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Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism 車いす・足腰が不安なシニア層の 国内宿泊旅行拡大に関する調査研究 国土交通省 国土交通政策研究所 主任研究官 坂井志保 平成27年5月20日

車いす・足腰が不安なシニア層の 国内宿泊旅行拡大に関する ......50代 15,457 21,793 1.41 60代 18,364 29,795 1.62 70代以上 23,266 26,215 1.13 ①でも②でも

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Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

車いす・足腰が不安なシニア層の国内宿泊旅行拡大に関する調査研究

国土交通省 国土交通政策研究所主任研究官 坂井志保

平成27年5月20日

Page 2: 車いす・足腰が不安なシニア層の 国内宿泊旅行拡大に関する ......50代 15,457 21,793 1.41 60代 18,364 29,795 1.62 70代以上 23,266 26,215 1.13 ①でも②でも

1.国内旅行市場におけるシニア層の重要性

〇 日本の将来人口2013年約1.27億人 → 2040年約1.07億人 → 2060年約0.87億人

〇 日本の国内宿泊旅行延べ人数(平均旅行回数が2013年から変化しない場合)

2013年約1.76億人 → 2040年約1.49億人 → 2060年約1.20億人

図表 一人当たり国内宿泊旅行回数(年代別) 国土交通政策研究所推計出所:人口問題研究所「人口将来推計 男女年齢各歳別人口:出生中位(死亡中位)推計」

国内宿泊旅行延べ人数(2013年)は観光庁「消費動向調査」( 国内宿泊観光旅行延べ人数は、観光・レクリエーション目的の合計値である。(帰省等は除く))

(1) 将来人口の推移と旅行回数

1

176,421千人(2013年)

148,732千人(2040年)

120,256千人(2060年)

70,000

90,000

110,000

130,000

150,000

170,000

190,000

(単位

:千人

人口将来推計

(千人)

国内宿泊旅行

延べ人数(千人)

1人あたり国内宿泊旅行回数

1.39回(2013年)

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(2) 70歳以上のシニア層の将来人口

1.国内旅行市場におけるシニア層の重要性

〇 総人口が減少する中で、70歳以上のシニア層は、2048年頃まで増加

23,686 27,969 29,495 29,814 31,048

18.6%

22.5% 25.3%

27.8%

32.0%

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

2014年 2020年 2030年 2040年 2050年

日本の将来人口予測(千人)

70歳未満

70歳以上

70歳以上構成比

2図表 将来の総人口と70歳以上の構成比出所:2014年の数値は総務省統計局「人口推計 平成26年11月報(2014年6月確定値)」将来の数値は人口問題研究所「日本と将来推計人口・出生中位(死亡中位)推計(2012年1月推計)」より作成

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(3) シニア層の旅行回数を維持できた場合のインパクト

1.国内旅行市場におけるシニア層の重要性

図表 一人当たり国内宿泊旅行回数(年代別)

人口(千人)

国内宿泊旅行

延べ人数(千人)

一人当たりの平均回数

計 127,247 176,422 1.39

9歳以下 10,504 14,392 1.37

10代 11,801 15,391 1.30

20代 13,039 20,743 1.59

30代 16,740 24,193 1.45

40代 18,076 23,954 1.33

50代 15,457 21,793 1.41

60代 18,364 29,795 1.62

70代以上 23,266 26,215 1.13

①でも②でも年間旅行回数1000万回増加

単価5万円とすると、

旅行消費額5000億円増加

② 現在の60代が10年後に年間旅行回数1.62回を維持出来ると仮定した場合① 現在の70代以上の高齢者が60代と同じ回数(1.62回)を旅行すると仮定した場合

仮定

3出所:人口:総務省統計局「人口推計 平成26年11月報(2014年6月確定値)」より国内宿泊観光旅行延べ人数:2013年は観光庁「消費動向調査」より国内宿泊観光旅行延べ人数は、観光・レクリエーション目的の合計値である。(帰省等は除く)

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1.国内旅行市場におけるシニア層の重要性

図表 国内観光旅行をしなかった理由出所:日本観光振興協会「国民の観光に関する動向調査」(2013)より作成

0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0%

経済的余裕がない

時間的余裕がない

何となく旅行しないまま過ぎた

家を離れられない事情があった

一緒に行く人がいない

出張等で観光レクもした

行きたいところがない

健康上の理由で

他にやりたいことがある

計画を立てるのが面倒

海外旅行をしたい

旅行は嫌い

その他

70歳未満

70歳以上

69歳以下4割前後

70歳以上約3割

(4) 70歳以上のシニア層が国内観光旅行をしない理由

4

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2.要介護者の旅行の実態(旅行先で行ったこと)

60.5

54.8

43.4

32.9

32.0

18.0

14.5

12.3

11.4

11.4

0 20 40 60 80

温泉浴

自然の風景を見る

特産品等の買い物・飲食

ドライブ

名所・旧跡を見る

知人・親戚・家族宅の訪問

季節の花見

動・植物園・水族館、博物館、

美術館、郷土資料館見物

神仏詣

墓参り・法事

(%)

図表 旅行先でおこなったこと 出所:水野映子「要介護者の旅行の実態と介護者の意識」(2013)P.27 図表5

家族を介護している800人に実施したアンケート調査(2013)

「温泉浴」、「自然の風景を見る」 が多く、名所や美術館等見物は少ない

5

旅行形態及び主な利用交通機関

個人旅行92.1%自家用車67.1%

(同調査より)

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2.要介護者の旅行の実態(旅行への不安、旅行時の困難)

図表 要介護者との旅行に対する不安、旅行時の困難 出所:水野映子「要介護者の旅行を阻害する要因」(2012)P.21 図表6

84.4 84.4

79.4 78.774.8 74.1 72.7 71.7

69.667.5

64.7

57.2 57.253.1

49.553.5

46.9

39.5

48.2 48.746.5

28.5

36.839.0

33.329.8

34.6

28.9

21.125.9

44.7

38.6

32.0

39.9

17.5

43.0

17.1

28.5

36.0

20.618.4

25.0

19.321.9

18.9

0

20

40

60

80

100

要介護者が宿泊先で

入浴することが難しい

目的地(観光地・宿泊先など)

での移動が難しい

目的地(観光地・宿泊先など)

までの移動が難しい

要介護者が移動中に

トイレに入ることが難しい

要介護者の体調が悪くなる

自分が疲れる

旅行のスケジュールやコースが

要介護者に合わない

要介護者が宿泊先で

トイレに入ることが難しい

予定よりも移動に時間がかかる

観光地や宿泊先などの従業員に

迷惑がかかる

他の旅行者・観光客に

迷惑がかかる

要介護者が宿泊先で

寝起きすることが難しい

食事が要介護者の体の状態に

合わない

予算よりも旅行費用がかかる

周りの人から嫌な思いを

させられる

旅行非経験者(n=572)の不安

(要介護者と旅行するとしたら「不安」または「やや不安」と答えた割合)

旅行経験者(n=228)の不安

(要介護者と旅行する前に「不安だった」または「やや不安だった」と答えた割合)

旅行経験者(n=228)の困難

(要介護者と旅行した際に「当てはまった」または「やや当てはまった」と答えた割合)(%)

6

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2.要介護者の旅行の実態(旅行環境への問題意識・希望)

85.8

87.5

72.3

76.4

54.6

85.9

85.5

85.5

66.7

76.3

51.3

91.2

85.8

88.3

74.5

76.4

55.9

83.7

0 20 40 60 80 100

要介護者が旅行するための

設備やサービスは

不足している

要介護者が旅行するための

情報は不足している

要介護者が旅行するための

費用は一般の旅行より高い

要介護者が旅行することに

対する社会の理解は

不足している

要介護者が旅行することに

対する世間の目は冷たい

旅行を希望する要介護者が

もっと旅行できるように

なるとよい

全体(n=800)

旅行経験者(n=228)

旅行非経験者(n=572)

(%)

問題意識

希望

全体(n=800)

旅行経験者(n=228)

旅行非経験者(n=572)

図表 要介護者の旅行環境に対する問題意識・希望(全体、旅行経験の有無別) 出所:水野映子「要介護者の旅行の実態と介護者の意識」(2013)P.30 図表1

「設備やサービスの充実」とともに、「情報の提供、周知広報」が必要!

7

今後への期待は高い!

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3.現状の取組

(1)バリアフリーに向けたハード対策交通分野では、駅のエスカレーター、サービスエリアや道の駅の障害者用トイレ等のバリアフリー化はかなり進んでいるが、宿泊施設のバリアフリー化は容易ではない。但し、備品や従業員の工夫などにより、対応している事例もある。

(2)ユニバーサルツーリズムの普及に向けた地域の受入体制観光庁では、「ユニバーサルツーリズムに対応した観光地づくりのための地域の受入体制強化マニュアル」を作成、公表し、地域の取組への活用を促進しているが、資金等の地域での課題も少なくなく全国展開は容易ではない

(3)旅行会社の取組障害者専門の旅行会社による旅行商品の販売や、トラベルヘルパー等の資格養成も進みつつあり、大手旅行会社でも高齢者向けの旅行商品の販売等を行っている。他方、介助者の同行等は料金が高くなるとともに、介護旅行の掲載は特別なパンフレットに限られ一般的に認知度は低い。

(4)情報提供宿泊検索サイトでは「バリアフリー」のキーワード検索が行えるようになっているが、その基準が不明確で、利用者にとっては使いづらい全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)は「高齢者に優しく、全ての人に利用しやすい宿泊施設」のコンセプトで、シルバースター登録制度を運用しているが、必ずしも車いす・要介護者への対応ができるとは限らない

8

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4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

9

調査対象 全国宿泊施設(全旅連シルバースター部会及び青年部に所属)

実施時期 平成27年3月25日~4月20日回収件数 372件

〇 宿泊施設における、車いす利用者の受入れの拡大や入浴介助サービスの普及

宿泊施設へのアンケート調査を実施

〇 必要とされる情報が車いす利用者や家族に届く仕組みの構築

検討の必要性課題

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4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

車いす利用者の受入れ経験

(n: 全体372)

あり なし 未回答 10

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4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

車いす利用者の受入れ意向

(n: 全体372)

13%

72%

14%

1%

積極的に受け入れたい リクエストがあれば出来る範囲で対応 対応が困難 未回答積極的に受け入れたい リクエストがあれば出来る範囲で対応

対応が困難 未回答 11

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車いすの受入れに関する周知 ※複数回答

(n: 積極的48・リクエスト対応267)

4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

12積極的に受け入れたい リクエストがあれば出来る範囲で対応

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4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

「リクエストがあれば出来る範囲で対応」「対応が困難」の理由

(n: リクエスト対応・困難320)13

※複数回答

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13%

59%

25%

3%

4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

設備等の状況 ①館内

全館利用可 基本経路概ね可 困難 未回答※ロビー、客室、風呂、食事処への移動

(n: 全体372)

14

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41%

57%

2%

4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

設備等の状況 ②客室

バリアフリールーム、または準ずる洋室・和洋室あり なし 未回答

(n: 全体372)

15

※入り口車いす可、ベッド、手すり付き洋式トイレあり

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4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

設備等の状況 ③風呂 ※複数回答

(n: 全体372) 16

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4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

入浴介助サービスの提供(他社への委託等を含む)

ある なし 未回答

(n: 全体372)

17

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4.宿泊施設へのアンケート調査(概要)

入浴介助サービスの提供をしない理由 ※複数回答

(n: 340)18

規制(異性や着衣での介助が認められない等)

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5.今後の調査研究の方向性

施設や設備等が整っていないこと等を理由に、「積極的に受け入れたい」は少ない受入れに関する情報提供は行っていない、もしくは自社HPでの掲載がほとんど

19

アンケート結果の考察

入浴介助サービスの提供については、全国で28軒と極めて少ない

しかしながら

本格的なバリアフリーでなくとも、備品の整備や従業員教育等の工夫で、相当程度対応できることを周知することが必要

⇒ 基準案の検討

車いすを受け入れる施設として掲載する基準案を作成することにより、一般旅行パンフレットや宿泊検索サイト等における情報提供を促進することが必要

⇒ マニュアル・事例集・市場分析レポートの作成

先行事例から介護事業者等との連携方法等をまとめることにより、入浴介助サービスの導入促進を図ることが必要⇒ 事例集の作成

経営上の成功事例や介助旅行の市場規模や拡大の見通しをまとめることにより、経営者に受入れ促進を図ることが必要

車いす利用者の受入れ経験は約8割