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薬剤抵抗性が疑われる事例と その対応に関する全国状況 【日本植物防疫協会シンポジウム】 「薬剤抵抗性対策の新たなる展開」 [講演資料] 平成29年1月12日(木) 日本教育会館 一ツ橋ホール (東京都千代田区一ツ橋) 消費・安全局 植物防疫課 平成29年1月 本日お話すること 薬剤抵抗性病害虫管理に関する課題、 これまでの取組 各都道府県における薬剤感受性病害虫 対策 -薬剤感受性検定の実施状況 -薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況 -各都道府県の対策 現在進められているプロジェクト研究 今後の方策等

薬剤抵抗性が疑われる事例と その対応に関する全国 …...薬剤抵抗性が疑われる事例と その対応に関する全国状況 【日本植物防疫協会シンポジウム】

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薬剤抵抗性が疑われる事例とその対応に関する全国状況

【日本植物防疫協会シンポジウム】

「薬剤抵抗性対策の新たなる展開」 [講演資料]平成29年1月12日(木) 日本教育会館 一ツ橋ホール

(東京都千代田区一ツ橋)

消費・安全局 植物防疫課

平 成 2 9 年 1 月

本日お話すること

薬剤抵抗性病害虫管理に関する課題、これまでの取組

各都道府県における薬剤感受性病害虫対策

-薬剤感受性検定の実施状況

-薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況

-各都道府県の対策

現在進められているプロジェクト研究

今後の方策等1

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○ 今後も、薬剤抵抗性病害虫等への対応は不可避○ 新規薬剤の開発にも限界がある中で、既存薬剤を継続的に使用するためには、

薬剤抵抗性病害虫対策に関する組織的な対応が必要(関係者間の連携)○ 薬剤抵抗性病害虫等に関する情報収集とその共有、IPMの取組み等による技術的

対応も引き続き重要。併せて、農薬の適正使用について継続的な指導を行う必要性あり。

○ 化学合成農薬の使用は病害虫・雑草防除の根幹である一方、薬剤抵抗性の発達は、農薬使用とは切り離せない課題であり、その管理が重要

○ 各都道府県では、どのような病害虫に対して抵抗性が発生しているかを検定し、抵抗性の発達が確認されれば、技術情報の発出や防除基準への反映とともに、同一系統薬剤の連続使用を避けた農薬散布(ローテーション散布)や使用制限等の対応

Ⅰ 薬剤抵抗性対策の取組みの経緯について

○ 栽培体系の多様化、防除体系の画一化に伴う薬剤抵抗性病害虫の広域化、多様化○ ウイルス等の媒介虫を含む難防除害虫等への対応で、防除回数増による薬剤抵抗性

発生のスピード化○ 薬剤抵抗性の発生に伴い、防除指導上、農薬の使用方法等の見直しを随時実施。

Ⅲ 薬剤抵抗性対策の今後について

Ⅱ 薬剤抵抗性対策の現状について

薬剤抵抗性対策について(総論)

・ ミナミキイロアザミウマは、1978年宮崎県で初確認。その後、本州、四国、九州、沖縄に分布拡大。

・ 本虫はメロン黄化えそウイルスを伝搬。キュウリでは、果実にモザイク症状や奇形等、メロンではネット形成が異常化。近年、薬剤抵抗性個体群が発生し、難防除害虫化。

・ 本虫の発生当初、既存の各種系統化合物の有効性を検証し、農薬登録拡大。薬剤抵抗性が確認されれば、随時、効果の高い剤を上市するために、新規化合物の探索等により、有効な登録薬剤の確保を継続的に実施。

・ しかし、有効な登録役剤の連続使用により、多くの剤への薬剤抵抗性が発生し、十分な防除効果を有する農薬は限られている。農業現場では、有効剤の探索・開発を待つ状況にはないため、総合的な防除方法を活用した防除の実施が必要。

(参考)薬剤抵抗性ミナミキイロアザミウマの発生と対応状況

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薬剤抵抗性病害虫管理に関する課題、これまでの取組

各都道府県における薬剤感受性病害虫対策

-薬剤感受性検定の実施状況

-薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況

-各都道府県の対策

現在進められているプロジェクト研究

今後の方策等

情報提供の取組:シンポジウム、検討会等(平成22年以降~)

薬剤抵抗性対策に関する取組みについて

・「難防除病害虫対策技術検討会(アザミウマ類)」 (平成22年3月)

・「ぶどうべと病防除対策検討会」 (平成23年9月)

・「薬剤抵抗性病害虫対策検討会」 (平成24年3月)

・「薬剤抵抗性水稲病害虫対策検討会」 (平成25年2月)

・「畑作物薬剤抵抗性病害虫の防除に関する検討会」(平成26年1月)

・「平成26年度北陸農政局薬剤耐性菌対策研修会」(平成26年11月)

・「植物防疫地区別協議会」全国共通議題 (毎年、適宜実施)

・「薬剤抵抗性を考える」

(平成22年1月)

・「薬剤抵抗性対策の課題と対応」

(平成24年9月)

・「薬剤抵抗性対策の新たな展開」

(平成29年1月)

植物防疫課、地方農政局主催 日本植物防疫協会主催

・「イネウンカ類の殺虫剤抵抗性と媒介ウイルス病に関する 新研究」

(主催:農研機構九州沖縄農業研究センター、NARO 国際シンポジウム2012)

・「ポストゲノム時代の害虫防除研究のあり方-殺虫剤抵抗性問題の 前線-」(主催:農業生物資源研究所)

・「殺菌剤耐性菌研究会シンポジウム」(主催:日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会、毎年度定例1回開催 )

その他(研究機関、団体)

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薬剤抵抗性対策の課題

• 薬剤感受性検定結果について、情報共有体制は重要との認識(全国47都道府県より、「薬剤感受性検定結果に関する情報共有の必要性あり」と回答;平成27年8月 植物防疫課調べ)

• 薬剤ごとの検定方法、検定結果に対する評価方法(検定マニュアル)

• 諸外国における薬剤抵抗性個体の発生状況(特に飛来性害虫)

• 各都道府県における薬剤感受性検定試験データ

• 薬剤抵抗性病害虫に対する代替防除技術

• モニタリングが理想的だが、都道府県の病害虫防除所職員での対応に限界あり(人員不足)

• 対象とする病害虫・薬剤の選定、検定結果や防除指導資料等について情報共有が必要(検定に関するノウハウ不足)

• 限られた登録農薬で薬剤抵抗性が発達した場合、実用的な防除技術の開発・導入が必要

• 薬剤感受性検定結果に基づく防除指導の事例と効果について

・・・各都道府県から薬剤抵抗性対策に求める声・ニーズは多い 4

○ 植物防疫法に基づき、農林水産省は発生予察事業を実施するとともに、各都道府県は、病害虫防除所を設置し、国の発生予察事業への協力、各都道府県自らが行う発生予察事業等を実施。

○ 発生予察事業は、国内における分布が局地的でなく、かつ、急激にまん延して農作物に重大な損害を与える傾向がある有害動物又は有害植物(指定有害動植物)について、その発生を予測して農業生産者を含めた関係者に情報提供。(国が行う発生予察事業の対象となる指定有害動植物は、 新の発生動向等を踏まえて農林水産大臣が指定。)

○ 病害虫防除所は、発生予察事業の他、市町村、農業者等が行う防除に対する指導などを実施。

① 病害虫は季節や年による発生幅が大きいためスケジュールどおりの防除は困難

② 発生してからの防除では手遅れ

・ 病害虫の発生状況、気象、作物の生育状況等に関する調査を実施し、

・ 調査結果を解析して病害虫のその後の発生を予測し、これに基づく情報を関係者に提供

発生予察事業

農林水産大臣

都道府県知事

【病害虫防除所が行う事務】① 植物の検疫に関する事務② 防除についての企画に関する事務③ 市町村、農業者等が行う防除に対する指導及び

協力④ 発生予察事業に関する事務⑤ 防除に必要な薬剤及び器具の保管等⑥ その他防除に関し必要な事務

病害虫防除所

設置

協力・勧告

病害虫の発生に関する予測が必要

○ 発生予察事業について ○ 病害虫防除所の設置について

発生予察事業

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薬剤感受性検定等の流れ

農業者が薬剤の防除効果を確認適切な薬剤選定・防除

発生状況調査(都道府県)

主要農作物・病害虫、使用実績の多い農薬、産地等

からの情報提供等に基づき、薬剤感受性検定を実施

する対象を決定。適宜、検定を実施。

全国の検定実施状況、調査結果や、薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況等を取りまとめて関係者間で情報共有

防除指導(都道府県)

検定結果に基づき、農業

者、関係機関等に対し、適

切な防除指導を実施

周辺県での薬剤抵抗性病

害虫の発生状況の把握

調査結果等を取りまとめて分析

必要に応じて発生予察情報、技術情報を作成

防除方法と併せて、関係機関、農業者等に対

して情報提供

都道府県

国(農林水産省)

薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生

情報の作成・提供

防除の実践(農業者)

(参考)薬剤感受性検定結果の報告

◎農作物有害動植物防除実施要綱の制定について昭和47年3月31日 47農政第1233号 農林水産事務次官依命通知

終改正 平成19年9月26日 19生産第3906号

第5 防除実施等に関する報告(1)[略](2)都道府県知事は、農林水産省消費・安全局長が別に定めるところにより、

毎年度、当該都道府県の区域内における有害動物又は有害植物の発生状況及び防除の実施状況等を農林水産大臣に報告するものとする。

◎農作物有害動植物防除実施要綱の運用について昭和47年3月31日 47農政第1602号

終改正 平成19年9月26日 19生産第3905号

5 都道府県の指導及び協力都道府県知事は、要綱第6の(2)により必要な措置を講ずるに当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。(1)、(2) 略(3) 防除の効率的かつ適切な実施を図るため、総合防除技術及び新防除技術の導入を促進するとともに病害虫防除所に有害動物又は有害植物の農薬抵抗性の検定、その他の調査を行わせるようにすること。

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(参考)薬剤感受性検定結果の報告

◎検定実施状況の報告様式(別記様式第2号)

年度 事業名 内容

昭和46(1971)~50(1975)年度(6か年計画)

病害虫防除所費(農薬抵抗性検定費)(1/2補助)

・病害虫防除所において害虫の農薬抵抗性検定を行う。

昭和55(1980)~56(1981)年度

病害虫発生予察事業(農薬耐性菌検定事業)(1/2補助)

・病害虫防除所において農薬耐性菌の検定を行う。・害虫の農薬抵抗性検定については、病害虫防除所の

運営経費において対応。

昭和57(1982)~平成6(1994)年度

病害虫診断技術調査等特別事業(農薬耐性菌検定事業)(1/2補助)

・病害虫防除所において農薬耐性菌の検定を行う。・害虫の農薬抵抗性検定については、病害虫防除所の

運営経費において対応。

平成7(1995)年~10(1998)年度

発生予察技術支援対策事業(診断対策)(1/2補助)

・都道府県において、より効果的、効率的な薬剤防除を推進するため、農薬耐性菌検定、薬剤抵抗性害虫検定、ウイルス病診断等を実施。

平成11(1999)~16(2004)年度

「発生予察効率化推進事業」等(病害虫の診断及び生態調査)(1/2補助)

・都道府県において、「新規発生及び薬剤抵抗性等

により問題となっている病害虫」を迅速に診断・同定し、当面の防除対策及び発生予察調査基準を策定するために必要な寄主範囲及び発生生態等を把握。

平成17(2005)~・消費・安全対策交付金

(旧:食の安全・安心確保交付金)(1/2補助)・植物防疫事業交付金(定額)

・IPMの取組を行う中で薬剤抵抗性の診断も実施可能

・指定有害動植物に係る薬剤感受性検定は植物防疫事業交付金も活用可能

都道府県病害虫防除所における農薬抵抗性検定

40年前から検定事業を実施

(農林水産省は、昭和46年度から都道府県病害虫防除所の経費として農薬抵抗性検定費を計上)

(注)昭和51~54年度は、資料未確認のため状況は不明。

薬剤抵抗性対策の経緯について

10

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はじめに-農業をめぐる諸情勢-

[略]・・・。わが国で初めてオンシツコナジラミが確認された。

また、引き続き農薬抵抗性害虫、耐性菌の出現があり、防除には高度な

知識を有する技術者の指導を有することがいよいよ現実の問題となってき

つつある。」

【昭和49年度】植物防疫地区協議会資料より(農林省農蚕園芸局植物防疫課)

【昭和61年度】植物防疫地区協議会資料より(農林省農蚕園芸局植物防疫課)

薬剤抵抗性病害虫の発生状況について

○薬剤抵抗性病害虫に関する記載状況(過去の会議資料より)

Ⅱ 昭和61年度植物防疫事業の実施状況と昭和62年度事業の進め方

「一方、近年農作物の品種、作期、栽培方法等の変化及び農業生産環境の変化にともなって病害虫の発生様相が変化し、また薬剤抵抗性害虫、薬剤耐性菌の出現による防除効果の低下、土壌病害虫、ウイルス病及び新発生病害虫が問題となっている事例も見られる。」

11

委託事業による取り組み

○都道府県による薬剤抵抗性アブラムシ類に関する特殊調査事業(平成6年~9年度)

・ 果樹、野菜、花き等の重要害虫であるアブラムシ類は、1980年代からワタアブラムシ、モモアカアブラムシに対し有機リン剤、カーバメート剤が、1990年代には合成ピレスロイド剤の防除効果が低下し、薬剤抵抗性が問題化。

・ その後、抵抗性発達の機構解明が進み、抵抗性と寄主選好性との間に密接な関係があることが判明。的確な防除には、その地域の果樹、野菜等に寄生しているアブラムシ類の移動性の把握が必要。

・ このため発生予察技術の確立、改善を目的として実施している「病害虫発生予察特殊調査事業」により、調査実施。

ワタアブラムシは、色、大きさ、形などの変異が大きく、とらえどころのない害虫であり、写真でイメージを描いてもらうため掲載。

12

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【調査結果の概要】・ 薬剤抵抗性アブラムシとバイオタイプ(寄主選好性)

間には密接な関係。薬剤選択には、地域の果樹、野菜に寄生する両者アブラムシへの考慮が必要。

・ 薬剤抵抗性アブラムシの発生は地域的に不連続であり、作物別でも発生がまちまち。

・ 薬剤抵抗性アブラムシの移動、寄主選好性の調査で、特定地域での植物間の移動パターン予測が可能。

・ 防除薬剤の的確な選定、効果的防除が実施可能。・ 現状のワタアブラムシ、モモアカアブラムシの防除は、

イミダクロプリド剤やアセタミプリド剤の導入でほぼ解決。しかし今後、両剤に対する抵抗性アブラムシの出現も予測。

○都道府県による薬剤抵抗性アブラムシ類に関する特殊調査事業(平成6年~9年度)

13

薬剤抵抗性病害虫管理に関する課題、これまでの取組

各都道府県における薬剤感受性病害虫対策

-薬剤感受性検定の実施状況

-薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況

-各都道府県の対策

現在進められているプロジェクト研究

今後の方策等

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各都道府県における薬剤感受性検定の実施状況

• 各都道府県で薬剤感受性検定を実施する場合、どのような基準により「対象作物/病害虫・雑草/農薬」が選択されているのか?

検定対象の検討

各都道府県アンケート(有効回答数:47都道府県)(H28.11実施)

【作物】

• 県内や産地で主力となっている農作物、推進品目

• 他の都道府県で抵抗性発達事例が報告されているもの

【病害虫・雑草】

• 主力農作物の主要病害虫

• 効果の低下が疑われる病害虫(普及担当者、地域JA等からの情報提供、要望、聞き取り調査)

• 感受性低下が発達しやすい病害虫・雑草

【農薬】

• 現場で効果の低下が疑われる農薬

• 他県や研究報告で薬剤感受性の低下が報告されている農薬

• 広く普及している薬剤又は長期間使用している薬剤

• 薬剤耐性/抵抗性の発達リスクの高い薬剤(有効成分)

※緊急性等をふまえて、必要に応じて試験研究課題の設定等も検討

検定対象を決定

14

各都道府県における薬剤感受性検定の実施状況

平成22~26年度の検定実施内容(都道府県報告に基づく)

247

323390 453

437

148 161 173 176 138

395

484

564636 582

0

100

200

300

400

500

600

700

22年度 23年度 24年度 25年度 26年度

(件)

※平成24~26年度はウィルス検定の実施事例もあり

検定実施件数(農薬種類別)殺虫剤

殺菌剤

合計

29 27 2834 33

40 3842

53

48

0

10

20

30

40

50

60

22年度 23年度 24年度 25年度 26年度

(件)検定実施件数(品目、病害虫) 品目

病害虫

・検定実施件数は殺虫剤が全体の約7割・平成22年度以降、検定実施件数は大幅に増加(特に殺虫剤)

・検定が実施される病害虫種数は増加傾向・一方、品目種数は概ね横ばいで推移

15

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各都道府県における薬剤感受性検定の実施状況

平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度

水稲

トビイロウンカ

野菜・花き類

オオタバコガ

なす

ミナミキイロアザミウマ

かんきつ

ミカンハダニ

かんきつ

ミカンハダニ

2トマト

灰色かび病

ねぎ

ネギアザミウマ

トマト

灰色かび病

トマト

灰色かび病

野菜類

ハスモンヨトウ

3かんきつ

ミカンハダニ

かんきつ

ミカンハダニ

野菜類・花き類

ハスモンヨトウ

きゅうり

ミナミキロアザミウマ

きく

ミカンキイロアザミウマ

4いちご

うどんこ病

だいず

ハスモンヨトウ

かんきつ

ミカンハダニ

ねぎ

ネギアザミウマ

トマト

灰色かび病

5なす

ミナミキイロアザミウマ

トマト

灰色かび病

いちご

灰色かび病

水稲

トビイロウンカ

いちご

ハダニ類

検定実施上位5件について

・トマト/灰色かび病、かんきつ/ミカンハダニは、毎年実施件数が多い・野菜類等のハスモンヨトウの他、アザミウマ類も実施件数が多い 16

各都道府県における薬剤感受性検定の実施状況

平成26年度

1野菜類

ハスモンヨトウ

2かんきつ

ミカンハダニ

3トマト

灰色かび病

4いちご

ハダニ類

5いちご

灰色かび病

検定実施上位5件 H22 H23 H24 H25 H26 合計

いちご 53 73 37 67 87 317

水稲 63 59 51 66 72 311

トマト 22 28 69 54 52 225

かんきつ 21 23 47 66 59 216

きゅうり 19 33 35 89 28 204

なす 35 25 61 47 35 203

以下、きく、なし、ねぎ、茶、だいず等

H22 H23 H24 H25 H26 合計

灰色かび病菌 59 72 113 88 75 407

ミナミキイロアザミウマ 46 33 65 61 18 223

ハスモンヨトウ 29 29 29 26 51 164

ミカンハダニ 19 25 32 41 41 158

ナミハダニ 20 27 28 26 43 144

ミカンキイロアザミウマ 0 26 24 32 48 130

ネギアザミウマ 0 27 20 43 31 121

トビイロウンカ 25 18 17 25 20 105

以下、オオタバコガ、ヒラズハナアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ワタアブラムシ等

別17

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各都道府県における薬剤感受性検定の実施状況

H22 H23 H24 H25 H26 計耐性リスク

QoI殺菌剤(Qo阻害剤) 15 32 45 53 49 194 高

SDHI(コハク酸脱水素酵素阻害剤)

12 20 32 27 22 113 中~高

MBC殺菌剤(メチルベンゾイミダゾールカーバメート)

20 25 17 27 17 106 高

ジカルボキシイミド 13 12 17 12 13 67 中~高

AP殺菌剤(アニリノピリミジン)

9 11 13 12 8 53 中

PP殺菌剤(フェニルピロール)

5 8 14 11 12 50 低~中

・・・・・

H22 H23 H24 H25 H26 計ネオニコチノイド系 45 56 77 101 86 365アベルメクチン系/ミルベマイシン系

23 27 47 53 40 190

ピレスロイド系/ピレトリン系

25 29 31 32 44 161

有機リン系 19 20 34 30 24 127スピノシン系 7 20 30 34 31 122ピロール/

ジニトロフェノール/スルフルラミド

14 21 22 17 13 87

β-ケトニトリル誘導剤 14 13 17 20 22 86METI剤 9 10 17 25 21 82・・・・・

代表剤(商品名)

ダントツ、スタークル等

アファーム、アニキ等

(略)

(略)

スピノエース、ディアナ

コテツ

スターマイト、ダニサラバ

サンマイト、ハチハチ

代表剤(商品名)

アミスター、ストロビー等

カンタス、アフェット等

トップジンM等

ロブラール、スミレックス

フルピカ、ユニックス

セイビアー

18

※「耐性リスク」は農薬工業会HPに掲載されているFRACコード表を参照した

各都道府県における薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況

「薬剤抵抗性病害虫の発生状況等調査」で用いるフェーズ

• 植物防疫課では、全国的な薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況・関連情報について実態把握を行うため、平成23~25年に都道府県の協力を得て、「薬剤抵抗性病害虫の発生状況等調査」を実施

• その際、各都道府県における薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生度合い、生産者等への指導状況をふまえて、薬剤抵抗性の発達程度を表す指標(フェーズ)を用いて整理

【フェーズ0】感受性低下は認められていないものの、モニタリング調査等により薬剤抵抗性の発達を警戒している場合。

【フェーズⅠ】一部のほ場での現象にとどまっている状況。指導者には周知するが、農家への指導の必要性は低い。

【フェーズⅡ】ある程度の面積規模で薬剤抵抗性発生が見られており、農家への注意喚起を要する。(どの程度の広がりで注意喚起を行うべきかはケースバイケースであり、防除指導機関の判断による。)

【フェーズⅢ】県下で広域に広がり、対象薬剤の使用については何らかの指導が必要。 19

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平成23年度 平成24年度 平成25年度

フェーズ0 - 54 59

フェーズⅠ 29 62 79

フェーズⅡ 159 208 265

フェーズⅢ 158 195 218

不明等 13 6 12

計 359 525 633

平成23年度 平成24年度 平成25年度

病菌 148 243 294

害虫 189 258 315

雑草 22 24 24

計 359 525 633

「薬剤抵抗性病害虫の発生状況等調査」結果(平成23~25年度)

0

50

100

150

200

250

300

平成23年度 平成24年度 平成25年度

フェーズ0フェーズⅠフェーズⅡフェーズⅢ不明等

0

50

100

150

200

250

300

350

平成23年度 平成24年度 平成25年度

害虫

病菌

雑草

・調査年度を重ねるごとに、薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生事例報告が増加・25年度は、フェーズⅢとして「稲/いもち病」「野菜類等/灰色かび病、ミナミキイロアザミウマ」「いちご/炭疽病、ナミハダニ」等の報告が多かった 20

フェーズ0 フェーズⅠ フェーズⅡ フェーズⅢ 不明等 合計(参考)

H25年度

殺虫剤95 101 325 258 18 797 315

殺菌剤51 48 158 161 5 423 294

除草剤0 12 24 29 0 65 24

合計 146 161 507 448 23 1285 633(参考)

H25年度 59 79 265 218 12

「薬剤抵抗性病害虫の発生状況等調査」結果(平成28年度)

※都道府県からの報告を基に、「作物/病害虫・雑草/農薬(グループ)/フェーズ」別に1件とカウント(農薬のグループ:IRAC、FARC、HRACのコード分類別)

・平成23~25年度の調査結果では、一部整理方法が不十分な部分あり単純な比較ではないものの、農薬種別、各フェーズ別でも報告件数が大幅増加・フェーズⅢとして、殺虫剤は27道県、殺菌剤は35都道県、除草剤は8県から報告があった(トータルでは、殺虫剤43道府県、殺菌剤45都道府県、除草剤18県より報告) 21

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詳細な薬剤抵抗性病害虫等の発生状況 害虫フェーズⅢ フェーズⅡ フェーズⅠ フェーズ0

いちご

ナミハダニ

35

きゅうり

ミナミキイロアザミウマ

27

いちご

ナミハダニ

14

いちご

ナミハダニ

7

各種殺ダニ剤スピノシン系ネオニコチノイド系ピリダリル 等

各種殺ダニ剤ビフェナゼートアセキノシル 等

きゅうり

ミナミキイロアザミウマ

18

ねぎ

ネギアザミウマ

23

なし

ナミハダニ

10

かんきつ

チャノキイロアザミウマ

7

ネオニコチノイド系スピノシン系クロルフェナピル 等

カーバメート系ネオニコチノイド系合成ピレスロイド系有機リン系 等

各種殺ダニ剤

ネオニコチノイド系スピノシン系ジアミド系クロルフェナピル 等

なす

ミナミキイロアザミウマ

14

きく

ミカンキイロアザミウマ

18

キャベツ等のあ

ぶらな科野菜

コナガ

6

かんきつ

ミカンハダニ

7

ネオニコチノイド系スピノシン系クロルフェナピル 等

ネオニコチノイド系スピノシン系合成ピレスロイド系 等

ジアミド系クロルフェナピル

シエノピラフェンシフルメトフェンピフルブミドスピロメシフェン 等

水稲

ヒメトビウンカ

11

いちご

ナミハダニ

17

きゅうり

ミナミキイロアザミウマ

5

トマト

タバココナジラミ

7

ネオニコチノイド系フィプロニル合成ピレスロイド系 等

各種殺ダニ剤スピノシン系METI剤 等

ネオニコチノイド系ピリフルキナゾン 等

ピーマン

ミナミキイロアザミウマ

11

なす

ミナミキイロアザミウマ

15

トルコギキョウ

チャノキイロアザミウマ

5

いちご

イチゴケナガアブラムシ

6

ネオニコチノイド系スピノシン系クロルフェナピル 等

スピノシン系ネオニコチノイド系ピリダリル 等

ネオニコチノイド系ピリダリルピレスロイド系 等

ネオニコチノイド系有機リン系合成ピレスロイド系 等

きく

ナミハダニ

10

なし

ナミハダニ

13

トマト

タバココナジラミ

4

かんきつ

ミカンサビダニ

6

各種殺ダニ剤 各種殺ダニ剤ネオニコチノイド系METI剤合成ピレスロイド系

METI剤エトキサゾールクロルフェナピル 等

水稲

トビイロウンカ

10

水稲

イネドロオイムシ(イネクビホソハムシ)

10

ハイビスカス

モトジロアザミウマ

4

なし

ナミハダニ

6ネオニコチノイド系ブプロフェジン 等

ネオニコチノイド系フィプロニルカーバメート系

ネオニコチノイド系有機リン系合成ピレスロイド系

ミルベメクチンクロルフェナピルスピロメシフェン 等

※各フェーズごとに報告の多かった組合せ上位7件及び対象薬剤、報告件数 22

詳細な薬剤抵抗性病害虫等の発生状況 病害

※各フェーズごとに報告の多かった組合せ上位7件及び対象薬剤、報告件数

フェーズⅢ フェーズⅡ フェーズⅠ フェーズ0

水稲

いもち病

23

トマト

灰色かび病

23

トマト

灰色かび病

8

水稲

いもち病

13

QoI剤MBI-D剤

MBC殺菌剤ジエトフェンカルブQoI剤ジカルボキシイミド

QoI剤SDHI剤 等

QoI剤MBC殺菌剤

トマト

灰色かび病

22

きゅうり

褐斑病

14

いちご

灰色かび病

6

トマト

灰色かび病

8

MBC殺菌剤ジエトフェンカルブQoI剤ジカルボキシイミド

MBC殺菌剤QoI剤、SDHI剤ジカルボキシイミド 等

SDHI剤メパニピリムQoI剤 等

PP殺菌剤ジカルボキシイミドDMI殺菌剤 等

きゅうり

褐斑病

18

トマト

葉かび病

12

水稲

いもち病

5

なし

黒星病

8

MBC殺菌剤ジエトフェンカルブQoI剤、SDHI剤ジカルボキシイミド

QoI剤DMI殺菌剤 等

QoI剤MBI-D剤

QoI剤DMI殺菌剤

いちご

炭疽病

15

水稲

いもち病

8

かんきつ

灰色かび病

3

トマト

葉かび病

5

QoI剤MBC殺菌剤

QoI剤MBI-D剤

QoI剤QoI剤DMI殺菌剤SDHI剤

水稲

もみ枯細菌病

7

ぶどう

褐斑病

7

シクラメン

灰色かび病

3

麦類

赤かび病

3

オキソリニック酸カスガマイシン

QoI剤MBC殺菌剤SDHI剤

AP殺菌剤PP殺菌剤SDHI剤

チオファネートメチル

だいず

紫斑病

7

いちご

灰色かび病

6

きゅうり

褐斑病

2

だいず

紫斑病

2

チオファネートメチルジエトフェンカルブジカルボキシイミド等

MBC殺菌剤N-フェニルカーバメート

アゾキシストロビン

ぶどう

べと病

7

きゅうり

うどんこ病

6

きゅうり

灰色かび病

2

ぶどう

べと病

2QoI剤PA殺菌剤

QoI剤DMI殺菌剤

ジカルボキシイミドN-フェニルカーバメート

QoI剤

23

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詳細な薬剤抵抗性病害虫等の発生状況 雑草

※各フェーズごとに報告の多かった組合せ及び対象薬剤、報告件数

フェーズ別 作物 雑草名 薬剤の種類報告件数

フェーズⅢ 水稲

アゼナ類

スルホニルウレア系除草剤

8

コナギ 8

イヌホタルイ 5

ホタルイ 3

オモダカ 2

キクモ 1

ミゾハコベ 1

アゼトウガラシ 1

フェーズⅡ 水稲

アゼナ類

スルホニルウレア系除草剤

8

ホタルイ類 7

オモダカ 4

コナギ 4

ミゾハコベ 1

フェーズⅠ水稲

アゼナ類

スルホニルウレア系除草剤

3

イヌホタルイ 3

コナギ 3

ウリカワ 1

オモダカ 1

麦類 スズメノテッポウ トリフルラリン乳剤 1

24

薬剤抵抗性病害虫・雑草に対する問題意識

• 各都道府県で問題となっている薬剤抵抗性病害虫・雑草は何か。

①何が問題となっているのか?

各都道府県より、影響の大きい組合せ上位5件について聞き取った結果、計204件の回答が寄せられた。 各都道府県アンケート(有効回答数:45道府県)(H28.11実施)

害虫,

115

病害,

63

雑草,

26

水稲

24%

イチゴ

16%

きゅうり

7%カンキツ

6%

野菜・花

き類

6%

ナシ

5%

トマト

4%

ぶどう

4%

アブラナ

科作物

3%

キャベツ

4%

なす

4%

りんご

3%

2%その他

12%

作物 病害虫 件数 主な薬剤

イチゴ ナミハダニ 17 殺ダニ剤全般

水稲 いもち病 13 QoI剤

カンキツ ハダニ類 9 殺ダニ剤全般

きゅうりミナミキイロアザミウマ

8ネオニコチノイド系

スピノシン系

アブラナ科作物 コナガ 7ジアミド系有機リン系

キャベツ コナガ 7 ジアミド系

水稲 トビイロウンカ 7ネオニコチノイド系ブプロフェジン

水稲 アゼナ類 6 スルホニルウレア系除草剤

ナシ ハダニ類 6 殺ダニ剤全般

ぶどう べと病 6 QoI剤

イチゴ うどんこ病 5 DMI殺菌剤

水稲 ホタルイ 5 スルホニルウレア系除草剤

イチゴ 炭そ病 4QoI剤

MBC殺菌剤

病害虫・雑草別

作物別

25

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薬剤抵抗性病害虫・雑草に対する問題意識

• 各都道府県で発生を警戒している薬剤抵抗性病害虫・雑草は何か。

②警戒している対象は?

水稲

22%

野菜類(葉

菜類、果菜

類)

12%

なし

8%

アブラナ科

野菜

5%

キャベツ

5%

トマト

5%

イチゴ

5%

ネギ

5%

かんきつ

5%

キュウリ

4%

ぶどう

4%

なす

3%

リンゴ

3%

キク

3%

3%

その他

8%

作物 病害虫 件数 主な薬剤

水稲 いもち病 17 QoI剤

なし 黒星病 11 QoI剤、DMI剤

水稲 ウンカ類 10ネオニコチノイド系

ピメトロジン

アブラナ科野菜 コナガ 6 ジアミド系

キャベツ コナガ 6ジアミド系

スピノシン系マクロライド系

トマト タバココナジラミ 5ネオニコチノイド系ピリフルキナゾンスピノシン系

野菜 アブラムシ類 5 ネオニコチノイド系

イチゴ ナミハダニ 4 各種殺ダニ剤

ネギ ネギアザミウマ 4ネオニコチノイド系

スピノシン系

かんきつ ミカンハダニ 4 各種殺ダニ剤

害虫,

103

病害,

67

雑草,

10

不明,

各都道府県より、影響の大きい組合せ上位5件について聞き取った結果、計182件の回答が寄せられた。 各都道府県アンケート(有効回答数:44都道府県)(H28.11実施)

病害虫・雑草別

作物別

26

薬剤感受性検定結果の公表、防除指導について

• 薬剤感受性検定の結果をどのように生産者への防除指導に反映させているのか?

結果の公表・防除指導

各都道府県アンケート(有効回答数:47都道府県)(H28.11実施)

情報提供(主に生産者・指導者向け)

・発生予察情報や防除情報の発出

・普及担当者等に対する情報発信、研修会の開催

・生産者等に対する講習会の実施

情報提供(主に関係者向け) ・試験研究成果として公表

防除対策

・普及担当者を通じた産地指導

・防除指針・防除暦への反映

(掲載する薬剤の選定、注意事項の掲載等)

得られた結果をもとに、農薬の適正使用や病害虫防除について、しっかりと生産者指導を行うことが重要

27

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○ 都道府県が発表する発生予察情報等(注意報、特殊報、技術情報等)に 注意喚起情報等を掲載

情報提供の取組:都道府県からの情報発信・指導

【注意報の事例】

・平成26年10月3日付け病害虫発生予察情報注意報(岩手県)

薬剤感受性検定結果、コナガの発生状況について明示

防除対策について詳しく記載されている

28

情報提供の取組:都道府県からの情報発信・指導

【特殊報の事例】

【技術情報の事例】

・平成28年10月3日付け特殊報(岐阜県) 「ほうれんそうベと病(レース12)」

・平成28年3月3日付け特殊報(山口県) 「トマト葉かび病(レース2.9)」

・平成27年1月16日付け発生予察情報・特殊報(北海道)

「QoI剤耐性テンサイ褐斑病菌の発生について」

・平成28年11月24日付け病害虫防除技術情報第8号(三重県)

「QoI剤(ストロビルリン系殺菌剤)耐性イネいもち病菌」

・平成26年11月14日付け技術情報第6号(愛媛県) 「コナガの薬剤感受性検定結果」

・平成26年3月4日付け技術情報第15号(熊本県)「トビイロウンカの薬剤感受性検定結果」

・病害虫防除ガイド「薬剤耐性及び抵抗性に関する情報について」(北海道)

殺菌剤:稲いもち病菌、稲ばか苗病菌、野菜・花き類の灰色かび病菌、きゅうり褐斑病菌 等

殺虫剤:水稲/イネドロオイムシ、ヒメトビウンカ、あぶらな科野菜/コナガ、りんご/ナミハダニ 等

・「コナガは薬剤抵抗性が発達しやすいので、同一群での薬剤の連用は避け、数群でのローテーション散布を行う。」(千葉県)

・「水稲いもち病防除薬剤のうち、QoI剤耐性菌が全県的な発生として確認されている。耐性菌の発生地域では、QoI剤を施用すると防除効果が得られず激しく発生する可能性がある。」 (愛媛県)

【防除指針の記載事例】

29

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○ 病害虫発生予報(農林水産省:年間10回発表)での 「病害虫防除に関する留意点」に以下の内容を記載。

情報提供の取組:国からの病害虫発生予報を通じた注意喚起

○ 農水省HP内にて、薬剤抵抗性対策に関する情報(過去の検討会、シンポジウム情報等)を掲載

30

○効率的かつ効果的に発生予察事業を実施し、農業者等により一層発生予察情報が活用されるよう、国と都道府県が連携して取り組むべき対応について取りまとめ、取組が継続的に実施されるよう農政局を通じて指導

発生予察情報の充実に関する通知

30

病害虫の薬剤抵抗性の発達を 小限に抑えるため、農薬名には、作用機構分類(IRAC・FRACコード)を併記するとともに、同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布するよう指導する。

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情報提供の取組:関係者専用サイトにおける情報提供

30

✓都道府県による薬剤感受性検定実施状況✓薬剤抵抗性病害虫の発生状況等調査結果✓検討会に関する情報

等を掲載し、関係者間で共有を図っている

薬剤抵抗性病害虫管理に関する課題、これまでの取組

各都道府県における薬剤感受性病害虫対策

-薬剤感受性検定の実施状況

-薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況

-各都道府県の対策

現在進められているプロジェクト研究

今後の方策等

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委託プロジェクト研究 (H26~30年度):ゲノム情報を活用した農産物の次世代生産基盤技術の開発プロジェクト

「ゲノム情報等を活用した薬剤抵抗性管理技術の開発」(研究開発責任者:農研機構 生物機能利用研究部門 昆虫制御研究領域 中島信彦)

・薬剤抵抗性発達の問題を解決するために、科学的知見に基づく薬剤抵抗性管理技術(PRM: Pesticide Resistance Management)の開発が強く求められている。

・体系的に国全体で抵抗性問題に取り組む必要性

化学的防除(殺虫剤 etc.)

生物的防除(天敵 etc. )

物理的防除(防虫ネット etc. )

耕種的防除(品種・栽培法 etc. )

防除効果・容易さ・安定性・コストの点で優れる

しかし・・・ 同一系統薬剤を繰り返して使用することにより、害虫側の感受性が低下

→ 薬剤抵抗性の発達

現場での対策: 同一系統薬剤の連続使用を避けるローテーション散布の提唱

一方で: 新規剤開発には多額の予算と期間が必要→ 開発されてもすぐに抵抗性が発達

ローテーション散布は本当に有効か? また散布間隔を決める科学的根拠は何か?ローテーション出来る薬剤の種類が少ない場合、他の防除手段は?抵抗性レベル(遺伝子頻度)に応じてどのような防除体系を組めば良いか?

これまでの対策は個別ばらばらの現場対応

31

抵抗性の発達・拡大を予測する技術の開発

薬剤抵抗性の分子機構の解明と遺伝子診断法の開発

薬剤抵抗性管理ガイドライン案の提案と現地実証

薬剤抵抗性の現状把握と発達原因の調査解析

感受性/抵抗性病害虫の提供

モデル構築に必須なパラメータの提供

抵抗性発達に関する各種データの供給

薬剤抵抗性管理技術の確立による安定かつ持続的な病害虫防除の実現

診断法の相互検証

遺伝子情報や簡易診断法の提供

診断

予測

管理

導入可能な代替技術の提案

抵抗性菌発生・伝播の疫学的解析

・抵抗性菌発生事例の徹底検証によるガイドラインの強化・拡充

・抵抗性菌代替防除技術の効果検証

抵抗性菌発生・伝播モデルの構築

対象病害虫コナガワタアブラムシウンカ類(トビイロウンカ)ネギアザミウマナミハダニチャノコカクモンハマキいもち病菌

PRM研究開発の概要

抵抗性菌高感度検出法(定量PCR法)

32

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薬剤抵抗性病害虫管理に関する課題、これまでの取組

各都道府県における薬剤感受性病害虫対策

-薬剤感受性検定の実施状況

-薬剤抵抗性病害虫・雑草の発生状況

-各都道府県の対策

現在進められているプロジェクト研究

今後の方策等

薬剤抵抗性を発生させない又は拡大させないようにするには?

病害虫・雑草の薬剤抵抗性対策について

・病害虫管理の中で薬剤感受性低下の疑いを把握

・普及指導員等に相談

・生産者団体、普及員等からの情報提供に基づき、抵抗性発達の有無を確認、試験研究

・県内の情報の取りまとめ

・隣接県等の情報収集

・全国の薬剤抵抗性病害虫等の発生状況を整理、情報の分析

・関係者間向けに情報発信(共有)

生産現場からの情報収集と情報共有

農薬メーカー、関係団体研究機関、研究会等

生産者 都道府県担当者 農林水産省

・作用機構分類に基づく情報提供・試験研究及びマニュアル等に基づく情報提供

33

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・予察情報や普及員による指導に基づき、適時適切な病害虫・雑草防除を実施

・薬剤抵抗性管理に対する理解の醸成

・適正な薬剤散布の実践

・薬剤感受性検定の実施(※)

・予察情報、技術情報等の発出

・防除基準等への反映による防除指導

(代替防除薬剤、防除技術・IPMの普及)

・継続的な調査の実施

・発生予察事業の実施

・予算的支援

病害虫・雑草の薬剤抵抗性対策について

【検定の結果:抵抗性あり】生産現場での防除実態を把握する等により、抵抗性発生に至った原因を解明【検定の結果:抵抗性無し】感受性低下が疑われた原因を調査(適正な農薬施用が行われていたか?)

農薬メーカー、関係団体研究機関、研究会等

生産者 都道府県担当者 農林水産省

薬剤抵抗性の発生又は疑われる原因の解明、防除指導

・作用機構分類に基づく情報提供・試験研究及びマニュアル等に基づく情報提供

34

① 病害虫によっては、いずれ薬剤抵抗性が発生することを念頭に置き、有効な農薬を

できるだけ長く温存し、薬剤抵抗性の発生を遅延させる等の意識付けが必要

・・・そのためには、農薬を消耗品的感覚で使用するのではなく、大事に使用していく

ことが大切。代替剤・新規剤開発への過度な期待は避けたい。

② 農薬の適正使用(濃度、薬量、時期等)により、防除効果を 大限に得ることが重要

・・・ 大限の薬効を得られるような薬剤施用について、指導を行う必要あり

③ 薬剤抵抗性病害虫・雑草が発生しても、既存の農薬がすぐに無効となるものではな

い。使用を制限することにより感受性が回復することもあるため、適切な指導が重要

④ 今後の課題

・農薬-病害虫-栽培条件から得られる複合的な薬剤抵抗性リスクの認識及び評価

・生産者に対する薬剤抵抗性管理の理解促進

・簡便な検定手法の開発、普及 等

おわりに

35

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