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- 309 - 殺陣(たて)~チャンバラと護身術~ アクション・シーンの創作

殺陣(たて)~チャンバラと護身術~ アクション・シーンの …- 312 - 伝統的な殺陣の技から生まれた、現代社会に生かせる護身術を学び、「もしも」の時に備

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    殺殺殺殺陣陣陣陣((((たたたたてててて))))~~~~チチチチャャャャンンンンババババララララとととと護護護護身身身身術術術術~~~~

    アアアアククククシシシショョョョンンンン・・・・シシシシーーーーンンンンのののの創創創創作作作作

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    殺陣は舞台、映画、TV 等で演じられる「闘いの場面」の呼び名であり、大切に守り伝え

    られなければいけない日本文化の一つです。武道の基本動作を身につける。そして他の生

    徒たちと気持ちを一つにして「闘いの空間」を自分達で創造する…。日本の伝統文化に触

    れ、その中で、人と呼吸を合わせること、気持ちを一つにすることの大切さを学ぶととも

    に、基本の動きを応用し、自分達でアクション・シーンをクリエイトしていくのがこのワ

    ークショップの目的です。殺陣はオランダ、フランス、アメリカなど世界各国でその動き

    の素晴らしさと創造性を高く評価されています。こどもたちは、殺陣の動きという日本独

    自の伝統芸能を学習するだけではなく、それを応用し自らの創造につなげていくという事

    を体験します。

    1111....概概概概要要要要

    目  的 / 伝統芸能である殺陣の基本動作を学習してから、自分達でアクション

           シーンを 創作する。

    対象年齢 / 小学 3年生~中学 3年生、創造編では中学 1年生以上。

    募集人数 / 15~40名程度

    参加人数 / 32人決定/当日 11日 3人欠席、12日 4人欠席

           内訳 11日 男子児童 14人 / 女子児童 15人

              12日 男子児童 13人 / 女子児童 15人

    講  師 / 殺陣動作指導/林 邦史朗氏

        若駒アクションクラブ会長

        殺陣道場総本部武劇館館長

        全日本刀道連名最高師範

    国際護身術振興会理事長・最高師範

           アクションシーン創作指導/大山浩氏

            劇団ひまわり俳優養成所 所長

    ファシリテーター / 山野亜紀氏、他 1名

    開催場所 / 劇団ひまわり(恵比寿)スタジオ

           〒150-0021 東京都渋谷区恵比寿西 2丁目 12-12

    募集期間 / 7月 15日(火)から 7月27日(日)まで

    募集方法 / 劇団ひまわり内の掲示板に掲示。生徒にちらし配布。(2000部)

       *ちらしの見本はちらしファイルを参照。

    開催日時 / 8月11日(月) 10:00~12:00

           8月12日(火) 10:00~12:00

                    13:00~14:00

    参加費  / 無料

    内容概要 /

    (1)スポーツ・チャンバラ体験

    面と手袋の防具をつけて、ウレタン製のこん棒で安全にチャンバラを体験。基本ルールと

    型を学んだ上で、楽しく遊びながら、武道のもつ精神集中や身体鍛錬の大切さなども学ぶ。

    (2)護身術

  • - 312 -

    伝統的な殺陣の技から生まれた、現代社会に生かせる護身術を学び、「もしも」の時に備

    えられる様な意識を芽生えさせる。合わせて、小宇宙とも言われ、365 の関節をもつ人間

    の身体を知り、自分の身体の大切さを知る。実際に身を守り、相手をかわす動きを習うこ

    とで、有事の際に慌てない強い精神を培う。

    (3)アクション・シーンの創作

    スポ-ツ・チャンバラと護身術で学習した動きをもとにして、新しいアクション・シーン

    (悪者をやっつける)を考え、実際に演じてみる。皆の動きをビデオで撮影し、実際の見

    え方も観察する。

    必要な道具 / ウレタンこん棒(若駒アクションクラブよりレンタル)

            面、手袋等の防具(若駒アクションクラブよりレンタル)

            包丁の模型(紙製/若駒アクションクラブよりレンタル)

            体操マット、体操服着用、デジタル・ビデオ 1台、

            デジタル・カメラ 1台、ホワイトボード

            新聞紙で作った棒。筆記用具、消しゴム、プリント紙。

    2222....開開開開催催催催ににににああああたたたたっっっっててててのののの準準準準備備備備

    スタッフ・ミーティング 6回 (5月から 7月にかけて)

    講師とのミーティング 2回  (5月から 8月にかけて)

    (内容)

    殺陣の動きは大変難しいものなので、いかにして、これまで習ったことのない子どもたち

    に基本の動きを習得してもらい、それをアクション・シーンの創造へとつなげて行くかと

    いうことが中心議題であった。殺陣の講師、林氏は子どもの指導よりも大人の方が多い方

    で、子どもでも覚えやすいような基本型をじっくり教えていただく様にとお願いした。叉、

    ウレタンこん棒や防具のレンタル可能数が限られているため、新聞紙を利用して変わりの

    ものを作るということになった。

    アクション・シーンの創造は小学生には難しいのではないか、ということと、事故などの

    可能性も考慮して、中学生以上の参加とすることと決定した。出来るだけ多くの子どもに

    CANVAS の活動を知ってもらい、殺陣の面白さを味わってもらうために、基本形習得の時

    間はそのまま小学生にも参加してもらう事にした。

    ちらしは上記募集期間(7 月 15 日(火)から 7 月27日(日)まで)の間、会場内の掲示

    板にはり、生徒の応募を募るとともに、劇団の授業に参加している生徒全員に配布。東京

    と大宮の 2 カ所で、参加募集をした。結果、期間内にかなりの希望者が集まったため、追

    加募集等はせずに、参加決定の知らせを各自に伝えた。連絡網など、システムがきっちり

    しているので、募集から参加者決定、連絡まで、とてもスムースに進んだ。

    ワークショップ・スケジュール・プラン

      企画段階で決定したスケジュールは以下の通りである。

    8月11日(月)

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    9:00  スタッフイン

    9:30  講師等イン

    10:00  講師紹介・主旨説明

    10:10  ストレッチ運動、準備体操

    10:30  ワークショップ・スタート

    護身術/スポ-ツ・チャンバラ体操等

    11:50  まとめ、挨拶、片づけ

    12:00  アンケート記入後解散

    8月12日(火)

    9:00  スタッフイン

    9:30  講師等イン

    10:00  講師紹介・主旨説明

    10:10  ストレッチ運動、準備体操

    10:30  ワークショップ・スタート

    護身術/スポ-ツ・チャンバラ体操等

    11:50  まとめ、挨拶、片づけ

    12:00  解散(午後の部に参加しない人のみアンケート記入)

    13:00 再集合・アクションシ-ン創作についての説明

    13:10 グループ分け。創作開始

    13:40 発表スタート

    14:00 終了、アンケート記入後解散

    3333....ワワワワ----ククククシシシショョョョッッッッププププ実実実実際際際際のののの流流流流れれれれ

    8月11日 (月)

    9:30  こども到着、会場に入り始める。チャンバラに使う新聞紙をまるめてガムテ  

          ープでとめたものを来た人から作る。(各自古新聞持参)

          講師到着。ファシリテーター到着。ウレタン棒と防具到着。

    10:00 講師紹介、殺陣についての説明。

          殺陣の基本形の一部である「護身術」の原則は自分の身は自分で守るという

          こと。

          自分の体を知ることも護身術の内。体には365の関節(一年と同じ数)が

          ある。   

          これを大きくわけると約280箇所。関節を知ることが技を身に付けるため

          に大事なことである。

    10:02 準備運動

    * たんでんを揺する。おへそを中心として体をゆする。(内臓、特に腎臓と

    肝臓を刺激する。)そのまま体を大きく捻る。遠心力をつけて、中心の力

    を止めると、手だけがブラブラする。ちゃんと中心から体を揺すっていた

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    ら、力を止めたとき手が動いているはず。

    * 両手に大きなボールを持っているつもりで手を開き、息を吸ってはいてを

    繰り返しながら体を大きくまわす。体を左、右に回転する。手を後ろから

    前、上にのばし回転させる。

          

         

          

          3. 肩を上げたりり下ろしたりする。

          4. 腰に両手をやって、頭をぐるぐるまわす。

          5. 深呼吸。気分を落ち着かせる。自分がいつも落ち着いていることを学ぶ。

          足のユウセンというツボから奇麗な水を吸い上げるようなつもりで呼吸する。

          息を吸いながら、頭のてっぺんまで水がいきとどいたつもりになったら、鼻

          から息を吐く。

    10:15 殺陣の基本形/基本動作のケース・スタディ1

         

          「護身術」

          

          隣の人と2人組になる。攻撃側と防御側に分かれ2人で先生の説明に従って

          動きのパターンを練習。講師の「はい、終わり」の合図で次のパターン  

          の説明と実践に移る。

            

          手をつかまれたら、どうするか。

    1. その手を両手でつかんでぐるっとまわす。廻すことで相手の手の関節を捻

     る。

    2. 掴まれたまま掴まれた所よりも前に肘を出す。そのまま肘鉄を加えてもよ

    い。その時、自分の手は開いたままがよい。(気が通りやすいらしい)

          3. 掴まれたまま自分の腕を振りかぶって振り下ろす。相手ががくっとなる。

          4. 掴まれたまま自分の手を相手の目に近付ける。そのままぐるっと相手の

      手をふりほどく。

          5. 掴まれたまま自分の腕を振りかぶって、相手の頸動脈に向かって手をふり

           下ろす。

          6. 自分の手を掴んでいる相手の手首にみずから親指と人さし指を入れて、下  

           から掴み返す。

          7. 両手をつかまれたら、「ごめんなさい」と手を合わせて拝む格好をしてそ  

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           のまま相手に向かって突き、内側から払う。相手の手が離れる。

          8. 両手を外から廻して払う。

          9. 後ろから両手を持たれたら、そのまま斜め後ろに下がって、自分と相手の

           手をぐるっとまわす。

          10. 後ろから両手を持たれたら、両脇にそってすうっと腕を曲げながら上げ

           て、そのまま前にさっともってくると、相手の手が離れる。

          抱きつかれたら、どうするか。

          1. 後ろから抱きつかれたら、90度の角度に体を曲げる。相手を躱す。

    2. 後ろから首を絞められそうになったら、顎で相手の腕をはさみ、体をずら

    し、肘鉄をくらわす。

          

          悪い人が出刃包丁で襲ってきたら。

    1. 真っすぐよける。すぐ避けようとせず、出来るだけ真っすぐ自然体で前を

    向いて受け止める。相手が包丁を出してきた瞬間、左、または右に体を

     90度回転させて包丁をやり過ごす。

    2. よけながら、手のひらの下の方で相手の包丁をもった手を向こうへやり、

    足で蹴る。

    3. よけながら、手のひらの下の方で相手の包丁をもった手を向こうへやり、

    もう片一方の手で顔に張り手をくらわす。または目潰しをする。

    4. 上から包丁で振りかぶってきたら、裏(背中)の方にやり過ごしながらよ

    けて、そのまま肘鉄。

    10:40 連続した動きの基礎練習。

          講師の動きについて、皆でパターン練習。

          包丁の躱し方の動きを3パターン6動作を組み合わせて連続でやってみる。

          1.左半身よけ→右半身よけ→左入り身→右入り身→左裏入り身→右裏入り

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            身

          2.左半身よけ/包丁を片手で払いながらキック→右半身よけ/包丁を片手

            で払いながらキック

          3.左入り身/包丁払い~顔張りて~ひざ蹴り→右入り身/包丁払い~顔張

            りて~ひざ蹴り

          4.左裏入り身/ボディに肘鉄~顔に肘鉄→右裏いり身/ボディに肘鉄~顔

            に肘鉄      

          5.上の2,3,4を連続してやる。

    10:46 二人組になって、攻撃側と避ける側をやる。これまでの動きの復習。

    10:48 テーマを与え、手を掴まれた時や包丁で襲ってきた時のよけかたの組み合わ

          せの動きを練習する。

          講師の説明ー台詞を自分で考えて入れること等。講師による模範演技(例:

          手を掴む→相手の手をあっちへやる→相手が短刀を取り出す→短刀をよける

          →逃げる等、「このやろう!!」等の台詞を挟む。)

    10:49 こどもが2人一組になって台詞をいれながら動きを組み合わせて自分でシー

          ンを創る練習。

    10:51 こどもが皆の前で動きを発表。(任意三組ほど発表/男が多い)

    * 「てめえ!!」「いいじゃないかよ」「ああ、もう切れた」「飲みいこう

    よ、ねえ」等の台詞が入っていて、結構上手い。恥ずかしがっているこど

    もも多い。      

    10:55 殺陣の基本形/基本動作のケース・スタディ2

          「チャンバラ」

          ウレタン棒もしくは新聞紙を丸めて作った棒、どちらかをこども一人が一本

          ずつもつ。ちゃんとした武器でなくても日常で手に持っている雑誌や新聞、  

          スリッパなどを手にもって敵の攻撃を防ぎ、攻撃する。その基本形の練習。

  • - 317 -

         (*新聞紙やウレタンの棒でも、耳にあたったり、目にあたったりすると、怪

           我をしたり、鼓膜がやぶれたりするので、気を付けること)

          1. 顔をカヴァーしながら(受けながら)打つ

          2. 払いながら突く

    3. 斜め後ろにさがりながら扇打ち2回(自分の手首を扇の要としながら棒

      を動かすと扇のような形に動くからこの名前がついた。)

          4. まわし打ち

          5. すくい打ち

          6. 押さえ撥ね打ち

          7. 外側に外して相手が動けない様に手首を押しながらかつぐ(突く、たたく)

          講師の動きについて動きを学習した後、二人組になって7基本動作の練習。

    11:05 2つの大きなグループに分かれ、防具をつけた講師とファシリテーターを相

          手に、扇打ち等、連続技の練習。 (ウレタン棒を順番に使用)

          1. 扇打ち→扇打ち→頭打ち

          2. 小手→面→足

    11:10 三本勝負(疑似試合みたいなもの)どの技のパターンを使ってもよい。こど

          もが好きなように動く練習。三回棒で触られた方が負け。

  • - 318 -

         (こどもが2人防具を付けて、ウレタン棒を持って皆の前で勝負をする、とい

          う形式。全組が順々に出てやる。)

    * 男の子が積極的なので、先に勝負が終わる。

    * こども、わいわい言って楽しそう。

    * 女の子は、ちょっとやりにくそうな子もいる。

    11:20 勝負が終わった男の子が動きの練習を始める。

          女の子は三本勝負を続けている。

    11:25 チームに別れてリーグ勝ち抜き戦。上記の三本勝負と同じルール。

          女子と男子に分かれて2組の試合が行われる。

          終わった人は各自動きの練習を任意にする。

    * 動きが上手いこどもが出てくる。男の子の上達が特に早い。5人勝ち抜く

  • - 319 -

    子もいる。

    * 二刀流などいろいろと工夫をこらして闘うこども。がんばれの声援など、

    皆熱がはいっている。

    11:45 勝ち抜き戦終わり。質問等受付。

    11:49 締め。足をリズミカルに動かしながら

          素振り。

          色々な動きのパターンで百回ずつ。

    11:52 棒、防具片付け。

    11:53 体をほぐす運動。屈伸、深呼吸、等。

    11:55 武士の正座、おじぎ(挨拶)の方法についての説明。

          手は左、右の順に出し、顔は30センチ以上つけないように(誰かきたら分

          かるように)手は上から顔をがつんと押さえられたときに保護できるような

          位置につく。等。

    12:00 一日目武士式挨拶にて終わり。

  • - 320 -

    一日目は、殺陣の基本となる、護身術での体の動かし方とチャンバラの体の動かし方をこ

    ども達に理解してもらい、覚えてもらうのことに集中した。殺陣の動きはかなり難しく、

    切れのある動きが要求されるので、2日目の創作で応用してもらえるように、パターンを

    練習し、その後、連続した動きにつなげ、台詞を入れた動き、そして、自由な戦闘を体験

    してもらった。最後の挨拶の仕方も、時代劇でよく使われているもので、とても面白い情

    報だった。

    8月12日(火)

    9:30  こども到着、会場に入り始める。チャンバラに使う新聞紙をまるめてガムテ

          —プでとめたものを来た人から作る。(各自古新聞持参)

          講師到着。ファシリテーター到着。

    ウレタン棒と防具準備。

    10:00 挨拶、その後準備運動(昨日と同じメニュー)

    10:05 殺陣の基本形/基本動作のケース・スタディ3

          「護身術」

          

          隣の人と2人組になる。攻撃側と防御側に分かれ2人で先生の説明に従って

          動きのパターンを練習。

          講師の「はい、終わり」の合図で次のパターンにの説明と実践に移る。

          相手の力を利用する方法

    1. 相手が自分の腕を押してきた場合。その押す力を回転の力に変換して、柔

    らかく受け止めまわす。

          2. 押された時に相手の押す力を利用して、自分の方に引きずり込む。

    3. 相手が押してきたら、引っ張ってバランスを崩して反対側に転ばす。(右

    から押してきたら左に)

    4. 腕を掴まれたら、そのまま掴まれた腕の方向に自分の腕を倒していって、

    相手のバランスを崩す。

    相手の力を利用して相手を倒すという技。自分が力を入れずに倒す、という動

    き。体と関節の構造を知ると相手を崩す動きが簡単になってくる。構造をよく

    知っている方が得である。

    10:20 殺陣の基本形/基本動作のケース・スタディ4

  • - 321 -

          「キックボクシング」

             a 動きを講師について全員でやってみる。

            b. 次に2人組になってやってみる。

           

           1. 簡単な連続技を覚える。

           ジャブ(左手)→ジャブ(左手)→ストレート(右手)→ストレート(左

           手)→前廻し(右足)→外廻し(右足)→後ろ廻し(右足)→下段後ろ廻

           し(右足)

      相手が来たら自分が倒れて蹴る。(両手を地面について片足を真っすぐ  

      突き出す)

         3. 相手がきたら自分が後方に倒れて、後ろ向きに蹴る。

    4. 相手がキックしてきたら、自分の足を使って相手の足を外側に引っ掛け

          てバランスを崩す。

    5. 足と足が引っかかった時、相手の内側から自分の外側に膝を折り曲げて

     倒す。

    6. 相手がキックしてきたら、自分の腕を折り曲げながらその足を挟み込み、

          はらう。

           7. 6番の動きで、上段蹴り、中段蹴り、下段蹴りの三パターンを掴む。

           8. 相手がパンチしてきたら時のはらい方と攻撃。

           相手:上段パンチ→中段パンチ→下段パンチ

           自分: 左に重心を移しよける/左手ではらう→右に重心を移しよける/

              左腕で挟む→左に重心を移しよける/左手ではらう→その左手を廻

              してきて指先で相手の目潰し。

      *危ないのでゆっくりやること。

    10:38 殺陣の基本形/基本動作のケース・スタディ5

         

          「関節捻り技」

            それぞれ二人組になって、やってみる。

            講師の「はい、終わり」の合図で次のパターンにの説明と実践に移る。

       

  • - 322 -

    1. 手をつかまれたら、掴まれていない自分の手で相手の手を押さえ、相手

    の腕が「くの字」に曲がるように向こうに押して、最後に相手の手首を

    ぎゅっと外向きに曲げる。

    2. 胸ぐらを掴まれたら、相手の手首を両手て掴んで、右手なら左回転で、

    ぐるりと廻す。

    3. 手を掴まれたら小手返し。相手の親指と小指に手を当てて外側にギュッ

    とひねる。

    * 痛くなったら膝をたたいて相手に合図を送ること。あんまり関節を曲げる

    と腱鞘炎になるので、注意しながらゆっくりやること。

    * 手の関節を捻ると実際とても痛いので、こどもたちもびっくりしている。

    とても興味を持った様子。

    10:55 昨日と今日を通しての基本の動作パターンの組み合わせ実践。おさらい。

          手首を持たれたら、廻して腕をはらう。

          頭を掴まれたら自分の方に押しつけて捻り倒す。等。

    11:00 質問受付。先生の元気の秘けつは、とか鼻をつかまれたらどうするか等の質

    問があった。その後、5分間休憩。

    11:05 おさらい続き。ウレタン棒、新聞紙をつかってチャンバラの動きの基本をも

    う一度通してやる。

  • - 323 -

          先生のいち、にのかけ声と一緒に全員で7パターンを10回ずつやる。

          1. 顔をカヴァーしながら(受けながら)打つ

          2. 払いながら突く

          3. 斜め後ろに下がりながら扇打ち2回

          4. 斜め後ろに下がりながらまわし打ち2回

          5. すくい打ち、右、左

          6. 押さえ撥ね打ち

          7. 外側に外して相手が動けない様に手首を押しながらかつぐ(突く、たたく)

    11:10 基本パターンと動きについてのまとめの説明。

          この7パターンは十手、てっせん、小太刀、ナエシ(女性用の小さい鉄の棒)

    等の技の中から7本に纏めたものなので、色々な道具を使用しながら使える。

          

          頭を使って相手に打ち込ませながら、自分の有利に戦いを運ぶこと。強い人

          は頭のいい人。一度自分が打ってでて、相手が避けた所をねらう、等。

    11:15 チーム・トーナメント戦。4チーム三本勝負。(内容は昨日と同じ)自分で

          動きを考えて、三回ウレタン棒でさわられたら負けとなる。(勝ち抜き表を

          書くためホワイト・ボード使用)

          チームの分け方:背の順に男の子と女の子を並ばせる。不公平のないように、

          大きな子から順にAチーム、Bチーム、Cチーム、Dチーム、と振り分けてい

          く。1チーム男女混合で7名ずつ。

          各チーム、2本づつウレタン棒を持って、試合をする人は防具をつける。出

          る順番はチームで決める。

          

          一次戦:Aチーム対Bチーム、Cチーム対Dチーム、をそれぞれ別に開始。勝

          った方が対決。 CチームとDチームが同点なので、一本勝負となった。

          二次戦:BチームとDチームが決勝戦。

          三次選:AチームとCチームの三位決定戦。

          試合結果/順位 1. D 2. B 3. C 4. A

    * こどもたちは結構真剣になっている。「打ったら逃げろ!」「あし、あし」

    等の応援も多い。動きもずいぶん慣れてきたようだ。ただ、見物している

    こどもの中には集中力が続かない子も。

    * ただ単にたたくだけでは駄目で、考えて打ち込まなければ、一本とならな

  • - 324 -

    い。頭を使い考え、動きを創造することを試合形式で教えている。

    11:50 トーナメント終了。表彰式。皆で拍手で称える。

          講師まとめの言葉。おつかれさまでした。

    11:55 片づけ、前半終了。提出書類回収。

    * こどもの感想/面白かった、チームが優勝してよかった、色々なことが習

    えて楽しかった。使えそうなのでよかった。役にたつと思う。これから覚

    えたい、等。

    2日目の前半は一日目よりも少し高度な連続した動きにより重点をおいた説明があった。

    こども達もかなり殺陣の基本の動きに慣れてきたように思える。自由に動ける決戦でも、

    昨日に比べて動きがなめらかに、鋭くなった。

  • - 325 -

    13:00 昼休み休憩後「アクション・シーン創作」スタート

    * 午前中しか出席できないこども、とシーン創作には少し若年すぎる小学校

    中・

    低学年を除いて12名が参加(男子6名、女子6名)。講師は演技指導の大

    山先生に変わる。ファシリテーター1名。

          講師の説明:これまでに教えてもらった殺陣の基本パターンを応用しながら、

          アクション・シーンを創り、皆の前で発表してみよう。シーンの創造には次

          のことを考える必要がある。まずそれを考えてみよう。また発表の再に、実

          際にそれが人の目にどの様に映っているのか、デジタルビデオとカメラで撮

          影してみる。創作時間40分間。シーンは1分程度の短いもの。

           1. 場所

           2. 時間

          3. 登場人物同士の関係

           4. せりふ

          方法:2人組になって、それぞれが上記

    4項目を考える。用意されたプリン

    ト用紙に上記4項目を書き込む。

    プリントの項目は次の通り。

           1. 人物「誰と誰?」強者と弱者に分けて書く。

           2. 関係「以前にどんな事があった?」

           3. 場所「どこで?」

           4. 時間「いつ?」

           5. 台詞

    13:05 2人組結成。全6組。鉛筆、消しゴム、プリント配布。各自ひとそろいづつ。

    * 皆こども達は真剣に考えている。とても楽しそう。女の子同士、男の子同

    士の組ができている。

    * 講師とファシリテーターが各組を回って色々と助言している。

  • - 326 -

    13:25 *早い組では、実際に動きを付けて、練習をし始めているところが出てきた。

           まだプリントに向かって考えているこどもも多い。特に男の子は積極的で、

           やることが早い。

    * 嬉しそうにスタッフに説明をしはじめる子もいて、活気がある。

          

    13:30 講師「演技で試してみよう」と呼びかけ。

    6組中5組が立ち上がって創作したシーンの動きを練習。

    13:42 発表までにもう少し時間が欲しい組が4組。

    13:45 6組全部が動きを練習しはじめた。

    13:49 発表スタート(他の組の発表作を別の組がビデオとデジカメで撮影)発表後、

          感想を言い合う。

         

     1. 西村さん&伯耆さん組 (女の子2人組)

    1. 人物「誰と誰?」いじめっ子(強者)といじめられっ子(弱者)

           2. 関係「以前にどんな事があった?」前からいじめられていた。

           3. 場所「どこで?」学校(教室)

           4. 時間「いつ?」放課後

           5. 台詞 弱「返してよ!」

                強「取りにこいよ」

                強「何だよてめえ」等。

            バトル

            最後の弱者の決め台詞「林先生に教わった甲斐があったよ」

          かばんをとられたいじめられっ子(弱者)がいじめっ子(強者)からかば   

          んを取りかえすと、強者怒って後ろから殴りつけようとする。しかしそこで、

          弱者、しゃがみ後ろ回し蹴りをし、強者を倒す。強者もう一度怒ってパンチ

          をするが、弱者それを躱して、中段蹴りでノックアウト。強者逃げる。

  • - 327 -

           感想:アクションが楽しかった。

    2. 北口君&島崎君組 (男の子2人組)

            1. 人物「誰と誰?」先輩(強者)後輩(弱者)

    2. 関係「以前にどんな事があった?」以前から負けていた後輩が先輩

           にリベンジを申し込む。二人は武道のライバル。

            3. 場所「どこで?」 だれもいない道場

            4. 時間「いつ?」 武道の授業が終わってから。

            5. 台詞  弱「この前のリベンジだ」

               強「めんどくさい、どうせ勝つし」

    弱「逃げるのか?」

    強「勝った試しがないのによくそんなこと言うなぁ」

    *おちょくるように

                弱「今日こそは勝つ!」

                強「そこまで言うなら」

                 弱「そうこなくちゃ」

                    バトル

                  強「負けたぁ」

                 弱「初めてかったぜ!!」

            誰もいない道場で帰り支度をする2人。そこで、後輩(弱者)が先輩(強

            者)に試合を申し込む。新聞紙の棒を弱者が強者に投げて、試合が始ま

            る。受けて打つ、扇打ちなどで三回ほどチャンバラをやり合った後、弱

            者が強者の棒を払い落とす。そこで強者は弱者の腕をもち、関節捻り技

            をかけ、棒を落とす。強者、弱者を後ろに突きとばしたところで、弱者

            パンチを浴びせる。中段、下段のパンチを強者がはらいのけると、今度

            は強者が後ろ回し蹴り。弱者の足をはらって倒す。弱者倒れた位置から、

            横向きの足蹴り。強者キックでのぞむがかわされて転倒。弱者そこにと

            び蹴り。弱者勝つ。

            感想:面白かった。疲れた。

            見学のこどもの感想:倒れ方が面白かった。習ったアクションを沢山使

            っている。

                 

    3. 古賀君&山下君組 (男の子2人組)

           1. 人物「誰と誰?」刑事(強者)犯人(弱者)

           2. 関係「以前にどんな事があった?」

  • - 328 -

             (犯人)強盗殺人/大麻の売人+傷害の罪で追われる。

             (刑事)上司を刺されて単独捜査。犯人を発見して工場に追いつめた。

           3. 場所「どこで?」廃工場 以前鉄パイプを作っていたところ。

           4. 時間「いつ?」夕暮れ

           5. 台詞 強「追いつめたぞ古賀。逮捕する!あきらめて罪を償うんだ」

                弱「ちくしょう!ぶっ殺してやる!」

                     バトル

                弱「てめえ、このやろう!!」

                強「やめるんだ古賀!」

    バトル

                強「古賀令、強盗殺人の容疑で逮捕する」

            犯人(弱者)と刑事(強者)が上手から走って入ってくる。初めの台詞

            を言った後、鉄パイプに見立てた新聞紙の棒を弱者がつかんでバトルス

            タート。弱者棒で殴りかかると強者がそれを払いのけてパンチ。後ろに

            ぶっ飛んで怯んだ弱者を迎え撃つために強者も棒を持つ。棒を振り回し

            ながらかかってくる弱者を受けて打つなどして撃退する強者。棒を手か

            ら落とすことに成功する。弱者はその後、パンチで向かってくるが、強

            者は上段、中段、下段のパンチ全てをはらい、膝蹴りで脇腹をキック。

            よろけながらも弱者左手でパンチ。しかし、強者それを止め、肘を持っ

            て相手を崩れ落とし、取り押さえる。

            晴れて逮捕。手錠をかけて終わる。

            感想:面白かった。以外といい出来だった。

            見学の子供の感想:台詞も面白かった。技のアレンジがいい。

    * どうしても照れながらやってしまうところがある。

      

    4. 関君&後藤君組 (男の子2人組)

           1. 人物「誰と誰?」ゴウダタケシ(強者)ノビノビタ(弱者)

    2. 関係「以前にどんな事があった?」ノビタは以前学校でいじめられたの

          で不意打ちを計画

           3. 場所「どこで?」道路

           4. 時間「いつ?」昼間

           5. 台詞 弱「....ジャイア~ン!!覚悟ー!!」

                強「のび太のくせに生意気なこというじゃねーか」

                   バトル

                強「のび太、きさま...」 バタッ

                弱「フッ」

  • - 329 -

           いつもいじめられているのび太(弱者)はある日ジャイアン=ゴウダタケ

           シ(強者)に棒を持って後ろから殴り掛かる。しかし、その時ポケットに

           棒を隠し持っていた強者はすんなりそれをかわすと返す動作でいきなり顔

           に斬りつける。倒れた弱者は攻撃してくる強者の棒を扇打ちではらいのけ

           ながら、立ち上がる。お互いに手から棒がふっ飛んだ二人は今度は素手で

           格闘。まず先制パンチをくり出した強者のかかってくる力を利用して、腕

           を引っ掴んだ弱者はそのまま強者を前につんのめらせる。転んだ強者はも

           う一度パンチ。だがそれも力を利用したはらい技をかけられ、何度も大振

           りをしながら転倒。最後は腕を捻りながら倒され、ついに弱者が勝った。

           感想:面白かった。楽しかった。痛かった。

           見学の子供の感想:投げ技が良かった。

           ビデオ、デジカメ撮影/関君、後藤君、古賀君、山下君。

    * 他の2組は創作が上手くできていないので、発表を控えたいとの事で、残

    念ながら発表は無しとなった。

    * アクションシーン、見ごたえ十分で、とても良かった。

  • - 330 -

    子どもの作った人物設定と台本例 (1)

    子どもの作った人物設定と台本例 (2)

    14:05  終了。終わりの挨拶。

           アンケート記入後帰宅。新聞紙の棒はこどもの持ち帰り可。

    * こどもの感想/楽しかった。ビデオがとれて良かった。こんどから技を使

    いたい。役立てたい。またやりたい。面白かった。疲れた。実用的でいい

    なと思った。等

    14:30  スタッフ反省会。

          *もう少し年齢の差を縮めた方が上手くいくかもしれない。

    * 今度は少人数でじっくり技、型を覚えて、作り込めるようにすると面白い。        

    *女の子よりも全体をとおして男の子の方が熱心であった。

          *基本練習の時間をもう少し縮めてもいいかもしれない。

    * 全く殺陣の事を知らないこどもが、よく動作を覚えていた。創作で基本動

    作をよく理解して使っていたので、驚いた。こどもの能力は結構すごい!!

  • - 331 -

    * コンタクトがずれた子がいたので、今後気をつけるようにしなければいけ

    ない。

    4444....開開開開催催催催後後後後のののの処処処処理理理理・・・・処処処処置置置置ににににつつつついいいいてててて

    ウレタンこん棒、面、手袋等の防具、包丁の模型

     若駒アクションクラブに返却。ワ-クショップ終了後講師の方に持って帰って頂いた。

    新聞紙の棒

      希望者(子ども)に配った。欲しいという子どもが多く、全部無くなった。

    提出物

    レポート

    ワークショップの様子を撮った写真とビデオ。

     写真は本レポートに含まれているもの以外は CDRで提出。

     ビデオは DVにて、編集 15分程度のものを提出。

     子どもの撮影した映像、写真も CDRに含めて提出。

    著作権処理

    CANVASのウエブでの公開を前提にしているので、各参加者の保護者にその旨書面

    での了解をいただいた。

    5555....開開開開催催催催成成成成果果果果とととと反反反反省省省省点点点点

    参加者募集とクラス分けについて

    今回のワークショップでは、劇団ひまわりの全面的な協力により、広域から、幅広い年

    令層の子どもを集めることができた。参加人数も 1 回の募集で予定数に達した。殺陣に対

    する子ども達の深い興味が伺えるのではないだろうか。劇団内の養成所プログラムでも殺

    陣の授業を定期的に開催しているそうだが、あくまで高校生以上/青年対象ということで

    ある。今回のワークショップの様に低年齢対象(小学校3年から中学3年まで)の殺陣ワ

    ークショップというのは、劇団にとっても初めての試みで、子ども達も募集段階から大変

    興味を持っていた様である。なるべく多くの子どもに殺陣を体験してもらう為に、基本型

    の練習については対象年令の幅を広くした。しかし、殺陣を使ってアクション・シーンを

    創作するのは、大人でも難しい作業である為に、創作編は中学生のみを対象にすることに

    した。ワークショップを終了してみて、このクラス分け方法を取るのであれば、始めから

    中学生のみを対象に、少数制にして開催をしても良かったのではないかと思う。

    しかし、道具レンタルや危険性の問題から、殺陣のワークショップを一般小学生向けに

    組むのは難しく、今回、めったに機会のない小学生に、殺陣の面白さを経験してもらえた

    のは大変喜ばしいことだ。殺陣の型を体験するという基本型のみのクラスは「創作」とい

    う観点からは、ずれがあるかもしれないが「こどもの表現力を高める」という点では評価

    できるのではないだろうか。

    今回、中学生の殺陣クラスを実施してみて、盛況でも有り、かなり効果的に展開が可能

    であると分った。従って今後は創作に重点を置いた、中学生のクラスを中心に組み、パッ

  • - 332 -

    ケージ化していくことが望ましいだろう。

    プログラム内容について

    このワークショップでは、殺陣の動きという日本独自の伝統芸能をより多くの子ども達

    に知ってもらい、経験してもらうこと。そして、ただ動きを学習するだけではなく、それ

    を応用し自らの創造につなげていく事を目的としている。しかし、殺陣の動きは大変難し

    いものである。まず、創作に移る前に基本の動きを熟知しなければ、よい動きは作れない

    し、動きが単なる「むちゃくちゃ」であれば、そのシーンはただの喧嘩や暴れまくってい

    る場面であり、殺陣とは呼べない。いかにして、今まで殺陣のたの字も習ったことのない

    子ども達に基本の動きを習得してもらい、それをアクション・シーンの創造へとつなげて

    行くかということが今回スタッフ一同が最も頭を悩ませた点だった。

    殺陣の講師、林氏は NHK の時代劇「宮本武蔵」の殺陣シーンや、「ラストサムライ」

    の演技指導をトム・クルーズにつける等、第一線で活躍している方で、子どもの指導より

    も実際にプロとの仕事を中心にしている人だ。その為、子どもでも覚えやすいような基本

    型をなるべく選んで、じっくり教えて欲しいとお願いした。その結果、前半の基本型編は、

    様々な易しい型を中心とした、分りやすい内容となっていたと思う。見ている側にとって

    も知識として役に立ち、本当に興味深い内容であった。

    ただ、子どもが自由に型を使い、考えて動けるようにと トーナメント形式の試合もやっ

    ていたが、この時間は短縮してもよいのではないかと感じた。その訳は、トーナメントで

    は、どうしても「勝負」という方に意識が飛んでしまい、「型」を次の創造に結び付けよ

    うと、じっくり考えて動く暇が無くなる可能性があるからである。実際、殆どの子ども達

    も「殺陣」を意識するよりも、勝ち負けを意識して参加していたように見受けられた。

    叉、特筆すべきは、男の子と女の子の興味のもち方の差であり、上達が早く興味をもっ

    て動きの習得を目指していたのは、男子が圧倒的に多かった。今後のワークショップの企

    画では、性別による興味の差というものも考慮にいれてメニューを考えたり、クラスを分

    けたりした方がいいのかもしれない。

    日本の伝統芸能を子ども達の創作に結び付けるという、新しい形のワークショップの提

    案は、一つ間違えれば、ただの「芸能練習会」の様になってしまう。今回の「殺陣ワーク

    ショップ」を「新しい創作の形」として雛形提案が出来るまでに洗練した形に作りあげる

    ことは出来なかったかもしれないが、一つの方向性を示す事は出来たのではないだろうか。  

    今回のメニューでは、最後にデジタル・ビデオとカメラを使って、創作したアクション

    シーンを子ども自身に撮影してもらう、というスタイルを提示。

    伝統芸能→型を習得→応用練習→創作→撮影(デジタルツールの活用)→作品として確立、

    という流れを示した。もちろん、他のジャンルに今回の流れがどれだけ応用が可能かは未

    知数である。が、少なくともこの方式をとれば、ある程度の作品と創造性を子どもたちか

    ら導き出せるあろうと提言することは出来る。

     例えば三味線など、奏法を覚えなくてはならない場合には時間がかかる事が予想される。

    しかし、そこにデジタル機器を組む込むことで、時間の短縮を計り、伝統のエッセンスを

    創作に取り入れることは可能だろう。自分で弾いた音をサンプリングしたり、他の人の音

  • - 333 -

    を組み入れたり…ということがそれである。種々のジャンルに応じて一つ一つのフェーズ

    の時間の組み方は変わってくるが、基本は同じ流れを使用すればよいだろう。今後はこの

    流れを何通りか作り、それを提案していくという試みが必要となってくるだろう。

    今回のワークショップでいえば「応用練習」の時間を短縮し「創作」にあてて、「撮影」

    をもっと本格的にし、短い劇場上映作品を作っても良かっただろうし、また方向性を変え

    て「ツ-ル」を 3D のソフトにして殺陣の形をクリエイトしてみる、というのも面白かっ

    たのではないかと思う。マルチメディアをもっと高度に組み込んだ形を作って行くことは

    今後の課題となる。

    ワークショップ後の子ども達に話を聞いてみると圧倒的に「今後使ってみたい」という

    意見と「面白かった」という感想が多かった。伝統的な和のアイテム(例えば手拭い等)

    に感心が集まっている昨今においても、未だチャンバラ等時代劇関係のものは「おばあち

    ゃんやおじいちゃん」が好きなテレビ番組として位置付けられており、国際的な感心の高

    さや評価とは裏腹に片隅に追いやられたものになっている。しかし、実際の経験を通し、

    アップデートなものと組み合わせれば、子ども達の感心を鼓舞し、面白そうなものだぞ!!

    と考えてもらえるのだ。

    アクションシーンの創作においても、子ども達は、前日に習得した型をかなり上級者的

    な取り入れ方で、使用していた。この事にはスタッフ一同大変驚かされたのである。そし

    てデジタルビデオで撮影する時の子どもの活き活きとした顔つきには、今後のワークショ

    ップの可能性を感じさせられた。

    将来この方面のワークショップを増やし、上手く「流れ」や「雛形」を開発し、適宜利

    便性の高いマルチメディアを組み入れてくことが「独創的な創造性」と「独自の文化性」

    の両側面において、大変有意義なのではないだろうか。