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37月刊建設19−05
あるとされている。
3.青森港における取り組み青森港では「青森港ビジョン(H27. 2)」にお
いて、市民が身近に海とふれあえる自然豊かな空間形成として浜町緑地の釣り場利用を掲げており、施
1.はじめに全国933港のうち、魚釣り施設がある港湾は49港、63施設に留まっており、その内東北管内では5港、6施設の状況である。この様な中、国土交通省港湾局では、釣り文化の振興や観光振興を目的に、平成29年3月「防波堤等の多目的使用に関するガイドライン」第2版(案)を改訂した。このガイドラインを踏まえ、青森港と秋田港では、平成30年度に公益財団法人日本釣振興会や関係機関等と共に、防波堤等の港湾施設の試験開放を実施し、本格開放に向けた検討を進めている。
2.防波堤等の多目的使用に関するガイドライン防波堤等の釣り利用の検討にあたっては、対象施設の本来の用途や目的を妨げず、施設所有者・設置者・管理者および管理運営者と利用者(釣り人)の責任の所在を明確にしたうえで、その責任に応じた安全対策を講じることが必要とされ、基本的な検討項目が示されている。〔利用可否判断にかかる項目〕①責任分担 ②利用者の属性 ③利用範囲 ④安全対策 ⑤管理運営体制 ⑥施設管理運営基準 ⑦地域活性化方策 ⑧利用のルール作り〔管理運営に必要な項目〕⑨費用の負担 ⑩利用者への情報提供検討の標準的なフローは図-1のとおりであるが、地域の事情により検討手順・内容を設定する必要が
*国土交通省 東北地方整備局 港湾空港部 海洋環境・技術課 課長補佐 022-716-0004
釣り文化の振興への取組み(青森港・秋田港における港湾施設の試験開放)
永なが
野の
亮あきら
*
地方創生を目的とした観光の取組みを政府全体で進めている中、国土交通省港湾局では、観光資源としての既存インフラの有効活用や港湾における文化振興の一環として、港湾における釣り施設や既存の防波堤の利活用を推進している。本稿では、「防波堤等の多目的使用に関するガイドライン」と、青森港・秋田港の取り組み事例を紹介する。
特集 地域活性化の推進−まち・ひと・しごとの創生−
2.11 利用者のルール作り
2.12 費用負担のあり方
2.13 利用者への情報提供
港湾所在市町村等による検討の開始
2.4 責任分担 ~ 2.10 地域活性化方策
YES
NO親水型構造物として開放
NO
YES親水型構造物か否か
釣り利用しない
YES
NO
釣り利用を行うか否かの判断①行政財産の用途・目的を妨げない②行政財産の公共性、公益性に反しない③利用者の安全を確保できる④港湾計画と整合している
再検討を行うか否かの判断
【前提】
・釣りニーズ
・地域振興、地方創生
・本来目的を妨げない
(協議会で検討)
(港湾管理者が判断)
(管理運営者が検討)(*3)
(*1)
(港湾所在市町村等が判断)
釣り安全対策
釣り利用
*1 2.4~2.10の検討に加え、2.11~2.13その他検討が必要な項目は、地域の実情に応じて設定する。
*2 国有財産に限り、港湾施設の他目的使用に係る国の承認を受ける必要がある。
*3 必要に応じて、港湾所在市町村等と相談の上、協議会に対して意見を求めることができる。
2.3 検討の事前準備2.2 協議会の設置
(港湾所在市町村等が設置) (港湾所在市町村等が準備)
(注)検討項目の前の数字は本ガイドラインの章番号を示す。
(*2)
図-1 検討フロー図
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設の竣工を契機として平成30年2月に「釣り利用検討会」が発足した。検討会は市民団体(青森港の未来を考える会)、商工会議所、港湾運送事業者、青森市、青森県、国の港湾関係行政機関等により組織され、原則釣りが禁止されている青森港での釣り開放エリアの設定や、ルールなどを検討するとともに、青森駅と近接している特性を活かした地域振興・観光振興の可能性を検討するものである。また、試験開放施設はJR青森駅、青函連絡船メモリアルシップ「八甲田丸」、青森県観光物産館「アスパム」、大型クルーズ船が着岸する新中央ふ頭など、観光客と市民が行き交う賑わい施設の近傍に位置する浜町緑地と北防波堤である。両施設共に親水性を備えつつ転落防止用フェンスを備えた施設であるが、北防波堤入口付近には安全面やゴミ捨ての問題により“釣り禁止”の看板が掲げられている状況にある事から、同年3月には警察、消防、海上保安部を中心とした安全小委員会及び検討会を開催し検討を深めていった。第1回検討会では、安全・安心に釣りを楽しめる環境を整備し、ひいては観光振興に繋げたいこと、多くのクルーズ船が寄港する青森港において、乗客・外国人に釣りを体験してもらい、釣った魚を食べてもらうことがPRになる等の意見も出された一方で、安全面や港湾荷役への影響などについて一部懸念の声があった事から、釣り利用の可能性を検証するために、5〜11月までの日曜日に浜町緑地と北防波堤で計6回試験的に開放し問題点の検証を行うことを申し合わせた。
また、第2回検討会以降は、報道関係者に検討状況の一部を公開することにより、テレビ等による報
道がなされ市民の関心事となった。更に、青森市が行う小学生向けの稚魚の放流事業と併せて実施し、海とのふれあいの機運醸成を図ることとした。
4.秋田港における取り組み秋田港では、新たな将来計画のため、平成28年度に「秋田港長期構想委員会」において、将来計画の一環として防波堤の釣り開放にかかる議論を行い、外港地区北防波堤が適地とされた。平成30年2月には、国、県、市、民間事業者等で組織された「秋田港外港地区北防波堤釣り開放に向けた検討会」を立ち上げ具体的な検討が開始された。当該施設は、高波浪の来襲や水中への転落等の危険性があること
写真-1 第1回検討会の状況
北防波堤
浜松緑地浜松緑地
図-2 試験開放位置図(青森港)
図-3 試験開放実施状況
写真-2 釣りを楽しむ様子
〔事前検討〕2月23日 第1回青森港釣り利用検討会3月15日 第1回安全小委員会3月27日 第2回検討会
※入場者数は誓約書記載者数
〔浜町緑地試験開放/稚魚放流事業〕5月20日(日) 第1回 (63名※) 6月17日(日) 第2回 (62名※)/メバル 300匹7月15日(日) 第3回 (67名※) 8月10日(金) マコガレイ 1,500枚9月16日(日) 第4回 (52名※)/ヒラメ 4,000枚〔北防波堤試験開放〕10月11日(木) 第2回安全小委員会10月14日(日) 第5回(70名) 11月11日(日) 第6回(100名)
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試験開放(無料)は7月13(金)〜15(日)の3日間実施され、公益財団法人日本釣振興会・東北地区支部のメンバー7名体制による監視・巡回・運営と、協議会メンバーのサポートもあり、延べ168名が安全に釣りを楽しんだ。この様子は、新聞、テレビで報道され、本格開放への期待が膨らんでいる。
5.今後に向けて両港の検討会では、試験開放の反省・課題等を踏
まえ、平成31年度の実施方針を検討しており、青森港では限定開放回数を年12回に増やし、引き続き、安全面や、釣り利用者のマナー、観光振興への可能性等を検証する方針である。秋田港では、平成31年度に試験開放(有料)を
実施し、安全確保と採算性等を再度検討のうえ、次年度以降に本格開放を目指す方針である。
6.おわりに国土交通省港湾局では平成31年2月に地域の関
係者による釣り文化振興の取組が進められている港湾を『釣り文化振興促進モデル港』とする新たな施策を打ち出し、3月末に全国13港がモデル港に指定され、うち東北管内では4港(青森港、秋田港、小名浜港、相馬港)がモデル港に指定された。モデル港には、直轄事務所による協議会等の効率
的な運営に関する技術的な支援、「公益財団法人日本釣振興会」による安全対策やマナー教育への支援、今後立ち上げ予定の「全国協議会」における情報交換・交流、国土交通省港湾局からの情報発信等による広報が見込まれる。これにより、各港の取り組みが更に深化し、全国
のモデルとなることが期待されている。
から、バリケードによる立入禁止措置がとられており、検討会では釣り人の安全確保が主要課題となった。対策として安全監視員の配置、危険表示ラインの明示、ライフジャケット着用義務付、救命浮
ふ環かんの設
置、救助艇の配置等を行うと共に、釣り人には飲酒喫煙の禁止、安全な靴を履くこと、ゴミの持ち帰り等の禁止行為を記載した入場説明書を示したうえで、これらに従う誓約書を提出して頂くことにした。また、当該施設は国有港湾施設であるため、東北地方整備局に対して施設の第三者使用申請を行うこと等を確認した。
試験開放前の6月には、安全対策として海上保安部、消防本部等の協力を得、落水者の救助訓練を実施。試験開放当日には津波避難訓練を計画し、安全確保に万全を期して準備を進めた。
秋田港北防波堤
図-4 試験開放位置図(秋田港)
写真-3 第2回検討会の状況
写真-4 救助訓練の状況
写真-5 釣りを楽しむ様子