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「農研機構」は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネームです。 鳥インフルエンザ関連情報 鳥インフルエンザのアジア、シベリア等の発生状況 渡り鳥の世界的な動き、野鳥での発生・検出事例(遺伝的特徴など) 農研機構動物衛生研究部門 越境性感染症研究領域インフルエンザユニット 内田 裕子

鳥インフルエンザ関連情報...Clade 2.3.4.4のウイスは野鳥での増殖に適応している可能性があり、引 き続き冬の渡りの時期に、新たなHPAIVの侵入が危惧される

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Page 1: 鳥インフルエンザ関連情報...Clade 2.3.4.4のウイスは野鳥での増殖に適応している可能性があり、引 き続き冬の渡りの時期に、新たなHPAIVの侵入が危惧される

「農研機構」は国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネームです。

鳥インフルエンザ関連情報鳥インフルエンザのアジア、シベリア等の発生状況

渡り鳥の世界的な動き、野鳥での発生・検出事例(遺伝的特徴など)

農研機構動物衛生研究部門

越境性感染症研究領域インフルエンザユニット

内田 裕子

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• インフルエンザウイルスとは?

• 高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)の病原性

• H5亜型HPAIVの遺伝的多様性

• 2016-17年の発生に見る発生農場の特徴について

• 2018年に報告されたウイルスの特徴

• 野生動物とHPAIV

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インフルエンザウイルスとは

⚫インフルエンザ属に属するウイルス⚫A型

⚫人、豚、鳥、海生哺乳類、コウモリ、その他⚫赤血球凝集素タンパク (HA)

⚫ HA亜型:H1からH18☆H5及びH7亜型が家畜伝染病予防法上殺処分の対象⚫レセプター結合性

⚫ノイラミニダーゼ(NA)⚫ NA亜型:N1からN11⚫シアル酸分解酵素:抗インフルエンザ薬の標的

⚫B型⚫人

⚫C型⚫人、豚

⚫8(7)本のRNAを遺伝子情報として持つ

M2イオンチャンネル

HA NA

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野生水禽類(海鳥)HA:H1~H16亜型NA:N1~N9亜型

家禽類ニワトリ・アヒル・ウズラ…

高病原性化H5,H7亜型 (HPAIV)

馬インフルエンザH3N8亜型

季節性インフルエンザH1N1pdm, H3N2(香港型)

H5, H7亜型低病原性ウイルス

パンデミックウイルス?

H17N10H18N11

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• インフルエンザウイルスとは?

• 高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)の病原性

• H5亜型HPAIVの遺伝的多様性

• 2016-17年の発生に見る発生農場の特徴について

• 2018年に報告されたウイルスの特徴

• 野生動物とHPAIV

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鶏・七面鳥

H5, H7亜型低病原性ウイルス

野生水禽類(海鳥)

陸生家禽類アヒル・ウズラ…

高病原性化

呼吸器、消化管に限局した増殖

全身の組織、筋肉で増殖

高病原性鳥インフルエンザの出現様式

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メキシコにおけるHPAIの発生とLPAIVの常在化

1993年10月

産卵率低下とH5N2に対する抗体検出

低病原性株の分離開裂部位配列:PQ—RETR/G

1994年5月

1994年12月

開裂部位配列:PQRKRKTR/G

強毒型の分離 1995年6月

1995年 不活化ワクチンの使用

リコンビナントワクチンの使用1998年

5月

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台湾におけるH5N2亜型HPAIの発生

A/chicken/Mexico/31381-7/1994A/chicken/Mexico/28159-541/1995

A/chicken/Mexico/37821-771/1996A/chicken/Puebla/14586-654/1994

A/chicken/Puebla/14587-644/1994A/chicken/Puebla/8623-607/1994

A/chicken/Guatemala/45511-5/2000A/chicken/Guatemala/194573/2002

A/chicken/Ibaraki/1/2005A/chicken/Chis/15224/1997

A/chicken/Puebla/28159-474/1995A/chicken/Taiwan/A703-1/2008

A/chicken/Taiwan/1209/03A/chicken/Hidalgo/28159-232/1994

A/chicken/Mexico/31381-991/1994A/chicken/Mexico/31381-3/1994

A/chicken/Jalisco/14589-660/1994A/chicken/Guanajuato/28159-546/1995

A/chicken/Queretaro/14588-19/1995A/chicken/Queretaro/7653-20/95

0.01

北米系統

中南米系統

低病原性鳥インフルエンザ(H5N2) HPAI(H5N2)

発生日(DD/MM/YYYY)

21/10/2008 09/01/2010 20/09/2010 02/03/2011 10/11/2011 07/02/2012

終息日 14/11/2008 02/04/2010 11/02/2011 27/05/2011 15/02/2012 07/08/2012

臨床症状 なし 死亡例あり なし なし 死亡例あり 死亡例あり

報告件数 1 3 1 3 3 5

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接種 48時間後 接種 66時間後

2010年島根株実験感染で見られた臨床症状の多様性

Sorry, No picture!

Sorry, No picture!

Sorry, No picture!

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ウイルス接種前後の産卵数の変化

ウイルス接種後卵からウイルスが分離された個体:3/7

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トラキアスワブクロアカスワブ

卵表面卵黄卵白

3

5

7

検出限界0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目

気管・クロアカスワブ及び卵から検出されたウイルス量

(Xlog10EID50/ml)

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• H5亜型HPAIVの遺伝的多様性

• 2016-17年の発生に見る発生農場の特徴について

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2

8

14

55

31

21

12

1815

9 10

18

29

47

61

44

24

0

10

20

30

40

50

60

70

Gs/GD型H5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの分離された国と地域

H5N1からH5Nxへ

Clade 2.3.4.4の拡大

北アメリカ大陸上陸

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Originally defined by WHO/OIE/FAO H5 Evolution Working Group in 2008(modified from Emerging Infectious Diseases 14(7):e1)

2.1.12.1.2

2.1.3

2.2

1

89

65

4

7A/Hong Kong/156/97

A/Hong Kong/483/1997

A/Goose/Guangdong/1/96

3

0

2.4

2.5

2.3.4

2.3.1

2.3.3

2.3.2

Gs/GD型H5亜型HPAIV HA遺伝子の多様性(系統樹)

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2.3.2.1c

2.3.2.1a・・・

2.3.2.1b

A/duck/Hunan/8/2008A/whooper swan/Hokkaido/2/2008

A/chicken/Korea/Gimje/2008A/whooper swan/Akita/1/20082.3.2

2.3.22.3.2

A/chicken/Guiyang/3055/2005A/duck/Guiyang/3242/2005

2.3.42.3.4.1

2.3.42.3.4.2

2.3.4

2.3.4.3

2.3.1A/Chicken/Yunnan/447/2005

A/duck/Guangxi/13/2004

2.1.3.12.1.3.3

2.1.3.22.1.12.1.2

2.1.3A/crow/Kyoto/53/2004A/crow/Osaka/102/2004A/chicken/Yamaguchi/7/2004

2.2/2.2.1/2.2.2・・・Japanese poultry outbreaks in 2007

1

89

65

4

7/7.1/7.2A/Hong Kong/156/97

A/Hong Kong/483/1997

A/Goose/Guangdong/1/96

0.0100

3

2.3.3

0

2.4

2.5・・・Japanese poultry outbreaks in 2004

2.3.4.4・・・

Japanese H5N8 in 2014-15

Japanese H5N6 in 2016-17

Japanese H5N6 in 2017-18

Swan cases in 2008

Japanese outbreaks in 2010-11

Gs/GD型H5亜型HPAIV HA遺伝子の多様性(系統樹)

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発生農場の特徴(周辺環境)

青森県青森市発生農場は、平野部に位置し、付近を沼地や畑に囲まれており、家きん舎と畑の間に水路がある。

新潟県関川村発生農場は、山林に囲まれ、ため池に隣接している。また、発生農場から約800mの距離に荒川(1級河川)が流れている。

現地調査時、発生農場に隣接するため池には、数種類のカモ類(主にマカモ、コカモ)が約 500 羽確認された。新潟県上越市

発生農場は平地に位置し、周囲には、湖沼が散在している。また、敷地内にも小さなため池が存在する。北海道清水町

当該農場は、平野部に位置し、付近は畑に囲まれている。宮崎県川南町

当該農場は、平野部に位置し、付近は畑や竹林なとに囲まれている。また、発生鶏舎の東側約 50mの距離にため池(100m×200m 程度の広さ)がある。現地調査時、ため池にはカモ類が約100羽確認された。熊本県南関町

当該農場は山間部に位置し、農場の南側約20mの距離にため池(80m×20m程度の広さ)がある。現地調査時、このため池では、カモ類が 100 羽程度確認されたほか、農場上空を多数の野鳥が飛んでいるのが確認された。岐阜県山県市

当該農場は山間部の小川沿いに位置し、周囲を水田や雑木林に囲まれている。発生鶏舎は川から約10mの距離にあり、現地調査時には、この川に水鳥は確認されなかった。宮崎県木城町

当該農場は、山間部に位置し、付近は雑木林や畑なとに囲まれている。また、発生農場から約300mの距離に小丸川(1級河川)が流れている。現地調査時、小丸川にはカモ類(主にマカモ)が約100羽確認された。佐賀県江北町

当該農場は、平野部につながる丘陵地の入口に位置し、付近は山林に囲まれている。また、当該農場の近隣には比較的大きな池が複数あり、現地調査時、それらの池ではオシトリ等の水禽類が多数(合計 500 羽程度)確認された。宮城県栗原市

当該農場は、中山間部に位置し、付近には山林や養豚農場がある。また、鶏舎から百数十mの範囲内に6つのため池が散在し、現地調査時、それらの池ではカルカモ、コカモ、ホシハシロ等のカモ類が合計 20~30 羽程度確認された。千葉県旭市

当該農場は、平野部に位置し、付近は水田や畑に囲まれている。また、当該農場の近隣にはため池や沼なとは確認されす、水田にも水は張られておらす、水鳥も確認されなかった。一方で、発生農場から約3km離れた場所には、水鳥が飛来する周囲1kmほとの池があり、カモ類(主にコカモやマカモ)が1,000羽程度確認された。

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発生鶏舎

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発生鶏舎

Page 29: 鳥インフルエンザ関連情報...Clade 2.3.4.4のウイスは野鳥での増殖に適応している可能性があり、引 き続き冬の渡りの時期に、新たなHPAIVの侵入が危惧される

発生鶏舎

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• 2018年に報告されたウイルスの特徴

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http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/index.html

2017−18年冬季の国内でのH5N6亜型HPAIの発生状況

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Mine et al., Virology. 2019 May 2;533:1-11. doi: 10.1016/j.virol.2019.04.011.

N6 NA遺伝子の進化時期の推定

香川株を含むグループ

島根株を含むグループ

欧州分離株のグループ

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H5N8

中国、ロシアClade 2.3.4.4B

H5N8 ヨーロッパ

H5N6 日本野鳥株

H5N6 香川オランダ

H5N8 ヨーロッパ

H5N6 ヨーロッパ

H5N6 ヨーロッパ

HxN6 AIV

HxN6 AIV

HxNy AIV

2016 2017 2018

Mine et al., Virology. 2019 May 2;533:1-11. doi: 10.1016/j.virol.2019.04.011.

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白地図:http://www.craftmap.box-i.net/

2016-17シーズンに欧州で分離されたH5N8 HPAIV

2017-18年 H5N6亜型HPAIVの出現機構

2017年渡り鳥の北回帰

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白地図:http://www.craftmap.box-i.net/

2016-17シーズンに欧州で分離されたH5N8 HPAIV

2017-18年 H5N6亜型HPAIVの出現機構

x

2017年夏に起こった遺伝子再集合

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白地図:http://www.craftmap.box-i.net/

H5N6 香川株

H5N6HPAIVオランダ株

x

2017-18年 H5N6亜型HPAIVの出現機構

2017-18年冬に同じ遺伝型のH5N6亜型HPAIVがアジアと欧州で同時に出現

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方法1. 2017年12月19日に、鳥取県東郷湖にて10羽のオナガガモに位置測定装置(WT-300)を取り付けた。

2. 各個体について2時間毎の位置情報を収集。

3. 2018年2月末までの追跡個体の行動範囲を特定し、生息地周辺の現地調査を行った。

農林水産省「国際共同研究による重要家畜伝染病対策事業」

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niah1712

niah1715

niah1718

niah1714

niah1716

niah1720

10km

東郷湖周囲に生息域が限定されていた6羽の行動範囲は、半径7キロメートル以内に収まった。

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niah1714

niah1715

距離(メートル)

niah1712

niah1716

niah1718 niah1720

0時 6時 12時 18時 0時 6時 12時 18時

5000

5000

5000

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追跡個体は、午前8時から午後4時の日中に河川で多く、夜間は河川から離れた場所でも多く確認された。

養鶏場から半径1km

養鶏場

日中の位置情報

夜間の位置情報

河川から100m

河川

東郷湖

天神川

由良川

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養鶏場近辺において、日中は水場で、夕方以降は水場だけでなく田んぼで多くの個体が確認された。

養鶏場から半径1km

養鶏場

日中の位置情報

夜間の位置情報

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①②

現地調査箇所全個体の位置情報

追跡個体が密集していた田んぼの現地調査を行った。

東郷湖

天神川

由良川

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追跡個体の密集していた田んぼ①の2018年2月4日の様子

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追跡個体の密集していた田んぼ②の2018年2月4日の様子

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追跡個体の密集していた田んぼ③の2018年2月4日の様子

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追跡個体の密集していた田んぼ③の2018年2月4日の様子

追跡個体は、夜間に餌を食べるために2番穂の生えた湿潤な田んぼに飛来していた。

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キンクロハシロ

オナカカモ

ヒトリカモ

マカモ

2011年に分離されたHPAIVを接種したカモ類からのウイルス排出(鳥取大学 伊藤先生提供)

オシトリ

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カモ類の鳥インフルエンザウイルス感染源としてのリスク評価

リスク高

オナガガモ

キンクロハジロ

リスク低ヒドリガモ

マガモ

福島5, 島根4,鳥取1, 山口1

北海道1

オシドリ

大分4, 宮崎3,長崎3, 高知1

鳥取大学 伊藤壽啓先生提供

平成24年度 科学技術戦略推進費「地域社会における危機管理システム改革プログラム」「各種感染症への対応」

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野鳥の畜舎侵入防止対策について(独)農研機構 中央農業総合研究センター

百瀬 浩

• 平成24年3~6月に茨城県南部の養鶏場20施設で実施した鳥類調査から、鶏舎とその周囲で確認された1,007羽の野鳥の内、スズメ93羽(スズメ全体の15.4%)、ムクドリ15羽(同じく14.7%)が鶏舎内部に実際に侵入していることが確認された。

営業中の鶏舎に接近、侵入した野鳥の観察例

スズメ ムクドリ その他 鳥類計

鶏舎内侵入 93 15 0 108

鶏舎付近 197 29 24 250

農場敷地内 232 46 220 498

農場周辺 80 12 59 151

合計 602 102 303 1,007

侵入率 15.4% 14.7% 0.0% 10.7%

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スズメの侵入を防げる網目サイズは?• ・スズメを用いて網目サイズを変えた侵入試験を実施

• ・中央農研内の飼育設備で20羽のスズメを群れで飼育し、小屋内に1mの立方体の枠を作り、その中に餌場を設置

• ・ビデオ撮影により、侵入個体数を計測。

(独)農研機構 中央農業総合研究センター 百瀬 浩による

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(独)農研機構 中央農業総合研究センター 百瀬 浩による

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左の写真の部分を下から 左の写真の部分を鶏舎内部から

集卵ベルトと鶏舎のつなぎ目の隙間

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Atlantic

Americas flyway

Mississippi Americas

flyway

Pacific Americas

flyway

East Atlantic

flyway

East Asia

Australian

flyway

Central Asia

flyway

East Africa

West Asia

flyway

Black Sea/

Mediterranean

flyway

Central Americas

flyway

East Atlantic

flyway

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0.7

A/Guangxi/13486/2017 (H5N6)@2017-11-17

A/chicken/Ganzhou/GZ21/2015 (H5N6)@2015-12-12

A/chicken/Shenzhen/2269/2013 (H5N6)@2013-12-13

A/White-eyed Pochard/Ningxia/477-14/2015 (H5N6)@2015-11-11

A/Shoveller/Ningxia/481-21/2015 (H5N6)@2015-11-11

A/common gull/Saratov/1676/2018 -A / H5N6-@2018-10-01

A/Commom Teal/Ningxia/478-15/2015 (H5N6)@2015-11-11

A/duck/Hunan/12.07 YYGK111-P/2013(H5N6) (H5N6)@2013-12-07

A/Gadwall/Ningxia/485-31/2015 (H5N6)@2015-11-11

A/Guangxi/31906/2018 (H5N6)@2018-08-15

A/duck/Long An/AI470/2018 (H5N6)@2018-07-25

A/duck/Hunan/12.07 YYGK113-P/2013(H5N6) (H5N6)@2013-12-07

A/Env/Guangdong/172/2017 (H5N6)@2017-03-06

A/goose/Guangdong/674/2014(H5N6) (H5N6)@2014-03-30

A/goose/Guangdong/QY01/2016 (H5N6)@2016-10-21

A/Pavo cristatus/Jiangxi/JA1/2016 (H5N6)@2016-02-27

A/duck/Guangdong/G1378/2018 (H5N6)@2018-03-13

A/goose/Shandong/02.26 GD/2015(H5N6) (H5N6)@2015-02-26

A/White-eyed Pochard/Ningxia/479-16/2015 (H5N6)@2015-11-11

A/chicken/Guangdong/G1012/2018 (H5N6)@2018-03-12

A/Guangdong/18SF020/2018 (H5N6)@2018-09-29

A/Guangxi/32797/2018 (H5N6)@2018-10-25

A/Pavo cristatus/Jiangxi/JA1/2016-A / H5N6-@2016-02-27

A/common gull/Saratov/1676/2018 (H5N6)@2018-10-01

A/Guangxi/32797/2018-A / H5N6-@2018-10-25

A/environment/Shenzhen/25-24/2013 (H5N6)@2013-12-02

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2013

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2014

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2015

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2016

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2017

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2018

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カンボシア(プノンペン)の生鳥市場

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カンボシア(プノンペン)の生鳥市場

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カンボシア(タケオ、カンポット)の生鳥市場

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カンボシアで採取したスワブからのウイルス分離率

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近年の高病原性鳥インフルエンザウイルスについて

✤典型的な症状はない✤産卵率低下、死亡率の上昇なとの際には、その他の疾病とともにHPAIも疑って検査をする

✤症状の出方、死亡率の上昇の速さなとは、宿主や感染したウイルスの相互関係で決まるため、事前の予測は不可能

✤野鳥におけるHPAIVに対する感受性、致死性も変化している可能性がある✤死亡野鳥が必すしも、ウイルス運搬の主役ではない?✤Clade 2.3.4.4のウイルスは野鳥での増殖に適応している可能性があり、引き続き冬の渡りの時期に、新たなHPAIVの侵入が危惧される

✤アシア地域でのHPAIVの状況は、常在化の域に達している✤国内への侵入リスクの低下には、これらの地域でのウイルス制御が必要✤つまり、しばらくはリスクは低下しない