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2012年度 卒業研究発表
都市公園における生物多様性に配慮したランドスケープデザイン及び新しい緑地管理メカニズムの提案
―神奈川県横浜市中区山手町税関プール跡地をケーススタディとして―
平成24年度 1月27日
東京都市大学環境情報学部環境情報学科学部4年田中章(ランドスケープエコシステムズ)研究室
志垣琢麻 保田現生
1
・デザインコンセプト・全体平面図・全体断面図・ランドスケープ・生物多様性・アロマスケープ・ビオトープ・パーゴラ・壁面緑化・山手における公園管理の課題・生物多様性に配慮した公園管理・都市型公園バンキングの提案・住民参加による公園管理・山手における都市型公園バンクの提案・結論と考察・引用文献
本日の内容 2
デザイン
3
ランドスケープ 生物多様性 アロマスケープ
この3つのキーワードをコンセプトに設定しデザイン・植栽選定を行った。
デザインコンセプト 4
対象地の周辺にある景観の連続性に配慮し、地域の資源を取り込んだ空間を創造する
在来種に配慮し、また誘致目標種を設定し生態系ネットワークの形成を目指す
強香性の植物を選定し香りによって人々に癒しを与えられるよう配慮する
A A’
全体平面図 5
A A’
全体断面図 6
B
A’A’
B’
A A’
B’B
フランスのランドスケープ
その地域の気候、風土など自然条件や人々の生活などから形成されるもの。
余分な装飾を排してむだのない形態・構造を追求した結果自然にあらわれる美しさのこと。
山手地区に置き換えて考えた場合
地域資源 :連続性のある街並み機能美の観点:周りの公園やその他の施設
との調和がとれるような公園であるべき
地域資源 機能美
対象地と周辺の公園等との連続性を図るためエリスマン邸にもある住民が参加できる花壇を設置する。
ランドスケープ 7
ビオトープ
水辺ができることによって多種多様な生物の利用が期待できる。また、人々がビオトープ内の生物に興味を持ち環境教育の場としても利用できる(田中ら,2010)。
生物多様性 8
エコトーン
陸地と水面の境界、森林と草原の境界のように、どちらとも違った特徴を持った移行帯(環境省,2004)。
在来種
外来種が生物多様性に与える影響は外来種との交雑による在来種の絶滅や、外来植物による土壌生態系の改変とそれによるフィードバック効果、また外来植物と植食者の相互関係が生物の形質進化をもたらす可能性がある(西川・宮下,2012)。
誘致目標種
シジュウカラ(Parus minor)
モズ(Lanius bucephalus)
生物多様性 9
メジロ( Zosterops japonicus )
ハクセキレイ(Motacilla alba lugens)
コゲラ(Dendrocopos kizuki )
ヘイケボタル(Luciola lateralis)
ニホンアカガエル(Rana japonica)
ゲンジボタル(Luciola cruciata)
ニホンアマガエル(Hyla japonica)
アキアカネ(Sympetrum frequens)
シオカラトンボ(Orthetrum albistylum speciosum)
つるバラのパーゴラ
パーゴラと強香性のバラを組み合わせることによって入園した際に人々に癒しを与えることができる
アロマスケープ 10
香りの芝生
耐久性が強くほふく性を持つハーブを利用し造成した芝生。香りによって歩きながら香りを楽しむことができる
ビオトープ 11
ランドスケープ
生物多様性
アロマスケープ
水路を作ることによって対象地全体が大きなビオトープの役割を果たす。
湿地は多様な動植物が利用する場である。また誘致目標種が利用できるような植栽選定や生き物を導入する。Ex:ゲンジボタル→カワニナ→トチカガミ(産卵のため)
キク科の多年草であるフジバカマを植栽。香りは桜餅の葉や杏仁に似たほのかな香りがする。
12ビオトープ
香港湿地公園
香港湿地公園のStream Walkからの眺め
13
和名 学名 特徴 備考
カワニナ Semisulcospira libertina 水生ホタル幼虫の餌
ホタルを誘致
タニシ Viviparidae 巻貝 藻類の駆除
シジミ Cyrenidae 淡水域や汽水域に生息する小型の二枚貝
ミナミヌマエビ Neocaridina denticulata denticulata
一生を淡水域で過ごす陸封型のヌマエビ
メダカ Oryzias latipes 体長4cmほどの
淡水魚
ビオトープ
14
和名 学名 特徴 備考
ハリミズゴケ Sphagnum cuspidatum 湿地や湿原に生息
ハイゴケ Hypnum plumaeforme wils.
這い性湿地や湿原に生息スイレン Nymphaea 水生多年草
ミソハギ Lythrum anceps 紅紫色の小さい花をつける
サンカクイ Schoenoplectus triqueter 湿地性の多年生草本
フジバカマ Eupatorium japonicum 多年生植物 アロマスケープ
ペニーロイヤルミント
Mentha pulegium 耐寒性で這い性 アロマスケープ
フトヒルムシロ Potamogeton fryeri 多年生の水草 トンボを誘致
ツルヨシ Phragmites japonica Steud.
背丈は1.5~2のヨシ属
カエルを誘致
ビオトープ
パーゴラ・壁面緑化 15
ランドスケープ
生物多様性
アロマスケープ
地域資源であるバラを植栽する。
在来種に配慮し植栽選定を行う。
強香性のバラを選定し香りが広がる緑地公園を目指す。
16パーゴラ・壁面緑化
パーゴラ 壁面緑化
17パーゴラ・壁面緑化
新しい緑地管理メカニズムの提案
18
・都市化の影響により緑地及び生物の減少・若年層の住民が緑に対する意識が低い・より美しい緑地を増やし、観光客を増やす
山手における公園管理の課題
課題
課題を解決するために
2つの大きなコンセプト
生物多様性
住民参加型
山手みどりの会の話合い
19
生物多様性に配慮した管理
生物多様性バンキング
生物多様性バンク
バンカー
クライアント
生態系復元、創造の成果をクレジットとして販売 クレジット購入代金
生物多様性バンキングとは、自然生態系の代償義務があるクライアント(開発事業者)が他の場所での自然生態系の復元、創造の成果(クレジット)を生物多様性バンクから購入し、代償義務を果たす仕組みである(田中,2010)。
20
生物多様性に配慮した管理
In-lieu-feeプログラム
クライアント
バンカー
バンクサイト
代金 許可
復元
クライアントである開発事業者が破壊した自然の復元、創造を実施する代わりに、その復元、創造をするために伴う代金をスポンサーに支払うことで代償義務を果たすプログラム(芦,2011)
・金銭で自然生態系の復元、創造の成果を購入
役割
・金銭で土地を確保
・金銭を維持管理に使用
・金銭を運営費に使用
・保全団体がバンカーから受け取る維持管理費で管理
クライアント→開発事業者(企業)
バンカー→自治体、保全団体
維持管理→いくつかの保全団体
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生物多様性に配慮した管理
里山バンキング
生物多様性バンキングの経済的仕組みを日本の里山の保全に応用し、里山が抱えている問題も合理的に解決する経済的仕組みを里山バンキングという(田中,2010)。
里山バンク
バンカー
クライアントクレジット評価者
地方自治体
維持管理者
クレジット評価代金
クレジット購入代金
クレジット
維持管理への参加
維持管理費用と清掃用具の貸し出し
生物多様性貢献によるイメージの向上
クレジット評価
維持管理費用の助成
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都市型公園バンキングの提案
都市型公園バンキングの規模
横浜市内
公園バンクA
公園バンクB
本研究の公園バンク
開発A
開発B本研究での開発
バンカー
維持管理
維持管理
維持管理
本研究ではin-lieu-feeプログラムと里山バンクの概念を利用する。クライアントである開発事業者は横浜市内で開発が行われる際、その代償として横浜市内の公園バンクから自然生態系の復元、創造成果をクレジットとして購入する。
23
バンカー
バンカーはクライアントから受け取る金銭を、土地の購入、緑化計画、工事、維持管理、クレジット評価に使用する。
バンカー緑地を創造する土地がない場合、土地所有者から
緑地を創造するための土地を購入
土地を購入
バンクの維持管理のため保全団体に費用を支払う
維持管理
クレジット評価
緑化計画を立て、緑地を創造
クレジット評価をする第3者機関に対し、クレジット評価を依頼
緑地計画、創造事業
24
バンカーがバンクを持っていない場合
クライアント(開発事業者)
クライアントとは横浜市内で開発を行う開発事業者のことである。クライアントは自然生態系の復元、創造の成果(クレジット)をバンカーから購入する。
クライアント バンカー
金銭
土地
金銭のみ
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クライアントは生物多様性保全に貢献でき、企業イメージの向上に繋がる
バンカーがバンクを持っている場合
地方自治体
地方自治体は、バンクにおいて何らかの問題が発生した場合やバンカーがバンクとする土地を持っていない等のやむを得ない場合に限り、金銭の助成及び土地の提供を行う。
地方自治体
土地
税金 バンカー
何かあった時に備えプールしてあった金銭
バンクにする土地がない
土地を提供
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バンクに問題が発生
・火災によりバンクの一部が燃えてしまった場合
・外来種の侵入により在来種に影響が出た場合
クレジット評価者
自然生態系の復元、創造の成果(クレジット)を評価するため、生態系評価の専門的な知識を有した自治体、NGO、大学、研究機関等を集めた第三者機関を設立する。評価はHEPや簡易HEPを利用しどれぐらいの成果があるかを定量的に評価する。
専門的知識を有した
第三者機関
クレジットを評価する
生態系の概念を選定した評価種(野生生物)のハビタットの適正に置き換え、「質」×「空間」×「時間」の視点で定量的に評価する手続きである(田中 2006)。
HEP
27
自治体 NGO 大学 研究機関
維持管理者
管理は維持管理に関する専門的知識を有した団体が、バンカーから受け取る維持管理費を利用し管理する。また、それだけでなく近隣の学校や住民が参加できるようなイベントも運営していく。
維持管理者
専門的知識を有した
学校 住民基本的な管理
イベント参加 イベント参加
様々な人々が参加
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住民参加による公園管理
山手の住民参加型緑地管理
山手みどりの会では、(株)サカタのタネ様による花壇づくり講座(右図)、横浜バラ会ではバラの管理を住民に指導する(下図)活動が山手で行われている。
図 バラの管理の様子 図 花壇づくり講座の様子
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山手における都市型公園バンクの提案
都市型公園バンク
・東急電鉄・三菱地所 等
都市型公園バンクバンカー:横浜市
クライアント
・神奈川県
地方自治体
・横浜市・緑の協会・東京都市大学 等
クレジット評価者
・緑の協会・みどり会、住民
維持管理者
クレジット購入代金
土地の提供や金銭の助成
クレジット評価 維持管理への参加
クレジット評価代金
クレジット 生物多様性貢献によるイメージの向上
維持管理費用
※維持管理の教育を参加を通じて行っていく。
今後横浜市において開発が予定されている企業
神奈川県が地方自治体として横浜市を援助していく
緑の協会が中心となり管理し、住民参加型の管理イベントを開催
専門的知識を有した団体で第三者機関を設立する
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結論と考察
デザイン
今回デザインをする際に3つのコンセプトを立て緑地の創造と人々の癒し、生態系ネットワークの形成を図った。また、パーゴラのバラやプール跡地にビオトープを作り水辺の創造をすることで対象地の歴史的な背景と文化的な背景を考慮した。
緑地管理
生物多様性保全を考慮し里山バンキングとin-lieu-feeプログラムの概念を応用した都市公園における新しい緑地管理メカニズムを構築した。そして住民や近隣の学校等が管理の技術を学び興味を持てるような仕組みも取り入れた。
考察
この提案により今までになかった生物多様性に配慮し住民による管理の行き届いた新しい都市公園が創造されると期待される。
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引用文献
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