10
通信ネットワーク技術� 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの� ネットワーク基盤を実現する技術� CATV映像伝送サービスへのインターネットアクセス機能追加� 広帯域アクセスサービスを支えるフォトニックトランスポートネットワークシステムOADM1形光多重中継装置� 大容量WDM多重中継方式の実用化� 高速・低遅延なフルメッシュ光波ネットワーク(AWG-STAR)� ディジタルデータ放送/IP通信共用システム� MSTPの実用化� 高度IN技術によるフリーアクセス・ナビアクセス・APナビサービス、eコールサービス� ディジタルアクセス6000サービスの提供� 99版MHN-SおよびMHN-S(IC)の開発� リアルタイムサービス用ATM無中断技術の研究開発� スケーラブルスイッチアーキテクチャ(HCS)の研究開発� ISDN(INSネット64サービス)アクセス回線の長距離化� ギガビットイーサネット機能拡張技術(GENIE)� 意味情報でパケットを配送するネットワーク(SIONet)� ITシステムの総合的な コンサルテーションを支援する技術の体系化(ITAP) VoIP品質評価技術の開発� 地下管路整備のオールNO-DIG化を実現する次世代エースモールを開発� 19 19 20 20 21 21 22 22 23 23 24 24 25 25 26 26 27 27 ・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・� ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・�

通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

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Page 1: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

通信ネットワーク技術�帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの�

ネットワーク基盤を実現する技術�

● CATV映像伝送サービスへのインターネットアクセス機能追加�● 広帯域アクセスサービスを支えるフォトニックトランスポートネットワークシステム�● OADM1形光多重中継装置�● 大容量WDM多重中継方式の実用化�● 高速・低遅延なフルメッシュ光波ネットワーク(AWG-STAR)�● ディジタルデータ放送/IP通信共用システム�● MSTPの実用化�● 高度IN技術によるフリーアクセス・ナビアクセス・APナビサービス、eコールサービス�● ディジタルアクセス6000サービスの提供�● 99版MHN-SおよびMHN-S(IC)の開発�● リアルタイムサービス用ATM無中断技術の研究開発�● スケーラブルスイッチアーキテクチャ(HCS)の研究開発�● ISDN(INSネット64サービス)アクセス回線の長距離化�● ギガビットイーサネット機能拡張技術(GENIE)�● 意味情報でパケットを配送するネットワーク(SIONet)�● ITシステムの総合的なコンサルテーションを支援する技術の体系化(ITAP)�● VoIP品質評価技術の開発�● 地下管路整備のオールNO-DIG化を実現する次世代エースモールを開発���

19192020

2121

2222

23232424252526262727

・・・・・・・・・・・・・・・�

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Page 2: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

CATV映像伝送サービスへのインターネットアクセス機能追加

光ファイバの最大の特徴は、広帯域性にあります。そのため、

FTTH*1は当初CATV*2用に導入されました。しかし、高速のインター

ネット接続が可能になったHFC*3によるCATVにお客さまの高い関心

が集まるにつれて、FTTHでもさらなる展開のために、高速の通信機

能の実装が求められています。

今回、FTTHを用いたCATV映像伝送システムにインターネットアク

セス機能が実装されました。これはSTM-PDS*4とSCM-PDS*5を基

本としたものです。STM-PDSは、従来の電話系のサービス(PSTN*6

またはISDN)と広帯域のIPサービスを提供しています。このうち広帯

域のIPサービスは、イーサネットのパケットをお客さま宅からCATV

センターまで伝送します。その帯域は64kbit/s単位で最大10Mbit/s

まで設定でき、複数のお客さまと共用します。また、ファイル共有やプ

リンタ共有など、お客さまの間での意図しない通信を防ぐために、お

客さまからのパケットはほかのお客さまへは伝送されず、CATVセン

ターのみに伝送されるようになっています。

SCM-PDSシステムは、90~770MHzの片方向の広帯域映像伝送

を提供しています。また、FM一括変換技術を採用することで、光伝送

路におけるコネクタ反射や分散の影響を避け、高品質の映像伝送を可

能にしています。STM-PDSは1.3μm、SCM-PDSは1.5μmの光を

使っているため、WDM*7により互いに影響することなく、1本のファイ

バ上で運用することができます。

また、このFTTHシステムを管理するため、AcNOS*8 Ver.5が開

発されました。これにより、機器の設定、運用を円滑に行うことがで

きます。

(アクセスサービスシステム研究所)

*1 FTTH: Fiber To The Home*2 CATV: Community Antenna Television*3 HFC: Hybrid Fiber/Coaxial Cable*4 STM-PDS: Synchronous Transfer Mode-Passive Double Star*5 SCM-PDS: Sub-Carrier Multiplex-Passive Double Star*6 PSTN: Public Switched Telephone Network*7 WDM: Wavelength Division Multiplexing*8 AcNOS: Access Network Operation System

広帯域アクセスサービスを支えるフォトニックトランスポートネットワークシステム

近年インターネットが社会生活へ浸透し、生活様式が本格的な情報

流通社会へと変ぼうを遂げようとしています。すでに私たちの周りは、

パソコンや携帯電話からネットワークへアクセスするだけでさまざま

な情報を容易に入手できる環境にあります。広帯域アクセスが可能に

なれば、ネットワークを介して高品質の映像を楽しんだり、臨場感のあ

るゲームを離れた場所にいるもの同士で楽しむこともできるようにな

ります。

このようなインターネットの発展や社会生活への浸透は、そのまま

データトラヒックの伸びに現れています。データトラヒックの伸びは予

想をはるかに上回っており、LSI技術の伸びを支配してきた「ムーアの

法則」を凌駕しているといわれています。「ムーアの法則」を超えて増加

するデータトラヒックの需要にこたえるには、これまでにない新しい技

術に基づくネットワークシステムが必要となります。

今やネットワークシステムは、光通信技術とIP技術なしでは語れま

せん。そして、光通信技術は当社が最も得意とする分野です。光デバイ

スから光伝送まで幅広く世界の光通信技術をリードしてまいりました。

この光通信技術にさらに新しい光技術が加わりました。光クロスコ

ネクトスイッチです。この新しい技術を適用することで、波長の違いに

よって光信号を光のまま目的とする方向に切り替える波長ルーティン

グが可能となります。多量のデータトラヒックの固まりを光クロスコネ

クトスイッチの単純な機構で一括してルート設定を行います。今回、光

クロスコネクトシステムに基づくネットワークシステムを開発しました。

この波長ルーティング技術とIPルーティング技術を組み合わせるこ

とで、フォトニックルータという新しいルータが実現できます。現在、高

速かつ効率的に運用可能なフォトニックルータに基づくネットワークシ

ステムを開発中です。

(未来ねっと研究所)

19

通信ネットワーク技術

お客さま宅�

アクセス�回線�

センター�回線�

S-ONU�

NTT設備�

映像信号の流れ�イーサネットパケットの流れ�

L3SW、�Router

ONU�

SCM-�OLT�

NTT� CATVセンター�

STM-�OLT�

インターネット�

TA

OADM : Optical Add/Drop Multiplexer�OXC : Optical Cross-Connect

波長制御性�波長のダイナミックな運用�

�波長の固定的運用�

OXCに基づくネットワーク�

OXC

WDMリングネットワーク�

フォトニックルータによる�ネットワーク�

高速ルーティングの実現�

フォトニックルータ�

光ブロック、光IPパケット転送�を実現するフォトニックルータ�

WDM

WDM

WDM伝送�

OADM

p-to-p�WDM伝送��

1999 年代� 2010~�

OXC

(Add/� Drop)

λ1 λ2 λ1 λ3

λ3 λ2

●インターネットアクセス機能付きCATV映像伝送システムの概要

●フォトニックネットワークの進化

Page 3: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

OADM1形光多重中継装置

光ADM(OADM*1)リングシステムは、今後IP通信が急激に増加す

ると見込まれる都市部における通信インフラのバックボーンとして開

発されました。今回開発したシステムは、SMF*2に1550nm帯で最大

2.4Gbit/s×20波多重ができます。また、光増幅器を実装して、日本

で初めて再生中継なしで最大100km超のリング伝送を可能としまし

た。リングを構成するノードは、最大20波をすべてAdd/Dropできる

センターノードと、最大4波をAdd/Dropできるローカルノードで構成

され、各波長パスは、論理スター構成を構築できます。また、データ通

信網を介して、NE-OpS*3によるリング一括監視制御を行うこともでき

ます。

このシステムの主な特徴は、以下の通りです。

(1)各ノードにおいて光送受信モジュールを削除し、光信号のまま

Add/Drop/throughすることによる大幅なコスト削減。

(2)リング形の伝送システムであるため、需要に応じて必要な単位で

設備増設が可能。

(3)1+1パスプロテクション機能により、故障時には自動的に予備系

へ瞬時に切り替えるため、保守・運用性が向上。

また、グリーン調達を実施することで、環境に配慮した通信ネット

ワークを提供しています。NTT西日本では、2000年11月30日に、こ

のシステムを光IP通信サービスのバックボーンとして大阪06幹線面に

機搬し、12月にフィールド実験を開始しました。2001年3月以降には、

名古屋、広島、福岡の各幹線面でフィールド実験が開始されました。こ

のシステムは、変化の激しいIPの分野で、上位レイヤに依存しない基盤

システムとして有望です。

今後は、波長多重数の拡大、10Gbit/sインタフェースなどのさらな

る高速化に向けた拡張性が見込まれるため、多種多様なIPサービスに

よる通信需要の拡大にも即応でき、将来のIPネットワークに向けて大

きな貢献が期待されます。

(ネットワークサービスシステム研究所)

*1 OADM: Optical Add/Drop Multiplexer*2 SMF: Single Mode Fiber*3 NE-OpS: Network Element-Operation System

大容量WDM多重中継方式の実用化

近年のインターネットをはじめとするデータトラヒックの急増により、

基幹網の伝送容量もより一層の大容量化・経済化が求められています。

波長分割多重(WDM)伝送方式は、基幹網の伝送容量を飛躍的に拡大

する技術として注目されており、現在導入が進められています。これま

でのWDM伝送システムには、伝送ファイバとして1.3μm零分散ファ

イバ(SMF)が用いられており、中継系ネットワークに用いられている

分散シフトファイバ(DSF*1)に対応することが課題となっていました。

研究所では今回、SMF・DSF両方への対応を実現した世界初の伝送

システムとして、WDM2形多重中継装置の開発に成功しました。DSF

上でのWDM伝送では、ファイバ中で発生する四光波混合(FWM*2)に

よるクロストークを抑圧することが必要となります。この方式では、以

下の新規技術を適用することにより、FWMクロストークによる伝送距

離制限を克服しています。まず、通常使用される波長帯であるCバンド

(波長1530~1565nm程度)において、不等間隔波長配置を用いま

す。また、敷設されているDSFの分散特性のばらつきを考慮して光パ

ワーレベルの最適化を行い、高品質な符号誤り率特性を実現していま

す。さらに、従来のCバンドに加えて新規波長帯であるLバンド(1570

~1610nm程度)を用いています。Lバンドでは、適度の分散値があ

るため、FWM発生の抑圧が可能となります。これらの新規技術の適用

により、波長数48波以上、最大320km(3中継)の伝送を実現してい

ます。また、波長当たりの伝送速度についても、従来の600Mbit/s、

2.4Gbit/sに加えて10Gbit/sの信号も多重可能となっています。

この方式は、2000年よりNTTコミュニケーションズのバックボーン

ネットワークにおいて全国展開されています。

(ネットワークサービスシステム研究所)

*1 DSF: Dispersion Shifted Fiber*2 FWM: Four Wave Mixing

20

� ルータ/GbE-SWなど�

センタノード�

E� E�W

E� W

W

2.4G×20波��

ローカルノード��

ローカルノード��合分波部(FBG)�

�合分波部(FBG)�

光アンプ��

光アンプ��

分波部(AWG)� 合波部(AWG)�

光アンプ��

光アンプ��

光アンプ��

カプラ�

カプラ�

光アンプ��

トランスポンダ�(W)�

トランスポンダ(E)� トランスポンダ(W)�

トランスポンダ�(E)�

ルータ/GbE-SWなど�

NE-OpS��

DCN��

WDM形多重装置� WDM形多重装置�

Txp/Rxp 部�

O-MUX/�DEMUX部�

O-MUX/�DEMUX部�

DSF�(1.5μm零分散)�SMF�(1.3μm零分散)�

DSF�(1.5μm零分散)�SMF�(1.3μm零分散)�

80km以内�25dB

80km以内�25dB

光増幅部�

監視�制御部�

C-band�(12波以上)�

L-band�(36波以上)�

600 Mbit/s�~10 Gbit/s

WDM形中間中継装置�

Txp/Rxp 部�

RXP

RXP

TXP

TXP

最大48波以上�の光信号の伝�送が可能�

DCN

TXP

TXP

RXP

RXP

L-band

L-band

監視�制御部�

監視�制御部�

600 Mbit/s~�10 Gbit/s

600 Mbit/s~�10 Gbit/sC-band

C-band

L-band

L-band

C-band

C-band

WDM形監視制御装置�

NE-OpSクライアント�架前制御装置�WDM形遠隔監視制御装置�

NE-OpSサーバ�●OADM構成例

●WDM2形多重中継装置の構成

Page 4: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

高速・低遅延なフルメッシュ光波ネットワーク(AWG-STAR)

将来のネットワークでは、すべての人々に、一度にたくさんの情報を

遅延無く送るために、光信号を光のまま伝送することが望まれていま

す。また、将来の通信サービスを考えると、異なる情報を複数の人々に

同時に送る、あるいは複数の人々から同時に受ける、さらには送信と

受信を同時に行う、といった自由自在な使い方ができるネットワークが

必要になってきます。

研究所では、すべての人々が同時に結ばれているフルメッシュ接続

のネットワークシステムを、波長分割多重(WDM)技術と波長周回性ア

レイ導波路回折格子型光フィルタ(AWG*)を用いて、シンプルな形で

実現しました。

波長周回性AWGは、入力ポートに入ってくる波長多重された光信号

を光のままで、波長に応じて異なる出力ポートに振り分ける働きをし

ます。どの波長の信号をどの出力ポートに振り分けるかは、入力ポート

ごとに決まっており、異なる入力ポートから1つの出力ポートに同じ波

長の信号が送られることはありません。従って、光信号の波長の数を

入力/出力ポート数と同じだけ用意すれば、フルメッシュ接続が構成で

きます。

この波長周回性AWGを適用したフルメッシュWDMネットワーク

(AWG-STAR)は、波長周回性AWG1個にノード数分の多波長光送受

信モジュールをスター状に接続した構成になっています。アナログや

ディジタルといったまったく種類の異なる信号や、伝送速度の異なる信

号でも、個々に波長を割り当てることによって、単一のシステムですべ

ての通信を可能にします。これは、高速のインターネット網や、スー

パーコンピュータ同士の接続といった、さまざまな大容量ネットワーク

サービスに適用可能です。

今後は、障害に強く、トラヒック変化に柔軟に対応できるネットワー

ク構成の開発を行っていきます。

(フォトニクス研究所)

* AWG: Arrayed Waveguide Grating

ディジタルデータ放送/IP通信共用システム

2000年12月に本格的に放送が開始されたBS*ディジタル放送

サービスの特徴の一つにデータ放送サービスがあります。このサービ

スでは、信頼性の確保とユーザがいつでもデータを取り出せる利便性

を提供するため、送りたい情報を複数のブロックに分割し、繰り返し伝

送するカルーセル伝送方式が採用されています。一方、マルチメディア

衛星通信システムでは、IP伝送方式を利用した高信頼なデータ配信が

提供可能です。

研究所では、マルチメディア衛星通信システムで培った高信頼デー

タ配信を提供するIP伝送方式と、BSディジタル放送で採用された数百

万の大規模ユーザにも信頼性を確保し、いつでもデータが取り出せる

という利便性を提供するカルーセル伝送方式を併せ持つ、BSディジタ

ル技術適用衛星通信システムを開発しました。

このシステムでは、同一ハードウェアで両伝送方式を提供するため、

送信側にはカルーセル伝送方式への変換を行うカルーセル格納プログ

ラムを、受信側にはパソコン上で両方式を受信するチューナープログ

ラムを開発しました。また、カルーセル格納プログラムを利用して経済

的なデータ放送用コンテンツ検証システムを構築することも可能であ

り、事業会社での利用が予定されています。

今後は、両伝送方式の特徴を生かしたサービスの提案を行っていき

ます。

(サービスインテグレーション基盤研究所)

* BS: Broadcasting Satellite

21

通信ネットワーク技術

ノード�オフィス�

ノード�

λ1,λ2,...,λn 周回性AWG

BS送信局�

BSディジタル放送サービス�

①映像伝送(HDTV)�②データ放送(カルーセル)�

CS110通信サービス�

①データ放送(カルーセル)�②データ通信(IP)�③映像伝送(HDTV)�

受信装置(市販チューナー)� TV

受信装置(市販チューナー)�

110°E

ゆり3号-N

N-SAT-110

送信局�受信局�

汎用端末�

地上回線�

モデムなど�

チューナープログラム実装�

送出装置�

多重化装置�

MPEG出力装置�

汎用端末� ルータ・スイッチ�

MPEG格納装置�

繰返し配信�方式�

再送制御�方式�

コンテンツ�

カルーセル格納プログラム実装�

●フルメッシュWDMネットワーク(AWG-STAR)

●BSディジタル技術適用衛星通信システム

Page 5: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

MSTPの実用化

通信サービスの多様化や高度化など、信号量の増大のため、共通線

信号ネットワークの大容量化、高速化、低コスト化が強く求められてい

ます。このため、研究所ではマルチプロトコル-STP(MSTP*1)および

オペレーションシステムであるNE-OpSの開発を進め、2000年9月に

ファイルをリリースし、2001年2月よりNTT東日本、NTT西日本およ

びNTTコミュニケーションズの新共通線信号網で運用を開始しました。

MSTPは、最大3架構成で、3000信号リンク・2000信号方路を収

容し、MTP*2レベル3信号およびSCCP*3信号について、合計で毎秒

10万信号の処理が可能です。従来のSS71型信号交換機に比べ、架

数が10分の1、収容リンク数・処理信号数がそれぞれ約3倍の性能向

上を果たしました。また、従来の4.8kbit/s、48kbit/s信号リンクに

加え、ATM技術を採用した高速な1.5Mbit/s信号リンクの収容も新

たに可能としています。さらに、従来の64kbit/s回線インタフェース

に代わり、これらを効率的に多重したSDH*4インタフェースを採用し、

伝送設備コストも削減しています。またNE-OpSは、分散配置したセン

タ間の自動切替機能などにより、高い信頼性の向上を図っています。

MSTPの開発に当たっては、開発済みのMHN*5シリーズからS1プ

ラットフォームおよびハードウェアの大部分を転用し、共通線信号処理

固有部分のみを新規開発、ならびにNE-OpSの既存ソフトウェア資産

(MHN-AπコンパクトOpSなど)の活用、市販管理プラットフォームの

採用などにより、コストの削減を実現しました。

NTT東日本、NTT西日本およびNTTコミュニケーションズでは、従

来の共通線信号網からMSTPを用いた新共通線信号網に順次切り替

えていく予定です。

(ネットワークサービスシステム研究所)

*1 MSTP: Multi-protocol Signalling Transfer Point*2 MTP: Message Transfer Protocol*3 SCCP: Signalling Connection Control Part*4 SDH: Synchronous Digital Hierarchy*5 MHN: Multimedia Handling Node

高度IN技術によるフリーアクセス・ナビアクセス・APナビサービス、eコールサービス

当社再編後のNTT東日本およびNTT西日本では、地域系NCC*1(新規第一

種電気通信事業者)との競争が激化しています。地域会社の戦略として、指定

電気通信設備以外で他社と差別化可能な高機能系サービスを開発し、トラヒッ

クの囲い込みを図る必要があります。また、インターネットの普及やLモードの

導入に伴い、ISP*2を対象として複数あるアクセスポイント(AP)を1つの代表

群として効率的に利用できるサービスの提供、インターネットと融合したパー

ソナル電話サービスの提供が望まれています。

このような要望にこたえるため、フリーアクセス・ナビアクセス・APナビサー

ビスを開発しました。フリーアクセス・ナビアクセスは0AB0系の統一番号に

より、通話料の着信課金、発信課金で県内の発信地域を指定して接続すること

が可能なサービスです。APナビサービスはISPの同一CA*3内複数電話番号を

0AB0系番号で統一して接続できるサービスです。

また、お客さまが設定した端末への追いかけ着信や、お客さまあてのメッ

セージ(ボイス、FAX、電子メール)をインターネット経由で取り出すことがで

きるeコールサービスをNTTコミュニケーションズの要望により提供しました。

さらに、クレジットコールのオプション化、ユニファイドメッセージセンタ接続商

品の追加、Webからのボイスメール送信の各機能追加を行いました。

高度IN*4システムはサービスに共通なプラットフォーム機能の活用とサービ

ス固有のシナリオ(SLP*5/MLP*6/OLP*7)を、SCE*8を利用して開発すること

により、高度電話サービスのタイムリーな提供を実現しています。また、プラッ

トフォームはAPI*9を規定しているため、それらのプログラムは各事業会社ご

とに独自に開発できます。フリーアクセス・ナビアクセス・APナビサービスは、

NTT東日本、NTT西日本の研究開発センタで開発されました。さらに、シナリ

オの開発だけでeコールサービスの機能追加が提供でき、開発期間が従来の2

分の1と短縮できます。一方、MHN-SCP*10と交換機間のサ-ビス制御は、

ITU-TおよびTTCで標準化されているINAP*11を適用しているため、高度接続

サービス競争のオープン性が確保されています。

今後は、IP系基盤の拡充をさらに進め、インターネットコールウェイティング

などの電話とIPの融合サービスへの適用を進める予定です。

(情報流通プラットフォーム研究所)

*1 NCC: New Common Carrier *2 ISP: Internet Service Provider*3 CA: Charging Area *4 IN: Intelligent Network*5 SLP: Service Logic Program *6 MLP: Management Logic Program*7 OLP: Operation Logic Program *8 SCE: Service Creation Environment*9 API: Application Program Interface*10 MHN-SCP: Multimedia Handling Node-Service Control Point*11 INAP: Intelligent Network Application Protocol

22

NE Opsシステム管理部�

LANインタフェース� MSTP

SDHインタフェース�

* DCN: Data Communication Network

プロトコル処理部�(既存信号)�

プロトコル処理部�(ATM信号)�

情報�

転送網�

(*

DCN)�

新同期�

伝送路網�

SDH�

SDH�

ATM結合機構�

NW Ops

MSTP

他STP

SEP

1.5Mリンク�

1.5M/48k�リンク�

48k/4.8k�リンク�

高度IN SCE

MHN-SCP-OpS

(2)接続先�  問い合わせ�

(1)� 0120-XXXXXX (フリー)� 0800-XXXXXXX (フリー)� 0570-XXXXXX (ナビ)� をダイヤルして発呼�

(4)接続�

(ISP含む)�

SMS*1

MHN-SCP

MLP/OLP

SLP

MD(SSP)*2

共通線信号網�

呼情報転送網�

交換機�MRS*4(ガイダンス装置)�

TCS-V3*3(輻輳制御)�

新通話�

CUSTOM*5

(3)接続先指示�  課金指示�  (フリー:着課金、�   ナビ:発課金)�

●MSTPの構成

●フリーアクセス・ナビアクセス・APナビサービス

*1 SMS: Service Management System *2 MD (SSP): Mediation (Service Switching Point)*3 TCS-V3: Traffic congestion Control System Version 3*4 MRS: Multi-purpose Reactive Stage *5 CUSTOM: Customer Service Total System

Page 6: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

ディジタルアクセス6000サービスの提供

ディジタル専用線市場においては、企業内ネットワークの高速化、

インターネット利用増大によるISPへのアクセス回線高速化など高帯

域品目のニーズが拡大しています。加えて、より安価なサービスへシフ

トする傾向にあるため、すでにサービス提供されている経済的な常時

接続品目のディジタルアクセス64、128、1500サービスに、

6Mbit/s高速帯域をカバーするディジタルアクセス6000サービス

(経済的な常時接続型6Mサービス)のラインナップ追加を、NTT東日

本、NTT西日本より強く要望されていました。その要望にこたえるべ

く、当社専用線ネットワークの中核インフラ設備である専用サービス

ノード装置(DSM*1:1999年8月より運用開始)に追加開発を行いま

した。

主な開発内容は、光加入者パッケージ(OSU*2インタフェース2盤)

のハードウェア新規開発と、OSUインタフェース2盤を制御監視する

DSMのNE-OpSソフトウェアの開発です。ハードウェアのOSUインタ

フェース2盤は、すでに提供されているディジタルアクセス1500サー

ビスで使用している既存光加入者パッケージ(OSUインタフェース1

盤)をベースに開発したこと、同様にソフトウェアも既存ソフトウェアの

大きな改造を伴わないよう開発規模を抑えたことで、開発の低コスト

化および早期実現ができ、NTT東日本、NTT西日本の期待にこたえる

ことができました。

このサービスは、加入者区間に光ファイバ1芯で双方向通信を可能

とするPDS方式を用い、お客さま宅に設置されるONU*3をOSUイン

タフェース2盤で収容し、中継区間は既存専用線ネットワーク網へ収容

するネットワークで構成されます。

ディジタルアクセス6000サービスは、企業の県内基幹ネットワーク、

長距離系第一事業者、ISP事業者の足回り回線としての利用が見込ま

れ、2001年4月2日よりサービスを開始しています。

(ネットワークサービスシステム研究所)

*1 DSM: Dedicated Service Handling Module*2 OSU: Optical Subscriber Unit*3 ONU: Optical Network Unit

99版MHN-SおよびMHN-S(IC)の開発

STM系ネットワーク構造改革では、PHS、ISDNに加えてアナログ

電話サービスを収容できるノードシステムの99版MHN-S*1および

MHN-S(IC)の開発を進めてきました。

99版MHN-Sは、サービス共用化を可能としています。プロセッサ

やスイッチ、SDHインタフェースなど、サービスに依存しない機能を

サービス間で共用化を図り、サービス個別に必要な機能を追加可能な

構成としています。例えば、アナログ系、ISDN系サービスにおいては、

加入者回路であるラインカードの共用化を図り、遠隔からのアナログ、

ISDNのサービス切り替えやダウンロードによる新たなサービスの機

能追加を実現します。ノード・リンク統合機能には、多様な伝送接続形

態に対応できるように、伝送装置と同一のSDHインタフェースを採用

し、光ファイバ直結に加えて伝送装置を介した接続も可能です。なお、

切り替えについては無瞬断で実現可能としています。また、99版

MHN-Sを構成しているASM*2、SBM*3の両モジュールのスイッチ容

量を拡大しています。ASMについては、さまざまな適用規模に柔軟に

対応できるビルディングブロック構成を採用しています。SBMについ

ては、コスト的に最適な収容設計となるように、スイッチ収容サイズを

2倍に拡大しています。

MHN-S(IC)は、県内中継接続のほかにNTTコミュニケーションズ

やNCC(新規第一種電気通信事業者)との関門交換接続も行う大容量

ノードです。MHN-SのASM部を流用して開発することで既存技術を

最大限に活用し、中継容量の拡大を図るためにスイッチ容量、共通線

リンク数の拡大などの機能拡張を行っています。

(ネットワークサービスシステム研究所)

*1 MHN-S: Multimedia Handling Node-Synchronous Transfer Mode*2 ASM: Architectural STM Module*3 SBM: Subscriber Module

23

通信ネットワーク技術

Service wire center

●ネットワーク構成�

お客さま宅ビル�

収容ビル�

オペレーションセンタービル�

NE-OpS

カプラ�

DSM

ONU

お客さま宅ビル�

ONU

中継�IF�

OSU�IF2

今回の開発�対象物品�

SBM

99版MHN-S

ASM

ラインカード�

回線�収容部�

SDH�インタ�フェース部�

SDH�インタ�フェース部�

SDH�インタ�フェース部�

SDH�インタ�フェース部�

県間�中継など�

共通線�信号�

アナログ用�付加部�

スイッチ部�

スイッチ部�

MHN-S(IC)�

ISDN系、アナログ系サービスについてカード共用化�

光ファイバ直結に加え、伝送装置を介した接続も可能、および無瞬断切り替えの実現�

ビルディングブロック構成とスイッチ収容サイズを拡大�

アナログ系サービスに必要な機能をブロック的に追加�

ラインカード化� SDHインタフェース採用� 容量拡大� サービス特有の機能追加�

スイッチ部�

SDH�インタ�フェース部�

●ネットワーク構成

●99版MHN-SおよびMHN-S(IC)のハード構成

Page 7: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

リアルタイムサービス用ATM無中断技術の研究開発

ATM網において高品質な映像の伝送を行う場合、ATM網そのもの

の伝送品質だけでは要求される品質を満足できない場合があります。

また、放送プログラムの伝送や配信サービスではノンストップであるこ

とが要求され、網故障や収容替えに際しても情報欠損が発生しないこ

とが望まれています。リアルタイム信号のセル損失や符号誤りを補償

する方法としては、一般にリードソロモン符号などを用いたFEC*1法が

用いられています。この方法はランダムに発生するセル損失や符号誤

りに対しては有効でも、網故障などに起因する秒単位の信号断に対し

ては効果がなく、瞬断は避けられません。

このような背景のもと、研究所では、網故障時にも情報欠損が発生

せず、またセル損失や符号誤りなどの品質を改善するATM無中断方式

の検討を進めてきました。この方式は、送信部で異なる経路の2本の

VP*2(またはVC*3)に送信セル流を複製して送出し、受信部では2本

のVP(VC)から受信されるセル流を常時監視して正常な側のセル流を

選択出力するものです。また、受信部で確実に正常な側のセルを選択

するために、同期セルを定義しています。同期セルは、送信部での対象

のVPのセル流に対して一定間隔で挿入され、受信側では同期セルの

情報に基づいてセルフレーム単位で正常な側を判定し、選択出力しま

す。さらに、リアルタイム信号の伝送では遅延変動を許容値以下に抑え

る必要があります。この無中断方式では、両系の同期セルの到着時刻

情報から自動的に両系の遅延差を調整する機能を実装し、これを実現

しています。

研究所では、すでに試作による機能評価を終えており、今後は高品

質映像伝送サービスや高品質STM回線のATM網への巻き取りなどへ

の適用が期待されています。

(ネットワークサービスシステム研究所)

*1 FEC: Forward Error Correction*2 VP: Virtual Path*3 VC: Virtual Channel

スケーラブルスイッチアーキテクチャ(HCS)の研究開発

近年のインターネットの急速な普及を背景として、通信ネットワーク

には音声トラヒックを上回る膨大なデータトラヒックが流入し始めてい

ます。データ、音声トラヒックが混在するマルチメディアトラヒックを

ネットワーク上で効率的に扱うためには、IP/ATM技術を基礎とした

マルチQoS*1保証機能とテラビットクラスのスイッチング容量を備える

パケット統合ノードが必要となってきます。

HCS*2スイッチは、単位スイッチをマルチステージ接続することでス

イッチサイズを拡張でき、IPやATMトラヒックを同一のアーキテクチャ

でQoS保証可能なスイッチアーキテクチャで、以下の特徴を備えてい

ます。

(1)テラビットを超えるスケーラビリティ

タイムスタンプ付与器、ダイナミックセル分配器、階層的セル順序保

証ソータが独立に動作する分散アーキテクチャを採用し、各機能を独

立に増設可能です。そのため、スイッチサイズをテラビット以上まで容

易にスケールできます。また、単位スイッチに配置されたセル順序ソー

タはマルチステージでセル順序保証階層網を構築し、帰納的にセル順

序を100%保証します。

(2)IP/ATMトラヒックに対するマルチQoS保証機能

QoSクラス別のタイムスタンプ制御アルゴリズムにより、クラス別の

スイッチングが実行可能で、高優先クラスのトラヒックに対して低遅

延で遅延分散の小さいスイッチング特性を実現します。

(3)ノンブロック

ダイナミックセル分配器による宛先別のセルバイセルの負荷分散機

能により、ノンブロック特性を実現します。また、バースト揺らぎは各

単位スイッチのセル順序ソータ部のバッファが吸収するため、各セル分

配器が独立に負荷分散できます。

このような特徴を備えるHCSスイッチをコアスイッチに適用するこ

とで、テラビットクラスのマルチQoSのパケット統合ノードが実現でき

ます。

今後は、HCSアーキテクチャのハード実現技術の検討を進め、コア

ノードへの展開を検討していきます。

(ネットワークサービスシステム研究所)

*1 QoS: Quality of Service*2 HCS: Hierarchical Cell Sorting

24

並列伝送部�無中断�送信部�

無中断�受信部�

送信ユーザ�システム�

受信ユーザ�システム�VP#0

VP#1

ATM網�

同期セル�ユーザセル� セルフレーム�

同期セル�誤り検出符号�

ユーザセル�誤り検出符号�

フレーム内�セル数�

同期セル�シーケンス番号�

CD

CD

CD*

タイムスタンプ付与器�⇒ノンブロック、QoS

ダイナミックセル分配器�⇒ノンブロック�

QoSクラス別ソータ機能付バッファ�⇒QoS保証(遅延、損失)�

入力�

出力�

出力�

階層的セル順序保証ソータ�⇒セル順序を100%保証�

タイムスタンプ�入力�

1

2

3

4単位スイッチ�

T4

T1

T2

T4T6

T7T10

T9

T10T7

T8 T5T4 T3 T2

T2

T4

T4 T3 T2

T4

T1

T1

TS-*�CTRL

TS-�CTRL

TS-�CTRL

Stage1 Stage2 Stage3

* TS-CTRL: Time Stamp Controller�* CD: Cell Distributor

●ATM無中断伝送方式の構成●HCSスイッチアーキテクチャ

Page 8: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

ISDN(INSネット64サービス)アクセス回線の長距離化

ルーラルエリア(小規模需要密度エリア)では、DSU*1/OCU*2の伝

送特性に基づく制限からINSネット64サービスの提供ができない加入

者回線が、数は少ないものの散見されます。この制限としては、損失制

限(50dB以下)、抵抗制限(810Ω以下)などがあります。

従来、このサービス未提供の回線を解消するためには、柱上RT*3、

あるいはRSBM*4などによる光ファイバ化で対応していました。ただし、

抵抗制限だけの場合には、2対並列使用(4W)などによる提供方法で

対応していました。

ISDNアクセス回線の長距離化には、2Wメタリック中継装置(ISDN

中継装置)を用いて、抵抗制限だけの場合を除いてこのサービス未提

供の回線に対して適用します。ISDN中継装置は、すでに敷設されてい

る電話用銅線ケーブル(加入者メタリックケーブル)を用いることで、光

ファイバ化の場合と比較して設備投資額を削減しつつ、安価にサービ

スを提供できます。

研究所では、保有するISDN伝送技術を活用し、ISDN中継装置の開

発・仕様化を行いました。当該加入者回線に対してISDN中継装置を設

置すると、ISDNのAMI*5信号を終端・再生してDSU/OCU間の通信

を中継することにより、従来の最大2倍の距離までサービスを提供す

ることができ、加入者に対して既存サービス(INSネット64サービス)

と同等のユーザ・網インタフェースの提供が可能となりました。また、

ISDN中継装置は低消費電力LSIの採用で局給電(OCUからの給電)に

より動作するので給電の心配がありません。

(アクセスサービスシステム研究所)

*1 DSU: Digital Service Unit*2 OCU: Office Channel Unit*3 RT: Remote Terminal*4 RSBM: Remote Subscriber Module*5 AMI: Alternate Mark Inversion

ギガビットイーサネット機能拡張技術(GENIE)

GENIE*1(ジーニ)は、LANで普及しているギガビットイーサネット

光インタフェースに物理層専用の制御通信チャネルを追加して、高信

頼な光ファイバ網オペレーションを実現する技術です。SDH/ATM

インタフェースと同様に、区間ビット誤り率や対局状態をモニターでき

るので、メディアコンバータを用いた光ファイバ網でも、サービス品質

保証、障害発生区間の特定、プロテクション切り替えなどが可能になり

ます。

従来の光ファイバ網は、WAN*2専用のSDHフレーム(図中では電車)

でお客さまのデータを運んでいます。SDHフレームのオーバヘッドバ

イト(電車の車掌に相当)により保守監視情報をやりとりし、高信頼な網

オペレーションを実現しています。このため、LANのイーサネットフ

レーム(図中では乗用車)からWANのSDHフレームに乗せ換える必要

がありました。途中でさらにATMセルが介在する場合もあります。

今回開発したGENIEは、イーサネットフレームでそのままWANに乗

り入れ、フレーム間ギャップを行き交うミニフレーム(図中では専用小

型車)で保守監視情報をやりとりします。ギガビットイーサネットの普及

により経済化の著しいLANの光インタフェースを使って、これまでと同

様に高信頼な光ファイバ網の保守運用管理が可能になります。

GENIE技術は、現在、米国T11委員会の10Gbit/sファイバチャネ

ル規格のLSS*3として標準化を進めています。また、物理層が同じた

め、10Gbit/sイーサネットにも同様の機能拡張が適用できるように

なります。

(未来ねっと研究所)

*1 GENIE: Gigabit Ethernet Network Interface Extension*2 WAN: Wide Area Network*3 LSS: Link Signaling Sublayer

25

通信ネットワーク技術

メタルケーブルではINSネット64�サービスを提供できないエリア� 従来のサービス提供エリア�

加入者メタリックケーブル�

加入者メタリックケーブル�OCU

NTTビル�

交換機�

OCU加入者メタリックケーブル�

DSU

DSU

加入者メタリックケーブル�

ISDN中継装置導入後の提供エリア�

従来の最大2倍の距離まで�サービス提供が可能�

ISDN中継装置�

LAN�イーサネット�

ONU

GENIE

ハイウェイのメンテナンス�

線路 & 貨車のメンテナンス�

SDH/ATM

ONU

●GENIE(ジーニ)技術の光アクセスへの適用イメージ

●ISDN中継装置の構成概要

Page 9: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

意味情報でパケットを配送するネットワーク(SIONet)

2000年3月にGnutella(グヌーテラ)が発表され、これを契機に

P2P*1モデルが世界中で注目されるようになりました。P2Pモデルと

は、これまでのビジネスモデルにおいて一般的に用いられてきたブ

ローカ(集中管理サーバ)を排除し、エンティティ(例えば、エンド端末)

間で互いにふさわしい相手を直接探索・発見することが可能な新たな

ビジネスモデルです。Gnutellaは、このビジネスモデルをP2Pインタ

ラクション方式により実現しました。一方研究所では、1998年からブ

ローカレスモデル(P2Pモデル)を提唱するとともに、その実現技術と

してSIONet*2(意味情報ネットワーク)を提案してきました。そして、

1998年度末にSIONetプロトタイプα版、1999年度末にSIONetプ

ロトタイプβ版、さらに、2000年12月にSIONet 1.0、2000年度末

にSIONet 1.1の開発を完了しました。

SIONetは自律分散協調方式に基づくメタネットワークです。すなわ

ち、従来のネットワークで用いていた宛先アドレスの代わりに、意味情

報に基づいてパケットを配送します。これにより、インターネット上に

超分散する不特定多数のエンティティの中から、特定のエンティティを

探索・発見することが可能になります。また、SIONetではその構成要

素を含めたすべてのエンティティが自律分散協調することで、ネット

ワークを構築します。SIONetの構成要素には、意味情報スイッチ、意

味情報ルータ、意味情報ゲートウェイ、イベントプレース、セッションな

どがあり、これらを必要に応じて組み合わせることにより、スケーラブ

ルでセキュアなネットワークをボトムアップアプローチで構築すること

ができます。

今後は、SIONetのインテリジェンス層に位置付けられるコミュニ

ティネットワークの検討を行っていきます。

(未来ねっと研究所)

*1 P2P: Peer-to-Peer*2 SIONet: Semantic Information-Oriented Network

ITシステムの総合的なコンサルテーションを支援する技術の体系化(ITAP)

ITシステムは、企業活動の基幹業務を担うビジネスツールとして開

発・導入が進められています。しかし、十分な性能設計なしで導入され

たITシステムは、ビジネス上の要求に耐えられないほどの性能低下を

引き起こし、性能改善のためには膨大な時間を要します。ITシステム

の設計段階では、ITシステム上で実施されるビジネスプロセスの要求

条件を明確にした上で、これを満足させるために必要なシステムの構

成要素の性能とこれらを組み合せたエンド・ツー・エンドでのサービス

性能を評価する必要があります。

そこで研究所では、ITシステムに対するコンサルテーションを支援

する技術を体系化した設計・性能評価プラットフォーム(ITAP*1)を提

案し、機能拡充を進めています。ITAPでは、対象とするシステムをビ

ジネスプロセスレベルとハード、ソフト、ネットワークにより構成される

システムレベルの両面から検討し、構成要素とシステムトータルの性能

の関係を分析・評価します。これにより、ITシステムの設計段階で、利

用者のシステム利用形態や業務内容などのビジネスプロセスを考慮

し、業務処理を解析してシステム構成要素間の情報のやりとりを明確

(ATP*2)にします。さらに、ネットワーク構成や機器設定条件を把握し

た上で、プロトコルスタックも意識したネットワークシミュレーションに

よる総合的な分析・評価やビジネスプロセス駆動型のシミュレー

ション(BPDNS*3)が可能となります。ITAPは主にITシステムの基本

設計段階において利用可能です。

今後は、WDM、MPLS*4など下位レイヤの新規プロトコルへの対応、

実測データや解析的手法を考慮したハイブリッド型シミュレーション技

術の高度化などを進め、ITAPを拡充していく予定です。

(サービスインテグレーション基盤研究所)

*1 ITAP: IT system Architecture Planning Platform*2 ATP: Application Traffic Profiling*3 BPDNS: Business Process Driven Network Simulation*4 MPLS: Multi-Protocol Label Switching

26

IP ネットワーク���

意味情報ネットワーク(SIONet)� 意味情報に基づいて、パケットを配送するネットワーク�  配送先を動的に探索、発見、特定�

従来のネットワーク(例:IP ネットワーク)� 宛先アドレスに基づいて、パケットを配送するネットワーク�

SIONet意味情報の例:� ・ 東京在住者� ・ クラシックに興味のある人� ・ 目白通りを通行中の人� ・ “旅行”に関するコンテンツ� ・IPアドレス��

意味情報�

パケット�

パケット受信者�

情報端末�

パケット送信者�

データ部�

宛先アドレス(IP)�

パケット�

パケット受信者�

情報端末�

パケット送信者�

データ部�

ハイブリッド型ネットワークのケース�:意味情報の登録��:パケット送信��

: IPの登録��:パケット送信��

ビジネスプロセス�プロファイリング�

● UML*によるビジネス� フローとITシステムの� 関連付け�

● ビジネスプロセスの� 結果として流れる� トラヒックのモデリング�

● プロトコルレベルまで模擬�● 必要に応じてカスタマイズ、� 機能追加可能�

アプリケーションの�見直し、Webページの�構成、データのまとめ方��業務の見直し� ● ビジネスプロセス�

● アプリケーション�● ネットワーク��

設計・性能評価�

ITAP

ビジネスモデル�

サーバ数、�回線容量、�処理能力、�網構成��

* UML: Unified Modeling Language

アプリケーション�トラヒック�

プロファイリング�

ネットワーク�シミュレーション�

トラヒック�測定・分析�

ネットワークシステムの�構成と�

トラヒックジェネレータ�

ユーザ数�

平均レスポンスタイム [sec]

0012345678

100 200 300 400 500 600 700 800 900

●従来ネットワークとSIONetの比較

●ITシステム構築のための設計性能評価プラットフォーム(ITAP)

Page 10: 通信ネットワーク技術通信ネットワーク技術 帯域保証、高速通信の核となる光、ワイヤレス、衛星などの ネットワーク基盤を実 現する技術

VoIP品質評価技術の開発

VoIP*1は、パケット伝送の優先制御・低遅延処理などの技術の進展

により、既存の固定電話と同等の品質を実現できる可能性も期待され

るようになり、ネットワーク品質および音声品質の測定・分析に基づい

た品質設計・管理法を確立することが求められています。これにこたえ

て研究所では、検討対象とするネットワーク条件の違いなど、個々の要

求条件に対応した検討により、VoIP製品の品質評価手順や、ネット

ワーク性能と音声品質の関係を評価する手順を明確化する技術を開発

しました。

例えば、パケット欠落による音声品質劣化の推定法に関して、受信側

の「パケット到着遅延揺らぎ吸収バッファ」の影響を考慮した方法を提

案しました。図(a)はネットワークでのパケット損失率と音声品質の主

観評価値(MOS*2)の関係をプロットしたものです。縦軸上に注目する

と、パケット損失率は同一の値(0%)であってもMOS値が大きく変動

しています。これは揺らぎ吸収バッファの影響を考慮していないためと

考えられます。図(b)は提案法を用いて揺らぎ吸収バッファでのパケッ

トの欠落の影響を定量化し、これとネットワークでのパケット損とを合

わせたものの割合を「無効パケット率」と定義してMOSとの関係をプ

ロットしたものです。図(a)と比較すると、MOSとの相関が高くなって

おり、この方法による効果が示されています。

これらの技術の開発により、効率的な品質評価が可能となり、各種

VoIP製品の開発・販売についての指針が得られています。また、VoIP

を前提としたネットワークに対する品質設計・管理指針、既存ネット

ワークサービスでのVoIP適用可能領域が明らかになるなど、VoIP

サービスの展開に品質面から貢献しました。

(サービスインテグレーション基盤研究所)

*1 VoIP: Voice over Internet Protocol*2 MOS: Mean Opinion Score

地下管路整備のオールNO-DIG化を実現する次世代エースモールを開発

これまでの地下管路の整備では、その大部分が道路を掘削して管を

埋設する開削工法を採用しているため、騒音・振動や交通渋滞の発生、

重労働や夜間工事による労働条件の悪化、掘削土やコンクリート廃材

の排出や、埋め戻し土の採掘による環境破壊など多くの社会的問題を

引き起こすとともに、設備の高コスト構造からの脱却を図ることが困難

となっていました。

次世代エースモールは、管路工事のオールNO-DIG*(道路を掘らず

に、管路敷設工事を非開削で行う工法)化を実現し、開削工法の抱える

問題を抜本的に解決する技術です。次世代エースモール技術は、従来

の非開削技術を大きくブレークスルーした最先端の技術により、地方都

市での開削工事コスト並みのコストを実現するとともに、工事の高速化、

設備・装置の小型化、制御の自動化、遠隔制御などを実現し、「いつでも」

「どこでも」「だれでも」「美しく」地下管路を整備することができ、設備投

資の削減や環境保全に大きく貢献することができます。次世代エース

モールは、これまで技術的に不可能とされていた硬土質地盤(N値30

程度)での無排土圧入推進を初めて実現し、レキ玉石地盤や岩盤を除く

大半の地盤での圧入推進を可能としました。また、推進管や推進マシン

用動力・制御ケーブルの接続を高速、自動化し、1日当たりの施工長を

従来の2~3倍に高速化しました。都市内においては、オールNO-DIG

化を進める重要な条件の一つに小型化があります。推進用立坑は従来

の半分以下のスペースとし、立坑とマンホールを兼用する方式により工

期も大幅に短縮しています。この立坑兼用マンホールは、当社独自の高

強度レジン材料を構造材料として使用し、推進時の大きな荷重にも耐

えられる性能を実現しています。推進マシンの制御は、知識データベー

スと最適制御理論を用いて、だれでも簡単、的確にマシン制御ができる

オペレーションシステムを推進技術分野では初めて実現し、工事のトラ

ブル防止と技術の普及促進を図ることができます。

今後は、次世代エースモール技術の特長を生かし、下水道管路など

ほかのライフライン整備事業への適用拡大も含め、幅広く技術の展開

を進めていきます。

(アクセスサービスシステム研究所)

* NO-DIG: NO-DIGging Method

27

通信ネットワーク技術

(a)パケット損失率とMOS

(b)無効パケット率とMOS

バラツキが減る�

バラツキが大きい�

パケット損失率 →大�

MOS → 大�

�MOS → 大�

無効パケット率 →大�

サイバーコントロールシステム�

推進システム�

●パケット消失とMOSの関係

●次世代エースモール