28
錯体の磁性 - 1 - 錯体の結晶場と磁性-d 軌道を中心として- 1.原子 原子軌道 水素類似型原子の Shödinger 方程式 r Ze m E 2 2 2 2 = = h H H ψ ψ 得られる固有関数は、 の形をとる(mの表現をm l とすることもある) m l l n m l n Y R , , , = ψ Y l m は球面調和関数で φ π im m l m l e Y 2 / 1 ) 2 ( Θ = 動径部分を除いた球面調和関数 軌道 球面調和関数 s 軌道 2 / 1 2 / 1 0 0 ) 2 ( 2 = π Y 2 / 1 2 / 1 0 1 ) 2 ( cos ) 2 / 3 ( = π θ Y φ π θ i e Y 2 / 1 2 / 1 1 1 ) 2 ( sin ) 4 / 3 ( = p 軌道 φ π θ i e Y = 2 / 1 2 / 1 1 1 ) 2 ( sin ) 4 / 3 ( 2 / 1 2 2 / 1 0 2 ) 2 ( ) 1 cos 3 ( ) 8 / 5 ( = π θ Y φ π θ θ i e Y ± ± = 2 / 1 2 / 1 1 2 ) 2 ( cos sin ) 4 / 15 ( d 軌道 φ π θ i e Y 2 2 / 1 2 2 / 1 2 2 ) 2 ( sin ) 16 / 15 ( ± ± = 2 / 1 3 2 / 1 0 3 ) 2 ( ) cos 3 cos 5 ( ) 8 / 7 ( = π θ θ Y φ π θ θ i e Y ± ± = 2 / 1 2 2 / 1 1 3 ) 2 ( sin ) 1 cos 5 ( ) 32 / 21 ( φ π θ θ i e Y 2 2 / 1 2 2 / 1 2 3 ) 2 ( cos sin ) 16 / 105 ( ± ± = f 軌道 φ π θ i e Y 3 2 / 1 3 2 / 1 3 3 ) 2 ( sin ) 32 / 35 ( ± ± = 2 / 1 2 4 2 / 1 0 4 ) 2 ( ) 3 cos 30 cos 35 ( ) 128 / 9 ( + = π θ θ Y g 軌道 φ π θ i e Y 4 2 / 1 4 2 / 1 4 4 ) 2 ( sin ) 256 / 315 ( ± ± = 1/28 佐藤研究室錯体の磁性

錯体の結晶場と磁性 d 軌道を中心としてmukiken.eng.niigata-u.ac.jp/satokougi/daigakuin/magnetic.pdf錯体の磁性 - 1 - 錯体の結晶場と磁性-d 軌道を中心として-

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錯体の磁性 - 1 -

錯体の結晶場と磁性-d軌道を中心として-

1.原子 原子軌道 水素類似型原子の Shrödinger方程式

rZe

m

E2

22

2−∇=

=

hH

H ψψ 得られる固有関数は、 の形をとる(mの表現をmlとすることもある)

mllnmln YR ,,, =ψ

Ylmは球面調和関数で

φπ imml

ml eY 2/1)2( −Θ=

動径部分を除いた球面調和関数

軌道 球面調和関数

s軌道 2/12/100 )2(2 −−= πY

2/12/101 )2(cos)2/3( −⋅= πθY

φπθ ieY 2/12/111 )2(sin)4/3( −⋅= p軌道

φπθ ieY −−− ⋅= 2/12/111 )2(sin)4/3(

2/122/102 )2()1cos3()8/5( −⋅−= πθY

φπθθ ieY ±−± ⋅= 2/12/112 )2(cossin)4/15( d軌道

φπθ ieY 22/122/122 )2(sin)16/15( ±−± ⋅=

2/132/103 )2()cos3cos5()8/7( −⋅−= πθθY

φπθθ ieY ±−± ⋅−= 2/122/113 )2(sin)1cos5()32/21(

φπθθ ieY 22/122/123 )2(cossin)16/105( ±−± ⋅=

f軌道

φπθ ieY 32/132/133 )2(sin)32/35( ±−± ⋅=

2/1242/104 )2()3cos30cos35()128/9( −⋅+−= πθθY

g軌道 φπθ ieY 42/142/14

4 )2(sin)256/315( ±−± ⋅=

1/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 2 -

実数型の固有関数 軌道 球面調和関数

)/()2()2/3()2(cos)2/3( 2/12/12/12/101 rzYY

zp−− =⋅== ππθ

)/()2()2/3()2(cossin)4/3()()2( 2/12/12/12/111

11

2/1 rxeYYY ipx

−−−− =⋅=+= ππφθ φ p軌道

)/()2()2/3()2(sinsin)4/3()()2( 2/12/12/12/111

11

2/1 ryeYYiY ip y

−−−− =⋅=−= ππφθ φ

)1)/3(()2()8/5()2()1cos3()8/5( 222/12/12/122/1022

−=⋅−== −− rzYYz

d ππθ

)/2()2()8/15()2(cos2sin)8/15()()2( 22/12/12/12/112

12

2/1 rxzYYYxzd

−−−− =⋅=+= ππφθ

)/2()2()8/15()2(sin2sin)8/15()()2( 22/12/12/12/112

12

2/1 ryzYYiYyzd

−−−− =⋅=−= ππφθ

/)(()2()8/15()2(2cossin)8/15()()2( 222/12/12/122/122

22

2/122

yxYYYyx

d −=⋅=+= −−−−

−ππφθ

d軌道

)/2()2()8/15()2(2sinsin)8/15()()2( 22/12/12/122/122

22

2/1 rxyYYiYxyd

−−−− =⋅=−= ππφθ

ブラ・ケットの記号 波動関数をその量子数で代表して表す方法 例えば、

mln

mln

mln

mln

,,

,,*

,,

,,

ψ

ψ また積分については mlnmlndmlnmln ,,,,,,

*,, HH∫ =τψψ

固有関数の規格化

',',',,',',' mmllnnmlnmln δ= 量子数のまとめ

軌道角運動量 スピン角運動量

角運動量ベクトル l s 角運動量ベクトルの絶対値 h)1(2 += lll h)1(2 += sss 角運動量ベクトルの z 成分 hmlz = hsz ms = 量子数 ),2,1,0( ⋅⋅⋅=l )2/1(=s z 成分の量子数 ),( llm ⋅⋅⋅−= )2/1( ±=sm

2/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 3 -

d軌道の固有関数を量子数 l と mを用いて のように表現する mlY m =l ,

2,22,2()2(

2,22,2()2(

1,21,2()2(

1,21,2()2(

0,2

1,11,1()2(

1,11,1()2(

0,1

2/1

2/1

2/1

2/1

2/1

2/1

22

2

−−=

−+=

−−=

−+=

=

−−=

−+=

=

−−

xy

yx

yz

xz

z

x

x

z

d

d

d

d

d

p

p

p lが等しい同じ軌道を議論している場合には、lを省略して のようにする 実関数の規格直交性 角運動量(ベクトル或は演算子) 軌道角運動量 l = r x p 交換関係、[F,G]=FG-GF、がゼロのとき交換可能となる 交換可能とは 2つの演算子に対応する物理量が同時に観測可能となる 軌道角運動量の各成分は交換不可能⇒同時に確定値をとるような状態はない 軌道角運動量の 2乗の演算子、l2=lx

2+ly2+lz

2、はl (lx、ly、lz)と交換可能

mY =ml

( )( ) 11001)2/1(

11111111)2/1(

)11()2)(11()2(

1

1

2/12/1*

=++−=

−−+−+−−=

−−−−=

−−∫ τddd yzyz

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛∂∂

=⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛∂∂

−∂∂

=

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

∂∂

−∂∂

=

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛∂∂

−∂∂

=

φh

h

h

h

xy

yx

i

zx

xz

i

yz

zy

i

z

y

x

l

l

l

3/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 4 -

軌道角運動量の固有値 1電子系 多電子系

LLLL

MMMor

MLLLML

MLMMLetc

zyxiLlLl

z

z

iiii

22

22

)1(

,)1(,

,,

),,;(,,

h

h

h

h

+=

=

+=

=

⇒⇒⇒⇒

L

L

L

L

LlLl

llll

mmmor

mlllml

mlmlz ,=l m

z

22

22

)1(

,)1(,

,

h

h

h

h

+=

=

+=

l

l

l 昇降演算子

MLMLMLMLL

iLLL yx

,)1)((, 2hm +±=

±≡

±

±

スピン角運動量、s、sx、sy、sz、s2

交換関係は lの場合と同じ ただし、s=1/2、ms=-s、…s=-1/2、1/2

sssss

mmmm ssssz

222

43)1(

21

hh

hh

=+=

±==

s

s

ms=1/2 に対応する関数をα、ms=-1/2 に対応する関数をβとし、α状態を上向きスピン、β状態を下向きスピンという。 多電子系については軌道角運動量の場合と同様に考えることができる d軌道の角運動量について考えてみる 作用の表現

mmmz h=l例えば この意味は、量子数mは角運動量のz成分(lz)の固有値になる 即ち

ijijijzimzm mmmmmmdji

δτψψ hh ===∫ ll*

実数型の関数では、

0)2002()2(

)22222222()2(

)22()2()22()2(

1

1

2/12/1*

=−−−=

−−+−−−−=

−−−−=

−−∫

h

zzzz

zxyzxy ddd

llll

ll τ

4/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 5 -

実関数自身は角運動量の z成分をもたないが、例えば、

hh 2)2002()2(

)22222222()2(

)22()2()22()2(

1

1

2/12/1*22

=+−−=

−−−−−−+=

−+−−=

−−−∫

zzzz

zyxzxy ddd

llll

ll τ この 2組に関連した角運動量の z成分をもつことになる このことは、dx2-y2軌道はz軸の周りに 2π/8だけ回転するとdxy軌道になる、ことに対応する

5/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 6 -

2.結晶場の定量的基礎 d軌道の結晶場 結晶場(例えば、八面体場)のポテンシャルエネルギー(cgs系、SI系では 1/4πε0を掛ける)

∑ ∑= =

==6

1

6

1),,(),,(

i i ij

ii r

ezzyxvzyxV このポテンシャルを摂動項として取り扱う 無摂動系のハミルトニアンをH0、これに対応する 5重に縮退したエネルギーをE0、その波動関

数をΨiとする 0

00

0 ii E ψψ =H 摂動が加わると

jj Eψψ =+ )( 0 HH は の線形結合で表すことができる 規格化条件から

0iψ

∑=

=+++=n

iiijnnjjjj ccc

1

00022

011 ψψψψψ L

11

* =∑=

n

iijij cc

摂動系の固有地と固有関数を求めるために、変分法を用いて、永年方程式を立てる たとえば n=5の場合

01

01

01

01

01 ψψψψψ

05

04

03

02

01

ψψψψψ

0

5554535251

4544434241

3534333231

2524232221

1514131211

=

−−

−−

EHHHHHHEHHHHHHEHHHHHHEHHHHHHEH

τψψ dH jiij0*0 H∫= ただし、

この方程式を解くと固有値Eが求められ、この値を次の永年方程式に代入して係数cijが求め

られる

0

)()(

)()(

)(

55555454535352525151

45454444434342424141

35353434333332323131

25252424232322222121

15151414131312121111

=

−−

−−

EHcHcHcHcHcHcEHcHcHcHcHcHcEHcHcHcHcHcHcEHcHcHcHcHcHcEHc

6/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 7 -

ここで摂動エネルギーHを V(x,y,z)、固有関数を d軌道とすると、 21012 −−

0

2,21,20,21,12,2

2,11.10,11,12,1

2,01,00,01,02,0

,2,11,10,11,12,1

2,21,20,21,22,2

=

−−

−−

−−−−−−−

−−−−−−−

−−

−−

−−

EHHHHHHEHHHHHHEHHHHHHEHHHHHHEH

21

012

−−

'),,(),,( ',2

*,2', mzyxVmedzyxVeH mmmm == ∫ τψψ

八面体型結晶場ポテンシャル(Voctahedral) 1/rijタイプのポテンシャルは球面調和関数で表すことができる *

10 12

41 mnj

mnjn

n

n

n

nmij

YYar

nr⋅⋅⋅

+= +

= −=∑ ∑ π

結論的には

( )⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡+⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛+⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛+= −4

44

4

2/10

45

42/1

2/1

145)2(

18496 YYY

azer

aezVoctahedral π

この式中で第 2項を特にVoctとする。aは点電荷の原点からの距離 d型関数のVoctに対する効果 始めに、上式中の 6ez/aの項は、球面調和関数を含んでいないから

')6(')6(')6( mmaezmm

aezm

aezm δ==

この項は波動関数の種類に無関係で、波動関数全てに同じだけのエネルギー変化を与える これに対して、Voctとはd軌道の分裂の原因となる 見つけたい関係式の値は、 (永年方程式の行列要素)であるが、これをまじめに計算するのは大変厄介であるので結論だけを示すと、

'mVm oct

5

42

5

42

5

42

5

42

6522

6122

3211

00

arzeV

arzeV

arzeV

arzeV

oct

oct

oct

oct

=±±

−=±±

=

m

他の組み合わせは全てゼロ

7/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 8 -

ここで、 ただし、 は d電子の平均 4乗半径

5

42

2

61 rzeDq =

42r

a とおくと、永年方程式は 21012 −−

2

1

0

1

2

0

0005040000060000040

5000

=

−−−

−−−

EDqDqEDq

EDqEDq

DqEDq さらにブロック対角化をすると、 22110 −−

0

50005000

004000004000006

=

−−

−−−−

EDqDqDqEDq

EDqEDq

EDq

2

2

1

1

0

− 従って、 )(4),(6 doubletDqtripletDqE −=それぞれについて係数を求めて整理すると、

⎪⎩

⎪⎨

⎧⇒

⎪⎩

⎪⎨

−−−=−=

⎪⎩

⎪⎨⎧

⎪⎩

⎪⎨⎧

⇒−+

==

−−

xy

yx

z

ddDqE

dd

dDqE

122()2(

1:4

22()2(0

:6

2/1

2/122

2

ε

γ dxzとdyzは|1>と|-1>の線形結合より作ることができる Voctを球面極座標から直交座標に変換すると、

( )

)5/3(

145)2(

1849

4444

44

44

2/10

45

42/1

2/1

rzyxD

YYYa

zerVocta

−++=

⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡+⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛+⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛= −π

ただし、 D = 54/35 aze

q 105/2 42re=このとき、

8/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 9 -

3.磁化率 物質と外部磁場との相互作用

M HB π4+=Bは磁気誘導、Hは磁場、M磁化(単位体積あたりの磁気モーメント)

上式を Hで割ると πκ41)( +=HBP

Pは透磁率、κは磁化率(無次元) 実際には 、χ:グラムあたりの磁化率、ρ:密度 χA =χx (磁性イオンを 1モルとした場合の分子量)

ρκχ =

(1グラム原子あたりの磁化率) χが負の場合、反磁性(~-1x10-6) χが性の場合、常磁性 Curieの法則 、Curie-Weissの法則 反磁性の補正 反磁性は温度に依存せず、加成性がある nAは分子中にある原子磁化率χAの原子Aの数、λは結合性に対する補正項 あまり精度は良くないが、Pascalの方法 Pascal定数(χAx106/グラム原子) H -2.39 O2(カルボキシル基) -7.95 環の C -0.24 C -6.00 F -6.3 2個の環にまたがる C -3.07 N -5.57 Cl -20.1 C=C結合 +5.5 N(環) -4.61 Br -30.6 C≡C結合 +0.8 N(モノアミド) -1.54 I -44.6 C=N結合 +8.15 N(ジアミド、イミド) -2.11 S -15.0 C≡N結合 +0.8 O -4.61 P -26.3 N=N結合 +1.8 O(ケトン) +1.73 As(III) -20.9 N=O結合 +1.7

計算例 フェナントロリン(C12H8N2)

TC

=χθ

χ+

=T

C

∑ ∑+=χM n λχ AA

12xC=-72.00x10-6

8xN=-23.44 2x(環の N)=-9.22 8x(環の C)=-1.9 4x(2個の環にまたがる C)=-12.3 ∴総計=-118.9x10-6、 実験値=-128 x10-6

∴? χA=-104.66x10-6

∴? λ=-14.2x10-6

9/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 10 -

4.磁気モーメント 軌道角運動量による磁気モーメント lµ電子が平均角速度 ωで回転することは、eω/(2πc)(emu)の電流の流れと等価 この電流によって回転面に垂直に磁場が発生する 磁気モーメント=電流x軌道の面積 電子の角運動量 従って磁気モーメントは はボーア磁子 スピン角運動量による磁気モーメント 磁気モーメントとスピン角運動量との比、g、を分枝係数、或は g因子という gの値は、2.002320±0.000004 軌道角運動量とスピン角運動量の両方を取り入れると、結局、 演算子の形で書くと、

crer

22=×= π

πµ

ce

l

22− ωω

πω

2)1(2 hllrm +=

mhllrπ

ω2

)1(2 +=∴

Bll µµ 11 +=+= Bl lme

ehlπ

)(4

)( µ

Bs ssg µµ )1( +=

sl µµµ +=

BSLµ µ)2( zzz +=

10/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 11 -

5.多電子系の多重度 軌道角運動量 スピン角運動量 全角運動量 電子 原子 電子 原子 原子 角運動量 ベクトル

il ∑= ilL is ∑= isS SLJ +=

角運動量ベク

トルの z成分 zil ∑= ziz lL zis ∑= zizS s zzz SLJ +=

角運動量 量子数

il 2121 , llllL −⋅⋅⋅+=

is 2121 , ssssS −⋅⋅⋅+= SLSLJ −⋅⋅⋅+= ,

z成分の 量子数

im ∑= iL mM zim ∑= ziS mM SLJ MMM +=

磁気量子数 ii ll ⋅⋅⋅− , LL ⋅⋅⋅− , 2/1± SS ⋅⋅⋅− , JJM J ⋅⋅⋅−= ,

d2

一重項

3P2

電子配置

三重項

1S

1D

1G

3P

3F

3P1 3P0

3F4 3F3 3F2

~10000cm-1

~10000cm-1

~10000cm-1

スピン角運

動量カップ

リング

軌 道角運

動量カップ

リング

スピン軌道

カップリング

角運動量のカップリングの種類

i ss -スピン角運動量カップリング -軌道角運動量カップリング j

ji llii ls -スピン軌道カップリング

i ls -カップリング j

カップリングの大きさ (1) ラッセルサンダース結合(LS結合) (2) jj 結合

ijij llss >>

ラッセルサンダース結合(L-S結合) ELS=λL・SのもとにLとSが結合して、合成角運動量 を与える dn(0<n<5), fn(0<n<7) � λ>0 dn(5<n<10), fn(7<n<14) � λ<0 対応する量子数 Jは L+S、L+S-1、・・・、|L-S| � 多重項の成分 ELS=λL・S=(λ/2)(J2-L2-S2)=(λ/2)(J(J+1)-L(L+1)-S(S+1)) 従って、∆ELS=λJ (Landeの間隔則) 磁場を加えると、Jは空間量子化されて(2J+1)個の準位に分裂する(Zeeman分裂) Jの磁場方向(通常、z軸方向)の成分を全磁気量子数MJ

MJの値、J、J-1、・・・、-J jj結合 あまり重要ではないが、LS結合と jj 結合の中間的な場合に用いられる

i lsjiii ll

i

ji ssls ,>

SLJ +=

J

λJ

n<5 or 7 n>5 or 7 λ>0 λ<0

基底状態

J+1 J+2

J+3

J+4

J

J-1

J-2 J-3 J-4

11/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 12 -

kT kT

kT

多重項の分裂幅と熱エネルギーとの関係

(a) (b) (c)

多重項ゼーマン項

右図のような 3 つの場合について、比較的簡単な Langevinの取り扱いを見る

(1)多重項幅が kT に比べて大きい場合

((a)の場合)

多重項の最低成分が大部分であるので、Jの値だけを考慮すればよい 有効合成モーメントは、これら各運動量成分の和 量子数 L、Sおよび Jを用いると、 Lande因子

A

μLSは Jの方向と一致しない

μL

μ

L J

S μS

μLS

C

B

[ ]

BB

B

B

g µµ

µ

µµ

JJJ

LS

JLSJ

JSLJ

JSSJLL

=⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡ −+=

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡ −++

−+=

•+•=

2

22

222222

223

2)(2

2

)cos(2)cos(

-gJμB gJμBH

-g(J-1)μB g (J-1)μBH

+g(J-1)μB -g(J-1)μB H

+gJμB -gJμBH

2(J+1)個の準位

0 0 多重項の 1成分

磁場無し 磁場印加 μz エネルギー

)1(2)1()1(

23

)1(

++−+

+=

+=

JJLLSSg

JJg B

ただし、

µµ

JLSJJS

JSLJJL

JSSJLJLLJSSJLLJS

SLJ

2

2

22

,

222

222

222

222

−+=

−+=

•−+=

•−+=

−=−=+=

方向の成分の

方向の成分の

磁化率 nを、グラム分子あたりz方向の磁気モーメントµzをもった原子数、Vをモル体積とすると、 Maを分子量とすると、

Hn

HMV

HMMV

HM

zM

a

∑==∴

==

µχ

ρχ

12/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 13 -

各順位の分布(Boltzmann分布とする) 各順位にある分子の数は、

( ) ⎟⎠⎞

⎜⎝⎛

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−

kTHgJ

kTHgJ BB µµ exp,0exp,exp KK

gµBH�kTであるので次に用に近似できる

( ) ⎟⎠⎞

⎜⎝⎛ +−⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛ −

kTHgJ

kTHgJ BB µµ 1,01,1 KK

Avogadro数をNAとし、準位の数は(2J+1)あるので、各準位にある実際の数は、

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛ +

++⎟⎠⎞

⎜⎝⎛ −

+ kTHgJ

JN

JN

kTHgJ

JN BAABA µµ 1

12,

12,1

12KK

各準位に対するnµzの値は、

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

+⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛+−

+ kTHJgHg

JN

kTHJgHg

JN B

BAB

BA

222222

12,0,

12µµµµ KK

これらの和をとる ( )

( )0)1(12

2

0)1(12

2222

22222

++−++

=

++++−++

=∑

K

KK

JJkT

HgJN

JJJkT

HgJNn

BA

BAz

µ

µµ ここで、

6)12)(1(0)1( 222 ++

=++−+nnnnn K

であるので、

)1(3

)1(3

6)12)(1(

12

22

22

22

+=∴

+=

+++

=∴∑

JJkT

gN

JJkT

HgN

JJJkT

HgJNn

BAA

BA

BAz

µχ

µ

µµ ここで、 であるから、 Bµ (JJg µ)1+=

kTN A

A 3

2µχ =∴ これを Langevinの式という。Curieの法則に一致

13/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 14 -

(2)多重項幅が kTに比べて小さい場合((b)の場合)

電子は多重項の全ての準位に実質的に同等に分布する L と Sが別々に磁場と相互作用する � BSBL SSgLLg µµµµ )1(2,)1( +=+=

[ ]

B

BAA

SSLL

SSLLkT

N

µµ

µχ

)1(4)1(

)1(4)1(3

2

+++=

+++=∴

(3)多重項幅が kT と同等の場合((c)の場合)

上記 2つの場合の混合状態になる あるJ値をもった分子がモルあたりNJ個あり、それがBoltzmann分布していると考える 基底状態からエネルギー差 Eである準位に存在する分子の数は、 に比例 )exp( / kTE−

各成分は(2J+1)種類に配向できるので、比例定数を C として、 )/exp()12( kTEJCN J −+=

Jの全ての値で和をとると、

)exp()12(3

)1(22

kTEJ

kTJJgC B

A −++

= ∑ µχ

となるが、NA=∑NJの関係があるから、

∑ ⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−+

=

kTEJ

NC A

exp)12( 従って、

∑−+

−++=

)exp()12(

)exp()12)(1(3

22

kTEJ

kTEJJJg

kTN

BA

A

µχ

14/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 15 -

6.Van Vleckの磁化率の公式

磁気双極子に磁場を加えたときのエネルギー利得は、E=-µzH よって、

HE

HHE

z ∂∂

−=∂∂

−=1, χµ

磁場中のイオンの特定の準位iのエネルギーを、

K+++= 20 HEHEEE IIi

Iiii

は無摂動エネルギー、 は 1次 Zeeman効果係数、 は 2次 Zeeman効果係数 0iE IIEIEi i

モルあたりの平均エネルギーEMはBoltzmann分布より、

∑∑

−=

ii

iiiA

M kTE

kTEENE

)/exp(

)/exp( Ei

IH、EiIIH2はkTよりずっと小さいと仮定すると、 ),1)exp(( を用いるxx −≅−

∑∑

∑∑

∑∑

−−−−++=

−−++≅

−−−++≅

ii

ii

IIi

Ii

Ii

Iii

IIi

IiiA

ii

ii

IiII

iI

iiA

ii

i

IIi

Ii

iII

iI

iiA

M

kTE

kTEkTHEEkTHEkTHEEHEHEEN

kTE

kTEkT

HEHEHEEN

kTEkT

HEkT

HEkTEHEHEEN

E

)/exp(

)/exp()///(

)/exp(

)/exp()1)((

)/exp(

)1)(1)(/exp()(

0322020

020

2020

ここで、1次 Zeeman分裂は元の準位に対して重心を変化させないので、

の項も無視できる30 ,0/ HkTHEEHEi

Iii

i

Ii ∑∑ ==

従って、

∑∑

−−+=

ii

ii

Ii

IIiiA

M kTE

kTEkTHEHEENE

)/exp(

)/exp()/( 02220

磁化率は より、 H

EH ∂

∂1−=χ

∑∑

−−=

ii

ii

IIi

IiA

A kTE

kTEEkTEN

)/exp(

)/exp()2/(

0

02

χ

15/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 16 -

1次の Zeemanエネルギー項 BJ

IM gME

Jµ=

2次のZeeman項については、相互作用する状態が複数あるとき(ただし、∆MJ=1) Ei

IIを

λµ

21, )1(12)1)(1)()(2(

++−+++−++−+++

−== ∑−=

+ JSLJSLJSLJSLJ

EF BJ

JM

IIMJJ

J

J ただし、λはスピン軌道カップリングパラメータ、λL・S で置き換える 磁気モーメント演算子

Bzzz µ)2( SLµ += Zeeman分裂エネルギー項は次のとおり

[ ] jiEEE

E

jij

BjzziII

i

BizziI

i

≠−+=

+=

∑ ),/(|2|

|2|002

µψψ

µψψ

SL

SL 使い方の例 ML=3、MS=1に対する波動関数については、

5231||123||3

1,3|2|1,3

,|2|,

|2|

=+=

+=

+=

+=

+=

zz

zz

SLzzSL

BizziI

i

MMMM

E

SL

SL

SL

SL µψψ

etcSSSz

LLLz

MMMS

MMM

=

=L

2(J+1)個の準位

分裂の重心は不変

多重項の1成分

磁場無し 磁場印加

1次 Zeeman 効果 2 次 Zeeman 効果

J

(J-1)

0

-(J-1)

-J

磁場による多重項の分裂(Zeeman分裂) 右図

16/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 17 -

7.自由イオンの磁性 1次 Zeeman効果 多重項幅がkTに比べて大きい自由イオンの場合、基底状態だけを考えて(この状態をエネルギーの基準にする、Ei

0=0)またこの項には(2J+1)この準位があると、

り、1 次Zeeman効果のみとす

( )

)1(3

12

)(0)1(

)/exp(

)/exp()2/(

22

22222

0

J=2

無摂動 磁場

MJ=2

MJ=1

MJ=0

MJ=-1

MJ=-2

2gμBH

gμBH

0

-g μ

-2gμBH

2 −∑N III

+=

+

−++++−+=

−=

JJkT

gNJ

JJJkTgN

kTE

kTEEkTE

BA

BA

ii

iiiiA

A

µ

µ

χ

KK

Langevinの式と一致。希土類イオンについてよく当てはまる Lande因子gJは、

)1(2)1()1(

23

++−+

+=JJ

LLSSg J 軌道角運動量がない系(L=0)では、J=Sでかつ、gJ =2 となる このとき、

BSS µµ )1(2 += 3d 遷移金属イオンでは当てはまるケースがあるが、そうでない場合も多い。これは、スピン軌道カップリング(λL・S)や 2次 Zeeman効果がきいてくるためである。 2次 Zeeman効果 基底状態の電子分布が磁場によって歪められることに相当する効果 励起状態の性質が基底状態に少し混じりあう � 基底状態のエネルギーを下げる J=0が基底状態、J=1がこれよりも上にある(kTに比べて非常に大きい)場合がこのケースに相当し、磁化率に寄与するのは 2次 Zeeman効果だけになる。この効果は温度に依存しない。 例 Eu3+(f6)

基底状態7F0、励起状態7F1(基底状態から 200~300cm-1高いところにある)

(300Kは 210 cm-1に相当する)

17/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 18 -

基底状態からほぼ kT上に他の励起状態がある場合 1 次 Zeeman 効果が状態の温度分布に従って寄与するとともに、隣接状態間の 2 次 Zeeman効果も磁化率に寄与する 例 Sm3+(f 5) 基底状態6H5/2 � 1次Zeeman効果

励起状態6H7/2(基底状態から 200~300cm-1) � 2次Zeeman効果 L=5、S=5/2、J=15/2、13/2、・・・、5/2(6個)

)/exp()12(

)/exp(]223/)12)(1([

0||

|~|

01,1,

||

|~|

22

kTEJ

kTEFFkTJJJgN

J

SL

SLJ

JJJJJ

SL

SLJJBA

A

−+

−+−++=

∑+

−+

+

µχ

J=5/2

g =0.286

J=7/2

7λ/2

(-120/49)μB2H2/λ

(-728/243+120/49)μB2H2/λ

J=9/2 Sm3+、L=5、S=5/2、λ=236cm-1

g =0.825

K

K

+⎟⎟⎟⎟

⎜⎜⎜⎜

−×+⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−×

+⎟⎟⎟⎟

⎜⎜⎜⎜

−⎥⎦⎤

⎢⎣⎡ ×

−+

−×−×××+

−×−×××

×=

kTkT

kTkTkT

kTN BA

A

λ

λ

λλµ

χ

27

exp80exp6

27

exp)49120

243728(28

28

27825.0

4912026

27

25286.0

3

22

2

J=7/2の 1次と 2次 Zeeman効果J=5/2の 1次と 2次 Zeeman効果 ただし、 (Landeの間隔則、E5/2

0をゼロとした) [ ]2

=E λ)1()1(10 +−−−+ SLSLJJJ

励起状態が kT上に比べて非常に小さいところにある場合 Ei

0またはEJが全てゼロと見なせる系になる [ ]

B

BAA

SSLL

SSLLkT

N

µµ

µχ

)1(4)1(

)1(4)1(3

2

+++=

+++=∴5.場合と全く同じ結果が得られる

18/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 19 -

6.配位子場による軌道角運動量の消失 自由イオンでは、 dxz軌道、z軸の周りのπ/2回転 � dyz軌道 dxy軌道、z軸の周りのπ/2回転 � dx2-y2軌道 八面体結晶場では、 dxy軌道とdx2-y2軌道はもはや縮退していない � 2つの間には軌道運動量は生じない dxz軌道とdyz軌道はまだ縮退している � 2つの間には軌道運動量は残りそう 結論的には、 (1)A項と E項では軌道運動量は消失する Oh:A1g、A2g、Eg; Td:A1、A2、E 2)T項では軌道運動量は残る Oh:T1g、T2g; Td:T1、T2

波動関数(波動関数を|L>で表現)を用いた厳密な証明 A1gの波動関数、 0 A2gの波動関数、 Egの波動関数、 軌道角運動量の z成分に関する行列要素 以下Egについても同様にゼロになる T項として3T1gについては、 3T1gの波動関数、

22(2/1 −+−222(2,0 2/1 −+−

0))2(222(2||222||22

2)2(||2)2(2)2(||2)2(||

00||0||

1111

2/12/12/12/122

11

=−×+×=−−+=

−−+=

==

−−−−

−−−−

hzz

zzAzA

zAzA

gg

gg

LL

LLL

LL

ψψ

ψψ

13315( 2/12/1 −−−24

h

h

23

)))1()3(240)3(1524231524(

1))3(24(||1))3(24(

1))3(24((||3)1524(2

3)1524(||3)1524(||

212/111

2/12/1

2/12/12/1

2/12/12/12/111

=

−×−×+×−×××+××=

−−×−−×+

−−××+

××=

−−−

−−

−−

−−

z

z

zTzT gg

L

L

LL ψψ

19/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 20 -

群論を用いると 演算子L(=Lx+Ly+Lz)はOh点群ではT1gに属する。 直積A1gxT1gxA1g=(A1gxT1g)xA1g=T1gxA1g=T1g

0||11

=gg AA L ΨΨ A1gが含まれていないので

直積T1gxT1gxT1g=(T1gxT1g)xT1g=(A1g+Eg+T1g+T2g)xT1g= T1g+

A1g+ A2g+Eg+ A1g+Eg+T1g+T2g+ A2g+Eg+T1g+T2g+

=2A1g+2A2g+2Eg+3T1g+2T2g

0||11

≠gg TT L ΨΨ T1gが含まれているので

Oh E 8C3 6C2 6C4 3C2 i 6S4 8S6 3σh 6σd

A1g 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

A2g 1 1 -1 -1 1 1 -1 1 1 -1

Eg 2 -1 0 0 2 2 0 -1 2 0

T1g 3 0 -1 1 -1 3 1 0 -1 -1

T2g 3 0 1 -1 -1 3 -1 0 -1 1

A1u 1 1 1 1 1 -1 -1 -1 -1 -1

A2u 1 1 -1 -1 1 -1 1 -1 -1 1

Eu 2 -1 0 0 2 -2 0 1 -2 0

T1u 3 0 -1 1 -1 -3 -1 0 1 1

T2u 3 0 1 -1 -1 -3 1 0 1 -1

A1gxT1gxA1g 3 0 -1 1 -1 3 1 0 -1 -1

T1gxT1gxT1g 27 0 -1 1 -1 27 1 0 -1 -1

20/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 21 -

9.A項と E項の磁性

磁気モーメントは、基底項に軌道角運動量がないときはスピン単独の値と一致するはずであ

るが、実際には著しく異なっている 理由: (1)スピン軌道カップリングが存在するときの配位子による軌道運動量消失効果が不完全 励起項にスピン多重度の同じ T項があるとスピン軌道カップリングを通じて混じり合う (2)2次 Zeeman効果によるもの (1)について考えてみる 例 F項

3F

3T1g

3A2g

3T2g

基底項A2g: 22(2 2/1 −+−

励起項T2g: 22(2 2/1 −−−

スピン軌道カップリング演算子 )( yyxxzz SLSLSLSL ++=• λλ A2gとT2gの交じり合い

02))2()2(0)2(0222(

2)2(||2)2(

2)2(||2)2(

2)2(||2)2(

2)2(||2)2(||

1111

2/12/1

2/12/1

2/12/1

2/12/122

≠=−×−+×−+×+×=

−−−+

−−+

−+

=

−−−−

−−

−−

−−

−−

h

h

z

z

z

zAzT gg

L

L

L

LL ψψ 基底項A2gと励起項T2gが混合した波動関数

DqMATMMc

cc

SggSzS

A g

10/2)/(||2

)22(2()22(2()1(

22

2/12/12//122

λλ

ψ

==

−−−−++= −−

KS c2は 1よりずっと小さい

):(10/)222(||22

hunitDqMMM sSAzSA ggλψψ ××−=L

従って g因子は、 )10/41(00.2 Dqg λ−=

スピンを含む形で考えてみる(3A2g:Ms= -S,…,S= -1,0.1)

):()10/41(210/8210/)1(82)1(

||1|2|1

1,|2|1,,|2|,

22

2222

hm unitDqDqDq

MM

MMMMMM

SAzSAz

SAzzSASSAzzSSA

gg

gggg

λλλ

ψψ

ψψψψ

−±=±=±−±=

+±±=

±+±=+

LS

SLSL

21/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 22 -

従って、1次 Zeeman効果に起因する磁気モーメントは A2g項の結論

onlyspinDq

SSDq

µλ

µλµ

)10/41(

)1()10/41(

−=

+−= B

)10/41(00.2 Dqg λ−= また磁化率は

{ }

)10/81(

))10/4(10/81(

)1()10/41(33

2

22

Dq

DqDq

SSDqkT

NkT

N

onlyspinA

onlyspinA

AAA

λχ

λλχ

µλµχ

−≅

+−=

+−== B 同様にして A1g項(励起項中に同じ多重度のものはない)

onlyspinµµ = Eg項

)10/21(00.2 Dqg λ−= onlyspinDq µλµ )10/21( −= )10/41( Dqonlyspin

AA λχχ −≅ (2)の 2次 Zeeman効果に起因する場合 再びA2gとT2gの交じり合いを考える

h2||22

=gg AzT ψψ L

これら 2つの項を磁気モーメント演算子で作用させると、

BTBzzA ggµψµψ 2|)2(|

22=+ SL

基底状態A2gの 2次Zeeman効果係数は、

DqS

TASE

B

ggB

S

S

IIA g

10/)12(4

)/()12()2(

2

222

2

µ

µ

+=

+=∑−

K A 項と E 項を基底項とする錯体の磁性は

のタイプの I..T.P 項を含む形になる

αχ AM NTC+=

この式を Van Vleckの式に入れると、

DqN BAPTI

M 10/8 2.. µχ = 同様にして他の基底項について

0.. =PTIMχ d5の6A1g項(及びd0、d10の1A1g項)

d6 (t2g6)の1A1g項 DqN BA

PTIM 10/8 2.. µχ =

DqN BAPTI

M 10/8 2.. µχ = A2g項 DqN BA

PTIM 10/4 2.. µχ = Eg項

22/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 23 -

スピン-軌道カップリング定数λ 各電子のスピン-軌道カップリング定数を ζ(ζは電子配置から決まる定数であって、項の性質ではない)とすると、

S2ςλ ±=

ζは常に正で、 符号+は電子の数が半分より小さい場合 符号-は電子の数が半分より大きい場合

自由イオン(第一遷移金属イオン)の ζの値

配位子場 弱い正八面体場 強い正八面体場 弱い正四面体場

イオン ζ d 電子数 基底項 λ 基底項 λ 基底項 λ

Ti3+ 155 1 2T2g +155 2T2g +155 2E +155

V3+ 210 2 3T1g +105 3T1g +105 3A2 +105

V2+ 170 3 4A2g +57 4A2g +57 4T1 +57

Cr3+ 275 3 4A2g +92 4A2g +92 4T1 +92

Cr2+ 230 4 5Eg +58 3T1g -115 5T2 +58

Mn3+ 355 4 5Eg +89 3T1g -178 5T2 +89

Mn2+ 300 5 6A1g - 2T2g -300 6A1 -

Fe3+ 460 5 6A1g - 2T2g -460 6A1 -

Fe2+ 400 6 5T2g -100 1A1g - 5E -100

Co3+ 580 6 5T2g -145 1A1g - 5E -145

Co2+ 515 7 4T1g -172 2Eg -515 4A2 -172

Ni3+ 715 7 4T1g -238 3A2g -715 4A2 -238

Ni2+ 630 8 3A2g -315 2Eg -315 3T1 -315

Cu2+ 830 9 2Eg -820 2Eg -830 2T2 -820

23/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 24 -

10.T項の磁性

一般論を展開するのはかなりややこしいので、ここではOh対称場におけるd1配置の場合につ

いて考えてみる

2D

(10) (2)

J =1/2

2Eg (4)

2T2g (6) (4)

J =3/2

(1)

(1)

(4)

(2)

(2)

(1)

(1)

自由イオン 配位子場 LS 1 次 Zeeman 2 次 Zeeman ( )内は多重度

Ei0 Ei

I EiII

+λ +μBH +(4/3)μB2H2/λ

+λ -μBH +(4/3)μB2H2/λ

-λ/2 0 0 -λ/2 0 -(4/3)μB

2H2/λ

与えられたそれぞれの エネルギー値を Van Vleckの 磁化率の式に入れる

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛++⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛−

⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡⎟⎠⎞

⎜⎝⎛+⎟

⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛+++⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛−⎟

⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

=

kTkT

kTkTkTN BBB

A

A

2exp4exp2

2exp

38

020exp3

82

222

λλ

λλµλ

λµµ

χ

ここで x=λ/kT とおき、分母分子に(1/2)exp(-x/2)を掛けると、

⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢

+⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−

+⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛ −

=

+⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−

⎥⎥⎦

⎢⎢⎣

⎡+⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛−⎟

⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−

=

22

3exp

82

3exp83

3

22

3exp

38

23exp

38

2

222

xx

xx

kTN

x

xkT

N

BA

BBBA

A

µ

λµ

λµµ

χ 従って、

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−+

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−−+

=

+⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−

+⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛ −

=

23exp2

23exp)83(8

22

3exp

82

3exp832

xx

xx

xx

xxµ

24/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 25 -

他の基底項 Tを持つ場合 電子配置 λ 基底項 2µ

弱い配位子場

d1 oct d9 tet ξ

ξ−+

2T2

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−+

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−−+

23exp2

23exp)83(8

xx

xx

d2 oct d8 tet

2

ξ

+ 3T1( ) ( )

( ) ( )AxAx

AxAx

AAxAx

AAAx

AA

3exp2exp35

3exp3

)2(42exp2

)2(2

)2(6

)2(52

)2(5322222

−+−+

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡−⎟⎟

⎞⎜⎜⎝

⎛ +−−⎟⎟

⎞⎜⎜⎝

⎛ ++

−+

++

d6 oct d4 tet

4

ξ

+

− 5T2( ) ( )

( ) ( )xx

xx

xxx

5exp33exp57

5exp227

2493exp

625

245

328283

−+−+

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡−⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛ +−−⎟

⎠⎞

⎜⎝⎛ +++

d7 oct d3 tet 3

ξ

+

4T1 ( )

( )AxAx

AxAx

AA

AxAx

AAAx

AA

4exp2

5exp23

4exp27

)2(209

)5(

25exp

675)2(176

45)211(2

25)2(12

5)3(7

322

2222

−+⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−+

⎥⎥⎥⎥⎥

⎢⎢⎢⎢⎢

−⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛ ++

++

⎟⎠⎞

⎜⎝⎛−⎟⎟

⎞⎜⎜⎝

⎛ ++

−+

++

強い配位子場 d1 oct d5 oct ξ

ξ−+

2T2 弱い配位子場のd1と同じ

d2 oct d4 oct

2

ξ

+ 3T1( ) ( )[ ]

( ) ( )[ ]xxxxxxx

3exp2exp3523exp242exp)9(1553

−+−+−−−+++

Aの値は 1.5(極端な弱配位子場)と 1.0(極端な強配位子場)の間の値 x=λ/kT

Aについては、基底項3T1(F)を励起項3T1(P)と交じり合うとして、 [ ])()()1()( 3332 PcFcF

igigig TTTψψψ ++=

ただし、c=(6Dq+E)/4Dq とすると、

):()1/()5.1()()( 2233 hunitAccFF

igig TzT=+−=ψψ L

このとき Lande因子は、

[ ])1(2

2)1()2(211

+−++

+−=JJSSAAg

となる

25/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 26 -

分子内磁気的相互作用 イオンの軌道磁気モーメントを無視すると、 jiJE SS2−=∆

Jは交換相互作用定数 J>0のとき、最低エネルギー状態はスピン平行 J>0のとき、最低エネルギー状態はスピン反平行 分子内反強磁性 おのおののイオンが量子数 Sのスピン角運動量をもち、分子全体で量子数 S’をもつ 2核錯体の場合、 S’=S1+S2で、そのエネルギーは、 E(S’)=-2JS1・S2

ここで、(S1+S2)2=S12+S2

2+2S1S2であるから、 -2JS1・S2=-J(S’2-S1

2-S22)=-J{S’(S’+1)-2S(S+1)}

最後の項はエネルギーの原点を変えるだけなので、これを除いて、 E(S’)=-J{S’(S’+1)} 多核錯体の場合にも 従って、同様に

∑>

−=Eji

jiJS SS2)'(

E(S’)=-J{S’(S’+1)} 準位間の分裂(2核錯体の場合)

S’ 多重度=2S’+1 エネルギー Ei

0=-J{S’(S’+1)} ――――― 2S 4S+1 -J{2S (2S+1)} ――――― 2 5 -6J ――――― 1 3 -2J ――――― 0 1 0

Van Vleckの式を適用すると、 1次の Zeeman効果より、

∑∑

−−=

ii

ii

IIi

IiA

A kTE

kTEEkTEN

)/exp(

)/exp()2/(

0

02

χ

[ ]3

)1'2)(1'(')'(0)1'()'(22

222222 ++

=−++++−+=SSS

kTgSSS

kTg

kTE BB

Ii µµ

KK

26/28 佐藤研究室錯体の磁性

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錯体の磁性 - 27 -

2次のZeeman効果をNαの項に含めて、

αµ

χ N

kTE

S

kTE

SSS

kTgN

i

i

i

iBAM +

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−+

⎟⎟⎠

⎞⎜⎜⎝

⎛−++

=

∑0

0

22

exp)1'2(

exp)1'2)(1'('

3 S=1/2の 2核錯体の場合、S’=0,1で対応するエネルギー、0、-2Jをもつ E0

0を基準(ゼロ)として、

( )

αµχ

χ

αµ

αµ

αµ

χ

NxkT

gN

NxkT

gNNx

xkT

gN

N

kTJ

kTJ

kTgN

BAMA

BABA

BAM

+⎥⎦⎤

⎢⎣⎡

+==

+⎥⎦⎤

⎢⎣⎡

+=+⎥

⎤⎢⎣

⎡+

=

+⎟⎠⎞

⎜⎝⎛+⋅

⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡⎟⎠⎞

⎜⎝⎛⋅⋅⋅+

=

2

22

2

22

2

222

22

33

32

36

3316

3

2exp30exp1

2exp3210

3

ただし、x=exp(-J/kT) その他の Sの場合、

S=1/2 α

µχ N

xkTgN BA

A +⎥⎦⎤

⎢⎣⎡

+= 2

22

33

3

S=1 α

µχ N

xxx

kTgN BA

A +⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡++

+= 64

422

35315

3

S=3/2 α

µχ N

xxxxx

kTgN BA

A +⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡+++

++= 12106

10622

35731542

3

S=2 α

µχ N

xxxxxxx

kTgN BA

A +⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡++++

+++= 2018148

1814822

35793154290

3

S=5/2 α

µχ N

xxxxxxxxx

kTgN BA

A +⎥⎦

⎤⎢⎣

⎡+++++

++++= 3028241810

2824181022

3579113154290165

3

具体的例 CuCr(CH3COO)4

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錯体の磁性 - 28 -

参考書 1.配位子場理論-無機化合物への応用-、B.N.Figgis 著、山田祥一郎 訳、南江堂、1969 2.磁気化学入門、A.Earnshaw著、井口洋夫他 訳、培風館、1970 3.配位子場理論とその応用、上村洸、菅野曉、田辺行人著、裳華房、1990

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