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透析室スタッフのモチベーション維持に対する検討
○三宅よしえ(みやけ よしえ),佐藤智士,日野奈美,
西田典数,櫻本耕司,長宅芳男,
<はじめに>
医療従事者のモチベーション低下は、離職率や患者満足度にも影響すると言われている。
また、透析施設の人材不足は各施設で深刻な問題となっている。安全な透析を施行する使命のために、新人のみならず中堅スタッフも、ストレスや疲弊感は増加している。
そこで、透析スタッフの現状を把握するためにモチベーションに関するアンケート調査を行ったので報告する。
<対象・方法>
(医)清陽会2施設の透析室で勤務する看護師(Ns)と臨床工学技士(CE)29名(Ns:16名、CE:13名)を対象に、独自の無記名アンケートを行った。
回収率は93.1%(27名)であった。
アンケート調査で得られた結果をモチベーションと関連すると考えられる「目標設定」の有無等でモチベーション維持群(14例:51.9%)
と低下群(2例:7.4%)に分類し、比較検討した。また職種別でも比較検討した。
年齢 維持群(N=14)
20
代前
半
7%
20
代後
半
7%
30
代前
半
7% 30
代後
半
15%
40
代前
半
50%
40
代後
半
7%
60
代
7% 30
代後
半
50%
40
代前
半
50%
低下群(N=2)
職種
維持群(N=14) 維持群(N=14) 低下群(N=2) 低下群(N=2)
Ns 50%
CE 50%
Ns 100%
透析従事年数
1~
5年
36%
6~
10
年
7%
11
~1
5年
14%
16
~2
0年
29%
21
~2
5年
7%
40
年以
上
7%
16
~2
0年
10…
1
1
0
0
0
1
人の役に立ちたい
何か資格のある仕事を選
択したかった
給料が良い
機械に関する仕事に就き
たかった
憧れていた
その他
10
9
2
3
1
2
人の役に立ちたい
何か資格のある仕事を選
択したかった
給料が良い
機械に関する仕事に就き
たかった
憧れていた
その他
職業選択理由
維持群(N=14) 低下群(N=2)
2
0
0
0
0
0
0
0
就職先が透析室だった
興味があった
自分に向いている
他者からのすすめ
なんとなく
自宅から近い
ワークライフバランス
その他
7
1
1
2
1
0
2
1
就職先が透析室だった
興味があった
自分に向いている
他者からのすすめ
なんとなく
自宅から近い
ワークライフバランス
その他
透析従事のきっかけ
維持群(N=14) 低下群(N=2)
2
0
0
0
0
0
0
1
0
やる気
意志
体力
心のゆとり
努力
時間をつくる
協力者を集める
積極性
博識であること
2
0
5
3
2
1
1
2
3
やる気
意志
体力
心のゆとり
努力
時間をつくる
協力者を集める
積極性
博識であること
目標達成に必要なもの
維持群(N=14) 低下群(N=2)
1
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
苦手意識
コミュニケーション不足
意志の弱さ
時間
熱意
体力
他者の介入
甘え
人
主婦
休みがとりにくい
人間関係のトラブル
目標達成に障害となるもの
維持群(N=14) 低下群(N=2)
0
3
1
2
0
3
1
3
1
0
1
2
苦手意識
コミュニケーション不足
意志の弱さ
時間
熱意
体力
他者の介入
甘え
人
主婦
休みがとりにくい
人間関係のトラブル
現状で障害となるもの
維持群(N=14) 低下群(N=2)
精神的
要因
15%
金銭的
要因
23%
時間的
要因
26%
身体的
要因
15%
家族等
環境的
要因
21%
金銭的
要因
34%
時間的
要因
33%
家族等
環境的
要因
33%
上司の協力有無 維持群(N=14) 低下群(N=2)
はい
72%
いい
え
7%
無回
答
21% はい
50%
無回
答
50%
周囲スタッフからの協力有無 家族協力の有無
は
い
57%
いい
え
22%
どち
らと
もい
えな
い
14%
無
回
答
7% はい
50%
いい
え
50% はい
86%
いい
え
7%
どち
らと
もい
えな
い
7%
いい
え
100%
維持群(N=14) 維持群(N=14) 低下群(N=2) 低下群(N=2)
相談者の有無 維持群(N=14)
低下群(N=2)
は
い
86%
い
い
え
1… はい
50%
いい
え
50% 職場内評価
維持群(N=14)
低下群(N=2)
妥当
36%
まあ
まあ
7%
ふつ
う
29%
やや
不満
14%
不満
7%
わか
らな
い
7%
ふつ
う
50%
わか
らな
い
50%
評価されていると感じる対応
維持群(N=14) 低下群(N=2)
7
7
7
2
1
上司からの「認めら
れた」と感じる声か
け
周囲から「頑張って
るね」と声をかけら
れた時
給与など処遇に反映
される
その他
無回答
0
2
0
0
0
上司からの「認めら
れた」と感じる声か
け
周囲から「頑張って
るね」と声をかけら
れた時
給与など処遇に反映
される
その他
無回答
職種別の結果まとめ
Nsは30代後半から40代前半が75%占めているのに対し、CEは20代前半から30代前半が55%と若いスタッフが多かった。しかし、透析従事年数においてはNs、CE
共に、15年未満が7割程度と差を認めなかった。
学歴では、Nsは専門学校卒が多いのに対し、CEは大学卒が多かった。
職業選択理由では、Ns、CE共に「人の役に立ちたい」や「資格のある仕事に就きたかった」が多くを占めていた。 透析に関わるきっかけも「透析室勤務」が最も多かった。
目標設定では、CEの方が目標設定が明確であり(Ns75%:CE91%) 、自己研鑽に努めている傾向にあった(Ns69%:CE91%) 。
Ns、CE共に「上司、周囲スタッフからの協力」はあると感じており、仕事に対する家族の理解がNsの方
が得られていなかった。仕事の悩みを相談する相手はCEの方が少なかった。
Ns、CE共に評価されていると感じる対応としては、
「上司から認められたと感じる声かけ」や「周囲から頑張っているねと声をかけられた時」が最も多かった。
考察 低下群はわずか2例であったが、卒後16~30年で透析従事年数も16~20年のベテランであった。すでに報告されている調査では、「職場に目標とする上司がいる」場合と「会社に目標とする人はいない」場合で比較すると、男女共に「いる」場合の仕事満足度は70%を超えているのに対し、「いない」場合は40~50%であった。また、「転職・独立思考機会」についても同様に大きな差となっている。
当院においても、低下群は維持群に比し「上司の協力が得られていない」と感じており、仕事満足度や転職・離職リスクが高いことが懸念される。さらに、このようなベテランとされる中年層は、新人教育を担当する立場にあり、 最も身近にいる目標となる先輩でもある。そのため、スタッフのモチベーションに影響を与えるこの年代こそ、組織内のモチベーション維持・向上のためには配慮が必要と考える。
低下群は維持群に比し、家族からの協力がなく、仕事に関する相談者も少ない傾向にあった。また、年代的にも人生の発達課題の転換期(人生や仕事などで立ち止まり、振り返りや将来について悩む時期)でもあり、仕事に対する気持ちや職場内評価に迷いが生じやすい時期である。
職業別検討では、NsよりCEの方が目標設定が明確であり、モチベーションが高かった。これは職業上、Nsは①他職種より患者に接することが多く、生死の現場に臨むなどストレスが生じやすことや、②コミュニケーション構造が複雑であり、モチベーションや処遇満足が低いことに対し、CEは比較的他職種との関わりが少なく同一職種でチーム形成して協働する職種特性があり、他職種より自律性が高いといった特徴が関与しているかもしれない。
Ns、CE共に職業選択理由が「人の役に立ちたい」や「資格のある仕事に就きたかった」が多くを占めており、使命感や自己実現欲求が強い職種であると考えられる。そのため、評価されていると感じる対応も、「上司から認められたと感じる声かけ」や「周囲から頑張っているねと声をかけられた時」が多かったと思われる。
当院スタッフに対して、モチベーション理論の「自尊(承認)欲求」を満たす働きかけをおこない、職場環境を整えることが、モチベーション維持・向上に寄与すると考えられた。
結語
当院では中堅スタッフが多いため、透析室スタッフのモチベーション維持のためには、このような年代のスタッフへの理解と配慮を十分に行うことが必要である。
しかも、職場内のみならず、家庭内や社会的に抱えている問題などにも、全体的に視野を広げて対応する必要がある。
職種間のモチベーションに影響する因子の違いを認識することは、相互理解を深め、チームワークの良い職場環境の実現に寄与すると考えられた。
日本透析医学会
CO I 開示
筆頭発表者名: 三宅 よしえ
演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある
企業などはありません。