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高濃度糖系廃水の省エネルギー型処理プロセスの研究 長岡技術科学大学  ○平岡 大雅 山口 隆司 国立環境研究所  珠坪 一晃 三井製糖株式会社  河合 俊和 高知工業高等専門学校  山崎 慎一 長岡工業高等専門学校  荒木 信夫 1.はじめに 糖系廃水は粗糖生産の工程や糖を利用した食品製造工程から排出される.これらの糖系廃水の特徴は,高 濃度の有機物を含み,茶褐色のカラメルやメラノイジンなどの色素物質を含んでいることである.糖系廃水 の処理は UASBUpflow Anaerobic Sludge Bed ;上昇流嫌気性汚泥床)等の嫌気性処理が用いられ行われて いる場合が多い.しかし,嫌気性処理は排水基準を十分満たせず後段処理が必要となる.この後段処理法と して,活性汚泥法などの従来型の好気性処理は,多くのエネルギーを要するため高コストとなるなど問題と なる.我々は UASB の後段処理として DHSDownflow Hanging Sponge;下降流懸架式スポンジ)を用いた 下水処理システム,UASB/DHS の研究を行ってきた.UASB/DHS は活性汚泥処理と同程度の処理水質を有し ており,且つ,曝気エネルギーが不要,余剰汚泥の発生が低減可能なシステムである.本研究の目的は高濃 度糖系廃水の省エネルギー型処理システムとして UASB/DHS/AFB (Aerobic Fixed Bed)を提案し,その有用性 の検証・評価を行うことである. 2.実験の概要及び方法 -1 UASB/DHS/AFB システ ムの概略図を示す.本システム は嫌気性処理の UASB ,好気性 処理の DHS 及び脱窒槽の AFB より構成される.UASB は容積 15.1L であり,植種汚泥は中温嫌 気性処理のグラニュール汚泥を 用いた.DHS は有効容積 8.5L ある.φ3×3cm のポリウレタン スポンジの担体を充填率 45%(345 ) で充填した.植種汚泥は長岡 中央場かセンターの活性汚泥を 用いた. AFB は有効容積 50L ある.カラムに DHS と同様のス 図-1 UASB/DHS/AFB システムの概略図 ポンジ担体を充填し,植種汚泥は UASB と同様のグラニュール汚泥を植種した. -1 は基質の組成を示す.基質は糖蜜を希釈したものを基に COD2600mg/LT-N220mgN/L になるよ うに調整した.脱窒に必要な電子供与体(有機物)は糖蜜を希釈して用いた.水質分析は基質,UASB 処理水, DHS 処理水及び AFB 処理水に対して行った.分析項目は温度,pHCOD Cr TKNNH 4 -NNO 3 -NNO 2 -N着色度,SS 及び VSS とした.

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高濃度糖系廃水の省エネルギー型処理プロセスの研究

長岡技術科学大学 ○平岡 大雅 山口 隆司国立環境研究所 珠坪 一晃

三井製糖株式会社 河合 俊和 高知工業高等専門学校 山崎 慎一長岡工業高等専門学校 荒木 信夫

1.はじめに 糖系廃水は粗糖生産の工程や糖を利用した食品製造工程から排出される.これらの糖系廃水の特徴は,高濃度の有機物を含み,茶褐色のカラメルやメラノイジンなどの色素物質を含んでいることである.糖系廃水の処理は UASB(Upflow Anaerobic Sludge Bed ;上昇流嫌気性汚泥床)等の嫌気性処理が用いられ行われている場合が多い.しかし,嫌気性処理は排水基準を十分満たせず後段処理が必要となる.この後段処理法として,活性汚泥法などの従来型の好気性処理は,多くのエネルギーを要するため高コストとなるなど問題となる.我々は UASB の後段処理として DHS(Downflow Hanging Sponge;下降流懸架式スポンジ)を用いた下水処理システム,UASB/DHS の研究を行ってきた.UASB/DHS は活性汚泥処理と同程度の処理水質を有しており,且つ,曝気エネルギーが不要,余剰汚泥の発生が低減可能なシステムである.本研究の目的は高濃度糖系廃水の省エネルギー型処理システムとして UASB/DHS/AFB (Aerobic Fixed Bed)を提案し,その有用性の検証・評価を行うことである.

2.実験の概要及び方法 図-1 は UASB/DHS/AFB システムの概略図を示す.本システムは嫌気性処理の UASB,好気性処理の DHS 及び脱窒槽の AFB

より構成される.UASB は容積15.1L であり,植種汚泥は中温嫌気性処理のグラニュール汚泥を用いた.DHS は有効容積 8.5L である.φ3×3cm のポリウレタンスポンジの担体を充填率 45%(345

個)で充填した.植種汚泥は長岡中央場かセンターの活性汚泥を用いた. AFB は有効容積 50L である.カラムに DHSと同様のス

図-1 UASB/DHS/AFBシステムの概略図

ポンジ担体を充填し,植種汚泥は UASBと同様のグラニュール汚泥を植種した. 表-1 は基質の組成を示す.基質は糖蜜を希釈したものを基に COD:2600mg/L,T-N:220mgN/L になるように調整した.脱窒に必要な電子供与体(有機物)は糖蜜を希釈して用いた.水質分析は基質,UASB 処理水,DHS処理水及び AFB処理水に対して行った.分析項目は温度,pH,CODCr,TKN,NH4-N,NO3-N,NO2-N,着色度,SS及び VSSとした.

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表-1 供給基質の組成

3.結果及び考察 図-2 (A)は COD の経日変化を示す.UASB の立ち上げは OLR(Organic Loading Rate;有機物負荷量):10kg/m3・dayを目標に行った.OLRの増加は 2kg/m3・day より開始し,徐々に負荷を上げていった.COD

除去率は OLR:10kg/m3・day において UASB までで 60%,UASB/DHSまでで 90%を達成した. 図-3 (B)は TKN の経日変化,図-2 (C)は T-N の経日変化を示す.DHS において硝化が起こり,DHS

で TKN が 50% (NH4-N で 48%) 除去されている.また,AFB は NO3-N が残留していないことから脱窒が起っているといえる.TKN 除去率が 50%程度と低い原因は UASB の処理性能が低いため DHS の負荷が高くなっており,スポンジ表面に汚泥が蓄積し DHS の処理性能,特に硝化性能の低下を招いていると考えられる.図-2 (D)は色度の経日変化を示す.着色度は DHSにおいて 30%の脱色が見られた

図-2 UASB/DHS における各水質の経日変化(A)T-COD,(B)TKN,(C)T-N,(D)色度

4.まとめ UASBは OLR:10kg/m3・dayにおいて COD除去率 60%,UASB/DHSとしては 90%の処理性能がえられた.UASB/DHS/AFB システムにおいて硝化・脱窒が可能であることがわかった.また,DHS は糖蜜廃水の脱色が可能であることが示唆された.今後の予定は COD処理性能及び硝化性能の向上を目標とする.

参考文献長野晃弘,糖蜜廃液の脱色処理に関する研究,長岡技術科学大学博士論文,2000-12

Components (mg/L) Components (mg/L)

Molasses 3250 Trace elementsNH4Cl 505 FeCl2-4H2O 3.93

(NH4)2SO4 82.5 CoCl2-6H2O 0.17

NaHCO3 2600 ZnCl2 0.07

Mineral H3BO3 0.06

KH2PO4 150 MnCl2-4H2O 0.50

CaCl2-2H2O 150 NiCl2-6H2O 0.04

MgCl-6H2O 400 CuCl2-2H2O 0.03

KCl 300 NaMoO4-2H2O 0.03

NH4Cl 110

(A)

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

COD

con

c.(m

g/L)

(B)

0

50

100

150

200

250

300

350

TKN

con

c.(m

gN/L

)

Phase2OLR:4

Phase1OLR:2

Phase3OLR:5

Phase4OLR:10

(D)

0

400

800

1200

1600

2000

0 10 20 30 40 50 60 70

Den

s.(U

)

Substrate UASB eff. DHS eff.

(C)

0

50

100

150

200

250

300

350

T-N

con

c.(m

gN/L

)