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保育で使われる漢字の収集と分析
織 田 芳 人・福 井 謙一郎
Collection and Analysis of Kanjis Used in Early Childhood Care and Education
Michito ODA・Ken’ichiro FUKUI
キーワード:漢字力、保育
1.はじめに基礎学力としての漢字力の不足が実習先・就職
先の幼稚園・保育園等の施設から指摘されることが増えてきた。本学幼児教育学科における2016年度生を対象とした就職先調査結果の自由記述においても指摘された。そのような状況を改善するため、保育で使われる漢字の収集と分析を行い、幼児教育学科として漢字力向上策を検討できる資料を作成することが本研究の目的である。
2.研究方法2018年4月から『幼稚園教育要領』『保育所保
育指針』『幼保連携型認定こども園教育・保育要領』のいわゆる保育3法令が改訂された。
本稿では、まず『幼稚園教育要領』の全文を Ex-cel データ化し、計量テキスト分析ソフトによって、どのような語が頻出しているか、どのような語と語の組合せが多いか等を検討する。計量テキスト分析ソフトとして KH Coder1)を利用した。
分析対象とする語の品詞リストを表1に示す。漢字の収集であるから、名詞、及び、言い切りの形が「だ」で終わる形容動詞を抽出することにし
た。『幼稚園教育要領』は前文、第1章、第2章、第3章で構成されている。各章における頻出150語の抽出、抽出語の共起ネットワークの描画等の分析を行い、最後に全体としての分析も行う。
共起ネットワークとは、データ中でよく一緒に使用される概念を線で結んで描くネットワークのことをいう。本稿では、描画数を50とし、強い共起関係ほど太い線で描く、出現数の多い語ほど大きい円で描く、文字も大きく描く、等を設定した。
3.分析結果「前文」における頻出150語を表2に、共起ネッ
トワークを図1に示す。
長崎女子短期大学紀要 第45号 令和元年度〈2020.3〉
図1 幼稚園教育要領:前文における共起ネットワーク
表1 分析対象の品詞リスト
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表2 幼稚園教育要領:前文における頻出150語 表3 幼稚園教育要領:第1章における頻出150語
保育で使われる漢字の収集と分析
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「第1章 総則」における頻出150語を表3に、共起ネットワークを図2に示す。「第2章 ねらい及び内容」における頻出150語
を表4に、共起ネットワークを図3に示す。「第3章 教育課程に係る教育時間の終了後等に
行う教育活動などの留意事項」における頻出150語を表5に、共起ネットワークを図4に示す。
全文における頻出150語を表6に示す。共起ネットワークを図5に示す。
表4 幼稚園教育要領:第2章における頻出150語
図2 幼稚園教育要領:第1章における共起ネットワーク
図3 幼稚園教育要領:第2章における共起ネットワーク
織 田 芳 人・福 井 謙一郎
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表5 幼稚園教育要領:第3章における頻出150語 表6 幼稚園教育要領:全文における頻出150語
保育で使われる漢字の収集と分析
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全文において章別に抽出した特徴語を表7に示す。表中の数値は Jaccard 係数で、0から1までの値をとり、関連が強いほど1に近づく。
どのような語が多く出現しているかは、「頻出150語」の表によって知ることができる。語と語の結びつきの強さは、「共起ネットワーク」の図によって知ることができる。したがって、「頻出150語」と「共起ネットワーク」を組み合わせれば、漢字力向上のための学修資料として、どのような漢字あるいは漢字群を提供すればよいかの指標が得られると考えられる。
4.今後の課題課題として、『幼稚園教育要領』に並ぶ『保育
所保育指針』と『幼保連携型認定こども園教育・保育要領』を分析することが残されている。また、保育関係書籍で例示されている指導案に出現する漢字と、保育実習で学生たちが記述しなければならない実習日誌に出現する漢字を比較することも検討すべき課題の一つである。
附記本研究は2019年度長崎女子短期大学学長裁量経
費の助成を受けた。記して謝意を表する。
註1)樋口耕一によって開発されたフリーの計量テキスト
分析ソフト KH Coder(Ver.200e3)。機能等は以下を参照した。樋口耕一(2014)『社会調査のための計量テキスト分析―内容分析の継承と発展を目指して』ナカニシヤ出版。
図4 幼稚園教育要領:第3章における共起ネットワーク
図5 幼稚園教育要領:全文における共起ネットワーク
表7 幼稚園教育要領:章別の特徴語
織 田 芳 人・福 井 謙一郎
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