11
282 E26 [教育] 8 27 9:30 27 001 女子大学生の健康状態と自覚的ストレス及び大学の居心地に関する一考察 ○仁部 ゆかり(筑波大学大学院) 橋本 佐由理(筑波大学大学院) 大学生に対する健康支援は卒業後の産業保健へ繋がる。特に女性のストレスに関しては、職域のみならず母子保健にお いても対策が急がれている。本研究では、女子大学生を対象として全般的な健康状態と自覚的ストレス及び大学の居心地 との関連を検討した。対象者は関東圏内の大学の女子大学生 150 名である。心理特性尺度、自己効力感尺度、生活習慣、 身長・体重等について自記式質問紙調査を実施し、自覚的ストレス及び大学の居心地はビジュアルスケールに記述した ものを計測した。健康状態に影響を与える要因についてステップワイズ法を用いて重回帰分析を行った結果、身体的健康 状態の指標とした BMI 及び健康行動の指標とした 4 つの生活習慣では決定係数が十分ではなかったが、精神的健康状態 の指標とした自己評価式抑うつ性尺度(SDS)は、自己価値感、運動の自信感、自覚的ストレスの 3 変数を、精神健康調 査票(GHQ12)は、自覚的ストレス、日常生活におけるセルフケア行動自信感、家族からの情緒支援認知、自己価値感、 大学の居心地の 5 変数を独立変数とする有意な回帰式が得られ、それぞれの独立変数で SDS の 54%、GHQ 12 の 48% が説明できた。 E26 [教育] 8 27 9:45 27 002 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント効果検討 ○村上 真(筑波大学大学院人間総合科学研究科) 橋本 佐由理(筑波大学大学院人間総合科学研究科) 実習者が増加しているヨーガ療法を職場研修で採用する動きがみられる。本研究では、就労者に対するヨーガ療法介入 の効果を検討した。対象者は都内A社でのヨーガ療法セミナー参加者88名(女65名、男23名)、不参加者14名(女9名、 男 5 名)である。介入は講義 15 分、実習 25 分で構成し、自習用 DVD も配布した。介入前後・1 カ月後に記名自記式質 問紙(職業性ストレス簡易調査票などで構成)調査を実施した。介入前-介入直後の比較で、介入群はイライラ感、疲労 感、不安感、抑うつ感、身体愁訴が有意に改善した。介入前-介入 1 カ月後の比較では、介入群はいずれの尺度も有意 な変化は確認されなかったが、介入前時点でストレス反応が普通以上に高かった参加者は、イライラ感、疲労感、不安感、 身体愁訴が有意に改善した。非介入群は有意な変化は見られなかった。介入群はヨーガ療法により心身の反応を改善する ことが出来たという経験を通じて、ストレスによっておこる心身の反応を自己コントロールする見通しを持つことが出来 たと考えられ、就労者へのヨーガ療法介入は、ストレスマネジメント手法として有効である可能性が見出された。 E26 [教育] 8 27 10:00 27 003 教職実践演習における保健の実施状況 ○杉崎 弘周(新潟医療福祉大学) 物部 博文(横浜国立大学) 植田 誠治(聖心女子大学) 本研究の目的は 2013 年度より全国の 4 年制大学で本格実施となった教職実践演習における保健の内容の実施状況を 明らかにすることであった。中学校および高等学校の保健体育の教員免許状を取得できる全国 152 大学 158 学部を対象 に郵送法よる質問紙調査を実施し、回収率は 43.0%(68/158)で、このうちの 67 件を分析対象とした。教職実践演習 において保健の時間を確保したあるいは保健の内容を実施したのは 71.6% であった。確保していない理由には、小学校 の内容が中心のため、他教科合同で共通内容のためなどがあげられた。総時数に占める保健の時数を 15 時間中に換算 すると、約 1 時間という回答が 25.0%、約 2 時間が 25.0%、約 3 時間が 18.8% という結果であった。実施した内容(複 数回答可)では、保健模擬授業が 62.5%、続いて、教育実習の保健授業の振り返りが 45.8%、保健の教育内容が 39.6%、

就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

282

E26[教育]8月27日9:30

保27−001

女子大学生の健康状態と自覚的ストレス及び大学の居心地に関する一考察

○仁部 ゆかり(筑波大学大学院) 橋本 佐由理(筑波大学大学院)

 大学生に対する健康支援は卒業後の産業保健へ繋がる。特に女性のストレスに関しては、職域のみならず母子保健においても対策が急がれている。本研究では、女子大学生を対象として全般的な健康状態と自覚的ストレス及び大学の居心地との関連を検討した。対象者は関東圏内の大学の女子大学生 150 名である。心理特性尺度、自己効力感尺度、生活習慣、身長・体重等について自記式質問紙調査を実施し、自覚的ストレス及び大学の居心地はビジュアルスケールに記述したものを計測した。健康状態に影響を与える要因についてステップワイズ法を用いて重回帰分析を行った結果、身体的健康状態の指標とした BMI 及び健康行動の指標とした 4 つの生活習慣では決定係数が十分ではなかったが、精神的健康状態の指標とした自己評価式抑うつ性尺度(SDS)は、自己価値感、運動の自信感、自覚的ストレスの 3 変数を、精神健康調査票(GHQ12)は、自覚的ストレス、日常生活におけるセルフケア行動自信感、家族からの情緒支援認知、自己価値感、大学の居心地の 5 変数を独立変数とする有意な回帰式が得られ、それぞれの独立変数で SDS の 54%、GHQ 12 の 48%が説明できた。

E26[教育]8月27日9:45

保27−002

就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント効果検討

○村上 真(筑波大学大学院人間総合科学研究科) 橋本 佐由理(筑波大学大学院人間総合科学研究科)

 実習者が増加しているヨーガ療法を職場研修で採用する動きがみられる。本研究では、就労者に対するヨーガ療法介入の効果を検討した。対象者は都内A社でのヨーガ療法セミナー参加者 88 名(女 65 名、男 23 名)、不参加者 14 名(女 9 名、男 5 名)である。介入は講義 15 分、実習 25 分で構成し、自習用 DVD も配布した。介入前後・1 カ月後に記名自記式質問紙(職業性ストレス簡易調査票などで構成)調査を実施した。介入前-介入直後の比較で、介入群はイライラ感、疲労感、不安感、抑うつ感、身体愁訴が有意に改善した。介入前-介入 1 カ月後の比較では、介入群はいずれの尺度も有意な変化は確認されなかったが、介入前時点でストレス反応が普通以上に高かった参加者は、イライラ感、疲労感、不安感、身体愁訴が有意に改善した。非介入群は有意な変化は見られなかった。介入群はヨーガ療法により心身の反応を改善することが出来たという経験を通じて、ストレスによっておこる心身の反応を自己コントロールする見通しを持つことが出来たと考えられ、就労者へのヨーガ療法介入は、ストレスマネジメント手法として有効である可能性が見出された。

E26[教育]8月27日10:00

保27−003

教職実践演習における保健の実施状況

○杉崎 弘周(新潟医療福祉大学) 物部 博文(横浜国立大学) 植田 誠治(聖心女子大学)

 本研究の目的は 2013 年度より全国の 4 年制大学で本格実施となった教職実践演習における保健の内容の実施状況を明らかにすることであった。中学校および高等学校の保健体育の教員免許状を取得できる全国 152 大学 158 学部を対象に郵送法よる質問紙調査を実施し、回収率は 43.0%(68/158)で、このうちの 67 件を分析対象とした。教職実践演習において保健の時間を確保したあるいは保健の内容を実施したのは 71.6% であった。確保していない理由には、小学校の内容が中心のため、他教科合同で共通内容のためなどがあげられた。総時数に占める保健の時数を 15 時間中に換算すると、約 1 時間という回答が 25.0%、約 2 時間が 25.0%、約 3 時間が 18.8% という結果であった。実施した内容(複数回答可)では、保健模擬授業が 62.5%、続いて、教育実習の保健授業の振り返りが 45.8%、保健の教育内容が 39.6%、

Page 2: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

283

10 保健

保健の教育方法が 37.5%、保健の学習指導案作成が 33.3% であった。以上のように、4 年制大学での教職実践演習本格実施初年度における保健の内容の実施は 71.6% であり、各大学学部によって保健の時数や実施内容などは多様であった。

E26[教育]8月27日10:15

保27−004

フィンランドが育てようとする保健科教師の力量 “Research-based”を特徴とする保健科教師養成課程

○小浜 明(仙台大学)

 日本でも教員養成制度全体の見直しの機運が高まっている。前(2003-08)OECD 教育革新センター長の Tom SCHULLER(トム・シュラー)は、「教員の養成段階及び現職研修を改革し、職業そのものが研究を吸収する能力を向上させること」では「フィンランドの例は説得力がある。PISA におけるフィンランドの継続的な成功の一部は、教員研修の質によるものである。その中でも不可欠な要素は、いかにフィンランドの教員が研究エビデンスを日々の実践において活用できるように訓練されているかということである。これは『吸収性のある』能力の重要な事例である」(エビデンスと教育的成果、2011)と述べる。ところで、トム・シュラーが述べる「教員が研究エビデンスを日々の実践において活用できるように訓練されている」という “Research-based” を特徴とする教師の力量の基盤は、実はフィンランドでは、大学の教員養成課程を通じて形成されている。発表では、この国の保健科教師養成で中心的な役割を果しているユヴァスキュラ大学の保健科教師養成カリキュラムと教育実習の事例の紹介を通じて、今後の日本のあり方についても考察したい。

E26[教育]8月27日14:00

保27−005

学びの質を保障する保健学習論についての考察(1)

○岡崎 勝博(東海大学)

 学習指導要領が目指す学力観は、評価基準と一体のものとして提示され、それを保障する学習論の開発が期待されている。しかし保健科においては、学習方法が評価の観点、「関心・意欲・態度」「思考・判断」「知識・理解」にどのように繋がるのか、つまり学習論と学力形成論への筋道は必ずしも明確とはなっていない。その原因の一つに、学習論と学力形成論の関連性について分析視点を持ち得ず、理論的な蓄積がなされていないことが挙げられる。本論では、2 つの実践を取り上げ、その分析視点について考察を行った。1 つは拙著の「思春期の成長」の授業より、教師の問いを生徒の問いに転化していく教授行為・授業過程の展開性と学力形成の関連性について考察した。2 つめは、上野山実践「命・健康・エネルギー問題」の実践に着目し、「共感力」を育成する「一人称的理解」の必要性と、それを保障する授業過程「耕し」の必要性について考察を行った。2 つの実践分析より、生徒の「疑問」の掘り起こしや「共感力」の育成が、学力形成のベースとなっていることを提示したい。

E26[教育]8月27日14:15

保27−006

ピア・インストラクションを取り入れた中学校の保健学習の試み 応急手当の意義と手順をテーマとして

○久保 元芳(宇都宮大学教育学部) 中川 博厚(宇都宮大学教育学部附属中学校)

 生徒の主体的な授業参加と生徒同士の議論を通して学習内容の深い理解を促す授業形態として、近年の物理教育などで導入されている「ピア・インストラクション」(PI)を取り入れた中学校の保健学習を実践した。PI とは Mazur(1997)によって提唱され、①学習内容に関する選択肢問題の出題、②クリッカーによる生徒の解答、③自身の解答選択の根拠を踏まえた生徒同士での議論、④生徒による選択肢問題への再解答、⑤教師による解説、のプロセスによって進められる。授業は、単元「傷害の防止」の「応急手当の意義と手順」をテーマとした 2 時間構成とし、公立中学校 2 年生 1 クラス 34 名を

Page 3: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

284

対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、PI を取り入れた授業形態に対する生徒の主観的評価も概ね高値を示した。さらに、生徒同士の議論によって正答が導きだされた度合を示す PI ゲイン(兼田ら 2009)を算出したところ、1 時間目の授業で実施した 2 回の PI(PI ゲイン 0.09、0.13)に比して、2 時間目の授業で実施した 2 回の PI(0.31、0.31)が高値を示し、注目された。

E26[教育]8月27日14:30

保27−007

ヘルスリテラシーの概念規定及び測定方法に関する検討

○谷口 志緒里(筑波大学大学院人間総合科学研究科) 野津 有司(筑波大学体育系) 片岡 千恵(筑波大学体育系) 工藤 晶子(筑波大学大学院人間総合科学研究科) 岩田 英樹(金沢大学人間科学系) 久保 元芳(宇都宮大学教育学部)

 現代社会において、ヘルスリテラシーは児童生徒が身に付けるべき能力の一つとして注目されつつある。本研究では、ヘルスリテラシーの概念規定及び測定方法に関する国内外の先行研究を概観し、児童生徒におけるヘルスリテラシーの研究に関する基礎資料を得ることを目的とした。ヘルスリテラシーの概念規定については、包括的なもの、特定の対象に焦点をあてたもの、特定の健康課題に焦点をあてたものの大きく 3 つに整理された。その中で、WHO(1998)及びNutbeam(2000)による包括的な概念は、多くの文献で取り上げられており、注目された。また、児童生徒を対象とした概念規定は一つみられた。測定方法については、テスト問題を用いたものと評価尺度を用いたものとの 2 つがあったが、児童生徒に焦点をあてたものはみられなかった。これらのことから、児童生徒におけるヘルスリテラシーの研究は十分ではなく、今後の取り組みが期待される。例えば、児童生徒のヘルスリテラシーの測定に向けて、評価尺度の開発と併せて、健康課題を解決する過程で適切に思考し、判断できる問題解決能力を把握するテスト問題等も用いた方法を検討することが望まれる。

E26[教育]8月27日14:45

保27−008

学校保健に関する政策論的考察

○谷藤 千香(千葉大学) 畑 攻(日本女子体育大学) 今関 豊一(国立教育政策研究所) 小野里 真弓(上武大学)

 社会状況等の変化に伴う健康課題の解決として、学校保健の推進がある。学校保健活動の中心的役割を担う保健主事は、保健教育や保健管理を個人として行うばかりでなく、組織的な活動としてのリーダーシップの発揮が重要となる。保健主事の役割や学校保健に関する組織活動の推進については、学校教育法施行規則はもとより、中央教育審議会答申(H20.1)や学習指導要領などに明記され、近年では、保健主事のため各種冊子の刊行、教育委員会や学校保健会の研修会など、保健主事を中心とした学校保健活動の理解を深める取り組みが行われている。本研究では、こうした取り組みとその成果から今後の活動推進の可能性を検討する。保健主事に関する状況調査報告書(H26.3)によると、学校保健活動の現状は概ね良好であるものの、学校種や状況による実態、校長と保健主事の認識、教育委員会の支援の実態と現場のニーズなどギャップがあることも否めない。子どもの健康課題は多様化し、専門的な対応が求められるが、学校保健活動を円滑に実施するためには、保健主事のマネジメント能力の向上、支援システム(研修等)及び環境(管理職の認識)が重要であることが示された。

Page 4: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

285

10 保健

E26[教育]8月27日15:00

保27−009

学校保健マネジメントに関する基礎的な検討

○畑 攻(日本女子体育大学) 谷藤 千香(千葉大学) 今関 豊一(国立教育政策研究所) 小野里 真弓(上武大学)

 学校保健の推進においては、それぞれの社会の状況や児童・生徒の生活の状況に応じて、現代的な健康課題に効果的及び効率的に対応することが求められる。保健学習をはじめとするそれぞれのプログラムにおいては、それぞれのテーマに整合する豊かで明確な内容と的確な方法が求められている。一方で、学校全体が一体となって組織性を生かした学校保健活動の展開にも大きな期待が寄せられている。そのような組織的な活動のキーパーソンとしての保健主事のマネジメント能力の向上に対しては、各種の冊子が刊行されているとともに、関連の講習会や研修会が多く開催されるようになっている状況である。 本研究では、基本的なマネジメント理論とマネジメント研究の視点を援用して、保健主事を中心とする学校保健マネジメントの枠組みの構成を試みるとともに、合わせて、最新の全国の状況調査(日本学校保健会、平成 26 年 3 月)の報告に照らして検討した結果、保健主事に求められる学校保健マネジメントの今後の重要なポイントが示唆された。

E26[教育]8月28日9:00

保28−010

大学生における抑うつと生活習慣に関する研究 体育系学部と非体育系学部学生との比較

○佐々木 浩子(北翔大学)

 本研究では、近年増加傾向にある青年期の抑うつ傾向の実態と生活習慣との関連を明らかにすることを目的として、大学生を対象に抑うつと生活習慣に関する調査を実施し、体育系学部と非体育系である福祉・医療系学部学生との比較検討を行った。その結果、全体で半数を超える学生が抑うつ状態を示す CES-D の得点が 16 点以上となっており、非体育系学部生は体育系学部生よりも有意に抑うつを示す者が多かった。 しかし、食習慣での食事の規則性や欠食状況では両者に有意な差は認められなかった。また、睡眠の質評価に用いたPSQI-J の総得点でも、有意な差は認められなかった。睡眠習慣における起床時刻や就床時刻でも有意な差は認められなかったが、体育系学部生では非体育系学部生に比較して有意に入眠時間が短いことが明らかとなった。

E26[教育]8月28日9:15

保28−011

大学生女子テニス選手における体力の必要性に対する意識とコンディションの向上意欲との関連

○川本 恵子(日本女子体育大学大学院) 菊地 ゆめみ(日本女子体育大学大学院) 古泉 佳代(日本女子体育大学)

 アスリートの食育は、コンディションの向上のために食事調査、体力測定、身体計測および生理学的・生化学的検査による栄養評価をもとに個人や集団に対して行うことが多い。しかし体力やトレーニングがアスリートのコンディションに与える影響を縦断的に研究した報告は少ない。そこで本研究は、テニスにおける体力の必要性に対する意識と体力測定がコンディションの向上意欲にどのように関連しているのかについて検討した。大学生女子テニス選手(n=7)を対象に、「テニスの競技力向上」に関する 30 分程度の半構造化インタビューを実施し、逐語化するとともに練習中の参与観察を行った。体力測定は最大酸素摂取量の測定を実施した。測定結果は個々に応じたフィードバック用紙を用いて返却し、得られた発話を逐語化した。全ての者が「テニスの競技力向上」には「体力」「技術」「思考・心理」の必要性を述べた。「体力」の必要性を特に感じている者は体力測定結果を意欲的に活用しようとする発話が多かった。一方で、「技術」の必要性を特に感じている者は、測定結果を技術の向上と関連させる発話がみられ、体力測定はコンディションの向上意欲に結びつ

Page 5: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

286

かないことが考えられた。

E26[教育]8月28日9:30

保28−012

運動部に所属する女子大学生による主体的な食育がトレーニング期の身体組成に与える影響

○古泉 佳代(日本女子体育大学) 川本 恵子(日本女子体育大学大学院) 菊地 ゆめみ(日本女子体育大学大学院) 齊藤 隆志(日本女子体育大学)

 競技特性によりアスリート自身が求める身体像が異なることが報告されているが、それが必ずしも適切な体重、除脂肪量であるとは限らない。そこで本研究では、適切な体重管理を実践する能力を育てる主体的な食育が、身体組成の変化に与える影響を検討した。対象は J 大学ラクロス部(n=44)であり、2013 年 12 月より 2 か月ごとに身長、体重及び体脂肪率(インピーダンス法)を測定し、食育を実施した。食育はチーム内の栄養班を中心に、身体組成測定に対するフィードバック及び、「練習後の食事を選択する力」、「体重を自己管理する力」の育成をねらいとしたワークショップを実施した。測定開始時の身長は 160.4 ± 5.3cm、体重は 54.9 ± 5.2kg、体脂肪率は 25.0 ± 3.2%であった。体脂肪率 25%未満の者(L 群 n=26)と 25%以上の者(H 群 n=18)の体脂肪量は、両群共に 2 か月後に増加した(L 群 108.0 ± 7.6%、H 群 106.9 ± 6.2%)。4 ヶ月後では、L 群の増加率(104.7 ± 6.2%)は H 群の増加率(99.8 ± 6.9%)と比較して有意に高値を示した。集団を対象とした食育では、体脂肪率の高い者だけでなく、適切な身体組成である者に対してもそれを維持することの重要性に気づかせる食育が重要であることが示唆された。

E26[教育]8月28日9:45

保28−013

省察に関する調査を用いた保育者研修プログラムの立案に関する基礎的研究

○岡本 浄実(京都文教大学臨床心理学部) 新井野 洋一(愛知大学地域政策学部)

 教育・看護・保育の分野では、振り返る力とりわけ「反省に考察を加える省察力」が重要であると考えられている。そのような中で、杉村・朴・若林(2009 年)は、省察態度に着目し省察の 3 層モデルを示している。同時に、保育者が行うカンファレンス等の機会に省察のモデルやチェックリスト等を提示することによって保育者の学ぶ環境を整えることが重要になると述べている。 今回、保育者研修プログラムの立案に役立てる観点から、A 市の全保育者(189 名)を対象に、郵送法(2014 年 2 月20 日~ 3 月 5 日)により保育者の省察に関する調査を実施した。 調査の結果、雇用との間には相関が認められなかった。年代と省察では「自分の保育の方針を振り返り改善すべきところを考えることがある」等 9 項目、経験年数と省察では「他の人の保育を見て、 自分の保育に必要なことに気づくことがある」等 7 項目に相関が認められた。さらに、調査結果を保育者、子ども、他者の 3 者の立場から再分析し、保育者研修プログラムの考案を試みた。

E26[教育]8月28日10:05

保28−014

柔道選手のスポーツ傷害に関連する心理的要因と心理的成長の可能性について

○小林 好信(千葉医療福祉専門学校) 山口 香(筑波大学) 松田 基子(大阪体育大学) 橋本 佐由理(筑波大学)

 本研究は、スポーツ傷害予防への示唆を得ることを目的に、自記式質問紙による前向き調査(対象は 16 大学の男女柔

Page 6: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

287

10 保健

道部員、有効回収数 n=350)を行い、大学柔道選手のスポーツ傷害と心理的特性の経過を 1 年間追跡した。1 年の間に傷害を発生した群としなかった群について、傷害前時点の心理的特性を t 検定により比較した結果、前者のストレス反応が有意に高かった。しかし、前者は、傷害発生後にスポーツ競技特性不安の勝敗の認知不安が低下し、心理的競技能力の判断力やレジリエンスに向上がみられた。また、クラスター分析による分類にて 1 年後調査時に自己抑制型行動特性が低く、問題解決型行動特性が高いグループは、自己抑制型行動特性が低く、問題解決型行動特性が低いグループに比べ、傷害を抱えた者の割合が有意に多かった。さらに、傷害を抱えた者は 1 年前に比べ、自己肯定感や自己抑制型・問題解決型行動特性、レジリエンス、心理的競技能力、スポーツ競技特性不安が有意に改善していた。したがって、傷害は選手にとって心理的成長のチャンスとなる可能性があり、選手を援助する医療職者は、その過程を支える立場にあるとも考えられる。

E26[教育]8月28日10:20

保28−015

柔道選手の自己イメージやレジリエンスが心理的競技能力やスポーツ競技特性不安に与える影響

○橋本 佐由理(筑波大学) 小林 好信(筑波大学大学院) 松田 基子(大阪体育大学) 山口 香(筑波大学)

 本研究は、大学柔道選手に対して自記式質問紙調査(対象は 16 大学の男女柔道部員、有効回収数 n=350)を行い、自己イメージの良さがレジリエンスの高さに影響を与え、レジリエンスの高さがスポーツ競技特性不安を軽減し、心理的競技能力を高めるという仮説モデルについて検討することが目的である。共分散構造分析により仮説モデルの適合度を検討したところ、GFI=0.936, AGFI=0.889, RMSEA=0.079 であった。このモデルによれば、観測変数 ‘ 自己価値感の高さ ’‘ 自己抑制型行動特性の低さ ’‘ 対人依存型行動特性の低さ ’ からなる潜在変数 ‘ 自己イメージの良さ ’ は、観測変数 ‘ 新奇性追究 ’‘ 感情調整 ’‘ 肯定的な未来志向 ’ からなる潜在変数 ‘ レジリエンスの高さ ’ に有意な正の強い影響力を持っていた(β=.894, p<.001)。潜在変数 ‘ レジリエンスの高さ ’ は、潜在変数 ‘ スポーツ競技特性不安の高さ ’ に有意な負の影響力(β= - .587, p<.001)、潜在変数 ‘ 心理的競技能力の高さ ’ に有意な正の影響力(β =.468, p<.001)を示し、‘ スポーツ競技特性不安 ’ は、‘ 心理的競技能力 ’ に有意な負の影響力(β = - .259, p<.001)を示すという因果モデルが構築された。

E26[教育]8月28日10:35

保28−016

日本・中国における教員養成系大学大学生の性・AIDS に対する意識・態度の比較調査

○日野 晃希(弘進ゴム㈱) 小浜 明(仙台大学) 長見 真(仙台大学)

 世界的に見ると日本も中国も HIV 感染者数及び AIDS 患者数は増加傾向にある。HIV 感染の一次予防対策の一つには「教育」が考えられるが、その際、将来その担い手となる教員養大学学生の性や AIDS に関する態度・意識等は、「教育」を実施していく上での重要な基底的要素となってくる。この課題意識に基づき、本報告は、日本と中国の教員養成大学大学生に対して性・AIDS に対する意識・態度等の質問紙調査を実施し、両国の傾向を比較した。調査対象者は日本 751 名(男505 名、女 246 名)、中国 462 名(男 240 名、女 222 名)である。その結果、①日本の大学生(以下、日大)は中国の大学生(以下、中大)よりも性の早期化、多様化が進行している。②日大は中大よりも性・AIDS に対する知識の豊富さ・積極的な態度の数値に有意差が見られたが、両国大学生共に知識・態度は未だ不十分である。③日大は中大と比較し性の早期化、多様化が進行しているが、中大のコンドーム(避妊)に関する知識率は日大に比べ有意に低く、更に中大の性行為時に避妊を確実に実施する比率及び避妊時のコンドーム使用率も日大と比較し有意に低かった等、を得た。

Page 7: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

288

E26[教育]8月28日10:50

保28−017

起立性調節障害の援助者について インタビュー調査から検討する

○加藤 勇之助(大阪体育大学) 横尾 智治(筑波大学附属駒場中高等学校)

 都内中高一貫男子校において、起立性調節障害(以下、OD)を抱えながらも無事卒業、大学進学することができた卒業生に対しインタビューを実施した。インタビュー調査の概要は、本人の在学中の経験、周囲の理解や自分なりの努力などを振り返るものであった。インタビューで語られた言葉から、OD とつき合いながら取り組んできた課題、課題への取り組み方についての変化について、以下 3 つの観点で整理した。① 本人が取り組んできた課題と取り組みに対する変化について② 援助資源と自助資源の活用による課題への対処法について③ 本人の心の成長について 今回は彼を支えた援助者について整理し報告させて頂く。今後、援助者へのインタビュー調査を実施し、援助者からの視点を分析し深化させた事例研究にしていきたい。

E26[教育]8月28日11:10

保28−018

男子学生を対象とした体力テストと痩身・肥満アンケートの相互関係について

○林 直也(関西学院大学) 小谷 恭子(帝塚山学院大学) 白川 哉子(昭和女子大学) 吉成 啓子(白百合女子大学) 銭谷 初穂(昭和女子大学) 河鰭 一彦(関西学院大学)

 K 学院大学における体育・スポーツ実技系科目であるスポーツ科学演習、健康科学演習、体育方法学演習(各 2 単位、実技、講義融合型=演習)の 2013 年度秋学期受講生に文部科学省が提唱する体力テストをおこない、同時に体脂肪率が BI 法により測定された。加えてこれまで我々が研究を進めてきた「痩身と肥満に関するアンケート」調査を実施した。本研究は今回得られた体力テスト、体脂肪率等体格指数、「痩身と肥満に関するアンケート」調査との相互関係に検討を加えた。今回は特に男子学生の結果に焦点をあてた。測定・調査に参加した学生は男子 252 名であった。今回の被験者の大部分は日常的に激しい身体活動を行っていない一般学生であった。「痩身と肥満に関するアンケート」は身長・理想身長、体重・理想体重、これまでの最高体重との差、家族の病歴、体型への意見者、出生時体重、これまでの運動習慣、食事習慣等であった。

E26[教育]8月28日11:25

保28−019

ラグビー事故 学校管理下における死亡事例の実態と特徴

○内田 良(名古屋大学大学院)

 本研究の目的は、学校におけるラグビーの死亡事故に関してその実態と特徴を明らかにすることである。学校の部活動で 1983 ~ 2013 年度の 31 年間に 59 件の死亡事故が起きている。他競技と比較したときの死亡率(死亡数/部員数)は、柔道と並んで突出して高い値を示す。2019 年に日本においてアジア初のラグビーワールドカップが開催され、それに向けて競技人口拡大策がとられているだけに、重大事故の実態を訴え、安全対策を早急に進めることが求められる。「安全対策なくして普及なし」である。 ラグビー事故の特徴としては、次の諸点があげられる。①死亡率が著しく高い、②ラグビー固有の動作が致命傷となる、③頭部と頸部の外傷が致命傷となる、④熱中症による死亡も多い、⑤試合中の事故が多い、⑥初心者(1 年生)にくわえ上級者(2・3 年生)でも事故が起きる。

Page 8: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

289

10 保健

E26[教育]8月28日11:40

保28−020

高校運動部活動におけるアスレティックトレーナーの関わり 男子ソフトテニス部における活動を通して

○平田 昂大(船橋整形外科病院アスレティックトレーニング部) 酒井 大輔(船橋整形外科病院アスレティックトレーニング部)

【背景】運動部活動は学校教育の一環として行われているが、指導環境等は学校により異なり、スポーツ傷害対策において格差がある。今回、日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)として運動部に帯同する機会を得たため、JASA-AT の介入効果について報告する。【対象と方法】S 高校男子ソフトテニス部は部員 31 名、顧問担当教諭 2 名、外部指導者 1 名であった。活動期間は 2012 年 4 月から 2 年間、週 1 日練習に帯同した。活動は JASA-AT の役割について説明を十分に行い、選手のコンディショニング指導と傷害対応を行った。なお、指導者と選手を対象に JASA-AT の介入効果に関するアンケート調査を行った。【結果】アンケートでは活動に好意的な回答が得られた。また傷害相談件数は、帯同初年度 4.18 件 / 日に対し、2 年目では 3.55 件 / 日と減少した。競技成績は関東大会優勝を果たすなど前年度と比較して好成績を残した。【結語】運動部活動における JASA-AT の活動は、生徒の怪我を防ぐために効果的であり、指導者と選手双方に対する必要性の高さが伺われた。これまでに学校部活動に対する JASA-AT の活動に関する報告は少なく、今後も活動報告と運動部活動を取り巻く環境整備が望まれる。

E33[教育]8月28日13:00

保28−101

熱中症予防教育の有用性

○山下 直之(中京大学大学院) 伊藤 僚(日本福祉大学) 樊 孟(中京大学大学院) 松本 孝朗(中京大学大学院)

 我々は 2013 年度日本体育学会にて大学新入生の熱中症既往の実態を報告した。その調査では熱中症の主徴の定義を記載したが、熱中症の発生時の主徴を「わからない」と回答した学生が多かったことから、熱中症を正しく認識していたかは不明であった。熱中症の主徴を正しく認識することは熱中症の重症化(熱射病への進展)の予防にもつながるため重要である。本研究では、学生に熱中症を正しく認識させる事を目的に熱中症に関する講義の前後に熱中症既往に関するアンケート調査を実施した。講義前の調査では対象者 84 名中 17 名が熱中症の既往ありと回答したが、講義後のそれは 33名に増加した(p<0.001)。また講義前では 17 名中 12 名は熱中症既往時の主徴が「わからない」と回答したが、講義後ではその 12 名中 10 名が熱中症既往時の主徴を記載した。熱中症の既往「なし」から「あり」に変更した学生 16 名全てが熱中症の主徴を回答した。熱中症既往の回答率の増加はそれだけ熱中症を正しく内省できたとも捉え得る。熱中症予防に関する教育は、熱中症既往の正しい認識につながる事が示唆された。

E33[教育]8月28日13:05

保28−102

食品の摂取頻度からみた体力

○銭谷 初穂(昭和女子大学) 白川 哉子(昭和女子大学) 堂元 慎也(東京学園高等学校) 富本 靖(昭和女子大学)

 生活習慣における食習慣が注目されている中、平成 24 年度の国民健康栄養調査によると 15-19 歳女性の朝食欠食率は9.0% であることが報告されている。欠食はエネルギーの不足を招くだけではなく、1 日当たりの摂取食品目数が減少することから、栄養状態の悪化を招き、身体活動等へ影響を与えることが推察される。今回は都内女子大学の教職課程履修者の学生 96 名を対象とし、欠食や摂取食品の少なさが体力にどのように影響するのかを 1 日の食事における欠食率、食品摂取状況から検討した。内容は新体力テスト及び食物摂取頻度調査を参考に作成した食品摂取状況調査票を用いたアンケートを実施した。その結果、平均年齢は 19.0 ± 0.2 歳、身長 158.4 ± 5.3㎝、体重 51.5 ± 6.5㎏、BMI20.5 ± 2.2㎏

Page 9: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

290

/㎡であり、全国平均値(19 歳)と有意差はなかった。朝食欠食率については 5.2% と全国平均を大きく下回る結果であったが、食品群別の摂取状況については、たんぱく質源となる食品をほとんど摂取しない学生が 5.2% 認められた。対象学生は将来教員として食育に対する指導を行う立場であることを考慮すると、学生時代に自分自身の食事についての意識を一層高めていくことが必要であると考えた。

E33[教育]8月28日13:10

保28−103

専攻別短期大学生の骨密度と生活習慣に関する 2 年間の縦断的研究

○加藤 恵子(名古屋文理大学短期大学部) 星野 秀樹(愛知文教女子短期大学) 野中 章臣(修文大学短期大学部) 加藤 渡(修文大学短期大学部) 藤田 公和(桜花学園大学) 黒柳 淳(修文大学) 脇坂 康彦(愛知江南短期大学)

 専攻別短期大学生の骨密度と生活習慣について 2 年間の縦断的動向を明らかにし今後の健康指導の方向性を探ることを試みた。短大生 98 名(生活・幼児教育専攻 67 名、栄養士専攻 31 名)を対象として、骨密度測定(音響的骨評価値OSI)、質問紙による生活習慣調査を、2012 年 5 月入学時と 2014 年 2 月卒業時に実施した。各項目を点数化し比較・検討した。その結果、入学時の OSI には専攻間に差はなかった。生活習慣調査では、体力の自己評価(p=0.012)、コーヒー・紅茶摂取(p=0.007)では生活・幼児教育専攻が、骨粗鬆症の知識の有無(p=0.009)、骨粗鬆症への不安(p=0.035)については栄養士専攻の点数が高かった。卒業時には、生活・幼児教育専攻では、生活習慣の改善はみられず、OSI は低くなっていた(p=0.004)。栄養士専攻では、OSI は維持されており、体力の自己評価(p=0.0016)、骨粗鬆症の知識の有無

(p=0.005)においては高くなっていた。これらのことから、専攻によって生活習慣意識には違いがあり OSI に影響があると示唆されたことから、専攻別の健康指導が必要である。

E33[教育]8月28日13:15

保28−104

大学生の肩こりが QOL に及ぼす影響について

○中川 雅智(千葉大学大学院) 村松 成司(千葉大学)

 これまで高齢者や労働者に多いとされてきた肩こりだが、近年、大学生にも見られるようになった。しかし、大学生の肩こりについての研究は少なく、その現状や影響については不明な点が多い。そこで本研究は QOL(生活の質)及び肩こりについて調査を実施し、大学生の肩こりが QOL に及ぼす影響について検討した。対象は一般大学生 262 名(男性157 名、女性 105 名)であった。調査は QOL を測定する尺度である SF-36 及び肩こりに関する質問、基本情報(年齢、性別等)で構成した無記名アンケート調査を行った。SF-36 の結果から下位尺度得点、下位尺度を包括したサマリースコアを算出し、肩こりの有無を比較した。調査の結果、下位尺度得点のうち、全体的健康感、活力の項目で男女ともに肩こり有り群は無し群と比べ有意に低値を示した。サマリースコアでは PCS(身体的健康度)では有意な差が見られないが、MCS(精神的健康度)では女性において肩こり有り群は無し群と比べ有意に低値を示した。以上から大学生の肩こりが全体的な健康感や日々の活力に悪影響を与える様子が伺え、特に女性については精神面の健康に影響を及ぼしている可能性が推測される。

Page 10: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

291

10 保健

E33[教育]8月28日14:00

保28−105

高等学校における BLS(Basic Life Support)受講生の意識調査 男子高等学校 1 年生を対象として

○丸田 巖(慶応義塾高等学校) 山内 賢(慶應義塾大学)

【目的】日本では欧米諸国と比較して心肺停止者に対し、その場に居合わせた人による一次救命処置が積極的に施されているとは言えない。したがって、その講習の普及を図る必要があるものと考えられる。そこで本研究では、男子高等学校生の BLS(Basic Life Support)受講生に対しその意識調査を実施し、今後の BLS 講習に役立てることを目的とした。【方法】対象は男子高等学校 1 年生 123 名であった。調査は、質問紙調査法により実施し、質問項目は心肺蘇生法および AED 使用等に関する 12 項目であった。【結果および考察】BLS 講習前では、中学時代 BLS 講習受講者群は未受講者群に比し多項目で有意に肯定的な回答が多かった。BLS 講習終了直後の回答では、2 群とも肯定的な回答が多く一過性の効果が認められた。したがって、BLS 講習の効果が明らかとなり、今後ともその講習を実施していく必要性が示唆された。

E33[教育]8月28日14:05

保28−106

ラグビーにおける肩関節外傷の疫学調査 2 年間の縦断的検討

○大垣 亮(仙台大学体育学部)

 本研究は、大学ラグビーチームを対象に肩関節外傷の発生状況を縦断的に調査し、発生率・種類・重症度・受傷機転を分析することを目的とした。対象は、1 チームに所属する大学ラグビー選手 78 名とした。調査期間は 2009 年から2010 年の 2 年間とし、試合および練習で発生した肩関節の外傷を収集した。2 シーズン中に肩関節の外傷は 46 件発生し、そのうち試合時は 22 件、練習時は 24 件であった。外傷発生率は、全体で 1.04 件 /1000 Player-hours[95%CI, 0.74-1.34]、試合時で 13.40 件 /1000 Player-hours[95%CI, 7.81-19.00]、練習時で 0.56 件 /1000 Player-hours[95%CI, 0.34-0.79]であり、練習時に比べて試合時の外傷発生率は有意に高かった。外傷別では、肩関節の脱臼 / 不安定症の発生率が最も高く(0.41 件 /1000 player-hours[95%CI, 0.22-0.59])、次いで腱板損傷 / インピンジメント症候群の発生率が高かった(0.27件 /1000 player-hours[95%CI, 0.12-0.42])。ラグビー競技のおける肩関節の外傷は、脱臼 / 不安定症や腱板損傷 / インピンジメント症候群といった肩甲上腕関節に関わる外傷の発生率が高く、この種の外傷に対する予防介入が優先されると考えられた。

E33[教育]8月28日14:10

保28−107

一次介護予防を目的とした高齢者対象事業の一例 長崎県佐世保市の「まちなかプラチナタウン構想」を事例に

○西村 千尋(長崎県立大学) 上濱 龍也(岩手大学) 中垣内 真樹(長崎大学)

 厚生労働省が示す平成 27 年の介護保険制度改正案では、要支援 1 ~ 2 の介護保険サービスの基礎自治体への移行が平成 27 ~ 29 年度にかけて段階的に実施される予定である。サービスの内容や価格は基礎自治体が決めることになり、ボランティアや NPO を活用するなどの柔軟な運営も可能になる。そこで、本研究では、長崎県佐世保市における一次介護予防を目的とした高齢者対象事業「まちなかプラチナタウン構想」について、その可能性と課題を検討することを目的としている。 「まちなかプラチナタウン」では、情報収集と情報提供、講演会や相談会などの開催、運動教室や料理教室などの開催、教材の開発と普及、そして地域内外での交流などに取り組む。これらの活動によって、高齢期になっても自立した生活を送り、社会的な役割を持ち続けるために、ライフスキルを高め、自らの健康や環境をコントロールし、健康につながる行動選択を支援することが実現できる。さらに、平成 27 年の介護保険制度改正に向けて、保健福祉事業のソフトランディ

Page 11: 就労者に対するヨーガ療法のストレスマネジメント …284 哲 史 社 心 生 バ 経 発 測 方 保 教 人 ア 介 対象に実施した。本授業の結果、生徒の「応急手当に関する知識」や「応急手当の実施の自己効力感」が向上した。また、

292

ングのツールとして期待できる。一方、どのようなサービスを提供するのか、またその持続可能性をどう維持するのかといった課題も有する。