面接を行い、退院支援として行っている内容について語ってもらった。内容は逐語録としてデータ化し、KJ法で分析した。細木病院倫理規定に則り承認を得た。Ⅲ結果:看護師が行う支援として、入院時から在宅復帰を意識して情報収集をすることを示す<入院時から在宅復帰を意識しておく><最初に患者の全体像をつかむ>、カンファレンスや退院前訪問を活用することを示す<地域包括ケアカンファレンスで在宅復帰へのゴールや役割分担を決める><退院前訪問で在宅への不安を和らげる>、院外の在宅スタッフを含めた多職種との情報共有や役割分担を示す<日頃から多職種との連携を心がける><在宅サービスの情報を整理し調整する><在宅スタッフと情報共有を密にする>、緊急時受診体制や専門職介入を調整する<緊急時の体制を整える><医療度の判断に合わせて医療専門職の介入を調整する>の9つのカテゴリーが明らかとなった。Ⅳ考察:地域包括ケア病棟の看護師は、入院時から在宅復帰を意識して患者、家族の全体像の把握に努め、カンファレンスを利用し、多職種と連携をとりながら役割分担や専門職の介入を図っていた。今後、地域包括ケア病棟看護師として求められる退院支援の技術の確立が望まれる。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-9-6 地域包括ケア(3)地域包括ケア病棟における自宅退院の為の要因の検討

多摩川病院

さくらい まさき

○櫻井 真咲(理学療法士),三浦 亜純

[はじめに]地域包括ケア病棟(以下包括病棟)は在院日数が短く、入院当初より自宅退院の可否を判断する必要がある。当院では、入院患者の45.9%が自宅に退院しており、その要因を日常生活動作の特徴から検討することで、退院先の予後予測に役立つと考える。

[方法]対象は2014年7月から2016年6月までの2年間に当院包括病棟を入退院した患者の内、特別養護老人ホームや当院医療療養病棟からの入院、レスパイト入院、死亡退院を除いた延べ297名(男性161名、女性136名、平均年齢79.2±10.2歳)とする。検討項目は入院時の機能的自立度評価法(以下FIM)、Barthel Index(以下BI)とし、自宅退院患者群と自宅以外への退院患者群をMann-Whitney U検定で比較し、有意差が出た項目を独立変数、自宅退院の有無を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った。(有意水準5%)

[結果]2群間の比較では全項目で有意差が出た。自宅退院に影響する変数はFIM合計、FIM運動項目合計、FIM食事、FIM理解、FIM問題解決、BI整容、BI移動、BI階段昇降、BI排便管理が選択され、FIM運動項目合計、FIM問題解決、BI整容、BI移動、BI階段昇降、BI排便管理で有意な結果となった。判別的中率は73.4%であった。

[考察]入院時の希望でトイレ自立を望まれる方が多い為、排泄関連動作が結果に反映されると予測したが、入院時評価からは排泄関連動作以外の項目が多く抽出された。入院時には出来なかった排泄動作を退院時には獲得している可能性が示唆され、今後は退院時のFIM、BIも踏まえて検討する必要がある。また身体機能の移動能力および認知機能の問題解決が有意な結果となり、これらが高いことを踏まえたうえで、自宅退院を目標とした包括病棟への入院に繋がっている可能性がある。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-10-1 地域包括ケア(4)看護管理者が行うベッドコントロール会議の効果~病床管理と患者把握の重要性~

宮本病院

ふじわら さとみ

○藤原 里美(看護師),渡辺 教子,山口 洋子

【はじめに】 平成26年4月より地域包括ケア病床20床を設置し平成28年5月から32床に増床となり退院支援が一層重要となった。自宅退院できる患者が居る一方、医療の必要度が高い患者、重度認知症患者、退院準備に時間が掛る患者等で療養病棟や精神科病棟への転棟患者は6割となっており、ベッドコントロールが重要な課題となっている。医師や各部署責任者等による病床会議を週1回実施しているが入院予定患者情報と、入院病棟の決定が中心となっており地域包括ケア病棟においては各病棟の情報が不足していた。そこで看護管理者によるベッドコントロール会議(以下看護部ベッドコントロール会議)を実施することで、在宅復帰率80%以上を維持できている為、その取り組みを報告する。

【期間】平成28年5月~平成29年5月【方法】1、月曜日・金曜日の週2回看護部長・師長によるベッドコントロール会議の実施①空床状況 ②退院予定、③転棟・転院予定 ④重症者 ⑤入院予定の把握2、毎月の在宅復帰率の集計 

【結果】在宅復帰率 平成28年 5月93.3% 6月83.3% 7月100% 8月89.47% 9月95% 10月88.2% 11月100% 12月95% 平成29年 1月87.5% 2月88.9% 3月92% 4月88.2% 5月88.9%在宅復帰率70%は大きく上回ることが出来た。

【考察】 看護部ベッドコントロール会議の実施は、各病棟の空床状況が把握でき、転棟計画がたち更に、師長間の連携が密になり、会議以外でもリアルタイムな情報が入る。このことが円滑な病棟運営に繋がり在宅復帰率へ大きく影響したと考えられる。また、転棟が必要な患者の情報を話すことで症状にあった病棟選択(内科療養・精神科病棟)ができる。そして必要に応じて、転棟先の師長が患者訪問を行い詳しい情報を収集し、患者・家族と事前に顔を合わせることも出来る為、転棟への不安軽減にも繋がるものと考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-10-2 地域包括ケア(4)当院における地域包括ケア病棟の開始とその後の展開について

花川病院 地域連携相談センター

あきもと たえ

○秋本 妙(ソーシャルワーカー)

【はじめに】当院は札幌市に隣接する石狩市に所在し、回復期リハ病棟120床(回復期リハ病棟入院料1)・医療療養病棟60床(療養病棟入院基本料2)を有する病院である。「北海道内最大規模の回復期リハビリテーション病床を有する病院として、確かな医療、質の高いリハビリテーションを提供することで皆様の心豊かな人生を支援すること」を理念とし、医療療養病棟においてもリハビリテーションを提供しながら療養生活の継続や今後に向けた様々な支援を行ってきた。平成28年11月より、医療療養病床の半数である30床を地域包括ケア病床に転換し、これまで以上に地域のニーズに応え、住み慣れた地域・“在宅生活”を意識した支援が求められるようになった。

【目的】地域包括ケア病棟入院基本料2でスタートした地域包括ケア病床のスムーズな稼動と、医療療養病床からの転換、今後の展望について報告する。

【方法】医療療養病床及び地域包括ケア病床転換後の入退院患者数・退院先・在宅復帰率・在院日数・相談元等を集計し、病棟・MSWの取り組みと照らし合わせながら集計結果について比較・考察を行う。

【結果と考察】地域包括ケア病床転換に向けて、医療区分1の患者の退院支援を優先的に行うことで、医療療養病床と地域包括ケア病床の患者層のすみわけを行い、病棟全体としての在院日数の短縮化に繋がった。また、病棟・MSWの取り組みを通して、スタッフ全体が60日を意識した展開の速い退院支援を行うように変化している。併せて、地域の事業所・他医療機関に病床転換の周知を行ったことで地域のケアマネジャー・施設からの入院相談件数が増加した。

【今後の展望】地域包括ケア病棟入院基本料1を目指して、早期退院支援の体制の定着を図ると共に、地域や他医療機関から必要とされる病院を目指して、関係機関との連携を深め、チームアプローチの基盤を整え、在宅復帰支援を進めていきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-10-3 地域包括ケア(4)地域包括ケア病棟の開設・維持の達成と苦悩-開設後1年の評価-

八千代病院 看護部

たけひろ なおみ

○竹廣 直美(看護師),迫井 恵美,甲斐 博隆,川本 郁美,白池 惠美子,井筒 淳子

はじめに八千代会は療養型病院と高齢者住宅を有する1622床の施設です。当院は介護療養病棟231床・医療療養病棟280床のうち40床を地域包括ケア病棟、60床を入院基本料Ⅰへ転換した。医療療養病棟から地域包括ケア病棟の転換準備と施設基準の維持、その苦悩について報告する。発表にあたり当院の倫理委員会にて承認を得た。方法地域包括ケア病棟への転換はトップの経営方針の説明とコンサルタントの活用・看護部は施設基準等の周知と院内外の連携に力をいれた。

【施設基準】①人員配置は 評価表や年齢・勤務条件等他病棟とのバランスや人員計算に苦慮しながら看護師の3割を5 ヶ月で異動し届出1ヶ月前に配置完了。②患者配置 は多職種での検討会議で移動基準(在宅復帰の可能性・医療区分等)を作成したが、グループ内の退院支援の認識の違い、患者・家族の負担、開設直後で不慣れな地域連携室等の理由で 対象者の選択が難航し医師・師長が主体的に説明し患者・家族の同意を得、計画的に移動できた。③ボードを導入した空床管理はこれまでの紙面に比べ入退院・転棟患者が一目で解り在宅復帰の管理を容易にした。さらにコンサルタントからの助言や届出様式に基づく実績管理表は日々と毎月の在宅復帰率・看護必要度の把握と維持も容易にした。

【院外への連携】看護師長の他施設への挨拶・DVDでの紹介など顔の見える交流は医療・介護を見据えた看看連携に繋がった。結果転換準備を始めた当初は在宅復帰に繋がらない患者が多かったがグループ内の連携による計画的な退院支援で1 ヶ月早い届出に至る。終の住処だった療養病棟の平均在院日数は1年から45日と減少し施設基準を維持している。苦悩したグループ内の退院支援の認識の違いは、各々の役割の認識とチーム医療も定着してきた。H30年春 199床が移転するが今後、医療の動向を把握し施設基準の維持と看護者として患者に寄り添った質の高いチーム医療の提供が重要。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-10-4 地域包括ケア(4)療養病棟から地域包括ケア病棟への転換~看護師の役割変化へのアプローチ~

定山渓病院 看護部・2B病棟

うめづ みか

○梅津 光香(看護師),倉岡 清美,太田 晴美,桐生 眞由美

【目的】 地域包括ケアネットワークの構築を基盤とした「在宅医療の推進」が加速する中、当院は慢性期病院の果たすべき役割を検討し、地域包括ケア病棟2を開設した。特殊疾患病棟、医療療養病棟のみで構成された当院における、病棟転換に向けた取り組みについて報告する。

【地域包括ケア病棟転換の経過】地域包括ケア病棟への転換は、療養病棟における生活支援から、在宅復帰を目指す退院支援へと変化する。病棟は、学習会の開催や業務改善を行い、地域包括ケア病棟へのスムーズな転換に向けて準備を行った。看護体制は、質の高い退院支援を目指し、固定チームナーシングへと変更した。しかし、看護師は病棟転換後も、役割変化が認識できず、入院加療のゴールの早期設定や退院支援が十分に行えない状況にあった。退院支援に関する知識の向上と、役割を実感できる場面の経験は、地域包括ケア病棟で看護実践をする上で重要であると考えた。そこで、初回カンファレンスへの受け持ち看護師の参加や、家屋調査に同行する機会を設定した。患者が必要とする社会資源を知り、生活場面を見学することは、在宅生活のイメージが出来るように変化し退院支援における看護師の役割を認識できるようになった。地域包括ケア病棟では、限られた入院期間で継続した看護ケアを提供し、患者の身体能力の向上を図りながら、退院における課題を解決し支援していくことが必要である。今後は、退院支援プロセスの可視化に向け、アセスメントシートや退院支援パスの作成・活用を検討し、チームアプローチの充実にむけ取り組んでいきたい。

【考察】患者と家族が望む在宅復帰というゴールに向け、退院後のイメージを描きながら退院支援を行うことは重要であり、看護師は患者のケアを行うとともに、総合的なコーディネーター役を担っている。看護師の果たす役割の変化を認識し、院内のみならず地域において多職種協働を進めていくことが必要である。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-10-5 地域包括ケア(4)当院の地域包括ケア病棟の現状と課題

志田病院

はらだ あけみ

○原田 明美(社会福祉士),大石 浩隆,志田 知之

【はじめに】当院は回復期リハビリテーション病棟28床、地域包括ケア病床12床、療養病床8床からなる計48床の小規模病院である。平成27年1月、療養病棟のうち8床を地域包括ケア病床に移行した。平成28年4月、療養病棟を地域包括ケア病棟と改め、地域包括ケア病床を8床から12床へ増床した。地域包括ケア病床は、ポストアキュート、サブアキュート等の受け入れ機能と、在宅・生活復帰支援という機能を持ち、地域包括ケアシステムを活性化する機能が期待されている。当院の地域包括ケア病床はそのような機能を充分に発揮しているか検証し、課題を含め報告する。

【方法】平成27年1月1日~平成29年3月31日のうち、当院地域包括ケア病床に入院した患者299名を対象とした。①年齢・性別、②居住地③入院元と受け入れ機能、④入院目的と平均在院日数、⑤疾患別患者割合、⑥在宅復帰率と退院先、⑦要介護度と入院前後の利用サービス内容等を調査した。

【結果】 サブアキュートでの受け入れ69%、ポストアキュート29%、その他6%であった。在宅復帰率は92.7%で、サブアキュート疾患別割合では、肺炎が44%と最も多かった。

【考察・まとめ】地域包括ケア病棟は全国的にはポストアキュートの入院が多い中、当院は在宅から入院となるケース、サブアキュートでの入院が多く、地域密着型の地域包括ケア病棟であることが確認された。当院は、在宅療養支援病院であり、当院の地域包括ケア病棟は、地域住民が安心して在宅療養を継続するために、重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、病床が少ない中、受け入れが困難な状況があるため、いかに病床を有効活用し行くかが今後の課題である。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-10-6 地域包括ケア(4)当院における地域貢献活動への取り組み

永生病院

のぐち えりこ

○野口 江利子(看護師),四宮 美代,近藤 弘子,香川 恭子

【はじめに】当院が存在する「まんのう町」は、人口約2万人で高齢化率35%をこえ人口減少傾向にある。独居や老夫婦世帯が増加し生活や健康面のサポートの必要性が高くなっている。地域包括ケアの観点より高齢者を地域で支え合い住み慣れた土地で暮らしていけるように住民に向けての働きかけについて考え取り組んだ結果を報告する。

【取り組み】地域の小学校の運動会や自治会の老人会などに参加し、地域住民と触れ合うと共に健康に対する指導などを行う。

【結果・考察】看護師と介護福祉士を中心に多職種で構成されたメンバーが、近隣の小学校の運動会に参加し、昼の休憩時間に水分補給の大切さについてのパネル展示や資料を配布した。経口補水液の試飲を行い、大人も子供も興味を持って立ち寄って頂き説明を行うことが出来た。運動会参加の縁で、小学校より参観日の講演依頼があり、保護者からの希望により子どもの感染症についての講演や、認知症について正しく理解してもらうため、認知症の症状について良い接し方と悪い接し方を劇で分かりやすく説明し理解して頂けたと考える。自治会の老人会の参加では健康体操やうちわ製作を行い、作業の途中で生活状況や活動に対する希望など聞き取りを行う事ができた。

【まとめ】病院の行事である夏祭りなどに地域住民の参加は頂いていたが、こちらから運動会や自治会行事に出向くことにより地域住民の方に顔を覚えてもらったり触れ合うことが出来た。又、地域にとっても病院が近い存在となり、病気や健康に対して関心を持ち知識を深められるのではないかと思う。今後も地域の方が何を求めているかを把握し、活動と参加の場を提供し,地域に密着した病院として健康や生きがいに繋がるよう取り組んでいきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-11-1 地域包括ケア(5)地域包括ケア病棟における集団リハビリテーションの効果検証

博愛記念病院

やなぎもと まり

○柳本 麻里(作業療法士),池村 健,武久 洋三

[はじめに]リハビリテーション(以下、リハ)を取り巻く状況は目まぐるしく変化し、平成26年度には地域包括ケア病棟が新設されリハが包括となった。これは、リハが入院治療にとって当たり前のものとして考えられてきたということであると共に、療法士は自らの提供するリハの成果を求められているということである。今回、地域包括ケア病棟で離床の取り組みの一環として集団リハを取り入れ、取り組み実施前後での比較を行い、効果検証を行ったので以下に考察する。

[方法]地域包括ケア病棟に平成27年10月1日~平成28年3月31日に入退院した集団リハ非実施の対象群126名、平成28年4月1日~ 9月30日に入退院し、集団リハを提供した実施群102名について、①~③の比較を行った。①2群間で年齢、性別、在棟日数、MMSE利得、個別リハ実施時間、FIMの各項目における利得ならびに効率を比較した。②有意差を認めた項目について、多重ロジスティック回帰分析を行った。③集団リハ実施群において離床時間を従属変数とし①の各項目を独立変数とした重回帰分析を行った。

[結果]①FIM表出利得(p<0.05)、FIM社会的交流利得(p<0.001)について実施群で有意差を認めた。②社会的交流において有意差を認め(p<0.001)、オッズ比は1.637。③T ‐ FIM効率、問題解決能力利得、社会的交流利得において有意差を認め(p<0.001)、決定係数は0.53。

[考察]ヒトは集団の中で生活を営んでいるが、入院中は個別的、単発的なかかわりが多い。高齢者では自らコミュニケーションをとる機会は少なく、受動的になりやすい。今回、集団を用いた他者との交流を促したことでT-FIM効率、社会的交流利得が得られたと考える。早期ADL向上、早期在宅復帰を目指すためには従来の個別リハビリのみならず、集団的要素を取り入れた活動が必要不可欠であると考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-11-2 地域包括ケア(5)地域包括ケア病棟での生活リハビリ、集団リハビリの導入が患者に与えた影響

金上病院 リハビリテーション科

ふじた みのる

○藤田 実(理学療法士),古谷 壱成,小野 裕美恵,佐藤 輪未

1.はじめに 当院は平成27年4月に地域包括ケア病棟を開設した。当初は個別リハビリ以外での介入が少なかったが、その後在宅生活支援を目的に積極的に排泄、入浴、食事動作に直接介入した。さらに離床時間・活動時間の延長を目的に集団活動を導入した。今回その取り組みが患者に与えた影響を検証した。2.目的 病棟での生活リハビリや集団活動が患者の認知・運動機能にどの程度効果があったのかをFunctional Independence Measure(以下、FIM)の点数や退院先から考察する。3.方法 入院時FIM運動項目65点以下で、個別介入のみだった平成27年4月~ 6月に入院した群(A群:27名)と、生活介入開始後として平成28年10月~ 12月に入院した群(B群:24名)の利得(退院時FIM ‐ 入院時FIM)・効率(FIM利得/入院期間)を比較。A群とB群で入院時と退院時のFIM得点の変化、目標の退院先の達成数を調査。統計学的検討は、マン・ホイットニ検定とスピアマン順位相関係数検定を用い、いずれも危険率5%未満を有意差有りとした。これらの研究はすべて、当院の倫理審査委員会の承認を得ている。4.結果 入院時より退院時のFIM得点が低かった患者数:A群5名・B群0名、変化がなかった患者数:A群2名・B群2名、高くなった患者数:A群20名・B群22名。入院時に定めた退院先へ行けた患者数:A群27名中24名、B群24名中24名。5.考察 FIM利得・効率に有意な差は出なかった。患者一人ずつのFIM利得を検証すると、A群のFIM得点が下がった5例のうち、3例は入院時に定めた退院先へ帰ることが出来なかった。B群はすべての患者が入院時に定めた退院先へ帰ることができ、得点が下がった症例はなかった。生活リハビリ・集団活動により病棟での関わりを増やしたことが定めた退院先へ帰れた要因なのではないだろうか。今後は関わりの質を検討しFIM利得向上・在宅復帰のみならず社会復帰を目標にリハビリ職の役割を確立していきたい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-11-3 地域包括ケア(5)地域包括ケア病棟における集団起立訓練導入がADLに与えた影響

栗林病院

いしまる ひろあき

○石丸 博章(理学療法士)

【はじめに】当院は平成28年3月から地域包括ケア病棟を開始し、地域包括ケア病棟(20床)、医療療養病棟(104床)を兼備えた病院である。慢性期病院である当院では個別訓練以外の時間は臥床されている事が多く、在宅復帰に向けた取り組みを行った。集団起立訓練を導入、一定の成果が得られたのでここに報告する。

【対象者】主に整形外科疾患の入院患者18名平均年齢86.8±8.4歳。さらに、起立動作に関連があると推測されるFIM運動項目7項目の総合得点を①群(低得点グループ入院時FIM1 ~ 24点)②群(高得点グループ入院時FIM25 ~ 49点)の2グループに分類し、③群(起立訓練非実施者グループ・個別訓練のみ)と比較、検証した。

【方法】起立-着座動作を毎日、昼食前に10回×5セット。評価は大腿周径、timed up and go test(以下TUG)、10m歩行を実施。ADL評価では立ち上がり動作に関連があると推測される機能的自立度評価(以下FIM)運動項目7項目の評価を行った。

【説明と同意】対象者においては研究の目的・趣旨を説明し、同意を得た。

【結果】大腿周径は①群、②群、③群、共に著明な変化は認められず、TUGは①群では平均8.97秒②群では4.1秒、10m歩行では①群平均6.17秒②群1.1秒の改善が認められた。③群ではTUG、10m歩行共に改善は認められなかった。FIMおいても①群平均8.3点②群4.2点の改善が認められたが、③群は1.3点しか改善がみられなかった。

【考察】立ち上がり動作は運動学的に、重心を前方、上方に移動する動作で、立位に向うに従い、支持基底面は減少、活動性は高くなる。しかし、支持基底面が減少する事は、バランスを取る為に筋を協調的に活動させる必要がある。よって立ち上がり動作は静的な座位、立位に比べ、数種類の筋をより協調的に活動させる必要がある。この事から、本研究における集団起立訓練の実施によって動的バランス、歩行速度共に向上し、ADL改善にも繋がったのではないかと考えられる。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-11-4 地域包括ケア(5)認知症初期集中支援チームの取り組み

1 富家病院 臨床心理室,2 富家病院

ねおい かずはる

○根生 一治(臨床心理士) 1,鈴木 敦子 1,山本 恵 1,富家 隆樹 2

【はじめに】国の新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略・H27年1月27日)では、認知症高齢者が住み慣れた環境で自分らしく暮らせるような地域づくりの推進に関する具体的な目標がいくつか公表された。その施策の1つとして、当院が位置する埼玉県ふじみ野市では、H27年度に「認知症初期集中支援チーム」が設置され、認知症の症状があるもののサービスや医療機関とつながりが無い方や、つながりはあるがBPSDなどで対応に苦慮している方への介入を行っている。現在チームには、医師(認知症サポート医)・作業療法士・保健師・社会福祉士・臨床心理士などが所属し、そのうち医師と臨床心理士が当院職員である。

【目的】本研究ではこれまでの取り組みを紹介するとともに、介入事例を振り返り、今後の課題を明らかにする。

【事例紹介】事例1女性 90代後半。市役所を連日訪れるが、短期記憶低下の為か来訪目的を伝えられず、対応に苦慮した市職員からの相談。内縁の夫(70代後半)から買い物の間違えなどの日常生活の失敗を叱責されたりすることも判明。行動観察や本人との関わりの中で、市役所来訪目的を特定したり、認知症サポート医による認知症相談会への参加を促したりする中で、周囲の見守り体制が構築されたことで、包括へ支援を引き継いだ。

事例2男性 70代前半、アルコール性認知症。利用中のデイサービスの特定職員を犯罪者扱いして、デイ利用中に監視行動を行い、デイ運営に支障をきたしていると担当ケアマネージャーからの相談。介入経過の中でデイ利用は中止となるが、チーム員の訪問・チーム医の往診を行い、妻のフォローを並行して実施。病院の定期受診が可能となり終結した。

【まとめ】様々な困難が混在する事例では、解決すべき問題が複数ある。チームの介入で解決可能なことも複数あるが、事例の「本当の問題」と「ゴール」は何なのかを共有することが、チームとして活動する為に重要であると考える。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-11-5 地域包括ケア(5)

「できる旅」~要介護の方でも旅行を楽しめるための取り組み~

1 永生病院,2 クリニック0,3 永生クリニック

あらお まさふみ

○荒尾 雅文(理学療法士) 1,袴田 真幸 2,松井 佳奈美 3,藤木 雄太 3

はじめに:慢性疾患の方は麻痺や変形、痛みなどを慢性的に抱えた状態で長く生活を送っている。そして当然、その障害により歩くことなどが制限され、外出することが困難な方が多い。我々はこのような方々を旅行にお連れすることを永生会独自の「できる旅」という取り組みとして行っている。本発表ではこの旅行の内容と効果、そしてその意義について報告したい。旅行の内容:本旅行は平成18年から開始し、現在まで1~2回/年、計17回実施している。対象は当法人の通所、訪問、外来サービスを利用いただいている要介護者のご本人とそのご家族であり、現在までの述べ参加人数はご本人295名、ご家族106名であった。旅行の移動手段はリフト付き大型バスを利用し、旅行先は河口湖や鬼怒川などの魅力ある場所を毎年変更し選択した。旅館や観光先は下見を行い安全に移動できることや車椅子でも楽しめることを確認して旅行を実施した。また旅行の中身には、フェリーに乗ることや、トロッコ列車に乗るなど、多少の挑戦ができることも考慮に入れて企画した。旅行の効果:「できる旅」の効果判定は、アンケートで満足度や感想といった内容を聞き取りした。また参加する個人毎に、現在サービスで関わるスタッフと共に旅行の目標を立て、それが達成できたかを確認した。また旅行の最後にご本人、家族に、今後ご本人、家族のみで旅行に行く自信がついたか?を聞いた。旅行の意義:「できる旅」は純粋にご本人・家族に旅行を楽しんでいただくことが目的の一つであるが、例えば旅行中、バスの乗り降りにチャレンジするといった旅行先での様々な体験から、さらなる機能向上を図ること、またこの旅行に参加することで自信をつけていただき、今後ご家族やお友達と旅行に行けるようにすることも目標にしている。本発表では「できる旅」の具体的な内容をご紹介すると共にその意義や効果についても報告したい。

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第25回日本慢性期医療学会 in 仙台4-11-6 地域包括ケア(5)地域包括ケア病棟における看護師の家屋訪問参加の取り組み~病院完結型から地域完結型への在宅意識の変化~

世田谷記念病院

きたむら なみ

○北村 奈巳(看護師),稲生 裕也

[はじめに]地域包括ケア病棟では地域包括ケアシステムの一助としての機能を有し、在宅への復帰を目標に医療を行う特徴がある。地域包括ケア病棟の看護師の大半は急性期病棟や療養病棟経験を有する者が多く、在宅を想定した看護ケアに課題がある。家屋調査同席により在宅のイメージを獲得し、患者家族の意思決定支援、環境設定や在宅医療の導入に役立つと考え、看護師同席の家屋調査に取り組み、効果を調べた。

[研究方法]①地域包括ケア病棟でセラピストの家屋調査に看護師が同席するよう調整②先行研究のカテゴリー分類を利用したアンケート作成③②から家屋調査同席の効果を地域包括ケア病棟と回復期病棟で比較④同席経験の有無での差を比較する

[研究対象]地域包括ケア病棟看護師22名 回復期病棟看護師12名

[結果]方法③ではカテゴリーでの差異はなかった。方法④では経験者の方が下方修正されている結果となる。

[考察]地域包括ケア病棟においても家屋調査に看護師が同席することの効果を実感出来ている。回復期との比較で差が出なかった事からも意義や効果に対する認識は同じ水準と言える。家屋調査経験者との比較では、想定された効果より「家族の安心」の点で看護師の役割のカテゴリーでの効果が低く評価されており、家屋調査での看護師の役割は「継続看護」、「生活をイメージする」で実感され、特に「多職種と繋がりの強化」が高く評価されている。このことから地域包括ケア病棟の看護師は、地域完結型を達成するためにチームアプローチの重要性、地域包括ケアシステムへの協働を意識し実感したことで高値を示したと推察する。

[終わりに]地域包括ケア病棟の看護では治療と生活を在宅へ繋げることが重要と考える。家屋調査での看護師同席は在宅への意識の向上に留まらず、地域包括ケア病棟看護の理解として必要な取り組みであった。今後は看護師独自の役割を持った家屋同席ができることを課題と捉えた。