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1 中国支部企画採択:平成25年度特色ある支部活動に関する活動報告 テーマ:51C型・DKタイプの公営住宅へ導入過程に関する調査研究―広島都市圏を 主たる対象として 中国支部 支部長 平野吉信(現在は大久保孝昭) 研究代表 広島諸事・地域再生研究所 石丸紀興 はじめにー取り組みの目的 本企画は資料 1 の「特色ある支部活動企画書」のように、平成25年度特色ある支部活動として中 国支部から申請して、採択されたものである。テーマは「51C型・DKタイプの公営住宅へ導入過 程に関する調査研究―広島都市圏を主たる対象として」というもので、建設省が 1950 年に公営住宅 のいくつかの標準設計として定めた51C型からダイニング・キッチン(DK)タイプへと転換して いく過程、とりわけ当時提案された多くの住宅平面図を収集し体系化すること、さらに具体的に広島 県下で展開された県営住宅、市営住宅においてDK形式が導入されたのはどこなのかを明らかにする ことで、そこではどのような空間が展開されたのか把握し、その資料と情報を収集しようというもの である。当初から具体事例を把握し、特定することを絶対的な目的として資料集に努めた。またDK 論においてその意味と可能性について、可能な限り議論を展開しようというものであった。 1 経過報告 2013 4 月より正式に取り組み・活動をスタートさせた。実は活動 開始以前からこのテーマについては取り組んでいて、これらが基礎とな ったことを指摘しておきたい。これらは巻末の資料編に掲載している。 活動の組織としては、中国支部の都市計画委員会委員、農村計画委員会 委員の石丸を中心として、シンポジウムを実施すべく「特色ある支部活 動・研究グループ」を構成し、また広島工大名誉教授の森保洋之氏や広 島大学の岡河貢氏とも相談をしながら、シンポジウムや検討会・討論会 を実施した。なお、シンポや検討会・討論会は中国支部主催とし、活動 報告は石丸の責任のもとでまとめた。 以下、時間の流れに沿って主要な取り組みを整理すると、 2013 4 月から 9 月頃まで支部活動企画が認められたことにより、 積極的に資料と情報収集に取り組んだ 5 月頃から広島県における事例を把握し多くの資料・情報を収集し、 次第に県営住宅の51C型に近いタイプを特定し、次第に県営住宅の5 1C型に近いタイプを特定し、導入事例を把握していった 8 月から 11 月まではシンポジウム開催の準備を進めた。 資料2シンポ ジウムのチラシのようにパネリストして九州大学教授の菊地成明氏、広 島大学准教授の岡河貢氏、広島県住宅課の原田慎治氏、滋賀県立大学教 授の布野修司氏にお願いし、石丸が基調報告とコーディネーターを務め る形で進めることとした 9 月頃から 11 月頃まで岡山県における51C系列・DKタイプの事例 を把握するために調査を進め、いくつかの資料・情報を収集した 11 月2日 51CDK シンポジウム

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中国支部企画採択:平成25年度特色ある支部活動に関する活動報告 テーマ:51C型・DKタイプの公営住宅へ導入過程に関する調査研究―広島都市圏を

主たる対象として 中国支部 支部長 平野吉信(現在は大久保孝昭)

研究代表 広島諸事・地域再生研究所 石丸紀興

はじめにー取り組みの目的

本企画は資料 1 の「特色ある支部活動企画書」のように、平成25年度特色ある支部活動として中

国支部から申請して、採択されたものである。テーマは「51C型・DKタイプの公営住宅へ導入過

程に関する調査研究―広島都市圏を主たる対象として」というもので、建設省が 1950 年に公営住宅

のいくつかの標準設計として定めた51C型からダイニング・キッチン(DK)タイプへと転換して

いく過程、とりわけ当時提案された多くの住宅平面図を収集し体系化すること、さらに具体的に広島

県下で展開された県営住宅、市営住宅においてDK形式が導入されたのはどこなのかを明らかにする

ことで、そこではどのような空間が展開されたのか把握し、その資料と情報を収集しようというもの

である。当初から具体事例を把握し、特定することを絶対的な目的として資料集に努めた。またDK

論においてその意味と可能性について、可能な限り議論を展開しようというものであった。

1 経過報告

2013 年 4 月より正式に取り組み・活動をスタートさせた。実は活動

開始以前からこのテーマについては取り組んでいて、これらが基礎とな

ったことを指摘しておきたい。これらは巻末の資料編に掲載している。

活動の組織としては、中国支部の都市計画委員会委員、農村計画委員会

委員の石丸を中心として、シンポジウムを実施すべく「特色ある支部活

動・研究グループ」を構成し、また広島工大名誉教授の森保洋之氏や広

島大学の岡河貢氏とも相談をしながら、シンポジウムや検討会・討論会

を実施した。なお、シンポや検討会・討論会は中国支部主催とし、活動

報告は石丸の責任のもとでまとめた。

以下、時間の流れに沿って主要な取り組みを整理すると、

①2013 年 4 月から 9 月頃まで支部活動企画が認められたことにより、

積極的に資料と情報収集に取り組んだ

②5 月頃から広島県における事例を把握し多くの資料・情報を収集し、

次第に県営住宅の51C型に近いタイプを特定し、次第に県営住宅の5

1C型に近いタイプを特定し、導入事例を把握していった

③8 月から 11 月まではシンポジウム開催の準備を進めた。資料2シンポ

ジウムのチラシのようにパネリストして九州大学教授の菊地成明氏、広

島大学准教授の岡河貢氏、広島県住宅課の原田慎治氏、滋賀県立大学教

授の布野修司氏にお願いし、石丸が基調報告とコーディネーターを務め

る形で進めることとした

④9 月頃から 11 月頃まで岡山県における51C系列・DKタイプの事例

を把握するために調査を進め、いくつかの資料・情報を収集した 11 月2日 51C・DK シンポジウム

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⑤11 月 2 日にシンポジウムを開催した。シンポジウムについては

DVDから音声起こしを進め、巻末資料として添付している

⑥それ以後から翌年(2014 年)2 月までは、シンポジウムのまと

めにとりくんだ

⑦2014 年 1 月には日本建築学会中国支部研究論文としてまとめ

ることに専念した

⑧また 1 月頃から 3 月までシンポの第二弾として検討会・討論会

の企画を進めた

⑨3 月 2 日建築学会中国支部研究報告会で支部研論文を発表し質

問・討論をいただいた

⑩3 月 22 日検討会・討論会を開催し(資料4討論会・検討会チラ

シ、資料 5 討論会・検討会時のスライドファイル)、DK論に関

して幅広く議論し多くの成果を得た

⑪それ以後もまとめの作業を進めた

以上が主な活動の経過報告である。

2 主な成果

シンポジウムは次のような趣旨で実施された。すなわち、

戦後の日本の住宅プランに決定的な影響を与えたと思われる 51C 型に関する基調報告に続き、これ

についての計画学研究や設計分野、住宅行政分野を含めて広く検討・議論を進め、51C 型・DK タイ

プの展開過程をトレースし、今後の住宅のプランタイプの在り方について様々な方向から問題提起を

収集し、可能な限りまとめを目指す。

というもので、シンポジウムにおいて基調報告として発表した内容が4~11月期における主要な成

果である。

これは、

① DK系列成立への西山夘三の貢献

② 戦後昭和 23 年ころのコンペにみる台所・食堂の位置関係

③ 49型から51型への変遷・展開過程(建設省の公営住宅適用の標準設計)

④ 51C型とされるプランの形成過程

⑤ DK型,DK理論に対する評価

⑥ 日本住宅公団におけるDKタイプ系列の確立

⑦ さらなるDKタイプの展開、面積的拡大・多様化

⑧ 県営東観音アパート5,6,7号館におけるDKの導入

⑨ 岡山県のDK導入事例

⑩ 昭和 30 年代民間住宅におけるDKタイプの導入例

というものであった。特に 49 型から 51 型への変遷・展開過程については詳細な資料が入手できて全

体を大きな系列で把握することができた。また住宅公団における DK タイプのシステム構成を把握し、

その後の日本における住宅プランへの影響の源泉を解明し、報告した。

菊地成明氏からは住宅計画史としての51Cの提案とDKタイプの普及」というテーマで報告をい

ただき、岡川貢氏からは「住宅設計におけるDKタイプの存在と今後の設計の課題・方向」、原田慎治

3月22日における検討会・討論会

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氏からは「住宅行政におけるDKタイプの位置づけと今後」、布野修司氏からは「51C・DKタイプの基

本的評価と今後の課題」というテーマでの報告であった。それぞれ意欲的な報告で新たな問題提起も

あって多くの成果があった。全体として既に存在するDK系列での膨大なストックをより有効活用す

る方法やとりわけ入居者募集の新しい試みなどが提案され、今後の課題とされた。

これらを含めて、直接的には日本建築学会中国支部研究報告集において、支部研論文「51C型・

DKタイプの公営住宅への導入過程に関する研究 ― その1.広島県営東観音住宅4・5・6号館の場

合」(資料6)を報告・発表し、討論していただいた。この中で今回の中心的なテーマである広島都

市圏で最初にDKが導入された事例を見出し、東観音住宅において見事に 49 型から 51C型への展開

事例が典型的に建設されていることを明らかにする形での記述であった。

岡山県でも具体例を把握したので、今後論文等への発表の予定である。

3月に実施した検討会・討論会においては現に設計の仕事をしている人たちの参加があり、具体的

にDK方式を採用する場合の考え方、とりわけ安直にDK方式を取り入れるのでなく、より人の生活

感から決めていくような表現を狙うべきというような提案などが検討された。DKを組み込むものの

ワンルームタイプであるとか、リビングを重視したタイプの検討の必要性とかも議論された。

その他、この間、いくつかの有益な情報を収集した。例えば

江上徹著「nLDK批判をめぐる諸理念・諸議論の系統的整理/前編―計画学のための基礎的考察

その2-」(九州産業大学工学部研究報告 41 号)

等々である。

3.新たな展開・今後の課題

今後さらにDKの導入事例の系譜をたどり明らかにしていくことが必要である。各県毎に51C型

が導入された事例を明らかにできるという実績を得たので、今後まず中国地方で展開していくことが

必要であるし、同時に解明されたことを何らかの形で発表し、討論することを考えるべきである。そ

れは日本建築学会中国支部内であるいは外部とも連携して様々な形で、とりわけシンポジウム形式で

の討論を展開することを考えている。また、一般の戸建て住宅やマンションなどでもDKタイプが導

入されていく過程を明らかにするという課題がある。すでに数事例把握してきているので、さらに今

後の一層の情報収集の努力が必要である。

4.添付資料リスト、参考資料リスト

本編の巻末には必要な資料を添付しているが、これ以外にも、必要であれば参照いただきたい参考

資料リストを掲げ、本報告の内容とする。

謝辞

今回の活動に支援していただき、研究の推進のチャンスを与えていただいた日本建築学会に、心か

らの感謝を申し上げる。

シンポジウム開催に当たっては、日本建築学会中国支部主催とし、日本都市計画学会中国四国支部

と広島県建築士会から後援をしていただいた。

また、シンポジウムや検討会・討論会のチラシのデザイン,チラシ配布、受付等を手伝っていただ

いた方々に、特に5アーキウォーク広島の松本富美さん、福馬晶子さん、時代を語り建築を語る会実

行委員会の小泉直子さん、柴田直美さんに感謝の意を表明する。

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添付資料リスト 資料1 特色ある支部活動企画書(中国支部からの申請)

資料2 20131102 シンポジウム「51C型・DKタイプの導入・展開過程と住宅計画研究・

設計の今後」チラシ

資料3 20140322 検討会・討論会「51C 型・DKタイプを生活者目線、設計者目線で検

討する」チラシ

資料4 成果論文石丸紀興著:51C型・DKタイプの公営住宅への導入過程に関する

研究 ― その1.広島県営東観音住宅4・5・6号館の場合(日本建築学会中国支部研究

報告集 第 37 巻、平成 26 年 3 月)pp.449-452

その他参考資料として(今回添付しなかったが)

参考資料1 石丸紀興著:51C型提案・採用・標準化直前に設計された広島・京橋会

館における炊事と食事空間の関連性と利用のされ方に関する研究(日本建築学会中国支

部研究報告集第 33巻、平成 22 年 3月)pp.1-4

参考資料2 石丸紀興著:DK型の導入直前に建設された公営住宅の居住実態及び特に

ダイニングとキッチン空間の相互関係に関する研究―広島市中区の平和アパートの場合

(日本建築学会中国支部研究報告集 第 34 巻、平成 23 年 3月)pp.1-4

参考資料3 石丸紀興著:広島における 51C型・DKタイプの導入・普及―公営住宅編

(広島市公文書館紀要、第 25 号、平成 23 年 5月)pp.1-18

参考資料4 2013 年 11 月 2日シンポジウム記録音声起こし

といった資料がある。

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資料 1 特色ある支部活動企画書(中国支部からの申請)

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資料 2 20131102 シンポジウム「51C型・DKタイプの導入・展開過程と住宅計画研究・設計の今

後」チラシ

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資料3 20140322 検討会・討論会「51C・DKタイプを生活者目線、設計者目線で検討する」チラシ

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資料4 成果論文石丸紀興著:51C型・DKタイプの公営住宅への導入過程に関する研究 ― その1.広島県営東観音住宅4・5・6号館の場合(日本建築学会中国支部研究報告集 第 37 巻、平成

26 年 3 月)pp.449-452

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