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気候変動適応策の検討に資する 近未来気候予測実験データベース 渡辺 真吾 * 、藤田 実季子、杉本 詩織、岡田 靖子、川添 祥、石原浩二 国立研究開発法人海洋研究開発機構 気候変動適応技術開発プロジェクトチーム 石井 正好、水田 亮、村田 昭彦、川瀬 宏明 気象庁気象研究所 2018.04.19 H29 ES 年度 利用報告会 1

気候変動適応策の検討に資する 近未来気候予測実験 ......[mm/day] 過去実験 2018.04.19 H29年度ES利用報告会 12 全国気象官署データを用いた検証

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  • 気候変動適応策の検討に資する近未来気候予測実験データベース

    渡辺 真吾*、藤田 実季子、杉本 詩織、岡田 靖子、川添 祥、石原浩二国立研究開発法人海洋研究開発機構

    気候変動適応技術開発プロジェクトチーム

    石井 正好、水田 亮、村田 昭彦、川瀬 宏明気象庁気象研究所

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 1

  • 謝辞

    本課題では、文部科学省– 「気候変動リスク情報創生プログラム(SOUSEI)」– 「気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)」– 「統合的気候モデル高度化研究プログラム(TOUGOU)」– 「地球情報統融合プログラム(DIAS)」

    の協力のもとで、地球シミュレータ「特別推進課題」を用いて作成された「地球温暖化施策決定に資する気候再現・予測実験データベース (d4PDF) 」を使用した。

    一部のスライドはSI-CATの三上正男サブPDのご厚意による。

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 2

  • SI-CAT とは☞気候変動の脅威から住民の安全や資産を守るため、国家プロジェクトとして地球科学、社会科学・人文学等の研究者と自治体関係者等と協力して将来必要となる適応策を見いだし、そのための技術開発を実施する。

    ☞また、気候変動に適応するための様々なニーズを着実にくみ取り、自治体が作成する適応計画や企業における新ビジネスの創出に貢献する。

    目的

    目標 SI-CATの成果(SI-CATアプリ等)が社会実装されること。☞「社会実装」とは① 国や地方自治体が適応策や各種計画を策定する際(又はこれらの者を企業等(コンサル企業等)が支援する際)、SI-CATアプリが提供する情報、ツール、サービスや本アプリの基となるデータ等が利用されること。

    ② 企業が事業計画を策定する際や、様々な企業活動(投資、工場建設、公共事業、新商品開発等)を行う際、SI-CATアプリが提供する情報、ツール、サービスが利用されること。

    ③ 上記の状態が継続すること。

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 3

  • 2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会

    適応策とは何か?

    適応策人類が最善の努力をしても、野放図な放出シナリオとの差は20年間顕在化しない→最善努力下でも続く温暖化

    私達の子や孫の世代にきれいな地球を引き継ぐための取り組み

    今を生きる私達が、近未来でも安心安全な社会で生活出来るための取り組み

    両者は対立概念ではなく、共に今まさに必要

    IPCC AR5-WG1

    緩和策大気中へのGHGsの排出制限やCO2の固定化などにより、将来においても人類の生存可能性を維持するための対策

    4

  • 緩和策と適応策の違い緩和策 適応策

    かけがえのない地球

    私達の暮らし

    強制力 パリ協定等 気候変動適応法

    実施主体 IPCC等国際的枠組み、国家、G企業等 国家ー地方自治体,企業等

    ツール 全球結合モデル、全球大気モデル DS+領域気候モデル

    主要要素 気温、降水量 気温、降水量+日射量等々

    空間スケール 全球〜Ο(10 km) Ο(数km)〜Ο(数m)

    時間スケール 近未来〜世紀末(子、孫の世代) 近未来(現世代)

    将来も人類が住める地球を

    私達の近未来の生活を安心に

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 5

  • 適応策の検討のために必要な情報

    • 適応策のほとんどは現在の施策の延長にある。– 防災・減災– 農林水産業– 保健・衛生

    • 多くの施策は過去の実績ベースで行われている。例:19xx年に~~川で~~ミリの雨で洪水が起きた。

    ☞温暖化の影響を考慮した将来推定をベースに変えていく。政策担当者や事業者等のニーズ:

    – それほど遠くない将来の予測– できるだけ正確な予測– 〇〇年に一度の大雨や渇水など、極端な現象の予測

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 6

    よりよい社会のために新しい施策と組合せた新しい考え方も必要!

    ✕少子高齢化過疎化インフラ老朽化 etc.

  • SI-CAT基本スキーム

    DS気候シナリオ作成⇒信頼度の高い近未来予測⇒超高解像度DS技術

    温暖化による影響評価⇒地域の気候変動影響評価⇒適応策施策化に資する貢献

    適応策の社会実装⇒社会実装機関によるニーズ調査⇒地域ニーズに最適化した適応策⇒自治体における施策化と実装

    モデル自治体(7)

    全国版影響評価G

    ニーズ自治体JAMSTECほか

    国環研ほか

    社会実装機関・自治体

    DS:全球気候予測データを影響評価や政策に使えるレベルまで時空間詳細化ダウンスケーリングDown Scaling

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 7

  • 近未来の気候≒パリ協定「2度昇温」の世界

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  • 「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース:d4PDF」

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 9

    極端現象(異常高温、豪雨など)を含む高精度な近未来予測の実現⇒ 数千年に及ぶ膨大なアンサンブル気候予測実験

  • モデルと実験設定• 産業革命前から2℃昇温した状態を60年、6×9=54メンバー

    – 海面水温の温暖化パターンとして、CMIP5の6種類のCGCMで地上気温が2℃上昇したときの海面水温変化を算出し、温暖化トレンドを除いた過去60年の海面水温に上乗せ

    – 過去実験と同様の摂動を9種類– 温室効果ガス濃度はRCP8.5シナリオの2040年相当

    6種の温暖化パターン(CMIP5)

    (ΔT)

    温暖化トレンドを除いた過去60年の時間変動

    (青線;COBE-SST2)

    観測不確実性を表す9摂動

    (δT)

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 10

    総計3,240年分のデータを過去実験と比較。

    地球シミュレータで2年間かかって計算!

  • Topic1: 大規模アンサンブルの効能:全球視点年最大日雨量の90%tile値 (10年に1回の日雨量)

    [mm/day] 過去に対する増加率[%]

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 11

    60年同士で比較した場合

    3240年同士で比較した場合

  • X年に1回の日降水量

    2℃・4℃共に極端化

    2℃実験

    4℃実験

    10年 30年 100年

    過去に対する増加率[%]

    [mm/day]

    過去実験

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 12

  • 全国気象官署データを用いた検証&バイアス補正済み地点別プロダクトの作成

    d4PDF_RCM格子間隔 20 km期間 1950年9月~2011年8月抽出地点数 152地点(気象官署)抽出方法 逆距離荷重法抽出条件 海陸比50%以上

    未満の地点:最も高い海陸比のグリッドを選択

    標高補正 標高補正(地上気温)バイアス補正 最小二乗法+ガンマ分布

    (Piani et al. 2010)補正する要素 地上気温,日降水量※2℃,4℃昇温実験には,過去実験で算出した各メンバー補正係数のアンサンブル平均を適用

    観測データ・気象官署(152地点)

    使用データおよび解析手法(地上気温+降水量)

    目的:気候モデルによる予測計算結果の絶対値等の情報を,誤解なく理解してもらうべくデータを作成する.特に極端現象についてどの程度の信頼度をもてるのかなどといった情報も作成する.

    Topic2:

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 13

  • 観測 過去実験:補正前過去実験:補正済み4K昇温:補正前

    地点別:8月日最高気温(バイアスの傾向と補正の様子)

    網走 根室 山形 石巻

    伏木 飯田 境 浜田

    彦根 宮崎 名瀬 石垣島

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 14

    盆地地形や海陸分布の影響で20km解像度では最高気温が低めに出やすい。

    d4PDF領域気候モデル20km格子標高分布

    20kmx20km格子平均のため、急峻な山谷地形が表現されないそのまま用いるのでなく、観測データによるバイアス補正が必要

  • バイアス補正済地点別プロダクト

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 15

    日本各地の地方自治体等における適応策の検討に役立つ。(今後公開予定。)

  • Topic3: ヤマセ再現性検証と将来予測

    夏季に北日本の太平洋側に冷害をもたらす「ヤマセ」の頻度と循環場の特徴

    をよく再現。将来もヤマセのパターンと頻度は同程度だが現在ほど寒くない。

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 16

    (ヤマセ=北日本で平年値に比べて気温が4.5℃以上低い日が4日以上持続するイベントと定義)

  • まとめ

    • 地方自治体における気候変動適応策の検討に役立つ基盤的なデータセットを作成した。– 近未来=2℃昇温に近づく2030-2050年頃の、全球60km・

    日本全国20km解像度の大規模アンサンブル気候予測実験。

    – 全球・日本各地・広域(北日本太平洋側)の視点から、データセットの特徴や再現性を評価。

    – 自治体等での活用の際には、20km解像度のデータを基礎として、さらに5km/2km等にDSして活用する例も。

    • 今後「適応策」の認知度や「自分たちがどのように向き合えばよいか」検討するための情報が普及し始めるはずです。ぜひ関心を持って「先取り」して下さい。

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  • もっと知りたいひとのために

    2018.04.19 H29 ES年度 利用報告会 18

    • 適応策について– SI-CAT: https://si-cat.jp/– 環境省A-PLAT: http://www.adaptation-

    platform.nies.go.jp/

    • 大規模アンサンブル予測実験データベースと利用について

    – d4PDF:http://www.miroc-gcm.jp/~pub/d4PDF/– DIAS: http://www.diasjp.net/

    https://si-cat.jp/http://www.adaptation-platform.nies.go.jp/http://www.miroc-gcm.jp/%7Epub/d4PDF/http://www.diasjp.net/

    気候変動適応策の検討に資する 近未来気候予測実験データベース謝辞スライド番号 3スライド番号 4スライド番号 5適応策の検討のために必要な情報スライド番号 7近未来の気候≒パリ協定「2度昇温」の世界「地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース:d4PDF」モデルと実験設定Topic1: 大規模アンサンブルの効能:全球視点X年に1回の日降水量スライド番号 13スライド番号 14バイアス補正済地点別プロダクトTopic3: ヤマセ再現性検証と将来予測まとめもっと知りたいひとのために