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施設園芸生産コスト5割削減技術の提言書 平成19年3月 低コスト施設園芸緊急実証専門家プロジェクト

施設園芸生産コスト5割削減技術の提言書の他、図1に示すように有効性を総合的に評価する必要がある。 表4 省エネルギー手段 図1 省エネルギー対策技術・手段の有効性の評価(林)

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施設園芸生産コスト5割削減技術の提言書

平成19年3月

低コスト施設園芸緊急実証専門家プロジェクト

静 岡 県 農 業 水 産 部

目 次

はじめに

低コスト施設園芸緊急実証専門家プロジェクト座長

静岡大学農学部教授 糠谷 明 ・・・ 1

施設園芸生産コスト5割削減技術

(1)生産コスト要因別の技術

<省エネルギー> 東海大学開発工学部教授 林 真紀夫 ・・・ 2

<低コスト施設> 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 ・・・ 8

野菜茶業研究所高収益野菜研究チーム長

高市 益行

<作業効率化> 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 ・・・ 13

中央農業総合研究センター高度作業システム研究チーム長

小林 恭

(2)作物別の技術

<温室メロン> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

< イ チ ゴ > ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

< ト マ ト > ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

< 葉 ネ ギ > ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

経営面からみた生産コスト5割削減技術の導入

静岡大学農学部助教授 柴垣 裕司 ・・・ 38

施設園芸生産コスト5割削減技術を目指して

静岡大学農学部教授 糠谷 明 ・・・ 44

はじめに

静岡県の施設園芸は、農業産出額の約5分の1(500億円)を占める基幹的産

業であるが、施設園芸の所得率は年々低下し、規模拡大により所得向上を図ろう

としても施設導入等に多大なコストがかかるため、新たな経営展開が難しい現状

にある。さらに、重油高騰により光熱費が上昇し、野菜、花き、ハウスみかんな

ど広い範囲に影響が及んでいる。

このため、県では施設園芸の経営や技術体系を見直し、生産コスト5割削減に

よる生産性向上を実現するため、新たな技術導入と定着を目的に、大学及び独立

行政法人の研究者、ビジネス経営体経営者による専門家の「知」を結集し、「低

コスト施設園芸緊急実証専門家プロジェクト」を設置した。

18年7月に第1回プロジェクトがスタートして以来、12月までメンバーの

研究者・ビジネス経営体経営者から多くの貴重な意見をいただいた。さらに、県

内の先進的施設園芸技術の現地調査も実施するとともに、県職員ワーキングチー

ムの協力も得て、このたび「施設園芸生産コスト5割削減技術の提言書」として

まとめた。

本提言書は、前半は省エネルギー、低コスト施設、作業効率化という生産コス

ト要因別の技術をとりまとめ、後半は静岡県の施設園芸を代表する温室メロン、

イチゴ、トマト、葉ネギの作物別技術をとりまとめた。また、作物ごとに新たな

コスト削減技術導入よる経済性を「静岡県作物別技術原単位」をもとに試算し、

経営面での効果にも言及した。

今回の提言は、現状の規模・施設構造・生産システムの枠内で農業経営を捉え

ていては生産コストの大幅削減は極めて困難であることから、静岡県が目指すビ

ジネス経営体の育成に焦点を当て、概ね施設規模1ha、粗収益1億円という目標

水準をもとにして設定した。

今後、この提言を本県施設園芸の飛躍的発展のための指針としていただき、関

係する農業者、農業団体、試験研究機関、メーカー、行政等が新たな技術の研究・

開発・実証・導入に向け行動を起こすことが何より重要である。

この提言書が将来にわたり、本県施設園芸の経営発展に向けて有意義に活用い

ただければ幸いである。

平成19年3月

低コスト施設園芸緊急実証専門家プロジェクト座長

静岡大学農学部・教授 糠 谷 明

施設園芸生産コスト5割削減技術

<(1)生産コスト要因別の技術>

省エネルギー

東海大学開発工学部・教授 林 真紀夫

1 省エネルギーの重要性

1970 年代の 2 回のオイルショックを契機に、施設栽培の省エネルギー

(暖房用石油節減)に対する取り組みが盛んに行なわれ、各種技術が提案

され、現場に導入された。しかし、その後の石油価格の下降安定により、

省エネルギーへの関心は薄らいだ感がある。 しかし、2004 年秋頃からの原油価格高騰に伴う重油価格の高騰は、施

設栽培農家の経営を圧迫している。表1は平成 15 年 10 月を基準にし、重

油が 59%高騰した場合の農家所得の減少率を試算した結果(静岡県農業水

産部)である。当然のことながら、暖房設定温度の高い作目ほど所得の減

少率は高くなる。暖房設定温度が 20℃を超える温室メロン(スリークォ

ーター温室)での減少率は 28.0%にも達している。今後の重油価格の動向

予測は難しいものの、楽観できるものではない。暖房を前提とした栽培作

目では、暖房用燃料の節減対策は、経営上不可欠である。 農家経営の観点からだけではなく、地球規模での二酸化炭素排出量の削

減や、有限の化石燃料の有効利用の観点からも、施設園芸における暖房用

燃料の節減は求められる。

表1 重油高騰(59%高の場合、H15.10 との比較)による農業経営費の変化

(10a 当たり)(静岡県農業水産部)

2 静岡県の気象条件

表2および表 3 に、暖房対象期間である 11 月から 4 月の日照時間および

気温の月別平年値を示す。静岡の対照として、北関東の宇都宮と九州の宮崎

のデータをあわせて示す。 11 月から 4 月のいずれの月でも静岡の日照時間は多い。月別日照時間の

11 月から 4 月の平均は 182.4 時間であり、国内では日照時間の も多い部

類にはいる。 また、気温に関しても、静岡の月別 低気温の 11 月から 4 月の平均は 5.4℃

であり、宮崎のそれよりは 1.0℃低いものの、宇都宮のそれに比べ 4.7℃高

い。北関東以北の地点において 1 月および 2 月の 低気温平年値が氷点下で

あるのに対し、静岡の 1 月および 2 月の 低気温平年値は、それぞれ 1.6℃および 2.1℃であり氷点以上である。

このように、本県は日照時間も多く、また外気温も比較的高いことから暖

房コストも抑えられ、施設園芸を行なううえで、気象条件に恵まれた地域と

いってよい。

表2 11 月~4 月の月別日照時間の平年値(理科年表、2007 年版)(単位:時間)

表3 11 月~4 月の月別平均気温、最高気温、最低気温の平年値

(理科年表、2007 年版) (単位:℃)

3 省エネルギー手段

(1)省エネルギー手段導入の判断

省エネルギー手段には、表4のようなものが挙げられ、これらの一つあ

るいは複数の手段を組み合わせた対策が考えられる。省エネルギー効果の

  地点 11月 12月 1月 2月 3月 4月 平均  静岡 164.4 194.1 197.4 178.3 174.3 185.8 182.4  宇都宮 163.3 198.5 204.8 184.2 191.7 175.6 186.4  宮崎 160.2 187.7 186.1 160.8 179.1 179.7 175.6

  地点 11月 12月 1月 2月 3月 4月 平均平均 13.8 8.8 6.6 7.0 10.0 14.8 10.2

静岡 高 18.4 13.8 11.4 11.7 14.5 19.2 14.8低 9.2 3.7 1.6 2.1 5.4 10.4 5.4

平均 9.7 4.4 2.1 2.8 6.2 12.1 6.2宇都宮 高 15.3 10.6 8.1 8.7 12.1 18.0 12.1

低 4.4 -1.2 -3.5 -2.7 0.7 6.6 0.7平均 14.3 9.4 7.6 8.3 11.7 16.1 11.2

宮崎 高 19.2 14.9 12.8 13.5 16.3 20.8 16.3低 9.5 4.3 2.6 3.4 6.9 11.4 6.4

高低はあるものの、これらの手段によって、暖房用燃料は節減できる。た

だし、多くの技術は投資を伴う。したがって、暖房用燃料を節減できても

全体として費用対効果がプラスにならなければ導入の意味をなさない。そ

の他、図1に示すように有効性を総合的に評価する必要がある。

表4 省エネルギー手段

図1 省エネルギー対策技術・手段の有効性の評価(林)

(2)主な省エネルギー手段

表4で示した省エネルギー手段のうち、主なものについて以下で触れる。

大分類 中分類 小分類

保温性の向上 多重・多層被覆 空気膜2重、保温カーテン、外面被覆など高保温性資材 反射性資材、複層板気密性向上放熱比低下 温室大型化

暖房効率の向上 温風暖房機利用暖房機の保守点検 燃焼室、オイルフィルター、バーナーなど排熱回収

自然エネルギー利用太陽熱利用 地中熱交換、潜熱蓄熱、水封マルチなど地下水利用 ウォーターカーテン、熱交換など地熱水、温泉水

代替燃料利用 バイオマス 木質ペレットなど廃物 廃油、古タイヤ

省エネ装置利用 ヒートポンプ 地下水熱源、空気熱源コージェネレーション

栽培方法改善 低温性品種制御方法改善 変温管理、設定気温地中加温

①保温性向上 被覆の気密性を高めることや被覆枚数の増加による断熱性向上は、省エ

ネルギーの基本であり、確実に節油につながる(表5)。ただし、室内の

高湿度化による病害発生の危険増加、保温カーテンによる影の増加などマ

イナス面も伴うので、保温カーテン開閉制御の工夫や空気流動促進などの

付随的対策の検討が必要な場合もある。 表5 保温カーテンなどの保温被覆による熱節減率(施設園芸ハンドブック)

(表中の 0.40 とは、40%の熱節減を意味する)

温室の大型化も節油効果が大きい。温室からの放熱は、被覆方法が同じ

であれば、概略、被覆面積および温室内外気温差に比例して増加する。温

室が大型化するほど被覆面積は増加するが、放熱比(被覆面積/床面積)

は小さくなり、床面積当たりでの暖房用燃料は少なくてすむ。温室メロン

栽培で 近導入が試みられている、床面積 3,000m2 前後のフェンロー型温

室(図2)では、軒高が 4.3m の場合の放熱比は 1.4 である。これに対し、

床面積 180 m2 の従来型スリークォーター温室の放熱比は 1.7 である。し

たがって、スリークォーター温室に比べ、フェンロー型温室の放熱比は

21%減となり、床面積当たりの暖房用燃料も約 21%節減できることにな

る。メロン栽培で検討されている温室の大型化は、省エネルギーのみなら

ず作業性や自動化装置の導入も容易となる。投資を伴うものの効果的な暖

房用燃料節減手段であり、温室更新にあたっては検討すべきであろう。

図2 高軒高フェンロー型温室

②暖房効率の向上 暖房システムの熱利用効率(温室暖房に利用される熱量/燃料の発熱

量)は、温湯暖房に比べ温風暖房の方が 5~15%高い。配管での熱ロスや

残湯による熱ロスがないためである。温湯暖房には利点もあるが、節油の

観点からは、温風暖房機が勝っている。 暖房機の燃焼室やオイルフィルターの清掃、バーナーの保守点検は、経

費をほとんど必要としない省エネルギー手段であり、定期的に行なうこと

が望まれる。 ③省エネ装置利用 ヒートポンプは、暖房のみならず湿度制御や夏期冷房の多目的な利用が

可能な利点があり、作目や石油価格の如何によっては利用を検討してよい

だろう。温風暖房機に比べ設備投資が大きくなるが、現在の重油価格での

ランニングコストは、設定室温の比較的高い作目においては温風暖房機よ

り安価となる。ただし、空気熱源方式では外気温低下に伴い暖房能力が低

下するなどの短所もあり、補助暖房機との組み合わせ利用などを考える必

要があろう。効率の点からは、地下水熱源方式が有利である。 ④制御方法の改善 変温管理や設定室温などの制御上の対策は、燃料消費を削減するという

よりは、消費燃料当たりの収益をいかに高くするかという観点から、改善

を図るべきである。燃料費が節減できても、減収による収益減が勝るよう

なことになれば無意味である。 ⑤自然エネルギー利用 太陽熱や地下水など、自然エネルギー利用については、オイルショック

以降色々な方式が開発され、一部で利用されるまでに至ったが、現場から

消え去った方式も多い。そのなかで、地下水利用のウォーターカーテン方

式は、現在でも利用されている実用的な方式である。太陽熱利用や地下水

利用は、高温熱の供給が出来ないので、暖房設定室温が比較的低いイチゴ

栽培などに向いている。それぞれの方式で、実用上・利用上の欠点もある

ので、石油価格の動向をみて利用を検討すべきであろう。

4 期待されるコスト低減

省エネルギー手段によってコストを何%低減できるかは、何を対照に比

較するかによって異なる。温室メロン栽培を例にすれば、従来の温湯暖房

による単棟温室(スリークォーター温室)を対照としたとき、同じ被覆方

法であれば、多連棟温室・温風暖房の導入によって暖房燃料を 20~35%削減することが可能となる。温室の大型化は初期投資を伴うが、暖房燃料

削減以外にも、作業性の向上による省力化・生産性向上など他の効果も期

待できる。これは顕著な効果が期待できる一例である。 このほかにも前述のとおり、種々の省エネルギー技術があるので、導入

に当たっては、費用対効果および他の波及的得失をよく検討し、経営上有

利でかつ導入条件に合った対策をとる必要があろう。

低コスト施設

(独)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所

高収益施設野菜研究チーム長 高市 益行 1 低コスト施設の必要性 わが国の施設園芸では、施設の設置コストが高いといわれる。実際、高機

能な施設では、その減価償却費が年間の経営費の 20%を超えることも珍しく

ない。また、暖房などの栽培管理・環境制御に要する経費も 10~20%となる

ことが普通である。施設園芸の生産コストを大幅に削減するためには、まず、

施設の設置コストを抑えることが必須である。

現在、大型鉄骨ハウスの設置コストの大幅な低減を目的として、従来の手

法・システムとは概念の異なるユニット工法による新構造ハウスが開発さ

れ、5割削減に近いコスト削減が達成できている。 近、それ以外のメーカ

ーからも低コスト構造がいくつか提案されるなど、鉄骨ハウスの低価格化に

は活発な動きが出ている。以下では、現在までの施設の低コスト化の流れと、

近の新構造の概要について紹介する。

2 施設本体の低コスト化のポイント フェンロー型多連棟ハウス(フッ素系硬質フィルム被覆、間口 8m×6 連棟

×奥行 54m、床面積 5,040m2,軒高 4.2m)について、工事内容別の経費割合

を調査した例を表1に示す。 も経費を要するのは鉄骨工事費で、ハウス工

事全体の 34~36%を占める。次いで、大きいのは被覆工事費の 22~23%、次

いで開閉装置工事の 13~18%である。基礎工事の割合は 6~7%となっている。

平成 14 年頃より、周年栽培が可能な耐候性のある低コストハウスとして、

表 1 多連棟(フェンロー型)ハウスの設計工事 (単位:円、%) (日本施設園芸協会,2002)

基礎部や接合部を強化した比較的簡易な構造のハウスが提案され、低コスト

耐候性ハウスとして施工マニュアルが発行された(日本施設園芸協会、

2002)。積雪のない地域では、耐風性 50m/s の基準を、積雪地域では積雪加

重 50kg/m2 の基準を確保した上で、低コスト化する手法が提示された。この

タイプのハウスは、平成 14 年度から 16 年度まで、野菜の構造改革の一環と

して、輸入野菜急増農産物対応特別対策事業における補助対象になった。こ

のハウス建設補助事業により、各ハウスメーカーはそれぞれ合理化・低価格

化を図り、短期間に低コスト耐候性ハウスの基準に適合した商品を販売する

ようになって、全国的に多数の低コスト耐候性ハウスが導入されている。

3 新部材・新構造のユニット工法ハウス (1)大幅な低コスト化が期待できるユニット工法ハウス

農林水産省の研究委託事業「先端技術を活用した農林水産研究高度化事

業」において、「トマト産地のリニューアルに向けた低コスト生産システム

の開発」の課題の中で、野菜茶研、大阪府立大学、農業工学研究所、企業(ハ

ウス建設、被覆資材)が共同で、施設本体の建設コストを大幅に低減するた

めに、従来の1/2のコストで建設可能な新しいタイプのハウスを開発し

た。コストダウンのポイントは、パイプ基礎工法(土工事が不要)、軽量の

新部材の採用、モジュール単位による屋根のユニット工法である。

図1 土を掘らないパイプ基礎

図2 薄板軽量形鋼の屋根部材とビス止め作業

①基礎工法 従来工法では、柱の基礎の部分を大きく堀下げて、鉄筋コンクリートで固

める方法(フーチング基礎)が一般的であるが、土を掘らずにパイプを4方

向に斜めに打ち込む手法(パイプ斜杭打込み基礎)を採用した(図1)。こ

の工法は、土を掘り下げる工程が不要であることから、工期の大幅な短縮が

可能であった。

②構造部材と屋根部の工法 構造部材として園芸用ハウスとして初めて薄板軽量形鋼を採用した。これ

は薄い軽量の C 形鋼で、スチールハウスの住宅建築用部材として広く利用さ

れている部材である(89LCM16)(図2 )。この部材は成型と同時に精度の高

いパンチング穴加工ができ、製造工場から建設現場へ直送が可能となり、流

通コストの削減が期待できる。 屋根部については、被覆資材のアタッチメントや換気窓など複雑な多数の

部材を取り付ける必要があり、作業量の多い部分である。従来工法では、本

体構造を組み上げた後、屋根構造の上に作業者が登って作業をしていた。今

回の建設実証試験では、新工法として、屋根部構造を薄板軽量形鋼でユニッ

ト化し、地上で構造材や必要部材を組付けて地上に並べて(図 3)、その後

クレーンでつり上げて組立てる手法(屋根ユニット工法)が開発された(図

4)。ユニット工法ハウスの側パイプを図5に、完成した実証ハウスの全景を

図6に示す。 (2)新工法ハウスの建設工程数、工期、コスト低減割合の概算

従来の大型鉄骨ハウス(硬質プラスチック被覆ハウス)と比較して、以下

のような概算が得られた。数値は 1,000 ㎡のハウスの建設実証試験に基づく

推算である。 ①使用鉄鋼材料

耐風性 50m/s の設計強度で、本体の鉄重量は従来の約 65%に減量できる。 ②建設作業時間

図3 地上で組み立てて並べられた

屋根ユニット

図4 屋根ユニットのクレーン吊り上

げ・組み立て

全工程を約 60%に短縮可能。また、基礎工事と並行して屋根部の地上組

み立て作業が可能で、ハウス本体の建設工期を約 35%に短縮できる。 ③被覆資材の展張コスト

展張作業を含めた初期経費は、新開発の長期展張フィルム(PO系特殊フ

ィルム、10 年耐久、厚さ 0.15mm)を使用することで、フッ素系フィルム展

張に対して約 60%程度の低コスト化になる。 ④ハウス本体の建設コスト

カーテン装置や暖房機などを除く、ハウス本体の建設コストは,実証ハウ

スの仕様で、現時点では従来型の約 60%程度である。

4 ユニット工法ハウスの制限事項と性能評価

今回の新構造ハウスは、硬い屋根と壁構造により強度を確保していること

から、正方形に近い形状で強度が高くなる。1つのハウスがおよそ 4,000 ㎡

程度までは内部にブレース補強なしで強度が確保できるが、それより大きい

と室内にさらに壁の役割をするブレース補強が必要である。 また、細長い形状のハウスでは十分な強度が確保できないので、本構造は

適用できない制約がある。屋根方向を南北にとって栽培ベッドを南北に配置

する場合には、トマトでは1スパンが 4.5m なので、ベッドを3列設定する

図6 新しいユニット工法ハウスの実証モデルの外観(野菜茶業研究所)

図5 側パイプによる張り出し部分の設置

には狭く、2列では余裕がありすぎる。実証ハウスで 4.5m スパンに2列設

置として栽培実験を行った結果、ベッドの1列は柱に沿って誘引は柱を被せ

て行う形になり、普通は通路の上で問題とならない谷樋部の結露の落下が、

植物体に滴下する状況がみられ、このような場合には厳密な結露対策が必要

である。 ハウス内の日射環境については冬季・夏季とも大きな問題はない。

5 施設の設置コスト低減に向けて

ユニット工法ハウスの出現によって、従来の4割以上のコスト削減が可能

となり、5割削減に向けて大きな流れが始まった。さらにいくつかのメーカ

ーから新しいタイプの低コストで耐候性の高いハウスが開発されるように

なって各社の技術競争が始まったことから、今後、大型ハウスの低コスト化

がさらに進展していくことが予想される。 また、園芸施設の付帯設備のコストも設置コストに非常に大きな割合を占

めるので、設置コスト低減のためには、内部装置の低コスト化が非常に重要

である。 近、新しい概念の環境制御システムの開発が、東海大学の星岳彦教授の

グループで進められている。このシステムは、温室の管理・制御に関連する

動作機器やセンサなどの要素の全てにマイコンを内蔵させ、ネットワークで

接続して温室制御・管理を実現させようとするもので、ユビキタス環境制御

システム(UECS)と呼ばれている(Ubiquitous とは、「どこにでもある」

の意味)。これにより、温室環境のコンピュータ制御システムが従来の約1

/2で構築できる試算が得られている。現在、まだ一部の機器しか商品化さ

れていないが、低コストで高度情報化が期待できるシステムであることか

ら、早く各種機器が市販され広く利用できるようになることが望まれる。 【参考文献】

1)林 泰正、星 岳彦、高市益行、山口浩明、相原祐輔(2004):施設園

芸におけるユビキタス環境制御システムの提案、農業および園芸 79(8), 845-853

2)農林水産省農産園芸局野菜振興課(2000):園芸用ガラス室・ハウス等

の設置状況、(社)日本施設園芸協会 3)日本施設園芸協会 (2002):園芸施設設置運営コスト低減指導事業、鉄骨

温室標準仕様作成検討部会報告書,48pp. 4)日本施設園芸協会 (2001):低コスト耐候性ハウス施工マニュアル-風対

策-,30pp. 5)日本施設園芸協会 (2002):低コスト耐候性ハウス施工マニュアル-雪対

策-,28pp. 6)高市益行 (2006):低コスト新構造・新工法ハウスと次世代型環境制御シ

ステム (1)、農業電化、59(10), 8-11. 7)野菜茶業研究所ほか(2006):トマト産地のリニューアルに向けた低コ

スト生産システムの導入指針、41PP

作業効率化

(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター

高度作業システム研究チーム長 小 林 恭

1 作業の効率化について

施設園芸のコスト低減に向けた作業面からの取り組みとしては、作業を

効率化し時間当たりの作業量を増加させる、工程を簡略化し必要な作業者

の数を減らすことが有効である。しかし、日本の平均に 20 年先行してい

るといわれる農業現場では従事者の高齢化と就業人口の6割を占める労

働力の女性化による過重労働問題もあり、野菜作を中心に機械の開発や作

業改善が緊急対策として求められている。「農村婦人の労働に関する調査」

(農蚕園芸局婦人生活課)によると主婦が も大変だと思う農作業は、長

時間の同一姿勢作業が 43%、重量物運搬の力作業が 25%、温度の高い園

芸施設内作業が 17%と、いずれも野菜作に関連した作業となっている。

ここでは、園芸施設における作業工程の改善や作業評価のための基礎デ

ータとして活用される労働負担、作業環境の評価法と作業改善の基礎とな

るチェック項目について紹介する。

2 作業負荷と負担

人間の労働を考えるとき人間に掛かる物理的、あるいは精神的な荷が負

荷である。負荷の大きさは絶対的なものである。これに対して負担は負荷

によって生ずるさまざまな生理反応や疲労、ストレス等である。これら諸

反応は、個人の特性、作業方法や作業環境の影響を受けるため同じ負荷条

件であっても値が異なる相対的なものである。作業者の特性には、性別、

基礎体力、作業の熟練度、作業に対する意欲等が含まれる。作業環境負荷

には温熱、湿度、騒音、振動などがある。

例えば重量物を取り扱う場合、荷物の重さが負荷になる。荷物の重さは、

誰がどこで計っても同じ値になる。これに対して、荷物を持つことによっ

て作業者に生じる負担の強度は、作業者の特性によって異なる。基礎体力

のある人にとってはそれほど大きな負担とならないが、女性や高齢者には

負担が大きく、きつい作業となる。また、同じ人が荷物を持つ場合でも環

境温度が高いと負担が大きくなる。

肉体的な作業強度は、作業を行う際に必要なエネルギー消費量を指標と

して表され、エネルギー代謝率(RMR)や心拍数の変化によって測定さ

れる。エネルギー代謝率は、作業時のエネルギー消費量と作業者の基礎代

謝量(生命を維持するのに必要な 小限のエネルギー消費量)の比で表さ

れる。RMRは4以上が重作業とされ、以前は人力による耕うん作業、手

押し除草機など多くの重労働が存在していたが、機械化の進展した現在で

は重量物の運搬作業などを除いてほとんどみられなくなった。また、心拍

数は 100~120 拍/分以上、あるいは安静時心拍数から 30~40 拍/分以上

増加すると疲労の回復遅れや翌日の作業への影響があらわれるとされ、8

時間労働の目安とされている。

これに対して静的な負担は、重い荷物を持って立っているような場合や、

同じ姿勢を取り続けることにより生ずるものである。静的な作業により筋

肉は収縮状態が続き、その圧力で筋肉中の血液の循環が悪くなり、部分的

な酸素不足や老廃物の停滞という現象を引き起こす。その結果、筋肉のし

びれ、痛みといった症状が現れたり、腰痛の原因にもなる。具体的な作業

としては、園芸施設内作業全般、人力による野菜苗の植え付け作業、果樹

園における上向き姿勢での収穫等の作業、機械のペースに規制された農作

物の選別作業などがある。静的な労働はエネルギー消費量が少ないため、

労働の強度や負担を心拍数やRMRだけで評価することはできない。その

ため自覚症状の聞き取り、作業姿勢の測定・評価や部分的な筋肉の負担状

態を筋電図等で測定して評価を行う。

3 作業姿勢

つらい姿勢とは上体を深く前

に倒しての作業姿勢、中腰状態

で上体を前屈するような作業姿

勢や、上向き、ねじり姿勢であ

る。これらの姿勢が起きる原因

としては、園芸施設内のように

狭いところでの作業や、作業機

のハンドルやペダルの位置が適

当でない、作物の位置が高すぎ

たり、低すぎたりする場合など

があげられる。このような作業

姿勢の評価法として、長町が工

場等の作業評価・改善のために

考案した姿勢区分評価法がある。

図1の姿勢分類に基づき作業工

程の姿勢を分析、評価するもの

で、評価点は作業負担に対応し

て決められているので、5点以

上を改善必要有りとした場合は、評価点が4以下になるように作業改善を

図1 姿勢分類(長町)

つらさ 姿 勢 動 作 内 容

膝を深く曲げた中腰で上体を前屈10

膝を伸ばした中腰で上体を深く前屈

膝を曲げた中腰で上体を前屈

膝を伸ばした中腰で上体を前屈

し ゃ がんだ姿勢( かかと がついている )

膝を伸ばし上体を軽く前屈

膝を軽く曲げ上体を軽く前屈

立ち姿勢で背伸び( かかと が浮いている)

立ち姿勢

座った姿勢

行う。また、作業姿勢にねじれが加わる場合は、評価点を 1.2 倍する。写

真 1、2 に示すイチゴの慣行栽培と高設栽培の作業姿勢をこの方法で評価

すると、慣行栽培の「つらさ6」から高設栽培の「つらさ1」へと大きく

改善されることが客観的な数値で表現される。 欧 米 の 産 業 界 で 広 く 使 わ れ て い る 手 法 に OWAS(Ovako Working

Posture Analyzing System)がある。これは、フィ

ンランドの鉄鋼会社の労働衛生の研究者等により

考案された方法で、前述の長町の方法と異なり、

体幹、上肢、下肢の姿勢の区分に加え、作業に伴

う重量物の保持や力の掛かり具合を評価に加えた

もので、作業状態【図2】を4桁の数字でコード

化して記録する。評価は AC(アクションカテゴリ )に照らして行う。AC1 は「作業改善の必要なし」、

AC2:「近いうちに来の改善計画にのせる」、AC3:「できるだけ早く改善する」、AC4:「直ちに改善

が必要」とされ、分析結果に基づき作業改善を行

う。姿勢の観察は、目視あるいは VTR の映像によって行い時間 (頻度 )を測定し評価を行う。前述のイチゴの栽培作業を OWAS 法で評価してみる

と姿勢コードは慣行栽培の 2141 から高設栽培の 1131 となり、AC も3か

ら1になり作業改善が行われたこと分かる。 作業姿勢モニタ 姿勢・動作の計測法には多様

なものがあるが、データの処理

に人手と時間を要する、作業者

の移動に合わせて長時間測定が

困難である、カメラの死角にな

るような動作の測定が困難であ

る、装置が高価である等の問題写真3 作業姿勢モニタ

12chロガ

センサ

ターミナル

傾斜センサ

センサ電源

心拍センサ

シリアル転送ケーブル

12chロガ

センサ

ターミナル

傾斜センサ

センサ電源

心拍センサ

シリアル転送ケーブル

荷重

体幹

上肢

下肢

荷重

体幹

上肢

下肢

図2 OWAS 姿勢コード

写真1 慣行栽培 写真2 高設栽培

がある。作業姿勢モニタは農作業のように移動しながら作業する人の姿

勢・動作を連続的に測定することを目的として開発した測定器である【写

真3】。姿勢の測定は身体の各部 (下腿、大腿、体幹等 )の傾斜角度を測定す

ることにより行う。データの記録はロガを用い、データの解析はパソコン

で行う。 図3はハクサイ苗定植作業

を慣行の手植えと全自動移植

機で行い、体幹部角度で姿勢

を分類、比較したものである。

慣行作業では、前傾角度が 30度 を 超 え る つ ら い 姿 勢 が

95%以上であったのに対し、

全自動型では 10%以下とな

り、姿勢の改善効果を確認す

ることができる。

4 作業改善のためのチェックリスト

作業改善を行うためには、作業をよく観察し、チェックリスト(人間工

学チェックポイント:ILO編集 労研出版部、農作業現場改善チェック

リスト:生研センター)等を参考に問題個所の摘出と改善策の提案を行う。 施設園芸に関わる具体的な確認項目の例としては以下のようなものが

ある。 <資材の保管と運搬> ・通路と作業場所をはっきり区分し、仕切りやマークですぐ分かるように

する。 ・運搬用通路の表面を平らにし、滑りにくく、障害物のない状態にする。 ・調製作業を行う材料、製品を運ぶために台車や車つきラックを使う。 ・手扱いが必要な重量物・容器に持ちやすい取っ手をつける。

<作業方法・内容> ・作業を行う手の高さがほぼ肘の高さになるよう作業面の高さを変えるか

足台・スタンドを用いる。 ・簡単に高さを調節でき、よい座面と腰を支えられる背もたれのある椅子

を用いる。 ・座位・立位とも姿勢変換が自由にできるように脚回りのスペースを十分

確保する。 ・単調で、繰返し手や指を使う作業の連続を避けるように作業を変えるか、

他の作業と組み合わせる。 <作業環境>

図3 姿勢改善効果の確認

・採光は不快なまぶしさのない方向にして、精密作業や中高年者向けに局

所照明具を用意する。 ・作業中・移動中に触れるおそれのある動力伝達部や障害危険部を囲う。 ・騒音や振動の原因となる装置や道具の整備を行ったり、騒音・振動源を

他の部屋に隔離あるいは覆うなどして作業者への影響を低下させる。 ・換気扇や可動式局所換気ダクト、ダクトのフランジ、フード等を利用し

有害物への暴露を少なくする。 <福利厚生条件>

・快適でゆっくりとくつろげるリフレッシュに適した休息場所を備える。 ・作業場の近くに手を洗う場所、トイレ、飲水施設を備える。

<作業組織・編成> ・追われ作業をさけて仕事の区切りが作業者ごとにつくよう、選別・調製

の終わった分の緩衝ストック場所を設ける。

5 作業環境

農業生産にかかわる作業環境要因としては、農業機械によるオペレータ

の耳元騒音、耕うん機や刈払機のハンドルから作業者の手や腕に伝わる振

動(手腕系振動)、トラクタやコンバインの座席から人体に伝わる振動(全

身振動)、穀物乾燥機や大豆脱粒機による粉じん、夏季、高温期の園芸施

設内の温熱環境などがある。 (1)騒音

騒音による人体への影

響には不快感、作業能率の

低下、生理機能の変化、聴

力障害などがある。農作業

における騒音レベルが大き

い作業機には、ネギの皮む

き作業に使用される皮むき

機の 95~102dB、追肥や防

除作業に使用される背負い

式動散の 99dB、除草作業に

使用される刈払機の 95dB などがあり、いずれも騒音のガイドライン(毎

日8時間その音に曝されて健康を害さない値)の 85dB を超える値となっ

ている。騒音による影響を減らす対策としては、音源の音圧を小さくする

(トラクタ等のエンジンの多気筒化)、音源の防音(音源を防音、吸音材

で覆う、ネギの調製機をカバーで覆う)の他、作業者の耳に入る音を小さ

くする耳栓や耳覆い(イヤマフ)の活用等がある。ネギの皮むき作業に防

音カバーを用いた場合の効果を図4に示す。

図4 防音カバーの効果

(2)温熱環境 園芸施設内の高温・高湿、炎天下の作業など温熱による人体への影響と

しては、熱中症などがある。熱中症は、暑い環境下での運動や作業によっ

て、発汗機能や循環系に異常をきたして起こる病気で、日射病や熱射病の

総称である。体温が異常に上昇し、発汗が停止するとともに虚脱やけいれ

ん、さらには意識障害を起こし、生命の危険を伴う怖い病気である。 「熱中症」と思われた場合、すぐに取るべき対応を以下に示す。

1 日陰の涼しい場所やクーラーの効いた部屋へ移動して休む。 2 衣類はゆるめ、氷や冷たいタオルで体を冷やす。 3 水分を補給する。 4 意識がはっきりしない(意識がない)場合はすぐに救急車を呼ぶ。

日本における

温 熱 環 境 の 許 容

基準としては、日

本 産 業 衛 生 学 会

の勧告がある。こ

の勧告は、高温環

境に適応し、作業

に習熟した、健康

な成年男子作業者が「温熱ストレスによる好

ましくない生理的反応があってはならない」

ことを前提として定められ、温熱環境と労働

強度(エネルギー代謝率:RMR)の許容値

が示されている【表1】。そして、温熱環境

の 評 価 は W B G T : Wet Bulb-Globe Temperature Index(湿球・黒球温度指標)

を用いて行う。 屋外で日光照射のある場合 WBGT の算出

は以下の式を用いて行う。

WBGT(℃ )=0.7NWB+0.2GT+0.1DB NWB:自然気流に曝露したままで測定された湿球温 GT:表面が黒色艶消しの中空銅球温度計の示度

DB:熱輻射源からの直接の影響を防ぎ、自然気流下の乾球温 園芸施設内の温熱環境を改善するための手段としては、換気扇、循環扇、

遮光フィルム、細霧冷房、スポットクーラー、作業者を対象とした対策と

しては小型ファンを装備した「空調服」【図5】などがある。

図5 空調服

←小型ファン←小型ファン

作業の強さ 代謝エネルギー 許容温度条件

RMR [kcal/h] WBGT(℃)

~1(極軽作業)   ~130 32.5

~2(軽作業)   ~190 30.5

~3(中等度作業) ~250 29.0

~4(中等度作業)   ~310 27.5

~5(重作業)   ~370 26.5

表1 高温の許容基準(日本産業衛生学会)

6 作業改善を進めるために

作業の効率化に向けた作業改善を進めるためには、時間調査、動作解析、

聞き取り調査等を加えた総合的な判断と、対象となる作業について十分な

知識が必要である。問題点の摘出や改善効果を確認に用いる作業負担のデ

ータは、作業者の特性(年齢、性別等)、作業環境、作業速度や圃場条件

によって大きく異なるので、測定・評価はこれらの条件に留意して行うこ

とも必要である。そして、作業計画の策定に当たっては、作業の能率や精

度の向上という視点に加え、作業者の適正労働という視点からの検討を加

え、農作業を高齢者や女性にとっても安全で快適なものに変えて行くこと

が望まれる。

単純にコスト削減という視点から作業改善効果の評価を行うと、一時的

にはコスト増という結果になるかもしれない。しかし、作業者の安全と健

康を確保し、安定した雇用を維持するためには、作業工程の改善による軽

労化は大いに意義のあるものである。

【参考文献】

1)長町三生:安全管理の人間工学 海文堂出版(1995)

2)瀬尾明彦:OWAS: Ovako 式作業姿勢分析システム

(http://homepage2.nifty.com/aseo/owas.htm)

3)桑名隆・石川文武・小林恭:ハイテク時代の農作業計測 (財)農林統

計協会(1994)

4)小林恭:農作業学、作業姿勢の計測と評価、(財)農林統計協会(1999)

5)人間工学チェックポイント 国際労働事務局(ILO)編 小木和孝訳

労働科学研究所出版部(1993)

6)菊池豊・石川文武:生研センター 農作業現場改善チェックリストと

解説(2000)

施設園芸生産コスト5割削減技術

<(2)作物別の技術>

温室メロンの生産コスト5割削減技術

[開発目標] 温室構造の改良による建設費の大幅低減

保温性の向上による光熱費の節減 新生産システムの導入による大幅な省力化

1 目 的 温室メロンは、本県の農業産出額の 4.8%(平成 16 年)を占め、本県の施設園芸を

代表する品目である。ところが、産出額、生産量はともに減少傾向にあり、平成2年

のピーク時に比べ、平成 16 年の産出額は半分以下に落ち込んでいる。そこで、静岡

県の温室メロン栽培の特徴である「高品質」を維持したまま、徹底的なコスト削減と

省力化を推進することで、企業的な大規模経営の実現を目指す。 2 現状・課題 メロン栽培には高度な栽培技術が必要

で、家族労働を中心とした 1 棟 150 ㎡前

後のガラス温室を6~7棟保有し、一戸当

たりの施設面積が 10a 前後の小規模な経

営が大部分を占めている。経営改善の方策

としては、規模拡大が必要であるが、その

ためには温室建設費の大幅な縮減、光熱費

を中心とした生産コストの削減、積極的な

雇用労働が活用できる生産システムの開

発が重要となる。 (1)施設費( 重要課題) 本県のメロンは、 高級の品質を維持するため、スリークォータ型温室が普及し

ているが、生産のための付帯設備を含めた温室建設費は 10aあたり 4,500 万円前後

と極めて高い。そこで、スリークォータ型温室の優れた環境特性を生かしたまま、

大規模化、低コスト化を可能とする新たな構造の温室を開発する必要がある。 (2)光熱費(重要課題)

温室メロン栽培には、 低でも 20℃前後の温度確保が必要となるため、生産コ

ストの中でも光熱費の占める割合が極めて高い状況にある。光熱費は、経営費のう

ち 30~40%を占め、昨年来の石油燃料の高騰により、10aあたり約 390 万円(H17試算)を越え、経営を大きく圧迫している。

(3)人件費(重要課題) メロン栽培には、10a あたり年間約 2.5 人と多くの労働力が必要とされるが、

専門的な技術等による制約で雇用は十分に活用されていない。労働時間は、年間

を通じてほぼ一定しているが、きめ細かな栽培管理を必要とするため、周年にわ

たり休日が取れない状況にある。そこで、経営規模の拡大のためには、大幅な省

力化と雇用が可能な生産システムの開発が重要となる。

3 生産コスト5割削減技術 (1)施設費

① 温室建設コストの低減(図1) ・低コスト耐候性ハウスの活用

超低コストモデル温室の実用化

…(図3、図4)

ガラス以外の被覆材の検討

骨材、基礎、温室構造の見直し ・リース温室等の積極的活用 空き温室の貸借

・ 施設の大規模化による コスト削減(図2)

② 栽培システムの低コスト化 ・隔離ベッドの改良(図4)

(培地の少量化、ベッドの簡易化)

・移動ベッドによる新栽培法の開発 (栽植密度、作付け回数の向上)

③ 暖房設備費(温湯配管)の低減 ・温風暖房の積極的導入(フェンロー型大規模温室で実用性を実証済み) ・培地加温等による省エネ技術の研究開発 <現状> <将来>

(2)光熱費

① 温室構造による保温性の向上 ・超低コスト温室の積極的導入 (表面積の拡大により光熱費の大幅節減が可能)

・温室の大規模化・多連棟化 (温室表面からの放熱の抑制)

・内部被覆の多層化(2 軸 2 層、多層カーテンの活用)

・空気膜等を活用した断熱技術の開発 ② 低温伸長性品種の育成(夜温 20→16℃目標)

・イオンビーム育種法を活用した品種育成 ③ 二酸化炭素の施用方法の見直し

建設コスト

スリークォータ型温室平均の施設規模 10a

フェンロー型温室 建設コスト施設規模 30a

メロン価格低迷 ビジネス経営体の育成重油価格高騰 新たな研究課題

10a3,000万円

10a4,500万円

さらに低コストで実用性の高い温室を

温室建設費 10a 2,000 万円以内に

図1 温室建設コストの低減目標

図2 施設の大規模化によるコスト低減

・二酸化炭素吸着資材を利用した暖房排ガスの有効活用方法の研究開発 ④ 脱石油エネルギーの活用

・ヒートポンプ、木質ペレット、電気暖房等の導入検討 ・地域未利用エネルギーの検討(工場廃熱、焼却場廃熱、バイオマス、植物残渣等の活用)

・コージェネレーションシステム(電気、熱などを同時に発生させ、これらを効

率的に利用するシステム)等の積極的な活用方法の研究

(3)人件費 ① 新生産システムの積極的な活用による省力化

・超低コスト温室による省力生産システムの導入 ・新たな自動かん水システムの開発(チューブかん水の実用化) ・夜間無人防除システムの開発 ・低コストで高度な環境制御システムの開発(ユビキタス環境制御システム等の開発)

② 産地全体、ビジネス経営体による省力化への取り組み ・育苗、収穫調整・出荷作業の分業化(センター化)

・雇用労働の有効な利用方法の開発(人材バンク) ・出荷調整作業の改善(共同出荷場、共同荷造りセンター等の検討)

左記の超低コスト温室設計の視点

①被覆材に耐久性 PO フィルム利用

②丸屋根、骨材の低コスト化

③簡易な基礎構造(施工方法の検討)

④天窓構造(南側のみ)の改善

⑤簡易な隔離ベッドによる低コスト化

<今後の検討が必要な項目>

・光・温湿度環境の確認

・栽培実証試験の実施

図3 農業試験場内に建設予定の超低コストモデル温室のイメージ

適切な

日射透過の確保 ガラスに変わる資材の検討 ~~~ ~温室構造の改善

低コスト耐候性ハウス ~~~~~・外部被覆資材の検討

・光環境(透過・分布)・温湿度環境・天窓の構造・窓制御の分割方法

きめ細かな環境制御が可能 多層カーテン(保温・遮光) ・最低限必要な機器とは?多目的細霧システム 循環扇

~~~~~~~~~~~~

快適環境 環境制御温風暖房装置

★ フェンロー型温室での省力生産システムを活かし、さらに低コスト化を進める

換気法の検討

チューブ等を利用した自動かん水システム

簡易な隔離ベッド構造(培地の少量化の検討)

図4 未来農業を志向したメロン超低コスト生産システムの開発目標イメージ

温室メロン経営の将来発展方向 従来の温室メロン経営(スリークォータ温室)

施設規模 10a (150 ㎡×6~7 棟) 家族労働 2人 高度な栽培技術、 高品質生産・ 高級メロン スリークォータ型温室

(建設費 10a 4,500 万円) フェンロー型温室

大規模化 土地の集積 資金調達の問題 家族労働+雇用 省力化・大規模化 フェンロー型温室 施設規模 36a(300 ㎡×12 区画) (建設費 10a 3,000 万円) 【 投資金額 約 1 億円 】 初期投資の金額大きすぎる。

超低コスト温室

光熱費

50%節減 50%省力化、作業の快適化 施設規模 85a、販売金額1億円 未来型のメロン超低コスト大規模経営(ビジネス経営体)

法人化による企業的経営体 超低コスト温室による新栽培方式 (建設費目標 10a 2,000 万円) 大幅な省力化・新栽培システム・作業の分業化 温室責任者(農場長)・役割分担が可能(週休制がとれる!) 施設面積 85a( 約 30a × 3 棟 )、さらに拡大も可能。 【 投資金額 1億7千万円 】 優秀な人材を育てることで、産地を担う技術者や後継者の育成も可能となる。 一般農家からの作業委託も受ける(苗供給・出荷作業・防除作業)

温室メロンコスト削減対策の概要

慣 行 (現 状) 最新方式(フェンロー型) 新栽培方式(開発目標)

スリークォータ型温室 単棟、小規模温室 1 棟 150 ㎡前後

7~10 棟順次作付け

フェンロー型温室 高軒高多連棟

1 棟 約 3000 ㎡ 温室内部を分割利用

超低コスト温室 高軒高多連棟 1 棟 約 3000 ㎡×3 棟 温室内部を分割利用

ガラス、アクリル複層版

散光ガラス、エフクリー

ン 長期展張POフィルム (10 年耐久)

温湯暖房(集中管理) 内部被覆 1 軸 1 層

温風暖房(区画管理) 内部被覆 1 軸 1 層 2 軸 2 層

温風暖房(区画管理) [ヒートポンプ利用検討]

内部被覆 2 軸 2 層

◎施設構造

(被覆材)

(暖 房)

(建設費)

10a あたり 4,500 万円以上 隔離床、暖房、内部被覆

等の生産設備含む

10a あたり 3,000 万円前後 隔離床、暖房、内部被覆

環境制御、かん水設備等

10a あたり 2,000 万円目標 温室本体、隔離床の設置コ

ストを極力抑え、環境制御

機器を充実させる。 ○経営形態 家族経営

(施設面積 10a 前後) 家族経営(雇用あり) 施設面積 30~40a

法人経営(ビジネス経営

体)施設面積 50~100a 栽培方式

○ (使用培地)

(誘引方法)

隔離床(メロン専用) 1株 1 果とり周年栽培

誘引には支柱を利用

隔離床(メロン専用) ヒモ誘引の導入によ

る省力化

隔離床(少培地による簡易

化によりコスト低減) 将来的には養液栽培の導

入も視野に検討していく。

○かん水管理 手かん水(ホース) 自動かん水(自走式等) 自動かん水(チューブ) ○かん水制御

(育苗管理)

経験と勘(1 日 1~3 回)

綿密な水管理 手かん水

経験と勘(1 日 1~3 回) 一部タイマー制御

自動かん水(散水式)

重量測定等のセンサー利

用(毎日、多かん水) 自動かん水(散水式)

年間作付け回数 4.2 作前後 4.2~4.5 作 4.5 作以上 環境制御 自動窓開閉装置または

なし 自動窓開閉装置または コンピュータ制御

ユビキタス環境制御 (遠隔制御、異常通報)

◎光熱費の節減

(保温性向上)

(節減方策)

年間の重油使用量 70~80kl/10a

(施設面積に比較し放

熱面積が大きく、燃料節

減がむずかしい)

温室表面積の減少によ

り保温性が向上する 年間の重油使用量

45~50kl/10a (30~40%節減)

年間の重油使用量(目標)

35~40kl/10a(50%節減)

・内部被覆の多層化 ・低温伸長性品種育成 ・脱石油エネルギー活用

夏期の昇温対策

メロンクーラー (冷水による夜間冷房)

高軒高による高温抑制 多目的細霧システム

多目的細霧システム ヒートポンプ等の利用

防除対策 動噴による散布 動噴による散布 省力防除法の開発必要

夜間無人防除機の開発 天敵を利用した総合防除

◎省力対策 3,528 時間/10a スリークォータ型温室

は、省力化が難しい

1,940 時間/10a (慣行対比 55.0%)

自動かん水・省力化

1,764 時間/10a (慣行対比 50%目標) 出荷調整作業の合理化

○安定した良品

生産技術 高品質、少量生産 高品質、大量生産 中~高品質、大量生産

重要度 ◎: 重要 ○:重要 なし:一般

温室メロンコスト削減対策の経済性試算結果

慣 行 (現 状) 最新方式(フェンロー型) 新栽培方式(超低コスト)

経営規模 12a 36a 85a 労 働 力 家族労力主体

家族 2 人(4,000 時間) 雇用 ( 233 時間)

(3,528 時間/10a)

家族主体、雇用活用 家族 2 人(4,000 時間) 雇用 (2,984 時間)

(1,940 時間/10a)

雇用労力の活用 家族 2 人(4,000 時間) 雇用 (10,994 時間)

(1,764 時間/10a) 生 産 量

(同じ条件に設定)

1,746 ケース (4.8 ケース / 3.3 ㎡)

5,238 ケース (4.8 ケース / 3.3 ㎡)

12,368 ケース (4.8 ケース / 3.3 ㎡)

販 売 価 格

(同じ条件に設定) 8,500 円/ケース 8,500 円/ケース 8,500 円/ケース

粗 収 益

(同じ条件に設定) 14,841 千円

(12,368 千円/10a) 44,523 千円

(12,368 千円/10a) 105,124 千円

(12,368 千円/10a)

経 営 費

11,411 千円 (9,509 千円/10a)

35,619 千円 (9,894 千円/10a)

74,122 千円 (8,720 千円/10a)

総生産コスト

家族労働費見積額・

資本利子・地代含む

[19,681 千円] (16,401 千円/10a)

[44,193 千円] (12,276 千円/10a) 慣行対比 74.8%

[83,267 千円] (9,796 千円/10a) 慣行対比 59.7%

1 ケース当り

生産コスト

11,272 円 8,437 円 (慣行対比 74.8%)

6,733 円 (慣行対比 59.7%)

農 業 所 得 3,430 千円 (2,858 千円/10a)

8,904 千円 (2,473 千円/10a)

31,002 千円 (3,647 千円/10a)

1 時間当り労働所得 857 円 2,226 円 7,751 円

利 潤 ▲ 4,840 千円

(▲4,033 千円/10a) 329 千円

(91 千円/10a) 21,857 千円

(2,571 千円/10a)

コスト低減項目

固定資本投下額

(10a あたり)

動力光熱費

(10a あたり)

53,668 千円/10a

大農具・建物・構築物

3,900 千円/10a 燃料用重油、灯油他

33,264 千円/10a

(慣行対比 62.0%)

2,730 千円/10a (慣行対比 70.0%)

23,130 千円/10a

(慣行対比 43.1%目標)

1,950 千円/10a (慣行対比 50.0%目標)

備 考

作物別技術原単位を参

考に修正 (重油価格 60 円設定)

販売単価 8,500 円 12a換算

作物別技術原単位を参

考に修正 (重油価格 60 円設定)

販売単価 8,500 円

粗収益1億円を達成でき

る規模で算定した (重油価格 60 円設定)

販売単価 8,500 円

イチゴの生産コスト5割削減技術

[開発目標] 栽培システムの低コスト化

環境制御による生産性の向上 育苗・定植・収穫出荷調整作業の省力化

1 目 的 イチゴ栽培は、高設栽培の導入で収穫労働力の軽減が図られた。しかし、依然として 育苗や定植、収穫・出荷調整に関わる労働力は 大の課題である。そこで、高設栽培を 前提として、生産性向上や省力化などを視野に入れたイチゴ栽培のコスト削減を目指す。 2 現状・課題

(1)施設費(重要課題)

イチゴは温室等の経費を懸けずに生産され

ており、育苗と定植の省力化に向けた新たな

栽培シムテムの開発・導入が必要である。

(2)光熱費(一般課題)

温暖な本県では、これまで暖房費等の経費

は少なかったが、高設栽培の導入による加温

温度上昇や養液栽培装置、側窓等の自動開閉装置の設置で光熱費が増加している。

(3)人件費( 重要課題)

①収穫・選別労働力 収穫は、収穫期間中ほぼ毎日行われ、1回当りの収穫個数も莫大で、多くの手間と

時間を要している。また、パック詰めも階級・等級により1果ずつ行われるため多く

の手間と時間が必要となる。 ②育苗・定植労働力

育苗は、4月の親株定植から9月の定植まで約6ヶ月を要し、この間ランナーの切

り離しや施肥、定期的な防除作業などが必要となる。しかも、育苗後期から定植まで

は高温下での作業となるため、労働強度は極めて大きい。さらに、大規模経営体では、

定植株数が多く、莫大な労働力が必要となり、適期定植ができないケースも見られる。

3 生産コスト5割削減技術

(1)施設費 低コスト新栽培装置の導入 ・連結ポット少量培地システム【2000 千円/10a】

(次頁「育苗と定植方法の省力化」第3図を参照)

(2)光熱費 ① ハウスの保温性の向上

・2重被覆や空気膜等の導入によるハウスの保温性向上 ② 変温管理による光熱費の節減と収量・品質の向上

・複合環境制御の装備によるハウス内の暖房費の節減

(3)人件費:労働時間削減(目標 1000 時間/10a)

① 収穫作業の改善 ・果実の位置・摘花の徹底による果数の制限(収穫時間 30%カット)

作業者が立った状態で果実を素早く認識し、手(腕)を無理なく動かせる位置に果実が 揃うようにベッドの高さや花房の位置を調節して収穫時間を低減する。また、摘花(果) を徹底し、商品価値の高い果実のみを生産することにより、収穫時間を削減する(第1図)。

・素早い果実の認識

・手を無理なく動かせる

第1図 収穫作業の改善

② 出荷形態の見直し ・等級・階級の簡素化とバラ詰め規格の導入(パック詰め時間 50%カット)

現行の出荷規格はおよそ 11 階級に分かれている。パック詰めの手間と時間を省くため、 バラ詰め規格を導入する。収穫台車の上に秤とパックを置き、階級を3段階程度とし、収穫

しながら大きさ別に規定の重さになるまでバラ詰めし、この状態で出荷する(第 2 図)。 果実の大きさ 【大】 【中】 【小】

パック

収穫台車

第2図 出荷形態の見直し

③ 育苗と定植方法の省力化 ・育苗と定植の新しいシステム導入(育苗と定植時間 50%カット)

親株からのランナーを本ぽ栽培兼用連結ポットに受けて発根させる。定植は、花芽分化 後これをそのままベッド上に置き並べる(第3図)。

【育苗】 【定植】

親株 ランナー 連結ポット 第3図 連結ポットによる育苗と定植方法の省力化

連結ポット利用の本ぽ 連結ポットによる育苗

(4)収量増加(目標収量 8.0t/10a 目標単価 800 円/kg) ① 環境制御の徹底と栽植本数の増加

栄養成長と生殖成長のバランスを勘案しながらハウス内環境の制御を行う。具体的には、

高品質・安定生産のための光合成の促進と同化産物の転流・分配を念頭においた炭酸ガス発

生装置、循環扇、暖房機、4段変温サーモを装備する。これらの環境制御により 1 株毎の生

産性が向上するとともに、現行の栽培株数 6000~7000 株/10a を 10000 株/10a に増やすこと

が可能となる。 ② 栽培マニュアルの作成・周知(行政・試験研究対応)

イチゴの収量が低い理由のひとつは、イチゴの生理・生態が十分に理解せずに管理作業を

している事例が多いことにもある。イチゴを長期にわたって安定して生産するための も重

要なポイントは、栄養生長と生殖生長のバランスをとりながら、果実に光合成同化産物を効

率よく転流・分配することにある。このためには、光合成促進のための条件(光量・温度・

湿度・風速・炭酸ガス濃度)やイチゴの生理状態を判断するポイントを体系化(マニュアル

化)し、これを栽培者に周知する。

新技術の開発目標の概要・経済性試算

慣行(現状 土耕栽培) 新栽培方式(開発目標) 温室構造 パイプハウス多連棟 多連棟型低コスト耐候性ハウス 被覆材 ビニールフィルム(毎年更新) 長期展張POフィルム(10年) 栽培方法 地床(高うね栽培) 養液栽培(高設栽培) 栽植密度 7000株/10a 10,000株/10a 環境制御 手作業(ヒトの感覚で判断) 複合環境制御(センサで判断) 温度(換気・保温)・CO2・葉面境界層

◎育苗 ポット育苗(6ヶ月間) ランナーの連結ポット受け ◎定植 手作業(1株ずつ) 連結ポット設置 ◎収穫・出荷調整 1粒ずつ・2タッチ 1粒ずつ 1タッチ

(収穫1回・パック詰め1回) (収穫+バラ詰め1回) 害虫防除 化学農薬中心 物理的防除+天敵導入により化学農薬使用量

を削減し、防除に関わる省力化を図る 労働力 家族労働中心 家族労働+雇用労力 重要度 ◎: 重要 ○:重要 なし:一般

慣行(現状) 新栽培方式(開発目標) 経営規模 20a 160a 労働力 家族2人(3,600時間) 家族2人 (2,000時間) パート雇用 (14,000時間) 生産量 3.4/10a 8.0t/10a 価 格 1,000円/kg 800円/kg 粗収益 6,800千円 102,400千円

(3,400千円/10a) (6,400千円/10a) 総生産コスト 13,762千円 76,816千円 (6,881千円/10a) (4,799千円/10a) (減価償却費 1,000千円/10a) (減価償却費 1,048千円/10a)

(雇用労賃 787千円/10a)

2,024円/kg 600円/kg

(慣行対比29.6%)

農業所得 451千円 30,782千円 (225千円/10a) (1,926千円/10a) 1時間当り 125円 15,391円 労働所得 利 潤 ▲6,961千円 25,584千円 (▲3,480千円/10a) (1,601千円/10a)

トマトの生産コスト5割削減技術

[開発目標] 連結ポット利用による栽培システムの低コスト化

労働の効率化・省力化 超低コストハウスの導入

1 目的

トマトは、国内外との価格競争に対応するため、県内のトマト栽培は高糖度等によ

る高品質化を図りつつ、コスト低減を実施する必要がある。このため、トマト栽培に

係る温室、栽培方式、暖房方法等について検討し、低コスト経営を目指す。

2 現状・課題

県内JA共販扱いのトマト栽培面積の約7

割は周年栽培で、そのうち約3割が養液栽培

となっている。その他は、土耕栽培により、

抑制栽培、促成栽培、半促成栽培が行われ、

他の作目と組み合わせている地域もある。

(1)施設費( 重要課題)

養液栽培による高糖度トマト栽培が増加しているが、ハウス、養液栽培システム

等の施設費は 10aあたり 1,500 万円程度と高額で、投資金額が大きいため大幅な

規模拡大が図りにくい。

ハウスを新設する場合、低コスト耐候性ハウスが導入されつつあるが、さらに低

コスト化を進めるとともに、栽培システムの低コスト化を図る必要がある。

(2)光熱費(一般課題)

暖房は、温風暖房が主流となっているが、より効率的な加温方式により省エネル

ギーの向上に努めていくことが望まれる。

近年の重油高騰により光熱費が高くなっており、重油使用量の低減、重油代替エ

ネルギーの検討などが必要である。

(3)人件費(重要課題)

ほとんどが家族労働により、トマト栽培が行われている。

規模拡大を図るためには雇用の活用が必須であるが、規模拡大を図るほど経営費

における人件費の割合が高くなるため、省力化、作業効率の向上が重要となる。

また、選果作業の省力化のため、自動選別機能等を備えた共同選果システムを

導入している産地もある一方、生産者が個別に選果・荷造り作業を行い、労働の

負担軽減が必要となっている産地もある。

3 生産コスト5割削減技術

(1)施設費

超低コストハウス・栽培システムの開発・

導入

・国が研究中の超低コストハウス及びユ

ビキタス環境制御システム(高性能分

散型環境制御)の導入

※ユビキタスは、利用者がコンピュータを

意識しないで利用できることを目指して

開発を進めているシステムで、安価なコンピュータ基盤を暖房機やモーター等の機

器に組み込み、これらをネットワーク化することによって、制御の自動化・遠隔操

作を簡単に行うことができる。従来のように1台のコンピュータで全ての環境制御

を集中するシステムに比べ安価で簡単に利用できる。

・大規模施設導入による、スケールメリットを生かした施設費の低減

・低コスト養液栽培システムの開発

(連結式等の栽培ポット活用、培養液の循環利用、培地連用・無培地化により、

低コスト化と環境負荷軽減を図る。)

・本県農試の提案による強制換気技術の導入(比較的安価に高温抑止が可能。)

連結ポット利用の栽培ベッド 連結ポットとトマトの根の様子

連結ポットによるトマト栽培の様子

超低コストハウス

(2)光熱費

① 省エネルギー効果が高い高効率暖房機等の導入

・高効率暖房機または省エネ型暖房方法の導入

② 重油使用量の低減策、代替策の検討・導入

・低温管理栽培体系への取り組み(低温品種の研究・開発・導入)

・廃熱の利用(工場廃熱、焼却場廃熱等)

・内部被覆の多層化

(宮城農園研の空気膜ハウスや各メーカーのエアーハウス、多層カーテン)

(3)人件費

① 雇用労働力の効率的活用

・パート雇用の効率的活用

・栽培技術を高位平準化するため、栽培マニュアルの整備により、雇用者の技術

レベルを向上

② 作業の省力化、団地化等の共同化

・省力化作業の導入(定植方法、誘引方法等の改良等)

・高品質で均一な無病苗の生産供給体系の確立

・団地化、大規模化を図り、雇用の安定確保、共同作業の効率的導入

・選果システム導入による共同選果の推進

・防除や定植・収穫等の機械やロボット等による自動化の研究

新技術の開発目標の概要・経済性試算

慣行(現状モデル)

コスト低減型ビジネスモデル

(開発目標)

◎温室構造 両屋根型(大型) 超低コストハウス

温室(被覆材) 硬質フィルム 長期展張POフィルム

◎栽培方式 養液栽培システム

ロックウール・かけ流し

糖度 5~6度

低コスト養液栽培システム

循環式

糖度 6~7度

年間作付回数 年1作 年3作(4段、5,000 株/10a)

◎環境制御 自動窓開閉装置 ユビキタス環境制御システム

(高性能分散型)

暖房(保温方法) 温風暖房機

内部カーテン

高効率暖房機

多層カーテン制御

夏期の昇温対策 遮光 遮光、強制換気システム

害虫の防除 化学農薬中心 強制換気システムに害虫侵入防止機

能を付与し、化学農薬使用量を削減、

防除の省力化(黄化葉巻病の回避)

その他(建設費)

10a 当たり

温室:11,350 千円

(両屋根大型温室&複合環境制御)

栽培装置:4,220 千円

10a 当たり

温室:6,400 千円目標

(超低コストハウス&

ユビキタス環境制御システム)

栽培装置:2,500 千円目標

重要度 ◎: 重要 ○:重要 なし:一般

慣行(現状モデル) コスト低減型ビジネスモデル

(開発目標)

経 営 規 模 30a 150a

労 働 力 家族2人(3,810 時間) 家族2人(3,810 時間)

臨時雇用(15,510 時間)

生 産 量 17t/10a 24t/10a

価 格 300 円/kg 300 円/kg

粗 収 益 15,300 千円

5,100 千円/10a

108,000 千円

7,200 千円/10a

総生産コスト

22,516 千円

7,505 千円/10a

(減価償却費 1,534 千円/10a)

442 円/kg

81,585 千円

5,439 千円/10a

(減価償却費 1,180 千円/10a)

(雇用労賃 930 千円/10a)

227 円/kg

(慣行対比 51.4%)

5農 業 所 得 726 千円

242 千円/10a

35,053 千円

2,336 千円/10a

1時間当り

労 働 所 得 191 円 9,200 円

利 潤 ▲7,216 千円

(▲2,405 千円/10a)

26,414 千円

(1,760 千円/10a)

葉ネギの生産コスト5割削減技術

[開発目標] 収穫・調整作業の効率化による雇用労働力の有効活用

低コスト栽培システムの導入による作業効率の向上 ハウスの集積による建設費・人件費の低減

1 目 的 葉ネギは、県西部地域などの一部において雇用労働力を活用した大規模経営が行われ

ているが、全県的には家族労働が主体で、比較的安価なハウスを利用した経営形態がと

られている。費用の中では、労働費の占める割合が高く、高コストな経営体質となって

いる。また、葉ネギ栽培では土壌病害防止のための土壌消毒が必須であるが、近年の重

油高騰により熱水土壌消毒等が十分できず、土壌病害の多発による生産量の低下と生産

コストの増加が課題である。 そこで、雇用の効率的活用を中心としたコスト削減を図り、将来の経営発展を目指す。

2 現状・課題 (1)施設費(重要課題)

葉ネギハウスは個人ごとに仕様は異なるが、

低コストの鉄骨ハウスが多い。しかし、施設

は数ヶ所に点在しており、作業効率が悪い。

また、複合環境制御装置が設置されていない

ハウスが多く、かん水も綿密な管理には不向

きな装置が主体で、栽培管理の省力化は比較

的遅れている。

(2)光熱費(一般課題) 土壌病害対策(黒穂病等)として、熱水消毒や蒸気消毒が行われているが、昨年

からの重油高騰により、使用重油代は化学農薬の2倍以上のコストとなり、重油を

利用した熱水土壌消毒を見合わせている農家が多い。 化学農薬使用量を低減した環境に配慮した防除の推進及び土壌病害の回避に向け

た対策を図る必要がある。 (3)人件費( 重要課題)

葉ネギ経営では、収穫と調整作業の占める割合が高いが、労働単価の高い経営主

が比較的単純な作業を実施することもあり、コスト高の一要因となっている。また、

葉ネギは、収穫直前まで土壌表面が出ており雑草が生えやすいため、除草に多くの

労力を要する。葉ネギ経営におけるコスト削減では雇用労働力の効率的活用が 重

要課題である。

3 生産コスト5割削減技術 (1)施設費

① ハウス建設コストの低減 ・葉ネギ用の統一仕様ハウスの作成と普及 ・施設用地の集積と大規模ハウスによる建設費及び人件費の削減

② 低コスト栽培システムの開発・導入 ・直播から移植による新たな栽培方法の導入 (2)光熱費

重油価格に左右されない土壌消毒技術

の開発・普及 ・代替燃料の利用、農薬を用いた土壌消 毒や還元土壌消毒、コーティング種子 の使用など様々な防除法の組合わせ

(3)人件費

① 雇用労働力の有効活用 ・施設の集積により、施設間の移動時

間の減少と労働力ロスを減少 ・作業動線の見直しによる作業場での効

率的な人員配置 ・自動調整機械の導入 ・簡易な装置・器具の開発による調整作

業等の効率化 ・調整作業の共同化(センター化) ・外部調整作業委託の運搬作業等の共同 化や物流業界の配車システム利用 ・効果的な除草技術の開発

② 栽培システム、装置・器具の開発・導入 ・自動防除システムの導入 ・多条播種機等の開発 ・低コストの鉄骨ハウス等でも利用可能な複合環境制御装置 ・綿密なかん水と同時施肥が可能な、自動潅水装置やノズルの開発・普及

③ 雇用者の効率的活用につながる生産技術の向上 ・UVカットフィルム等の利用により害虫対策を図り、防除作業を低減 ・年間を通じて安定した生産量の確保と単位収量の増大技術の確立 ・調整作業しやすい均一な生産により作業効率を高め、労働力ロスを減少

熱水土壌消毒機

葉ネギの調整作業

葉ネギのコスト削減対策の概要

慣行(現状) 新栽培方式(開発目標)

経営方法 家族労力を主体とした経営 雇用労力を 大限活用した低コス

ト葉ネギ経営 施設(被覆材)構

屋根型、丸型APハウス ビニール

同左 長期展張POフィルム

施設建設 農家個々が建設整備 施設が点在

土地集積による施設の団地化、超

大規模化 葉ネギ用様式統一仕様ハウス 大規模化による建設コストの削減

播種 播種機利用(直播) 乗用多条播種機(直播) 移植による新栽培方法

配合肥料等利用(元肥、追肥)

潅水同時施肥装置利用による施肥

量削減と施肥労力削減 施肥

個人ごとに堆肥づくり 共同管理による堆肥づくり(購入)

動噴による薬剤散布

自動防除システムの整備 無人防除機の利用 UVカットフィルム利用による害

虫対策 重油利用の熱水(蒸気)土壌消毒 代替燃料利用による土壌消毒

防除

手作業の除草 選択性のある除草剤の開発、利用 雇用を活用した除草 土壌消毒等による雑草種子対策

○かん水管理

経験と勘(1 日 1~3 回)手動、

タイマー等による頭上かん水 土壌水分、温湿度等センサー利用 綿密な潅水が可能なノズル

○環境制御、装置

なし又は 温度、雨センサーによる自動窓開

閉装置

自動窓開閉装置又はコンピュータ制御

ユビキタス環境制御によるデータ

収集、利用(遠隔制御も可能) 環境制御と組合わせた循環扇の利用

自家労力を基本とした経営 雇用労力を 大限活用

作業動線等農作業現場の改善 人員配置や作業動線の改善 作業者のほ場間移動の削減 外部調整作業委託システム等(例:

共同化、物流業界の配車システム等)

◎雇用管理、農作

作業方法・内容改善 簡易な装置、器具の開発と利用 調整作業の外注活用 施設集約による移動時間の短縮 経営主の仕事内容の見直し

○安定した良品生

産技術

時期ごとに生産量が不安定 病害虫による収量減少

生産量の安定化により、雇用労力

の効率的な利用 均一な生産により、調整作業がし

やすく作業効率が向上 重要度 ◎: 重要 ○:重要 なし:一般

葉ネギのコスト削減対策の経済性試算

慣行(現状) 新栽培方式(開発目標)

経営規模 25a 200a 労働力 家族労力主体

家族 2 人 ( 4,000 時間) 雇用 ( 1,125 時間)

雇用労力の活用 家族 2 人 ( 4,000 時間) 雇用 (24 ,700 時間)

生産量 16,095 kg (6,438kg/10a)

146,520kg (7,326kg/10a)

価 格 736 円/kg 736 円/kg 粗収益 11,846 千円

(4,738 千円/10a) 107,838 千円 (5,391 千円/10a)

総生産コスト 15,654 千円 (6,262 千円/10a)

74,974 千円 (3,749 千円/10a)

1kg 当り生産コスト 973 円 512 円 (慣行対比 52.6%)

農業所得 4,455 千円 (1,782 千円/10a)

41,966 千円 (2,098 千円/10a)

1時間当り労働所得 1,114 円 10,491 円 利 潤 ▲ 3,808 千円

(▲ 1,523 千円/10a) 32,864 千円 (1,643 千円/10a)

備 考

H15 原単位を参考に修正 25a換算

H15 原単位を参考に修正 200a 換算 労働時間 30%削減 減価償却費 10%削減 肥料費等経費 10%削減 単位生産量 13.8%増

販売価格 JA3 ヵ年平均

経営面からみた生産コスト5割削減技術の導入

経営面からみた生産コスト5割削減技術の導入

静岡大学農学部・助教授 柴垣 裕司 1 農業経営改革の必要性

わが国農業経営の大多数は、土地や労働力に問題を抱えている。また、

今後も続くであろう農産物輸入の増大と国内農業保護政策の削減に加え、

農業経営にとって大きな制約要因になってくるのが、わが国人口の減少で

ある。すなわち、食料消費量が減少してしまうのである。特に、食生活が

現在のように家庭で調理をせず、外部依存が続けば、それら食品産業の原

材料調達が輸入に依存しているため、国産農産物の消費がますます減少し

てしまう。食料消費は人間の消費能力に規定されるため、消化能力を超え

る食料は所得が上がっても、価格が下がっても消費されない。行き場を失

った農産物の供給先として輸出が考えられるが、アジア諸国への高品質高

価格農産物輸出は、アジア産との品質格差縮小を受け、今後も継続可能で

あるという保証はない。 このように、わが国の農業経営は内部環境・外部環境とも非常に厳しさ

を増してきており、個々の農業経営も革新的な技術等を導入し、農業経営

改革を果たさなければ生き残りが困難な状況にある。 静岡県では、以上のような厳しい経営環境に置かれている農業を維持・

発展させるため、家族経営から脱皮し、企業的な経営感覚で、地域の農業

を引っ張っていけるような「ビジネス経営体」の育成に取り組んでいる。

平成 17 年の農業産出額 2,516 億円、県調べによるビジネス経営体のシェ

アは 17%であるが、静岡県では平成 22 年までにビジネス経営体のシェア

を 30%にまで高めるという目標を設定している。ただし、ビジネス経営体

の育成のためには当然、各種支援策が必要であり、本プロジェクト「施設

園芸生産コスト5割削減技術の提言」もその一環を担うものであろう。 2 生産コスト削減方策と試算結果

(1)本報告書の生産コストとは

「コスト」は様々な意味で使用されている言葉であるが、本報告書では、

「対象となる生産物を一定単位生産するために費消した経済価値(費用)

の合計。ただし、生産者が負担する流通経費を含む。」とされている。こ

れは、経営外部に支払う経営費に、農業所得を構成する自作地地代見積額、

自己資本利子見積額、家族労働費見積額を加え、生産物一単位当たりに換

算したものである。

(2)生産コスト削減方策 生産コスト削減方策は作物毎に異なり、詳細は<作物別の技術>を参照

していただきたいが、一般的には次のような方策が考えられる。 ①経営規模の拡大 施設園芸では規模拡大に伴って施設の増設が必要なため、土地利用型農

業ほどは規模の経済性が発揮しづらいが、<作物別の技術>で提案された

ようにハウス一棟当たりの規模を拡大し、作業効率を高める、省力化機械

を導入することなどにより、人件費(労働時間)の削減が可能となる。な

お、規模の経済性とはそのほか、生産量を増大させることにより、生産量

の大きさに関係なく必要な固定費を生産物一単位当たりで減少できると

いうものである。 ②単収増加 コストが変化しなくても、規模の拡大がなくても、単収(単位面積当た

りの収量)を増大させることにより作物一単位当たりで算出される生産コ

ストは削減される。特に、農地の調達が困難な場合に有効な手段である。

なお、単収を増加させる生産方式では、病害虫や連作障害が発生しやすく

なるので、栽培には細心の注意が必要である。 ③機械化 わが国の労働報酬水準は世界的にみても高いため、人的労働を機械に代

替させる(労働報酬の削減と機械減価償却費の増加)ことにより、コスト

を削減できる。また、単純作業を機械に任せ、人間の技が必要な作業に集

中することで、作業効率や品質の向上が図られる。 ④分業化(外注) 農業経営は一般に、少人数で数多くの作業をこなしている。そのため、

上述の機械化のほか、作業を分業化し、当該作業の専任者を育成すること

で、作業効率の高まり、品質向上等につなげられる。経営規模の制約によ

り、経営内部の分業化が困難な場合、地域の状況にもよるが、他の経営と

協同で別組織を設立し、その組織に作業を委託するなどといった外注方式

も考えられる。 ⑤未利用資源の有効活用(経営複合化など) 上述の方策等を導入することにより、労働時間の短縮が可能となる。ま

た、大規模施設等の導入により、未利用スペースができる可能性がある。 さらには、当該作物の端境期に同施設や設備を利用して、他の作物の生

産や農産物加工等に取り組むことができる場合もある。これらの未利用資

源を有効活用(経営複合化など)することにより、当該作物が負担すべき

施設、設備、労働コスト等が削減できる。例えば、当該作物とその他の作

物が7対3の割合で同じ施設を使用したと仮定すれば、当該作物の生産コ

スト計算におけるその施設の減価償却費は、全体の 70%になる。 ⑥経営管理 生産コスト削減には、経営管理(計画-実行-検証)が不可欠である。

経営管理をしっかりすることにより、無駄を省き、効率的な経営が可能と

なる。経営管理の基本は簿記である。多くの農家が簿記記帳で得られる経

営(会計)情報を有効利用できていないため、コストパフォーマンスの面

から簿記記帳は敬遠されがちである。しかしながら、ビジネス経営体とし

て拡大志向を持つ経営者にとって、資本の有効利用を考えていく上でも経

営(会計)情報の活用は不可欠である。 以上のような方策をいくつか組み合わせて実施することで、より大幅な

生産コスト削減が可能となる。<作物別の技術>における生産コスト 5 割

削減技術にも以上の諸方策が各作物の生産技術特性に合わせて盛り込ま

れている。

(3)生産コスト5割削減技術の経済性試算結果

本報告書では、生産コスト5割削減に向けた新技術の導入効果を、静岡

県で作成している「静岡県作目別技術原単位」をもとに試算している。「静

岡県作目別技術原単位」は、静岡県が目指す作目ごとの経営モデルを経営

的、技術的に示したもので、実態調査結果を基にしつつも、例えば、「導

入する技術は、すでに利用されている技術をベースに、今後2~3年で普

及が見込まれる技術を組み入れる」などの仮定の下に策定されたモデル値

である。 次頁の表は、<作物別の技術>で試算された各作物における生産コスト

5割削減技術の経済性をまとめたものである。慣行 (現状 )方式による当該

作物生産の経済性(農業経営の中で、当該作物の生産に関わる収支のみを

示したもの)を見ると、4作物とも利潤はおろか、家族労働報酬さえも充

分に得られない状況にある。特に、家族労働のみを投入するイチゴとトマ

トにおいて、現状の時間当たり労働所得(家族労働報酬)水準では経営の

存続が危ぶまれる。 しかし、規模を拡大し、雇用労働を投入するとともに、前章で提案され

た新技術を導入すること(新栽培方式)により、試算通りの収穫量や生産

物価格、あるいは生産資材投入量や資材価格が実現されれば、生産コスト

を5割削減し、ビジネス経営体に相応しい利潤が獲得できる可能性がある

ことが明らかとなった。

(4)生産コスト削減方策の制約要因

以上、試算にあるような前提条件の下で生産コスト5割削減技術が導入

できれば、経営成果が格段に改善される可能性があることが明らかとなっ

た。 しかし、<作物別の技術>で提案された技術がすべての経営に導入可能

なわけではない。まず、規模拡大には、1 か所にまとまった土地が必要で

ある。数カ所の土地にそれぞれ小型の施設を建設していては、経営体全体

としては広い面積で生産を行っていることになるが、ほとんど規模の経済

性を発揮できず、むしろ割高となる。 また、<作物別の技術>の試算にあるように、大規模施設の建設、省力

化機械の導入には巨額の資金が必要であり、借入が可能だとしても毎年多

額の借入金返済が必要となる。単収増加において、品質を落とさずに単収

を増大させるには、規模が拡大すればするほど高度な生産技術や知識の習

得が不可欠である。分業化についても一定以上の規模がなければ雇用労働

を利用した分業化は困難であり、外注も地域ごとに事情が異なり必ずしも

可能となるわけではない。経営管理についても得られた経営(会計)情報

等の活用方法についての知識が必要である。 (5)経営内部改革の限界と経営外部協力の必要性

上述の通り、生産コスト5割削減技術の導入には困難が伴うが、これら

の技術を導入していかなければ、今後農業経営体として生き残っていくこ

とが困難になる局面が訪れようとしている。そのため、農業経営者にはこ

れらの新技術導入に向け、努力を積み重ねていくことが望まれる。 しかし、農業経営内部の改革だけでは限界がある。農業全体でみれば、

農産物価格指数は年々低下しているが、生産資材価格指数はほとんど値下

がりしていない。これは、消費者が得ている利益の多くを農業経営が農業

所得の減少という形で負担していると考えられる。そのため、今後はフー

ドシステムの各段階で農産物価格の減少分を負担する、消費者もある程度

の価格を受け入れるような仕組みの構築が望まれる。 また、上述したような借地によるまとまった農地の確保(農地集積)、

廉価な労働力の活用などを可能にするようなシステムが必要であり、設備

投資資金、運転資金の支援等と合わせ、行政の援助、指導力発揮が期待さ

れる。 3 ビジネス経営体の目標達成に向けて

本プロジェクトの目標は生産コスト 5 割削減技術を提案することである

が、同技術の導入が期待されるビジネス経営体の目標は「利潤 大化」で

あり、生産コストの削減はこの目標を達成するための手段にすぎない。

とは言え、非常に有効な手段である。 利潤は、粗収益から総生産コストを控除して算出されるので、利潤を

大化させるには、総生産コスト削減のほか、粗収益を増加させることでも

可能となる。また、作物によっては高品質ではなくとも、それなりの品質

の作物を低コストで大量生産する方法も考えられる。 近年、わが国では野菜の消費量が全体的に減少しているが、業務用需要

は増大している。周年栽培などコスト高要因はあるものの、契約栽培によ

る安定的な販売が利潤獲得に結びつく可能性もある。このように、利潤の

大化のためには生産コストの削減のみならず、消費者ニーズに対応した

「売れる」農産物生産による粗収益増加も農業経営体として考えていく必

要がある。

作物

慣行 新栽培方式 慣行 新栽培方式 慣行 新栽培方式 慣行 新栽培方式(現状) (開発目標) (現状) (開発目標) (現状) (開発目標) (現状) (開発目標)

経営規模 12a 85a 20a 160a 30a 150a 25a 200a

家族 2人 家族 2人 家族 2人 家族 2人 家族 2人 家族 2人(4,000時間) (4,000時間) 家族 2人 (2,000時間) 家族 2人 (3,810時間) (4,000時間) (4,000時間)

雇用 雇用 (3,600時間) 雇用 (3,810時間) 雇用 雇用 雇用(233時間) (10,994時間) (14,000時間) (15,510時間) (1,125時間) (24,700時間)

1,746ケース 12,368ケース

(4.8ケース/3.3㎡) (4.8ケース/3.3㎡)

価格 8,500円/ケース 8,500円/ケース 1,000円/kg 800円/kg 300円/kg 300円/kg 736円/kg 736円/kg

14,841千円 105,124千円 6,800千円 102,400千円 15,300千円 108,000千円 11,846千円 107,838千円

(12,368千円/10a) (12,368千円/10a) (3,400千円/10a) (6,400千円/10a) (5,100千円/10a) (7,200千円/10a) (4,738千円/10a) (5,391千円/10a)

19,681千円 83,267千円 13,762千円 76,816千円 22,516千円 81,585千円 15,654千円 74,974千円

(16,401千円/10a) (9,796千円/10a) (6,881千円/10a) (4,799千円/10a) (7,505千円/10a) (5,439千円/10a) (6,262千円/10a) (3,749千円/10a)

(kgあたり生産コスト) - - 2,024円/kg 600円/kg 442円/kg 227円/kg 973円/kg 512円/kg

59.7% 29.6% 51.4% 52.6%(10aあたり) (kgあたり) (kgあたり) (kgあたり)

3,430千円 31,002千円 451千円 30,782千円 726千円 35,053千円 4,455千円 41,966千円

(2,858千円/10a) (3,647千円/10a) (225千円/10a) (1,926千円/10a) (242千円/10a) (2,336千円/10a) (1,782千円/10a) (2,098千円/10a)

(時間あたり労働所得) 857円/時間 7,751円/時間 125円/時間 15,391円/時間 191円/時間 9,200円/時間 1,114円/時間 10,491円/時間

▲4,840千円 21,857千円 ▲6,961千円 25,584千円 ▲7,216千円 26,414千円 ▲3,808千円 32,864千円

(▲4,033千円/10a) (2,571千円/10a) (▲3,480千円/10a) (1,601千円/10a) (▲2,405千円/10a) (1,760千円/10a) (▲1,523千円/10a) (1,643千円/10a)

7.3t/10a8.0t/10a 17t/10a 24t/10a 6.4t/10a

生産コスト5割削減対策・新技術開発目標の経済性試算

労働力

生産量

粗収益

区分

温室メロン イチゴ トマト 葉ネギ

3.4t/10a

総生産コスト

慣行対比コスト削減率

農業所得

利潤

※温室メロンの新栽培方式の生産コストについて、固定資本投下額の慣行対比削減率は43.1%/10a、動力光熱費では同50.0%/10a。

- - - -

施設園芸生産コスト5割削減技術を目指して

施設園芸生産コスト5割削減技術を目指して

静岡大学農学部・教授 糠 谷 明 1 本プロジェクトの目標

~生産性向上と「生産コスト5割削減」の考え方~

今回のプロジェクトは、「施設園芸生産コスト5割削減技術の提言」が主要

テーマである。この題目を単純に捉えると、生産コストを単に引き下げれば

良いと言うことになるが、もちろん 終目標は農家所得の増加であり、国内

産農産物の確保である。 農家経営を悪化させている主要な原因は、農産物価格の低迷である。国内

産価格は、外国産の廉価な農産物の輸入により価格の押上が引き止められて

いる。そこで、外国産農産物に対抗できる低価格の形成と、そのための生産

性の向上が課題である。

生産性は、労働生産性、土地生産性、資本生産性の 3 つにより説明される。

労働生産性は収量(または収入)/労働時間、土地生産性は収量(または収入)/

土地面積、資本生産性は収量(または収入)/投入資本で表されるものである。

収入は収量*単価であるので、いずれにしても収量の増加が生産性を上げる

ための基本的な要因であるが、労働時間や投入資本(資材や施設建設費)の減

少も必須項目である。「生産コスト5割削減技術」と謳ったときに、ただ単

に投入資本を削減するだけでなく、収量を増加させたり、労働時間を減少さ

せたりする技術を含めて議論する必要がある。

ここで、オランダと日本のトマトの生産性を比較してみる(図1)。オラン

ダのトマトの土地生産性は、1970 年に 21t/10a であったが、1990 年には 44

t/10a と 20 年間で倍増し、現在では約 60~70 t/10a に達している。10a あ

たり年間労働時間は約 750 時間で一定である。これを基に現在の労働生産性

を算出すると約 50~80 kg/時間、労働効率(労働生産性の逆数)は約 13~

19 時間/tである。これに対して、日本ではいろいろな作型があるので、こ

れらを平均すると、土地生産性約 20t/10a、労働時間約 2000 時間/10a/年、

労働生産性は約 10~15kg/時間、労働効率は約 100 時間/tである。オランダ

ではなぜここまで生産性が高くなったかと言う解説は紙面の制約の関係で

他に譲るが、我々が教訓とすべきは、30 数年前はオランダも日本と同じレベ

ルにあったことである。35 年間の間に大きな差がついてしまったわけだが、

日本でも高い目標を掲げ、技術を結集すれば必ずやその目標を達成できると

信じる。

オランダの施設園芸農家は、すべてが数 ha 規模の経営で、10ha 以上に及

ぶ大きい経営体も珍しくない。オランダの生産者はこのような大規模な場合

でも、日本の生産者と同じように汗にまみれて温室で働いているが、企業経

営をしていると言う意識も高く、1 日の労働時間も 8 時間程度で切り上げて

いる(切り上げることが可能である)。また、土、日も休みと言う場合が大半

である。

さて、話を静岡県あるいは日本の施設野菜生産の現状に戻してみよう。経

営規模が 30~40a という現状の規模でのコスト削減、生産性向上にはおのず

と限界がある。コスト削減技術を組み立てるためには、少なくとも 1ha 規模

の施設栽培における生産体系を基本とすることは必至である。静岡県では、

農業生産額の 30%がビジネス経営体により産出されることを期待しており、

オランダ 日本0

10203040506070

収量(t/10a)

オランダ 日本0

500

1000

1500

2000

2500

労働時間(時間/年)

オランダ 日本0

10203040506070

生産性(t/hr)

オランダ 日本0

50

100

150

生産性(hr/t)

1トン取るのに何

時間働くか?1時間働くと何ト

ン取れるか?

労働時間(時間/年/10a) 収量(t/10a)

1時間働くと何 kg 取れるか? 1トン取るのに何時間働くか?

図 1 オランダと日本のトマト生産性の比較

本プロジェクトでの「生産コスト5割削減」の提言は、スケールメリットを

生かした大規模なビジネス経営体に導入されることを基本にして議論して

きた。化石燃料の高騰により暖房費が経営を圧迫している昨今、手っ取り早

く暖房費の削減技術が求められるのは現状では十分に理解できるが、現実的

にはそのような技術は開発されていない。コスト削減、生産性の向上を達成

するためには、作型の開発や施設構造・生産システムの改良、品種改良なく

しては成し得ない。

今回の提言は現在ある技術を結集し、また今後数年以内に開発すべき技術

を組み合わせて構築した 高レベルのものである。ある意味では、開発目標

的な意味合いもかなり含まれていることは否めないが、前述したように目標

は高く持たなければ達成できないものであり、また今回の提言は決してただ

単に絵に描いた餅で終わるほど現実離れしたものではない。われわれの提言

が大規模施設栽培(ビジネス経営体)に導入されることにより、技術の完成度

がより高まるであろう。

2 採用した技術の選定理由

本プロジェクトで取り上げた作物は、本県の代表的な果菜、葉菜類である

温室メロン、トマト、イチゴ、葉ネギであるが、各作物において抱える課題

はさまざまであり、今回提言した技術を選定した基準、理由は、以下の通り

である。

温室メロンは、現状すでに生産者に導入されている大規模フェンロー温室

を基にした超低コストモデル温室の導入による 1) 温室建設コストの削減、

2)保温性の向上による光熱費の削減、3) 栽培の集約化による労働時間の短

縮を基本とし、生産費を慣行の 60%に、固定資本投下額、動力光熱費を概ね

50%とすることを目標に検討した。

イチゴは、高設栽培を前提として 1) 低コスト栽培装置の導入、2)収量

8.0t/10a を目標に栽植本数を増加させる技術や環境制御、3) 労働時間を

1000 時間/10a とするための収穫方法や出荷形態、育苗と定植方法について

検討した。

トマトは、単収向上によって kg 当たり生産コストを大幅に低減すること

を主目標とし、1)栽培方法(低コスト養液栽培システムの開発・導入)、2)温

室(超低コストハウスやユビキタス環境制御の導入)、3)暖房方法について検

討した。

葉ネギは、小規模ハウスで栽培され、また収穫、調整作業の占める割合が

多い作物であるため、1)収穫、調整作業効率の向上による人件費の見直し、

2)土地集積による施設の団地化・大規模化などを中心に検討した。

3 本技術の活用に向けて 本プロジェクトとほぼ時を同じくして、日本施設園芸協会等の主導により

「スーパーホルトプロジェクト協議会」が発足した。スーパーホルトプロジェ

クトの目標は、1)施設園芸農家の高い所得の実現、2)ハードウエアのコス

トを半減する、3 )ソフトウエアによる生産力の倍増などであるが、当面の

具体的作物としてトマトに的を絞り、収量 50t /10a、労働時間を夫婦二人

で年間 3600 時間、労働効率 37 時間 /t、販売単価 210 円 /kg、収益 1800 万

円を達成しようとするものである。目標の達成期間は 5 年間である。 スーパーホルトプロジェクトも本県の「生産コスト5割削減」プロジェク

トも、目的とするところはほぼ同じである。スーパーホルトプロジェクトは

日本の施設園芸の総力を結集して、育種から環境調節、温室構造、栽培技術・

システムまでできる限り多くの分野の意見、技術を結集する方針で議論が始

まっているが、本「生産コスト5割削減」プロジェクトでは、トマトだけで

なく、メロン、イチゴ、葉ネギを含めた 4 種類の作物で、現在の有効な技術

を中心に栽培システムや作型を見直し、これからの研究開発への道筋を立て

ると言う一面も含めて議論した。 今回半年と言う短い期間で集中的に議論し、「生産コスト5割削減」の方

向性は見えたと確信している。ここでの提言は、前述したように 1ha あるい

はそれ以上の規模のビジネス経営体での利用、導入を中心に考えているので、

現在の小・中規模の既存農家への活用と言う面では、すぐに役立つ技術とは

言えない。しかし、技術の頂点を高くすることは、底辺の拡大にもつながる

ものであり、ここでの提言が実現する暁には、必ずや既存農家への直接的、

間接的な影響が生まれるものと思われる。 なお、今後本提言を実際現場にて導入する場合、まず問題になるのはそれ

だけの大規模な土地をどのように集積するかであり、また、初期の資本投資

もかなりの額になる。ビジネス経営体の設立のためには、本提案を計画した

行政の継続した支援が不可欠である。

低コスト施設園芸緊急実証専門家プロジェクト構成員

<研究者>

静岡大学農学部教授 糠谷 明

東海大学開発工学部教授 林真紀夫

静岡大学農学部助教授 柴垣裕司 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

野菜茶業研究所高収益野菜研究チーム長 高市益行 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター高度作業システム研究チーム長 小林 恭

<ビジネス経営体>

温室メロン生産者(県農業経営士) 内藤隆久

イチゴ生産者(県農業経営士) 三倉直己

トマト生産者(㈲高橋水耕代表取締役) 高橋章夫

葉ネギ生産者(㈲グリーンオニオン代表取締役) 河合正博

静岡県農業水産部職員ワーキングメンバー

東部農林事務所生産振興課主幹 伊奈健宏

東部農林事務所生産振興課主任 長藤亮彦

中部農林事務所生産振興課主任 井上義浩

志太榛原農林事務所園芸畜産課主任 鈴木基嗣

中遠農林事務所園芸畜産課主任 原川勝好

中遠農林事務所園芸畜産課副主任 杉山明正

西部農林事務所園芸畜産課主任 塚本剛弘

農業試験場園芸部研究主幹 堀内正美

農業試験場メロン超低コストプロジェクト主任研究員 大須賀隆司

研究調整室主査 横山雅機

みかん園芸室技術指導監 竹下 泉

みかん園芸室主幹 鈴木壽浩

みかん園芸室主査 岩崎敏之

事務局(静岡県農業水産部農業振興室)

農業振興室長 中田義廣

農業振興室主幹 平出裕之

農業振興室主幹 杉本達男

農業振興室主査 斎藤寿見

「施設園芸生産コスト5割削減技術の提言書」

平成 19 年3月発行 編集・発行 低コスト施設園芸緊急実証専門家プロジェクト

静 岡 県 農 業 水 産 部 農 業 振 興 室 〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6

TEL 054-221-2813 ホームページ http://www.pref.shizuoka.jp/nousei/ns-08/index.html