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N.研究プロジェクト成果 /JST大学連携新技術説明会 新規バイオ医薬ピロール・イミダゾール (PI)ポリアミドの創薬開発 福田 日本大学大学院総合科学研究科生命科学 日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科学 教授 平成25611

新規バイオ医薬ピロール・イミダゾール...我々はヒトTGF-β1遺伝子抑制PIポリアミドを開発研究を 行ってきた。現在、前臨床試験としてマーモセットで腎不

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N.研究プロジェクト成果 /JST大学連携新技術説明会

新規バイオ医薬ピロール・イミダゾール(PI)ポリアミドの創薬開発

福田 昇

日本大学大学院総合科学研究科生命科学 日本大学医学部腎臓高血圧内分泌内科学

教授

平成25年6月11日

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PIポリアミドは全く新しい機序による新規遺伝子転写制御薬であり、核酸医薬に比し生体で安定で副作用が少ない。 我々はヒトTGF-β1遺伝子抑制PIポリアミドを開発研究を行ってきた。現在、前臨床試験としてマーモセットで腎不全、皮膚瘢痕、肺線維症、肝硬変、癌転移などTGF-β1依存性疾患に対するバイオ医薬として創薬開発している。

新技術の概要

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バイオ医薬品需要の推移

(10億円)

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PIポリアミドはDNAを認識する抗生物質から発見された

The simplest structure was the crescent-shaped distamycin, comprising three Nmethylpyrrole amino acids (Py) and known to bind in the minor groove of DNA at A,T rich sequences. The field of molecular recognition was sufficiently immature that design of sequence-specific DNA binding molecules for predetermined sequences would be at best an approximate exercise.

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PIポリアミドは、1996年にCALTECのDervanらにより見いだされたDNA配列特異的に結合する分子で

ある。合成されたDNA結合PIポリアミドは、Py/ImペアがCG、Py/PyペアはATまたはTA、Im/Pyペアは

GCを認識し、これにより任意のDNAに塩基特異的に結合し、ターゲット遺伝子プロモーターに結合す

るよう設計すると、転写因子の結合を阻害し遺伝子発現を抑制する。

Transcription start

Transcription is inhibited

Py-Im polyamide

Transcription factors

PIポリアミドによる遺伝子発現抑制の原理

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PIポリアミドの特徴

1. 新規遺伝子制御薬である。

2. 有機化合物であるため核酸医薬と違い核酸分解酵素に分解

されないため、細胞や生体内で安定である。

3. 遺伝子配列特異的にDNAに結合する。

4. ベクターやデリバリー試薬なしに細胞の核に取り込まれる。

5. 様々な遺伝子をターゲットとして自由に分子設計できる。

6. 転写因子を阻害して遺伝子発現を調節する。

7. 経口投与可能な遺伝子治療薬としての可能性を持つ。

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核酸認識化合物とその生物学的応用コンソーシアム Molecular Recognition of Nucleic Acids: Biological Applications

医学部難治疾患治療開発グループ

日本大学

薬学部臨床薬物動態学講座

N.プロジェクト医療班

医学部腎臓高血圧内分泌内科

総合科学研究科生命科学

生物資源科学部応用生物科学科

京都大学

理学部生物化学杉山研 物質細胞統合システム拠点

カルフォルニア工科大学

Peter B. Dervan 医学部細胞再生移植医学

2008年からPIポリアミドの発見者である、カルフォルニア工科大学のP. Dervan、日本大学、京都大学でPIポリアミドの創薬研究をコンソーシアムを形成し、国際共同開発を行っている。さらに製薬会社とのアライアンスを通して、共同創薬開発を開始する。

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特許: TGF-β遺伝子発現抑制剤

出願番号・特許番号:日本出願:2006-531473、米国特許:7888516、EP出願:5768778.2

発明者 : 福田 昇、上野高浩、杉山 弘

出願人:日本大学、ジェンティアバイオシステムズ(株)

TGF-β遺伝子発現抑制剤:TGF-β1抑制薬は未だ臨床に応用されていないが、TGF-β1が関与する疾患としては皮膚瘢痕、角膜炎、血管再狭窄、進行性腎障害等を改善する事が出来た。これまでに無いヒトTGF-β1遺伝子転写制御薬として物質特許。

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従来技術との比較 核酸医薬との相違と優位性 アンチセンスDNA、デコイ、siRNAなどの核酸医薬は核酸分解酵素により分解され易く、DDSが必要であり、費用対効果が悪い。PIポリアミドは核酸分解酵素によって分解されることはなく、生体内で安定で、DDSを全く必要としない。siRNAは遺伝子発現をノックダウンするために副作用が懸念されるが、PIポリアミドは疾病で上昇した遺伝子転写活性のみを抑制する。すなわち、病変のみを抑制するために副作用の観点で有利である。

抗体医薬との相違と優位性 遺伝子転写抑制と言う全く新しいPIポリアミドは、いかなる分子にも設計、合成できその市場性は大きく 、作用機序が抗体医薬と全く異なる。さらに抗体医薬の欠点である高い薬価に対し、PIポリアミドは合成技術を改善する事により、薬価を抑えることが出来

る。

Dervan の特許との競合 PIポリアミドの発明者CALTECのDervanらはPIポリアミドのDNA結合、合成法の基本特許を保持しているが、5年後に特許権が消失する。

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PIポリアミドの薬としての性質の検討

• PIポリアミドは薬としてPy環と共役する位置にカルボニル基

があるため安定化している。

• 体内の酸化酵素には影響を受けない。

• 極めて高い疎水性を持っているので、吸収分布に問題ない。

• TGF-β1のPIポリアミド(MW 1700)の溶解性としては精製水と

0.1%酢酸に溶解可能。

• 0.1%酢酸溶解にて筋肉内、静脈内投与が可能。

• 化学構造から医薬品として極めて有望である。

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PIポリアミドの固相自動合成法開発

我々の研究グループはFmoc法による固相自動合成で、縮合活性化剤としてHCTU を用い、それ

に最も適切な合成条件、合成機のセットアップを行った。また従来最も合成困難であった、イミダゾールピロール配列に対しては、ピロール酸塩化物を用いた手合成法により定量的に合成することに成功した。この方法を基に、日本大学でさらに改良し、現在99%の純度で合成、精製し、1回に100mgの合成が可能となっている。またPIポリアミドの分子設計でのβリンカー挿入構造によりいかなる塩基配列に対しても、対応する分子の設計が可能となった

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Imidazole

Pyrrole

AP-1 binding site on rat TGF-β1 promoter sequence

A c β

β D p β

TGF-β1に対するPIポリアミドの構造(ラット)

AGAATGGGAGAGATGGTTGCACTGGGGAAGAAAGGAAAC

TTGAGTCAGGTGGGCGAGAGCAGAGCAGGTCCATAAGGA

GAGAGGGCAGAAGGGGTCTTAGCTGAGGTCCTGACCTGG

-2303 -2297

PI polyamide

A A C T T G A G T C A G G T G 5’- -3’

T T G A A C T C A G T C C A C 3’- -5’ β

β

A c

D p β

Mismacth

Consensus AP-1 sequence

Matsuda H, Fukuda N, et al. JASN 2006

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PIポリアミドのラットiv後の血清中での薬物動態

Polyamide A

Polyamide A

Polyamide B MW 1000

MW 1700

J Chromatography 859: 272–275, 2007

Polyamide B

。PIポリアミドのUV-HPLCでの定量系を確立し、薬物動態を検討し、MW1000とMW1670のPIポリアミドをラットに静注し、殆どが尿排泄で、一部胆汁排泄であり、分子量が大きくなると血清での減衰は緩やかであり、臓器に長期結合している事が明らかとなった。

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1 day 7 day 14 day

Nuclei

FITC

FITCラベルPIポリアミドの腎臓への取り込み

Matsuda H, Fukuda N, et al. Kidney Int. 2011

ラットでPIポリアミドを静脈より投与し7日後まで腎臓では尿細管、糸球体の核に取り込みが見られる。大動脈では内皮や平滑筋層に取り込みが観察され、PIポリアミドは強力かつ長期の核への結合が認められた。肝臓、肺にも取り込みが見られたが、心臓、脳には取り込みが認めらなかった。

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マウス投与実験(1 週間馴化) 溶媒は精製水

分類 体重 (g) 濃度 (mg/mL) 投与量 (mg/kg) 生死

高用量 32.15 14.26 79.84 死亡

高用量 30.88 14.26 92.36 死亡

低用量

32.92 7.13 43.32 死亡

低用量 32.21 7.13 22.14 生存

体重(g)の変化 投与日 2日目 3日目 4日目 5日目

32.2 31.7 31.5 32.3 32.5

5 日後血 清デ ータ

総蛋白、A/G 比、総コレステロール、尿素窒素は全て正常

AST:コントロールより少し高い、ALT:正常、ALP: コントロールと同じ

PIポリアミドの致死量と副作用

PIポリアミドをマウスに急速静脈内投与すると40 mg/kg以上では、PIポリアミドの粘性の為死亡、20 mg/kg以下では全く健康で、臓器障害もなかった。

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TGF-β1に対するPIポリアミドの長期投与作用

Matsuda H, Fukuda N, et al. Kidney Int. 2011

TGF-β1に対するPIポリアミドを1 mg/kg/dayで高血圧ラットに1ヶ月投与した。 体重も摂餌量も変化なく、長期投与による副作用を認めなかった。

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µg/day

* P<0.05 VS Low salt # P<0.05 VS High salt

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0day 9day 18day 27day

Low salt High salt Mismatch GB1203 1mg/ 3days GB1203 1mg/ 2days

* *

* *

* #

* #

* # * #

Dhal-SラットでのTGF-β1に対するPIポリアミドの 尿中TGF-β1蛋白発現に対する作用

Matsuda H, Fukuda N, et al. Kidney Int. 2011

PIポリアミドは食塩負荷にて増加したTGF-β1を強力に投与量依存性に抑制した。

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Dhal-Sラットの糸球体硬化に対するTGF-β1 PIポリアミドの作用

Matsuda H, Fukuda N, et al. Kidney Int. 2011

TGF-β1のPIポリアミドはDhal-Sラットの糸球体硬化を著明に改善し、腎機能障害 を投与量依存性に改善した。

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TGF-β1のPIポリアミドの特異性の検証

Dhal-Sラットに腎皮質のDNAアレイを行った。TGF-β1のPIポリアミドを投与するとTGF-β1は54%抑制されそれ以上に抑制された増殖因子は160分子の内12であり、内訳はアクチビン、フォリスタチンなどのTGF-β1関連であり、PIポリアミドのターゲット分子への特異性が検証された。

Matsuda H, Fukuda N, et al. Kidney Int. 2011

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ヒトTGF-β1遺伝子プロモター配列と7つのPIポリアミド結合部位

(+840-Met)

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0.8

1

1.2

1.4

1.6

1.8

2

2.2

0.5

0.7

0.9

1.1

1.3

1.5

1.7

1.9

2.1

0.5

0.7

0.9

1.1

1.3

1.5

1.7

1.9

2.1

PIP 0 0 -8 -7 -6 -5 (M) Ang II -7 M

PIP 0 0 -8 -7 -6 -5 (M) Ang II -7 M

PIP 0 0 -8 -7 -6 -5 (M) Ang II -7 M

GB1101 GB1105 GB1106

TGF-β1

/18S

mR

NA

ヒトTGF-β1に対する3種PIポリアミドのヒト血管平滑筋 細胞のTGF-β1 mRNA発現への作用

GB1101

ヒトTGF-β1に対するPIポリアミドのリード化合物をGB1101に決定した

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ヒトTGF-β1 PIポリアミドの対象疾患と市場

主な対象疾患 年売(億円) 前提条件 年間患者数

TGF-β1

腹膜硬化症 29~130* 12万円/回×12回×(2,000~9,000人)

顕在患者200名/対象2,000名 *) CAPD患者数(予防的投与)

腎不全 74~350* 2,000円/日×365日×10,000人

新規透析導入患者数10,000人 透析患者数 230,000人 *)予防投与により5年間の遅延 効果と仮定

肺線維症 53~86 12万円/回×12回×( 3600~6000人) 患者数3,600~6,000人程度

強皮症 86 12万円/回×12回×6000人 患者数6,000人程度

肝線維症 720 12万円/回×12回×50,000人

アルコール性肝線維症等 肝硬変患者数20万人

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マーモセットでのヒト疾患モデルでのヒトTGF-β1に対するPIポリアミドの効果

• 皮膚肥厚性瘢痕に対する前臨床試験(平成24年度) TGF-β1に対するPIポリアミドを軟膏化する。マーモセットの

皮膚に切創42日後の肥厚性瘢痕を作成。FITCラベルTGF-β1PIポリ

アミド軟膏の薬物動態を確認。実験動物中央研究所にて皮膚肥厚性瘢痕に対しTGF-β1PIポリアミド軟膏の抑制効果を確認した。

• 腎疾患モデルに対する前臨床試験(平成25年度) マーモセットにシクロスポリンAによる腎症を発症させ、ヒトT

GF-β1に対するPIポリアミドを3 mg/kgで週一回静脈投与し、腎症の改善をGLPに則したデータを獲得する。

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ラット皮膚肥厚性瘢痕モデル

Mamta Shah,David M.Foreman,etal:Neutralisingantibody toTGFb1,2 reduces cutaneous scarring in adult rodents. J of Cell Science 107:1137-1157,1994

M.Shahらの報告(J.Cell Science, 107,1994)を参考に、ラット背部皮膚をメス切開(1cmの皮筋まで切開創)後に形成される瘢痕を実験モデルとした。

動物:SDラット ♂7週齢

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コントロール

PIポリアミド

皮膚所見 組織所見 TGF-β1

TGF-β1に対するPIポリアミド局注による 皮膚および組織所見とTGF-β、ビメンチン染色

切創作成し、PIポリアミド局注42日後、PIポリアミド前投与では肥厚性瘢痕は全く出来ない。

ビメンチン

Washio, Fukuda, et al. JDI 2011

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マーモセットを用いたPIポリアミドの前臨床試験

実験動物中央研究所と日本大学との共同研究としてコモンマーモセットを用いて、ヒトTGF-β1に対するPIポリアミドの前臨床試験をN.研究プロジェクトとして行っている。マーモセットは、繁殖力が高く、小型で取扱いが容易である。2010年9月に

マーモセットのゲノム解析が完了しており、ラットやマウスより圧倒的にヒトゲノムに近いため、ヒト遺伝子に設計したPIポリアミドの効果を観ることが出来る。

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GB1101

GB1105 GB1106

Callithrix Human

ヒトとマーモセットTGF-β1プロモーター 結合部位の相同性

ヒトとマーモセットのTGF-b1プロモーター構造の相同性は非常に高い、GB1101, GB1106の結合部位はパーフェクトマッチ、GB1105結合部位は1塩基マッチしていない。

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マーモセット皮膚肥厚性瘢痕に対する ヒトTGF-β1 PIポリアミドの効果(1)

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新規切創作製36日目の肥厚性瘢痕。H2O溶解液での皮膚肥厚に比し、 GB1101 1mgを事前に皮下投与すると著明に瘢痕が抑制された。

マーモセット皮膚肥厚性瘢痕に対する ヒトTGF-β1 PIポリアミドの効果(2)

H2O

GB1101

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ヒトTGF-β1に対するPIポリアミドの軟膏化

PIポリアミドの安全な創薬開発として局所投与が出来る皮膚肥厚性瘢痕へTGF-β1に対するPIポリアミドを軟膏化する準備 有効成分であるPIポリアミドを水性基剤と水溶性基剤と組み合わせ医学部附属板橋病院薬剤部製剤室で行い、調合しサンプルを作製を開始した。

① ② ⑤

③ ④

n=2 (biopsy site, n=5) FITC-GB1105軟膏(5種): ① ワセリン ② プラスチベース ③ 親水軟膏 ④ ソルベース ⑤ サンジェロース

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24hs

①ワセリン ②プラスチベース ③親水軟膏 ④ソルベース ⑤サンジェロース

48hs

ラット皮膚切創に対するヒトTGF-β1 PIポリアミド軟膏の皮膚組織内局在評価

ソルベースがヒトTGF-β1 PIポリアミドの軟膏基材として最も効率良く皮下組織の核にデリバリーさせた。

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従来技術・競合技術との違い 皮膚肥厚性瘢痕・ケロイドの治療は現在トラニラストの内服、副腎皮質ステロイド軟膏の塗布、シリコンゲルシートの患部への貼付が行われているが非特異的療法で、完治しない。TGF-β1 PIポリアミドは患部の核に確実に入り込みほぼ完全に肥厚性瘢痕を抑制する事が、ラット、マーモセットで確認されている。また疾病に伴い上昇したTGF-β1発現を正常化するため、副作用が無く、低容量で効果があるため、薬としての費用対効果も高い。

想定される応用分野 TGF-β1 PIポリアミドは軟膏または塗布パッチにより医療現場では女性の甲状腺摘出術創、帝王切開部、開胸術部に塗布し瘢痕を防ぐ。またTGF-β1 PIポリアミド軟膏は熱傷の皮膚瘢痕形成に臨床応用される。またTGF-β1が関与する皮膚疾患として皮膚筋炎、強皮症の進展を抑制出来る。さらに悪性黒色表皮腫の転移を抑制出来る。

皮膚領域でのTGF-β1 PIポリアミドの臨床応用

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環状PIポリアミドの開発 (京大との共同)

これまでのPIポリアミドはヘアピン型であったが、京大との共同研究で、硫黄(S)で環状型にしたPIポリアミドはコンフォメーションが安定しているため、ヘアピン型より1/10-1/100の量で遺伝子発現を抑制出来ると考えられ、平成25年度は生物学的効果を検証する。

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日本大学方式による新規iPS細胞誘導法開発

iPS細胞はウイルス、プラスミドから誘導されるため、実用化に向け安全性の問題がある。 iPS細胞の誘導にはTGF-β1の抑制が重要であることが判明した。 そこでTGF-β1のPIポリアミドと生物資源科学部舛廣研

の技術としてスタビロンで山中4因子蛋白を導入し日本大学方式による安全な新規iPS細胞誘導法を開発している。

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ヒトTGF-β1に対するPIポリアミドの 実用化に向けた課題

• 高効率および安価な大量合成技術

Fmoc材料の安価な入手、高効率合成

• 98%純度の精製技術

大口径HPLCの使用

• 粘性の克服

投与濃度、超音波

• 物性規格試験

• オフターゲティング効果の確認

• GLPに則した安全性試験、発癌試験

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製薬会社との共同研究内容

• マーモセットでの前臨床試験が終了後、GB1101について共同開発を、物性規格、毒性試験、発癌試験をGLPにて行い、PMDAに申請する。

• 製薬会社との共同でヒトTGF-β1のPIポリアミド(GB1101)の第1相臨床試験を目指す。第Ⅰ相試験では最大耐用量および推奨用量を決定する。

• PIポリアミドの大量合成プラントにより、より安価なPIポリアミドをGMPグレードで合成し、PIポリアミドを次世代のバイオ医薬としてスタンダード化する。

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PIポリアミド創薬開発における産学連携経歴

• 2001年 京都大学とPIポリアミドの共同開発開始

• 2003年 文部省産官学連携イノベーション創出補助金を受け日本大学発

バイオベンチャー:ジェンティア・バイオシステムズ(株)創業

• 2005年-2009年 ジェンティアバイオシステムズ(株)は京都御車にて

PIポリアミドのFmoc固相自働合成法を開発

• 2006年-2007年 (株)クレハ化学と共同研究実施

• 2008年-2009年 協和発酵キリン(株)と共同研究実施

• 2009年 日大、京大、CALTEC、ハイペップ研究所とのコンソーシアム開始

• 2010年-2012年 (株)ハイペップ研究所とPIポリアミド大量合成法の開発

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TGF-1に対するPIポリアミド創薬開発計画

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014

安定的合成手法の確立

サンプル合成

Py-Im

基礎設計

基礎薬効確認

(In Vitro / In Vivo)

前臨床

臨床第1相

臨床第2相

リード化合物の決定

製薬企業への導出も CROに委

託予定

追加薬効・毒性試験・

AD

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薬学部と協同

ハイペップと共同

Page 39: 新規バイオ医薬ピロール・イミダゾール...我々はヒトTGF-β1遺伝子抑制PIポリアミドを開発研究を 行ってきた。現在、前臨床試験としてマーモセットで腎不

問い合わせ先

日本大学産官学連携知財センター (NUBIC)

松岡義人コーディネーター

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日本大学医学部リサーチセンター

福田 昇 教授

TEL 03-3972-8111 内線2711

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