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大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステム推進協議会 ~分譲マンションの修繕・改修をお考えの 管理組合の方々へ~ 分譲マンション修繕・改修ガイド マンションには多くの部位・ 部品があり、それぞれに適切 な修繕周期があります。 共用部分と専有部 分は維持管理やグ レードアップ工事の 担い手が異なりま す。 構成している部 位や部品は共用 部分と専有部分 に分けられます。 共用部分の長期修 繕計画は必要です。 また、タイムリーな 見直しも必要です よ。 長期修繕計画っ てどんなもの? グレードアップ工 事は必要なの? また、どんな方法 があるの? 大規模修繕はど のように進める のですか? 改修では満足が得ら れなくなったときに建 替えの検討がはじまり ます。 修繕や改修、建替え についてはどこに相 談したら良いの?

分譲マンション修繕・改修ガイド- - 5 - - 長期修繕計画書のシミュレーショングラフのイメージと読み方 0 大規模修 ※上記の長期修繕計画のグラフは、第1回目の大規模修繕を前にして、今まで積み立ててきた修繕積立金残高

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Page 1: 分譲マンション修繕・改修ガイド- - 5 - - 長期修繕計画書のシミュレーショングラフのイメージと読み方 0 大規模修 ※上記の長期修繕計画のグラフは、第1回目の大規模修繕を前にして、今まで積み立ててきた修繕積立金残高

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大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステム推進協議会

~分譲マンションの修繕・改修をお考えの

管理組合の方々へ~

分譲マンション修繕・改修ガイド

マンションには多くの部位・

部品があり、それぞれに適切

な修繕周期があります。

共用部分と専有部

分は維持管理やグ

レードアップ工事の

担い手が異なりま

す。

構成している部

位や部品は共用

部分と専有部分

に分けられます。

共用部分の長期修

繕計画は必要です。

また、タイムリーな

見直しも必要です

よ。

長期修繕計画っ

てどんなもの?

グレードアップ工

事は必要なの?

また、どんな方法

があるの?

大規模修繕はど

のように進める

のですか?

改修では満足が得ら

れなくなったときに建

替えの検討がはじまり

ます。

修繕や改修、建替え

についてはどこに相

談したら良いの?

Page 2: 分譲マンション修繕・改修ガイド- - 5 - - 長期修繕計画書のシミュレーショングラフのイメージと読み方 0 大規模修 ※上記の長期修繕計画のグラフは、第1回目の大規模修繕を前にして、今まで積み立ててきた修繕積立金残高

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お住まいのマンションは多くの部位・部品からできています

皆さんがお住まいのマンションは、入居されたその日から適切な維持管理が必要です。

マンションは、柱、梁、屋根、基礎などの建物の構造部分、外装、内装、建具、造作など

の仕上げ部分、電気、給排水、ガス、エレベーターなどの設備類など、非常に多くの部位や

部品によって構成されています。

マンションを構成する部位・部品にはそれぞれ修繕周期があります

マンションを構成している部位・部品には、それぞれ適切な修繕周期があります。

■マンションを構成する部位・部品の修繕周期

部位 修繕工事項目 周期

(年)

部位 修繕工事項目 周期

(年)

①屋根

陸屋根防水 10~15

⑩給排水

設備

給水管の取替え 20~25

シングル葺き等 10~15 貯水槽取替え 20~25

金属葺 改修 22~26 排水管取替え 20~25

②外壁 塗替え 10~15 給水ポンプ取替え 15~20

③床(共用

廊下等) 防水等改修 10~15

樋交換 20~25

④鉄部 雨がかり部塗替え 3~6

⑪ 空 調 ・

換気設備 取替え 10~15

非雨がかり部塗替え 5~8 ⑫情報・

通信設備

テレビ共聴設備 10~15

⑤ 建 具 ・

金物類

建具取替え 25~40 インターホン設備 10~15

メーターボックス扉取替え 33~38

消防設備

自動火災報知設備 18~23

⑥共用内部 共用内部張替え、塗替え 10~15 屋内消火栓設備 23~28

⑦その他 コーキング、シーリング材打替え 10~15 連結送水管設備 23~28

⑧電気

設備

避雷針取替え 38~43 ⑭昇降機

設備 エレベーター更新 25~30

電灯設備取替え 10~15 ⑮立体

駐車場

2・3段自走式改修 25~30

自家発電設備取替え 28~33 機械式 改修 15~20

幹線(容量アップ) 28~33 ⑯外構・

付属施設 外構補修・取替え 23~28

⑨ガス設備 ガス管取替え 20~25

<中層住宅のイメージ>

①屋根

②外壁

③床

④鉄部

⑤その他

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マンションを構成している部位・部品は、共用部分と専有部分に分

かれます 分譲マンション(区分所有建物)を構成している多くの部位・部品は、区分所有者全員が

共有する『共用部分』とそれぞれの区分所有者が所有する『専有部分』に分かれます。

※区分所有者・・1棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建

物としての用途に供することができるものであるとき、その各部分の所有権をもつ者

共用部分と専有部分では維持管理の担い手が異なります

分譲マンション(区分所有建物)の維持管理について、共用部分は管理組合が、長期修繕

計画に基づき維持保全(修繕)を行い、改良は必要に応じて管理組合の決定により行われま

す。また、専有部分(内装等)については、原則区分所有者の責任により行われます。

維持保全(修繕)とは、マンションを良好な状態で保つために適時・適切なメンテナンス

を行うことです。一方、改良とは、大規模修繕等の計画修繕にあわせて、マンションの既存

性能をグレードアップすることをいいます。

■共用部分と専有部分における役割の概要

部位

内容 共用部分 専有部分

維持管理

維持保全(修繕) 長期修繕計画が担う 原則区分所有者の責任にお

いて行われる 改良 管理組合の別途会議

により行われる

例:建物躯体、廊下、駐車場等

ただしバルコニー・専用庭は専用使用部

専有部分

コンクリート躯体

(共用)

戸境壁の上塗り部

分は専有部分です

が、壁そのものは共

用部分とされてい

ます。専有部分の間

仕切り壁にフック

をかけることは出

来ますが、共用部分

となる境界壁に釘

やボルトなどで穴

をあけることは禁

じられています。

★専用使用権のある共用部

原則、専用で使用ができますが、緊急時の避

難を妨げる物置やサンルーフの設置、許可な

く外観を変更することはできません。

堅管パイプスペース(共用)

玄関ドアの内側と錠部分(専有)

床、壁、天井の内装(専有) 枝管(専有)

玄関ドアの外側と本体、ポーチ★

ベランダ、バルコニー★

窓枠、窓ガラス、サッシ

網戸★

共用廊下

共用部分

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共用部分については、長期修繕計画が必要です

マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持のために全てのマンションにおい

て計画的に適時・適切な維持改修を行うために、長期修繕計画が必要です。

長期修繕計画ってどんなもの?

長期修繕計画は、25~30 年程度の長期展望にたち、マンションを構成する各部位・部品

の修繕時期、概算費用を示すものであり、基本的には共用部分の維持保全の計画として作成

されるものです。また、適切な修繕計画に基づく修繕積立金額の根拠となります。

■中高層マンションの標準的長期修繕計画書のイメージ

○○○マンション長期修繕計画書

部位・部品 定期

点検 修繕内容

修繕

周期

(年)

概算工事費

数量 単位 単価

(円)

金額

(円)

柱・梁・壁他 3 年 塗装・タイル等の補修 10~15 ○○ ㎡ ○○ ○○

スラブ 3 年 タイル貼り・タイル取替え 15~20 ○○ ㎡ ○○ ○○

防水補修 10~15 ○○ ㎡ ○○ ○○

外壁 3 年 塗装・タイル等の補修 10~15 ○○ ㎡ ○○ ○○

PC・HPC 目地防水取替え 10~15 ○○ m ○○ ○○

屋根 3 年 アスファルト防水 10~15 ○○ ㎡ ○○ ○○

瓦葺の補修 10~15 ○○ ㎡ ○○ ○○

手摺等金物 2 年 鉄部塗替え 3~8 ○○ ㎡ ○○ ○○

玄関扉 取替え 25~35 ○○ ヶ所 ○○ ○○

サッシ 取替え 25~35 ○○ ヶ所 ○○ ○○

その他 2 年 集合郵便受箱等の取替え 22~26 ○○ ヶ所 ○○ ○○

電気設備 1 年 分電盤補修等 15~20 ○○ ヶ所 ○○ ○○

TV 受信設備 2 年 アンテナ等取替え 10~15 ○○ ヶ所 ○○ ○○

給水設備 1 年

コンクリート水槽(受水槽)

塗替え 27~32 ○○ ㎡ ○○ ○○

FRP 水槽(高架水槽)塗替え 23~29 ○○ ㎡ ○○ ○○

排水設備 1 年 排水管取替え 20~25 ○○ m ○○ ○○

ガス設備 3 年 共用ガス管取替え 20~25 ○○ m ○○ ○○

EV 設備 1 年 EV 取替え 25~30 ○○ ヶ所 ○○ ○○

消防設備 1 年 消火ポンプの補修・取替え 12~18 ○○ ヶ所 ○○ ○○

6 ヶ月 警報装置取替え 24 ○○ ヶ所 ○○ ○○

合 計 - - - - ○○

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■長期修繕計画書のシミュレーショングラフのイメージと読み方

※上記の長期修繕計画のグラフは、第1回目の大規模修繕を前にして、今まで積み立ててきた修繕積立金残高

で実際に大規模修繕工事が実施できるのかをチェックするものです。また、今後 30 年間資金不足なしで各

種修繕工事を行っていくには、修繕積立金をいくらにしなければならないのかを計画するために作成された

ものです。

① 大規模修繕工事(1回目)

入居時に決められていた修繕積立金が少なかったために 1 回目の大規模修繕工事では、

修繕積立金が不足してしまう事態になりそうです。計画通りに大規模修繕工事を実施す

るには、不足分は一時金の徴収か借り入れを行なわなくてはなりません。

今後 30 年間一時金の徴収や借り入れをせずに計画的に修繕工事を実施するには、修

繕積立金の値上げを行う必要があります。しかし、大幅に値上げをすると、管理組合員

の負担が大きくなり賛成も得にくいので、値上げを2回に分けて行なうことにしました。

② 大規模修繕工事(2回目)

1 回目の大規模修繕工事以降に修繕積立金を値上げしたために2回目の大規模修繕工

事までは積立金の不足は発生しないようになりました。しかし、3 回目の大規模修繕工

事までには、その他の修繕工事が必要となるので、修繕積立金の再値上げ(2回目)を

行う必要があります。

③ 給水設備・建具改修工事

3 回目の大規模修繕工事までに、鉄部塗装・給水設備と建具の改修工事を行う計画と

なっています。

④ 大規模修繕工事(3回目)

2回目の修繕積立金の値上げにより、3 回目の大規模修繕工事も修繕積立金の不足は

発生しないように計画されています。しかし、修繕積立金残高は0になってしまいます。

H18 H23 H28 H33 H38 H43

修繕積立金(年額)

工事費用

修繕積立金(累計)

工事費用(累計)

年度末残金

策定期間 30年間

修繕積立金値上げ(1)

修繕積立金値上げ(2)

借入または一時金

大規模修繕

工事(1 回目)

大規模修繕

工事(2 回目)

大規模修繕

工事(3 回目)

鉄部塗装工事

鉄部塗装工事

給水設備改修工事

建具改修工事

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長期修繕計画は見直しが必要ですよ。

長期修繕計画は、大規模修繕の際に実施する調査・建物診断(目視検査、アンケート調査

等)や、おおよそ 5 年程度の適切な時期に必要な改善内容及び費用単価(消費税や物価上昇

等)を見直すことも有効です。必要な場合は見直しを行う際、説明会を開催し、総会での承

認後、広報等を用いて十分な周知が必要です。

また、長期修繕計画書を活用できるようにすることや、区分所有者(組合員)等が閲覧で

きるようにしましょう。

なお、大規模修繕とは、一定の周期で修繕することが望ましい計画修繕等のうち、工事内

容や費用が多大で、長期間を要し、工事範囲がマンション全体に及ぶ複合的な工事のことを

いいます。

大規模修繕はどのように進めるのですか?

大規模修繕は長期修繕計画に基づいて計画的に実施することが必要です。

実際の工事を行うためには、建物の傷み具合の診断や区分所有者の意向調査等を行い、修繕

設計を行って工事部位や工事内容を確定します。効率的に工事を実施するためには、複数の部

位や工事項目をまとめて行うことや、性能のグレードアップ工事(改良)を合わせて行うことが

有効です。なお、大規模修繕工事は準備に最低 2 年程度を要するため、築後8~10年を超

えたあたりで、検討を始めることが適切です。

■マンションにおける大規模修繕のサイクル

大規模修繕は、マンションの性能を保ち続けるために、検討から設計・工事までを繰り返

し続けます。(START→1→・・・→13→START→1→・・・)

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マンションの生涯費用の経済性の考え方とは?

マンションの企画から解体まで必要な

費用構成比を調べてみると、建設費は氷山

の一角であり、維持・管理費やランニング

コストが大きな割合を占めています。これ

らの費用全てを総合的に考えることが大

切です。

マンションの維持・管理・運営

マンションの維持・管理・運営

は、長期修繕計画に基づく大規模

修繕等の費用を修繕積立金から

支払うこととなります。

長期修繕計画や修繕積立金は、最初に定めたからといって、自動的に機能するものではあ

りません。点検・検査・診断により、建物の経年による劣化状況等の不具合や問題点を明ら

かにし、具体的な修繕計画の作成・実施を通じて、長期修繕計画を適宜見直していく必要が

あります。また、長期修繕計画の見直しに伴い、修繕積立金を改める場合もあります。

グレードアップ(改良)工事は必要なの?

マンションは、竣工時には十分な性能を有していますが、経過年数とともに劣化します。

劣化した性能を元に戻す維持保全(修繕)を行うために長期修繕計画がありますが、区分所有

者が住宅に求める住宅性能への要求は一般に年々高まっていきます。

そのため、長期修繕計画に基づく維持保全(修繕)だけでは、区分所有者が求める住宅性

能に対する要求をマンションは満たさなくなっていきます。そこで、マンションを長く使用す

るためには、区分所有者が求める水準にマンションの性能をグレードアップすることが必要に

なります。

■計画修繕と改修の重要性

長期修繕計画に基づき大規模

修繕を行うときに、維持保全(修

繕)に加えて性能や意匠等のグ

レードアップ(改良)工事を行

うことが有効と考えられます。

なお、グレードアップについて

は、管理組合で合意形成に向け、

充分に協議する必要がありま

す。

*修繕と改良を合わせて行うこと

を一般に「改修」と言います。

建設費

除却費

ランニングコスト 維持

・管理費

共用:電気代

専有:水道光熱費

共用:保全費、修繕費、

一般管理費

専有:改修費、リニューアル費 (財)経済調査会「建築経済学と LCC」から引用

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グレードアップ(改良)工事にはどのような方法があるの?

○屋外(敷地内)の防犯対策

・照明を増やして明るくする

・防犯カメラの設置

・オートロック型ゲートの設置

・人感センサー付き照明等の設置

○専有部分・住戸廻りの防犯対策

・各戸のドアが破壊困難なものに変更

・カンヌキが枠との間から見えないよう

にガードする

・防犯性の高い錠に取り替える

・主錠の他に補助錠を設置

・窓ガラスを防犯ガラスにする

防犯性能の総合的な改善

・上下階の移動を容易にするエレベーター設置

・共用部分の段差解消のための擦り付け、スロープ、

段差昇降機等の設置

・段差解消に併せて、手すりの設置、床仕上げの変更

・扉の引き戸や自動ドアへの変更

バリアフリー性能の改善

○断熱性能の向上

・外壁・屋根の外断熱化

・サッシの2重化・断熱サッシ

への取替え

○ソーラー発電による共用部分

の照明

・先進技術へ意欲的取り組み

・災害停電時の電力確保

省エネ・エコロジー性能の

総合的改善

○強度型補強

・耐震壁、ブレースの増設

・開口部の閉塞

・耐震壁増し打ち

耐震性能の総合的改善

○靭性型補強

・柱へ鋼板、炭素繊維

シートの巻き付け

・袖壁の増設

・耐震スリットの増設

○情報通信設備の改善

・地上・BS デジタル放送化に伴う高

画質、多チャンネル、双方向受信

・インターネットの普及に伴うブロー

ドバンド通信網の整備

○ホームオートメーション

・ホームセキュリティ

・ホームコントローラー

・コミュニケーション

通信性能の総合的改善

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改修では満足が得られなくなったとき建替えの検討が始まります

修繕と改良を組み合わせた改修を適切に行うことで、マンションの寿命は長くなりますが、

社会的に日々進歩する住宅性能に追いつけない場合や、改修に多額の費用が必要になってく

る場合には、建替えも一つの選択肢になるため、改修で対応する場合と、建替えに進む場合

のメリットやデメリットを充分に比較検討することが必要です。

■建替えに向けた検討の必要性

建替えは、新たな建設資金や仮移転等に要する費用など多額の資金負担が予想され、全て

の区分所有者に係る重大な事柄となります。管理組合の中に「建替え・修繕検討委員会」とい

った組織をきちんと立ち上げて、区分所有者全体の意向を汲み上げながら、建替え計画と修

繕・改修計画とを、費用対効果を比較しながら検討することが重要です。

国土交通省編「マンションの建替えか修繕かを判断するためのマニュアル」等を参考にして

下さい。(http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/07/070127/070127_3.pdf)

「建替え・修繕検討委員会」で建替えが必要と判断されると、「建替え計画委員会」を組織し、

詳細な建替え計画を立てたうえで、「建物の区分所有等に関する法律」に定める手順に従って

「建替え決議」を行います。

建替え決議がされると具体的な事業開始になりますが、その方法には、「等価交換方式」や

「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」の規定に基づき、「建替組合」をつくって、

事業を実施する方法などがあります。

管理組合は維持管理等に向けてどんな手順で検討したら良いの?

一般的に管理組合では、次のような段階を踏まえて、維持管理等に取り組んでいきます。

初動期 ◎修繕・改修・建替え

について相談する段階

勉強期 ◎法律・税制・制度

◎事業手法

について学ぶ段階

検討期 ◎修繕 ◎改修

◎再生 ◎建替え

について検討する段階

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Q&A マンションの修繕・改修について

A1 定期的かつ継続的にマンションを構成する部位・部品等の状況を的確に把握し、適切な補修等

をしておくことが必要です。また、一定規模以上のマンションでは、法令で点検の実施(これらを

法定点検といいます)が義務付けられています。

「点検」はその実施の時期などにより、日々行う「日常点検」、定期的に行う「定期点検」、災害

などの発生後に行う「臨時点検」に区分されます。年間の計画を作って実施するとともに、結果や

その処置を確認して記録し、区分所有者が閲覧できるようにしておくことが大切です。

A2 マンションの部位・部品にはそれぞれ適切な修繕周期があり、これを踏まえて、管理組合が長期

修繕計画をつくっています。この計画に基づき、修繕工事を計画するにあたっては、管理会社の定

期診断報告書がある場合はそれを参考にし、無い場合は、信頼のおける建築事務所やコンサルタン

ト会社に劣化診断を委託しましょう。その診断を元に修繕すべき部分を判断しましょう。修繕すべ

き部分、修繕の方法についてもコンサルタント会社等の専門家に相談したほうがよいでしょう。

A3 建物の現状(劣化・不具合)を調査・分析し、必要となる修繕の部位、修繕内容(仕様)、修繕

方法、修繕時期の判定を行うものです。その診断方法には、外壁・防水・設備等の目視を中心とし

た簡易な調査や、機器を使う詳細な調査があります。人の健康診断と同じく、専門家が構造躯体・

防水層・設備配管等の種々の検査結果に基づいて評価を行います。そして、将来の影響を予測する

と共に、必要な対応策の提案をしてもらいます。

建物診断は、概ね、点検で不具合が見つかるケース、長期修繕計画の作成や、見直しの根拠とな

るケース、そして大規模修繕工事の診断となるケース等があります。それぞれのケースによって目

的が異なるため、その目的に応じた診断内容や診断方法になりますので、Q2にある信頼のおける

専門家からの具体的な提案やその費用を十分に検討するようにしましょう。

A4 昭和 56 年に建物の柱や梁等の構造を設計・施工するための基準(構造基準)が大幅に変わり

ました。この時期以前に建設された建物は、現在の基準によって建設された建物に比べて構造体力

が不足することがあります。

建物を支える構造は、地震時に建物の安全を守る重要な要素(耐震性)です。昭和 56 年以前の

建物の耐震性は専門家による耐震診断の結果により評価することになります。Q3の建物診断とは

別ですが、併せて進めることも方法のひとつです。なお、耐震診断費の補助制度が府内の市町村に

ある場合もありますので、所管課に相談してください。

Q1 マンションの建物・設備の状態を良好に保ち、安全で快適に過ごすためには、まずどのよう

なことをすればよいのでしょうか。

Q2 マンションのどの部分が傷んでいて、どの部分を修繕すべきかわかりません。

Q3 建物の劣化診断とは何ですか?

Q4 耐震診断とはどういうことですか?

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A5 大阪府住宅供給公社 マンション相談グループ等、公的なマンション問題に関する専門的な窓口

に、コンサルタント会社の相談をするか、(財)マンション管理センターのホームページ

(http://www.mankan.or.jp/)に掲載されている、テクノサポートネットを利用されればどう

でしょう。

マンションの劣化診断や長期修繕計画の作成は、単なる建築の知識とは異なるものが求められま

す。コンサルタント会社の選定方法は管理組合により千差万別ですが、共通の基準として、会社の

経営状態・実績、および実際に担当する者の実績等について、委託しようとする会社へ管理組合が

ヒアリングし、チェックすべきです。またその会社に委託したことがある管理組合に評価を伺うこ

とも有効です。その他の判断基準はそれぞれの管理組合に合った条件設定を皆さんで話し合って決

められたら良いでしょう。

Q&A マンションの建替えについて

A6 建物の構造上や防災上の安全性に重大な問題が発生し修繕では回復できない場合や、住宅性能

への社会的な向上要求から、マンションの居住性能向上に必要な費用や併せて実施を予定する修繕

費用が建替え費用に近くなるような状況が生じた時には、建替えも選択肢の一つと考えられます。

A7 建替えにより新しい再建マンションになるわけですから、時代の最新技術や基準、構造面や防

災上の安全性、ライフスタイルに応じた居住性を向上させることができます。また、敷地内に空地

をより多く生み出すことにより、容積率の割増しを受けることができる場合もあります。

A8 区分所有法の改正により、団地内の1棟(又は複数棟)を建替え及び団地内の全棟を一括して

建替える手続きが明確になりました。ただし、大きな団地で、いくつもの棟が建っている団地など

では、建築基準法による「一団地認定」を受けていることがあります。このような場合には、「一

団地認定」時に、団地を構成する全員の同意による一定の手続きが必要になりますので注意して下

さい。

A9 マンションの建替えは、その区分所有者が発意、提案し、管理組合理事会が建替えの検討組織

を作り検討します。建替えにかかる設計費用や工事費を中心とした費用は基本的には区分所有者の

負担になります。

A10 マンションの建替えを推進していくためには、合意形成に向けての再建建物の基本設計、資

金計画、事業計画の作成及び区分所有者への個別対応、近隣住民及び地元行政との交渉、打ち合わ

せ等の業務を処理できる専門家が必要となってきます。建築の設計や構造の専門知識を有するだけ

でなく、マンションについての法律等を熟知し、建替えの実務をいくつも経験しているコンサルタ

ントであることが必要です。

Q5 コンサルタント会社はどのようにして探せばよいのでしょうか?

またどのようなコンサルタント会社を選べばよいのでしょうか。

Q8 建物(棟)がいくつもある大きな団地でも建替えができますか。

Q9 マンションの建替えは誰が発案して、必要な費用は誰が負担するのですか。

Q10 マンションの建替えを指導してもらう専門家とはどのような方をいうのでしょうか。

Q7 建替えをすると、どのようなことが可能になるのですか。

Q6 修繕を続けていれば建替えは必要ないのではないですか。

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府内のマンションの相談はこちらへ

大阪府下では下記の窓口で、マンションの修繕や改修等に関する相談に応じています。

機関名 相談窓口 連絡先 備考

大阪府住宅

供給公社

マンション相談グループ *大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステム推進協

議会が運営

06-7669-0012 土日祝日除く。

(財)マンション管理センター大阪支部 06-4706-7560 土日祝日除く。

『大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステム』ってなに?

『大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステム』は、分譲マンションの修繕・改修・

建替えに関する相談に応じたり、各段階に適したアドバイザー派遣を行っており、『大阪府分

譲マンション管理・建替えサポートシステム推進協議会』が運営しています。

■『大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステム推進協議会』の構成

■『大阪府分譲マンション管理・建替えサポートシステム』によるアドバイザー派遣・紹介

初動期・勉強期 相談アドバイザーの派遣(無料)

検討期 実務アドバイザーの紹介(有料)

マンションの適正な管理運営、計画的な修繕・改修

や建替えなど管理組合の皆様の幅広い相談に応じる専

門家を派遣します。

*登録された相談アドバイザーを無料で

派遣いたします(原則2回まで)。詳細

については、大阪府住宅供給公社まで

お問い合わせ下さい。

建物(設備も含む)の老朽度等の調査診断から、修

繕・改善計画、建替え計画の検討まで、実態に応じて

専門的な立場から工事の内容や方法、費用等を、より

具体的に検討しサポートする専門家を紹介します。

本リーフレットはマンション研究会の協力により作成したものです。 H31.4.改正

◇ お問い合わせ先 ◇ 大阪府住宅供給公社 マンション相談グループ 〒541-0042 大阪市中央区今橋 2-3-21 TEL : 06-7669-0012

大阪府住宅まちづくり部 都市居住課

〒559-8555 大阪市住之江区南港北 1-14-16 TEL : 06-6210-9711

大阪府※1、八尾市、東大阪市、豊中市、堺市、吹田市、茨木市、高槻市、和泉市、大阪狭山市、

枚方市、箕面市、門真市、池田市、泉佐野市、寝屋川市、岸和田市、河内長野市、阪南市、岬町、

泉大津市、摂津市、大東市、富田林市、守口市、泉南市、熊取町

(公財)マンション管理センター※1、(公社)大阪府建築士会※1、

(一社)大阪府建築士事務所協会※1、(一社)再開発コーディネーター協会※1、

(公社)日本建築家協会近畿支部※1、大阪司法書士会、大阪弁護士会、

(独)住宅金融支援機構近畿支店、(一社)大阪府マンション管理士会、大阪府住宅供給公社※1

※1はマンション研究会メンバー

H31年4月現在