機能性微粒子を含有する 「ベシケアOD錠」の製剤設計

アステラス製薬株式会社 製剤研究所 剤形研究室

真栄田 篤

過活動膀胱（OAB）の有病率

（％）

40

35

30

25

20

15

10

5

0 40～49 50～59 60～69 70～79 80≦ （歳）

男 女 全体

OABの条件

排尿回数 １日８回以上

かつ

尿意切迫感 週１回以上

40歳以上の男女の12.4％に過活動膀胱の症状が見られています

14.9

9.5

12.1

26.3

18.6

22.6

36.3 37.7

36.8

8.4

5.4 6.9

4.3 5.1 4.8

本間之夫 他：日本排尿機能学会誌.14(2)：266，2003.

過活動膀胱は加齢に伴って有病率が増えています

全国から抽出され、質問票が郵送された40歳以上の男女のうち、返送して解析対象となった4,570例（平均60.6歳、範囲40～100歳） 調査対象

調査方法 排尿に関する症状についての質問票を郵送して調査（調査期間2002年11月～2003年3月）

薬剤がのどにつかえた経験の有無

高齢者の27.1％が薬剤服用時にのどにつかえた経験があります

対象・方法 毎日1剤以上の薬剤を服用している65歳以上の高齢者410名を対象に、面接にて服薬時の困った経験の有無について調査した

橋本隆男：Therapeutic Research 27(6): 1219-1225, 2006

質問内容 薬剤がのどから胸にかけてつかえた経験があるか質問した

な い

72.9％ （n=299）

ある

27.1％ （n=111）

「ある」の内訳：

しょっちゅう

時々

たまに

40 （％）

20

10

0

30

口腔内 崩壊錠

散剤 ドライ シロップ

ゼリー剤 液剤 わからない

高齢者における薬剤変更の希望

OAB患者の多くは高齢者。高齢者は、口腔内崩壊錠への変更を望んでいます

目的 高齢者の服薬状況および服薬コンプライアンスに関する実態調査

対象・方法 毎日1剤以上の薬剤を服用している65歳以上の高齢者410名を対象に、変更を希望する剤形について面接調査を実施した

橋本隆男：Therapeutic Research 27(6): 1219-1225, 2006

変更してほしい剤形についての質問

17.6 15.7 15.7

13.7 11.8

37.3

4

アステラスの口腔内崩壊錠

WOWTABⓇ ガスターD錠 ハルナールD錠 ベシケアOD錠

5

口腔内崩壊錠（WOWTAB Ⓡ ）に含まれる

機能性微粒子とは・・・

製品名 機能性微粒子の特性

ガスターＤ錠 苦みを持つ薬物をマスキングする

ハルナールＤ錠 徐放性を持たせる

ベシケアＯＤ錠 極めて強い苦みの薬物をマスキングする

6

ガスターＤ錠

マトリックス制御により

口腔内での薬物溶出を抑

制する

7

口腔内での薬物溶出を閾値以下に抑制

Spray Dryer

Taste Masked Particle

ガスターＤ錠 の機能性微粒子

8

水不溶性高分子を用いた Spray Dry法によるマスキング技術

（Peppermint flavor と甘味剤により味を整える）

ハルナールＤ錠

膜制御により薬物を徐放する

9

2 種類の相反する機能を同時に兼ね備えた高度な製剤！

・第1の機能：口腔内で速やかに崩壊する機能

・第2の機能：薬物を体内で徐々に放出する徐放性機能

200 μm以下の徐放性微粒子のためザラツキを感じさせません

口腔内崩壊錠口腔内崩壊錠

※※実際の徐放性粒子は白色です実際の徐放性粒子は白色です 200μm以下

徐放性被膜徐放性被膜

腸溶性被膜腸溶性被膜

コア粒子コア粒子

薬物層薬物層

10

ハルナールＤ錠の機能性微粒子

ベシケアOD錠について

11

WOWTABは

–口腔内で速やかに崩壊する嚥下し易い剤形 –ガスターD，ハルナールDでの医療従事者からの評判も良い –LCMへの貢献が期待できる剤形

ベシケアのWOWTAB化によるLCMへの貢献

–有効性・安全性は同等で服用利便性を訴求 – 高齢者服用 – 水分摂取回避

技術課題および取り組み方向性

12

技術課題技術課題

極めて高い水溶性

強い苦味・収斂性

WOWTAB化技術

安定な薬物 ｺｱ製造技術

非晶質体は

不安定

苦味マスキング技術

克服策克服策

機能性微粒子処方設計のポイント

A B C D E

13

各種結合剤

類縁物質

(%)

結合剤を選択することにより原薬の結晶化を促進し、通常錠よりも類縁物質の経時的な増加を低減

苦味マスキング技術と課題

14

コンセプト 手段 溶出特性 課題

溶出制御

WAX congealing

薬物をワックス処理し、界面活性剤を含む水不溶性高分子or ワックス により被覆 苦み閾値が低い薬物に対

しては適応困難 高分子との

マトリックス （Spray Dry）

水不溶性高分子との マトリックス形成による溶出制御

水不溶性高分子 コーティング

水不溶性高分子を粒子に コーティング

ラグタイム後の薬物のパルス放出が困難

時限放出・部位放出

酵素分解性素 コーティング

酵素分解性素材を含む 高分子で被覆

ラグタイム後の薬物のパルス放出が困難

薬物

溶出

率（

%）

時間 （min）

目標

Salting-out Taste-masking System

塩析効果で水溶性高分子が不溶化

唾液 塩析剤 薬物

口～喉 消化管内 口内

薬物コア

塩析層 （塩析剤＋水溶性高分子）

水浸入量制御層 （水不溶性物質）

口腔内崩壊錠

15

塩析層および水浸入量制御層が溶出に与える影響

薬物コア

薬物コア＋塩析層

薬物コア+塩析層＋水浸入量制御層

薬物コア＋水浸入量制御層

0 10 20 30 400

20

40

60

80

100

Legend

Legend

Legend

Legend

0 10 20 30 400

20

40

60

80

100

Legend

Legend

Legend

Legend

0 10 20 30 400

20

40

60

80

100

Legend

Legend

Legend

Legend

0 10 20 30 400

20

40

60

80

100

Legend

Legend

Legend

Legend

時間(min)

薬物

放出

率 (

% o

f d

ose

)

0 10 20 30 400

20

40

60

80

100

Legend

Legend

Legend

Legend

16

プロトタイプ製剤 粒子外観変化

17

0分 5分 10分 15分 20分 30分 60分

顆粒からの薬物溶出プロファイル

（水 500mL,パドル法 100rpm）および

光学顕微鏡像

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 10 20 30 40 50 60

時間 (min)

薬物溶出率（%）

塩析層･水浸入量制御層がラグタイムに与える影響

18

0

1

2

3

4

5

6

0 20 40 60 80

塩析層コート量（%）

ラグタイム（ m

in）

0

1

2

3

4

5

6

7

0 2 4 6 8 10 12

水浸入量制御層コート量（%）ラグタイム（ m

in）

塩析層(A)，水浸入量制御層(B)が薬物溶出プロファイル[日局 第2液（pH6.8）,500mL,パドル法,100rpm]のラグタイム（溶出率1%未満の時間）に与える影響

塩析層，水浸入量制御層は，ラグタイムを増加させる

(A) (B)

塩析層･水浸入量制御層が薬物溶出速度に与える影響

19

塩析層は，ラグタイム後の薬物放出速度を増加させる

水浸入量制御層は，ラグタイム後の薬物溶出速度を低下させる

塩析層(A)，水浸入量制御層(B)が薬物溶出プロファイル[日局 第2液（pH6.8）,500mL,パドル法,100rpm]の，溶出率10～90%区間の0次薬物放出速度に与える影響

(B) (A)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

0 20 40 60 80

塩析層コート量（%）

0次薬物放出速度（%・m

in-1）

0

5

10

15

20

25

30

35

0 2 4 6 8 10 12

水浸入量制御層コート量（%）0次薬物放出速度（%・m

in-1）

ベシケア OD 錠 (製剤のイメージと製造方法)

加湿処理 口腔内崩壊錠

核粒子

キュアリング

造粒・ 混合

打錠

コーティング

機能性微粒子

20

コーティング法 → 側方噴霧法

機能性微粒子の製造工程のポイント

高度な溶出制御をおこなうための精密コーティング

生産効率の向上

核粒子

コーティング

コーティング

コーティング

主薬など

塩析層

水浸入量制御層

21

<成功例>

<失敗例>粒子表面に亀裂

0

5

10

15

20

25

30

420 400 380 360 340

40

70

90

噴霧空気量 (L/分)

溶出率 (

％)

各種製造条件における初期溶出の比較

機能性微粒子のコーティング工程

22

23

溶出制御成分 2 コーティング時 乾燥後 Curing後

溶出制御成分 1 の層

機能性微粒子のキュアリング工程

0

20

40

60

80

100

0 10 20 30

溶出

率 (

%)

時間 (分)

Curing 操作前

Curing操作後

ベシケアOD錠 5 mg

識別性の向上

ベシケアOD錠 2.5mg

24

剤形の表示

PTPシートの表示工夫（医療過誤防止対策）

「口腔内崩壊錠」であることを

記載しています。

⇒日々数多くの薬を取り扱う薬剤師さんの負担の軽減や、患者さんの薬の飲み間違い防止に貢献 しています。

薬効の表示

「過活動膀胱治療剤」であることを

記載しています。

PTPシート（表面）

PTPシート（裏面）

25

26