●玉川大学教育学部 教授　寺本　潔

〜別冊資料＋『地図帳』で都道府県理解をうながそう〜

地図で先取り！ 2020東京オリンピック・パラリンピック

いよいよオリパラYear20201

東京五輪が近づいてきた。３月12日には，ギ

リシャのオリンピアの遺跡であるヘラ神殿で採火

式も予定されている。大会を盛り上げる一役を買

っているのが聖火リレーだ。3月26日福島県にあ

るナショナルトレーニングセンターＪビレッジか

らトーチを掲げたランナーが走りだす。121日間，

およそ1万人のランナーが858市町村を通過する

ビッグイベントとなっている。学級でもオリパラ

掲示コーナーなるスペースを設け，盛り上げたい。

同時に『地図帳』が活用できる絶好の機会でもあ

る。トーチの形を模った色紙と，今回本誌に付録

として付いている別冊資料「東京2020オリンピ

ック聖火リレーと日本全国47都道府県をまわっ

てみよう！」を教室内か廊下の壁に貼り，ちょっ

としたコーナーを設け，児童の五輪広報係（新年

度は係活動として新設してはどうだろうか。交替

で担当するとよい）が「今日はＯＯ県の聖火コー

スを紹介します！」とプレゼンできるようにうな

がしたい。指導のコツは，プレゼンを聞くほかの

児童にも『地図帳』を持参させてコーナー前に集

合させることである。聖火リレーのランナーたち

が各県のどこをいつ走るのかは，東京2020オ

リンピック聖火リレーのサイト＊１を開くとおおよ

そのコースがわかる。また，「見どころスポット」

としてその県の名所の写真と解説文も掲載されて

いるので参考になる。

プレゼンの示範2

グランドスタートは春休み中であるため，この

別冊資料が届く１月からさっそく始めたい場合に

は，教師が次のように示範するとよい。例えば茨

城県を例に扱うと，平成31年度用『楽しく学ぶ

小学生の地図帳』ｐ.35〜36「関東地方」（ 図１ ）

を開かせ，「聖火は鹿嶋市から出発してひたちな

か市➡大洗町➡大子町➡日立市➡常陸太田市➡笠

間市➡水戸市と走ります。大子町には袋田の滝が

図１ 茨城県を例にみると…（平成31年度用『楽しく学ぶ小学生の地図帳』p.35〜36）

指導者専用サイトに，別冊資料のA3判PDF，聖火リレーワークシートを掲載しています。ご活用ください。

指導者専用サイトはこちらから

別冊資料と合わせてお読みください。

14 2019 ③

スタート沖縄

ゴール東京

第３コース

第４コース

第１コース

第２コース

　記念碑は1964年東京五輪の遺産だ。沖縄返還

は1972年だから，まだ沖縄が米国施政下にあった

時分である。いかに当時の沖縄の人々がオリンピ

ックの開催を喜んだかが伝わってくる。1964年大

会の聖火リレーは，沖縄から４コースに分かれて

東京を目ざした（ 図２ ）。沖縄県以外でも各都道

府県で当時の聖火にまつわる記録や記憶，遺産が

あるかもしれない。調べてみる価値がありそうだ。

半世紀ぶりにやってくる東京2020大会の聖火

リレーは最大規模で開催される。まさに新年前半

のビッグイベントである。社会科指導にとっても

聖火リレーの各都道府県調べに加え，各会場施設

紹介や過去の開催地調べ，マラソン・競歩の会場

に決まった北海道札幌市の気候風土への喚起，選

手の出身国・ホストタウンの活動調べ等，場所と

絡んで地図帳が使える話題が満載である。新聞や

ＴＶのニュースも取り入れつつ，オリンピックイ

ヤ―を学級全体としても楽しみたい。

あります。日立市には発電機・変圧器・エアコン

の記号も（地図上で）見つかりますね。工業がさ

かんな市です。水戸市は梅の名所偕楽園もある古

い街です。ｐ.38を開くと弘道館という史跡もある

ことがわかります。聖火ランナーの目には遠くに

は標高877ｍの筑波山が映っていることでしょう。」

と『地図帳』から読みとれる地名や各種の記号，

特徴的な風景などを盛り込ませてプレゼン文章を

用意させるとよい。児童の言語力や地図帳活用力，

地誌的な知識も高まるだろう。もちろん４月の新

年度から，聖火リレーの走る日程に合わせて進め

ることもできる。その場合には最初の何県かは通

過してしまうが，その県についてはグループに分

かれて練習として，取り上げてみるとよいだろう。

沖縄で見つけた聖火記念碑3

以前，沖縄本島をレンタカーで旅していた際，

おもしろい記念物を見つけたことがあった。それ

が，上の 写真である。コンクリート製のトーチと

「聖火宿泊碑」と彫り込まれたモニュメントが廃

校跡地に建っていた。

写真 旧・嘉陽小学校跡地に立つ聖火を模った記念碑（沖縄県名護市にて筆者撮影）名護市では，この碑を基点にしたマラソン大会が今も行われ，2019年で53回をむかえた。

＊１　公益財団法人東京オリンピック･パラリンピック競技大会組織委員会の東京2020オリピック・パラリンピックのサイトに東京2020オリンピック聖火リレーのおおまかなコースが掲載されている。（https://tokyo2020.org/jp/special/torch/olympic/schedule/）

❶�別冊資料と地図帳を使って都道府県を走る聖火リレーのコースとコース沿いの風景を紹介させよう。❷�1964東京五輪の遺産をたどり当時の聖火を迎える人々の気持ちを想像させよう。

オリンピック・パラリンピック授業の玉手箱

図２ 1964 年大会時の聖火リレー４コースに分かれて全都道府県をまわった。

さまざまな地図活用の広場

152019 ③