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EnVision アプリケーションノート Vol. 002 www.perkinelmer.co.jp EnVision™によるマウス ES 細胞(J1 )に発現させた GFP の測定 生細胞を用いた蛋白質の発現、或いは細胞内局在の研究 GFP を用いることが一般的な手法となっている。これ は主に顕微鏡を用いた単一細胞を用いての手法が主なもの であるが、多くの細胞を対象にした定量性を調べる際には 顕微鏡は適していない。これに対してマイクロプレート リーダーを用いての蛍光測定が多く望まれているが、従来 の蛍光プレートリーダーでは検出できないケースが多い。 アプリケーションノート Vol. 001 では、大腸菌における GFP の発現を報告したが、当アプリケーションノートで は、真核細胞であるマウス ES 細胞 を用いての GFP 発現 レベルを EnVision ™ と従来装置 ARVO MX と比較した。 方法 Mouse ES cellJ1)にプラスミド pCAG-EGFP を導入 したものを用いた。GFP を安定発現させたクローンと、 pCAG-EGFP を導入後 24 時間培養したもの(一過性発現) を、PBS-)に懸濁した。96 ウェル透明底黒プレート ViewPlatePerkinElmer cat. # 6005182) に、1 ウェル あたり、20,00010,0005,0002,5001,250625313156 および 0 個の細胞を分注し(N=1)、Plate reader を用いて、下記条件で測定した。 測定条件 EnVision Top reading bottom reading Ex 485 nmCat. # 2100 - 5020Em 535 nmCat. # 2100 - 5120DM 505 nmCat. # 2100 - 4030Gain 395 750 Flash/well 10 10 ARVO MX Top reading bottom reading Ex 485 nmCat. # 11440022Em 535 nmCat. # 11440023Energy 30,000 30,000 Sec/well 1 1 Top readingPlate 上方から励起光を照射し、上方から蛍光を測定 Bottom readingPlate 下方から励起光を照射し、下方から蛍光を測定 結果 一過性に発現したものの各蛍光量を図 1 に、PBS-)の 蛍光量に対する比を図 2 として示した。 EnVision bottom reading は、2,500 cells/well から 20,000 cells/well まで蛍光量は直線的に増加した。また、 2,500 cell/well からほぼ有意に検出が可能と考えられる (蛍光量比にして 2.7)。 ARVO MX bottom reading も、2,500 cells/well から 20,000 cells/well まで明らかな蛍光量の直線的増加を 示したが、PBS -)の蛍光量が高く、蛍光量比にする と最大で 1.25 であった。Top reading では、EnVisionARVO MX 20,000 cells/well でのみ若干蛍光強度の増加 が認められた程度であった(蛍光強度比ともに 1.1)。 一方、安定に発現させた cell line でも EnVision では同様 の結果が得られたが、今回の測定では、細胞数に対する 蛍光量の増加の程度は低く、ARVO MX bottom reading では殆ど観察されなかった(図 3)。 1. 一過性発現 GFP 測定(蛍光強度)

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EnVision アプリケーションノート Vol. 002

www.perkinelmer.co.jp

EnVision™によるマウスES細胞(J1)に発現させたGFPの測定

生細胞を用いた蛋白質の発現、或いは細胞内局在の研究にGFP を用いることが一般的な手法となっている。これは主に顕微鏡を用いた単一細胞を用いての手法が主なものであるが、多くの細胞を対象にした定量性を調べる際には顕微鏡は適していない。これに対してマイクロプレートリーダーを用いての蛍光測定が多く望まれているが、従来の蛍光プレートリーダーでは検出できないケースが多い。アプリケーションノート Vol. 001 では、大腸菌におけるGFP の発現を報告したが、当アプリケーションノートでは、真核細胞であるマウス ES細胞 を用いての GFP発現レベルを EnVision ™ と従来装置 ARVOMX ™ と比較した。

方法

Mouse ES cell(J1)にプラスミド pCAG-EGFPを導入したものを用いた。GFPを安定発現させたクローンと、pCAG-EGFPを導入後 24時間培養したもの(一過性発現)を、PBS(-)に懸濁した。96ウェル透明底黒プレートViewPlate(PerkinElmer cat. # 6005182)に、1ウェルあたり、20,000、10,000、5,000、2,500、1,250、625、313、156 および 0個の細胞を分注し(N=1)、Plate reader を用いて、下記条件で測定した。

測定条件

EnVision Top reading bottom readingEx 485 nm(Cat. # 2100 - 5020)Em 535 nm(Cat. # 2100 - 5120)DM 505 nm(Cat. # 2100 - 4030)Gain 395 750Flash/well 10 10

ARVOMX Top reading bottom readingEx 485 nm(Cat. # 11440022)Em 535 nm(Cat. # 11440023)Energy 30,000 30,000Sec/well 1 1

Top reading;Plate 上方から励起光を照射し、上方から蛍光を測定Bottom reading;Plate下方から励起光を照射し、下方から蛍光を測定

結果

一過性に発現したものの各蛍光量を図 1に、PBS(-)の蛍光量に対する比を図 2として示した。

EnVisionの bottom readingは、2,500 cells/well から20,000 cells/well まで蛍光量は直線的に増加した。また、2,500 cell/wellからほぼ有意に検出が可能と考えられる(蛍光量比にして 2.7)。

ARVOMXの bottom readingも、2,500 cells/well から20,000 cells/well まで明らかな蛍光量の直線的増加を示したが、PBS(-)の蛍光量が高く、蛍光量比にすると最大で 1.25であった。Top reading では、EnVision、ARVOMXに 20,000 cells/wellでのみ若干蛍光強度の増加が認められた程度であった(蛍光強度比ともに 1.1)。

一方、安定に発現させた cell line でも EnVisionでは同様の結果が得られたが、今回の測定では、細胞数に対する蛍光量の増加の程度は低く、ARVOMXの bottom reading では殆ど観察されなかった(図 3)。

図 1. 一過性発現 GFP測定(蛍光強度)

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*記載されている製品の名称、仕様や外観については予告なしに変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。*本カタログに記載されているすべての製品は、試験研究目的でのみご使用いただけます。

December 2013C○2013 PerkinElmer Japan Co., Ltd.

本 社 〒240-0005 横浜市保土ケ谷区神戸町134 横浜ビジネスパーク テクニカルセンター4F TEL.(045)339-5862 FAX.(045)339-5872大阪支社 〒564-0051 大阪府吹田市豊津町5-3 TEL.(06)6386-1771 FAX.(06)6386-6401東京営業所 〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町1-7-17 CTKビル5F TEL.(03)3866-2647 FAX.(03)3866-2652九州営業所 〒812-0013 福岡市博多区博多駅東1-12-6 花村ビル2F TEL.(092)474-2311  FAX.(092)473-8353

株式会社パーキンエルマージャパンwww.perkinelmer.co.jp

ライフサイエンス事業部

BD131219-02

図 2. 一過性発現 GFP測定(蛍光強度比)

図 3. 安定発現 GFP測定(蛍光強度比)

考察

一過性に発現した細胞では、bottom reading でのみ、EnVision および ARVOMX で細胞増加とともに蛍光量の増大が認められた。しかし、ARVOMX ではその変化量が非常に少なかった。これまで、プレートリーダーで細胞に発現させた GFP の定量が難しかったが、EnVision を用いることにより、その可能性が高くなったことを示している。また、bottom reading の成績が良かったことより、ふたをしたままの状態でも測定できることを強く示唆している。

EnVision が高成績であったのは、以下のように考えられる。

従来型の Plate reader は、蛍光物質に最適な励起および発光フィルターのみで最適化しているのに対して、顕微鏡観察においては、フィルターのみならず最適なダイクロイックミラーを用いている。従来型のPlate reader では、半透明ミラーを用いているのに対して、EnVision では最適なダイクロイックミラー(測定条件の項で DMと記載)を用いることができるため、従来型よりも高いシグナルがえられたと考えられる。

さらに、今日では、顕微鏡を検出システムに組み込んだハイコンテンツイメージングシステム(Operetta ™ PerkinElmer)を用いることにより、個々の細胞のレベル、さらには細胞内のオルガネラレベルでの蛍光量の変化をとらえることができる。

Ref) Y. Katsura et. al. Involvement of Ku80 in microhomology-mediated joining for DNA double-strand breaks in vivoDNA,REPAIR 6 (2007) 639-648

EnVisionOperetta