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妊娠中の歩行運動の効果 1 原著論文 妊娠中の歩行運動が妊娠・分娩・産褥期に及ぼす効果 土居 悦子,加納 尚美 茨城県立医療大学保健医療学部看護学科 要旨 【目的】健康な妊娠期の経過をたどる初産婦を対象に,妊娠中の歩行運動が妊娠,分娩及び産褥の経過に及ぼす 効果を明らかにすることである。 【方法】県内の総合病院 1 施設において前向き手法を用いた記述的関連検証研究を行った。対象は出産予定日が 2008年8月から11月の期間で合併症がない単胎妊娠で妊娠経過が正常な初産婦24名である。運動処方を用いた歩 行運動を程度別に分け,体力および情緒の測定値を従属変数とし相違の有無の検定を行った。信頼区間95%を算 出した。 【結果】分析対象となった24名の平均歩行数は5874(±1655.91)歩だった。分析の結果,妊娠末期に歩行運動を 継続することで柔軟性(t=2.036,df=23,p<0.05)筋力(t=2.036,df=23,p<0.05)母性理念(t=2.22,df=23, p<0.05)胎児感情(t=3.149,df=23,p<0.05)において変化がみられた。週 2 回以上 1 日平均5000歩以上の歩行 を継続することで持久力(t=2.940,df=22,p<0.05)の有意な関連がみられた。分娩及び産褥期において変化は 見られなかった。 【結論】妊娠中の歩行運動には運動処方を用いた歩行運動を行う事で,体力や情緒面においての効果が示唆された。 キーワード:妊娠,歩行運動,運動処方 Ⅰ はじめに 妊娠中の健康管理として運動に興味を持つ妊婦は 多い。一般的に妊娠中に行う運動は主に有酸素系の 運動が効果的であるといわれている。これらの中で も歩行運動は取り組みやすく,運動に自信のない人 でも手軽に行うことのできる安全な運動と認識され ている。欠点としては十分な根拠のある指示に基づ いた歩行運動としてではなく,妊婦の自主性に任せ られている傾向がある 1) 。一般的には安産への効果 があると考えられている歩行運動であるが,妊娠・ 分娩・産褥期への効果は十分ではない。欧米では妊 娠中の運動は一定の効果が認められているが 2) ,そ れらの結果をそのまま国内の妊婦に当てはめて考え る際には体格や体力との相違の検討を要する。 そこで本研究では運動処方を導入した後に歩行運 動を持続的に行った妊婦に対して,妊娠期間中の歩 行運動の効果として妊娠後期から分娩,産褥期の体 力及び情緒の変化を妊娠分娩の経過を追って検証す ることを目的とする。 1. 用語の定義 (1)歩行運動 歩行を脚筋などの大筋群を使う全身運動とし健康 連 絡 先:土居 悦子  茨城県立医療大学保健医療学部看護学科 〒3000394 茨城県稲敷郡阿見町阿見46692 電  話:0298402221 FAX:0298402321 Emaildoieipu.ac.jp 茨城県立医療大学紀要 第 20 巻 A S V P I Volume 20

妊娠中の歩行運動が妊娠・分娩・産褥期に及ぼす効果 · 理念,対児感情,自己管理能力を含めた。妊娠期を 母親役割の準備期間と捉えたうえで,母親役割に影

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妊娠中の歩行運動の効果 1

原著論文

妊娠中の歩行運動が妊娠・分娩・産褥期に及ぼす効果

土居 悦子,加納 尚美

茨城県立医療大学保健医療学部看護学科

要旨

【目的】健康な妊娠期の経過をたどる初産婦を対象に,妊娠中の歩行運動が妊娠,分娩及び産褥の経過に及ぼす

効果を明らかにすることである。

【方法】県内の総合病院 1施設において前向き手法を用いた記述的関連検証研究を行った。対象は出産予定日が

2008年8月から11月の期間で合併症がない単胎妊娠で妊娠経過が正常な初産婦24名である。運動処方を用いた歩

行運動を程度別に分け,体力および情緒の測定値を従属変数とし相違の有無の検定を行った。信頼区間95%を算

出した。

【結果】分析対象となった24名の平均歩行数は5874(±1655.91)歩だった。分析の結果,妊娠末期に歩行運動を

継続することで柔軟性(t=2.036,df=23,p<0.05)筋力(t=2.036,df=23,p<0.05)母性理念(t=2.22,df=23,

p<0.05)胎児感情(t=3.149,df=23,p<0.05)において変化がみられた。週 2回以上 1 日平均5000歩以上の歩行

を継続することで持久力(t=2.940,df=22,p<0.05)の有意な関連がみられた。分娩及び産褥期において変化は

見られなかった。

【結論】妊娠中の歩行運動には運動処方を用いた歩行運動を行う事で,体力や情緒面においての効果が示唆された。

キーワード:妊娠,歩行運動,運動処方

Ⅰ はじめに

 妊娠中の健康管理として運動に興味を持つ妊婦は

多い。一般的に妊娠中に行う運動は主に有酸素系の

運動が効果的であるといわれている。これらの中で

も歩行運動は取り組みやすく,運動に自信のない人

でも手軽に行うことのできる安全な運動と認識され

ている。欠点としては十分な根拠のある指示に基づ

いた歩行運動としてではなく,妊婦の自主性に任せ

られている傾向がある1)。一般的には安産への効果

があると考えられている歩行運動であるが,妊娠・

分娩・産褥期への効果は十分ではない。欧米では妊

娠中の運動は一定の効果が認められているが2),そ

れらの結果をそのまま国内の妊婦に当てはめて考え

る際には体格や体力との相違の検討を要する。

 そこで本研究では運動処方を導入した後に歩行運

動を持続的に行った妊婦に対して,妊娠期間中の歩

行運動の効果として妊娠後期から分娩,産褥期の体

力及び情緒の変化を妊娠分娩の経過を追って検証す

ることを目的とする。

1. 用語の定義

(1)歩行運動

 歩行を脚筋などの大筋群を使う全身運動とし健康

連 絡 先:土居 悦子  茨城県立医療大学保健医療学部看護学科     〒300-0394 茨城県稲敷郡阿見町阿見4669-2電  話:029-840-2221 FAX:029-840-2321 E-mail:doie@ipu.ac.jp

茨城県立医療大学紀要 第 20 巻A  S   V  P  I Volume 20

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茨城県立医療大学紀要 第20巻2

増進を目的とした有酸素運動の一つであるとした。

(2)体力

 体力を妊娠期の身体的な影響因子と捉え,体力を

持久力,柔軟性,筋力とした。

(3)情緒

 妊娠中の情緒とは,妊娠の経過や胎児の成長に

伴って形成されていく心理社会的な感情とし,母性

理念,対児感情,自己管理能力を含めた。妊娠期を

母親役割の準備期間と捉えたうえで,母親役割に影

響を及ぼす心理的な影響因子とした。

(4)運動処方

 運動処方とは,運動が安全で効果的に行われるた

めに,指導者が運動の健康に対する利点とリスクを

考え併せたうえで,運動の種類,強度,持続時間,

頻度,進め方を決めることをいう3)。

Ⅱ 研究方法

1. 研究方法の概要

1.1 研究デザイン

 本研究は,妊娠中に歩行運動を継続した妊婦の体

力および,精神的な変化と,それらに関連する要因

を検証する,前向き手法を用いた記述的関連検証研

究である。

1.2 調査施設及び研究参加者の選択基準

 調査場所は,茨城県内2次救急対応の総合病院に

おいて実施した。研究参加者の選択基準として,合

併症がない単胎妊娠,妊娠経過が正常な初産婦とし

た。研究開始時期は妊娠期の安定期でありより,安

全性を確保するため妊娠末期で参加者数は40名を予

定とした。

2. 研究手順

2.1 研究のプロトコール (図‒ 1)

2.2 研究内容の説明

2.2.1 研究の流れ

(1)歩行の注意

 「歩行の注意」の内容には適切な運動頻度,強度,

安全についての歩行運動を行う上での注意事項をパ

ンフレットにて提示した。パンフレットは調査施設

図- 1 研究のプロトコール

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妊娠中の歩行運動の効果 3

の産科医師からの了解を得た後に第1回測定時に配

布した。歩行運動としては,歩行の時間は1日20分

以上60分以内,または,1回の歩行時間を10分で区

切って行ってもよいとした。その理由としては,研

究時期が7月からという時期であったため,熱中症

などの配慮を優先した。「歩行の注意」は測定時の

度に参加者に確認をした。

 運動強度はBorgの自覚的運動強度の判定表(RPEスケール)を用いて説明した4)。運動強度は11以上

13以下とし,頻度は週2回以上行ったものを歩行運

動とすることを説明した。初回には歩行を一緒に行

い実際の運動強度を確認した。計測時には実際に付

き添い運動強度の確認を行った。

 また,ストレッチを歩行運動の安全性を高めるた

めに取り入れた。ストレッチは下肢を中心に6種類

提示した。ストレッチに関しては歩行運動の際の準

備運動やクールダウンを目的としたものであった。

ストレッチを行う上での注意事項をパンフレットで

説明し,ストレッチを実際に行なって見せた。

(2)記録用紙の記入

 運動記録用紙には万歩計による毎日の歩行数,歩

行運動時間,自覚的運動強度(PRE),ストレッチの有無を研究参加者に記入してもらった。万歩計に

よる歩行数の測定法は,装着は入浴時以外の起床時

より就寝時までの1日中とし,装着期間は一週間に

2日以上の装着で分娩に至るまでとし,運動記録用

紙は測定のたびに持参するよう依頼した。測定時に

は持参した用紙はそれまでの体調やどのように生活

していたかなど確認に用いた。

(3)面談

 面談は,運動記録用紙を参考に歩行運動の状況や,

身体状況の聞き取り確認を中心に行い,その他心配

なこと,歩行運動の進め方について面談した。また,

歩行運動の見直しを行った。

(4)「メディカルチェック」

 「メディカルチェック」5)の項目は,母体血圧,

心拍数,体温,子宮収縮の有無,胎児心拍数測定と

した。メディカルチェックは問診として計測を行う

度に行った。

(5)体力測定及び情緒測定の回数とその時期

 測定回数は,体力測定は妊娠期間中に3回とした。

情緒測定のみ妊娠期に3回に加えて分娩終了後の計

4回とした。測定は妊婦健妊診時や参加者の都合に

合わせる。測定時期は,第1回目は歩行運動を行う

前に行い基礎体力とし,2回目は運動の方法に対す

る生理学的反応のチェックを考慮に入れ2週間後に

評価した。3回目は37週に入ってからとした。産褥

期の測定については,分娩の疲労が回復し精神的に

も安定する産褥3日目とした。

(6)分娩内容の聞き取り

 分娩経過については,産後3~ 4日目に本人から

聞く。内容は分娩様式,分娩時体重,児体重,出血

量である。

3. 歩行の効果に関する測定用具

3.1 体力測定

(1)持久力としての「6分間歩行測定」

 6分間歩行は多くの筋群を使った動的運動であ

り,遂行能力は,呼吸機能,心臓,血管系,および

骨格筋機能に依存する歩行テストである。また,6

分間歩行は危険が少なく,測定時間も短くすみ,信

頼性を持って体力を推定することが出来る6)。 6分

間での歩行距離を測定するもので,測定方法は歩幅

測定(5.5mを歩行し歩数より歩幅を割り出す)を行った後,万歩計をつけ6分間歩行を行う。歩幅と

歩行数より6分間の歩行距離数を算出する。

 データ収集に用いた万歩計(ミリオンウォーカー:

ドリテック)は加速度センサー式のものであり,歩

行精度は±3%以内で液晶デジタルにて表示される。 安全に歩行運動を行うために運動強度が適当であ

るかを確認する意味で,6分間歩行の前後,途中に

心拍数の測定を行った。心拍数は,スポーツ心拍計

(ポラールF11tmスポーツ心拍計:Polar electro oy社製)を使用し歩行の前後の測定を行った。

(2)柔軟性の測定として「前後開き値」(以下前後

値とする),「左右開脚値」(以下左右値とする)

 柔軟性の評価には一般的には立位体前屈,座位体

前屈テストなどが用いられるが,妊娠中の測定体位

としての安全性を配慮して前後開きおよび左右開脚

値を測定項目とした。選定の根拠は妊娠中におこな

うとよいとされるストレッチの運動で鼠蹊部,股関

節を伸ばす運動として恥骨,股関節の柔軟性を増す

効果があるといわれているポーズに組み込まれてい

る動作であるためとした。

(3)筋力としての「握力値」

 筋力測定の代表的な測定は握力測定であり,握力

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茨城県立医療大学紀要 第20巻4

は上肢の静的筋力を代表する尺度である。測定も簡

易であり他の筋力の測定値と高い相関があるといわ

れている7)。

3.2 情緒測定

(1)母性理念スケール「肯定」「否定」

 母性理念8)とは妊娠・分娩・育児への態度や価値

観を母性理念としてとらえたものである。母性理念

スケールの質問項目は伝統的な母親役割を肯定する

内容の項目(肯定項目)18項目,伝統的な母親役割

を否定するような内容の項目(否定項目)9項目か

らなっている。質問用紙の信頼係数は肯定項目得点

で r=0.87,否定項目得点 r=0.79であり信頼性は高いものとなっている。回答は5件法である。

(2)対児感情評定スケール「拮抗」

 対児感情評定スケール9)は母親の児に対する感情

を形容詞で表している。児を肯定し受容する方向の

感情を接近感情14項目,児を否定し拒否する感情を

回避感情とし14項目で構成されている。それらの拮

抗は母親の児に対する動機や行動を阻害することも

あるとして,個人の中で両感情がいかに拮抗してい

るかを拮抗指数として求める。数値が低いほど相克

度が低くなる。質問用紙の信頼性,妥当性は高いも

のとなっている。回答は4件法である。

(3)自己管理能力尺度

 自己管理能力尺度10)は,開発した自己を管理する

ための認知的スキルである。保健行動との関連を明

らかにするもので,検討の際には自己管理能力が豊

富なものほど禁煙キャンペーンから脱落しにくいこ

となど認知的スキルと保健活動との関連を示してい

る。妊娠中の歩行運動においても自己を管理するた

めの認知スキルが関係するのではないかと考えた。

信頼性については内的整合性再テスト間の相関か

ら,妥当性については自己管理行動との関連と類似

尺度との相関から検討されて信頼性,妥当性ともに

高い。10項目からなり回答は5件法,得点範囲は5

~50点である。

3.3 歩数

 万歩計による歩数の測定は,装着は入浴時以外の

起床時より就寝時までの1日中とし装着期間は一週

間に2日以上の装着で分娩に至るまでとし記録用紙

に記入してもらった。

3.4 分娩経過

 分娩経過については,分娩終了後3~ 4日目の面

接時に本人の了解を得て母子健康手帳から聞き取り

調査した。データに不明な点がある場合は,本人の

了承と施設側の了承を得て助産録より確認した。内

容は,分娩様式,分娩時体重,出生児体重,出血量

である。

3.5 参加者の属性

 初回の面接調査時に実施した。質問事項は,年齢,

身長,非妊時体重,BMI,妊娠中の就労,妊娠前の運動歴とした。

4. 分析

 分析には統計ソフトウェアSPSS20.0J for Windowsを用いた。分析と基準は,データ収集すべての終

了時に記述統計処理を行い,歩行運動の程度別に2

群に分け従属変数に関して相違の有無の検定を行っ

た。間隔尺度のデータには独立した t 検定で有意水準は5%とした。

表‒ 1  参加者の属性

妊娠前の運動の有無 運動群 非運動群 pn=13 n=11

Mean(SD) Mean(SD)

年齢 28.31( 4.23) 26.09( 1.57) 0.115体重(kg) 54.53( 7.21) 54.35( 9.11) 0.956身長(cm) 156.27( 6.32) 160.23( 5.36) 0.956左右開脚(cm) 126.08(17.76) 125.18(15.81) 0.898前後開き(cm) 93.54(12.54) 101.00(12.36) 0.158握力(kgw) 23.31( 4.71) 26.47( 5.86) 0.1586 分間歩行(m) 426.0(88.01) 389.27(36.45) 0.210*p<0.05

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妊娠中の歩行運動の効果 5

①参加者の年齢,身長,体重および妊娠期・分娩・

産褥期の測定値の記述統計を行った。

②年齢,身長,体重の測定値および第1回の測定の

結果を妊娠前の運動の有無で比較した。対応のな

い t 検定を用いた。③妊娠中の体力・情緒および産褥期の情緒測定値の

経過的な変化の比較には,対応のある t 検定を用いた。

④妊娠中の歩行運動の有無による体力・情緒の測定

値の比較および分娩様式による比較には対応のな

い t 検定を用いた。

5. 倫理的配慮

 研究協力者に承諾を得るにあたり,研究協力依頼

書および研究説明書を提示しながら説明し,同意を

得た場合は同意書に署名を頂いた。

 体力測定及び面接にあたり,協力者の体調を考慮

し,負担のかからないよう配慮した。測定及び面接

場所に関しては,プライバシーを考慮し,協力者の

意向を確認の上行った。何らかのトラブルが生じた

場合に備え,施設側には所在の確認をおこない,妊

婦の体調に関しては問診をもとに慎重に対応した。

また,施設における業務にさし障ることのないよう

配慮した。なお,本研究に取り組むにあたり,平成

20年茨城県立医療大学倫理委員会の審査(受付番号

309)を受け承認を得た。その後研究協力依頼した

A施設における倫理委員会の審査を受け,承認を得てから調査を開始した。

Ⅲ 結  果

1. データ収集期間及び研究参加時期及び研究参加

者の属性

 データ収集期間は,2008年 6月27日~11月28日で

1回の面接時間及び体力,情緒測定(以降,測定と

略す)時間は平均60分程度だった。

 研究参加の承諾を得られた妊婦は合計40人で

あった。そのうちデータをそろえる為に妊娠末期で

ある妊娠28週以降の開始者24名を研究参加者とし

た。参加者における年齢平均は27.3歳,平均体重は54.4kgであった。年齢,身長,体重の測定値および第1回の測定の結果を妊娠前の運動の有無の2群で

比較を行ったが有意な差は見られなかった。

2. 歩行状況と体力及び情緒の経日的変化

 歩行開始より2週間の歩行で,最も多かった歩行

数は1日平均14731歩で,最も少なかった歩数は1

日平均2315歩だった。歩行開始2週間後から妊娠37

週までの歩行で最も多かった歩行数は9103歩,最も

少なかった歩行数は2845歩だった。参加者は歩行

をすることに慣れてきた時期であるがまだ歩行数に

よる個人差は大きいといえる。妊娠37週から分娩の

歩行で最も多い歩行数は8354歩,最も少ない歩数は

733歩だった。分娩前の時期であり個人差は大きかっ

た。(表- 2)歩行開始から分娩までの平均歩行数は

5874±1655だった。範囲は最小3091歩,最大9360歩

であった。

3. 妊娠期・産褥期の体力及び情緒の経日的な変化

 各測定時期における体力及び情緒の結果(数値は

平均±標準偏差)を示す(表- 3)

 体力の変化については「前後径」「握力」で変化

がみられた。「前後径」においては第2回から第 3

回測定週である妊娠37週の間で4.33±2.04㎝増で有意な差がみられた( t =2.036,df=23,p<0.05)。第2回目の測定である運動開始後2週間から37週間

で変化がみられた。「握力」では第1回測定値と第

2回測定値間で0.91±0.79㎏増で有意な差があった(t=2.0360,df=23,p<0.05) 情緒の変化については「対児感情」「母性理念肯定」

において変化があった。「対児感情」では第1回測

定値と第4回測定値間で6.88±1.88減で有意な差がみられた( t =3.149,df=23,p<0.05)。「母性理念肯定」では第3回測定と第 4回測定間で3.00±0.80増で有

表- 2  参加者の歩行状況

第 1回測定(初回) 第 2回測定( 2週間後) 第 3回測定(37週目)

平均歩行数(歩) 6580.88(552.31) 6280.38(394.14) 5135.92(418.03)

最小歩行数(歩) 2315 2845 733

最大歩行数(歩) 14731 9103 8354

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茨城県立医療大学紀要 第20巻6

意な差が見られた( t =2.22,df=23,p<0.05)。自己管理能力においては,有意な差は見られなかった。

 体力面及び情緒面の一部において妊娠中に変化が

あった。

4-1 継続歩行との関係

 歩行開始から2週間の期間とその後の妊娠37週ま

での期間を通して1日平均5000歩以上の歩行をでき

た場合を歩行群(13人),できなかった群を非歩行

群(11人)とし,第 3回測定値(37週目)で比較した。

(表- 4)「 6分間歩行」において75.23±33.13m増で有意な差が(t=2.940,df=22,p<0.05)みられた。

これは1日平均5000歩以上の歩行を継続したとこと

で持久力において変化が見られた。さらに開始から

分娩までを通しての歩行群(10人),非歩行群(14人)

の 2群に分け第 4回測定値(産褥3日目)と比較し

た。産褥期において情緒項目の各測定値と歩行の有

無では明らかな差はなかった(表- 5)。

4-2 参加者の分娩状況及び歩行と分娩の関係

 参加者の分娩経過は,自然分娩が19名,帝王切開

術が5名であった。帝王切開の理由は,分娩時の分

娩遷延および分娩遷延であった。自然分娩の19名の

平均分娩時体重は65.0kg,平均分娩時出血は464.2

表- 3  妊産褥婦の経日的変化

表- 4  第 3回測定と体力と情緒の比較

歩行群 非歩行群 p値n=13 n=11

Mean(SD) Mean(SD)

左右開脚(cm) 132.62(16.30) 123.36(15.41) 0.54

前後開き(cm) 99.23(12.93) 98.91(11.93) 0.95

握力(kgw) 26.22( 4.42) 23.93( 5.89) 0.29

6 分間歩行(m) 474.6(75.30) 399.37(42.17) 0.008*

母性理念肯定 13.23(10.41) 11.47( 7.65) 0.91

母性理念否定 -2.77( 2.97) -3.27( 3.66) 0.96

対児感情 24.92( 9.61) 30.86(17.09) 0.94

自己管理能力 30.08( 5.02) 29.18( 4.62) 0.81

*p<0.05

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妊娠中の歩行運動の効果 7

㏄,出生時の児の平均体重は3119.2gだった。また,自然分娩での19人は開始から分娩までを通しての歩

行群7人,非歩行群12人だった。 2群間では分娩時

体重,分娩時出血量,児体重に有意な差は見られな

かった(表- 6)。

 帝王切開術の5名の平均分娩時体重は62.2kg,出生時の児の平均体重は3024.0kgだった。 1日平均歩行数を自然分娩(19名)と帝王切開

(5名)の 2群で比較し有意な差は見られなかった。

(表- 7)

Ⅳ 考  察

1. 歩行運動が妊娠経過に及ぼす効果

 本研究では,1日平均歩行数5000歩以上の歩行群

で持久力の面で効果があった。また,歩行運動を継

続的におこなうことで,柔軟性,筋力,持久力,対

児感情,母性理念においてそれぞれの測定値で有意

な増加が見られた。日常生活での歩行数では従来,

歩行数1万歩が適正な身体活動量の水準であるとさ

れてきた。妊婦の場合70%の運動強度(最大酸素摂

取量の70%)が安全基準と提唱されているため,妊

婦の身体活動量を推定すると,妊娠期においては

4000歩から7000歩の間が計算されることになる。妊

婦に1日 1万歩を目標に歩行数の測定を行った研究

で11)平均歩行数は6322歩であった。日常生活活動

量を歩行数としてとらえ1日の平均歩行数を割り出

した研究では12)平均歩行数は5000歩であった。最

近の研究では生活習慣記録機を用いた妊娠初期から

妊娠中期にかけての歩数は6873歩~7978歩であっ

た。13)

 本研究では平均歩行数5000歩以上の歩行で変化が

みられた。また,妊娠期の歩行数は個人差が大きい

ことが改めて確認できた。ある一定の歩行数の継続

的な歩行群に筋力,持久力において効果が見られて

いたことは,体重増加分や妊娠による生理的な負荷

表- 5 第 4回測定と情緒の比較

歩行群 非歩行群 p値n=10 n=14

Mean(SD) Mean(SD)

母性理念肯定 17.50(10.02) 13.78( 9.90) 0.37

母性理念否定 -4.70( 3.30) -4.35( 4.03) 0.82

対児感情 23.43( 7.17) 22.71(15.27) 0.89

自己管理 30.20( 4.26) 29.78( 7.32) 0.87

*p<0.05

表- 6  正常分娩の比較

歩行群 非歩行群 p値n=7 n=12

Mean(SD) Mean(SD)

分娩時体重(kg) 66.24( 4.58) 63.89( 8.63) 0.51

出血量(g) 435.57(278.80) 501.64(330.95) 0.66

出生児体重(g) 3195.71(414.07) 3054.33(324.74) 0.41

*p<0.05

表- 7  分娩様式の比較

自然分娩 帝王切開 p値n=19 n=5

Mean(SD) Mean(SD)

平均歩行数(歩) 5670(1620) 6652(1730) 0.247

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茨城県立医療大学紀要 第20巻8

を抱えながら,日々の運動が体力増強に関与した効

果であると考える。研究結果より,妊娠中の歩行運

動として妊娠末期における5000歩以上の歩行は,運

動処方の指標の一つとなりうると考える。

 情緒面において何らかの母性観を肯定してい

た。母性理念は幼児期からの生育史のうちに生

成され,個人諸経験を重ねることによって変容

するものである14)。花沢は母性理念において150

名の妊婦を対象に妊娠期を初期,中期,後期に

分け検討したところ3群間において差は見られ

なかった15)。これは一般的な妊娠期においては母

性理念が変容するほどの体験がないことである

が,妊娠期の歩行運動は母性理念の変容に何らか

の関係があることがいえる。また,対児感情に

おいて花沢は初産の妊婦100名の調査を行なったが,

妊娠各期に有意な差は認められなかった16)。しかし,

本研究において拮抗指数では,初回測定値と第4回

測定値に有意な差が見られた。拮抗指数は低い点数

で愛着的方向が増すので,妊娠末期から産褥期の愛

着に何らかの変化が起こったことがいえる。出産の

体験が対児感情を促進していたと考えられる。産褥

期においては,妊娠期の歩行運動の有無による拮抗

指数の変化は見られなかった。

 運動頻度については,週3回を超えると運動の効

果は小さくなるが,運動頻度は運動強度や運動時間

とも相互に関係している17)。また,運動処方が各自

に合わせて作成される目的は,母親と胎児にもたら

す効果を十分に引き出すことであり,妊娠後期にお

いて体力が低下する妊婦は身体状態及び休養の質に

関して頻繁にチェックすべきである18)。歩行運動は,

日常生活と直結した運動であるが,身体状態の自己

チェックや生活様式に合った疲労の残らない程度の

頻度や強度の設定の変更が必要であったと考える。

 運動を始めるには20分続けられる運動とスト

レッチの組み合わせを勧められている。理由として

持久力などの体力が向上し,身体機能に顕著な効果

が期待されるが19),本研究において,ストレッチは

運動というよりは準備体操の一環として参加者が自

発的に取り入れたものであった。しかし,必ずしも

歩行運動に伴って行っていたわけではなく,その日

の体調に合わせてストレッチのみ行うなど,妊婦が

自発的に調整をしていた。ストレッチは種類,効能,

取り組み方を提示すれば,妊婦にとってストレッチ

は取り組みやすい運動であり,効果が期待できる運

動であったといえる。

 また,本研究においての歩行運動の基準は10分間

を 2回など短い時間の組み合わせでもよしとし,妊

婦は適切な時間帯に,自分のペースで歩行運動を

行っていたことが考えられる。運動負荷においては

Clapp20)の知見のついては相違があったが,歩行時間を20分とこだわらず,自分のペースで自由に歩行

ができたことが効果につながったものと考える。

2. 分娩経過と歩行運動

 分娩は母体の妊娠生活の総決算であり,妊婦が妊

娠中に運動を始める動機も「お産を軽くしたい」と

いうものが多い。実際の分娩では,分娩の進行は分

娩の三要素(産道,娩出力,娩出物)の調和のとれ

たバランスが必要であるが,一般的には妊娠中は母

体の体重増加を抑え,さらに出生児体重も正常範囲

であれば小さいほうが出産は楽であると考えられて

いる。本研究では,自然分娩において1日平均5000

歩以上の歩行群と,非歩行群についての差は見られ

なかった。Hatch21)は妊娠中に運動を開始することは,運動量が極めて多くない限り,出生児体重を増

加させる傾向にあるという報告をしている。「運動

量が極めて多い」という量は週5回,40分で運動強

度は「ややきつい」に相当するものであり,安全基

準から遠く乖離するものである。今回妊婦が研究に

参加するのは妊娠末期においてであり,運動量の多

い内容を勧めることは妊娠の安全を保証し得ない。

 胎盤と運動の関係で運動を続けることによって,

胎盤は妊娠中期に増大し,出産時期になるとさらに

増大が見られる22)。妊娠中期とは16~27週であり胎

盤の完成の時期である。つまり,運動により胎盤へ

の血流量が増加され胎盤の成長が促される,という

サイクルが分娩間近まで続くのである。妊娠末期か

らの運動開始という状況は,以前の運動強度などの

様子は不明であるが,歩行運動とストレッチを継続

することで,運動参加以前の体力と相まった運動の

継続の効果としての胎盤の成長が考えられている。

本研究では歩行運動による時の体重の程度には影響

がなかった。

 妊娠期の歩行運動への参加者24人中 5名が帝王切

開術の分娩であった事から,必ずしも歩行運動のみ

が自然な分娩経過を促すといえなかった。当該施設

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妊娠中の歩行運動の効果 9

では帝王切開術の適応は初産婦の場合30時間以上の

分娩遷延および児頭の下降が認められない分娩停止

であり,母子の安全を考えて予防的にガイドライン

が選択された。同年の母子保健の主なる統計では,

全国の病院での帝王切開分出術は23,28%を示して

いる23)。当該施設での帝王切開術は20%であり,本

研究の参加者の24名中の 5名の帝王切開術にリスク

を与えるとはいえない。

 妊娠末期においての1日の平均歩行数では,自然

分娩と帝王切開術の両者間において有意な差は見ら

れなかった。帝王切開術施行に関しては施設間の相

違は大きいといわれているため,今後は複数の医療

施設において比較することで,歩行運動と分娩の因

果関係の要因の一つが見えてくるかも知れない。

3. 運動処方

 運動を開始して2週間は,運動方法が無理のな

いものであるか,継続できるかを参加者に判断して

もらう時期でもあった。Clapp24)は,運動の習慣のない妊婦が妊娠中に運動を開始した場合,開始後2

週間に評価をしなければならないと述べている。運

動開始後2週間において第2回目の測定を行う設定

は,妊娠中に運動をはじめた場合には妥当なもの

だったと考える。

 運動を開始した妊娠末期は,循環血液量と心拍出

量は妊娠の経過とともに増加する。妊娠32週には

ピークとなり非妊時の約1.5倍の増加を示すため25),

この時期は母体の体温や,代謝,胎児心音の運動に

対する反応に注意しなくてはならない。Clapp26)は第 2回目以降は 4週間から 6週間ごとに評価を行う

べきだと述べている。本研究における3回目の測定

時期はほぼ4週間から 6週間後に設定してあり,時

期的な安全性において妥当であった。本研究におい

ては歩行運動の効果は運動を開始して2週間で握力

に関して数値の向上が見られたが,その後4週間か

ら 6週間以降で運動の効果が出現してきた。これは

運動による身体的な変化に合わせ,運動処方として

取り入れた測定の評価や,面談の効果も考えられる。

 歩行運動は妊婦にとって取り組みやすい運動とい

われているが継続できない理由は,単調になりやす

く,個人で取り組むことも中断しやすい点にあった。

今回,期間を決め,測定という評価があり,個人面

談という支援があったことも2週間以降の効果の出

現につながったと考える。

4. 運動の効果と運動処方

 妊娠中の運動の効果について2006,CochraneDatabase of Systematic Review,(Issue3) では,採用された11論文で運動群が実施したプログラム

は,水泳,エアロバイク,階段を利用したものなど

の有酸素運動で,運動時間は30分から 1時間を週に

3回から 5回行うものであった。運動への介入は長

いもので妊娠8週から分娩までの30週間前後のもの

や,短いもので10週間であった。運動の種類によっ

ては「激しい運動」と提示してある研究もあり,本

研究に比べ運動強度の強い運動がされていた。また,

運動頻度においても高いものであった。本研究にお

いても運動強度,頻度,時間においてレベルを上げ

ることは可能であったかも知れない。しかし,妊娠

中の運動の効果は,妊婦個人の基礎体力の違いや運

動の環境の違いなどの個人差で変わるものであり,

単純に運動による効果を上げるために,運動強度,

頻度,時間のみで運動を処方すべきではない。運動

の処方には,運動中の痛み,息切れ,過労を生じな

いレベルの運動が行われているかという頻回な妊婦

自身の自己チェックが組み込まれることが必要性な

のではないかと考える。また,運動を開始する時期

は身体的変化に応じ早い時期からの運動が効果的で

はないかと考える。そのためにも,運動処方や妊婦

自身の自己チェック能力の必要性が重要であると考

える。

 しかしながら,原則としては今回行ったように

妊婦が安全に運動をできることが優先されるべきで

ある。運動の継続には運動や医学の専門的な知識の

みでなく,妊婦の変化に対応していく支援や危機的

な状況になる前に軌道修正を行うケアが不可欠であ

る。それゆえ,助産師が,妊娠期に行う運動への支

援は助産ケアの一環として積極的に関わることは意

義のあることと考える。

 妊娠期の歩行運動の効果を分析するには,研究デ

ザインとして無作為化比較試験を用いることが最適

と考えるが,今回は記述的な研究デザインであった。

また,本研究では歩行運動を行うことを前提に参加

者を募集した。そのため,歩行運動の有無が妊娠経

過に及ぼす効果の検討には限界があった。

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茨城県立医療大学紀要 第20巻10

Ⅳ 結  論

 本研究において,以下のことが明らかになった。

1.妊娠末期の歩行運動は,週2回以上で,一日平

均歩行5000歩以上で部分的に体力及び情緒面を向

上させる効果が見られ運動処方の一つの指標と考

えられた。

2.妊娠末期の歩行運動は,分娩経過や産褥期情緒

には特に影響は及ぼさなかった。

3.妊娠末期の歩行運動の運動処方には,運動強度,

運動頻度,運動時間に加え,妊娠以前と妊娠中の

生活情報が必要である。また,妊婦の身体的精神

的変化や,運動の生理学的反応は,運動開始後2

週間とさらに4週間から 6週間後に評価する。

4.妊娠期の歩行運動には,妊婦の変化に応じた支

援が大切である。歩行運動を安全かつ効果的に行

うためには,助産師が助産ケアとして歩行運動に

積極的にかかわることが必要である。

Ⅵ 謝  辞

 本研究は,指導教員加納尚美教授の指導のもとに

行われました。稿を終えるにあたり,調査にご協力

いただきました参加者の皆様,多大な協力をいただ

きました施設の皆様に心から感謝申し上げます。

 本研究の一部は,茨城県立医療大学大学院保健医

療科学研究科の修士論文に基づいている。

文  献

1 )村井文江:妊娠中の運動実施状況,日本臨床ス

ポーツ医学学会誌:Vol.18 No.2, 2010 208-2122 )Donlouise Martens, Med, ATC/L july2006

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日本臨床スポーツ医学会学術委員会編.文光堂

(東京).2004;9-14

5 )ジェームス・クラップ:妊娠中の運動ハンドブッ

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7 )丸山仁,西田佑介:ザ体力.理学療法科学学会

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8 )花沢成一:母性心理学.医学書院(東京).

1992;29-34

9 )花沢成一:母性心理学.医学書院(東京).

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10)高橋浩之:自己管理スキルの開発と信頼性・

妥当性の検討.日本公衛誌.1998;47:(11).

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11)赤羽茂子,川野明子,藤井ひとみ:妊娠中の歩

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12)儀間繼子,仲村美津江.妊娠中の運動が分娩

に及ぼす影響,母性衛生.2006;47:(2).358-364

13)森野佐芳梨,澤龍一,谷川大地:妊娠期の身

体活動量と歩行の関連性,理学療法学,2013;

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14)花沢成一.母性心理学.医学書院.1992;29-

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15)花沢成一.母性心理学.医学書院(東京).

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16)花沢成一.母性心理学.医学書院(東京).

1992;75-79

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20)ジェームス・クラップ.妊娠中の運動ハンドブッ

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妊娠中の歩行運動の効果 11

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127

24)ジェームス・クラップ.妊娠中の運動ハンドブッ

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測の意義.日産婦誌.1994;46. 308-314

26)ジェームス・クラップ.妊娠中の運動ハンドブッ

ク.大修館書店(東京)2000;148-175

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茨城県立医療大学紀要 第20巻12

The effect of maternal walking exercise during pregnancy on pregnancy,delivery and puerperal condition.

Etsuko Doi,Naomi Kano

Department of Nursing, Ibaraki Prefectural of Health Science

Abstract

Purpose

This study aimed at investigating how walking exercise during pregnancy may affect pregnancy, delivery and

puerperal condition of primiparous woman having a healthy pregnancy.

Methods

Descriptive research was carried out at a general hospital in Ibaraki Prefecture to investigate the relationships

of exercise with maternal and fetal health by using a prospective approach. The participants of the study were 24

primiparous women experiencing a healthy singleton pregnancy with no complication who were expecting childbirth

between August and November in 2008. The participants were divided into two groups with different intensities of

prescribed walking, and the effect of the exercise was tested in terms of physical strength and emotional conditions

Results

delivery or puerperal conditions.

Conclusion

This study suggested that prescribed walking may improve physical strength and emotional conditions of mothers

and fetuses during pregnancy.