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46 MEDIX VOL.58デジタルマンモグラフィにおける 被ばくの極小化 Minimizing Dose in Digital Mammography 技術レポート Key Words: Mammography, Selenia, Tomosynthesis, Tungsten X-Ray Tube マンモグラフィは、高い空間分解能と適切な被ばく線量を同時に要求されるため、高い技術が求められるX 線検査手技である。 描出するべき対象は非常に小さな微小石灰化であるため、200 ミクロン程度でも視覚化できるような高解像度が必要とされる 1マンモグラフィは検診装置であり、被検者のX 線被ばく量を合理的に許容できる限度まで低く抑える必要があるため、被ばく線量 も要求事項の一つである。 スクリーンフィルムマンモグラフィ時代(デジタルマンモグラフィ以前)には、何年にもわたる技術開発と臨床経験により、モリ ブデン(Mo)が乳腺画像に最適なX 線管陽極材料であることが分かっていた。しかし、デジタルマンモグラフィ時代の到来により、 最適な画像診断方法の再考が必要となった。デジタル画像受像器(特に非晶質セレン検出器)のダイナミックレンジが優れている ため、別の陽極とフィルタ材料を再評価することとした。 治験および科学的な調査により、ロジウム(Rh)および銀(Ag)フィルタと組み合わせたタングステンX 線管がすべての乳房の厚 さでデジタルマンモグラフィに最適であることが分かった。Selenia デジタルマンモグラフィシステムがすでに実現している卓越 した画質を維持しながらも、ほぼ 30%の被ばく線量低減率を見込んでいる。 X 線管にタングステン(W)陽極を使用すると、デジタルブレストトモシンセシス(DBT)、ヨード造影およびデュアルエナジー乳 腺画像といった開発中の先進のアプリケーションにも優れた性能をもたらす。 Mammography is a very technically demanding radiographic procedure because it simultaneously requires high spatial resolution and good dose performance. High resolution is needed because some objects that must be depicted are very small microcalcifications, which can be visualized when they are as small as 200 microns1. Dose performance is also a requirement, because mammography is a screening modality and patient x-ray dose must be kept as low as reasonably acceptable. During the era of screen-film mammography prior to digital mammography, years of engineering develop- ment and clinical experience showed that molybdenum Mowas the optimal x-ray tube anode material for breast imag- ing. However, with the advent of digital mammography, the optimal methods of imaging need to be revisited. The supe- rior dynamic range of digital image receptors and amorphous Selenium detectors in particularwarrants the reevaluation of alternative anode and filter materials. Clinical trials and scientific investigations have found that a tungsten x-ray tube with rhodium Rhand silver Agfil- ters is optimal for use in digital mammography for all breast thicknesses and will allow for important dose reductions on the order of 30, while maintaining the excellent image quality already achieved with the Selenia digital mammography system. The use of a tungsten Wanode in the x-ray tube also offers superior performance for some of the advanced applica- tions under development, such as digital breast tomosynthesis DBT, iodinated contrast, and dual energy breast imaging. 1) 株式会社日立メディコ XR営業本部 2) Hologic, Inc. 3) Newton-Wellesley Hospital 落合 是紀 1)  Yoshinori Ochiai アンドリュー スミス 2)  Andrew Smith ビアオ チェン 2)  Biao Chen アラン セミン 3) Alan Semine *本技術レポートは「Minimizing Dose in Digital Mammography」(Hologic, Inc.)の日本語訳である。

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46 〈MEDIX VOL.58〉

デジタルマンモグラフィにおける被ばくの極小化

Minimizing Dose in Digital Mammography

技術レポート

Key Words: Mammography, Selenia, Tomosynthesis, Tungsten X-Ray Tube

マンモグラフィは、高い空間分解能と適切な被ばく線量を同時に要求されるため、高い技術が求められるX線検査手技である。描出するべき対象は非常に小さな微小石灰化であるため、200ミクロン程度でも視覚化できるような高解像度が必要とされる1)。マンモグラフィは検診装置であり、被検者のX線被ばく量を合理的に許容できる限度まで低く抑える必要があるため、被ばく線量も要求事項の一つである。スクリーンフィルムマンモグラフィ時代(デジタルマンモグラフィ以前)には、何年にもわたる技術開発と臨床経験により、モリ

ブデン(Mo)が乳腺画像に最適なX線管陽極材料であることが分かっていた。しかし、デジタルマンモグラフィ時代の到来により、最適な画像診断方法の再考が必要となった。デジタル画像受像器(特に非晶質セレン検出器)のダイナミックレンジが優れているため、別の陽極とフィルタ材料を再評価することとした。治験および科学的な調査により、ロジウム(Rh)および銀(Ag)フィルタと組み合わせたタングステンX線管がすべての乳房の厚

さでデジタルマンモグラフィに最適であることが分かった。Selenia※デジタルマンモグラフィシステムがすでに実現している卓越した画質を維持しながらも、ほぼ30%の被ばく線量低減率を見込んでいる。

X線管にタングステン(W)陽極を使用すると、デジタルブレストトモシンセシス(DBT)、ヨード造影およびデュアルエナジー乳腺画像といった開発中の先進のアプリケーションにも優れた性能をもたらす。

Mammography is a very technically demanding radiographic procedure because it simultaneously requires high spatial

resolution and good dose performance. High resolution is needed because some objects that must be depicted are very

small microcalcifications, which can be visualized when they are as small as 200 microns1. Dose performance is also a

requirement, because mammography is a screening modality and patient x-ray dose must be kept as low as reasonably

acceptable. During the era of screen-film mammography (prior to digital mammography), years of engineering develop-

ment and clinical experience showed that molybdenum(Mo) was the optimal x-ray tube anode material for breast imag-

ing. However, with the advent of digital mammography, the optimal methods of imaging need to be revisited. The supe-

rior dynamic range of digital image receptors (and amorphous Selenium detectors in particular) warrants the

reevaluation of alternative anode and filter materials.

Clinical trials and scientific investigations have found that a tungsten x-ray tube with rhodium(Rh) and silver(Ag) fil-ters is optimal for use in digital mammography for all breast thicknesses and will allow for important dose reductions on

the order of 30% , while maintaining the excellent image quality already achieved with the Selenia※ digital mammography

system.

The use of a tungsten(W) anode in the x-ray tube also offers superior performance for some of the advanced applica-

tions under development, such as digital breast tomosynthesis(DBT), iodinated contrast, and dual energy breast imaging.

1)株式会社日立メディコ XR営業本部2)Hologic, Inc.

3)Newton-Wellesley Hospital

落合 是紀1) Yoshinori Ochiai アンドリュー スミス2) Andrew Smithビアオ チェン2) Biao Chen アラン セミン3) Alan Semine

*本技術レポートは「Minimizing Dose in Digital Mammography」(Hologic, Inc.)の日本語訳である。

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1.画像性能に関するX線管の影響

1.1 背景アナログマンモグラフィには、スクリーンフィルムの組み合わせによって決まる非常に限定的なダイナミックレンジがあり、モリブデンX線管からのスペクトルで画像を最適化する。タングステン陽極は、モリブデン陽極からのスペクトルよりも高いエネルギーのX線でより「硬い」スペクトルを放射し、スクリーンフィルム画像への適性が低い。しかし、デジタルX線検出器のダイナミックレンジが広がると、デジタルマンモグラフィにおいてより硬いスペクトルを適切に活用でき、タングステンX線管の使用およびフィルタの最適化も可能となる。

1.2 検出量子効率ACRファントム(標準的な乳房)に同一のシミュレートした

患者線量1.0mGyを照射した場合の検出量子効率(DQE)を用いて、タングステンX線管を搭載したHologic社製Selenia※

デジタルマンモグラフィシステムとモリブデンX線管を搭載したSeleniaの被ばく線量について比較した。図1のDQE曲線により、タングステンX線管搭載のSeleniaシステムは、モリブデン管を搭載したシステムよりも優れた画像を描出できることが分かる。

じHTC散乱線除去グリッドを使用しているため、この結論は予期した通りであった。

図2:�タングステンおよびモリブデンX線管システムのMTF曲線。タングステンおよびモリブデン搭載システムの解像度は同等に高い値を示している。

MTF(%)

100

90

80

70

60

50

40

30

20

10

00 1 2 3 4 5 6 7

空間周波数(Lp/mm)

Tungsten SeleniaMolybdenum Selenia

図3:�ACRファントムの石灰化第3、第4群画像。1.0mGy線量で撮影。(左がモリブデン画像、右がタングステン画像)。タングステンX線管を使用するシステムは、石灰化第4群において優れた可視性を認めている。

モリブデン

石灰化第4群

石灰化第3群

タングステン

図1:�乳房厚4.5cmに対する典型的な線量レベルにおけるタングステンおよびモリブデンX線管を用いたシステムのDQE曲線。タングステンのDQEは、モリブデンよりも優れている。

DQE(%)

80

70

60

50

40

30

20

10

00 1 2 3 4 5 6 7

空間周波数(Lp/mm)

Tungsten SeleniaMolybdenum Selenia

1.3 解像度変調伝達関数(MTF)を用いて、タングステンX線管を搭載

したSeleniaシステムとモリブデンX線管を搭載したSelenia

システムの解像度を比較した(図2)。2つのMTF曲線は、タングステンX線管を搭載したSeleniaシステムとモリブデンX

線管を搭載したSeleniaシステムが同じ高解像度をもたらすことを示している。X線管の焦点サイズが同じであり、いずれのSeleniaデジタルマンモグラフィシステムも高い検出量子効率(DQE)を有する同じセレン画像検出器を使用し、また同

1.4 ファントムの画像評価モリブデンX線管に比べて優れたタングステンX線管の画質を図3に示した。この図では、モリブデン(左)とタングステン(右)X線管を使用して、同一のACR認定ファントムから描出された石灰化第3群と石灰化第4群を示している。ACR

ファントムへの線量は、両画像とも1.0mGyである。石灰化第3群は、下部に6個、石灰化第4群は上部に6個で

ある。小さな石灰化第4群の詳細が、タングステン画像でかなり

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鮮明になっている。システムの画像診断においては、タングステンX線管を搭載したシステムのMTFは、モリブデンX線管を搭載したシステムと同等であり、タングステンシステムのDQEは、モリブデンシステムよりも優れている。ファントム画像で実証されたように、DQEが優れていると高画質な画像になる。これは、モリブデンX線管を搭載したSeleniaと比較してタングステンX線管を搭載したSeleniaは優れたデジタルマンモグラフィ画像診断を行えるとする参考文献2)で示された結論と完全に一致している。

2.被ばく線量に関するX線管とフィルタの影響

X線管/フィルタの組み合わせは、被ばく線量に著しい影響を与える。われわれの検証では、ロジウムおよび銀の両方を使用するタングステンX線管搭載のSeleniaシステムは、モリブデンX線管やモリブデンフィルタを使用する従来のシステムに比べて被ばく線量が低減することが示された。銀フィルタは、乳房に厚みがある場合に使用し、より低い線量で優れた画像診断の性能をもたらすだけでなく、患者の体動による問題を解決するための撮影時間を著しく減少させる。厚みがあり、かつ密度の高い乳房を画像診断する場合、タングステン陽極は使用するが銀フィルタを備えていないデジタルマンモグラフィシステムの性能では、臨床で使用するには十分ではない。図4は、乳房厚の関数としての測定された乳腺線量を示す。標準的な50/50乳房におけるモリブデンX線管を搭載したSeleniaシステムとタングステンX線管を搭載したSeleniaシステムを相関させている。モリブデンX線管から線量1.6mGy、タングステンX線管から線量1.0mGyをACRファントムに照射するよう配置した。ほかの低線量モードも利用できる。選択した線量モードに関係なく、タングステンX線管を使用すると、すべての乳房サイズにおいて、モリブデンX線管と比べ線量を著しく抑えられる。

3.二重軌道陽極対単一軌道陽極X線管

スクリーンフィルムマンモグラフィの黄金期には、厚みのある乳房の線量最適化を実現するために、いくつかのアナログのマンモグラフィX線撮影装置に二重軌道陽極を装備したX線管が使用された。二重軌道陽極の構成は、モリブデン/ロジウム陽極とモリブデン/タングステン陽極の組み合わせが一般的である。ロジウムとタングステン軌道は、厚みのある乳房画像診断で主に使用されている。モリブデン軌道は、薄いものから平均的な乳房厚の画像に使用される。二重軌道陽極は、陽極材料に多くの選択肢があるため有利

であるように感じられるかもしれないが、二重軌道X線管を使用するのは技術面で著しく不利な面がある。一方、単一軌道X線管は、信頼性がより高く、安価である。さらに二重軌道X線管の最大陽極熱容量は、単一軌道X線管の最大陽極熱容量よりもかなり低い。単一軌道X線管を装備した装置では、厚みのある乳房に対して許容できる撮影時間(モーションアーチファクトの低減)で撮影するのに必要な高管電流で照射できる。単一軌道X線管がなければ、厚みのある乳房の画像は透過不足、長時間露出のモーションボケの問題および低画質化を招くことになる。単一軌道タングステンX線管は、他の二重軌道X線管と比べ2倍から3倍以上の最大陽極熱容量に対応している。デジタルマンモグラフィ画像性能の視点でさらに重要なの

は、タングステンX線管をロジウムフィルタと組み合わせて使用することで、モリブデンフィルタと組み合わせて使用するモリブデンX線管と比べ、同等もしくはそれ以上の画像性能が証明された。これはDQE測定、ファントムを使用した試験および臨床画像でも確認された。デジタルマンモグラフィシステムにおいて、二重軌道X線管は芳しくない選択であることをこの結果は示している。デジタルマンモグラフィメーカーにとって、臨床的な利益なしに二重軌道X線管を継続的に使用するよりも、タングステンX線管と併用する最適なX

線フィルタを提供することはより重要である。

タングステンデジタルマンモグラフィの臨床的有用性 ・被ばく線量の減少 ・画質の向上 ・トモシンセシス、デュアルエナジーおよび  造影マンモグラフィ�など 先進のアプリケーション

4.臨床経験

デジタルマンモグラフィシステムのメーカーの大部分は、性能の高さからタングステンX線管を提供している。特に、Hologic社はSeleniaデジタルマンモグラフィシステムを使用してタングステンによる画像診断の性能を評価した。倫理委員会に承認され、被検者のインフォームド・コンセントを得た調査プロトコルに従い、モリブデンシステムおよびタングステ

図4:�タングステンとモリブデンX線管Seleniaシステムにおける乳房厚の関数としての典型的な平均乳腺線量。タングステンX線管システムは、モリブデンX線管システムよりも低い線量である。ここで示した線量レベルに加え、他の低線量モードも利用できる。

平均乳腺線量(mGy)

4

3

2

1

00 10 20 30 40 50 60 70 80

圧迫乳房厚(mm)

Tungsten SeleniaMolybdenum Selenia

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7.結論

タングステンX線管を搭載したデジタルマンモグラフィシステムを使用すると、モリブデンまたはロジウム陽極を搭載したX線管と比較して画像診断性能が向上する。ロジウムフィルタとタングステンX線管を併用すると、モリブデンX

線管とモリブデンフィルタの併用と比較して性能が向上する。厚みのある乳房には、銀フィルタの使用がモリブデンやロジウムフィルタよりも優位である。陽極熱容量が高いことで撮影時間を短くできるため、単一軌道X線管が二重軌道X

線管よりも優位である。ロジウムと銀フィルタを併用するタングステンX線管との優れた組み合わせにより、幅広い乳房厚にわたってデジタルマンモグラフィの最適な線量と画質性能が得られる。さらに、タングステンX線管の使用は、乳房トモシンセシスや高い管電圧でヨード造影剤を使用するマンモグラフィといった先進のアプリケーションに最適である。

※ Seleniaはホロジック・インコーポレイテッド社の登録商標です。

参考文献

1) Kopans DB. : Breast Imaging 3rd edition. Lippincott,

Williams & Wilkins. 2007, pg 446.

2) Dance DR, et al. : Influence of Anode/Filter Material

and Tube Potential on Contrast, Signal-to-Noise

Ratio and Average Absorbed Dose in Mammography :

a Monte Carlo Study. Dance DR, et al. Br. J. Radiol.

(2000) 73(874) : 1056-67.

3) Smith AP, et al. : Initial Experience with Selenia Full

Field Digital Breast Tomosynthesis. In : Proceedings

of IWDM Durham North Carolina, June 2004, Ed.

Etta Pisano.

4) Jong RA, et al. : Contrast-enhanced digital mammog-

raphy : initial clinical experience. Radiology. 2003 Sep

228(3) : 842-50.

5) Bliznakova K, et al. : Dual-energy mammography :

simulation studies. Phys Med Biol. 2006 Sep 21 ; 51(18) : 4497-515.

6) Schueler B. SU-FF-I-37 : A Comparison of Full-Field

Digital and Screen-Film Mammography Dose. Medi-

cal Physics, (2006) V33N6 : 2005.

ンシステムの両方で検診と診断のためのマンモグラフィのために来院した被検者を撮影した。タングステンX線管を使用した画像は、平均的な乳房厚に対し、モリブデンX線管を使用した画像の約65%の線量で撮影したところ、マンモグラフィの読影経験が豊富な放射線科医による評価では、臨床上同等であるとされた。この評価に参加した放射線科医の一人、アメリカマサチュー

セッツ州NewtonのNewton-Wellesley Women’s Imaging Cen-

ter、乳房画像科医長Alan Semine, MD. は、タングステンシステムを使用しており、「Seleniaシステムを用いたタングステンによる画像撮影は、従来のモリブデンを組み合わせたSelenia

に比べて低い患者線量で同等の高品質デジタルマンモグラフィが可能である」と評した。

5.先進のアプリケーション

タングステンX線管を用いた画像診断は、特に開発中の先進画像診断アプリケーションにも非常に適している。トモシンセシス画像診断は画像収集中に焦点ボケが最小限になるように、多くの短時間パルスのX線を生成する必要があるが、タングステン陽極の高放射線出力により、より優れたトモシンセシス画像診断を行える 3)。研究者は、ヨード造影剤を使用した画像診断も含む造影マンモグラフィを研究している 4)。このアプリケーションにおける画像の最適化は、ヨードのk吸収端(33keV)以上の著しいエネルギー成分を伴う高い管電圧を必要とする。もう一つのアプリケーションは、デュアルエナジー画像診断の使用である。これにより高い管電圧による撮影を要する微小石灰化の可視性を向上させる 5)。

6.考察

モリブデンX線管デジタルマンモグラフィシステムは、スクリーンフィルムマンモグラフィと比べ、線量の30%減少を証明した 6)。デジタルマンモグラフィにタングステンX線管を導入すると、画質に悪影響を与えずに放射線被ばくをさらに低減できる。これは、放射線防護において鍵となる概念、ALARA原則(As Low As Reasonably Achievable : 合理的に可能な限り被ばくを低減する)に確かに従っている。乳がんの早期発見という面において、患者利益に対し相対的にマンモグラフィにおける放射線被ばくは非常に低くなるが、ロジウムと銀のフィルタを併用するタングステンX線管システムでは、患者被ばくを低減しながらも高画質を維持することができる。低線量が望ましいが、画質と線量の間にはトレードオフの

関係がある。画質が劣化し、必要な空間分解能が不足する量までX線線量を低減する場合がある。マンモグラフィ画像で200ミクロンと同程度に微小な微小石灰化を検出できるのに十分な解像度画質が得られるように、画質を最適化することで妥協されることが多い。