14
~ 1 ~ 2019 年第 7 号 (2019.9.25) (株)JTB 総合研究所(東京都港区 代表取締役社長執行役員 野澤 肇)は、「進化し領域を拡大する日本 人の国内旅行(2019)」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な 視点で継続的に行っています。 観光を取り巻く環境はここ数年で大きく変わりました。観光の経済波及効果が期待され、地域活性化を目的に、 訪日外国人旅行者の拡大に向けた規制緩和や受け入れの体制の基盤整備が進みました。新しい多様な移動手段 (LCC、観光列車など)や宿泊施設(グランピング、ゲストハウス、民泊など)も全国に広がり、訪日外国人 旅行者が増えるとともに、日本人にとっても、国内旅行への意欲が高まるきっかけになっているようです。一方、 期を同じくして急速に進むIoTやビッグデータ、AIによる技術革新は個々人にきめ細やかに対応できる商品 やサービスを生みだし、人々の行動を変えています。その結果、価値観やライフスタイルは多様化し、旅行のあ り方や志向も従来の画一的な余暇、レジャーから変容しつつあります。 本調査研究では、こういった社会や人々の意識の変化を踏まえ、「ワーケーション」や「ブリージャー」とい った新しい概念も登場した国内旅行の現状を改めて捉え、過去の調査研究や公的データ、アンケート調査を交え ながら、人口減少が進む中での、日本人の国内旅行の活性化へのヒントを探っていきます。 *)ワーケーション:休暇を目的とした旅行に業務を組み合わせる旅行 ブリージャー:業務を目的とした旅行に休暇を組み合わせる旅行 進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019) ●旅行・観光のあり方はデジタル化や社会構造の変化、世代交代で徐々に変化し、意味・領域を拡大 ・地域と旅行者との関係は「地域の観光地に旅行者を囲い込む」⇒「地域の生活エリアでの交流」 ・「暮らすように過ごす」、「地域の産業に関わる」、「ボランティアやファンディングで支援」と関係人口の拡大 ●「最近の国内旅行について感じること」は年代によって違いが浮き彫りに ・訪日外国人の増加には若い世代ほど前向き。「経済面で地域活性化する」「文化交流が促進される」 ・「泊まってみたい個性的な宿泊施設が増えた」は若い世代、「観光列車が増えた」は上世代の支持が高い ●日本人の旅行意欲を引き上げる“ブリージャー”や“ワーケーション”の浸透で、旅先での仕事も柔軟に ・“ブリージャー”や“ワーケーション”(*)で、休暇を取りやすくなると考える割合は業務旅行経験者の約 3 割 若い世代は、「休暇旅行中の仕事が業務として認められれば、より休暇が取りやすくなる」と考える ●業務旅行に付随した観光旅行をしている延べ人数は、14,725 千人(延べ業務旅行者の約 31.8%)、消費額 は 4,856 億円と推計。業務に付随した延べ観光旅行者数が 5 割になれば、消費額は+2,769 億円の見込み

進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019›½内旅行調査... · 2019-09-25 · 人の国内旅行(2019)」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な

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~ 1 ~

2019 年第 7 号

(2019.9.25)

(株)JTB 総合研究所(東京都港区 代表取締役社長執行役員 野澤 肇)は、「進化し領域を拡大する日本

人の国内旅行(2019)」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な

視点で継続的に行っています。

観光を取り巻く環境はここ数年で大きく変わりました。観光の経済波及効果が期待され、地域活性化を目的に、

訪日外国人旅行者の拡大に向けた規制緩和や受け入れの体制の基盤整備が進みました。新しい多様な移動手段

(LCC、観光列車など)や宿泊施設(グランピング、ゲストハウス、民泊など)も全国に広がり、訪日外国人

旅行者が増えるとともに、日本人にとっても、国内旅行への意欲が高まるきっかけになっているようです。一方、

期を同じくして急速に進むIoTやビッグデータ、AIによる技術革新は個々人にきめ細やかに対応できる商品

やサービスを生みだし、人々の行動を変えています。その結果、価値観やライフスタイルは多様化し、旅行のあ

り方や志向も従来の画一的な余暇、レジャーから変容しつつあります。

本調査研究では、こういった社会や人々の意識の変化を踏まえ、「ワーケーション」や「ブリージャー」とい

った新しい概念も登場した国内旅行の現状を改めて捉え、過去の調査研究や公的データ、アンケート調査を交え

ながら、人口減少が進む中での、日本人の国内旅行の活性化へのヒントを探っていきます。

(*)ワーケーション:休暇を目的とした旅行に業務を組み合わせる旅行

ブリージャー:業務を目的とした旅行に休暇を組み合わせる旅行

進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019)

●旅行・観光のあり方はデジタル化や社会構造の変化、世代交代で徐々に変化し、意味・領域を拡大

・地域と旅行者との関係は「地域の観光地に旅行者を囲い込む」⇒「地域の生活エリアでの交流」

・「暮らすように過ごす」、「地域の産業に関わる」、「ボランティアやファンディングで支援」と関係人口の拡大

●「最近の国内旅行について感じること」は年代によって違いが浮き彫りに

・訪日外国人の増加には若い世代ほど前向き。「経済面で地域活性化する」「文化交流が促進される」

・「泊まってみたい個性的な宿泊施設が増えた」は若い世代、「観光列車が増えた」は上世代の支持が高い

●日本人の旅行意欲を引き上げる“ブリージャー”や“ワーケーション”の浸透で、旅先での仕事も柔軟に

・“ブリージャー”や“ワーケーション”(*)で、休暇を取りやすくなると考える割合は業務旅行経験者の約 3 割

・若い世代は、「休暇旅行中の仕事が業務として認められれば、より休暇が取りやすくなる」と考える

●業務旅行に付随した観光旅行をしている延べ人数は、14,725 千人(延べ業務旅行者の約 31.8%)、消費額

は 4,856 億円と推計。業務に付随した延べ観光旅行者数が 5 割になれば、消費額は+2,769 億円の見込み

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~ 2 ~

【調査概要】

調査方法:インターネットアンケート調査

対象者:過去 1 年間(2018年 9月以降 2019年 9月まで)に 1泊以上の国内旅行(業務旅行も含む)をした、全

国に居住する 20~69歳の男女 30,000人(スクリーニング)、2,062人(本調査)

調査時期:2019年 9月 10日~9月 13 日

*直近の旅行実態については、以下の「旅行についての調査(JTB)」のデータを使用

対象者:過去 1年間(2018年 1月以降 2018年 12月まで)に 1泊以上の国内旅行(業務旅行を除く)をした、

全国に居住する 20~69歳の男女 7,385人

調査時期: 2018年 12月 18日(火)~2018年 12月 22日(土)

【2018 年の日本人の国内旅行市場と旅行スタイルの変化についての概要】

1.日本人の国内延べ旅行者数は 56,178 千人。人口減少や消費増税の中でも微増で、旅行意欲は高い

日本人の人口は 2010年をピークに 18年までに 200万人以上減少し、日本人の国内旅行市場は確実に減少して

います。観光庁の「旅行・観光消費動向調査」による日本人国内延べ旅行者数および消費額の推移を見ると、消

費税率が 5%から 8%と上がった 14年、災害が多かった 18 年では、延べ旅行者数、消費額とも減少しましたが、

大きな流れでは、延べ旅行者数、消費額ともに微増で、人口減少が進む中でも旅行への意欲は衰えていないこと

がうかがえます。延べ宿泊者数は 17年から減少していますが、消費額はほぼ横ばいで単価が上昇しており、訪

日外国人旅行者数の増加と宿泊施設の稼働率上昇の影響も少なからず受けていると考えられます(図 1~図 3)。

(図 1)日本人人口と国内延べ旅行者数の推移 (図 2) 日本人国内旅行消費額の推移

(図 3)訪日外国人旅行者数と客室稼働率の推移

31.4 31.6 32.0 29.7 31.3 32.6 32.3 29.1

29.9 29.7 31.1 29.8 29.2 31.5 32.4

27.1

61.3 61.3 63.1 59.5 60.5

64.1 64.8

56.2

1.26 1.26 1.26 1.26 1.25 1.25 1.25 1.24

0

20

40

60

80

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

1億人

千万人

日本人人口と国内延べ旅行者数の推移

延べ旅行者数

日帰り旅行

宿泊旅行

日本人人口

総務省「人口推計」、観光庁「旅行・観光消費動向調査」よりJTB総合研究所作成

14.8 15.0 15.4 13.9

15.8 16.0 16.1 15.8

5.0 4.4 4.8

4.5

4.6 4.9 5.0 4.7

19.7 19.4 20.2

18.4

20.4 21.0 21.1 20.5

0

5

10

15

20

25

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

兆円

日本人国内旅行消費額の推移

消費額

日帰り旅行

宿泊旅行

観光庁「旅行・観光消費動向調査」よりJTB総合研究所作成

622 836

1,036

1,341

1,974

2,404

2,869 3,119

51.8%

54.8% 55.2%

57.4%

60.3%59.7%

60.5%61.2%

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

’11 ’12 ’13 ’14 ’15 ’16 ’17 ’18

万人訪日外国人旅行者数と客室稼働率の推移

訪日旅行者数

客室稼働率

観光庁「宿泊旅行統計調査」よりJTB総合研究所作成

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~ 3 ~

2.旅行・観光のあり方はデジタル化や社会構造の変化、世代交代で徐々に、しかし大きく変化

観光エリアに「旅行者を囲い込む」から、旅行者が「地域の生活エリアで地域の人々と交流する」時代へ

これまでの研究から、私たちは旅行・観光のあり方は図 4、図 5のように進化しつつあると考えています。高

度成長期には、新幹線や高速道路、ジャンボジェットなどの交通インフラが整備され、生活が豊かになるととも

に、レジャー志向が高まりました。また核家族が増えたこともあり、旅行の形態は団体から個人へと変化しまし

たが、情報の取得手段は限られ、行動は同質的でした。現在は、誰もがスマートフォンを所有し、SNSを通じ

て各人のネットワークが構築され、情報の取得だけではなく「発信」により「個人」の力が強くなっています。

地域と旅行者との「関係性」は変化し、ネットワークの中で循環する「個人」発信の情報も地域のブランドイメ

ージの形成に重要な位置を占めるようになってきました。名所・旧跡を巡る従来型の観光スタイルはなくなりま

せんが、観光地や観光事業者から一方的に発信された情報をもとに同じように行動するのではなく、個人の価値

観や志向がより強く反映される旅行のあり方へと広がりをみせています。

当社の過去の調査で「旅行先での交流についての考え方」を年代別に聞いたところ、「地域の活動に参加する

など積極的に交流を持ちたい」、「地域の産業についてより深く知りたい」と考えているのは 20代男性に多く、

一方「地域の歴史や文化についてより深く知りたい」は 60代男女が最も多い結果でした(参考1)。若い世代ほ

ど旅先で生活エリアでの地元の人との交流を望み、上の世代は知的好奇心を埋めるような観光の場を求める傾向

にあるようです。これは訪日外国人に対する調査でも同様の結果となり、グローバルな傾向と考えられます。

(図 4)変わる観光の志向と“ツーリズム”領域の拡大

(図 5)情報の流れと地域と旅行者のつながり・関係性の変化

非日常型(感動・満足)旅の動機 異日常型(感心・共感)

名所・旧跡、物見遊山的志向

(同一的・画一的)旅の目的 個人の価値観や志向が反映

地域内の観光地に

旅行者を囲い込む

地域と旅行者との関係

地域の生活エリアでの交流・人との触れ合い

旅のスタイル

拠点を持って動くいいとこどり

一筆書き周遊旅行

(Before)これまでの観光 (After)これからの観光

“暮らすように”すごす

地場産業などに関わる

ボランティアやファンディングなどで“支援”する

多地域居住・テレワークが広がる

サブスクリプション(定額)制施設や古民家活用など宿

泊施設が多様化する

テーマ性の高い目的型旅行が増える

観光スポットだけでなく日常の風景が観光資源になる

観光地

旅行者 旅行者 旅行者

旅行者

旅行者

旅行者

旅行者

観光地

旅行者

観光地の紹介 土地の「物語」を伝える

JTB 総合研究所

JTB 総合研究所

観光地が主体のブランディング ブランディングに旅行者が関わる

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~ 4 ~

(参考 1) 交流についての考え方 (複数回答) JTB 総合研究所

【国内旅行の実態と今後の意向】

3.旅行先は居住地から「遠方」が回復傾向に。日数は 1 泊 2 日が減少し、2 泊 3 日、3 泊 4 日が増加傾向に

旅行の予約時期は年々早期化。2 か月前以上の予約が増加し約半数を占める。希望日程で確実に予約したい

計画段階で参考にする情報源は「家族・友人・知人」が最多。「SNS」も増加。「宿泊施設のサイト」が 18 年は 2 位に

ここ数年、日本人はどのような国内旅行をしているのでしょうか。JTBの「旅行についての調査」から調査

対象者の直近の旅行について経年で見てみます。居住地から旅行先への距離に関しては、「遠方(居住地域と接

していない地方)」が回復傾向にあり、18年は割合を 33.4%に伸ばし、近場(居住地域と同じ地方)より高い結

果となりました。旅行日数も 2泊 3日、3泊 4日が増加傾向で、地域別には、18年は北海道、九州、沖縄のシェ

アが前年より高くなっています(図 6~図 8)。

旅行の予約時期は年々早期化しています。2か月前以上の予約は 18年には合算で 49.9%と約半数まで増え、

特に「3~6 か月前」は、16年の 17.7%から 18年の 22.5%へと大きく伸びました。最も多い理由は「希望の日

程で確実に予約したい」で、3 年連続で上昇しています。訪日外国人旅行者が急伸したことによる、決まった日

にちの中で、行きたい場所に確実に予約したいという意識の表れもあると考えられます(図 9)。

旅行を計画する段階で参考にした情報源については、「家族・友人・知人」、「宿泊施設の観光サイト」が上位

となり、年々増加し続けています。「ガイドブック」や「パンフレット」という紙媒体は緩慢ですが減少傾向で

す。SNSは全体としては少ないものの、年々増加しています。年代別に情報源の内訳をみると、20代は「家

族・友人・知人から意見を聞いた」や「SNSで観光地や旅行会社の評判を調べた」、「旅行会社の店頭でスタッフ

にアドバイスや情報を聞いた」など、他の年代に比べて人の意見やクチコミを重視する傾向が明らかになりまし

た(図 10~図 11)。

(図 6) 国内旅行の行先(居住地からの距離別) (単一回答) (図 7) 国内旅行の日数 (単一回答)

地域の活動に参加するなど、積極的に交流を持ちたい

農家民泊など、地域の人とふれあえるところに

泊りたい

お店のおばちゃんなどと雑談をするのが好き

地域の歴史や文化について、より深く知りたい

地域の産業について、深く知りた

地域の日常生活に触れ

たい

地域の人とよりも、旅行者同士で現地の情報交換をしたり、交流したり

したい

その他

地域の人や他の旅行者と交流を持ちたいと

思ったことはない

全体 3608 8.8 8.7 23.6 39.3 13.9 21.1 6.8 0.6 32.3

男性 20代 258 20.5 12.4 22.5 33.7 22.5 23.6 7.8 0.0 28.7

男性 30代 258 13.2 10.5 18.6 36.0 16.7 19.8 6.6 0.4 33.3

男性 40代 258 9.3 9.7 29.1 35.3 14.3 19.4 5.8 0.4 34.1

男性 50代 515 5.8 6.6 21.0 42.1 15.7 21.0 3.7 0.6 30.3

男性 60代 515 8.0 8.9 24.5 48.3 14.8 22.3 8.2 1.0 29.9

女性 20代 258 10.1 8.5 26.4 23.3 8.5 17.1 8.5 0.0 41.5

女性 30代 258 7.8 12.0 22.9 31.4 12.4 19.8 2.7 0.4 38.4

女性 40代 258 10.9 8.5 22.9 35.3 13.2 19.8 4.3 0.0 36.0

女性 50代 515 7.0 8.2 25.2 41.0 11.5 22.9 8.7 0.6 30.5

女性 60代 515 5.2 6.4 23.5 46.4 11.8 21.7 8.9 1.2 29.5

54.3%

54.9%

54.4%

51.9%

28.0%

27.9%

28.8%

29.2%

9.7%

8.9%

9.4%

10.3%

8.0%

8.2%

7.5%

8.6%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2015年度(n=7327)

2016年度(n=7287)

2017年度(n=7436)

2018年度(n=7385)

国内旅行の日数

1泊2日 2泊3日 3泊4日 4泊以上

32.3%

35.6%

33.7%

31.6%

36.1%

35.5%

35.7%

35.0%

31.7%

28.9%

30.6%

33.4%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

2015年度(n=7327)

2016年度(n=7287)

2017年度(n=7436)

2018年度(n=7385)

国内旅行の行先(居住地からの距離別)

近場 中距離 遠方

JTB 総合研究所 JTB 総合研究所

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~ 5 ~

(図 8) 国内旅行の行先(地域別) (単一回答) (図 9)国内旅行の予約申し込み時期(単一回答)

(図 10) 国内旅行を計画する段階で参考にした情報源 (複数回答)

(図 11) 旅行の計画段階で参考にした情報源(2018 年・年代別) *上位のみ抜粋 (複数回答)

8.6%

8.0%

8.1%

8.5%

6.9%

6.4%

6.7%

6.4%

5.1%

6.5%

5.9%

5.4%

17.9%

18.0%

18.6%

18.2%

4.7%

4.8%

4.5%

4.5%

6.4%

7.5%

7.0%

7.1%

10.9%

11.1%

10.9%

10.5%

15.1%

14.6%

15.9%

14.7%

5.1%

5.3%

5.4%

5.7%

3.3%

2.9%

2.8%

3.2%

10.6%

9.7%

9.7%

10.4%

5.4%

5.3%

4.4%

5.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

2015年度(n=7327)

2016年度(n=7287)

2017年度(n=7436)

2018年度(n=7385)

国内旅行の行先(地域別)

北海道 東北 北関東 首都圏 北陸 甲信越 東海 近畿 山陰・山陽 四国 九州 沖縄

6.4% 6.8% 7.2%

17.7% 20.0% 22.5%

18.2%18.4%

20.2%

24.1%23.9%

23.4%

12.7%12.4%

10.6%

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2016年度

(n=7287)

2017年度

(n=7436)

2018年度

(n=7385)

国内旅行の予約申し込み時期

当日・出発後

前日~前々日

3日~1週間前

1~2週間前

2週間~1か月前

1~2か月前

2~3か月前

3~6か月前

6か月以上前

32.7%

28.2%

20.2%18.4%

16.7% 16.5%14.2% 13.8%

10.0% 9.3% 8.8%7.1%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

家族・友人・知人

宿泊施設のサイト

旅行会社のサイト

ガイドブック

観光施設のサイト

パンフレット、ちらし

観光地のサイト

口コミサイト

航空会社のサイト

価格比較サイト

店頭スタッフの話

SNS

旅行を計画する段階で参考にした情報源(上位のみ抜粋)

2016年度(n=7287) 2017年度(n=7436) 2018年度(n=7385)

32.7

28.2

20.2 18.4

16.7 16.5 14.2 13.8

10.0 9.3 8.8 7.1

0%

15%

30%

45%

家族・友人・知人

宿泊施設のサイト

旅行会社のサイト

ガイドブック

観光施設のサイト

パンフレット、ちらし

観光地のサイト

口コミサイト

航空会社のサイト

価格比較サイト

店頭スタッフの話

SNS

旅行の計画段階で参考にした主な情報源(年代別)

20代(1356) 30代(1336) 40代(1415)

50代(1264) 60代(1505) 全体(7385)

JTB総合研究所

JTB 総合研究所 JTB 総合研究所

JTB 総合研究所

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~ 6 ~

4.「最近の国内旅行について感じること」は年代によって違いが浮き彫りになる。次世代をけん引する 20 代に注目

訪日外国人旅行者の増加による影響は、若い世代ほど前向きに受け止める

若い世代ほど「ある目的に特化した旅行をするようになった」、「SNS での発信を目的に旅行するようになった」と考える

「最近の国内旅行について感じること」について聞いてみたところ、見えてきたのは、20代を中心とするミ

レニアル世代・ゼネレーションZ(ポストミレニアル世代)(*特徴は参考 2を参照)と、上の世代との考え方の

ギャップでした。インターネットやスマートフォン、SNSが子供の頃から身近にあった彼らは、各人の情報ネ

ットワークや人との繋がりを持ち、今後の行動や消費に影響を与える世代として世界的に注目されています。

訪日外国人旅行者が急増したことへの考え方:「混雑する観光地に行かなくなった(28.2%)」、「自然環境が悪

化するので増えて欲しくない(23.4%)」が全体で上位となりましたが、こういったネガティブな意識は年齢が

高いほど上がる傾向が見られました。一方、「日本の良さを再認識した」、「経済面で地域活性化するので増えて

欲しい」というポジティブな考えは若くなるほど高い傾向となり、参考でみられるようなミレニアル世代、ゼネ

レーション Zの特徴を表していると言えるでしょう。

旅行資源の多様化:「泊まってみたい個性的な宿泊施設が増えた(26.9%)」、「乗ってみたい観光列車が増えた

(21.7%)」が全体では上位となりました。宿泊施設に関しては 20代、30代が高い結果となり、逆に観光列車

は 50代、60代が高く、年代で違いが出ました。また「訪れてみたいライブやイベントが増えた」と感じている

人は全体で 9.2%でしたが、20 代、30代に、より高い傾向が見られました。全体としては少数ですが、「ボラン

ティアを目的とした旅行するようになった」も 20代、30 代が高い結果となりました。

旅行目的の多様化:名所旧跡巡りや温泉など従来からある旅行目的の他に思っていることを聞いたところ、「あ

る目的に特化した旅行をするようになった」が 9.0%、特に 20代(11.7%)、30代(10.1%)が高い結果となり

ました。また「SNSでの発信を目的に旅行するようになった」は全体では 3.8%とわずかですが、やはり若い

世代が高い傾向があり、20代は 8.7%となりました。

デジタル化の影響:「情報が溢れすぎてどう旅行先を選べばよいかわからないことが増えた(20.7%)」につい

ては、年代別の差異はみられませんでした。「SNSで、あまり知られていない旅行先の情報を得られるように

なった(16.5%)」は若い世代は上の世代に比べ、かなり高い傾向にあり、20代で 29.4%でした。一方で、僅か

ですが、「人やAIなどにお任せして楽に旅行先を決めたいと思うことが増えた(3.8%)」も高く、20代で 5.7%、

30 代で 5.4%と、意思決定の煩わしさを感じている人が、若い世代により多いことがわかりました(図 12~図

14)。

(図 12) 国内旅行について感じること(訪日外国人旅行者の増加による影響・年代別) (複数回答)

15.3

8.1

28.2

23.3 21.7

23.4

17.6

10.6 8.1

2.9

0%

10%

20%

30%

日本の良さを

再認識した

注目された話題の

場所に行きたくなった

混雑する観光地には

行かなくなった

ホテルや旅館の

予約が取りにくくなった

ホテルや旅館の

価格が上がった

自然環境が悪化する

ので増えてほしくない

生活環境が悪化する

ので増えてほしくない

経済面で地域活性化

するので増えてほしい

文化交流

が促進されるので

増えてほしい

訪日外国人旅行者が増えて 自分が住んでいる地域には その他

最近、国内旅行について感じること(訪日外国人旅行者の増加による影響)

20代(402) 30代(404) 40代(414)

50代(416) 60代(426) 全体(2062)

JTB総合研究所

ポジティブ ネガティブ

ネガティブ

ポジティブ

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~ 7 ~

(図 13) 国内旅行について感じること(訪日外国人旅行者の増加による影響・世代別) (複数回答)

(図 14) 国内旅行について感じること(観光資源の多様化、目的の多様化、デジタル化の影響) (複数回答)

(参考 2) ミレニアル世代とゼネレーション Z(ポストミレニアル)世代の特徴 JTB 総合研究所

5.他業種の参入による競争激化、訪日外国人旅行者や新世代の新しい価値観の影響で宿泊施設が多様化

簡易宿所に宿泊する訪日外国人旅行者は、2015 年から 2018 年までの 4 年間で約 3.3 倍の伸び

利用を増やしたいのは「温泉旅館」。20~30 代は「都市型旅館」や「テーマ性のある宿泊施設」の利用意向が高い

訪日外国人旅行者の増加も後押しし、様々な業界からの参入により新しい形態の宿泊施設が増えました。簡易

宿所(カプセルホテル、ゲストハウスの他、新しい形態の宿泊施設も多く登録される)の施設数も増加し、簡易

宿所における訪日外国人延べ旅行者数は 2015 年から 2018 年までの 4 年間で約 3.3 倍となりました(図 15)。

15.3

8.1

28.2 23.3 21.7 23.4

17.6

10.6 8.1

2.9

0%

10%

20%

30%

40%

日本の良さを

再認識した

注目された話題の

場所に行きたくなった

混雑する観光地には

行かなくなった

ホテルや旅館の

予約が取りにくくなった

ホテルや旅館の

価格が上がった

自然環境が悪化する

ので増えてほしくない

生活環境が悪化する

ので増えてほしくない

経済面で地域活性化

するので増えてほしい

文化交流

が促進されるので

増えてほしい

その他

訪日外国人旅行者が増えて 自分が住んでいる地域には

最近、国内旅行について感じること(訪日外国人旅行者の増加による影響)

ゼネレーションZ(101) ミレニアル(345) プレゆとり(314) ポスト団塊Jr.(208)

団塊Jr.(211) バブル(457) 全体(2062)

26.9 21.7

12.5 9.2

7.4 6.9

2.2

9.0

4.7 3.8 2.6 1.8

20.7

16.5

3.4 2.9

0%

10%

20%

30%

40%

泊まってみたい個性的な

宿泊施設が増えた

乗ってみたいと思う

観光列車が増えた

訪れてみたい美術館や

芸術祭などが増えた

訪れてみたいライブや

イベントが増えた

ミステリーツアーなど

驚きがある企画が増えた

地域で体験してみたい

体験プログラムが増えた

応援したい「ご当地

アイドル」が増えた

ある目的に特化した

旅行をするようになった

地域を元気にするための

旅行をするようになった

SNS

での発信を目的に

旅行するようになった

就活や自己啓発を意識し

旅行するようになった

ボランティアを目的として

旅行するようになった

情報が溢れ旅行先をどう選

ぶかわからないことが増えた

SNS

で、あまり知られて

いない旅行先の情報を

得られるようになった

人やA

I

などにお任せして

楽に旅行先を決めたい

と思うことが増えた

その他

最近、国内旅行について感じること

20代(402) 30代(404) 40代(414)

50代(416) 60代(426) 全体(2062)

JTB総合研究所

デジタル化の影響観光資源の多様化 旅行の目的の多様化

世代別 JTB 総合研究所

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~ 8 ~

民泊の営業には「2 泊以上の宿泊」や「年間 180 日まで」などの制約があることから、古民家などを活用した宿

泊施設が“簡易宿所”として運営される場合も増えていると考えられます。

前章では、若い世代を中心に「泊まってみたい個性的な宿泊施設が増えた」と感じている割合が高いことがわ

かりました。そこで、具体的にどのような宿泊施設に関心があるのか、宿泊施設の利用実態と今後への意向を聞

きました。「今後の利用を増やしたい」という割合が、「過去 1年間に利用した」の割合を超えているものをみる

と、「温泉旅館」、「シティホテル」、「民宿・ペンションなど」が上位でした。新しい形態の宿泊施設に関する利

用意向をみると、全体では「都市型旅館(星のや東京、Hotel zen tokyo など和モダンをコンセプトとする宿)」

が高く、20.7%でした(図 16)。年齢別には、「都市型旅館」の利用意向は、特に 20代女性と 30代男女で高く、

「テーマ性のある宿泊施設(泊まれる本屋®など)」は 20代と 40代女性、「古民家、町屋」は 40代女性で高くな

りました。20代女性は民泊を除き、全体的にどの施設にも利用意向が高い傾向があるようです(表 1)。

最近では、日本でも動画や音楽の定額配信サービス(サブスクリプションサービス)が広がってきましたが、

海外では、航空機やレストラン、宿泊施設などの定額利用サービスも増えています。そこで、旅行や滞在に関連

するサブスクリプションサービスについての利用意向を聞きました。利用してみたいサービスで最も高かったの

は、「全国の登録宿泊施設に泊まれる(28.6%)」で、「複数の交通機関が使える(26.9%)」が続きました。全国

の施設に泊まるためには、移動手段も必要になることから、両方のサービスをセットで考えていくことも必要で

しょう。性年代別にみると、「全国の登録宿泊施設に泊まれる」は男性 60代での利用意向が高く、「登録された

レストランが利用できる」、「ワークスペースの使い放題」は 20代の男女で高い傾向でした(図 17)。

(図 15) 宿泊施設形態別の延べ旅行者数推移(訪日外国人旅行者と日本人)

(図 16) 過去 1 年間に利用した宿泊施設と今後利用を増やしたい宿泊施設 (複数回答)

0.73 0.78 0.85 0.91

0.88 0.93 1.05 1.19

2.29 2.51

2.92

3.65

2.45 2.50

2.75

3.04

0.18 0.20

0.38

0.60

6.56 6.94

7.97

9.43

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

2015 2016 2017 2018

(千万人) 【訪日外国人】 宿泊施設形態別の延べ旅行者数推移

総計(千万人)

簡易宿所

シティホテル

ビジネスホテル

リゾートホテル

旅館

観光庁「宿泊旅行統計調査」のデータを基に、JTB総合研究所作成

4年間で3.3倍

9.86 9.49 9.22 9.05

6.30 6.20 6.43 6.61

18.85 18.34 18.74 19.56

5.51 5.18 5.23 5.41

2.41 2.27 2.57

2.97 0.84

0.82 0.81 0.78

43.75 42.31 42.99

44.37

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

2015 2016 2017 2018

(千万人) 【日本人】 宿泊施設形態別の延べ旅行者数推移

総計(千万人)

会社・団体の宿泊所

簡易宿所

シティホテル

ビジネスホテル

リゾートホテル

旅館

観光庁「宿泊旅行統計調査」のデータを基に、JTB総合研究所作成

52.2

42.4

12.9 16.7

4.8 5.2 5.5 1.6 3.2 1.8 4.0

46.6

20.7 15.9

11.5 4.4

1.2

68.6

43.2

20.7 20.7 19.5 14.5 14.1 11.4 8.7 6.2 5.0

4.3

35.5

16.6 9.9 9.8

3.8 0.8

0%

20%

40%

60%

80%

温泉旅館

シティホテル

民宿・ペンション・

国民宿舎など

都市型旅館

交通機関(観光列車、

クルーズなど)

会員制宿泊施設・

タイムシェアなど

グランピング・

キャンプ場など

図書館、古城などテーマ

性のある宿泊施設

古民家、町屋

ゲストハウス、

ユースホステルなど

民泊・

バケーションレンタル

カプセルホテル

ビジネスホテル

自家用車

実家・親戚・知人宅

(別荘含む)

レンタカー

インターネットカフェ・

マンガ喫茶など

その他

過去1年間に利用した宿泊施設と今後利用を増やしたい宿泊施設

過去1年間に利用した(2062) 利用を増やしたい(2062)

JTB総合研究所

「利用を増やしたい」が「利用経験」を上回るもの 「利用経験」が「利用を増やしたい」を上回るもの

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~ 9 ~

(表 1) 今後利用を増やしたい宿泊施設(性年代別) *抜粋 (複数回答)

(図 17) 利用してみたいサブスクリプションサービス (複数回答)

6.20 代、30 代男性は二拠点生活、長期滞在に関心が高い

観光の志向の変化に伴い、地域と旅行者の関係は「観光エリアでの旅行者の囲い込み」から「地域の生活エリ

アでの交流や触れ合い」に変わってきました。その結果、特定の地域に対して「深く知りたい」、「支援したい」

という思いが生じ、旅行者の再訪意向が高まっていると考えられます。特に 20 代を中心としたミレニアル世代

やゼネレーション Z は、他の世代と比べてこういった意識が高いことから、消費者としての旅行者に留まらない、

地域活性化の担い手となる「関係人口」としても期待が集まります。ここでは“拠点を持つ”ことに関連し、移

住、長期滞在、二拠点居住などへの意識を聞きました。

全体として関心のある滞在の形態としては、「二拠点居住(20.7%)」、「長期滞在(19.2%)」が上位となりま

した。性年代別にみると、「二拠点居住」は男性の 40~60 代で高く、「長期滞在」や「移住(U ターン)」は 20

代、30 代の男性で高い結果でした。総じて、長期的な滞在に関しては、女性より男性の関心が高いようです(図

18)。

長期的な滞在をしたい理由として高かった項目は、「自然が豊かなところに住みたい」、「生活費が安い場所で

暮らしたい」、「その場所が好きだから」などでした(図 19)。

都市型旅館グランピング・キャンプ

場・コテージ

テーマ性のある宿泊施

古民家、町

ゲストハウス、ユースホ

ステルなど

民泊・バケーションレンタ

全体(2062) 20.7 14.1 11.4 8.7 6.2 5.0

男性 20代(201) 20.4 12.9 12.9 6.5 10.9 7.0

男性 30代(201) 29.9 20.9 13.9 10.4 7.5 9.5

男性 40代(204) 19.6 15.2 6.4 5.4 4.9 4.9

男性 50代(212) 17.0 8.0 5.2 5.7 3.8 3.3

男性 60代(213) 13.6 8.0 7.5 9.4 1.4 2.3

女性 20代(201) 24.9 21.9 19.9 9.0 12.4 4.0

女性 30代(203) 26.6 22.7 12.8 10.8 8.9 4.9

女性 40代(210) 19.0 18.1 16.2 12.9 7.1 5.7

女性 50代(204) 18.6 9.8 11.3 9.8 2.5 4.4

女性 60代(213) 18.3 4.7 8.9 7.0 2.8 4.7

28.6 26.9

19.4

10.6

4.2

0%

20%

40%

全国の登録宿泊

施設に泊まれる

複数の交通機関が

利用できる

登録されたレストラン

が利用できる

複数の家

に住める

ワークスペース

の使い放題

利用してみたいサブスクリプション(定額制)サービス

男性 20代(201) 男性 30代(201) 男性 40代(204) 男性 50代(212)

男性 60代(213) 女性 20代(201) 女性 30代(203) 女性 40代(210)

女性 50代(204) 女性 60代(213) 全体(2062)

JTB総合研究所

JTB 総合研究所

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~ 10 ~

性年代別では、60 代男性で「自然が豊かなところ (図 18) 長期的な滞在への興味 (複数回答)

に住みたい」が高く、20 代女性は「生活費が安い

場所で暮らしたい」、「家族・知人の近くに住みたい」、

「環境の良い場所で子育てしたい」が高くなりまし

た。20 代男性は「第二の仕事場を持ちたい」、「環

境の良い場所で子育てしたい」、「起業したい」など、

長期滞在先で仕事を持ちたい、という意識がみられ

ました。長期的な滞在ができない理由としては、「仕

事がない(43.6%)」、「今の仕事を辞めたくない、

辞められない(27.1%)」と、仕事関連の理由が上

位でした。「なんとなく踏ん切りがつかない」は男

女とも 60 代で突出して高くなりました。若い世代

は、仕事の問題さえなければ熟年世代より動きが軽

いようです(図 20)。

(図 19) 長期的な滞在をしたい理由 (複数回答)

(図 20) 長期的な滞在ができない理由 (複数回答)

56.3

36.7

26.2 21.3

17.1 16.1 15.6 12.5 12.0 11.2

7.8 2.3

0%

20%

40%

60%

80%

自然が豊かなところ

に住みたい

生活費が安い場所で

暮らしたい

その場所が

好きだから

地域活性化に

かかわりたい

家族・知人の近くに

住みたい

第2

の仕事場を

持ちたい

環境の良い場所で

子育てしたい

起業がしたい

伝統産業・地場産業

にかかわりたい

家業を継ぐ、親の

介護のため

農業にかかわりたい

その他

長期的な滞在をしたい理由

男性20代(107) 男性30代(103) 男性40代(93) 男性50代(93)

男性60代(101) 女性20代(70) 女性30代(64) 女性40代(75)

女性50代(81) 女性60代(80) 全体(867)

JTB総合研究所

43.6

27.1 23.1 22.8 21.8 20.1

13.3 12.1 11.8 6.9 6.9

0%

20%

40%

60%

仕事がない

今の仕事を辞めたく

ない、辞められない

知り合いがなく、不安

なんとなく踏ん切り

がつかない

家族の仕事や学校、

世話などの都合

土地勘がない

住む場所が

見つからない

行きたい場所について

情報が少ない

家族や友人の反対

土地の人に受け

入れてもらえない

その他

長期的な滞在ができない理由

男性20代(107) 男性30代(103) 男性40代(93) 男性50代(93)

男性60代(101) 女性20代(70) 女性30代(64) 女性40代(75)

女性50代(81) 女性60代(80) 全体(867)

JTB総合研究所

20.7 19.2

10.9

8.2

0%

10%

20%

30%

二拠点生活に

興味がある

長期滞在に

興味がある

移住(I

ターン)

に興味がある

移住(U

ターン)

に興味がある

長期的な滞在への興味

男性 20代(201) 男性 30代(201) 男性 40代(204)

男性 50代(212) 男性 60代(213) 女性 20代(201)

女性 30代(203) 女性 40代(210) 女性 50代(204)

女性 60代(213) 全体(2062)

JTB総合研究所

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~ 11 ~

7.“オンとオフ”の融合:「テレワーク・デイ」参加率(自分または家族)は 8.5%。参加者のうちテレワーク実施は 69.5%

テレワークの場所は「自宅や職場の近隣(41.4%)」が最多。「国内旅行先で仕事を経験」した割合は 24.2%

前述の「利用してみたいサブスクリプションサービス」として、若い世代は「ワークスペースの使い放題」が

高い傾向でしたが、時間や場所にとらわれない働き方の広がりにより、休暇と仕事の関係性も変化してきました。

そこで、今夏に実施された「テレワーク・デイズ(*)」の認知や参加の実態、テレワークやノマドワーク(様々

な場所で自由に働く)への意識について調べました。

テレワーク・デイズの認知度と参加率を地域ごとにみると、認知度は首都圏で最も高く、37.7%でした。自分

自身が参加した割合は、首都圏と名古屋圏が 7.2%、九州・沖縄が 7.0%と続きました。参加者が実際に行った

内容は、テレワーク(合算)69.5%、時差出勤(46.1%)が上位でした。国内や海外の旅行先でテレワークを実

施した割合はそれぞれ 24.2%、10.9%で、“ワーケーション”や“ブリージャー”など、“旅行先で仕事をする”

という行為も広がっていることがわかります(図 21~図 22)。

今後や東京 2020 オリンピック期間中の働き方についての意識を性年代別にみると、男女共に、20~30 代の

若い世代で普段からテレワークや時差出勤など、時間や場所にとらわれない働き方をしたい、という意識が高く

なりました(図 23)。

(*)政府が東京都や関係団体と連携し、東京 2020 オリンピックの開会式にあたる 7 月 24 日を「テレワーク・デイ」と位置づけ、

2017 年より進めているテレワーク国民運動プロジェクト。2019 年は 7 月 22 日~9 月 6 日の約 1 ヶ月間にテレワークや時差出

勤、有給休暇取得などの一斉実施を呼びかけ、全国で 2887 団体が参加した。

(図 21) テレワーク・デイズの認知と参加 (単一回答) (図 22) テレワーク・デイズで実施したことと実施場所(複数回答)

(図 23) 今後やオリンピック期間中の働き方への意向 (複数回答)

70.8

75.8

62.3

75.3

74.4

74.9

75.3

74.4

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体(2062)

北海道・東北・北関東(314)

首都圏(690)

甲信越・中部(146)

名古屋圏(207)

大阪圏(339)

近畿・中国・四国(194)

九州・沖縄(172)

テレワーク・デイズの認知と参加

自分も家族も参加 自分だけ参加

家族だけ参加 自分も家族も参加しなかった

その他 知らなかった

知っていた(29.0%)41.4 39.8

24.2

10.9 9.4

0.8

46.1

38.3

14.8

0.8

0%

20%

40%

60%

自宅や職場の近隣

自宅

国内旅行先

海外旅行先

帰省先

その他

時差出勤

有給休暇を取った

出張を入れた

その他

テレワーク・デイズで実施したこととテレワークの場所

自分自身(128)

JTB総合研究所

テレワーク(合算)69.5%

26.6 24.2

16.8

9.2 9.9 8.8 7.8

2.3

0%

20%

40%

在宅勤務をしたい

時差出勤をしたい

場所にとらわれず

働きたい

実家や旅先でも

勤務したい

テレワークや時差

出勤をしたい

休暇を取って

観戦したい

休暇をとって

旅行したい

その他

今後やオリンピック期間中の働き方への意向

男性 20代(201) 男性 30代(201) 男性 40代(204) 男性 50代(212)

男性 60代(213) 女性 20代(201) 女性 30代(203) 女性 40代(210)

女性 50代(204) 女性 60代(213) 全体(2062)

JTB総合研究所

普段から オリンピックの期間中

JTB 総合研究所

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~ 12 ~

8.“ブリージャー”や“ワーケーション”で休暇を取りやすくなると考える割合は業務旅行経験者の約 3 割

若い世代ほど、休暇旅行中の仕事が業務として認められれば、より休暇が取りやすくなると考える

次に、業務旅行で観光も実施する“ブリージャー”や休暇中に業務を実施する“ワーケーション”について詳

しくみてみます。

国内の宿泊業務旅行の実施中に、付随して実施した旅行で最も多かったのは、「名所旧跡などを巡る観光旅行

(26.7%)」で、「音楽やスポーツイベント参加など特定目的の旅行(5.8%)」、「家族友人訪問(5.8%)」が続き

ました。男女別に比較すると、男性より女性の方が付随した観光を実施している割合が高いことがわかりました

(図 24)。

過去 1 年間の間に業務旅行をした経験がある人に対し、“ワーケーション”や“ブリージャー”についての意

識を聞いた結果では、全体としては「仕事で行った旅行に休暇を付けられれば、もっと休暇が取りやすくなる

(30.5%)」の回答が「プライベートで行った先でする仕事が会社から業務として認められれば、もっと休暇が

取りやすくなる(27.0%)」を上回り、“ブリージャー”の方がより休暇が取りやすくなると考える人が多い傾向

となりました。しかし年齢別にみると、20 代は全体の傾向とは異なり、「プライベートで行った先でする仕事が

会社から業務として認められれば、もっと休暇が取りやすくなる(38.1%)」が最も高くなりました(図 25)。

また、フルタイムで仕事をしている人に対し、プライベートでの旅行中にどの程度、仕事をした経験があるか

を聞いた結果では、仕事をした(合算)の割合は 28.1%となり、約 3 割の人は何らかの仕事をしたことがある、

と回答しました。また、内容についても、メールのチェックや電話連絡だけでなく、書類作成などの作業や電話

会議など、多岐にわたっています(図 26)。

(図 24) 国内宿泊業務旅行に付随して実施した旅行 (複数回答)

(図 25) ワーケーションやブリージャーへの意識 (複数回答)

26.0

5.5 5.3 1.0 0.8

31.1

8.2 8.7 3.3 0.5

26.7

5.8 5.8 1.3

0.8

0%

20%

40%

名所旧跡などを巡

る観光旅行

音楽やスポーツイベ

ント参加など特定目

的の旅行

家族友人訪問

結婚式、新婚旅行

その他

国内宿泊業務旅行に付随して実施した旅行(すべて)

男性(1136) 女性(183) 全体(1319)

JTB総合研究所

30.5 27.0

24.5 21.7

19.0 19.0

10.4 6.9

0.2

0%

15%

30%

45%

仕事で行った旅行に休暇

を付けられれば休暇が

取りやすくなる

プライベート旅行先での

仕事が業務として認めら

れれば休暇が取りやす

くなる

仕事とプライベートは完

全に分けたい

仕事先に家族を同伴す

るのは気が引ける

仕事に休暇を付けるのは

気が引ける

Wi-Fi

などの環境が整い、

以前より旅行先で仕事

がしやすくなった

どうせ仕事をするので

業務として認めてほしい

セキュリティ強化などで

以前より旅行先で仕事

がしにくくなった

その他

ワーケーションやブリージャーへの意識

20代(118) 30代(108) 40代(106)

50代(131) 60代(85) 全体(548)

JTB総合研究所

Page 13: 進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019›½内旅行調査... · 2019-09-25 · 人の国内旅行(2019)」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な

~ 13 ~

(図 26) プライベートでの旅行中に仕事をした経験と内容 (複数回答)

【“暮らす”と“泊まる”がボーダレスに ~宿泊施設の多様化~】

デジタル化によって、私たちは、情報収集や働き方など様々な面で、時間的・空間的な制約から解放され、“暮

らすように旅をする”、“旅するように働く”といった新しい旅行スタイルを生み出しました。また、訪日外国人

旅行者の急増により、観光産業が注目され、様々な業種が参入したことで競争が激化する中、差別化のための様々

な取り組みが進み、多様な宿泊施設が出現しています。

現状の宿泊施設を、① 旅する(短期滞在)/暮らす(長期滞在) ② 機能特化/付加価値特化 という2

軸で整理したのが図 27 です。短期滞在向け機能特化型としては、宿泊場所にフロントがなく、常駐スタッフも

いない人件費を抑えた「無人ホテル」、長期滞在の機能特化型としては、定額制で全国住み放題のサブスクリプ

ションサービス、短期滞在向け付加価値特化型としては、その時だけ、特別な場所に出現するポップアップホテ

ルなどがあります。また、暮らすまではいかないけれど、その土地の人々との交流を深めたいというニーズの高

まりに対しては、まち全体を一つの宿泊施設ととらえ、宿泊者と地域との交流を促す“分散型ホテル”も増えて

います。2019 年 7 月には、環境省が富裕層向け「分譲型ホテル」の国立公園内での設置を認める方針を固めま

した。長期滞在向けの付加価値特化型の施設も今後増えそうです。

(図 27) 多様化する宿泊施設

28.1

19.2

12.9 11.1

5.6 5.1

0.0

0%

20%

40%

仕事をした(合

算)

メールや資料

などのチェック

部下や

同僚に指示

資料作成

などの作業

電話会議

などへの参加

仕事関連の打ち

合わせ

その他

プライベートでの旅行中に仕事をした経験と内容

20代(250) 30代(283) 40代(287)

50代(260) 60代(172) 全体(1252)

JTB総合研究所

*フルタイム就業者

従来型の別荘や会員制リゾート

旅する

滞在する

暮らす

機能特化 付加価値特化

サブスクリプションサービス、定額制の全国す

み放題(ADDressな

ど)

まち全体が宿泊体験エリア(京都ENSO ANGO

星のリゾートOMOなど)

低価格フランチャイズホテル、無人ホテル(OYO、MIZUKAなど)

ライフスタイルホテル(TRUNK

など)

ポップアップホテル、テーマ型ホテル(Collective

Retreatsなど)

古民家リゾート(平泉倶楽部、

NIPPONIAなど)

国立公園内分譲型ホテル

サービスアパートメント

多様化する宿泊施設

進化系カプセルホテル

従来型のホテル、旅館

Page 14: 進化し領域を拡大する日本人の国内旅行(2019›½内旅行調査... · 2019-09-25 · 人の国内旅行(2019)」の調査研究をまとめました。当社は生活者の消費行動と旅行に関する調査分析を多様な

~ 14 ~

【“観光”から“ツーリズム”へ。旅行・観光における領域拡大の可能性】

過去に世界経済フォーラムがまとめた観光競争力ランキングで、ビジネス旅行からプライベート旅行へとつな

げる取り組みが課題とされたこともあるように、日本では業務にプライベートをつなげることに「気が引ける」

といった風潮がありました。しかし働き方が多様化する中で、若い世代を中心に“ブリージャー”や“ワーケー

ション”も広がってきていることが調査結果からわかりました。そこで、そのような動きから、今後の観光旅行

拡大の可能性を考えるため、今回の調査結果と「旅行・観光消費動向調査(観光庁)」のデータ(延べ旅行者数

者数と 1泊当たりの消費単価)を元に、延べ業務旅行に付随して観光旅行をしている人数を推計したところ、延

べ旅行者数は 14,725千人(延べ業務旅行者の約 31.8%)でした。消費額は 4,856億円で、宿泊観光消費額全体

の 13兆 395億円の 3.7%となりました。仮に、延べ業務旅行者数の半数が観光を実施した場合の消費額は 7,625

億円(+2,769億円)となります。今後、業務旅行に観光を付随する動きが広がれば、一定の経済効果が期待で

きると考えられます(図 28)。

2019年 4月、京都府舞鶴市の赤れんがパークに「Coworkation Village MAIZURU」がオープンしました。“仕

事をしに旅に出る”をコンセプトにしたこの施設は、「働く」という行為を通じて、地域との継続的な交流の促

進を目指すものです。このような地域での「観光」を超えた交流を促す試みも増えています。

本文で述べてきたように、若い世代を中心に、「暮らす」と「泊まる」、「出張」と「観光」がボーダレスにな

り、「旅行」の概念は広がりつつあります。二拠点居住のようなライフスタイルも生まれてきました。今後、日

本人の人口減少はさらに進み、国内市場は小さくなると考えられますが、「旅行・観光」は領域を拡大し、市場

を広げる可能性があるのではないでしょうか。

(図 28) 業務旅行に付随する延べ観光旅行者数の推計

165,010

79,798

46,245

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

国内宿泊旅行(291,053千人)

業務旅行に付随する延べ観光旅行者数の推計

出張・業務

帰省、友人訪問等

観光・レクリエーション

観光庁「旅行・観光消費動向調査」、JTB総合研究所「国内旅行調査2019」より

JTB総合研究所作成

14,725

業務旅行に付随した延べ観光旅行者数

(14,725千人)が、

延べ観光旅行者数(合算)

に占める割合:5.7%

延べ業務旅行者数に占める割合:31.8%

延べ観光旅行者数

合算(推計)

259,533千人

2018年の業務旅行者のうち、

半数(23,123千人)が、

業務旅行に付随して

1泊の観光旅行を実施した

と仮定した場合の

消費額(推計):7,625億円

<お問い合わせ>

(株)JTB総合研究所

調査・分析担当:早野、波潟

広報担当:早野・三ツ橋

03-6722-0759 www.tourism.jp