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Copyright © 2008 Osaka University 柿元 * , 門田 暁人 ** ,角田 雅照 ** , 松本健一 ** , 菊地 奈穂美 *** * 大阪大学 ** 奈良先端科学技術大学院大学 *** IPA/SEC・沖電気工業株式会社 規模・工期・要員数・工数の関係の 定量的導出 IPAフォーラム2008 SECコンファレンス @ 明治記念館 2008年10月28日

規模・工期・要員数・工数の関係の 定量的導出y 決定係数が最も高い,規模を目的変数とした対数重回帰 分析モデルを関係式として採用する

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Page 1: 規模・工期・要員数・工数の関係の 定量的導出y 決定係数が最も高い,規模を目的変数とした対数重回帰 分析モデルを関係式として採用する

Copyright © 2008 Osaka University

柿元

健*, 門田

暁人**,角田 雅照**, 松本健一**, 菊地

奈穂美***

*

大阪大学

**

奈良先端科学技術大学院大学

***

IPA/SEC・沖電気工業株式会社

規模・工期・要員数・工数の関係の 定量的導出

IPAフォーラム2008

SECコンファレンス

@ 明治記念館

2008年10月28日

Page 2: 規模・工期・要員数・工数の関係の 定量的導出y 決定係数が最も高い,規模を目的変数とした対数重回帰 分析モデルを関係式として採用する

工数見積りのPDCAサイクル

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Plan:工数見積りを行いプロジェクトの計画を立案する

Do:立案された計画に基づいてプロジェクトを実施する

Check:実施したプロジェクトを評価する

Act:評価をフィードバックし,以降の見積りに反映する

実施

作業計画リソース計画

Do

プロジェクトの評価(見積りの評価)

Check 計測収集

収集データ

Act

過去プロジェクトのデータに基づいた見積り手法の例

計画管理

DB 見積り結果

Plan

見積

計画の成否が

プロジェクトの成否に

大きく影響する

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取り組む課題

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工数 要員数

工期規模

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明らかにしたいことの例

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ケース1:開発規模は維持しなければならない場合解決策:要員数を増やす

要員を何人増やす必要があるのか

工数(コスト)はどれぐらい増加するのか

生産性はどう変化するのか

ケース2:コストの増加は認められない場合解決策:開発規模を縮小する

開発規模はどれぐらい縮小する必要があるのか

工期短縮による工数(コスト)減少だけで規模縮小に伴う予算削減を補えるのか

生産性はどう変化するのか

プロジェクトで工期を2か月短縮することになり再計画を行う

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規模,工期,要員数,工数の関係は複雑

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工期と要員数は可換ではない

工期を短縮し,その分だけ要員数を増加させても,生産性が低下するため工数を増やさないと同規模の開発は行えない

プロジェクトにはビジネス上の制約が存在するEx.

システム稼動日が決まっている

工期の最大値が決まっている

規模,工期,要員数,工数の容易な決定は プロジェクトの計画において有用である

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目的とアプローチ

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目的

規模,工期,要員数,工数を容易に決定可能とする

アプローチ

ソフトウェア開発データから規模,工期,要員数,工数の定量的な関係を導出する

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関係式の導出方法

–手順1-

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1.

規模,工期,要員数から6種類の多変量解析モデルを 構築する

重回帰分析

規模 = a×工期 + b×要員数 + c

工期 = a×規模 + b×要員数 + c

要員数 = a×規模 + b×工期 + c

対数重回帰分析

対数回帰モデルを用いるのではなく,対数をとった数値から

線形回帰モデルを作成した

log(規模) = a×log(工期) + b×log(要員数) + c

log(工期) = a×log(規模) + b×log(要員数) + c

log(要員数) = a×log(規模) + b×log(工期) + c

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関係式の導出方法

–手順1-

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1.

規模,工期,要員数から6種類の多変量解析モデルを 構築する

ソフトウェア開発データでは対数変換した方が当てはまりが良くなる場合が多いため対数重回帰分析も実施した

1

10

100

1,000

1 10

工数

工期

0

200

400

600

800

1,000

1,200

0 10 20 30 40 50 60

工数

工期

工数

= 19.5×工期

+ 180

工数

= 工期

0.6×100

(log (工数) = 0.6×log (工期)

+ 2.0)

対数重回帰分析重回帰分析

※実際には3種類のメトリクスから関係式を導出

工期 工期

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関係式の導出方法

–手順2-

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2.

最も当てはまりの良いモデルを関係式として採用する当てはまりの良さの指標には決定係数(R2)を用いる

最小二乗距離に基づいて算出

      −=12R (yi -

m)2

(yi -

y'i

)2∑=1i

∑=1i

m

yi

y′i

平均値

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関係式導出に使用したデータ

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SEC収集の企業横断的データ(2006年度版:1419件)から抽出した171件のプロジェクト

基本工程がすべて実施され,その工数が揃っている

規模,工期の値が記録されている

新規開発プロジェクトである

FP計測手法がIFPUG, SPR, NESMAである

採用したメトリクス

規模 :未調整FP

工期 :プロジェクト全体の工期

工数 :基本設計,詳細設計,製造,結合テスト,総合テストの各工程における工数の総計

要員数 :工数÷工期 SEC収集データの平均要員数

はデータ欠損が非常に多いため

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導出された関係式

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決定係数が最も高い,規模を目的変数とした対数重回帰分析モデルを関係式として採用する

式変換により以下の式が得られる

要員数を求める式M = 0.002×F 1.692 × D -1.440

工数を求める式E = 0.002×F 1.692 × D -0.440

手法 目的変数 決定係数(R2) 回帰式(F :規模(FP)

D :工期(月)

M :要員数(人))

重回帰分析規模:F

0.566 F =

133D + 71M ― 740対数重回帰分析 0.798 log(F ) = 0.851log(D ) + 0.591log(M ) + 1.61重回帰分析

工期:D0.308 D = 0.02F ― 0.55M + 7.97

対数重回帰分析 0.573 log(D ) = 0.577 log(F ) ― 0.224log(M ) ― 0.558

重回帰分析要員数:M

0.429 M = 0.005F ― 0.294D + 7.312対数重回帰分析 0.652 log(M ) = 0.990log(F ) ― 0.664log(D ) ― 1.529

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0

40

80

120

160

5 10 15 20

要員数(人)

工期(月)

500 1000 2000 3000開発規模(FP)

規模,工期,要員数の関係

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規模を一定とした場合,工期と要員数はトレードオフの関係にある

規模と工期を与えた時の要員数

工期(月数)5 10 15 20 25

規 模

(FP)

500 7.26 2.68 1.49 0.99 0.711000 23.47 8.65 4.82 3.19 2.311500 46.61 17.18 9.58 6.33 4.592000 75.83 27.95 15.59 10.30 7.472500 110.62 40.77 22.74 15.03 10.903000 150.59 55.50 30.96 20.46 14.83

工期を半分の,

5ヶ月にすると23.47人必要

規模1000FPの場合,

工期10ヶ月なら8.65人必

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モデルの当てはまり度合い(要員数)

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モデルと実測値(規模の±20%)の比較

0

40

80

120

160

0 10 20 30 40 50

要員数(

人)

工期(月)

500 1000 2000 3000開発規模(FP)開発規模(FP)

規模絶対誤差

平均値

標準

偏差

変動

係数

最小値 最大値

500 4.17 4.74 1.14 0.085 19.8591000 4.55 5.80 1.27 0.004 24.8672000 10.99 13.40 1.22 0.277 39.0523000 16.50 23.05 1.40 0.461 54.867

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規模を一定とした場合,工期と工数はトレードオフの関係にある

200 

400 

600 

800 

5 10 15 20

工数(人時)

工期(月)

500 1000 2000 3000開発規模(FP)

規模,工期,工数の関係

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規模と工期を与えた時の工数(人月)

工期(月数)5 10 15 20 25

規 模

(FP)

500 36.3 26.8 22.4 19.7 17.91000 117.4 86.5 72.4 63.8 57.81500 233.0 171.8 143.7 126.6 114.82000 379.2 279.5 233.8 206.0 186.82500 553.1 407.7 341.1 300.5 272.43000 753.0 555.0 464.3 409.1 370.9

規模1000FPの場合,

工期10ヶ月なら86.5人月必

工期を半分の,

5ヶ月にすると117.4人月必

人月

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モデルの当てはまり度合い(工数)

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モデルと実測値(規模の±20%)の比較

0

200

400

600

800

1000

0 10 20 30 40 50

工数(

人時)

工期(月)

500 1000 2000 3000開発規模(FP)開発規模(FP)

規模絶対誤差

平均値

標準

偏差

変動

係数

最小値 最大値

500 31.00 33.13 1.07 0.940 174.8241000 39.53 38.46 0.97 0.052 126.8222000 119.82 102.53 0.86 3.346 350.1653000 198.00 193.72 0.97 11.770 394.146

人月

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生産性と工期と要員数の関係

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生産性を求める式に変換した関係式P = 40.738×D -0.149×M -0.409

工期よりも要員数が生産性に大きく影響する

-10

10

30

50

70

90

110

130

-2 8 18 28 38

要員数

工期

0

50

FP/人月

3 FP/人月

平均値 19.1中央値 13.2

標準偏差 16.5最小値 2.5最大値 83.3

生産性の分布

(FP/人月)

(P:生産性,D:工期,M:要員数)

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モデルが表現していること

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規模を維持しつつ短納期を目指すには

要員数を増加させれば良い

生産性が低下し,コストの増加を伴う

規模を維持しつつ低コストを目指すには

要員数を減らせば生産性も向上する

工期は長くなる

非現実的な内容ではなく現実的なモデルといえる

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モデルの利用例

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決定済みの値を入力し,出力から見積値を算出する

2600FP, 9ヶ月のプロジェクトでどれぐらい要員数が必要か

0.002×26001.692×9-1.440= 51人

あるメトリクスを変更した場合,他のメトリクスがどれだけ必要になるか算出する

上記プロジェクトの工期を8ヶ月とすると要員は何人増やす必要があるのか

0.002×26001.692×8-1.440= 60 – 51 = 9人

現実にはビジネス上の制約などに沿い 許容範囲内で決定することになる

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本研究の改善点

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少ないメトリクス(規模,工期,要員数)だけを用いて関係式を構築している

他の様々な要因も影響しているため調査が必要である見積実施時に多くの要因は判明していない場合が多い

要員数が算出値である

正確なモデルを構築するためにも実測値を使うことが望ましい分析に利用できるほど計測項目が揃っているデータ件数は少ない

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まとめ

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規模,工期,要員数,工数の関係を定量的に示す関係式の構築方法を提案した

関係式構築に利用できる定量的データを計測,収集している組織では,提案方法により組織独自のモデルの構築も可能

SEC収集データからモデルを構築し,SEC収集データにおける規模,工期,要員数,工数,生産性の関係を示した