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RECCA-S8-創生D 研究交流会 東京都心部における 基質構造(マトリクス)の歴史的変化と 熱・風環境評価に基づく都市環境計画研究 (RECCA) 201393中央大学理工学部 教授 石川 幹子 協働研究者 海洋開発研究機構 高橋 桂子 国立環境研究所 誠二 東京大学大学院工学系研究科後期博士課程 高取千佳

東京都心部における 基質構造(マトリクス)の歴史 …...2013/09/03  · RECCA-S8-創生D 研究交流会 東京都心部における 基質構造(マトリクス)の歴史的変化と

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RECCA-S8-創生D 研究交流会

東京都心部における 基質構造(マトリクス)の歴史的変化と

熱・風環境評価に基づく都市環境計画研究 (RECCA)

2013年 9月 3日

中央大学理工学部 教授 石川 幹子

協働研究者

海洋開発研究機構 高橋 桂子

国立環境研究所 林 誠二

東京大学大学院工学系研究科後期博士課程 高取千佳

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都市・臨海・港湾域の統合グリーンイノベーション(RECCA)

ヒートアイランド・豪雨

(再現・シミュレーション) 海洋開発研究機構

内水氾濫・地表面氾濫(シミュレーショ

ンと評価) 国立環境研究所

都市環境計画 (分析・評価・

提案) 東京大学 中央大学

・21世紀の都市環境の形成に向けた基礎研究 ・都市のヒートアイランド現象、集中豪雨等 のリアルな再現に基づく、都市再生の提案

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研究の仮説

歴史的認識:明治以降の近代化に伴う都市基盤整備の歴史の中で、熱、風、気 候変動に伴う集中豪雨等の問題に対して、科学的知見に基づい た都市計画は、策定されてこなかった。 気候変動に伴う現象に対し、新しい都市環境計画に基づく施策が必要。

臨海部における都市環境計画はほとんどな

かった。

関東大震災後の防災都市計画

1930年代 放射環状緑地帯

都市の骨格の形成

1960年代 都市の拡大を防ぐグリーン

ベルト構想

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パッチ

コリドー

マトリクス

パッチ: 周囲と異なる、相対的に等質なエリア 内部のミクロな異質性は繰り返し現れる 例)高密な市街地における都市公園、樹林地等 コリドー:近接する両側の土地と異なる、線状の構造 例)河川・道路や崖線沿いの緑等の線状の緑地(図) マトリクス: 土地利用タイプの基質構造を形づくるもの。 例)市街地における宅地等 田園地帯においては、水田などがマトリクスとなる。

引用文献:Richard T.T.Forman, “Land Mosaics- The ecology of landscapes and regions”, Cambridge University Press, 1995.pp.38-39,APPENDIX

→これまで、都市環境計画はパッチやコア・コリドーを主に 評価対象として扱ってきた。気候変動により生じている問題の 解決のためには、基質構造(マトリクス)に対するアプローチが必要

熱・風環境評価に基づく、都市環境計画に必要とされる方法論 Landscape Ecology: Patch, Corridor, Matrix Model

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-1888年 -1914年 -1946年 -1975年 -1608年 -1632年 -1670年 -1863年

/江戸期(1608-1868)

明治期~経済成長期(1868-1975)

帝都復興期 市区改正期 戦災復興期 経済成長期

-2011年

都市再開発、高層化の進展

時間軸の導入 : 江戸の風、東京の風

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研究の方法

1.東京都心部における基質構造(マトリクス)の 歴史的経緯を踏まえた分析 分析、類型化された基質構造(マトリクス)を 本研究では、「ランドスケープ・ユニット」として定義。

2.熱・風環境の評価 広範囲・高解像度数値シミュレーション(典型的なヒートアイランド日、昼間) による風の道・地表面気温の分析・ランドスケープ・ユニットとの関係分析。

3.都市環境計画への展開 施策に関する代替シナリオの設定・シミュレーション、評価

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1.基質構造(マトリクス)の類型化

本研究では、 「ランンドスケープ・ユニット」

として定義

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2. 地物(建築・緑地)の分布と変化の分析 :データ構築・基礎分析

歴史的経緯を踏まえた基質構造(マトリクス)の分析

「ランスケープ・ユニット」

①空地の分布 :三次元空間形態

②自然的土地被覆 の分布

微地形

道路構造・ 用途地域

1.都市の骨格による分析単位設定

建築

緑地

3.分析単位ごとの 指標の設定

分析単位ごと ・微地形の 開度・標高 ・建物高さ別 建ぺい率

分析単位ごと ・樹木率 ・草地率 ・水面率 ・建ぺい率

明治16年 平成18年

4.ランドスケープ・ユニットの設定(地形分類+建物・緑地分類)

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<都市の骨格による分析単位設定>

①地上開度・標高に基づく微地形分類

■微地形分類:「地上開度」 地上開度は、当該地点が周囲の地形に囲われている程度を数量化したもの。尾根線および谷線といった地形の流れや大局的な地形的特徴のまとまりを把握することが可能。明治初期・現代において地形の特性を面的なまとまりとして抽出する為に適切である。 ※ 国土地理院数値情報5m DEMを基に半径500m としてArcGIS 上で算出されたものを閾値を設定して、入組地・谷地・平坦地に分け(下表)、国土地理院土地条件図と対照し、平坦地は、台地・低地・埋立地・水面に分類。入組地は、崖線・水路網に分類。(合計7分類)

微地形分類

地 上開度

標高

入組地 58.3-84.5°

約 25-35m

谷地 84.5-88°

約 10-25m

台地 (平坦地)

88-90° 約 30m-35m

低地 (平坦地)

88-90° 約0-10m ②道路構造・用途地域

■用途地域・都市計画道路: 平成18年東京都都市計基礎調査GISデータを使用。

・引用文献:横山隆三、白沢道生、菊池祐(1999),「開度による地形特性の表示」、写真測量とリモートセンシング、vol.38、No.4

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6.データベースの構築 6-1.江戸・明治期データ

①データ化範囲1 (朱印線内)

:関東全域2万分の1 迅速測図より作成。

・農村的土地利用 ・都市的土地利用 ・建物(密度) ・緑地

②データ化範囲2 (7.5㎞四方) :明治16年参謀本部 陸軍部測量図 より作成。

・建物(詳細形状) ・緑地

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明治期データとしては、明治16年「五千分一東京図測量原図」を用いた。 皇居を中心とし約7.5km圏の範囲内を詳細に再現している。 街区・建物・緑地データについてshapeデータの作成を行った。緑地は、水田・畑地などの農地や、樹林地における桐・楢・樫といった樹種、宅地内における樹木一本一本の配置までが詳細に手書きで表現されている。

6.データベースの構築 6-1.江戸・明治期データ

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緑地:明治16年と平成18年の比較

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■二期の緑地データの整合性 ①緑地の質の分類 草地・裸地・樹林地、屋上緑化、農地 に分けた。 ※屋上緑化は現在のみ、農地は明治期のみ ※右図は、明治16年の図中に見られた全凡例を、 地形・土地利用との関係をまとめたもの。 ②緑地の規模・分散の分類 両データを 1:単数の樹木が認識可能なまばらな樹木、 2:面的にまとまった緑地、 3:大規模緑地と分類。 平成データは、 (1.200㎡未満・2.200㎡以上1000㎡未満・3.1000㎡以上) の3段階に閾値を設定した場合、上記3タイプに分類された。 明治データでは、 手描きにより樹木が描かれた凡例を1とし, その他の面的に塗られた凡例については、 上記面積の閾値に応じて分類した。

6.データベースの構築 6-2.平成18年データ

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ランドスケープ・ユニット 明治16年 37タイプ、 平成18年 43タイプ

ランドスケープ・ユニット37タイプ ランドスケープ・ユニット43タイプ

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2.熱・風環境の評価

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MSSGモデルを用いた熱・風の数値シミュレーション (海洋研究開発機構の共同プロジェクト:明治初期・現代)

No インデックス名 粗度長 蒸発効率 アルベド 射出率1 建物内 0.50 0.00 0.18 1.002 建物敷地 0.50 0.02 0.18 1.003 アスファルト 0.50 0.00 0.18 1.004 草地 0.50 0.30 0.16 1.005 水面 0.001 1.00 0.07 1.006 樹木 0.50 0.30 0.16 1.00

表-1.土地利用ごとの熱的パラメータの設定

土地利用ごとの時間帯別地表面温度設定

メッシュ 5m範囲 皇居中心7.5km四方、高さ方向400m

日時ヒートアイランド日2010年8月17日(気象庁データを利用、大手町の日中気温が最も高い37度を記録)

計算時間 昼間の30分(15:00-15:30)海風 南東よりの風(対象地における典型的な海風)

シミュレーションコード

海洋研により開発されたMSSG (Multi ScaleSimulator for the Government) コード

水収支 蒸発過程・放射を導入。雲過程は導入しない。

人工排熱H18において、建物(用途ごと)・幹線道路幅員に応じて、建築研究所によって算出されたものを設定。

計算条件

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標高0~30m:キャノピー層 都市境界層下部:超高層ビルによる 上空の海風の遮断と強風軸

中間

高度別:気温

高度別にみた気温(明治vs平成)

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海と陸の境界か徐々に境界層が発達し、下町では細かな縦渦のストライプが生じている。 一方、山の手にかけては、谷筋に沿って緩やかに風が強まる。 ⇒水平方向の風の流れ、下町と山の手で様相が異なる。

明治16年:高度42.5mでの水平風速

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平成18年:高度42.5mでの水平風速

-隅田川沿いの超高層ビルにより、急速に都市境界層が発達し、下町全体に、弱風域と強風軸のストライプ構造が生み出される。 -高層ビルに囲まれた低い箇所(不忍池・赤坂離宮・皇居前広場・国会議事堂前広場等の公園、日本橋・内堀等の水面・東京駅・有楽町駅等の駅)では、局所的に水平風速が急激に強まる。 -鉛直風速を見ると、超高層ビルの全面で下降流・背面で上昇流が局所的に強く生じている。

0~2.5m/s 2.5~4m/s -2.5~0m/s -4~-2.5m/s

高度42.5mでの鉛直風速

京橋地区の例

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上空の冷たい 空気の下降

地表面の 都市熱の上昇

大川端

京橋川

左回りの渦

右回りの渦

左回りの渦

Aでの断面図:気温分布(白:高温)と渦の流れ

鉛直方向の風の流れ 立体的な縦渦構造 (例:京橋地区)

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明治16年:地表面2.5m水平風速分布

■山の手:崖線で最も平均風速が低く、1.6m/s。最大風速は台地上で最も大きく4m/s強となる。 ■下町:水路網沿いでは平均風速は大きい。 ■海面であった、埋立地・水面で最も平均風速が高く、2.5m/s。

微地形との関係

⇒地上開度による微地形分類と風速との対応関係が高い。

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平成18年:地表面2.5m水平風速分布

■崖線で最も平均風速が低いことは変わらず、約1.3m/s。 ■下町低地では、全体的に最大風速が強くなり、4~5m/s。 ■埋立地・水面で最も平均風速が低くなる。

微地形との関係

平成18年:地表面2.5m水平風速分布

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弱風化 変化なし 強風化

明治16年 風速差

同一箇所での地表面水平風速の変化 ●平成は、低層高密街区は弱風・幹線道路では強風 ●西部の宅地化が進んだ箇所では、風速低下 ●超高層街区の風向に対して側面道路では強風化

ランドスケープ・ユニットと地表面の平均水平風速

明治16年

平成18年

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平成18年 台地 谷地 崖線 水路網 低地 埋立地 水面

微地形別、平均風速の小さい順

■全体の傾向: 低密>中密>高密の順で、平均風速が大きく、水面を有する方が平均風速が大きい傾向にある。

明治16年

ランドスケープ・ユニットと地表面での平均水平風速

明治16年

台地 谷地 崖線 水路網 低地 埋立地 水面

微地形分類

ごと平均風

速の小さい順

台地 1.89 谷地 1.76 崖線 1.58 水路網 1.84 低地 1.66 埋立地 2.36 水面 2.61

1 低密(大名下屋敷) 2.13 中密(武家地) 1.4 低密 1.69 低密 水 1.83 高密(町人地) 1.18 低密 水 2.36 低密 水 2.632 中密(武家地) 1.55 低密樹木少(斜面緑地) 1.95 低密樹木少(斜面緑地) 1.61 低密  2.05 中密 1.57 低密 2.543 低密樹木少 2.16 低密(斜面緑地) 1.98 低密樹木高(斜面緑地) 1.79 低密 1.984 高密 1.02 中密 水 1.48 中密 1.24 中密 水 1.735 低密樹木高 2.53 高密 1.03 低密樹木高 水 1.84 低密 水 2.45

代表的ランドスケープ・ユニット 大名下屋敷 武家地

武家地・寺社地の 斜面緑地 水路網

町人地

海面 海面

■代表的マトリクス・ユニットの 平均風速: 台地上の大名屋敷では、風速が2m/s以上と高く、谷地の武家地、低地の町人地では1~1.4m/sと低い。崖線・水路網状では、1.5~2m/sと心地よい風速の風が流れていたと考えられる。

■全体の傾向: 超高層型または低密型>中層・高層型>低層混在型の順で、平均風速が大きい。超高層型では、最大風速が4m/s以上となり、分散風速が大きくなる。快適域(1~3m/s)を超える箇所が多くなる。

台地 1.54 谷地 1.52 崖線 1.34 水路網 1.86 低地 1.66 埋立地 2.11 水面 2.03

1 低層混在(住宅地) 0.99 中層・高層(商業地) 1.03 低密-草樹(斜面緑地) 1.92 低密 水(水路網) 1.9 中層・高層(商業地) 1.35 低密(空地) 2.39 低密 水(海面) 2.112 中層・高層 1.13 低層混在 0.97 低層混在 0.92 低密 2 低層混在 1.41 中層・高層 2.06 低密―草樹 1.863 低層混在-草樹 1.41 低密-草樹 1.96 低層混在-草樹 1.12 低密―草樹 1.86 低密 2.17 低密-草樹 2.35 低密 2.924 低密-草樹 2.46 低密 1.89 中層・高層 0.84 低層混在 1.16 超高層 2.14 低層混在 1.665 低密 1.94 低層混在-草樹 1.21 低密 1.6 中層・高層 1.15 低密-草樹 2.19 中層・高層-草樹 1.55

代表的ランドスケープ・ユニット

住宅地

商業地

斜面緑地 (公園や公共用地) 水路網

商業地

空地

海面

■代表的ランドスケープ・ユニットの 平均風速: 台地の住宅地、谷地の商業地では1m/s前後と低い風速。崖線上での斜面緑地や、水路網では、1.9m/sと風速が大きい。

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■山の手:台地・谷地・崖線であまり差は見られず、崖線のみ0.1℃ほど平均気温が高い。 ■下町低地で:平均気温が最も高く、34℃であるが、水面であった水路網では33.4℃と低い。 ■海面であった埋立地・水面では32~33℃と、低い傾向。

微地形との関係

明治16年:地表面2.5m気温分布

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平成18年:地表面2.5m気温分布

■全体的に温度が2℃上昇し、最大気温と最低気温の気温差が約3℃以上に開いている。 ■下町低地・埋立地では、約35℃まで平均気温が上昇し、最高気温と最低気温の差も4℃まで開く。 ⇒上空の冷気と地表面の排熱の鉛直方向の渦構造によるかく乱の効果が大きいためと考えられる。

微地形との関係

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気温差

同一箇所での気温の変化 ●平均的には、1~3℃上昇。 ●皇居北部・浜離宮・不忍池では気温が明治期より低い。 ⇒下降流による気温低減効果

ランドスケープ・ユニットと地表面の平均気温

明治16年

平成18年

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■全体の傾向: 高密>中密>中密―樹木少>中密―樹木高>低密>低密―樹木少>低密―樹木高の順で平均気温が低い。 建物の建蔽率・樹木密度の順で影響。 ・・土地被覆分類と地表面気温は相関が高く、 ■水面の効果: ⇒谷地・崖線上では約0.2~0.4℃ ⇒低地では0.1℃気温が低い。 ・・谷地・崖線での水の気温低減効果は高い。 風速が低いため、相対的に地表の被覆の影響が高く出るためと考えられる。

ランドスケープ・ユニットと地表面での気温

台地 谷地 崖線 水路網 低地 埋立地 水面 平成18年 ■全体の傾向: 低層混在型または中層・高層型>超高層型または低密型の順で気温が高い。 ■緑地の効果: ⇒草地・樹林地型では、同一条件下で約0.7~0.8℃の気温低減効果。 ⇒谷地・低地の水は、約1.3℃の気温低減効果。 ・・水路網で、水面が残されている箇所は、建築が建てられた箇所よりも1℃以上平均気温が低い。

明治16年 台地 谷地 崖線 水路網 低地 埋立地 水面

微地形分類ごと、

平均気温の高い順

⇒代表的ユニット (土地利用)ごとの 平均気温

台地 33.8 谷地 33.8 崖線 33.9 水路網 33.4 低地 34 埋立地 32.5 水面 33.1

1 低密(大名下屋敷) 33.7 中密(武家地) 34.1 低密 33.9 低密 水 33.5 高密(町人地) 34.5 低密 水 32.5 低密 水 33.32 中密(武家地) 33.9 低密樹木少(斜面緑地) 33.4 低密樹木少(斜面緑地) 33.9 低密  32.2 中密 34 低密 31.93 低密樹木少 33.7 低密(斜面緑地) 33.7 低密樹木高(斜面緑地) 33.8 低密 33.64 高密 34.4 中密 水 33.7 中密 34.2 中密 水 33.95 低密樹木高 33.4 高密 34.3 低密樹木高 水 33.7 低密 水 33.5

代表的ランドスケープ・ユニット

大名下屋敷

武家地 武家地・寺社地の 斜面緑地

水路網

町人地

海面 海面 ■代表的ランドスケープ・ユニットの平均気温:

台地上の大名下屋敷、斜面緑地、水路網では33.5℃前後であるが、谷地の武家地や低地の町人地では、34℃強まで温度が上昇し、身分制に応じて明確な気温の差が生じていると考えられる。

台地 35.4 谷地 35.4 崖線 35.5 水路網 34.8 低地 35.6 埋立地 34.8 水面 34

1 低層混在(住宅地) 36 中層・高層(商業地) 35.7 低密-草樹(斜面緑地) 34.4 低密 水(水路網) 34.2 中層・高層(商業地) 36 低密(空地) 35 低密 水(海面) 33.72 中層・高層 35.9 低層混在 35.8 低層混在 35.3 低密 35 低層混在 35.8 中層・高層 35.1 低密―草樹 33.53 低層混在-草樹 35 低密-草樹 34.3 低層混在-草樹 35.2 低密―草樹 34.2 低密 35.6 低密-草樹 34.4 低密 34.24 低密-草樹 34.1 低密 35.2 中層・高層 35.9 低層混在 35.3 超高層 35.4 低層混在 355 低密 35.4 低層混在-草樹 34.8 低密 35.5 中層・高層 35.3 低密-草樹 34.6 中層・高層-草樹 34.4

住宅地 商業地

斜面緑地 水路網 商業地 空地

海面 ■代表的ランドスケープ・ユニットの平均気温: 低地や谷地の商業地・台地の住宅地では約36℃の高温、斜面緑地、水路網が、34℃強 ⇒崖線・水路網では、現在でも樹林地・水面が多く、気温も低い。

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地表面の熱・風

2.代表的なランドスケープ・ユニットごとの、気温・風速への影響の実態解明: 明治16年では、谷地の武家地や低地の町人地、台地の大名屋敷など、ランドスケー プ・ユニットごとに、熱・風環境が異なっていることが、明らかとなった。また、 水面による気温低減効果は、谷地・崖線上(水田・池)では約0.2~0.4℃であった。 平成18年では、台地の住宅地や低地の商業地では、風速が低く気温が高い。 一方、崖線上での斜面緑地、水路網上での水面が残された箇所では、風速が約1m/s 高く、気温が約1℃低く算出された。 ⇒代表的なランドスケープ・ユニットごとの気温・風速が定量的に算出された。

1.ランドスケープ・ユニット内のパラメータ(微地形+土地被覆)と 地表面熱・風環境の対応関係 明治16年では、地表面風速は微地形と、気温は土地被覆との対応関係が高い。 平成18年では、(超高層型または低密型)は、(中高層型または低層混合型)よりも 風速が強く、気温が低いことが分かった。一方、超高層型は、風速の分散が大きい。 ⇒明治期・平成とも、ランドスケープ・ユニットが、地表面の熱・風環境との 対応関係が高い指標による設定であることが明らかとなった。 ⇒下降流の直下では、気温低減効果が見られたため、今後分析を進める。

Page 30: 東京都心部における 基質構造(マトリクス)の歴史 …...2013/09/03  · RECCA-S8-創生D 研究交流会 東京都心部における 基質構造(マトリクス)の歴史的変化と

今後の展開 1.本研究では、東京都心部における都市構造の歴史的変遷を踏

まえて、都市の基質構造(マトリクス)の分析・類型化を行い、気候変動に伴う都市環境計画の「計画原単位」となる「ランドスケープ・ユニット」の抽出を行った。

2.海洋研究開発機構との協働により、熱・風環境の評価を行い、

設定したランドスケープ・ユニットとの相関について分析し、計画原単位としての適合性の評価を行い、有意な結果をえることができた。

3.東京都における都市計画の実務担当者と協働で研究を行っており、都市政策に関わる代替案の作成、シミュレーション分析により、ヒートアイランド現象緩和に向けた有効な施策の提案を行っていく。