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1087 ●症 要旨:症例は 60 歳,女性.3 カ月前から徐々に増悪する左前胸部から腋窩へかけての疼痛を主訴に近医受 診したところ,胸部 CT にて,縦隔リンパ節腫大を認めたため,精査加療目的で前医入院となった.ACE も上昇していたことから,サルコイドーシスが疑われたため当院紹介受診.気管支鏡検査施行し,肺胞洗浄 液の所見および経気管支肺生検の組織からサルコイドーシスと診断した.また,FDG-PET CT で胸髄に集 積を認めたため,胸椎 MRI 施行したところ C7~Th8 レベルの硬膜外と推測される部位に肉芽腫病変を認め た.この病変による脊髄圧排が,左前胸部から腋窩へかけての疼痛の原因と考えられた.ステロイド内服治 療開始したところ,病変の縮小と疼痛の著明な改善を認めた. キーワード:神経サルコイドーシス,胸痛,肉芽腫 Neurosarcoidosis,Chest pain,Granuloma サルコイドーシスは非乾酪性の類上皮肉芽腫形成を特 徴とする原因不明の疾患である.サルコイドーシス病変 は全身のあらゆる臓器に病変が形成される可能性がある が,その中で神経サルコイドーシスは全身性サルコイ ドーシスの 6.4% に出現する比較的稀な病態である 神経サルコイドーシスの臨床病型分類は,中枢神経型と 末梢神経型に分類され,更に中枢神経障害を実質内肉芽 腫病変,髄膜病変,水頭症,血管病変,脳症の 5 つに分 類されている .今回我々は,数カ月持続する胸痛にて 発症した脊髄病変型神経サルコイドーシスの 1 例を経験 したので報告する. 患者:60 歳,女性. 主訴:左前胸部痛,左腋窩痛. 既往歴:虫垂炎:20 歳代に手術 卵巣囊腫:40 歳代 に手術. 家族歴:母 レックリングハウゼン病,悪性リンパ腫, 高血圧,脳出血.妹 レックリングハウゼン病,脳出血. 喫煙歴:なし. 飲酒歴:なし. 現病歴:2008 年 4 月から左前胸部から左腋窩にかけ て疼痛を自覚し,6 月頃より徐々に悪化傾向を認めてい た.7 月に近医で施行された胸部 CT にて縦隔リンパ節 腫大を認められたため,精査目的にて前医入院.血清 ACE が 27.6IU! l と上昇していたことからサルコイドー シスを疑われ,9 月に精査加療目的で当院紹介入院と なった. 入院時現症:身長152.7cm,体重54.4Kg(BMI=23.3). 体 温 36.6℃,血 圧 148! 84mmHg,脈 拍 73 拍! 分,SpO2 95%(room air),意識清明,皮疹は認めず,表在リン パ節は触知しなかった.呼吸音正常,ラ音を聴取せず, 心音も異常を認めなかった. 入院時検査所見(Table 1):入院時,ACE は基準値 内であったが,リゾチームと β-2 ミクログロブリンは上 昇しており,ツベルクリン反応は陰性であった. 動脈血ガス所見(room air):pH 7.417,Pao2 91.2 mmHg,Paco2 35.7mmHg,HCO3 22.6mmol! l,Sao2 97.2%,BE -1.0mmol! L. 呼吸機能検査:VC 2.66L,%VC 111.3%,FEV1.0 1.80 L,FEV1.0% 73.77%,%DLco 115.7%. 画像所見:胸部レントゲンおよび胸部造影 CT にて上 縦隔,大動脈弓下,気管傍,気管分岐下,下行大動脈周 囲に腫大したリンパ節を認めた(Fig. 1a, 1b). 67 Ga シン チグラフィーにて縦隔,左肺門,右鎖骨上リンパ節にト レーサーの集積を認めた.FDG-PET CT にて縦隔・両 側肺門リンパ節に FDG の集積亢進を認めた(Max SUV 9.5).また,胸髄にも集積亢進を認めた(Fig. 1c).更 に胸椎 MRI では,C7~Th8 レベルの硬膜外と推測され る部位に T2WI 低信号の肉芽腫病変を示唆する異常陰 胸痛にて発症した神経サルコイドーシスの 1 例 栁谷 典子 小竹 美絵 石塚 岩崎 靖樹 砂長 則明 昌朋 〒3718511 群馬県前橋市昭和町 3―39―15 群馬大学大学院病態制御内科学呼吸器・アレルギー内科 (受付日平成 21 年 1 月 26 日) 日呼吸会誌 47(12),2009.

胸痛にて発症した神経サルコイドーシスの1例 - …1087 症 例 要旨:症例は60歳,女性.3カ月前から徐々に増悪する左前胸部から腋窩へかけての疼痛を主訴に近医受

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Page 1: 胸痛にて発症した神経サルコイドーシスの1例 - …1087 症 例 要旨:症例は60歳,女性.3カ月前から徐々に増悪する左前胸部から腋窩へかけての疼痛を主訴に近医受

1087

●症 例

要旨:症例は 60歳,女性.3カ月前から徐々に増悪する左前胸部から腋窩へかけての疼痛を主訴に近医受診したところ,胸部CTにて,縦隔リンパ節腫大を認めたため,精査加療目的で前医入院となった.ACEも上昇していたことから,サルコイドーシスが疑われたため当院紹介受診.気管支鏡検査施行し,肺胞洗浄液の所見および経気管支肺生検の組織からサルコイドーシスと診断した.また,FDG-PET CTで胸髄に集積を認めたため,胸椎MRI 施行したところC7~Th8 レベルの硬膜外と推測される部位に肉芽腫病変を認めた.この病変による脊髄圧排が,左前胸部から腋窩へかけての疼痛の原因と考えられた.ステロイド内服治療開始したところ,病変の縮小と疼痛の著明な改善を認めた.キーワード:神経サルコイドーシス,胸痛,肉芽腫

Neurosarcoidosis,Chest pain,Granuloma

緒 言

サルコイドーシスは非乾酪性の類上皮肉芽腫形成を特徴とする原因不明の疾患である.サルコイドーシス病変は全身のあらゆる臓器に病変が形成される可能性があるが,その中で神経サルコイドーシスは全身性サルコイドーシスの 6.4%に出現する比較的稀な病態である1).神経サルコイドーシスの臨床病型分類は,中枢神経型と末梢神経型に分類され,更に中枢神経障害を実質内肉芽腫病変,髄膜病変,水頭症,血管病変,脳症の 5つに分類されている2).今回我々は,数カ月持続する胸痛にて発症した脊髄病変型神経サルコイドーシスの 1例を経験したので報告する.

症 例

患者:60 歳,女性.主訴:左前胸部痛,左腋窩痛.既往歴:虫垂炎:20 歳代に手術 卵巣囊腫:40 歳代

に手術.家族歴:母 レックリングハウゼン病,悪性リンパ腫,

高血圧,脳出血.妹 レックリングハウゼン病,脳出血.喫煙歴:なし.飲酒歴:なし.現病歴:2008 年 4 月から左前胸部から左腋窩にかけ

て疼痛を自覚し,6月頃より徐々に悪化傾向を認めていた.7月に近医で施行された胸部CTにて縦隔リンパ節腫大を認められたため,精査目的にて前医入院.血清ACEが 27.6IU�lと上昇していたことからサルコイドーシスを疑われ,9月に精査加療目的で当院紹介入院となった.入院時現症:身長 152.7cm,体重 54.4Kg(BMI=23.3).

体温 36.6℃,血圧 148�84mmHg,脈拍 73 拍�分,SpO295%(room air),意識清明,皮疹は認めず,表在リンパ節は触知しなかった.呼吸音正常,ラ音を聴取せず,心音も異常を認めなかった.入院時検査所見(Table 1):入院時,ACEは基準値

内であったが,リゾチームと β-2 ミクログロブリンは上昇しており,ツベルクリン反応は陰性であった.動脈血ガス所見(room air):pH 7.417,Pao2 91.2

mmHg,Paco2 35.7mmHg,HCO3- 22.6mmol�l,Sao297.2%,BE -1.0mmol�L.呼吸機能検査:VC 2.66L,%VC 111.3%,FEV1.0 1.80

L,FEV1.0% 73.77%,%DLco 115.7%.画像所見:胸部レントゲンおよび胸部造影CTにて上

縦隔,大動脈弓下,気管傍,気管分岐下,下行大動脈周囲に腫大したリンパ節を認めた(Fig. 1a, 1b).67Ga シンチグラフィーにて縦隔,左肺門,右鎖骨上リンパ節にトレーサーの集積を認めた.FDG-PET CTにて縦隔・両側肺門リンパ節にFDGの集積亢進を認めた(Max SUV9.5).また,胸髄にも集積亢進を認めた(Fig. 1c).更に胸椎MRI では,C7~Th8 レベルの硬膜外と推測される部位にT2WI 低信号の肉芽腫病変を示唆する異常陰

胸痛にて発症した神経サルコイドーシスの 1例

栁谷 典子 小竹 美絵 石塚 全岩崎 靖樹 砂長 則明 森 昌朋

〒371―8511 群馬県前橋市昭和町 3―39―15群馬大学大学院病態制御内科学呼吸器・アレルギー内科

(受付日平成 21 年 1月 26 日)

日呼吸会誌 47(12),2009.

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日呼吸会誌 47(12),2009.1088

Table 1 Laboratory findings at admission

BGA (room air)Peripheral Blood7.417pH/μl7,500WBC

mmHg35.7Paco2%66Neut.mmHg91.2Pao2%26Ly.mmol/L22.6HCO3 -%2.2Eos.

%4.1Mon.Bronchoalveolar lavagel/μl414×104RBC

/μl3.0×105Total cellsg/dl11.6Hb%33Macrophages%35.5Ht%67lymphocyte/μl25.1×104Plt

7.5CD4/CD8Blood Chemistry

Pulmonary functionalg/dl8.5Total ProteinL2.66VC%48.6albumin%111.3%VC%2.9α1 globulinL1.8FEV1.0%9.1α2 globulin%73.77FEV1.0%%10.5β globulin%115.7%DLCO%28.9γ globulin

g/dl3.9Albumin(reference interval)Spinal fluidmg/dl17BUN( <_ 5)/μl37Cellsmg/dl0.6Cr(10―40)mg/dl195ProteinmEq/l138Na(8.7―30.8)μg/ml868.6AlbuminmEq/l3.6K(50―80)mg/dl48SugermEq/l103Cl(120―130)mEq/l124Clmg/dl9.4Ca(1.12―6.37)mg/dl69.8IgGmg/dl0.3T.Bil(0.23±0.17)IU/l0.7ACEIU/l44AST(0.770―2.143)μg/ml3.03β2 microglobulinIU/l25ALT

mmH2O170first pressureIU/L197LDHmmH2O80last pressureIU/l621ALP

mg/dl2.0CRPpg/ml857IL-2Rμg/ml10.9lysozymeIU/l19ACEmm84ESR

影があり,不均一な造影効果を認めた(Fig. 1d, 1e).入院後経過:気管支肺胞洗浄(BAL)の所見は,総

細胞数 3.0×105�ml で lymphocyte 67%,macrophage33%とリンパ球優位であり,CD4�CD8 比は 7.5 と上昇していた.一般細菌及び抗酸菌培養は陰性であった.右肺 S3 の経気管支鏡下肺生検(TBLB)組織検体では,類上皮細胞の集簇を認め,サルコイドーシスに矛盾しない所見であった(Fig. 2a).また,脊髄の肉芽腫病変については生検を検討したが,部位的に困難と判断した.髄液検査所見は,細胞数,蛋白,ACEは上昇していたが,糖はわずかに低下していた.細胞分画はリンパ球優位であることから,神経サルコイドーシスが疑われる所見であった.また,肝生検でもサルコイドーシスの組織診断が得られた(Fig. 2b).以上より,中枢神経,縦隔リンパ節,肺,肝に病変を認めるサルコイドーシスと診断した.

持続する前胸部痛を伴う神経サルコイドーシスに対し,プレドニゾロン 50mg�day(1mg�kg)内服による治療を開始した.臨床症状は治療開始数日後から著明に改善し,治療開始 1カ月後の胸髄MRI,胸部 CTおよび FDG-PET CTの所見も著明に改善した(Fig. 3a,3b,3c).経口ステロイドを漸減し,現在は 20mg�day で維持しているが,症状の増悪所見はなく,経過良好である(Fig. 4).

考 察

サルコイドーシスは原因不明の肉芽腫(類上皮細胞肉芽腫)性疾患で,多くは全身の多臓器(眼,皮膚,肺,心臓,肝,腎,リンパ節,神経・筋等)に出現し,一部はその臓器を障害する.日本人におけるサルコイドーシスの罹患率は,人口 10 万に対し 1.013)である.神経サルコイドーシスの好発年齢は,一般のサルコイドーシス症

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胸痛にて発症した神経サルコイドーシスの 1例 1089

Fig. 1 Figures on admission (1a: chest X-ray, 1b: chest CT, 1c: FDG-PET, 1d and 1e: thoracic spiral cord MRI)

a b

c d e

Fig. 2 Histological examinations of a specimen obtained by TBLB and liver biopsy revealed epithelioid cell granuloma (a: lung, b: liver).

a b

例と比較しやや高く,女性に多い.神経サルコイドーシスの臨床病型分類は,中枢神経型と末梢神経型に分類され,更に中枢神経障害を実質内肉芽腫病変,髄膜病変,水頭症,血管病変,脳症の 5つに分類されている2).サルコイドーシスにみられる神経症候は極めて多彩であり,神経系のいかなる部位でも障害し得る.中枢神経サルコイドーシスの脊髄病変は,頸,胸髄に好発するが,ミエロパシーで発症するのは稀である.本邦の全国サルコイドーシス実態調査成績では,中枢神経サルコイドーシスのうち,脊髄障害は 15 例であるが,無症候性であることが多い4).本症例では,数カ月間続く強い胸痛を

主訴に病院を受診し,神経サルコイドーシスの診断を得た比較的稀な症例と考えられる.サルコイドーシスの画像診断には,肺門部リンパ節腫

脹だけでなく,胸郭外病変の検索やサルコイドーシスの活動性の指標として,67Ga シンチグラフィーが繁用されている.しかし本症例では,左肺門及び縦隔リンパ節に集積は認めたものの,胸髄の病変については検出できなかった.一方,FDG-PET CTはサルコイドーシスなどの肉芽腫病変で陽性を示す上,詳細な部位診断も可能であり,本症例のように縦隔リンパ節と重なっている場合や小病変についても検出することが可能である.肺癌な

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日呼吸会誌 47(12),2009.1090

Fig. 3 A FDG-PET and thoracic spiral cord MRI at 4 weeks post-therapy (a: FDG-PET, b and c: MRI)

a

c

b

Fig. 4 Clinical course

どの悪性腫瘍とサルコイドーシスの鑑別は困難であるが,最近FDG-PETに Fluorine-18-α-Methltyrosine Posi-tron Emission Tomography(FMT-PET)を併用することの有用性が報告されている5).FMT-PETは FDG-PETよりも診断特異度が高く,特に肺門縦隔リンパ節診断においては有用であると考えられた.本症例においても,

縦隔肺門リンパ節の診断に関して,FDG-PETは陽性であったが,FMT-PETでは陰性であり,悪性疾患の可能性は低いことが示唆された.頭部MRI は神経サルコイドーシスにおいて有用な検

査法であり,T1強調画像で等~低信号,T2強調画像で多彩な信号を示し,ガドリウム造影で増強される.Greg

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胸痛にて発症した神経サルコイドーシスの 1例 1091

らは,中枢神経症候を認めたサルコイドーシス症例の80%以上にMRI 検査で異常が見られると報告し,Du-mos らは,T1強調画像においてガドリム造影で増強される病変は,ステロイド治療に反応する可逆性病変であることが多いと報告した6)7).本症例は頭部MRI では,病変は認めなかったが,胸髄病変についてMRI は非常に有用であった.このように,脊髄病変においてもMRIは有用性が高く,診断的意義をもつ.病状経過の観察においても,MRI は有用である7).神経サルコイドーシスに特異的な髄液所見はないが,

蛋白や細胞数は軽度上昇し,糖が低下することがある2)8)9).髄液所見で蛋白上昇は神経サルコイドーシスの約半数に認められる.髄液中のACEは血清ACE値との間に相関はなく,神経サルコイドーシスの活動時の50~70%で上昇するが,陰性でも否定することはできない.そのほか,可溶性 IL-2 受容体やリゾチーム,β2ミクログロブリンが上昇する2).神経サルコイドーシスの診断基準が提唱されてはいるが,確定診断には組織診断が唯一の確定診断である.しかし,脊髄病変の組織診断を得るのは困難なことが多い.最近では,脊髄内視鏡的生検の有用性も報告されており,特に画像所見や髄液検査などでも診断に難渋する症例においては期待される検査法である10).現在行われているサルコイドーシスの治療は,ステロ

イドの投与であるが,その適応は心サルコイドーシス,神経サルコイドーシス,重症肺サルコイドーシス,難治性眼サルコイドーシスとされている.神経サルコイドーシスにおけるステロイド治療の投与量,漸減スケジュール,投与期間について確立した見解は得られていないが,プレドニゾロン 40~60mg�day の経口投与を開始し漸減する場合が多い.頭蓋内腫瘤病変,水頭症,脳症,などの症例では,ステロイド抵抗性を示す病変もあり,免疫抑制剤などが用いられている2).本症例は,プレドニゾロン 50mg�day(1mg�kg)の経口投与を行ったところ,1カ月後の画像評価では,著明に縮小していた.現在 25mg�day 内服中であるが,再燃兆候は見られてい

ない.謝辞:本症例に対し,群馬大学医学部附属病院病理部の平戸純子先生と坂元一葉先生,病態制御内科レジデント田口亮先生,呼吸器アレルギー内科の川田忠嘉先生,解良恭一先生,宇津木光克先生,古賀康彦先生,今井久雄先生,久田剛志先生に御協力をいただきましたので,誌上にて深謝します.

引用文献

1)作田 学.神経サルコイドーシス.日本臨床 1994 ;52 : 1590―1594.

2)飯塚高浩,他.サルコイドーシスに伴う神経障害.日内雑誌 1999 ; 88 : 808―817.

3)Morimoto T, Azuma A, Abe S, et al. Epidemiologyof sarcoidosis in Japan. Eur Respir J 2008 ; 31 : 372―379.

4)神経サルコイドーシス.泉 孝英編.新しい診断と治療のABC サルコイドーシス.最新医学社,207―213.

5)Kaira K, Oriuchi N, Otani Y, et al. Diagnostic Useful-ness of Fluorine-18-α-Methltyrosine Positron Emis-sion Tomography in Combination With 18F-Fluorodeoxyglucose in Sarcoidosisi Patient. CHEST2007 ; 131 : 1019―1027.

6)Greg A. MR of CNS Sarcoidosis : correlation of imag-ing features to clinical symptoms and response totreatment. Am J Neuroradial 1999 ; 20 : 655―669.

7)Dumos J-L, et al. Central nervous system sarcoido-sis : Follow-up at MR imaging during steroid ther-apy. Radioligy 2000 ; 214 : 411―420.

8)竹内壮介.神経サルコイドーシス 最新の脳脊髄液検査と実際の治療.930―931.

9)飯塚高浩,坂井文彦.神経サルコイドーシス.日本臨床 2002 ; 9 : 1785―1793.

10)城田松之,福島剛志,米満 勤,他.脊髄内視鏡生検にて診断し得た進行性痙性対麻痺を呈した脳脊髄軟膜限局型サルコイドーシス.臨床神経学(日本神経学会関東地方会抄録).2006.

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日呼吸会誌 47(12),2009.1092

Abstract

A case of neurosarcoidosis discovered in a patient complaining of chest pain

Noriko Yanagitani, Mie Kotake, Tamotsu Ishizuka, Yasuki Iwasaki,Noriaki Sunaga and Masatomo Mori

Department of Medicine and Molecular Science, Gunma University

A 60-year-old woman complained of chest and axillary pain, which had initially appeared three months previ-ously and had recently become worse. A chest CT revealed hilus-mediastinal lymphadenopathy. Because an in-creased serum ACE level was observed, sarcoidosis was suspected and further investigations performed. Thenumber of lymphocytes had also increased in the BALF (67%) and the CD4�CD8 ratio was significantly higherthan normal (7.5). A histological examination of a specimen obtained by TBLB revealed epithelioid cell granuloma.FDG-PET CT showed an increased uptake in the hilus-mediastinal lymph node and thoracic spinal cord. An ab-normal image suggesting extradural epithelioid cell granuloma was identified at the C7―Th8 levels of the thoracicspinal cord by MRI. The pain was thus suspected to have been caused by compression of the spinal cord due tothe presence of the epithelioid cell granuloma. Oral administration of prednisolone (50mg�day) improved hersymptoms as well as the findings on both FDG-PET CT and MRI.