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2019 年度 卒業論文・修士論文 中間発表会 広島大学大学院文学研究科・文学部 地理学教室 2019 8 4 日(日)

卒業論文・修士論文 中間発表会 · 「卒論・修論中間発表会」 2019/8/4 b150233 畑宗一郎 iターン者の定着過程と地域振興における役割 -高知県土佐郡大川村を事例として-

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2019年度

卒業論文・修士論文 中間発表会

広島大学大学院文学研究科・文学部 地理学教室

2019年 8月 4日(日)

12:50〜12:55 開会の挨拶

12:55〜13:15 望月 慎:流通構造の変化が地域水産業に与える影響の考察

13:15〜13:35 畑 宗一郎:Iターン者の定着過程と地域振興における役割

−高知県土佐郡大川村を事例として−

13:35〜13:55 村松慶二:地域コミュニティの再編成において郷土芸能が果たす役割

13:55〜14:15 長田伸寛:地方都市におけるマンション購入世帯の現住地選択の意思

決定プロセス

14:15〜14:35 渡辺優太:漁業管理と主体間関係の分析−養殖業を事例として−

14:35〜14:50 休憩

14:50〜15:10 安田啓悟:東京におけるゲーム産業の集積メカニズム

15:10〜15:30 原 健太:原料調達ネットワーク生成による品質とローカル性の追求

-兵庫県たつの市の醤油メーカーを事例に-

15:30〜15:50 元吉梨奈子:南西諸島徳之島のサンゴ礁性海成段丘の再検討

15:50〜16:15 NguyenHoangMinhAnh:CharacteristicofLaborExportSystemand

SendingagenciesinVietnamItsinfluenceonTITsand

TITPinJapan:CasestudiesofVietnameseTechnical

InterntraineesandSendingAgencies

表紙写真:石鎚山・天狗岳(2019年 5月 2日 友澤撮影)

1

卒業論文中間発表

2019.08.04

B120710 望月慎

1. 研究題目

流通構造の変化が地域水産業に与える影響の考察

2. 研究の背景と目的

日本における水産業は, 農業等の他の第一次産業と同様に高齢化および後継者不足によ

る従業者の減少が課題となっている(山内, 2004)。90 年代以降の漁獲量の長期低迷および

一人当たり水産物消費量の伸び悩み, 輸入水産物の増加によって産業自体を取り巻く環境

は厳しさを増している。

水産物の流通においては, 農産物と比べ鮮度がより重要であること等から伝統的には産

地卸売市場と消費地卸売市場でのセリを通した形での流通が主であったが, 近年は大手小

売や外食産業の成長により市場を介さない直接取引が増加している。また, 生産者である

漁家・漁協の側は価格決定力を高められる点や従来は流通に乗らない規格外の水産物や少

量目品を販売できる点が好まれ直売所やインターネット等による直接販売が増加している

とされる。結果として水産物の市場経由率は低下している。

同じ食に関する産業である農業においては, 早くから直売所に関する研究が行われ, 消

費者の食の安全に対する意識の高まりや品質の高さから直売所の需要が増し, 値段決定の

自由度の高さもあり農家の収入増につながったことが示されてきた。一方, 水産物におけ

る直売は産業構造ならびに流通形態の違いから農業におけるそれに比べ成長が遅れている

とされる(山本, 2009)が, 農業と同様に直売所等の開設による付加価値の増加や消費者との

接近, 6次産業化は水産業振興に有効とされている(林, 2007;宮田, 2018)。近年は数は少

ないながら個別の事例について研究がなされ, 直売所の開設が地域の漁協・漁家の経営に

好影響を与えているとされる(玉置, 1996;横山ほか;2013)。

しかしこれらの研究は表面的な事例紹介にとどまっており, 水産業の流通経路の変化そ

のものについて言及されてはいない。近年の水産物流通に関する地理的な研究は不足して

いると考えられる。また, 水産物の直売は近年登場した直売所のみではなく, 歴史のある

漁村では古くから朝市という形で直売が行われてきた。この朝市と直売所の共通点と相違

点を考察することで,新たな形としての直売の性質をも明らかにできると考える。

以上から, 特に市場外取引を中心とする新たな形の水産物の流通経路の構築が水産業全

体, とりわけ生産者である漁家に変化を与えている可能性を指摘できる。本研究では水産

業の現状をふまえつつ. 市場外取引の増加と地域振興との関係性を考察することを目的と

する。

001

2

3. 研究対象地域

検討中だが千葉県上総および房総地域を想定

理由としては以下の点を挙げる

・安房地区にそれなりにまとまった数の水産物直売所が立地

・大消費地が近く, 東京湾アクアラインの開通により日帰り旅行者が増加

・日本三大朝市とも呼ばれる勝浦朝市が存在

・水揚げ量日本一を誇る銚子漁港が同県に立地し, 従来の卸売流通も発達している

4. 調査方法

統計・文献調査

水産業の産業的特性のより深い把握

水産物の流通経路のさらなる理解・図化

漁協・個別漁家への聞き取りまたはアンケート調査

市場・直売所での現地調査

文献

玉置泰司(1996):我が国における漁村活性化手法について, 中央水産研究所研究報告, 8,

35-50.

林紀代美(2007):地域水産業振興を考える : 地域水産物と消費者との接点に注目して, 経

済地理学年報, 53, 78-97.

宮田勉(2018):漁業の6次産業化と域内連携, フードシステム研究, 24, 356-361.

山内昌和(2004):漁業地域研究の新しいアプローチに向けて, 人文地理, 56, 351-374.

山本竜太郎(2009):水産物直販所の今後の発展性に関する一考察, 調査研究論文集, 21, 49-

57.

横山貴史, 橋爪孝介, 村上翔太, 藤永豪, 吉田国光, 田林明(2013):黒部市生地地区におけ

る漁業の変遷と地域資源を活用した漁村地域活性化の取り組み, 筑波大学人文地理学研究,

33, 145-173.

002

3

図 1 漁業就業者ならびに高齢化率の推移

(漁業センサス, 漁業就業動向調査より作成)

図 2 漁業・養殖業の生産量の推移

(漁業・養殖業生産統計より作成)

32%

33%

34%

35%

36%

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38%

39%

0

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20

25

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

就業者数 うち65歳以上 割合

(万人)

0

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1000

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1400

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2009

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2015

内水面漁業・ 養殖業 海面養殖業 沿岸漁業 沖合漁業 遠洋漁業

(万トン)

003

4

表 1 水産物直売所の推移(漁業センサスより作成)

調査年度 運営漁協数 施設数 年間延べ

利用者数(百人)

1 施設当たり

利用者数(人)

2008 218 298 124757 41865

2013 247 311 135885 43693

40

45

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60

65

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2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

(%)

図 3 水産物の卸売市場経由率の推移

(食料需給表, 青果物卸売市場調査報告等により推計)

数値の出典:農林水産省「平成29年度卸売市場データ集」

004

5

図 4 千葉県内の水産物直売所の立地

(「新鮮!ちばの海の幸!水産物直売所マップ」より作成)

005

「卒論・修論中間発表会」 2019/8/4 B150233 畑宗一郎

I ターン者の定着過程と地域振興における役割 -高知県土佐郡大川村を事例として-

Ⅰ研究の背景と目的 近年、都市から農山村への移住が大きな注目を浴びている。かつての農山村への移住志向は中高年代に偏っていたものの、若い世代にもその動きは拡大し、全ての世代へと標準化してきている。特に東日本大震災以降、大都市での居住を疑問視した人々による地方への分散が発生した。その動きは田園回帰と称され、社会全般において急速に流布していった(作野, 2016)。 このように関心の高まりつつある農山村への移住ではあるが、「地方創生」の流れの中で、行政が数的な意味での人口増加を期待している側面が否めない(筒井ほか, 2016)。しかし、作野(2019)は、現代の人口減少社会において、人口や産業の集積を基調とする国土政策は限界があると指摘している。また、田口(2018)によると、農山村漁村地域では 1960 年代から過疎化が継続している傾向にあり、将来に対する不安の声や悲観的な発言がみられると指摘した上で、そのような状況下では、地域住民のみの力で地域づくりにおける価値創造は難しく、外部主体の必要性を主張している。 実際に人口増加は確認できないが、外部から既存の住民とは年齢層や考え方が異なる人材が地域に流入することで、新しい地域づくりにつながるケースがみられる(筒井ほか, 2016)。そのような中で、Iターン・孫ターンが注目を浴びている。 しかし、このような外部主体に焦点を当てた実証的な研究は少ない。そこで本研究では、Iターン者に着目することで、外部主体がどのように地域振興における役割を果たしているのかを明らかにしたい。 I ターンに関する既存研究としては、谷川(2004)は「語り」を、竹下 (2006)は不動産仲介業者を用いて定着過程を明らかにしたものがある。しかし、いずれの研究も移住までの経緯や地域におけるコミュニティ構築の考察に留まっており、外部主体の役割を考察したとは言い難い。また、高木(2000)が、移住者によってもたらされる文化が現地住民に受け入れられることで、現地の生活を豊かにすると述べているものの、地域振興に関わるとまではしていない。 このように Iターンに関する研究において、定着後の移住者の実態を明らかにすることにも意義があると考える。 研究対象地域は高知県土佐郡大川村を選定した。選定理由としては、2014~2016 年の間に 49人が移住したという実績がある点と、移住者の人口比が大きいほど移住者が地域に与える貢献度合いが大きいと推測したため、人口規模が小さい点を重視した。 Ⅱ研究対象地域 高知県土佐郡大川村(以下、大川村)は、高知県の最北端、高知市の真北に位置し、北

006

「卒論・修論中間発表会」 2019/8/4 B150233 畑宗一郎

は愛媛県との県境である(第1図)。周囲を 1000m以上の山に囲まれ、吉野川によって地域の中央部が南北に分断された山村である。人口 400人程度で、大川村は離島や福島第一原発での避難地域を除くと、国内で最も人口が小さい自治体であり、過疎地域に認定されている。 1960 年には 4114 人が生活していたものの、1985 年には 751 人にまで減少した(第2図)。この間の人口減少率は 82%である。この大きな要因として、1972 年の白滝鉱山の閉鎖と、1973 年に完成した早明浦ダムの影響による村の中心の水没が挙げられる。このような 1970 年代前半の出来事が、大川村の過疎化を決定づけた。 その後、1981 年には「大川村総合開発計画」が策定され、「緑と若者で創造する豊かな平和郷」を目指した 5つの課題が設定される(第3図)。増渕(1992)によると、「緑と若者で創造する」という言葉が表すように、大川村における地域づくりには「地域資源の活用」と「若者の定住」の 2点が存在していた。さらに、前者は過疎を逆手にとって人口が少なく自然が豊富である点を強調し、後者は若者の定住対策であるとして、若者の職場作りの施策を展開したと述べている 近年は、移住促進計画に力を入れている。2005~2010 年の人口増加率が-23.6%、2010~2015 年がー3.6%と大幅に改善している。これは 20.0 ポイントの改善であり、高知県内ではトップの値である(第1表)。さらに 2014 年には高知県が、産業振興、生活支援、観光・交流の3つを主軸とした「大川村プロジェクト」を立ち上げている(第2表)。また、移住に関わる制度としては結婚・子育て支援に関する制度が整っている(第3表)。 また、1987 年には「ふるさと留学」の受け入れを開始した。児童・生徒の半数近くが県内外からの留学生であり、留学後、村に戻り就職した留学経験者も存在している。 このように大川村では、山村留学によって学校の維持を図りつつ、新たな雇用を創出することで、移住者の積極的な確保に取り組んでいることがわかる。 Ⅲ研究方法 研究方法は、地元住民と移住者の両者へのインタビュー調査とする。両者の「語り」を通して、地元住民からは移住者の増加による地域の変化、移住者からは自身の地域への定着過程と地域振興に関する発言を引き出したい。 現地住民と移住者の発言内容から、移住者の地域振興における役割を証明したいと考えている。 文献 作野広和(2016):地方移住の広まりと地域対応-地方圏からみた「田園回帰」の捉え方‒, 経済地理学年報, 62, 324-345 作野広和(2019):人口減少社会における関係人口の意義と可能性, 経済地理学年報, 65,

007

「卒論・修論中間発表会」 2019/8/4 B150233 畑宗一郎

10-10 筒井一伸・佐久間廉富・嵩和雄(2016):移住者と農山村の地域づくり-田園回帰における位置付け‒, 地理科学, 71, 156-165 谷川典大(2004):大隅諸島への移住者とコミュニティ-ショートトライフヒストリーと「語り」-,人文地理, 56, 394-409 竹下聡美(2006):屋久島への Iターン居住における仲介不動産業者の役割, 人文地理, 58, 475-488 高木学(2000):「離都向村」の社会学-I ターン地域にみる過疎地域と都市部の相互作用‒, ソシオロジ, 44-3, 3-20 田口太郎(2017):「関係人口」の地域づくりにおける可能性(特集 関係人口と地域づくり), Ehime Center for Policy Research 2017, 2, 13-18 増渕隆一(1992):長過疎地域からの脱去を目指して-高知県大川村-, 農村計画学会誌, 10, 60-67

大川村

Ü

40km0

第1図 対象地域の位置 資料:「国⼟数値情報」より作成。

008

「卒論・修論中間発表会」 2019/8/4 B150233 畑宗一郎

(⼈)

(年) 0

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1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

第2図 ⼤川村の⼈⼝推移 資料:「国勢調査より」作成。

第3図 ⼤川村「むらづくり」の基本課題 資料:「増渕(1992)」より引⽤。

009

「卒論・修論中間発表会」 2019/8/4 B150233 畑宗一郎

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資料:「国勢調査」より作成。

第1表 ⾼知県内における市町村別の⼈⼝の増減率

010

「卒論・修論中間発表会」 2019/8/4 B150233 畑宗一郎

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第2表 ⼤川村プロジェクトの概要

資料:「移住・定住政策の好事例集(第1弾)」より作成。

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第3表 ⼤川村の結婚・⼦育て⽀援制度

資料:「大川村移住応援ブック」より作成。

011

1

卒業論文中間発表会

B162245 村松慶二

地域コミュニティの再編成において郷土芸能が果たす役割

Ⅰ. はじめに

1)問題の所在

地域文化に関心が注がれるようになったのは, 高度経済成長期を経た 1970 年代以降と

されている。この時期から, それまでの高度経済成長期における経済優先の時代から, 次第

に「心の豊かさを求める」「文化の時代」へと移り変わり, 文化施設の普及や芸術祭, 伝統芸

能の保存会の出現など地域における文化の重要性は高まりを見せた。 2017 年には文化芸

術振興基本が文化芸術基本法として改正され, 人口減少や地域衰退に抗う地域活性化の力

として, 地域文化の力が期待されるようになった。(1)

中でも, 郷土芸能や祭礼行事は, 地元に根付き, 地域住民に維持されてきたことから, 地

域コミュニティを形成する上で重要であることが従来の研究でも指摘されてきた。(平口ほ

か, 2016)。そうした地域文化に関する地理学的な従来の研究としては, 主に地域で育まれ

てきた伝統文化がどのように継承され, また, 高齢化に伴う担い手不足の問題をどのよう

に対処したのかという点に注目した考察がされてきた。例えば, 石川(2004)は, 宇和島地方

における闘牛の存続要因を担い手に注目して考察し, 地域社会において, 闘牛の文化を維

持する担い手が観光化に伴い組織化することで維持されてきたことを明らかにした。また,

和田(2017)は, 神楽が観光資源化することで, 担い手が多層化・広域化し, 高齢化や少子化

による担い手不足に対応をしていることを明らかにした。どちらの研究においても, その地

域に根付く伝統文化が地域社会における人々のつながりをもたらしたことを間接的に明ら

かにしたと言えるが, 研究の主題としてその存続要因に重きを置いた研究となっている。

ところで, 東日本大震災の発生後, 東北では被災した状況にもかかわらず, 多くの地域で

郷土芸能が次々と復活させた現地の人々の姿が注目された。実際, 相澤ほか(2017)によれば,

宮城県において「2011 年5月に石巻市雄勝町の雄勝法印神楽, 8月に気仙沼市の平磯虎舞

と石巻市の牡鹿法印神楽, 9月に南三陸町本吉法印神楽, 11 月女川町竹浦獅子舞といった

ぐあいに, 次々と被災した民俗芸能が再開されていった」とされている。もちろん, 宮城県

だけでなく, 福島県は相馬市原釡の寄木稲荷神社祭礼や南相馬市小高区の田植踊, 岩手県

は, 大槌町の陸中弁天虎舞や大船渡市の仰山流鹿踊など, 被災しながらも復興を遂げ, 活動

を再開した郷土芸能は数多く存在する。ここに, 地域社会における郷土芸能の役割, 文化の

力の本質を見ることができるのではないだろうか。植田(2013)は, そのように災害に見舞わ

012

2

れた地域で郷土芸能が復活する要因として, 「回帰的な時間」を作り出す性質を指摘してい

る。もともと地元住民の生活に埋め込まれていた祭礼や郷土芸能を再開させることは, すな

はち被災者に震災前の生活を呼び起こし, 震災の困難に立ち向かうための力を生み出して

いると指摘している。また, 文化庁の提言においても(2), 東日本大震災では, 地域の郷土芸

能をいち早く復興させたことによって, 文化の力が被災者にとっての心の原動力となり,

地域コミュニティの再構築につながったとされている。

しかし, 実際の所, 被災によって崩壊したコミュニティがどのように再構築され, 郷土芸

能がその過程においてどのような役割を担ったのかを詳細に分析した研究はなされていな

い。というのも, 被災した郷土芸能に関する研究としては, 主に社会学や民族学の分野から

の研究が蓄積されているが, 地理学における研究の蓄積はあまりされておらず, 例えば相

澤(2005)の研究では, 阪神・淡路大震災後の復興過程における地蔵祭祀の事例検討を通して、

地蔵祭祀の記憶や意味づけが媒介となって被災後の場所の再構築が果たされていることを

明らかにしているものの, 地蔵祭祀によって人々のつながりが震災前後でどう変容したか

は考察されていない 。だからこそ, 被災したコミュニティの再編成の過程で, 郷土芸能を

中心としたネットワークがどのようにして広がったのか, またそれによってどのようにし

てコミュニティが再構築されたのか, その諸相は明らかにすることは, 意義があると考え

ている。

2)研究目的及び対象地域

本研究では, 前節の問題を踏まえ, 地域における郷土芸能が, コミュニティの再建の過程

の中でどのような役割を果たしてきたのか, そして郷土芸能を中心とするネットワークが

震災前後でどのように変化したのかを明らかにすることを目的とする。一度崩壊したコミ

ュニティにおける郷土芸能が地域社会においてどのように作用しているかを考察すること

で, 地域社会を再生・活性化する上で, 文化的な力がなぜ必要なのかを導き出すことが狙い

である。また, 被災した東北の郷土芸能の中には, その復興の過程で, 外部からの支援や地

域外で芸能を演じる機会が増加し, 今まで関わりのなかった新たなつながりも生まれた事

例も確認されていて, 地域内部完結型の郷土芸能から変化を遂げたことが指摘できる。この

点で, 東北の事例は, 従来の地理学の研究で指摘された観光化に伴う担い手の変化だけで

は説明できない存続要因があると考えられるため, この研究を通してその問題に対する答

えも導き出していきたい。

この目的を踏まえ, 本研究では岩手県大槌町の臼沢鹿子踊を事例に研究を進めていく(図

1)。この対象地域を選定した理由として, ①震災による, 物質的かつ人的被害がある上で,

地元の郷土芸能が復興を果たしている地域, ②保存会または芸能団体が現在も活動してい

013

3

ること, ③震災後に, 新たなネットワークが形成され, 震災前のコミュニティから変化が確

認されていることがあげられ, 本研究の目的に対して適切な事例であると判断した。また,

対象とする郷土芸能である鹿踊は, 全国的に見ても東北特有のもので, 主に岩手県を中心

として分布しており(図2), 供養を目的とするその芸能は, 東日本大震災においても特別な

意味を持っていたと言える。また対象地域における鹿踊は約 400 年の歴史をもち, 古くか

ら地域社会の生活に埋め込まれた事例であり, 震災によって被害が甚大であったにもかか

わらず復興を遂げていることから, 震災前後のコミュニティを比較するのに適切であると

言える。

Ⅱ. 日本における郷土芸能

種類として, 踊り, 神楽, 語物, 三番叟, 時芝居, 獅子舞, 祝福芸, 田遊び, 田楽, 渡来芸,

舞台芸, 風流, 舞, もどき, があり各地域によって流派が異なったり, 独自の形態を生み出

していたりと, 細かくその種類を見ていくと全国で1万種を超えるとも言われている(星野,

2013)。中でも東北は他の地域よりも上記の郷土芸能が古くから数多く残っていて, 特に沿

岸部には 3000~4000 種類もの祭礼・芸能が存在したとされている。震災によってその数は

減少したものの, 無形文化遺産情報ネットワーク(3)の情報によれば, 2014 年時点で, 岩手

県 319, 宮城 336, 福島 825, 計 1480 の芸能団体が確認されている。(4)

Ⅲ. 対象地域概観

岩手県大槌町は, 上閉伊郡に所属し, 陸中海岸に面した町で主に漁業が盛んな地域であ

る。郷土芸能団体は, 無形文化遺産情報ネットワークに登録されているもので 19 団体現存

している(表1)。震災前の総人口は 15,276 人(2010)だったが, 震災によって死者 803 名,

行方不明者 474 名と人的被害は甚大であった。また, 3,717 棟の建物が全壊または半壊し,

町外に避難する人や大槌町から離れていく人々など, 現在(2018)人口は 11,297名と大幅に

減少した。この震災によって, 臼澤鹿子踊保存会の会員やその家族も犠牲になり, 衣装や道

具なども津波によって一部流出した。しかし, 2011 年の5月には外部からの支援を受け, 復

興の舞を披露している。また, 2012 年9月には大槌町の小鎚町神社にて「小鎚神社例大祭」

が開催されるなど, 震災から間もない時期から活動を再開させ, その復興の力の強さがう

かがえる。現在は基本的に毎年 9月下旬に小槌神社で行われており, また, 外部の祭りに招

かれる形で公演も行なわれている。

Ⅳ. 研究方法

・史料等の文献調査。保存会, 担い手, 地域住民等への聞き取り調査。

014

4

注)

1)『都市問題 8』の特集, 「地域をゆたかにする文化の力」による。

2)文化審議会文化政策部会では,提言「最近の情勢と今後の文化政策~東日本大震災から

学ぶ, 文化力による地域と日本の再生~による。

3)東京文化財研究所によって東日本大震災で被害にあった郷土芸能・祭礼の情報をまとめ

たウェブサイト。

4)無形文化遺産情報ネットワークによる。

参考文献

大石泰夫(2016):『祭りの年輪』. ひつじ書房.

星野ほか(2013):『民俗芸能探訪ガイドブック』. 国書刊行会.

後藤・安田記念東京都市研究所(2018):『都市問題 8』. 109, 4-46.

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理, 57, 4, 62-75.

相澤ほか(2017):東日本大震災後における民俗芸能の復活―なぜ大曲浜獅子舞は年間 45

回も上演されたのか―. 社会学年報, 46, 45-56.

阿部未幸(2014): 地域における郷土芸能の役割と今後の可能性-岩手県岩泉町「中野七頭

舞」を事例として-. 総合政策, 15, 2, 161-180.

石川菜央(2004):宇和島地方における闘牛の存続要因-伝統行事の担い手に注目して-.

地理学評論, 77, 14, 957-976.

植田今日子(2013):なぜ大災害の非常事態下で祭礼は遂行されるのか――東日本大震災

後の『相馬野馬追』と中越地震後の『牛の角突き』. 社会学年報, 43,

43-60.

杉田ほか(2018):東日本大震災後の福島県浜通り地方における民俗芸能の被災と復興の

状況. 福島大学地域創造. 29, 2, 147-164.

平口ほか(2016):実践コミュニティとしての郷土芸能活動が農村の維持発展に果たす役

割-岩手県陸前高田市の事例-. 農業経済研究, 87, 4, 424-429.

和田(2017):広島県における神楽の担い手と観光資源化への対応.

地理科学, 72, 2, 43-55.

015

5

Ü

大槌町

0 5 10 20 4030㎞

第1図 対象地域

016

6

0 10 20 40 60 80㎞

Ü

凡例

鹿踊所在地

第2図 鹿踊の分布図

資料:無形文化遺産情報ネットワークをもとに筆者作成

017

7

名称 復興状況 被害詳細

安渡大神楽 再開衣装・道具・屋台など殆どを流失。地盤沈下もあり元の場所での再開はしないことが決定。2012年秋の大槌祭りで復活。2013.5月には初めて町外で公演し, 活動を再開

安渡虎舞 再開 犠牲者数名, 道具の多くが流出。支援を受けて道具等を新調。

臼澤鹿子踊 再開 犠牲者数名, 道具の一部が流出するが, 2011年5月に伝承会館前にて復活の舞を披露。以後継続中。

大槌神楽 継続中 大きな被害なし。

上吉鹿子踊 再開 施設が無事だったので, 道具類の被害は小さめ。

鴈舞道七福神 再開 犠牲者複数に加えて山車が流される。外部支援をうけて, 活動を再開

吉里吉里鹿子踊 再開犠牲者数名, 衣装・道具の8割が流失。浸水した道具を洗浄して再利用。2011年避難先の長野県や民間支援を受けて再開。

吉里吉里大神楽 再開保存会館が流失し, 衣装・道具が流失。また獅子頭の製作者が行方不明のまま。その後, 衣装・道具類を修理し, 2011年8月に天照御祖神社祭で奉納。以後活動続けるも道具の保管

吉里吉里虎舞 再開 多くの家が半壊, 犠牲者数名。2011年7月に吉里吉里中学校の生徒が披露, 以後継続中。

吉里吉里虎子舞 情報なし

城山虎舞 再開 会員に犠牲なし。倉庫等の施設が流出。道具や衣装も大半流出するが復興を遂げた。

城内大神楽 再開 地区が被害を受け, 衣装・道具など流失。支援によって道具を新調・修理し活動再開。

中須大神楽 再開犠牲者多数。保存会の道具一式が流失。活動するにあたり, 2011年例大祭は浪板神楽より道具一式を借用。民間の支援で獅子頭が作成し, 活動を再開。

浪板牛方節 情報なし

浪板神楽 情報なし

浪板大神楽 再開準備中 犠牲者数名。道具類への被害は少ない。2011年は服忌とした。活動再開に向けて準備中(2011年現在)

松の下大神楽 再開 犠牲者数名。道具類は流失・消失し, 残ったのは個人所有の獅子頭3体。民間の補助金で道具類一部を作成

向川原虎舞 再開会員数名や建物の多くが犠牲になったが, 外部からの支援を受け, 2011年11月に東京都千代田区のイベントにて舞を披露。以後継続中。

陸中弁天虎舞 再開 倉庫等は流出するものの道具の一部は残り, 外部支援もありながら活動を再開。

第1表 大槌町における郷土芸能とその被災状況

資料:無形文化遺産情報ネットワークをもとに筆者作成。

018

1

卒業論文中間発表 B163115 長田伸寛

*研究題目:地方都市におけるマンション購入世帯の現住地選択の意思決定プロセス

I. 研究の背景と目的

戦後,日本は深刻な住宅不足に陥った。この住宅不足を解消するため各種の住宅政

策が急遽実行された。まずその基盤づくりのための住宅政策によって、住宅金融公庫

法(1950),公営住宅法(1951)および日本住宅公団法(1955)が整備された。住

宅金融公庫は、中間層の持家取得のために住宅ローンを供給した。地方公共団体は低

所得者用に低家賃の公営住宅を建設し、住宅公団は大都市の中間層を対象として集合

住宅の団地を開発した。このように日本の住宅政策の主目的は、住宅を増やすことで

あった。

住宅公団の設立後、多くの集合住宅の団地やニュータウンが建設された。しかし、

地方公共団体は公営住宅を低所得者層向けに提供したが戸数が不十分であった。大谷

(2012)は、分譲マンションの建設は、基本的に民間企業に任せ、1980 年代には

「住宅余剰」にも関わらず,その後も規制緩和等によって多くのマンションが建てら

れてきているという。

1990 年代後半以降、マンション供給の盛んな地域は、東京都心とその近郊,大都

市圏そして地方都市中心部である。このような都心回帰によって都市の居住地構造が

変容し、都市中心部が居住地として再評価を受けることになったという(久保,

2010)。2018 年国土交通省調査によると、新設住宅着工戸数は(全国)で 94.2 万

戸(前年比,2.3%減,2 年連続の減少)、そのうち分譲マンションは 11.5 万戸(同

3.8%減, 昨年の増加から再ひ減少) である。

このようなマンションをめぐる社会的背景の中で、居住や住宅を扱った

地理学的な研究が進み、大都市圏を中心としたマンションの地理学的研究

が始まった。主としてマンション供給の増加が都市居住構造をどのように

変容してきたかを香川(1984 など)、由井(1986 など)などは明らかに

してきた。

1990 年代以降のマンション研究の流れとして、久保(2010)は、マンシ

ョンの供給面の研究を「都市の土地利用変化とマンション供給」の関わり、

019

2

「マンション供給と人口動態」、「マンション供給者の特性」の3つに大

別し、次に需要面としては、居住地選択や世帯特性による居住選好の違い

や、居住地選択の意思決定過程への研究へと進化したという。大塚

(2005)は、全国の都市の多くが中小都市であり、また、その中心市街地

の空洞化が大きな問題であるという。さらに久保(2010)は、居住者特性

や居住選好をおさえながら現住地選択の意思決定を分析する研究が大都市

圏等において蓄積されることが期待され、都市規模による現住地選択の意

思決定の違いが考えられるという。

そこで、本稿では一部の人口が増加している地方中都市1)の中心地を事例とし

て、供給面もふまえながら、需要面での居住者の特性を調査し、マンション購入の意

思決定プロセスの実態を明らかにしたい。地方中小都市の中心市街地において

も、都市開発事業などによってマンションが建設されることが多く, 1990

年代後半より都市中心部に居住する人口が増加している。次のような先行研

究を参考にして分析を進めたい。地方中小都市の事例として、久保(2008)

は、茨城県水戸市中心部において 1990 年代後半以降に供給されたマンシ

ョンを購入した世帯のうち、中高年夫婦世帯や単独世帯は永住意識が高

く、東京都心部とは異なる都心回帰がみられるという。また、伊藤

(2014)は、居住地選択の意思決定過程では、夫婦が居住地選択について

異なる意見を持ち、就業状況によっては選択の結果も異なることが予想さ

れるという。

II. 研究方法

1. 全国マンション市場動向、国勢調査等によるデータ調査と分析

2. 行政機関への統計調査と聞き取り

3. 不動産会社への聞き取り

4. マンション居住者のアンケート調査・聞き取り調査

III. 図表 別紙

020

3

IV. 対象地予定

第1候補 広島市 先行研究の地方都市茨城県水戸市と同規模であり、また周辺地

域の人口減少の中で比較的人口が増加し、マンション数は少ないながら、増加の

可能性が高いといえる特徴がある。

第2候補 滋賀県草津市 近畿圏である程度の人口増加、マンション数の増加地域。

1)国土交通省:都市規模別の目標・指標の検討

https://www.mlit.go.jp/singikai/koutusin/koutu/shoiinkai/5/images/42.pdf(2019.7.24

参照) 中都市:30 万人未満、10 万人以上

2) 由井義通(1989):『地理学におけるハウジング研究』,大明堂 p.124

参考文献

伊藤修(2001);千葉ニュータウンの戸建住宅,地理学評論,74A,585-598

大塚俊幸(2005):豊橋市中や市街地におけるマンション供給と居住地選好,地理学評

論 78,202-227

大谷信介編著(2012) :『マンションの社会学;住宅地図を活用した社会調査の試

み』,ミネルヴァ書房

香川貴志(1984):都心部における民間集合住宅の立地―名古屋市を例として,人文地

理,36,362-375

久保倫子(2008):水戸市中心部におけるマンション購入世帯の現住地選択に関する意

思決定過程,地理学評論,81,45-69

久保倫子(2010):マンションを扱った地理学的研究の動向と課題:日本での研究を中

心に,地理空間,3,43-56

富田和暁(2015):『大都市都心地区の変容とマンション立地』,古今書院

不動産経済研究所(2009-2018):『全国マンション市場動向:実績・展望』,不動産

経済研究所

由井義通(1986):広島市における中高層集合住宅の開発とその居住者の特性,人文地

理,38,56-77

021

4

図 1 我が国おける住宅の種類2)

図2 マンション発売戸数推移(2009-2018)表紙 s1

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

首都圏 近畿圏 その他 全国計

022

5

図3 全国マンションストック戸数(2013)

表1 広島県市・区別 分譲戸数 2010-2018 戸数

資料:『全国マンション市場動向』2018 より作成

023

6

図 4 人口増減率 都道府県(2010‐2015)

資料:『国勢調査報告』平成 27 年による

024

7

図 5.1 東広島市人口の推移

資料:総務省『国勢調査報告』による

図 5.2 東広島市地区別人口の推移

資料:東広島市「住民基本台帳」による

025

2019.8.4

B163278 渡辺優太

Ⅰ. 研究題目

漁業管理と主体間関係の分析-養殖業を事例として-

Ⅱ. 研究の背景

近年、日本の第一次産業は縮小・再編期を迎えている。背景には少子高齢化に伴う消費量の低下や労働

力確保の難しさ、輸入品との価格競争の激化など様々な要因が考えられる。漁業においても同様であり、

従来から漁業管理の中心であった漁業協同組合についても、合併による運営効率化が進められている。崎

田(2015)は合併に伴う広域漁協下での漁場管理を例に、漁協の下部組織である自主的管理組織の台頭に

よって既存漁業者の意向が反映されやすくなった一方、既存権益の囲い込みが行われている点を指摘し

た。その上で、地元主義的な管理の在り方を今後議論する必要があると述べた。つまり、漁協の合併によ

って組織全体が硬直化し、漁業管理の特徴である「漁業者集団(いわゆる漁協や生産組織)が共同で管理し、

持続的な資源確保と共に地域の経済や文化を発展させていく」(Fisheries Research Agency News, 2013)

本質が失われる可能性があると考える。

一方で漁業における収益性は、同じ第一次産業である農業と比べても不利な点が多い。例えば、気象条

件や海洋条件、魚群の習性などの他律的な条件に左右される。従って漁業地域では、漁業者の専業化ない

し廃業という二者択一的な状況の中で地域変容が生じてきた(山内, 2004)。廣川(2013)は、漁家自身の経

済的自立性を高めることによって漁業管理のコストを吸収していく必要性を主張した。沿岸漁業におけ

る 2016 年の平均漁労所得は 236 万円と、漁業単体では低水準であり、自立性の向上は漁業管理と密接に

関わる部分であると考えられる。1)

最近では、橋爪ほか(2016)が町単位での漁業者集団の生産外活動に着目し、直売や飲食店経営など流通

業者を介さない手段の台頭で消費者と生産者の相互理解が進み、結果として活動意欲向上や担い手の創

出に繋がることが存続要因の一つになると言及した。また、新たな収入による経済的利益は自立性の向上

に寄与すると考えられる。

以上のように、縮小・再編期において漁業管理の中心であった漁業者集団内部でも構造変化が生じてい

る。

Ⅲ. 研究の目的

漁業管理についての考察は漁業の縮小・再編期を分析する上で重要な要素であると考える。先行研究に

おける事例蓄積は進められていて、様々な角度から検討されている。例えば、井村(1989)ではアユ養殖を

事例に、生産者組織間における流通過程の差異が個々の経営に影響を与え、更に地域的な養殖業の盛衰を

規定している事を明らかにした。林(2007)は関係者間の連携や合意形成による品質管理の徹底、漁業者・

地域水産業の役割について理解を促す機会を充実させ、社会的貢献への配慮や他産業との活動連携、教育

活動への協力にも配慮すべきだとした。

以上のように、漁業管理は流通や品質管理など、諸条件が関わる構造であり、それらは主体間関係が大

きな影響を与えると言える。一方で、漁業の衰退・再編の中で、漁業者集団外部にはどのような影響を与

えたのか、また、漁業者集団を形成する個人の経済的自立性はどのようにして規定されているのかといっ

たミクロスケールでの議論をする余地があると考える。そこで今回は、社会ネットワークや社会関係資本

といった主体間関係に加え、経営規模に着目することで漁業管理に関する今後の方向性を検討したいと

026

2

考える。

Ⅲ. 研究対象

本研究では広島県の牡蠣養殖業を事例として取り上げたい。理由は大きく分けて 3 つある。第一に、

市場シェアが過半数近くを占める基幹産業である点。第二に、個人経営体が全体の半数以上でありなが

ら、近年は会社経営体が微増しており、後継者が存在する経営体が多い点。第三に、養殖業は経済効果を

最大限高めようと選択的に受容する漁法であり、結果として地域にもたらした影響は一様ではない(横山,

2011)点である。

しかし、他地域と同様に経営体数は減少し、主要市場における割合も年々減少傾向にある。これは第二

の点と相反する現象である。そこで今回は、同一県内の各漁協単位で調査し、比較検討したいと考える。

広島県内には 10 市 2 郡に漁業組合が分布しており、そのうち 7 市 1 郡でかき類の養殖が営まれてい

る。2)

Ⅳ.研究方法

・広島県県政情報センターでの統計データ入手

・牡蠣養殖を営む 7 市 1 郡の漁協・広島市牡蠣養殖連絡協議会へ聞き取り。

・冷凍牡蠣やかき醤油など、加工事業を手掛ける会社に対しての聞き取り

・兼業であり、漁業を主とする 53 経営体(うち水産加工業 24、勤め 14、その他 32)の詳細な分析

・各主要都市の中央市場出荷量の推移を基にした分析

1) 水産庁 平成 29 年度水産白書 : 第 2 節(2)漁業経営の動向による。

2) JF 広島漁連ホームページ、並びに 2013 年漁業センサスによる。

参考文献・ホームページ

・崎田誠志郎(2015) : 広域漁協下における漁場管理の構造と変容―和歌山県東漁協を事例として―.人

文地理(67), 283-305.

・山内昌和 (2004) : 漁業地域研究の新しいアプローチにむけて. 人文地理, 56(4), 351–374.

・井村博宣(1989) : 那賀川平野におけるアユ養殖地域の分化 とその要因. 地理学評論, 62(9), 615-636.

・橋爪孝介, 本多広樹, 坂本優紀, 麻生紘平, 小林愛, 馮競舸, 川村一希(2016) : 茨城県大洗町における漁

業者の活動からみた漁業地域の存続. 地域研究年報(38), 151-177.

・林紀代美(2007) : 地域水産業振興を考える-地域水産物と消費者との接点に注目して-. 経済地理学年報

(53), 78-97.

・横山貴史(2011) : 北海道函館市南茅部におけるコンブ養殖業の地域差. 地理学評論, 84(6), 610-625.

・水産庁 平成 29 年度水産白書 : 第 2 節(2)漁業経営の動向.

(http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/t1_2_2_2.html)

・Fisheries Research Agency News(2013) : 世界が注目する日本の「漁業管理」. 独立行政法人水産総合

研究センター, vol36(9), 20-25.

027

3

・廣川裕司(2013) : コモンズと公共空間 : 都市と農漁村の再生にむけて. 昭和堂, 77-108.

第 1 図.各都市中央卸売市場への出荷数推移

(広島県統計課 かき出荷対策資料を基に作成 ※一部数値の欠測あり)

第 1 表.各市町村における牡蠣養殖業を主とする経営体数の推移

1970 年 2013 年

広島県 895 312

広島市 258 59

呉市 169 66

竹原市 0 3

福山市 13 0

大竹市 0 19

廿日市市 72 62

江田島市 175 69

海田町 21 2

坂町 48 12

尾道市 91 0

東広島市 48 20

(1970 年は広島県統計課 かき出荷対策資料を、2013 年は漁業センサスをもとに作成)

028

4

第 2 表.牡蠣養殖を主とする経営体の総数(広島県)

個人 会社 漁業生産組合 会社の比率(%)

2008 年

広島県 281 71 1 20.1

宮城県 804 4 0 0.5

2013 年

広島県 230 81 1 26.0

宮城県 355 3 6 0.8

各年の漁業センサスをもとに作成

第 2 図.金額別で見た各経営体における年間出荷額の割合(2013 年)

(2013 年 漁業センサスをもとに作成)

029

1

卒業論文中間発表要旨 2019年 8月 4日 B164887 安田啓悟

東京におけるゲーム産業の集積メカニズム

1,研究背景・目的 近年,日本の製造業は国際競争の激化に伴い,苦境に喘いでいる。その対応策として, 日本の文化に根ざすコンテンツ産業の育成が主張されている(半澤,2005)。コンテンツ産業の定義は,経済産業省によると,「映像(映画・アニメ),音楽,ゲーム,書籍等の製作・流通を担う産業の総称」とされている 1。コンテンツ産業は 1990 年代後半以降急速に発展した産業であり 2,その理由として山本(2007)では,当該産業に分類される多くが成長産業であること,そして当該産業が大都市集積という立地特性を有していること,を挙げている。また,古川(2010)では,コンテンツ産業自体が大都市経済の牽引役として注目が集まっている,と述べている。 前述したように,コンテンツ産業には様々なものがあるが,本研究ではゲーム産業を取り上げる。デジタルコンテンツ白書 2018によると,ゲーム市場はコンテンツ市場をリードする存在と述べられており(図 1),また,半澤(2005)でもゲーム産業は日本を代表するコンテンツ産業である,と述べられている。ゲーム産業を対象とした先行研究では,ゲームを開発する際,どのような組織を編成するのが望ましいかを論じた小橋(1997),東京におけるゲーム産業の集積を指摘し,関連産業に基づいて特色を記述した馬場・渋谷(1999,2000),広域中心都市の一つである福岡市のゲーム産業の発展の可能性を指摘した大渡(2007),ゲーム産業における分業形態を指摘すると同時に企業がどのように労働力を得ているか,というところまで言及した半澤(2005)などがある。半澤(2005)以外の先行研究では,ゲーム産業の集積地での労働市場に対する議論は行われていなく,それに疑問を呈した半澤(2005)の研究でも労働市場に関する記述は僅かであり,アンケート回答企業の新卒者採用率や離職率,そしてどのような採用方法が好まれるか,などといった企業レベルの分析にとどまる。 しかし,原(2005)で「コンテンツ産業の産業集積の中で,近接性,ネットワークの中身がブラックボックスであり,それらが魔法の杖のように全ての問題を解決するかのような印象を与えている」ということや,半澤(2001)で,デジタルコンテンツ産業の産業従事者は他産業従事者と比べて特異な性質がある,と指摘されていることを考慮すれば,当該産業従事者のネットワークを明らかにすることは大きな意義があることだと考えられる。ゲーム産業にとどまらず,デジタルコンテンツ産業の産業従事者を対象とした研究は少なく,アニメーション産業を対象とした山本(2007,2018),大阪のクリエイター集積地でのネットワークを調査した古川(2010)の研究が挙げられるほどで,まだ議論の余地があると

030

2

考えられる。よって本研究は,ゲームソフトウェア産業の産業従事者のネットワークの面から集積要因を明らかにすることを目的とする。 2,ゲーム産業について 経済センサスより,2012年と 2016年を比較すると、事業所数と従業者数は共に増加している。市場規模も、かつては 1997 年をピークに減少傾向にあったものの 3、近年ではオンラインプラットフォームの発達の影響で再び増加し、2017 年には過去最高の 2兆 1313億円となっている(図 2)。また家庭用ゲーム市場とオンラインゲーム市場を比較すると,家庭用ゲーム産業は規模が年々縮小傾向にあるのに対し,オンラインゲーム市場は市場拡大が進んでいる(図3)。 ゲーム開発の大まかな流れを図 4に示す。ゲーム産業にはパブリッシャーとデベロッパーと呼ばれる 2つの職種がある。徳岡(2015)によると,「デベロッパーは「開発の中心となり(時には外注を含む)開発チームを束ね,最後まで責任を持ってゲームを開発する」企業のことを指し,パブリッシャーとは「デベロッパーが開発したゲームのマーケティングや広告などの販売戦略を担当し,製造本数を決め,在庫に対するリスクを負って責任を持って自社のブランドで販売する」企業のことをいう」とある。大手メーカではパブリッシャーとデベロッパーの役割両方を担っている場合が多いが,今回の研究では,デベロッパーの比重が高い企業を調査対象としたい。 3,対象地域:東京都特別区 選定理由については,上記にもあるがデジタルコンテンツ産業は大都市集積という特徴があり,日本では東京都に極度の集中が見られるためである。半澤(2005)によると,首都圏に日本に存在するゲーム会社のうち約 8割が集中し,東京都区部では約 7割近くが集中している,とある。2019年 8月 1日現在では,全国 729 箇所あるゲーム開発会社のうち478 箇所が東京都に集中しており,うち 453 箇所が 23 区内に立地している(図 5)。 4,研究方法 『ゲーム産業白書』(メディアクリエイト社刊),『デジタルコンテンツ白書』(デジタルコンテンツ協会刊)などといった文献調査,企業・産業従事者へのアンケート調査・聞き取り調査 注 1,経済産業省「コンテンツ産業の現状と今後の発展の可能性」による(http://www.eco.shimane-u.ac.jp/nodat/infoind/infoind201608b.pdf)(2019 年 8月 2日最終観覧) 2,小長谷・富沢(1999)による

031

3

3,半澤(2005)による 参考⽂献 ⼤渡理恵(2007):地⽅都市におけるゲーム産業発展の可能性.九州経済調査⽉報,61,15-28.

⼩⻑⾕⼀之・富沢⽊実(1999):『マルチメディア都市の戦略―シリコンアレ−とマルチメディアガルチ-』.東洋経済新報社. 小橋麗香(1997):日本における家庭用ゲームソフトウェアの開発.国際研究論叢,10(3・4),81-107. 『デジタルコンテンツ白書 2018』. デジタルコンテンツ協会. 徳岡正肇(2015):『ゲームの今』.SBクリエイティブ株式会社. 馬場靖憲・渋谷真人(1999):東京ゲームソフトクラスター-企業の空間的集積の考察-.研究 技術 計画,14,266-278. 馬場靖憲・渋谷真人(2000):東京ゲームソフトクラスター-形成要因の総合的考察-.研究 技術 計画,15,33-47. 原真志(2005):グローバル競争時代における日本のデジタルコンテンツ産業集積の競争優位とイノベーションの方向性-SDガンダムフォースプロジェクトを事例に-.経済地理学年報,51,368-386. 半澤誠司(2001):東京におけるアニメーション産業集積の構造と変容.地理学評論,47,288-302. 半澤誠司(2005):家庭用ビデオゲーム産業の分業形態と地理的特性.地理学評論,78,607-633. 半澤誠司編(2016):『コンテンツ産業とイノベーション』.勁草書房. 古川智史(2010):クリエイターの集積におけるネットワーク構造-大阪市北区扇町周辺の事例に-.経済地理学年報,56,88-105. 山本健太(2007):東京におけるアニメーション産業集積のメカニズム~企業間取引と労働市場に着目して‒.地理学評論,80,442-458. 山本健太(2018):大都市の創造性とアニメーションスタジオの役割-労働者の働き方とネットワークに着目して-.都市地理学,13,37-47. BaseconnectLIST (https://sales.baseconnect.in)(2019 年 8月 1日最終観覧)

032

4

0

5000

10000

15000

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25000

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

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2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

静⽌画・テキスト 動画 ⾳楽・⾳声 ゲーム 複合型

(%)

図 1 コンテンツ別構成比の推移 デジタルコンテンツ白書 2018 より作成

図 2 ゲーム産業市場推移 デジタルコンテンツ白書 2018 より作成

億円

033

5

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2000

4000

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2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

家庭⽤ゲーム オンラインゲーム

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図 4 ゲーム開発の流れ 徳岡(2015)より作成

図 3 家庭用ゲームとオンラインゲーム市場推移 デジタルコンテンツ白書 2018 より作成

034

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図 5 東京 23 区のゲーム開発会社分布図 国土数値情報・基盤地図情報・BaseconnectLIST(https://sales.baseconnect.in)を元に作成

035

1

卒論中間発表会

B166374 原健太

原料調達ネットワーク生成による品質とローカル性の追求 -兵庫県たつの市の醤油メーカーを事例に-

1. 研究背景と目的

従来のグローバルな食料供給体系が拡大し続ける一方で,近年食品偽装や疫病などの食品衛生上の

トラブルが発生し,消費者の食品の安心・安全への関心が高まっている。その中でいかにして食品の安

全性を保つかという観点から,食料の生産から消費に至る一連の流れであるフードシステムに注目が

集まっている(荒木ほか,2007)。今日の広域的な食料供給体系の構造的な脆弱性に対しては,流通経

路の単純化が効果的な方策として考えられる。具体的には地産地消の推進やショートフードサプライ

チェーン (SFSCs)などの取り組みが例として挙げられる。このような取り組みはグローバルな食品

流通に対する新たなタイプの食品流通と言え,食品の品質向上やローカルな地域への経済的影響が見

込まれるものである(荒木,2011)。

このようなフードシステムに関する研究では,加工食品は原料となる食品の流通も関わるため,生

鮮野菜などと比較して流通経路が複雑であることが指摘されている(荒木,2011)。その中で,特に

SFSCs の文脈において食品加工者と原料生産者の関係についての研究が地理学の分野で進められてい

る。味噌製造業者と大豆・米の生産者のネットワークから原料農産物の品質構築に焦点を当てた伊賀

(2007),酒造業者と酒米生産者の提携関係の生成や機能を論じた伊賀(2008),荒茶工場の経営形態

による取引の違いから原料の品質を分析した大石(2013)などがある。これらは食品加工者と原料生

産者が結びつきを強めることで,密な情報交換によって品質の向上に繋がることを示している。

また,SFSCs は地域活性化の役割も期待されている。生産地との結びつきが強いという点で,地場

食品産業は製品に「地元産である」という付加価値を与えることができる。しかしローカル性による差

別化は容易ではなく,地元地域との強固な結びつきが不可欠である(大橋・永田,2009)。同様に高柳

(2007)も牛肉の地域ブランドについて,商品自体に付随するローカル性が薄れてきており,地域ブ

ランドが品質を保証するものではなくなってきていることを指摘している。また SFSCs についての研

究が日本よりも先に進んでいた欧米においても,ローカルを謳う食品が必ずしも地元地域で生産され

ているわけではないことや,ローカル性と品質は必ずしも一致しないことが主張されている(Ilbery

and Maye, 2006)。

こうした議論を踏まえると,原料調達ネットワークから原料の品質,地元地域との結びつきとロー

カル性にそれぞれ焦点を当てた研究はあるものの,品質とローカル性を合わせて検討した研究は不足

していることがわかる。そこで本研究では醤油製造業を事例として扱う。醤油製造業に関する研究に

は,高木(2005)があるものの,生産地と製品の流通先のみに焦点が当てられており,原料調達に関

する記述はみられない。醤油製造業が集積した地域は,周辺で原料の調達が可能であった地域であり,

さらには大消費地に近接していることから,本来的にSFSCsのような性格をもっていると考えられる。

036

2

しかし食料供給体系の発達に伴って原料産地は変容しており,伝統的な産地でありながらもそのロー

カル性は稀薄になっている可能性がある。また,醬油は「特級」「上級」「標準」という等級で区分され

て販売されるため,異なる産地の原料から製品の品質についての議論も行いやすいと考えられる。

以上より本研究の目的は,食品加工者が原料産地を規定する要因を解明することである。原料調達

ネットワークによって製品に求める品質やローカル性にどのような違いがあるのかを明らかにする。

2. 研究対象地域

本研究では,兵庫県たつの市を事例とする(図1)。兵庫県は,千葉県,香川県と並ぶ伝統的な醤油

産地のひとつであり,その出荷量は118, 085kℓで全国シェアの2位となる15.6%を占める(図2)1)。中でも兵庫県たつの市は淡口醤油発祥の地として知られ,大手メーカーを含む 10 社が市内に立地

している。たつの市での醤油生産の歴史は古く,1587年に始まったとされる。その背景には,播磨平

野が醤油の主原料となる大豆や小麦,米の生産地であり,容易に入手できたことが挙げられる。淡口醤

油の特徴である塩も,大産地である赤穂から調達することができた。さらに現市内中心部を流れる揖

保川は鉄分の少ない軟水であり,醤油製造に適した特徴をもつ場所である。また淡口醤油は「関西の

味」と言われる通り,主な消費地である関西地方へも輸送が容易だったと言える 2)。2017 年のたつの

市の醤油出荷量は 33,244kℓで,2007 年と比較して約 36%減少している。日本全国の出荷量の推移

と比較してもその減少率は倍ほどである(図3)。

醤油の原料産地の表記は,多くの場合商品ラベル等に「国産」と記されているだけで,国内のどの

地域で生産された原料なのか不明である。このような製品は品質やコストを検討する中で地元地域外

の産地から原料を調達している可能性がある。一方で近年,地元農家と契約して原料生産に取り組ん

でいるメーカーもあり,2001 年からは小麦,2006 年からは大豆の地元栽培を開始している 3) 。ここ

で,「地元」として考えられる西播磨地区 4)と中播磨地区 5) における大豆と小麦の生産量をみてみる(図

4・5)。大豆・小麦ともにたつの市で増加がみられた(図4)。姫路市でも大豆の生産量が増大してい

る傾向にあり(図5),実際に地元で生産された原材料を用いて,ローカル性を高めた製品を生産して

いると考えられる。したがって,メーカー間だけでなく各メーカーが取り扱う製品間でも,製品に求め

る原料意味合いは異なっており,それらを検討可能な地域であると言える。

3. 研究方法

・ 各種統計調査

・ 醤油製造会社への聞き取り調査

・ 生産・流通体系の整理

037

3

付記

1) 2018 年食品産業動態調査による。

2) 龍野の地場産業-淡口醤油による(龍野商工会議所ホームページ,https://tatsuno.or.jp/地場産業

/淡口醤油/(2019 年 8月1日閲覧))。

3) 会社情報-品質への取り組みによる(ヒガシマル醤油株式会社ホームページ,https://www.higashi

maru.co.jp/about/quality/materials.html(2019 年 8月1日閲覧))。

4) 相生市,赤穂市,宍粟市,たつの市,太子町,上郡町,佐用町の 4市 3町を指す。

5) 姫路市,神河町,市川町,福崎町の1市 3町を指す。

参考文献

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通を事例として-.人文地理,63,130-148.

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の地理学における新しい理論的潮流-日本に関する展望-.E-journal GEO,2,43-59.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejgeo/2/1/2_1_43/_pdf/-char/ja

伊賀聖屋(2007):味噌供給ネットワークにおける原料農産物の質の構築.地理学評論,80,361-381.

伊賀聖屋(2008):清酒供給体系における酒造業者と酒米生産者の提携関係.地理学評論,81,150-

178.

大石貴之(2013):荒茶工場の経営形態からみた荒茶供給構造-静岡県牧之原市東萩間地区を事例と

して-.地理学評論,86,248-269.

大橋めぐみ・永田淳嗣(2009):岩手県産短角牛肉ショートフードサプライチェーン動態の分析.地

理学評論,82,91-117.

高木 亨(2005):生産と流通からみた日本の醬油醸造業と醬油嗜好の地域性.季刊地理学,57,121-

136.

高柳長直(2007):食品のローカル性と産地振興-虚構としての地域ブランド-.経済地理学年報,53,

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Ilbery, B. and Maye, D.(2006):Retailing local food in the Scottish-England borders : A Supply

chain perspective. Geoforum, 37, 352-367.

038

4

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図 1 研究対象地域と周辺市町

039

5

千葉283,270

兵庫118,085

群馬44,641

愛知42,566

香川39,772

大分27,750

三重24,962

青森21,835

福岡21,632

北海道18,566

その他114,158

全国出荷量

757,237(kℓ)

図 2 醤油出荷量と全国シェア(2018 年)

資料:食品産業動態調査による。

0

20

40

60

80

100

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

たつの市日本

(%)

図 3 たつの市と日本全国の醤油出荷量の推移

(2007 年の出荷量を 100とした。)

資料:龍野商工会議所・食品産業動態調査による。

(年)

040

6

0

200

400

600

800

2000 2005 2010 2015

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(t)

(年)

0

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1000

1500

2000

2000 2005 2010 2015

佐用町上郡町太子町たつの市宍粟市赤穂市相生市

(t)

(年)

図 4(a)西播磨地区における大豆生産量の推移

(b)西播磨地区における小麦生産量の推移

合併前の市町村を含む現在の市町区域による。

資料:各年兵庫県統計書より作成。

(a)

(b)

041

7

0

200

400

600

800

2000 2005 2010 2015

福崎町市川町神河町姫路市

(年)

(t)

0

500

1000

1500

2000

2000 2005 2010 2015

福崎町市川町神河町姫路市

(t)

(年)

図 5(a)中播磨地区における大豆生産量の推移

(b)中播磨地区における小麦生産量の推移

合併前の市町を含む現在の市町区域による。

資料:各年兵庫県統計書による。

(a)

(b)

042

B166515 元吉梨奈子 南西諸島徳之島のサンゴ礁性海成段丘の再検討

Ⅰ. はじめに 南西諸島はトカラ列島・奄美諸島から先島諸島までの約 1,200kmの弧状列島を指す(図1)。背弧海盆にあたる深さ 1,000~2,000mの沖縄トラフと南西諸島海溝の間に位置し,フィリピン海プレートの沈み込む場所として活発な地殻変動が予想される地域で,全体的に隆起傾向にある。また,この地域は完新世,更新世のサンゴ礁が発達するが,サンゴ礁生育の縁辺部ということもあり,その発達は局地的な環境条件によって発達の程度が異なっている。サンゴ礁性の海成段丘と侵食性の海成段丘がみられるのが南西諸島の特徴でもある(太田ほか,1980; 小池・町田編, 2001)。 南西諸島はこれまで研究が蓄積され,MIS5e の段丘面など高精度の年代値が得られてきた。MIS5e の旧汀線の認定にあたってはサンゴ礁段丘というこの地域特有の地形も利用されている。そして各島に発達する各海成段丘面を対比することで南西諸島地域の地殻変動様式が解明されてきた(太田ほか, 1980)。小池・町田編(2001)では,南西諸島の地殻変動速度にはフィリピン海プレート側から外弧,内弧,背弧の地帯ごとに変動傾向・速度などに共通の傾向があるとし,その特徴ごとに分類がされた。 研究対象地域である徳之島は,外弧の北部に分類される(太田ほか, 1980)。徳之島の先行研究として,海成段丘の地質や形成年代,地殻変動についての研究がある。小池・町田編(2001)は徳之島の特徴を,外弧における隆起速度のやや急速なもの(0.6~0.3/千年)で,と山地の島であるが海岸沿いに大地の地形がとりまく島と分類した。中川(1967)は奄美群島の地質について調査し,徳之島に分布する琉球層群(石灰岩を含む群層)にみられる段丘面を糸木名段丘,木之香段丘,亀津段丘,低位段丘面群とした。木庭(1980)によると,町田(1969)は最上位の段丘を白井山麓面,亀津面の下位に目手久面を分類した。また,木庭(1980)は後期更新世から完新世にかけて段丘面をさらに2つ分類し,9面の段丘を沖永良部島と対比している。太田ほか(1980)は徳之島の海成段丘を9面に分類し,伊仙崎断層にみられる変位の累積も指摘している。山田ほか(2003)は,地質学的観点から徳之島の地史を検討し,石灰質ナンノ化石からサンゴ礁複合体堆積物の体積年代と旧汀線高度を推定した。また,徳之島南部に東向きの傾斜を指摘している。 以上のように,徳之島は海成段丘がよく発達しており研究もされているが,その特徴が一般的でないことや段丘形成に関する年代データが乏しいことから,MIS5e に形成された海成段丘の分布が他地域と十分に対比されておらず,再検討が必要だとされてきた(斎藤ほか, 2009; 小池・町田編, 2001 など)。海成段丘の地形分類と旧汀線高度を地図上に示し,記載をした研究はない。また,南部の東むきの傾斜は断層による変位だと考えられるが,その詳細は分かっていない。このため徳之島において,詳細な地形分類図の作成と旧汀線高度の記載,断層地形の調査は意義のあることだと言える。

043

海成段丘の調査は,ある地域の地殻変動様式を解明するために有用である。最終間氷期最盛期(MIS5e)に形成された段丘は全国的な対比がほぼ確立し,変位基準として採用されている(小池・町田編, 2001)。海成段丘の分布高度や段丘面の形態などをもとに,隆起の原因を考察することは,変動地形学における重要な研究課題の一つだと言える(渡辺ほか,2015)。 本研究は,徳之島の地形に関してその発達史や旧汀線高度の分布を調査し,サンゴ礁離水段丘の旧汀線高度の推定と,断層地形を記載する事を目的とする。これは他の南西諸島地域の旧汀線高度と比較する事で全体的な地殻変動の傾向を捉えることにもつながると考える。 Ⅱ. 地域概観 徳之島は,奄美群島の主な島の一つで,南北約 26km,東西約 14km,標高 300~600m級の山が連なり,南部の伊仙町ではよく海成段丘が発達している。更新世の琉球層群が山地周辺に分布し,その石灰岩部分は南部の伊仙町では広く農地として利用されている。完新世のサンゴ礁は広く分布するが,一部地域ではサンゴ礁ではなく海食崖がよく発達する地域もある(斎藤ほか, 2009)。 Ⅲ. 研究方法 1. 地形分類図作成 現地調査に先立ち,徳之島の地形分類図を作成し,海成段丘の判定と分布を推定する。地形分類図の作成には,国土地理院撮影の空中写真と国土地理院の 10m 数値標高モデル(DEM)により作成したアナグリフ画像により地形判読を行う。 2. 地形モデルの作成 国土地理院撮影のカラー空中写真(1977)から数値表層モデル(DSM)を作成する。空中写真は徳之島の海成段丘が分布する地域で人工的な地形改変が進む前に撮影されたものを使用するため,海成段丘が改変される前の姿をもとにその検討ができる。徳之島は人工改変の大きい地域であり,詳細な地形データが無いため,地形データをとることにも意義があると考える。 3. 現地調査による旧汀線高度の作成 露頭調査では,段丘構成層と被覆層の観察を行い,粒度や色調などの特徴を記載し,各海成段丘面と南西諸島の他地域との比較に活用する。現地調査では作成した地形分類図とDSMをもとに,海成段丘の分類の精度の確認を行い,詳細な海成段丘の分布図を完成させ,旧汀線高度の調査に活用する。 Ⅳ. 周辺地域 徳之島の周辺地域である,奄美群島もこれまで多くの研究が蓄積されてきた。 ⒈ 奄美大島

044

小池・町田編(2001)によると,海成段丘は島の東北部笠利半島に発達する。他の地域では笠利半島より南に海抜 370-300m の平坦地形面があり,高位段丘の一つと考えられるが,どこも波食台で基盤の厚い風化土のみしかなく,年代判定ができない。池田(1978)は,笠利半島各地のこの段丘面の旧汀線アングルの高度(約 29~61m)を測り,北西方向へ傾向することを報告した。また,笠利半島M1面にみられる北西方向への傾動は喜界島における傾動に続く可能性を指摘し,笠利半島以西の高位段丘の変位と調和的にみえないことから,北西方向への傾動の開始は新しく,運動は等速的ではないと論じている。本地域には3面の海成段丘が発達する。隆起速度 0.6~0.3m/千年とされる。 2. 加計呂麻島 小池・町田編(2001)では,加計呂間島にはごく狭いが海抜 50-30mの隆起ベンチ状の地形があるとされている。 3. 喜界島 小池・町田編(2001)によると喜界島は,琉球海溝にもっとも近く,隆起速度は 1.8m/千年と琉球列島で最大に達する。段丘を構成するサンゴ石灰岩からのサンゴのウラン系列年代が多くの地点で測定された(Konishi et al., 1974;大村,1988;大村ほか,2000 など)。年代測定から,MIS5e に対比できるサンゴ礁段丘の旧汀線が南西諸島で最も高い約220m(百之台)ということがわかっている。また,百之台はおよそ 120ka 前に形成され,MIS9,5e,5c,5a,3に対比できる年代値も得られた。 喜界島には7面の海成段丘が分布する。完新世段丘は島の全域を縁取って発達し,4 面に細分される。最高の旧汀線高度は 12m に達し,完新世においても島の隆起が活発であることを示している(太田ほか,1978;中田ほか,1978)。 4. 沖永良部島 小池・町田編(2001)によると,南東部にある大山(海抜 240m)および中部にある越山(海抜 188m)は基盤岩からなる丘陵で,これを取巻いて海食台とサンゴ石灰岩からなる,多数の段丘がある。段丘面の境界は一般に不明瞭なところが多い。6つの海成段丘面が発達する。 5. 与論島 小池・町田編(2001)によると,本島は北北西から南南東に走る西落ちの断層と東西に走る北落ちの断層で区分される。北東部では離水した礁嶺が同心円状に6列並ぶ。段丘崖は不明瞭である。MIS5e に対比される礁嶺について意見が別れているが,町田(1969)に従い最も良く発達する那間の礁嶺をMIS5e とすると,この面の海面高度は海抜約 40mとなる。他の 2地域(西部,南東部)の段丘面は溶食が進んでいる地形のため古いものが断層で変位している可能性がある。また,本島には2面の海成段丘が発達しているとした。 Goto,H. et al.(2018)では,SfM-MVS技術を採用し,空中写真とGCP(基準点)から地形モデル(DSM)を作成した。小池・町田編(2001)では2面とされていた海成段丘を4面に分類した。

045

第1図 南西諸島の地形と対象地域 USGS の SRTM-3 と国土数値情報の海岸線データより作成

第2図 徳之島の地形アナグリフ 10m数値標高モデルから作成

046

参考文献 池田安隆(1978):奄美大島の海岸段丘と第四紀後期の地殻変動.地学雑誌,86,383-389. 太田陽子・堀信行(1980):琉球列島の第四紀後期の地殻変動に関する一考察. 第四紀研究,18, 221-240. 太田陽子・町田 洋・堀 信行・小西健二・大村明雄(1978):琉球列島喜界島の完新世海成段丘-完新世海面変化研究へのアプローチ-.地理学評論,51,109-130. 大村明雄(1988):中部琉球喜界島の地史-琉球石灰岩産サンゴ化石のウラン系列年代測定のまとめとして-.地質学論集,29,253-268. 大村明雄・佐々木圭一・寺尾大介・村上和男(2000):喜界島の更新世堆積物とウラン系列年代について.第四紀研究,39,55-68. 活断層研究会(1991):『[新編]日本の活断層』. 東京大学出版,398-399. Konishi, K., Omura, A. and Nakamichi, O. (1974) : Radiometric coral ages and sea level records from late Quaternary reef complexes of the Ryukyu Islands. Proc. Second International Coral Reef Symposium, 2, Great Barrier Reef Committee, Brisbarne, 595-613. 小池一之・町田洋編(2001):『日本の海成段丘アトラス』. 東京大学出版,388-399. 木庭元晴(1980):琉球層群と海岸段丘. 第四紀研究,18,189-208. Goto,H. et al.(2018):Topographic Anaglyphs from Detailed Digital Elevation Models Covering Inland and Seafloor for the Tectonic Geomorphology Studies in and around Yoron Island, Ryukyu Arc, Japan. geosciences, 8, 363-374. 斎藤眞・尾崎正紀・中野俊・小林哲夫・駒澤正夫(2009):20万分の1地質図幅「徳之島」. 産業技術総合研究所地質調査総合センター. 中田 高・高橋達郎・木庭元晴(1978):琉球列島の完新世離水サンゴ礁地形と海水準変動.地理学評論,51,87-108. 中川久夫(1967):奄美群島 徳之島・沖永良部島・与論島・喜界島の地質(1).東北大学理学部地質学古生物学教室研究邦文報告,63,1-39. 町田 洋(1969):薩南諸島の地形. 薩南諸島の総合的研究,明治書院,20-52. 山田 努・藤田慶太・井龍康文(2003): 鹿児島県徳之島の琉球層群(第四系サンゴ礁複合体堆積物). 地質学雑誌,109,495-517. 渡辺満久・中村優太・鈴木康弘(2015):能登半島南西岸変動地形と地震性隆起. 地理学評論,88,235-250.

047

M185591 NGUYEN HOANG MINH ANH August 4, 2019

1

Characteristic of Labor Export System and Sending agencies in Vietnam

Its influence on TITs and TITP in Japan

-Case studies of Vietnamese Technical Intern trainees and Sending Agencies-

Contents:

Chapter 1 Introduction

1. Research background

2. Literature review

Chapter 2 Research objectives and Research questions

1. Research gap and research objectives

2. Research questions

Chapter 3 Methodology

Chapter 4 Research result

1. Vietnamese Labor Export System

2. Technical Intern Training Program and Vietnamese Technical Intern Trainees

3. Characteristics of Vietnamese Labor Sending Agencies

4. Influence on the Technical Intern Training Program and Technical Intern Trainees in Japan

Chapter 5 Conclusion

1. Conclusion

2. Research limitation and Future tasks

048

1. Introduction

Research background

Due to the increasingly aging population, demographic decline, and long-

continuing low birth-rate, in recent years, Japan has been facing the challenge of the

acute labor shortage. In retrospect, during the 1980s and 1990s, the time that Japan

was amid the overheated “bubble” economy, most migrant workers came to Japan

were from Peru or Brazil, the large Japanese communities in the world. However,

after the economic stagnation in Japan in the 1990s, many of them returned to their

own country, and Japan again faced a severe labor shortage issue. Therefore, from

1990s, when the economy started recovering, through the Technical Intern Trainee

Program (TITP), one of Japanese Government policies implemented as legislation

based on the "Immigration Control and Refugee Recognition Act", a new wave of

workers arrived, mostly from various Asia developing countries such as China,

Vietnam, Philippine, etc.

Since the early 90s of the 20th century, when Japan started to accept unskilled

worker from Asian countries, Vietnam began sending workers to Japan in the form of

“Trainees.” Moreover, since 2011, after the "Technical Intern Training Law" has

revised, the rights of Trainees have been strengthened, the number of Japanese

accepting companies has been expanded, the number of Vietnamese Trainees sent to

Japanese has dramatically increased. So far, overcoming other countries, Japan has

become the largest and most potential labor export market of Vietnam.

On the other hand, the existence of labor sending agencies in Vietnam, their

characteristics and business strategies, together with the specifics of foreign labor

acceptance system of Japan, have drawn a comprehensive picture of Vietnamese

current labor export industry. However, at the same time, it also leads to various

social issues, directly related to TIT and TITP.

literature review

❖ Background of Labor Migration and Labor Export in Vietnam

In the paper "An exploratory research on the experiences and needs of returned

Vietnamese overseas migrant workers in the Provinces of Hung Yen, Thai Binh and

Ha Nam" conducted in 2013, the authors helped us to understand the experiences of

Vietnamese migrant workers who have faced difficulties in their labor migration. The

survey was conducted in the three northern Vietnamese provinces of Hung Yen, Ha

Nam, and Thai Binh, where they have a high number of overseas laborers by CSAGA

(Center for Studies and Applied Sciences in Gender, Family, Women and Adolescent,

Hanoi)

049

M185591 NGUYEN HOANG MINH ANH August 4, 2019

3

Futaba Ishizuka (2013) carried out a study on International labor migration in

Vietnam and the impact of receiving countries' policies" and considered labor export

as part of Vietnam's socio-economic development strategy since the beginning of

Vietnam’s Doi Moi policy. The paper showed that in recent years, Vietnam had

become a major source country of unskilled foreign workers for high-income East

Asian countries.

• Migrant Workers in Japan: Japanese Brazilians and Foreigner Technical

Intern Trainees

o Japanese Brazilians and Brazilian workers

Masahiko Yamada (2010), in his paper “The Current Issues on Foreign

Workers in Japan” gives a general overview of the employment situation of foreign

workers in Japan, opinions of interest groups, public opinion, and government policy.

Hiroaki Watanabe (2012), “Working and Living with Foreign Workers” explains

the current situation and challenges of foreign workers' employment and settlement

support measures by the relevant government. He also explains the urgency of living

support for foreigners in Japanese local areas.

o Foreigner Technical Intern Trainees

Song Hongyang (2017) evaluates the interactions between Chinese trainees

and the host society, by utilizing cases study of Hakusan City and Kaga City in

Ishikawa Prefecture. The paper found that worker sending organizations in China

provide guidance to the trainees make them aware of the necessity of learning. On the

Japanese side, several support activities for new trainees aim to accomplish the same

goal and help them enjoy their stay in Japan and participate in local events.

Satoshi Gunji (2013) clarifies the role of business cooperatives in accepting

foreign technical interns by conducting an interview survey targeting to the receiving

farmers, business cooperatives, and sending organizations in Yachiyo-cho, Ibaraki

prefecture.

o Policies of admission migrant workers in other East Asian countries

According to Manolo Abella (2009), in a paper focusing on the “Policies on

Admission Low-Skilled Workers in Korea, Japan and Taiwan (China): similarities and

differences”, the decade of the 1980s saw the three East Asian countries, together with

Hong Kong and Singapore, emerge as new magnets for labor migration in the region.

Unlike Taiwan (China), both Japan and Korea have long-standing policies which

eschew the admission of low-skilled labor from abroad.

LIN Shin Man (2011) "Study on the Actual Conditions of Foreign Workers in

Taiwan" examines the acceptance of foreign workers in Taiwan. The actual situation

050

of the increase of foreign workers, as well as the policy aspect and the role of the

intermediary company in the increase process, are specified statistically.

Koji Sano (2015) mentions about the employment permit and support system for

foreign workers in Korea, then points out suggestions to Japan's acceptance policy.

2. Research objectives and Research questions

Research gap and research objectives

The historical background, current situation, and major challenges that TITP

and TIT have been facing in Japan have been known so far. Also, there are many

studies regarding the historical background of migration, as well as the status of

labor export activities in sending countries, and the challenges that migrant workers,

particularly TITs facing when they work in Japan and after going back to home

countries have also clarified.

However, there is almost no study concerning in the living and working

situation of TITs before coming to Japan, as well as the characteristics and business

strategies of sending agencies, which play a highly important role in the process of

TITP. Moreover, the changes in policies regarding labor export activities of the

Vietnamese Government has not been known well either.

The overall aim of this research is to examine the service activities related to

sending Vietnamese workers to work abroad for a definite time, focusing on the

Vietnamese sending agencies supply workers, particularly through the TITP to Japan.

Besides, this research also clarifies the changes in workers dispatch policies of

Vietnam, as well as the changes in TITs accepting policies of Japan.

Furthermore, through the analysis of geographical characteristics of the

distribution of Vietnamese sending agencies, together with the recruitment and

training process of these agencies before dispatching trainees to Japan, the research is

supposed to evaluate the reciprocal relationship and the interaction between sending

and accepting labor in Vietnam and Japan.

Research questions

This research will address the following questions:

1. What are the temporal-spatial patterns of Vietnamese labor export activities?

2. What factors influenced the changes in Vietnamese labor export policies?

3. What motivates Vietnamese labors to migrate to aboard, particularly to Japan

through the TITP?

4. What factors influenced the changes of TITP in Japan?

051

M185591 NGUYEN HOANG MINH ANH August 4, 2019

5

3. Methodology

The methodological approach adopted in this research can be described as a mixed-

method, consisting of both quantitative and qualitative data collection methods. There

are there methods mainly utilized in this research as follows:

• Statistical analysis: previous relevant studies, including papers and

publications produced by Vietnamese Government related to labor export activities,

labor sending agencies and TITs recruitment process will be firstly analyzed to

capture the general picture of the background, the current status of labor export

activities in Vietnam. Information related to the Japanese TITP and TITs also will be

reviewed to have a better understanding of the context of the labor sending and

accepting systems.

• Questionnaires survey: a questionnaire was conducted from April to July 2019

on TITs who are currently living and working in Japan through the TITP, regarding

various industries on over Japan, to understand the practicality of the living and

working situations of the TITs before and after coming to Japan. The information

about sending agencies that they used will also be analyzed to categorize the types of

Vietnamese sending agencies.

• Interview: in addition to the two methods mentioned above, 20 semi-

structured interviews with TITs who still working in Japan, selected among those

who responded the April-to-July questionnaire; 3 semi-structured interviews with

trainees who already finished working contract and returned to Vietnam; 4

unstructured interview with the staffs from the sending agencies and Japanese

language schools were conducted in Japan and Vietnam during fieldwork in May and

June 2019 to Hanoi and Ho Chi Minh City to collect detailed information of specific

cases that is not adequately obtained from the statistical analysis and questionnaires

survey. The interviews aim at having a thorough grasp of the specific circumstances

of the TITs and the support that they get from sending agencies; the characteristics of

sending agencies and their business strategies.

In the fieldwork in May and June 2019, although the time constraint, I also had

opportunities to visit and join the factual TITs recruitment process, through the

interview and working skill test, conducted by the sending agencies, Japanese

supervising organizations, and Japanese accepting companies, at two sending

agencies, one in Hanoi and one in Ho Chi Minh City. Thanks for these opportunities,

I got more useful information about the process of TITs recruitment, such as how

they find candidates, the training process, job tests and interviews, advanced training

before sending, etc. This information will be utilized in the chapter related to sending

agencies to provide more clearly images about them.

052

4. Research result

Vietnamese Labor Export System

Figure 1: Number of Vietnamese export workers in the period of 1992 to the end of

October 2018

(Source: Vietnamese Ministry of Labor, War Invalids, & Social Welfare, Consular

Department, Ishizuka [2002], Choi [2010])

In general, the number of Vietnamese workers sent abroad has increased year by

year since the early. Throughout the period 2010-2018, this number always surpass

the annual norm set by the Vietnamese Government.

-> This number is expected to increase continuously in the future, in the context of

the Government of Vietnam and Japan signed many new agreements to increase the

number of TITs and the new form of foreign workers system established last year

2018 (in Japanese: Tokuteigino ), to compensate for the industries which protractedly

lack of human resources such as construction, manufacture, care-giving, etc.

0

20000

40000

60000

80000

100000

120000

140000

160000

19

92

19

93

19

94

19

95

19

96

19

97

19

98

19

99

20

00

20

01

20

02

20

03

20

04

20

05

20

06

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

16

20

17

20

18

Change in number of Vietnamese workers sent abroad 1992-2018

053

M185591 NGUYEN HOANG MINH ANH August 4, 2019

7

Figure 2: Number of Vietnamese export workers by major destination in the period of

2010 to the end of October 2018.

(Source: Consular Department, Vietnamese Ministry of Labor, War Invalids, &

Social Welfare)

For many years, Taiwan has always been the largest labor export market of

Vietnam, with the number of employees dispatched every year always exceed 60,000

people since 2014. However, since 2017, this figure began a downward trend.

Conversely, the number of workers sent to Japan, mainly through TITP as TITs,

increased rapidly every year, especially by the end of October 2018, surpassing

Taiwan, becoming the largest labor export market of Vietnam so far.

State level management and relative documents

The Vietnamese labor export activities of both State-owned or private agencies

are managed, supervised and supported directly by the Vietnamese government,

namely through the Department of Overseas Labor Management, under the Ministry

of Labor, Invalids and Social Affairs.

All the employment information, names and addresses of State-owned, private

sending agencies across the country are in public. In addition, administrative

documents relating to labor export activities, including Labor Export Law, labor

export license, recruitment, and dispatching process are posted publicly on the

website of the Department of Overseas Labor Management.

6212467121 68244 66926

60369

19766

27010

39938

54504

68737

7242 60198442

5178 65384191 3975 4033 3626

65381684 1963 1563 760 13195139

7354

1109 1551 11020

10000

20000

30000

40000

50000

60000

70000

80000

2014 2015 2016 2017 2018(by the end ofOctober)

Number of Vietnamese exported workers by major destination 2010-2018

Taiwan Japan Korea

Saudi Arabia North Africa countries Southeast Asian countries

054

Specific documents and laws on labor export activities have been reviewed to

clarify more clearly the role of the Vietnamese government in generally managing the

labor export activities in Vietnam, moreover, guiding and supporting domestic labor

sending agencies

Technical Intern Training Program and Vietnamese Technical Intern Trainees

Technical Intern Training Program

The Technical Intern Training Program was established as a formal program in

1993 based on the high evaluations of training programs conducted by overseas local

companies and others in the form of employee education starting in the late 1960s.

The objectives and purpose of the Technical Intern Training Program are to

transfer skills, technologies, or knowledge (“Skills etc.”) accumulated in Japan to

developing and other regions and to promote international cooperation by contributing

to the development of human resources who can play roles in the economic

development of those developing regions.

Number of Technical Intern Trainees (TITs) over time

The number of foreign trainees in Japan meanwhile has jumped 57 percent to

251,721 in 2017 from 143,308 in 2011, according to figures compiled by the Justice

Ministry

055

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9

By Nationalities:

According to a recent Immigration Bureau survey, the number of Vietnamese

TIT in Japan stood at 26,437 in 2017, became the largest group

Trainees from China were the second most by nation, with 16,863. They were

followed by Indonesia at 4,558, Thailand at 2,160 and the Philippines with 2,043.

Note: Data of 2017 is until October

Source: https://www.jitco.or.jp/about/data/statistics/statistics-i.pdf

Vietnamese Technical Intern Trainees

A questionnaire survey was conducted from April to July 2019 on TITs who are

currently living and working in Japan through the TITP. The main rationale for

employing the questionnaire is that although the statistical data from Governments

only show the overall features of population, distribution, and kinds of industries that

TITs are engaging. Detailed information regarding their characteristics and situation

before coming to Japan, their current conditions in Japan, their plan in future after

finishing the program and return to Vietnam, etc. is not showed by the source of data.

Thus, the survey was deigned to acquire that information.

28805 2663521136

17573 15058

6114 1117616711

2081123271

1749

2782 3035 3152 31481619

2282 2480 2451 2658

1043

1486 1780 1646 1435

1080

24143555 3496 3431

0

12,500

25,000

37,500

50,000

62,500

2013 2014 2015 2016 2017

TITs by Nationarities

China Vietnam Philippines Indonesia Thailand Others

056

A total of 200 questionnaires were randomly distributed to TITs who are living

and working in Japanese accepting companies, located in Hiroshima prefecture,

Ehime prefecture, Okayama prefecture an Osaka prefecture.

Among 200 questionnaires distributed, 162 questionnaires were returned,

which is a response rate of 81%. Cross-tabulation, graphs, charts, etc. were employed

to explore the characteristics of TITs, their evaluation and knowledge about TITP, the

patterns of Vietnamese sending agencies, etc.

In the questionnaire survey, the questions were divided into 4 part.

• The first part was the basic information of respondents, including their gender,

age, birthplace, marital status, education level and period stay in Japan (until May

2019).

• The second part was asking about the situation of TITs before coming to Japan,

including their carries, living and working conditions, the purpose they joined TITP,

knowledge about TITP, information about the sending agencies they used, the period

and content of learning at that agencies, the costs they had to pay (including

brokerage and deposit) to go to Japan and their evaluation about that agencies.

• The third part is asking about the current situation of TITs in Japan, including

the working and ling conditions, their evaluation about the jobs, their satisfaction with

the jobs and living places and the support of sending countries during their stay in

Japan.

• The fourth part was asking the future intention after finishing 3 or 5 years

working in Japan as TITs and their evaluation about TITP.

a. Gender

Gender of

respondents

Number of

respondents

Percentage

Male 38 23

Female 124 77

Total 162 100

23%

77%

GENDER RATIO

Male

Female

057

M185591 NGUYEN HOANG MINH ANH August 4, 2019

11

b. Age distribution

c. Birthplace

Respondents birthplace Number of Respondents

Hai Duong 13

Hung Yen 11

Thai Binh 10

Phu Tho 10

Ha Tinh 8

Thanh Hoa 7

Ha Noi 6

Vinh Long 6

Binh Dinh 6

Vinh Phuc 6

Ho Chi Minh 6

Lang Son 5

Hue 5

Tay Ninh 4

Dong Nai 4

Ha Nam 3

Bac Ninh 3

Vung Tau 3

Nghe An 3

Binh Phuoc 3

Hoa Binh 3

Ben Tre 3

Quang Binh 2

Binh Thuan 2

Tien Giang 2

Tra Vinh 2

Nam Dinh 2

Bac Ninh 2

Bac Giang 1

Soc Trang 1

Dong Thap 1

Phu Yen 1

Can Tho 1

DakNong 1

Age of

respondents

number of

respondents

<20 8

20~22 36

23~25 52

26~28 40

>28 26

Total 162

<205%

20~2222%

23~2532%

26~2825%

>2816%

Age Ratio

<20

20~22

23~25

26~28

>28

058

Yen Bai 1

Hau Giang 1

Daclak 1

Quang Ngai 1

Quang Nam 1

Ninh Thuan 1

TOTAL 151

d. Marital status

e. Education level

Education level of

respondents

Number of

respondents

Under High School 0

High School 66

Vocational

School/College 61

University 35

Graduate School 0

Total 162

Marital

status of

respondents

Number of

respondents

Married 22

Single

(Divorced) 140

Total 162

Married14%

Singgle (Divorced)

86%

Marital Status

Under High

School, 0

High School, 66Vocationa

l School/College, 61

University, 35

Graduate School, 0

059

M185591 NGUYEN HOANG MINH ANH August 4, 2019

13

f. Period stay in Japan

Period stay in

Japan (until May

2019)

Number of

respondents Percentages

Less than 1 year 58 36

1 year ~ 2 years 56 35

2 years ~ 3 years 44 27

More than 3 years 4 2

Total 162 100

Future tasks

• Continue analyzing part 2,3,4 of the questionnaire, combined with the interview results.

• Complete writing this research.

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Less than 1 year, 58

1 year ~ 2 years, 56

2 years ~ 3 years, 44

More than 3 years, 4

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